国立大学法人東京学芸大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 東京学芸大学は、優れた学校教員を養成することを中心に、広く教育諸般に関わる人材を養成するという社会的使命を果たしつつ、教育・研究の両面において先導的役割を担う大学になることを中期計画の主要課題と認識しており、その課題を達成するために具体的な諸施策が実施されつつある。
 業務運営については、附属学校と東京都公立学校との人事交流を行い、連携の強化を図っている。
 財務内容については、新たに学生支援等のため「東京学芸大学基金」を設立し、教職員、地域及び企業等の団体に対して、広く財政支援を依頼し、寄附金の受入れを開始している。
 自己点検・評価及び情報提供については、ウェブサイト上に「学芸大イベントカレンダー」を作成し、大学が実施している事業情報(イベント、催し等)を時系列的に分かりやすく掲載し、学内外に対して提供している。
 教育研究等の質の向上については、「東アジア教員養成国際コンソーシアム」の創設に向けた、中国(12大学)、台湾(2大学)、韓国(14大学)及び国内(16大学)の教員養成系大学による結成大会の事務局として取り組んでいる。また、6大学(東京学芸大学・奈良教育大学・鳴門教育大学・東京成徳大学・白梅学園大学・中国学園大学)、東京都教育委員会及び民間企業が連携し、様々な教育活動に参加する地域の多様な人材育成と活用を目指す「教育支援人材認証制度」として「地域に根ざす多様な教育支援人材の育成プログラムと資格認証システムの実践的共同開発」を開始している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学長のリーダーシップが発揮できるよう、学長裁量に係るトップマネジメント経費について、当初予算において1,300万円(対前年度比13%増)を配分し、さらに、補正予算においても3,500万円を配分し、合計4,800万円(対前年度比44%増)となり、学長が戦略的施策を一層効果的に推進するための裁量幅を拡大させている。

○ 役員会の下に、情報企画室及び総合的道徳教育プログラム推進本部を新たに設置し、機動的な大学運営を行っている。

○ 東京都教育委員会と人事交流を行い、東京都公立学校への転出者4名、附属学校への転入者3名が交流している。また、平成22年度における、東京都公立学校への転出者8名、附属学校への転入者7名の交流者を決定している。

○ 新財務会計システムの導入に際し、旅行命令申請や謝金申請を財務会計システム上で行うことで事務の効率化を図るとともに、従来の科研費システムの機能を併せもったシステムを導入し、合理化を図っている。

○ 経営協議会から出された法人運営に関する意見(「教養系の卒業生の進路データ」の活用と今後の計画)について、その取組事例をウェブサイトで公表している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 教職員が安心して活躍できる環境作り、教職員や学生の子育て支援を推進するための福利厚生施設として、平成22年4月から「学芸の森保育園」を開園し、大学職員、学生の他、地域住民の子供も受け入れることを決定している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、経営協議会の審議の適正化については、平成21年度開催の経営協議会において、指摘事項について厳格な規程を遵守し、適切な審議を行うことを全会一致で確認しており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載12事項すべて(重要性を勘案したウエイト反映済み)が「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 科学研究費補助金の新規申請者数の増加を達成するため、学長裁量に係るトップマネジメント経費の基礎研究経費から、各学系に対してインセンティブ経費を配分している。

○ さらなる奨学寄附金の充実を図るため、東京学芸大学60周年記念募金活動の一環として、新たに学生支援等のため「東京学芸大学基金」を設立し、教職員、地域及び企業等の団体に対して、広く財政支援を依頼し、寄附金の受入れを開始している。

○ 土日祝日の図書館カウンター業務及び留学生の入国審査に関する業務の外部委託を行い、経費の抑制に努めている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載8事項すべて(重要性を勘案したウエイト反映済み)が「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 評価作業の効率化を図るため、教育活動、大学運営、連合学校教育学研究科の自己点検評価における自己点検評価書の項目と認証評価における自己点検評価書の項目とをほぼ同じにし、また、社会貢献活動、国際交流活動については、記述の容易化を図っている。

○ ウェブサイト上に「学芸大イベントカレンダー」を作成し、月単位のカレンダー機能等を利用し、大学が実施している事業情報(イベント、催し等)を時系列的に分かりやすく掲載し、学内外に対して提供している。

○ 大学の広聴活動として、九州・四国地方の教育実習校を訪問し、意見聴取を実施している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載9事項すべて(重要性を勘案したウエイト反映済み)が「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 全学共通スペースを大型改修工事に伴う教員研究室の一時移転先として活用し、残りのスペースについては利用者を募集し、施設の有効活用を図っている。

○ 環境保全に向けた学生・教職員等からの意見を取り入れる試みとして、学生主導で人文社会科学系研究棟2号館中庭の整備(イングリッシュガーデン)を行っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載7事項すべて(重要性を勘案したウエイト反映済み)が「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 将来、学校教員になることを志望しながら、経済的理由で大学進学が困難な入学希望の学生を支援対象として、入学料、授業料、寄宿舎料を全額免除するとともに、学習に必要な必携パソコンを貸与し、年間40万円の奨学金を4年間支給する教職特待生制度を新たに実施し、9名の特待生を入学させている。

○ 教育学研究科教育研究奨励事業実施要項を定めて教育奨励費制度を創設し、大学院教育学研究科(修士課程及び教職大学院)に在籍する学生の国内の学会等での発表に対し2万円、海外での学会等での発表に対し4万円を支給し、学生の教育研究活動の活性化を図っている。

○ 教育実習において様々な悩みを抱える学生へのメンタルヘルスに対応するため、大学院生が「教育実習サポーター」として支援する取組を行っている。

○ 6大学(東京学芸大学・奈良教育大学・鳴門教育大学・東京成徳大学・白梅学園大学・中国学園大学)、東京都教育委員会及び民間企業が連携し、「地域に根ざす多様な教育支援人材の育成プログラムと資格認証システムの実践的共同開発」を開始し、様々な教育活動に参加する地域の多様な人材育成と活用を目指す「教育支援人材認証制度」として、今後、全国展開を図ることとしている。

○ 教員の資質・能力向上及び学校教育上の諸課題等への支援・対応並びに教員養成への協力等のため、地域貢献及び小金井市の教育の充実・発展を図ることを目的として、小金井市との連携協定を締結し、今後、様々な事業を展開することを予定している。

○ 「東アジア教員養成国際コンソーシアム」の形成に向けて取り組み、中国(12大学)、台湾(2大学)、韓国(14大学)及び国内(16大学)の教員養成系大学による結成大会を、大学が事務局として東京で開催している。

○ 竹早地区では、「附属学校をフィールドにした幼小一貫教育課程と指導法の開発研究」を計画し、大学と附属学校が連携し、より一体となった運営を図るための新たな試みを準備している。

○ 大学のカリキュラムに反映させるために、附属幼稚園(小金井園舎)では、大学の幼児教育分野との共同で「大学4年間の総合的実習プログラム開発研究」に取り組み、大学と現場の往還過程を実現するカリキュラムを検討することを課題として明確にし、学生の学びが深化するカリキュラムを試行している。

(教員就職状況)

○ 平成21年3月卒業者(教員養成課程)の就職状況は卒業者数593名に対し、正規採用が174名、臨時的任用が169名で、平成21年教員就職率は57.8%、進学者を除くと65.7%となっている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --