国立大学法人東京外国語大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 東京外国語大学は、平成18年度に改訂したグランドデザイン「地球社会化時代における教育研究の拠点大学を目指して」に基づき、世界のほぼすべての地域にわたる様々な学問分野の優れた専門家が協働して教育研究に携わっているという独自性を最大限に発揮し、学長を中心とした機動的、戦略的な大学運営に向けた取組を引き続き進めている。
 業務運営については、アジア・アフリカ言語文化研究所において、プロジェクト研究部の中に設置した複数の研究ユニットを通じて、「小規模コーパスデータ分析のためのツール開発」、「心身論」、「異文化交渉がつくる歴史認識」、「言語の構造的多様性と言語理論」等の機動的な研究プロジェクトを実施している。
 財務内容については、外部資金獲得に向け、プロジェクト支援機能の強化のため、経営戦略会議の下に専門部会として再設置した研究推進部会等を中心に、プロジェクト申請を戦略的に行っており、外部資金比率が増加している。
 自己点検・評価及び情報提供については、ホームページ運営室を中心として、大学ウェブサイトの全面改訂作業を行うとともに、広報マネジメント室と社会連携事業室が中心となって広報活動を行うとともに、学術資産の有効活用を図るため、ポータルサイトとして「学術リポジトリ『東京外国語大学学術成果コレクション』」を拡張するなど、情報公開の促進を図っている。
 教育研究等の質の向上については、多言語・多文化教育研究センターにおいて、学部で開講するAdd-on Program「多言語・多文化社会」、共同研究の成果を社会に向けて発信する全国フォーラムの開催、多文化コーディネーター養成プログラム、日本に在住する外国人児童用の教材開発等、教育・研究・社会貢献の3分野での多言語・多文化社会の抱える問題解決に寄与している。
 また、専攻語以外の言語科目を新たに開講することとし、グルジア語等の科目を開講するための経費を措置しているほか、オーストラリア先住民語等を開講し、言語教育の多様化と充実を図っている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ アジア・アフリカ言語文化研究所においては、プロジェクト研究部の中に設置した複数の研究ユニットを通じて、「小規模コーパスデータ分析のためのツール開発」、「心身論」、「異文化交渉がつくる歴史認識」、「言語の構造的多様性と言語理論」等の機動的な研究プロジェクトを実施している。

○ 世界の言語、文化及び社会に関する教育の実施について、必要な教育支援を行い、学部等が行う教育の充実及び発展に寄与することを目的として、世界言語社会教育センターを新たに設置している。

○ 日本語教育の方法及びこれを支える日本文化・社会全般に関する教育研究を推進するとともに、学内連携体制を構築し、かつ、学外諸機関との連携・協力を推進することを目的として、国際日本研究センターを新たに設置している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 監事監査結果報告書で指摘されているハラスメント問題をはじめとした各種の不適正な行為について、発生防止に向けた取組の強化が期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載56事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 外部資金獲得に向け、プロジェクト支援機能の強化のため、経営戦略会議の下に専門部会として再設置した研究推進部会等を中心に、プロジェクト申請を戦略的に行っており、外部資金比率は3.2%(対前年度比0.8%増)となっている。

○ 外部資金による研究支援のために、「アゴラ・グローバル(異文化交流施設)」にプロジェクト・スペースを設け、国際日本研究センターを置くとともに、それ以外のプロジェクト・スペースについては、学内の各種プロジェクト担当者の意見を聴取した上で、戦略的に配分することとしている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載12事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ ホームページ運営室を中心として、大学ウェブサイトの全面改訂作業を行うとともに、広報マネジメント室と社会連携事業室が中心となって広報活動を行うとともに、学術資産の有効活用を図るため、ポータルサイトとして「学術リポジトリ『東京外国語大学学術成果コレクション』」を拡張するなど、情報公開の促進を図っている。

○ 受験生確保のために、体験授業、説明会等の様々なイベントを行うとともに、ブログの充実を図り、受験生へのアドバイスをはじめとして様々な情報を掲載している。

○ 学生の視点に立った広報を主眼としつつ、企業・学生・卒業生を対象とし、大学のプレゼンスを高めることを目的とした広報誌「GLOBE Voice」を引き続き刊行している。

○ 学部及び大学院において、自己点検・評価のために実施している各種アンケートをウェブサイトで実施するためのシステムを開発し、試行運用を行うとともに、大学情報データベースへ提供する情報等を踏まえ、点検・評価活動との連動性をより明確にするため、学内の大学情報データベースの入力画面の見直しを行っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全衛生管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 安全で快適なキャンパスを目指した、環境整備の企画・立案を行い、建設後10年を経過したキャンパスの経年劣化への対策として、長期修繕計画の策定を開始し、役員会において、年度別に講じるべき具体的方策についての検討を行うなどの取組を行っている。

○ 研修施設に関し、若手職員5名が学生アンケートの実施、施設の視察等による検討を行い、今後の在り方について、施設マネジメント室への提言を行っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載16事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 総合国際学研究科を設置し、言語文化を対象とする言語文化専攻と地域・国際社会を対象とする国際社会専攻の2専攻に改組して、大学院博士前期・後期課程を通じて一貫した教育体制としている。

○ 学部・大学院等が行う世界の言語・文化・社会に関する教育を支援するとともに、これらの充実に寄与することを目的として、世界言語社会教育センターを設置し、言語教育の高度化及び質保証の推進に取り組んでいる。

○ 専攻語以外の言語科目を新たに開講することとし、グルジア語、リトアニア語、ウイグル語、カザフ語、東アルメニア語、カタルーニャ語等11科目を開講するための経費を措置しているほか、オーストラリア先住民語、アサバスカ語、ツングース諸語、ベンガル語、マラヤーラム語、チベット語、サンスクリット語、日本手話、アイヌ語、スンダ語、チュルク語等を開講し、言語教育の多様化と充実を図っている。

○ 多言語・多文化教育研究センターにおいて、学部で開講するAdd-on Program「多言語・多文化社会」、共同研究の成果を社会に向けて発信する全国フォーラムの開催、多文化コーディネーター養成プログラム、日本に在住する外国人児童用の教材開発等、教育・研究・社会貢献の3分野での多言語・多文化社会の抱える問題解決に寄与している。

○ 急速に失われつつある言語多様性に関する国際研究連携体制の構築プロジェクト(通称:言語ダイナミクス科学研究プロジェクト(LingDy))により、ロンドン大学東洋・アフリカ研究学院(英国)とマックス・プランク進化人類学研究所(ドイツ)との連携を中心とした国際連携体制の基に、言語多様性と類型に関する研究交流・共同研究を推進している。

○ 国際シンポジウム「大学におけるアカデミック・ジャパニーズの現状と課題」の他、5回の研究会を開催し、留学生30万人計画の達成に向けた日本語教育の充実のため、留学生が大学で勉学・研究するために必要な日本語力及び日本語の基準を示した「JLC(留学生日本語教育センター)日本語スタンダーズ」に基づく教材開発を推進している。

○ 地球社会先端教育研究センターと附属図書館が連携して、デジタルライブラリー/アーカイヴズ(Dilins)の運用を行い、コンテンツの充実を図るとともに、総合情報コラボレーションセンターと連携して、引き続き次期e-Learningシステムの開発についての検討を進めている。

○ 図書館業務システムと総合情報コラボレーションセンターシステムの連携を図り、利用者への学術情報サービスを向上させるため、2つのシステムを学術情報基盤システムとして一体化した更新を行っている。

全国共同利用関係

○ アジア・アフリカ言語文化研究所では、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。
 研究活動や研究成果に関する情報提供を行うための広報誌『Field+』をより多くの読者を対象とするために、2010(平成22)年1月刊行のno.3から、東京外国語大学出版会を通じて、市販を開始している。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --