国立大学法人筑波技術大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 筑波技術大学は、聴覚・視覚に障害のある者を対象に教育を行う大学であり、学生の障害特性に配慮した教育を通じて、幅広い教養と専門・応用的能力を持つ専門職業人の養成、社会的自立を果たしリーダーとして社会貢献できる人材の育成、国内外の障害者教育の発展に資することを目標として掲げ、聴覚・視覚障害を補償する教育方法・システム等の開発、情報授受のバリアのない教育環境の構築、他大学等に対する支援等の実施に努めている。
 業務運営については、全職種(教員、事務系職員)の人事評価を本格稼働し、評価結果を昇給及び勤勉手当に反映しており、評価できる。
 また、教育研究環境整備室を設置し、新学生寄宿舎の新営に伴う聴覚・視覚障害者に配慮した設備整備並びに共用スペースの確保等のための基幹整備等の執行計画を作成している。
 一方、平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、他の障害者教育機関との人事交流が行われていないことについては、聴覚・視覚障害者教育研究機関等との人事交流実施要項を制定しているものの、人事交流が行われるまでには至っていないことから、着実な取組が求められる。
 財務内容については、大学の特色と教育研究の成果の活用を図ることを目的に、聾学校での造形教育に関する指導法、聴覚に障害を持つ高校生を対象とした「コンピュータ・グラフィックス入門」、医師のための鍼灸実践講座等の公開講座を開講し、収入を確保している。
 自己点検・評価及び情報提供については、聴覚及び視覚に障害のある人を対象とした教育研究に関する情報を提供する「テクノレポート」を電子化し、ウェブサイト上で公開したことにより、盲・聾学校のみならず、広く社会に情報を発信している。
 教育研究等の質の向上については、発音指導を希望した学生に対して、構音やスピーチの流暢性に関する対面指導を行うとともに、就労に関する面接や職場実習等に際してコミュニケーションの学習を希望する学生に対して、個別指導を実施している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 全職種(教員、事務系職員)の人事評価を本格稼働し、評価結果を平成21年12月から昇給及び勤勉手当に反映しており、評価できる。

○ 4年制大学第1期生の卒業に合わせて平成22年度から大学院技術科学研究科を設置することとしており、大学院生受入れに向けて諸規程や設備等の整備を行うとともに、第1期生の入学試験を行っている。

○ 教育研究環境整備室を設置し、新学生寄宿舎の新営に伴う聴覚・視覚障害者に配慮した設備整備並びに共用スペースの確保等のための基幹整備等の執行計画を作成している。

○ 経営協議会から出された法人運営に関する意見(授業時間数の適正な確保等)について、その取組事例をウェブサイトで公表している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、経営協議会の審議の適正化については、適切に審議が行われており、指摘に対する取組が行われている。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、他の障害者教育機関との人事交流が行われていないことについては、聴覚・視覚障害者教育研究機関等における教育研究に関する人事交流実施要項を制定しているものの、人事交流が行われるまでには至っていないことから、着実な取組が求められる。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

○ 「引き続き、他の障害者教育機関等との人事交流を図る。」(実績報告書14頁・年度計画【13】)については、聴覚・視覚障害者教育研究機関等における教育研究に関する人事交流実施要項を制定しているものの、人事交流が行われるまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載19事項中18事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、平成20年度評価結果において課題として指摘した事項に十分な取組が行われていないこと及びそれに関連した1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められるものの、教職員の人事評価を本格稼働し、評価結果を処遇に反映させている取組が行われていること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学の特色と教育研究の成果の活用を図ることを目的に、聾学校での造形教育に関する指導法、聴覚に障害を持つ高校生を対象とした「コンピュータ・グラフィックス入門」、医師のための鍼灸実践講座等の公開講座を開講し、収入を確保している。

○ 資金の運用について、運用可能額が少額であり、運用益が見込まれないことから実施しなかったことについて、短期的な運用の可能性も考慮しつつ、引き続き検討することが期待される。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載4事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 聴覚及び視覚に障害のある人を対象とした教育研究に関する情報を提供する「テクノレポート」を電子化し、ウェブサイト上で公開したことにより、盲・聾学校のみならず、広く社会に情報を発信している。

○ ウェブサイトをリニューアル後、視覚障害者に音により大学を紹介するサウンドロゴを聴取できるようにするとともに、視覚障害者への配慮としてスクリーンリーダ(読み上げソフト)に対応できるよう継続的に工夫するなど、アクセス環境を充実している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載3事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 聴覚・視覚障害に配慮した情報保障環境(字幕提示システム、避難誘導システム等)の整備を組み入れた学生寄宿舎を竣工するとともに、共同利用スペースの確保等のための基幹整備を行っている。

○ 施設のバリアフリー化を推進するとともに、附属図書館にセミナー室、研究個室を設置し、学生の教育・研究環境の改善を図っている。

○ 施設環境防災委員会において講義室・セミナー室等の稼動状況の調査を行うとともに、施設の用途を見直し、新たな共同利用スペースを確保している。

○ 平成17年度に策定した補修計画を見直し、新たな施設設備修繕計画を策定している

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載4事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 大学生活の指導等で必要となる手話単語を共有する基盤を整備し、手話コミュニケーション力の全体的な底上げを担うことを目的として、教育研究等高度化推進事業により、大学生活の指導に係る手話単語の確定研究を推進し、「大学生活に係わる手話」に係るコンテンツをウェブサイト上に設けている。

○ 発音指導を希望した学生に対して、構音やスピーチの流暢性に関する対面指導を行うとともに、就労に関する面接や職場実習等に際してコミュニケーションの学習を希望する学生に対して、個別指導を実施している。

○ 電子メールによるレポート提出、インターネット教材の授業への導入等、各種メディアを効果的に活用した教育を進めている。

○ 「第5回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム(PEPNet-Japan)」「第8回コーディネーター情報交換会」「第9回コーディネーター情報交換会」「聴覚障害学生支援技術講習会」を実施するとともに、高等教育機関等を卒業した聴覚障害者の就職、職場適応をテーマとした第4回産学官連携シンポジウムを実施している。

○ 新任教員を対象とした授業研修を実施し、聴覚障害学生を対象とした授業におけるコミュニケーション技術及び教授法について、手話実技を交えた指導を行っている。

○ 聴覚障害学生支援のための拠点形成事業として、日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)を運営し、聴覚障害学生支援を実施している他大学機関との連携の基に、シンポジウム・ワークショップの開催、聴覚障害学生支援コンテンツの作成、諸外国における聴覚障害学生支援体制調査等の事業を実施している。

○ 障害者等が利用できる携帯端末を活用した取組として、筑波技術大学が中心となり、携帯電話会社、群馬大学、東京大学、情報保障を受け持つ2団体の6機関で「モバイル型遠隔情報保障システム」に関する実証実験を実施している。

○ 「留学生語学センター設立予備調査ワーキンググループ」を設置し、国内外の障害留学生に関する調査、文献収集等を行い、その結果を報告書として取りまとめている。

○ 学習資料の製作に携わる人材の育成として、つくば地域の一般市民を対象とする点訳入門講習会の企画・実施、点図作成研修会を実施し、大学等と社会の相互発展を目指している。

○ 「つくばサイエンスリポジトリ」に参加し、筑波大学附属図書館と連携を図っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --