国立大学法人茨城大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 茨城大学は、幅広い教養と専門的能力を備えた社会に有為な人材を育成するとともに、地域と国際社会における、学術・文化の発展に寄与することを目的として、学長のリーダーシップの下、効率的な運営体制の確立を目指し、外部資金の獲得、業務の効率化・合理化、資産の運用改善、教育研究体制の整備等の改革に向けた様々な取組を実施している。
 業務運営については、環境やエネルギー、水、食料問題等人類が直面する諸課題を総合的に解決するための研究を精力的に進めており、その一環として、幅広い研究分野による特色ある研究プロジェクトを育成するため、「推進研究プロジェクト」制度を導入し29件を認定している。
 財務内容については、共同研究を受け入れる際に相手方と協議を要する契約書については、産学官連携イノベーション創成機構の専任教員、知的財産コーディネーターが内容をチェックして、協議に要する日数を短縮し、円滑な受入れを図っている。
 その他業務運営については、「キャンパスマスタープラン2015」により、全学共通スペースを20%確保するための改修工事を行い、教育学部・工学部で全学共用スペースを新たに整備している。
 教育研究等の質の向上については、現在のIT技術革新が求める人材育成に応じるため、4大学(茨城大学、宇都宮大学、群馬大学、埼玉大学)が連携して、情報工学、社会経済学及び医学から編成される大学院教育プログラムの発展型として「4大学院連携先進創生情報学教育研究プログラム」における初の修了生を出すとともに、IT企業の積極的な協力もあり、長期インターンシップによる教育効果や、現代のIT産業が求める多面的な視野を有する創造性豊かな人材育成に成果を上げている。
 また、茨城県北ジオパーク推進協議会を設立し、地域の諸組織を巻き込んだ大規模な活動のリーダーシップを取り、学術研究成果を活かした地域振興に取り組んでいる。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 環境やエネルギー、水、食料問題等人類が直面する諸課題を総合的に解決するための研究を精力的に進めており、その一環として、幅広い研究分野による特色ある研究プロジェクトを育成するため、「推進研究プロジェクト」制度を導入し29件を認定している。

○ 先進的又は独創的な研究を実施している教員の特筆すべき研究成果を称え、研究成果と研究内容を学内外に広めることにより、教員の研究意欲の向上を図り、大学の研究の活性化とさらなる発展を目指すことを目的とする「茨城大学学長学術表彰制度実施要項」を制定し、4名の教員に学長学術表彰を授与している。

○ 女性教員を採用した部局及び女性教員にインセンティブとして研究経費等を配分するなど、女性教員の採用の促進に向けた取組がなされている。

○ 大学院2研究科(人文科学、理工学)の改組を行うとともに、大学院教育部の下に全学大学院共通科目(17科目)と研究科横断的教育プログラムを設けている。

○ 経営協議会から出された法人運営に関する意見(広報体制の充実等)について、その取組事例をウェブサイトで公表している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、地域連携推進本部の運営体制が十分な点検・評価が行われるまでには至っていないことについては、平成21年6月末にアンケート調査報告書の作成が行われるなど、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 「茨城大学技術・ビジネス相談分野一覧」を発行し、北関東4大学や科学技術振興機構との連携による新技術説明会等での配布や、関連企業及び各大学等に送付し、研究シーズを提供するとともに、北関東国立4大学の連携においても4大学研究室紹介(4U)を発行している。

○ 共同研究を受け入れる際に相手方と協議を要する契約書については、産学官連携イノベーション創成機構の専任教員、知的財産コーディネーターが内容をチェックして、協議に要する日数を短縮し、円滑な受入れを図っている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載13事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 経営協議会学外委員からの意見に基づき、効果的・効率的な広報施策、実施体制等について学長の下に置かれた「広報の在り方WG(ワーキンググループ)」により広報に係る全般的な検討を行っている。

○ 冊子やウェブサイト等により、教育、研究、社会活動等に関する各学部の年次報告書を作成し学内外に公表することについて、今後、農学部の年次報告書についても毎年発行するなど、さらなる効果的な活用が期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理と健康管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 「キャンパスマスタープラン2015」により、全学共通スペースを20%確保するための改修工事を行い、教育学部・工学部で全学共用スペースを新たに整備している。

○ 「水戸キャンパス交通対策マスタープラン」の実施について検討し、水戸キャンパスでの静穏かつ安全な環境を創出するために、学内、地域住民、関係機関と調整し磁気カード方式によるカーゲートを設置している。

○ 施設の有効活用に関して、各学部(人文学部、教育学部、理学部、工学部、農学部)ごとに、既存スペースの活用状況を調査し、施設評価を実施している。

○ 安全衛生担当職員、機器分析センター及び工学部技術職員により、安全衛生に係る作業環境測定等の取組を安全衛生の研修会等で発表している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載18事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 現在のIT技術革新が求める人材育成に応じるため、4大学(茨城大学、宇都宮大学、群馬大学、埼玉大学)が連携して、情報工学、社会経済学及び医学から編成される大学院教育プログラムの発展型として「4大学院連携先進創生情報学教育研究プログラム」における初の修了生を出すとともに、IT企業の積極的な協力もあり、長期インターンシップによる教育効果や、現代のIT産業が求める多面的な視野を有する創造性豊かな人材育成に成果を上げている。

○ 大学初年次の理系基礎科目(数学、物理)及び英語の授業クラスを習熟度別に編成し、大学入学時の異なる達成度に応じた授業の展開により高い教育成果を上げている。

○ 学部の学科制と講座制を廃止して学部・学野制に移行し、教育を重視しつつ柔軟な教員組織の編成を可能とするとともに、大学院の改組も行い大学院教育部を設置している。

○ フロンティア応用原子科学研究センターを拠点として、生体プロトン探索、環境材料の構造解析、生体分子変換等、茨城県及び日本原子力研究開発機構からの受託研究等により、茨城県中性子ビーム実験装置を活用した研究を推進し、有機結晶の中性子構造解析に成功するなどの研究成果を上げている。

○ 宇宙科学教育研究センターにおいて、国内外の超長基線干渉計(VLBI)天文学共同研究と大学独自の2素子干渉計による活動天体研究を推進するため、本センターと理学部が中心となって国立天文台とVLBIグループ大学と共同しつつ、民間企業から移譲を受けた大口径パラボラアンテナの望遠鏡への改造を進めている。

○ 連携協定に基づく茨城産業会議との研究室訪問交流会において、「技術相談コーナー」を設け、さらなる企業からのニーズへの対応を行うとともに、茨城県を新たに加えた各協定締結自治体との実務担当者会議を開催し、各協定先自治体と行っている連携事業の内容や事業を行っていく上で浮き彫りになった問題等を共有し、連携事業の発展・充実、ひいては地域の活性化につながる意見交換を行っている。

○ 茨城県北ジオパーク推進協議会を設立し、地域の諸組織を巻き込んだ大規模な活動のリーダーシップを取り、学術研究成果を活かした地域振興に取り組んでいる。

○ 教育研究高度化のための支援体制整備事業により、附属教育実践総合センターに非常勤職員を1名、各附属学校園に非常勤教員を1名ずつ配置し、教育学部と附属学校園における研究活動を仲立ちする任務を果たしている。

○ 授業担当教員である図書館副館長(教育学部教授)の指導を得ながら、授業時間ごとの担当グループにより授業内容の検討を行い、授業にはパワーポイントを使用するとともに、パワーポイントによる教材を作成しているなど、情報リテラシー教育を充実・強化するための授業内容・教材の企画立案を行っている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --