国立大学法人琉球大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 琉球大学は、「地域特性と国際性を併せ持ち、世界水準の教育研究を創造する大学」を目指し、アジア太平洋地域の熱帯・亜熱帯の地理的特性や自然、琉球弧の社会、文化、歴史等の地域特性に根ざした教育・研究活動等の推進に取り組んでいる。
 業務運営については、自然災害や農業被害等を軽減するための研究を行う「島嶼防災研究センター」を学内共同利用施設として設置している。また、学納金システムの導入、学生支援システムの導入、人事・給与システムの諸手当サブシステムの導入等、情報化の推進及び業務の合理化を図っている。
 一方、男女共同参画の推進のための具体的な行動計画や推進体制が整備されておらず、環境醸成を図る取組も著しく乏しいことから、積極的な取組が求められる。
 また、年度計画に掲げている、年度計画に定める業務で改善された事項をウェブサイトで公表することについては、公表するまでには至っていないことから、着実な取組が求められる。
 施設設備については、講義室の有効活用を進めるため「講義室管理・予約システム」を構築し、ウェブサイトでリアルタイムに確認や予約ができるようにしている。
 なお、「平成20事業年度に係る業務の実績に関する報告書」について、「判断理由」の記載内容が、実施した事実のみを記載している年度計画が多いため、具体的な取組内容を記載することが期待される。
 教育研究の質の向上については、 平成20年度から全学出動型の副専攻制度を導入し、「総合環境学副専攻」、「日本語教育副専攻」をスタートしている。また、沖縄市に司法センターを設置し、沖縄固有の基地問題等に対応した法律相談を実施している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  全国共同利用施設熱帯生物圏研究センターと学内共同教育研究施設分子生命科学研究センターを統合し、組織・機能の充実を図り、新「熱帯生物圏研究センター」を設置することとしている。
  •  自然災害や農業被害等を軽減するための研究を行う「島嶼防災研究センター」を学内共同利用施設として設置している。
  •  学納金システムの導入、学生支援システムの導入、人事・給与システムの諸手当サブシステムの導入等、情報化の推進及び業務の合理化を図っている。
  •  教員評価については業績評価を全学的に試行を実施しており、事務評価については課長代理以上を対象に評価の試行を実施しており、今後、本格実施してその評価結果を給与等の処遇へ反映することが期待される。
  •  公募制を原則とする教員採用については、引き続き積極的な取組が期待される。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、次期中期目標・中期計画に反映させるための体制作りまでには至っていなかったことについては、平成20年10月に次期中期目標・中期計画の策定体制を定めるなど指摘に対する取組が行われている。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  男女共同参画の推進のための具体的な行動計画や推進体制が整備されておらず、環境醸成を図る取組も著しく乏しいことから、今後、積極的な取組が求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載30事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められるが、男女共同参画の推進に向けた積極的な取組が求められること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  平成19年度決算内容について、教職員を対象に決算報告説明会を開催している。
  •  施設ごとに使用料を定額化し、ウェブサイトに掲載して利用者の利便性を図っている。
  •  法文学部において、教授会・代議会・研究科委員会のペーパー資料を廃止し、プロジェクターによる映写方式に変更している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載24事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  琉球大学の独創的な知の蓄積を「やわらかい南の学と思想‐琉球大学の知への誘い‐」、「融解する境界‐やわらかい南の学と思想‐2」として発刊している。
  •  附属図書館において、学生の言語力・想像力・表現力・創造力を高め地域社会の文学活動リーダーの輩出を目的とした「第2回琉球大学びぶりお文学賞」への作品募集を行い、27編の応募があり、応募作品の中から受賞作1編、佳作3編を選定している。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「平成19年度に定めた実施方針に基づき『年度計画に定める業務の実施状況等』の中間評価を行い、それに基づき、改善が行われた事項をホームページで公表する」(実績報告書22頁・年度計画【48】)については、ウェブサイトで公表するまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載11事項中10事項が「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  施設の有効活用に関する現状調査を毎年実施し、その調査結果の点検・評価を行い「施設に関する点検・評価報告書」を作成し、施設整備計画等に反映させるべく公表している。
  •  施設維持管理計画等に基づき、中期計画実現推進経費により、老朽化等施設解消のための経費を確保し、老朽化等施設の改修や予防保全等、計画的な整備を行っている。
  •  講義室の有効活用を進めるため「講義室管理・予約システム」を構築し、ウェブサイトでリアルタイムに確認や予約ができるようにしている。
  •  大学本部及び附属図書館に続き、各学部及び機器分析支援センターもエコアクション21の認証を受け、登録を行っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載22事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  総合情報処理センターでは、テレビ会議システムを用いたハワイ大学他5機関との遠隔講義を2科目15週間行い、遠隔教育ソフトを利用した「統計入門」、「高校数学」を大学教育センターと共同で導入するなど、情報基盤の積極的な活用が図られている。
  •  医学部保健学科のベスト・レクチャラー制度や工学部の教育貢献者表彰制度に続き、農学部では、ファカルティ・ディベロップメント(FD)活動の一環として、平成20年度から「農学部優秀授業表彰」を実施している。
  •  平成20年度から全学出動型の副専攻制度を導入し、「総合環境学副専攻」、「日本語教育副専攻」をスタートしている。
  •  大学院博士課程の学生で成績優秀な学生10名に対し、年間の授業料を免除する特待生制度に関する要項を制定し、平成21年度から実施することを決定している。
  •  医学部医学科では、沖縄医師就学資金貸与制度を活用し、地域医療の担い手となる学生の修学支援を行うプログラムを平成21年度から実施することを決定している。
  •  アジア太平洋地域の自然災害を軽減するための研究を目的とする「島嶼防災研究センター」を設置している。
  •  基地問題対応法律相談として、大学院法務研究科では沖縄市に「琉球大学司法センター」を設置し、沖縄固有の基地問題等に対応した法律相談を実施している。
  •  保健師実習の指導者育成研修の実施として医学部保健学科では、保健師実習の指導者育成研修を実施し、地域の15施設から実習指導者24名が参加している。
  •  医学部医学科では、離島医療を含む地域医療人材の充足を目指し、県内高校出身者を対象とした地域枠の学生7名の受入れを計画し、学生の受入れ(21年度)を実現している。
  •  地域共同研究センターと知的財産本部を統合して「産学官連携推進機構」を設置し、研究開発から起業化支援までの産学連携に関するワンストップサービスを提供できる体制を整えている。
  •  交流協定校であるラオス国立大学の附属小学校校舎の建設支援を行っている。また、教育分野での今後の交流についてラオス国立大学と協議している。さらに、医学部教員及び大学院生がJICAの草の根技術協力事業に参加して、ラオス国内の小学校児童の歯科検診と教育を行っている。

全国共同利用関係

  •  全国共同利用施設である熱帯生物圏研究センターでは、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。平成20年度は、組織・機能の充実を図り、熱帯生物圏における自然及び人の生命現象に関する研究を推進するとともに、共同利用・共同研究に供するために平成21年4月から学内共同教育研究施設である分子生命科学研究センターと統合することを決定している。
附属病院関係
  •  良質な医療人養成のために、初期臨床研修では内科・外科・小児科の特別コースプログラムを新たに設置、研修医のローテーションに合わせて看護師からの評価を実施するなど教育体制の充実を図っている。また、県内の治験を含む臨床研究ネットワーク形成に向けて、沖縄県医師会等と連携して協定を締結するなど、臨床研究推進のための組織整備を進めている。診療では、新型インフルエンザ等も含めた新興感染症対策として感染症病床6床の整備申請を行うなど、感染症診療体制の整備を図っている。
     今後、国際的共同研究等の研究成果を活かし、また、臓器横断的な高度な診療体制の整備も図りながら、地域医療機関とも連携したさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  RITOプロ事業の継続資金を獲得して、医学科4年次学生を対象とした離島実習を行っており、地域専門医育成に努めている。
  •  大学病院連携型高度医療人養成推進事業(多極連携型専門医・臨床研究医養成事業)により、28大学病院と連携し、ウェブサイトの開設、プログラムの紹介、参加者への情報提供を行っている。
  •  中国の上海から6か月間の留学生を受入れ、各種感染症に関する臨床共同研究を展開、呼吸器感染症の診断と治療に関して、上海同済大学との共同研究を展開するなど、医療水準の向上に努めている。
(診療面)
  •  都道府県がん診療連携拠点病院に指定され、院内がんセンターのスタッフの充実、すべての化学療法のレジメン登録義務付けを行って、院内のがん診療体制の基盤整備を図るとともに、沖縄県がん診療連携協議会を開催(一般公開で3回実施)して、がんについての情報提供を行っている。
  •  7対1看護体制を取得するために、平成19年度に30名、平成20年度に55名の看護師を採用して医療提供体制の整備を図っている。
(運営面)
  •  国立大学病院管理会計システム(HOMAS)のデータを基に作成した収支に関する資料を各診療科に配布、診療科においても分析を行い、職員の意識高揚を図り、稼働額の増並びに支出の抑制に取り組んでいる。
  •  病院長がリーダーシップを発揮しやすい体制を強化するために、病院長室ミーティング等、病院運営や経営改善の向上に努めている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --