国立大学法人鹿屋体育大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 鹿屋体育大学は、国立大学唯一の体育大学として、国民各層のスポーツへの多様なニーズに応える教育・研究組織を柔軟に編制し、スポーツを通して創造性とバイタリティに富む有為の人材を輩出するとともに、明るく豊かで活力に満ちた社会の形成に貢献することを基本目標とした取組を行っている。
 業務運営については、スポーツ・健康関係の社会人や競技スポーツ選手へのキャリアアップ教育のため、大学院体育学研究科修士課程(体育学専攻)に社会人向けのコースを開設して、ニーズの高い首都圏で実施することについて検討を行い、東京都にサテライト・キャンパスを設置し、平成21年10月から学生を受け入れることを決定している。
 財務内容について、平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した入学志願者獲得増加に向けた取組については、入試広報の強化を図るなど指摘に対する取組が行われている。
 一方、年度計画に掲げる受託研究及び共同研究の件数の増加については、企業等からの申込みがしやすい仕組みになるように、受託研究取扱規程及び共同研究取扱規程の見直しを図るなどの取組を行っているものの、平成19年度から平成20年度にかけて件数が減少していることから、着実な対応が求められる。
 その他業務運営については、学生宿舎の改修、改善は大学の特性から大切な視点であり、今後、全国規模の学生募集を行うには、住環境の整備は不可欠であることから、着実な取組が期待される。
 教育研究の質の向上については、大学の特性を活かして「動ける日本人育成プロジェクト」の始動、ウェブジャーナル「スポーツパフォーマンス研究」の創刊、スポーツ関連企業との長期インターンシップ等の取組を行っている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  スポーツ・健康関係の社会人や競技スポーツ選手へのキャリアアップ教育のため、大学院体育学研究科修士課程(体育学専攻)に社会人向けのコースを開設して、ニーズの高い首都圏において実施することについて検討を行い、東京都にサテライト・キャンパスを設置し、平成21年10月からの学生受入れに向けて、準備に取り組んでいる。
  •  平成20年4月からグループ制を主体とした事務組織再編(6課・1室体制)、専門員及び専門職員職の廃止、副課長制の導入(課長補佐職の廃止)をスタートし、組織のフラット化による業務量の平準化及びスリム化による関連業務の集約化を図っている。
  •  「事務機能改革アクションプラン」に基づき、事務職員に対し業務の効率化等に関するアンケート調査を行い、一定の効果が確認できている。
  •  教員業績に係る評価結果を各教員に配分する教育研究経費の算定に活用していたが、平成20年度は、その活用の拡大について検討を行い、平成21年度から昇給及び勤勉手当への反映に活用することを決定している。今後、その着実な実施が期待される。
  •  男女共同参画を推進するため、「男女共同参画推進の基本方針」を制定し、男女共同参画としての取組方針を定めているほか、併せて、「男女共同参画推進室」を設置し、体制を整備している。

【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載22事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  研究成果の公開を積極的に推進し、知的財産を有効に活用するため、知的財産の管理・活用等の基本的方向性を定めた「知的財産ポリシー」を策定している。
  •  大学施設利用案内等を学外者が閲覧しやすいように見直しを行い、利用促進に努めた結果、学外利用者は57,340名(対前年度比7.9%増)、体育施設貸付料が105万8,000円となっている。
  •  平成19年度評価結果で評価委員会が課題として指摘した入学志願者獲得増加に向けた取組については、平成20年度は、例年は年1回の大学説明会を年2回に増やし、各地に出向いての大学説明は61件(対前年度比20件増)実施するなど、入試広報の強化を図っており、指摘に対する取組が行われている。なお、平成21年度入学者選抜においては体育学部及び体育学研究科ともに入学志願者倍率は対前年度比で増加している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「外部資金の受け入れや自己収入の増加策を実施し、受託研究、共同研究の件数の増加を目指す。」(実績報告書14頁・年度計画【26‐1】)については、企業等からの申込みをしやすい仕組みになるように、受託研究取扱規程及び共同研究取扱規程の見直しを図るなどの取組を行っているものの、平成19年度から平成20年度にかけて受託研究及び共同研究ともに件数が減少していることから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載10事項中9事項が「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  評価作業の効率化や作業負担の軽減については、検討段階であるため、今後、効率化等に向けた積極的な取組が期待される。
  •  同窓会との間で、「鹿屋体育大学卒業生等データの共同管理・利用に関する覚書」を交わし、それぞれが保有するデータを相互に利用することによって、卒業生や修了生等に対する様々な情報を提供する体制を整備している。
  •  平成19年度からスポーツ情報センターに導入された動画配信システムを活用し、スポーツ映像データベースを、ウェブサイトで公開しており、平成20年度はさらなるコンテンツ充実等に取り組んでいる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  エネルギー縮減計画及び地球温暖化対策に関する実施計画に基づき、グリーン購入や各種設備の省エネルギー機器への更新等、省エネルギー対策を積極的に推進した結果、温室効果ガス排出量は、対前年度比で3.93%減となっており、目標の4倍程度の削減が達成されている。
  •  教員の研究室の適切な配置のため、実験研究棟の教員研究室・助手控室・資料室等の配置・利用状況を調査した上で、助教のための研究室を再配分し、研究環境を確保している。
  •  学生宿舎の改修、改善は大学の特性から大切な視点であり、今後、全国規模の学生募集を行うには、住環境の整備は不可欠であることから、着実な取組が期待される。
  •  「ドーピングの防止等に関する指針」を制定し、これに基づき学生・教職員に対し、アンチドーピングに関する規程や取組の現状について講演会を開催するなど、正しい知識の習得に努めている。
  •  平成19年度評価結果で評価委員会が課題として指摘した、研究費不正使用防止のための取組については、学長の下、適正な公的研究費の管理・運営のため、新たに不正使用防止に向けた具体的措置を盛り込んだ「公的研究費の不正防止計画」を策定するとともに、「公的研究費使用の手引き」を作成し、学内外に周知しており、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  これまで試行的に取り組んできたスポーツ関連企業との長期インターンシップを「SCO‐OP実習」として、平成21年度から授業科目に位置付け、実施することを決定している。
  •  e‐Learningプログラム活動の一環として携帯型メディアプレイヤーにスポーツ指導に必要なコンテンツを収録し、学外スポーツ実習において、実習生がいつでも予習、復習ができるように環境整備を行っている。
  •  学生の競技力向上を図る目的のTASSプロジェクトにおいて、オリンピック特別強化支援を含む5件のプロジェクトに対し研究チームを構成し、支援を行った結果、各種大会において優秀な成績を上げている。
  •  「学生生活の手引き」、「指導教員の手引き」に基づく、支援の周知徹底に加え、心理相談員の配置を行うなど、学生支援の充実を図っている。
  •  スポーツ技術・指導等に関する研究成果を積極的に公開するため、平成21年度からスポーツ実践やコーチング実践、運動実践に関する経験知やアイデアを、動画や音声を交えた論文としてウェブサイト上に集積する「スポーツパフォーマンス研究」の創刊に向けて取り組んでいる。
  •  健康づくりへの具体的方策を運動指導や筋力トレーニングの観点からわかりやすく解説し、普及させていくことを目的とした「動ける日本人育成プロジェクト(貯筋プログラム)」を開始している。
  •  NIFSスポーツクラブ(4種目、16事業、会員350名)をはじめ、スポーツボランティアを積極的に展開し、地域社会に貢献している。
  •  「武道の<心>を伝え育む‐『礼法』再考」をテーマに、「国際武道シンポジウム」を開催し、国内外から柔道・剣道の指導者や武道研究者、学生及び一般市民等の参加を得て実施している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --