国立大学法人鹿児島大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 鹿児島大学は、学生、教職員が地域社会と一体となった学術文化の向上、自由と自主の尊重、人類福祉への奉仕、世界平和の維持及び地球環境の保全という地球規模での新しい豊かさの実現に努め、世界を先導する総合学術共同体としての大学を目指した取組を行っている。
 業務運営については、留学生を対象とした奨学金の推薦手続きで、推薦希望者データベースを利用した登録制としたことにより、電算化による事務の簡素化と効率化に加え、留学生には煩雑な申請手続が解消され負担軽減となっている。また、情報の一元管理と共有をコンセプトに、「鹿児島大学における業務システムの構築指針」を示し、「ワンライティング(重複入力の回避)」、「ワンストップサービス(同一端末による多様な事務処理)」を基本とするなど、情報処理における業務の効率化を図っている。
 一方、男女共同参画推進について、育児休業等の取組は行っているものの、育児支援以外の具体的な行動計画や推進体制が整備されておらず、環境醸成等を図る取組も著しく乏しいことから、着実な対応が求められる。
 財務内容については、株式会社鹿児島TLOを積極的に活用し、同社を管理法人とした競争的資金の獲得の取組を推進した結果、6件の競争的資金を獲得している。
 一方、光熱水料、消耗品等の経費節減については、燃料費単価の変動分を除いても経費削減には至っていないことから、削減に向けた取組が求められる。
 施設設備については、農学部附属動物病院では、社団法人日本軽種馬協会より、西日本における中心的な軽種馬診療施設として、国立大学唯一の軽種馬診療センター整備のため建物や設備等の現物寄附を受け、軽種馬獣医師の卒後教育と後継者育成の体制を整備している。
 教育研究の質の向上については、 鹿児島県内すべての大学、短大、高等専門学校、放送大学及び地方公共団体等が加盟し、大学地域コンソーシアム鹿児島を設立している。コンソーシアムでは、「単位互換」「職員研修」「教員免許状更新講習」「産学官連携」等の部会を設置し連携体制を整備している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  目的積立金を教育研究の整備に重点的に投入することを基本方針とした、「目的積立金の使用に関する申し合わせ」を策定し、教育施設・設備、学生の福利厚生施設、情報基盤の整備等を中心に行うこととし、法規制対応、教育関連設備の老朽化への対応、教育研究支援体制の充実等の事業27件に総額11億8,467万円を予算措置している。
  •  留学生対象の奨学金の推薦手続きについては、データベースを利用したことにより、電算化による事務の簡素化と効率化に加え、留学生の申請手続きの負担軽減にもなっている。また、データベース化により成績照合が迅速に行えることから、推薦基準が本人の成績重視となり、留学生の不満も解消している。
  •  情報の一元管理と共有をコンセプトに、「鹿児島大学における業務システムの構築指針」を示し、「ワンライティング(重複入力の回避)」、「ワンストップサービス(同一端末による多様な事務処理)」を基本とするなど、情報処理における業務の効率化を図っている。
  •  経営協議会の学外委員からの、意見を踏まえ、これらの意見を鹿児島青年会議所、垂水市、地元金融機関と連携協定締結や広報室の改組・機能強化に活用している。
  •  監事から裁判員制度の実施に伴う学内諸規則等の整備と埋蔵文化財調査室の業務に関する所見を受け、職員の勤務時間、休日、休暇等に関する規則等の改正や学生が裁判員に選任された場合等における「授業欠席」の取扱いを整備するとともに、埋蔵文化財調査室業務についても、複数年計画による予算措置を行っている。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  男女共同参画の推進について、育児休業等の取組は行っているものの、育児支援以外の具体的な行動計画や推進体制が整備されておらず、環境醸成を図る取組も著しく乏しいことから、今後、積極的な取組が求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載24事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、男女共同参画の推進に向けた積極的な取組が求められること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  科学研究費補助金に関する公募説明会を開催するとともに、未申請者の理由を調査し、申請が可能な者については部局長を通じて公募申請を促した結果、採択件数は332件(対前年度比28件増)、採択金額は6億3,520万円(対前年度比2,110万円増)となっている。
  •  株式会社鹿児島TLOを積極的に活用し、同社を管理法人とした競争的資金の獲得の取組を推進した結果、6件(総額2,645万円)の競争的資金を獲得している。
  •  学内施設の維持管理の適正な運用を図るため、広報誌(鹿大ジャーナル)や大学ウェブサイトに学内施設利用案内を掲載し、学外者の利用促進を図った結果、講義室や会議室の利用実績(一時貸付分)は、285 件(対前年比45 件増)、1,373 万円(同107 万円増)となっている。また、固定資産貸付料算定基準を見直した結果、年間貸付料が約10万円増、さらに、不動産の無償貸付について有償化の見直し検討を行い、平成21 年1月から病院施設等について有償化したことにより新たに187 万円の収入増となっている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「光熱水料、消耗品等の『経費の節減・合理化に関する計画書』に基づき、引き続き経常経費の削減に努める」(実績報告書22頁・年度計画【279】)について、燃料費単価の変動分を除いても経費削減に至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載14事項中13事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  中期目標期間の評価業務において、評価書の効率的な作成のため、ウェブサイト公開機能付簡易データベースソフトや学内総合掲示板を使用することにより、評価業務に携わる意見をリアルタイムに収集・確認することができ、業務の効率化につながっている。
  •  生涯メールアドレスサービスを開始し、平成19年度の卒業生・修了生から、大学のトピックスや各種案内等を提供するメールマガジンの配信を開始している。
  •  情報発信及び交流拠点であるインフォメーションセンターにおいて、大学ブランド焼酎の販売や教育学部附属特別支援学校生徒製作作品の販売・展示の開始のほか、農学部附属農場の生産物の販売の充実を図ったことなどにより、来館者が増加している。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、外部評価実施要項に基づく外部評価組織を創設するには至っていなかったことについては、平成20年に外部評価委員会を5回開催し、外部有識者の意見等を次期中期目標・中期計画に反映するなど指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  平成15年度作成のキャンパスマスタープランの見直しを行い、新たに「キャンパスマスタープラン2008」を策定している。これに基づき、法文学部校舎及び附属中学校校舎の耐震対策と老朽化対策・機能改善を実施し、安全安心で良好な教育研究環境の改善を実施している。
  •  農学部附属動物病院では、社団法人日本軽種馬協会より、西日本における中心的な軽種馬診療施設として、国立大学唯一の軽種馬診療センター整備のため建物や設備など約3億790万円相当の現物寄附を受け、軽種馬獣医師の卒後教育と後継者育成の体制を整備している。
  •  省エネルギー対策では、附属病院において平成20年4月からESCO(Energy Service Company )事業が本格稼働し、エネルギー消費量で約23,300GJ、CO2排出量で約2,500tの省エネルギー効果が現れている。
  •  郡元地区において、管轄消防署と連携し、教職員及び学生を対象とした防災訓練を150名が参加して実施している。また、併せてAED・心肺蘇生法・応急処置に関する講習会を実施するなど、防災・安全管理の取組を推進している。
  •  毒劇薬等を含む薬品を、適正に一元管理するために、「薬品管理システム」を導入し、平成21年4月からの本格稼働に向けて、試行を実施している。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  文部科学省が公表した「農薬の使用状況等に関する調査の結果」において、特定毒物を所持していたにもかかわらず、特定毒物研究者の許可を受けていなかったことから、引き続き再発防止に向けた取組が求められる。
  •  歯学部における卒業判定ミスが発生していることから、今後、再発防止に向けた全学的な取組が求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載19事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、特定毒物研究者の許可を受けていなかったこと、歯学部における卒業判定ミスが発生していること等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  鹿児島県内12の大学・短大・高専と連携してそれぞれの大学に「かごしまカレッジ教育」を新設するとともに、共同で体験型科目「かごしま教養プログラム」「かごしまフィールドスクール」(ともに300名の履修)の2科目を創設するなど、共通教育の質の向上を図っている。
  •  教育センターでは、「教養教育オープンクラス」を実施し、前期の共通教育の全科目の授業を公開し、授業参観を行い、参加者からの参観レポートを担当教員にフィードバックしている。
  •  共通教育では、人間力を育成する稲盛アカデミーの充実やボランティア科目の実施等の現場体験型カリキュラムの推進等、特色ある取組を行っている。
  •  鹿児島県内すべての大学、短大、高等専門学校、放送大学及び地方公共団体等が加盟し、大学地域コンソーシアム鹿児島を設立している。コンソーシアムでは、「単位互換」「職員研修」「教員免許状更新講習」「産学官連携」等の部会を設置し連携体制を整備している。
  •  就職支援センター、教職支援室、ボランティア支援センターなどを設置し学生のニーズにきめ細かく対応できる体制を整えている。
  •  大学が推進する「大地、食、医療、環境」等の研究について、博士後期課程を有する大学院研究科が計画した大学独自の拠点形成事業として、人文系、理工系、農水系、医歯系で6事業を選定し、学長裁量経費により総額1,607万円の支援を行い、次期中期目標期間に向けた新たな取組を開始している。
  •  40歳以下の若手教員84名に対し、研究論文掲載実績を基準に748万円の研究活動を支援し、研究活動の活性化を図っている。
  •  全学横断プロジェクト研究として、地球環境から自然保護にわたる広汎な環境問題を体系的に整理し、具体的な提言を目指すことを目的に「鹿児島環境学」プロジェクトを開始している。プロジェクトでは、公開シンポジウムを開催し、鹿児島の環境について様々な角度から検証を行っている。
  •  地元金融機関と連携協定を締結し「農業経営管理システム(アグリクラスター)の共同開発」など、「産学官金連携」のモデル構築が進められている。
  •  フィリピン大学ビサヤス校と微生物による環境浄化技術の共同研究を開始している。
  •  鹿児島県内企業と焼酎廃液含有コンクリートの有効利用に関する共同研究を行うなど、地域資源循環型社会の構築に向けた研究を推進している。
  •  法文学部、大学院人文社会科学研究科、大学院連合農学研究科では、島嶼研究の拠点形成のため、木浦大学(韓国)、済州大学(韓国)、琉球大学と事前調査事業を行っている。
  •  附属小学校では、二学期制試行の準備、重点指導事項の自校化等、平成21年度の実施に向けた取組を行っている。附属中学校においても、各種学校行事、授業時数、各教科・道徳・特別活動・総合的な学習の時間の学習内容・会合等の見直しを図り、平成21年度からの二学期制に対応する教育課程の編成を行っている。

附属病院関係

  •  卒前教育から、臨床実習、シミュレータ教育、離島実習の義務化(6年次学生90名実施)、離島へき地医療の体験等、総合的・全人的教育に取り組んでいる。また、霧島リハビリテーションセンターでは、工学部と「免荷付き機能的振動刺激装置」を共同開発し、脳卒中による片まひ患者の上肢のリハビリ訓練に効果を上げている。診療では、がん診療連携拠点病院として、県と地域拠点病院との情報交換を行い、緩和ケア研修会を開催するなど、診療連携の充実を図っている。
     今後、卒前・卒後の多彩なプログラムによる臨床教育を活かしながら、高度診療を担える医療人の確保に向けたさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  先進医療を積極的に推進して、「早期胃ガンに対する腹腔鏡下センチネルリンパ節検索」が先進医療として認定されている。
  •  新たな診断法や治療開発等のために積極的に臨床研究を推進した結果、189件の臨床研究が承認され、前年度より63件増加させている。
(診療面)
  •  患者満足度調査を実施し、医療サービス委員会において、職員の対応、待ち時間、施設・設備面、食事の視点に区分し、病院敷地内の全面禁煙、患者用駐車場の設置等、患者サービスと病院アメニティの向上を図っている。
  •  病院長と若手教員から構成される病院経営諮問会議ワーキンググループを設置し、診療現場の業務分析、病棟クラークの導入等、医師の業務軽減と効率化を図っている。
(運営面)
  •  職員の仕事と子育ての両立を支援するために、基本保育、短期保育、終夜保育のほか、看護部の支援を得て病後児保育や緊急時における病院との連携を確保した「さくらっこ保育園」を病院敷地内に設置している。
  •  鹿児島市内の中学生を対象に「キッズ外科手術体験セミナー」を開催し、大学病院への親しみや医療への理解を深めてもらう取組を行っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --