国立大学法人宮崎大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 宮崎大学は、市民社会の担い手として、高度で普遍的な教養に支えられ、豊かな人間性を持ち、専門職業人として必要な知識・能力を有する人材の育成、また、実践力のある人材を育成するとともに、大学を地域における研究拠点として、他の研究機関等との連携も強化して研究を推進し、教育・研究の知的資産を広く社会に発信し、地域の生活、文化、産業、医療等の発展に積極的な役割を果たすこと等を目標として教育研究を行っている。
 業務運営については、事務系職員の人事評価を本格実施し、評価結果を勤勉手当等に反映しており評価できる。また、教員人事に関する手続き等を点検し、大学全体の将来構想を見込んだ教員配置が可能となるよう、共通教育部、各学部及び研究科の教員配置等に関することを全学的に協議する機関を教育研究評議会とする「教員人事に関する手続き」を定め、学長を中心に的確かつ機動的、弾力的に行える体制に強化している。
 財務内容については、若手研究者の科学研究費補助金採択増を目指して、科学研究費補助金申請に関する相談員を設置している。
 教育研究の質の向上については、 専門教育では、特に、自然や社会等の現場(フィールド)で実地に学ぶ科目を整備し、実践力の涵養に努めている。また、大学、学部において重点的に実施する研究課題や特徴ある研究課題には、戦略重点経費を配分し、研究を推進している。平成20年度は、戦略的重点経費として「太陽光発電研究プロジェクト」等75件に約2億6,000万円を配分しており、今後の成果が期待される。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  事務系職員の人事評価については、事務職員等人事評価実施規程を制定し、人事評価を本格実施し、平成20年12月の勤勉手当並びに平成21年1月の昇給に反映しており評価できる。
  •  教員人事に関する手続き等を点検し、大学全体の将来構想を見込んだ教員配置が可能となるよう、共通教育部、各学部及び研究科の教員配置等に関することを全学的に協議する機関を教育研究評議会とする「教員人事に関する手続き」を定め、学長を中心に的確かつ機動的、弾力的に行える体制に強化している。
  •  従来の就職支援に加えて、1年次からキャリア教育を強化するため、「就職戦略室」を廃止し、「キャリア支援室」を新たに設置している。
  •  平成19年度に設置した情報支援センターの機能を強化するため、学長管理定員により、技術系職員を増員し、サーバ等の基盤的なサービスについて、事故等による停止等からの迅速な復旧を図ることができる体制を構築している。
  •  清武キャンパスに「清花Athenaサポート室」を設置し、育児・介護相談の専門スタッフが常駐し、女性教職員の仕事と家庭の両立について支援を開始している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある

(理由) 年度計画の記載28事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるほか、事務系職員の人事評価を本格実施し、処遇に反映する取組を実施していること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  若手研究者の科学研究費補助金採択増を目指して、科学研究費補助金申請に関する相談員を設置している。また、科学研究費補助金を獲得した教員に対するインセンティブを平成21年度から採択金額の1%から5%に増額することとしている。
  •  資金運用計画に基づき、対前年度比約650万円の増収となっており、教育研究及び管理運営の充実のために活用している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる 

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教員個人評価関連業務の負担軽減、大学情報データベースの入力率向上のために、全学共通の評価項目を定め、「教員個人評価のための自己申告書」の様式を策定している。また、自己申告書を各教員が簡易操作により帳票出力できるように大学情報データベースの改修を行っている。
  •  「宮崎大学における広報戦略」を策定するとともに、秘書広報室を設置し、広報窓口の一元化を図り、効果的で実効性の高い広報活動を推進している。
  •  地域一般の人々を対象とした広報誌「宮崎大学MAGAZINE」(年4回発行予定)を新規に発刊し、地域に密着した広報活動内容の充実を図っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  「宮崎大学キャンパスマスタープラン」のダイジェスト版を作成してウェブサイトに掲載するとともに、キャンパスマスタープランに基づき、着実に施設整備を実施している。
  •  施設マネジメント委員会の環境対策ワーキンググループの下で、環境対策等について自己点検・評価を行い、さらに第三者審査機関による外部評価を受審している。自己点検・評価結果に加え、外部評価及び学生アンケ‐ト調査結果を「環境報告書2008」としてまとめ公表している。
  •  各学部等の施設の稼働率調査及び整備状況の実態調査に基づき、教育文化学部から拠出された共用スペース等の利用について検討し、女性研究者支援や教職大学院等のため、利用することとしている。
  •  危険な作業に必要な各種作業主任者を安全衛生保健管理室に届け出ることとし、退職等による有資格者の不在や選任漏れ等をなくすシステムとしている。また、木花及び清武キャンパスで使用されている薬品を調査し、危険な薬品に対する防毒マスク等を安全衛生保健センター(木花)及び分室(清武)に備え付け、安全衛生対策を推進している。
  •  「防災マニュアル(自然災害編)」をウェブサイトに掲載して教職員に周知徹底を図るとともに、備蓄品についても5か年整備計画に沿った段階的整備を行っている。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、大学が設定したエネルギー削減目標(対前年度比1%減)が一部達成できていなかったことについては、センサー付き照明の整備、部局巡回点検等によりエネルギー削減目標を達成(1.1%削減)しており、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載13事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  専門教育では、特に、自然や社会等の現場(フィールド)で実地に学ぶ科目を整備し、実践力の涵養に努めている。
  •  平成20年度から、公募卒論・修論のうちから優秀なものを選出し、学長賞(最優秀口頭発表:6名中1名)及び教育研究・地域連携センター長賞(優秀ポスター発表:14名中1名)を授与している。
  •  国際的に活躍できる専門職業人育成を目指し、英語コミュニケーション能力育成のため、学士課程一貫の英語教育システムの開発を進めるとともに、それを活かした英語教育の改善に着手している。
  •  大学院医学系研究科は、博士課程を再編し、博士課程担当の教員がすべての学生の指導・教育に積極的に参画できる体制としている。また、「研究者育成コース」と「高度臨床医育成コース」を設定し、医学の発展と社会の福祉の向上に寄与する人材の育成を目指すこととしている。
  •  「複視眼的視野を持つ国際医療人の養成」プログラムを推進し、臨床の場で自信を持って英語が使えるよう、単位数を増加させるとともに授業内容を改善している。
  •  心理相談について、「なやみと心の相談室」と連携して、カウンセラーが個別に指導助言を行っている。
  •  就職率アップのための就職支援にとどまらず、学生の将来設計、職業観の涵養などを目的としたキャリア支援体制の確立を図るため、「就職戦略室」を発展的に解消し、新たに「キャリア支援室」を設置し、学生支援体制の充実を図っている。
  •  大学、学部において重点的に実施する研究課題や特徴ある研究課題には、戦略重点経費を配分し、研究を推進している。平成20年度は、戦略的重点経費として「太陽光発電研究プロジェクト」等75件に約2億6,000万円を配分し支援している。
  •  研究環境の整備や意識改革等、女性研究者が研究と出産・育児等を両立し、その能力を十分に発揮しつつ研究活動を行える仕組みの導入を進めている。
  •  大学研究委員会の下に「研究企画・推進チーム」を設置し、「宮崎大学における研究戦略」の見直しを開始している。
  •  教育研究・地域連携センターの下に公開講座に関するワーキンググループを設置して全学的推進体制を整備し、「シニア・ライフプラン・セミナー」等20の公開講座を実施している。
  •  知的財産に基づく産学官連携等を図るため、学長管理定員を活用して産学連携センター知的財産部門に教授1名を配置するなど知的財産活動体制を強化している。
  •  国の緊急医師確保対策に基づき募集人員5名の特別選抜(地域特別枠推薦)を設けている。

附属病院関係

  •  大学病院連携型高度医療人養成推進事業(中九州三大学病院合同専門医養成プログラム)を実施し、医療人養成に向けた教育体制整備の充実を図っている。また、悪性黒色腫におけるセンチネルリンパ節の同定と転移の検索等の先進医療4件が認定され、高度な医療を提供する医療環境が整備されている。診療では、外来化学療法室を6床に増床するなど、院内のがん診療体制の強化と、県内のがん登録の標準化に向けた作業を開始している。
     今後、病院再開発整備を進めている中で、集中治療室(ICU)の増床、救命救急センターの設置の検討等、急性期疾患の充実を図るとともに、地域医療に貢献できる医療人養成の確立に向けたさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  各診療科、部門が実施している教育研修において、必要性の高い研修に対して予算的支援を行っている。
  •  臨床試験や臨床研究の円滑な実施のため、治験コーディネーター(CRC)を1名増員している。
(診療面)
  •  助産師が主体となってケアを提供する「助産師外来」、女性が容易に受診できるよう「女性外来」を開設し、患者サービスの充実に努めている。
  •  宮崎県の医療計画を踏まえて、救命救急センターの設置を視野に助教3名を配置し、救急部内の診療体制の強化を図っている。
  •  放射線医療機器(放射線治療装置2台、コンピュータ断層診断装置(CT)2台)や磁気共鳴画像装置(MRI)2台を活用して、自院の患者需要に対応するとともに、地域医療機関にも先端医療を広く提供している。(ポジトロン断層・コンピュータ断層複合撮影装置(PET‐CT)共同利用率28.7%)
(運営面)
  •  国立大学管理会計システム(HOMAS)を用いて、部門別原価計算及び患者別原価計算を行い、収支分析等を検証している。
  •  外部評価では、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価Ver5.0が認定されている。
  •  病床稼働率の維持(90%以上)、平均在院日数の短縮(22日以下)を目指した結果、病床稼働率92.6%、平均在院日数21.1日となり目標を達成している。 

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --