国立大学法人長崎大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 長崎大学は、「長崎に根付く伝統的文化を継承しつつ、豊かな心を育み、地球の平和を支える科学を創造することによって、社会の調和的発展に貢献する」ことを宣言し、学生顧客主義と国際的な学生交流の促進等を教育目標とし教育研究を行っている。
 業務運営については、就業情報管理システム導入により、出勤簿及び休暇簿を廃止するなど服務関係の業務を簡素化している。
 一方、年度計画に掲げている大学院生産科学研究科の専攻の再編等について、基礎学部の改革・改組との連動等の検討が必要であり、成案を得るまでには至っていないことから、さらなる取組が求められる。
 財務内容については、契約内容の公表に関する基準の見直しを行い、500万円以上の随意契約に加えて、一般競争契約についてもウェブサイトに掲載して公表を行っている。
 自己点検・評価及び情報公開については、企画展「熱帯感染症と『たたかう』長崎大学」を国立科学博物館において開催し、熱帯医学研究所における熱帯感染症への取組を中心に紹介している。
 その他業務運営については、学生の海外留学、海外研修、国際ボランティア活動の増加に伴う危機管理対策の一環として、危機管理対策の検証及び危機管理に対する職員の意識向上を目的に「海外緊急事故対策シミュレーション」を実施している。
 教育研究の質の向上については、 学生の修学、生活、心等の問題を相談できる「学生何でも相談室」の相談体制の整備を行っている。また、ライデン大学(オランダ)及び上海海洋大学(中国)に学術交流・教育交流促進のために国際交流室を設置している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  大学運営組織を見直し、従前の戦略企画会議を大学の運営本部的機能を有する「学長・副学長会議」に再編している。
  •  教員研究組織について、大学院国際健康開発研究科設置、大学院教育学研究科教職実践専攻及び教科実践専攻設置、教育学部の教員養成学部への特化、保健管理センターを改組して4部門からなる保健・医療推進センター設置等、教育研究の進展や社会的要請に対応した組織の見直しを行っている。
  •  就業情報管理システム導入により、出勤簿及び休暇簿を廃止するなど服務関係の業務を簡素化している。
  •  男女共同参画を担当する副学長を設置し、推進のための組織を設置するなど、男女共同参画推進に向けた取組が行われている。
  •  事務系職員の評価システムの成案が得られ、評価結果をインセンティブへ反映するための基準等の整備に向けて検討を進めており、評価結果を給与等の処遇へ反映させることが期待される。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、学内共同教育研究施設等の再編・統合に伴い、支援事務組織の再編成には至っていなかったことについては、平成20年7月に情報メディア基盤センター事務室を学術情報部情報企画課に、共同研究交流センター3部門の事務を研究国際部研究企画課に統合しており、指摘に対する取組が行われている。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「生産科学研究科の専攻の再編、博士前期・後期課程入学定員の見直し等について成案を得る」(実績報告書9頁・年度計画【15‐4】)については、特色となる教育研究組織の創生、基礎学部の改革・改組との連動等のさらなる検討が必要な状況であり、成案を得るまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載38事項中37事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  株式会社長崎TLOと協働して、シーズ・ニーズ情報の共有化を図るとともに技術分野別に役割分担を進め、シーズ発掘から技術移転活動への機動力を向上させた上で運用活動に重点を置いた結果、ライセンス契約数は17件(対前年度比3件増)、契約料は4,671万円(対前年度比3,773万円増)となっている。
  •  契約内容の公表に関する基準の見直しを行い、500万円以上の随意契約に加えて、一般競争契約についてもウェブサイトに掲載して公表を行っている。
  •  外部への施設貸出しについて、貸出可能施設の拡充、ウェブサイトによる情報提供の充実、他機関のウェブサイトへのリンク等を行った結果、施設貸出収入は3,930万円(対前年度比1,560万円増)となっている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載21事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  研究者とその教育研究活動に関する情報を広く社会に紹介するため、長崎大学評価基礎データベースを活用して「長崎大学研究者総覧データベース」を構築し、ウェブサイトのトップページに専用バナーを設けて公開するとともに、長崎大学学術研究成果リポジトリ(NAOSITE)とデータ連携を行っている。
  •  企画展「熱帯感染症と『たたかう』長崎大学」を国立科学博物館において開催し、熱帯医学研究所における熱帯感染症への取組を中心に、平成20年度にノーベル化学賞を受賞した下村脩名誉博士の功績や西洋医学150年の歩み、所蔵する古写真コレクション、放射線医学に関する資料等を展示、紹介している。
  •  大学が有する貴重な資料の電子化を継続し、「長崎学デジタルアーカイブス」に追加して公開している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載13事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  「老朽化改善」、「アメニティ改善」、「教育研究環境改善」の3つの視点により作成した施設の維持管理計画に基づき、約4億1,700万円(対前年度比7,400万円増)の営繕工事(講義室等空気調和設備改修、便所改修、建具改修、課外活動施設改修等)を実施している。
  •  環境委員会において「長崎大学地球温暖化対策に関する実施計画」を制定し、地球温暖化対策の取組を推進するとともに、前年度に引き続き、ウェブサイトや「環境報告書2007」での総エネルギー投入量、CO2排出量等の公開等の取組を続行している。
  •  新型インフルエンザ対策委員会を設置し、新型インフルエンザに関する危機管理体制を構築するとともに、「長崎大学における新型インフルエンザの予防及び対応に関する指針」を策定し、ウェブサイトに掲載するとともに、通知文書、電子メール等により各部局、全構成員等への周知を行っている。
  •  教職員及び学生の有志による周辺道路やキャンパスの早朝清掃を定期的に行い、構内環境美化を推進している。
  •  学生の海外留学、海外研修、国際ボランティア活動の増加に伴う危機管理対策の一環として、危機管理対策の検証及び危機管理に対する職員の意識向上を目的に「海外緊急事故対策シミュレーション」を実施している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載23事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  大学の理念に沿った学士課程を充実させ、社会に貢献することができるよう全学教育(教養教育)の在り方について総合的な見直しを行うため、学長室の下に学外委員を加えた全学教育検討ワーキンググループを設置し、検討を開始している。
  •  教育指導支援システムに教員ポートフォリオ作成機能を追加し、シラバス、授業評価結果、授業実施報告書、ファカルティ・ディベロップメント(FD)受講歴等の教員の教育記録を集約できるシステムを構築している。
  •  国際協力の現場で即戦力となる人材を育成するために、大学院国際健康開発研究科では、1年次生全員を対象にネイティブによる補習授業「国際保健コミュニケーション」を約7か月実施している。
  •  学生の修学、生活、心等の問題を相談できる「学生何でも相談室」の相談体制の整備を行っている。
  •  地域社会を活性化するため、長崎県新産業創造構想に設定された新エネルギー・環境、創薬・医工連携、水工・農工連携の研究分野におけるそれぞれのワーキンググループに参画するとともに、医工連携研究を推進するため、「長崎大学医工連携研究推進ラボ」を開設している。
  •  長崎市が行う地域活性化人材育成事業に参画し、「三次元金型ソフト」、「環境分析人材育成」に、又、長崎県が行う産学官連携人材育成事業に参画し、「組み込みソフト人材育成」に取り組んでいる。
  •  大学院博士・博士後期課程の学生に、主体的に研究課題等に取り組む機会を与え、必要な資金を支給する研究奨励金制度を開始している。
  •  「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」にあっては、海外拠点としてミンスク(ベラルーシ)に「チェルノブイリ分子疫学調査研究プロジェクト拠点」を設置し、世界的レベルの研究と国際共同研究を推進している。
  •  ライデン大学(オランダ)及び上海海洋大学(中国)に学術交流・教育交流促進のために国際交流室を設置している。
  •  附属中学校では、基礎的・基本的な内容を重視し、個性を生かした学習指導を行うとともに、一人一人に応じた適切で迅速な生徒指導を行うため、学級数及び学級定員の見直しを行い、学級数の減(5クラス→4クラス)及び学級定員の減(40名→35名)を決定し、平成21年度入試から入学定員を140名(60名減)とした。

全国共同利用関係

  •  全国共同利用の附置研究所である熱帯医学研究所では、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。平成20年度は、海外教育研究拠点と熱帯医学研究所の一体性と相補性を強化し、現地と研究所双方に跨る共同研究の円滑な推進を図るため、研究所の組織を見直し、アジア・アフリカ感染症研究施設を設置している。

附属病院関係

  •  へき地病院再生支援・教育機構と連携、文部科学省事業「地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム」事業を独自に継続し、離島及びへき地における医療の支援を行っている。また、国際ヒバクシャ医療協力及び国際共同研究を推進するために、在外被爆者の健康相談、被爆者国際データベース構築、被ばく医療研修生の受入れ等を行っている。診療では、肺移植や放射線障害による難治性皮膚潰瘍に対する自家脂肪由来幹細胞移植等、最先端の医療提供を行っている。
     今後、引き続き、へき地・離島医療等の地域に根ざした医療人の養成に取り組むとともに、地域医療機関とも連携を図りながら、高度急性期の中核病院としてさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  大学病院連携型高度医療人養成推進事業(出島発、肥前の国専門医養成プログラム)を実施し、キャリア支援室の設置、5名の教員採用等、西九州地区への専門医定着を目指す取組を行っている。
  •  研修医及び修練医確保策として、民間の住宅(マンション)を借り上げ、研修医等に貸与する契約を締結するとともに、県内5病院と連携して、研修医募集にかかる合同説明会・ブース説明会等を開催している。
(診療面)
  •  新病棟の開院に併せて、脳卒中集中治療室(SCU)及び新生児集中治療室(NICU)6床を新設、集中治療室(ICU)を増設、地域周産期母子医療センターの認定を受けるなど、診療体制の基盤強化を図り、高度な医療を提供できる体制を整備している。
(運営面)
  •  教員のモチベーション向上のため、診療稼働額を伸ばした診療科に対して、インセンティブとして有期雇用教員を新たに配置する方法を導入している。
  •  IT医療情報ネットワーク(あじさいネット)に参画し、地域医療機関との連携・機能の分担強化を図ることで在院日数を短縮し、平均入院診療単価の上昇につなげている。
  •  SPD(包括的物流管理システム)の導入で診療材料の適正在庫管理により、医療材料費を削減している。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --