国立大学法人九州工業大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 九州工業大学は、世界をリードする高度技術者の養成を基本的な目標とし、教育・研究の高度化を図り、今後も世界に向けての「知と文化の情報発信拠点」であり続けるとともに、「知の源泉」として地域社会の要請に応え、次世代産業の創出・育成に貢献する、個性豊かな工学系大学を目指し教育研究を行っている。
 業務運営については、教育研究組織の弾力化と教育研究機能の強化のため学部講座制を改め、教育組織として工学部、情報工学部、大学院工学府、情報工学府を、研究組織として大学院工学研究院(7研究系)、情報工学研究院(7研究系)に改編している。 また、平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、大学院博士後期課程における学生収容定員の未充足については、定員の充足や入学定員の適正化に努めている。
 財務内容については、外部資金獲得に向けた取組を推進し、外部資金比率は14.2%(対前年度比0.5%増)となっている。
 その他業務運営については、平成18年度に構築したスペース管理システムにおいて、スペースの利用状況をウェブサイトにより、利用者がリアルタイムで把握できるようにするなどの改善を継続して行っており、教育・研究スペースの有効活用が図られている。
 教育研究の質の向上については、地域性を活かした北部九州の基幹産業である自動車産業からのニーズに応え、カーエレクトロニクス領域における広い視野と見識を備えた高度専門人材を育成するため、他大学との協力により事業を行っているほか、大分県との連携事業として、大分県立工科短期大学校の学生を受け入れた実習講座を開催するなど地域に根ざした特色ある教育を展開している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学部講座制を改め、教育組織として工学部、情報工学部、大学院工学府、情報工学府を、研究組織として大学院工学研究院(7研究系)、情報工学研究院(7研究系)に改編し、教育研究組織の弾力化と教育研究機能の強化を図っている。
  •  教育職員評価について、実施基準等の改善策について大学評価委員会で検討し、総合評価の段階数を4段階から、5段階に変更することとし、前回の評価結果の統計データを活用して各段階の点数範囲の見直しを行い、引き続き、評価結果を昇給等の処遇に反映することとしている。
  •  男女共同参画の推進に向けて、若手研究者講演会「未来を切り拓く女性科学者たち」の開催、学内アンケートの実施、理工系大学を目指す女子高生に対する応援紙面として新聞広告の掲載等を行っている。
  •  事務の効率化等の観点から、従来、会計課、人事課を通じて行っていた給与、共済、旅費等の業務を人事課に一元化し、運営組織のスリム化、効率化に取り組んでいる。
  •  平成19年度評価結果で評価委員会が課題として指摘した、大学院博士後期課程における学生収容定員の未充足については、入学定員の見直し等により学生収容定員充足率が93%となっており、適正化に努めている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載23事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  創立100周年を期に寄附金活動を精力的に行ったほか、科学研究費補助金等の申請の促進を推進した結果、外部資金収入が対平成19年度比42.8%増加し、外部資金比率は14.2%(対前年度比0.5%増)となっている。
  •  高効率の変圧器、省エネルギー機器の導入、エコガラスへの取替等を実施するとともに、集約管理による冷蔵庫台数の削減を図るなど、光熱水費の削減に向けた取組を推進した結果、対平成19年度比の使用量は、電気0.9%、ガス13.9%及び上下水道7.4%の減となっている。
  •  学内施設について積極的なPRを行い、有料貸出を推進するとともに、学内保有機器についても利用者講習会を実施するなど、その有効活用を推進した結果、施設等利用料は605万9,000円(対前年度比93万7,000円増)となっている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教育職員評価の作業を効率的に進めるため、「教育職員評価シート」を利用して評価を行う「教育職員評価システム」を稼働させているとともに、利便性の向上のため、システムの改良を行っている。
  •  従来からの広報活動に加えて、ミスタートルネード記念講演会の開催、「九工大世界トップ技術Vol.2」の発刊等の広報PR活動を行っている。 
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載3事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  平成18年度に構築したスペース管理システムにおいて、スペースの利用状況をウェブサイトにより、利用者がリアルタイムで把握できるようにするなどの改善を継続して行っており、教育・研究スペースの有効活用が図られている。
  •  年度計画に掲げている研究用共用スペースの効率的活用と利用の流動化に関して、平成20年度においては戸畑キャンパスの大規模改修や耐震改修等やむを得ない事情により、研究用共用スペースが減少していることから、今後、着実な取組が期待される。
  •  学生寮の旧食堂をものつくり工房に改修し、学生のグループ創造学習の支援を行うとともに、教育研究3号棟及び8号棟の改修工事において、学生のためのワークスペース・学生室・リフレッシュルーム等の整備や車いす、身障者用のトイレ等の整備を行っている。
  •  戸畑キャンパスの衛生管理者が若松キャンパスの職場を巡視し、一方で若松キャンパスの衛生管理者が戸畑キャンパスを巡視する交差巡視を行うことにより、他のキャンパスにおける職場環境を確認し、在籍するキャンパスの安全環境向上を図っている。
  •  学内で電力オーバーに近づくと、警報通知メールが通知される仕組みにより、契約電力の厳守、使用量の削減を図っており、全学的な省エネルギーへの取組として効果を上げている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載22事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  全学的に学部・大学院連携教育体制を確立するため、情報工学部において平成18年度から実施していた学部3年次以上の大学院入門科目の履修制度に加え、工学部においても、学部4年次学生の成績優秀者に限り大学院入門科目の履修を認める制度を導入している。
  •  情報工学部で開発した電子ポートフォリオ・システム「学修自己評価システム」を、平成21年度から全学部学生に対して実施することとしている。
  •  北部九州地域の基幹産業である自動車産業からのニーズに応え、北九州市立大学及び早稲田大学との大学間連携の実績を基盤に「北九州学術研究都市連携大学院によるカーエレクトロニクス高度専門人材育成拠点の形成」プログラムにより、社会実践型教育を開始している。
  •  「PBL(課題解決型学習)を機軸とする工学教育プログラム」により、PBLを機軸とするカリキュラムの開発整備を行うとともに、プロジェクトラボラトリーを設置して教育・学習環境のトータルデザインを行っている。
  •  歯学と工学の学際融合的な教育研究を推進するため、九州歯科大学と協定を締結し、歯工学連携教育研究センターを設置した上で、平成21年度から歯工学分野の大学院連携教育を実施する体制を整備している。
  •  大学全体として正確かつ効率的なアクセス権限管理を行い、セキュリティレベルの維持を図ることを目的として、「全学統合ID管理システム」を導入している。
  •  研究成果の公表を促進するため、主要学術誌への英文論文の投稿・掲載費用補助制度を新設し、学内に周知して運用を開始している。
  •  国際的な研究連携として、重点化している韓国との間で、韓国中小企業庁の財政的支援により、韓国培材大学及び韓国企業との国際共同事業を実施している。
  •  地域産業界のニーズや技術課題を能動的に把握し、産学連携及び技術指導、技術移転活動を充実するため、新たに地域の自治体、技術移転機関(TLO)等による「地域産学官連携ボード」を企画し、北九州市及び財団法人北九州産業学術推進機構と連携して設立している。
  •  大分県との連携事業として、マイクロ化総合技術センターと先端金型センターにおいて、大分県立工科短期大学校の学生を受け入れた実習講座を開催している。
  •  バイオマスを活用する連携研究を実施する覚書を、プトラ大学(マレーシア)、独立行政法人産業技術総合研究所との間で締結し、パームバイオマス利用に向けた総合的研究を開始している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --