国立大学法人愛媛大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 愛媛大学は、学術の継承と知の創造によって人類の未来に貢献することを使命とし、学生中心の大学、地域にあって輝く大学の実現のため、「学生中心の大学作り」、「世界レベルの研究」、「地域発展への貢献」、「国際貢献」、「自律的運営体制の推進」を重点課題として整理し、それぞれの課題を達成するため、学長室の下に6つの政策チームを設置するなどして重点課題に対応した取組が行われている。
 業務運営については、学長裁量経費の研究開発支援経費として4,800万円を「萌芽的研究」課題に配分し、若手研究者育成を推進している。また、男女共同参画に関する指針策定、推進のための組織設置のほか、教員選考に関する規程等において女性を積極的に採用する旨を明記するなど、女性教員の採用の促進に向けた取組が行われている。
 財務内容については、全学的に配置した研究コーディネーターが科学研究費補助金の申請書に関するブラッシュアップを行い、採択件数は298件(対前年度比16件増)、採択率は39.4%(対前年度比2.4%増)となっている。
 自己点検・評価及び情報公開については、「あいだい博2008」を開催し、特色ある研究活動等を紹介するとともに、企業に対する共同研究相談、法律相談、入試相談等を併せて実施し、積極的に情報提供を実施している。
 教育研究の質の向上については、 「先進的実験と理論による地球深部物質学拠点」により、世界的レベルの先端研究と若手研究者の育成が進められている。また、先端的研究拠点の施設等において、テニュア・トラック制度を採り入れ国際公募で採用した若手教員6名が研究活動を開始している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学長直属の組織として法人化後に設置した「室」の機能と構成員を見直し、6つの政策チームを設置して検討課題に迅速に対応するなど、学長の戦略的施策補佐体制を強化している。
  •  学長裁量経費の研究開発支援経費として4,800万円を「萌芽的研究」課題に配分し、若手研究者育成を推進している。
  •  城北地区にある4学部(法文・教育・理・工)の教務事務業務及び学生支援業務を集中化し、図書館1階に「学生サービスステーション」を設置して学生の利便性を高めるとともに、集中化に合わせた事務組織改編を行い、業務の合理化を推進している。
  •  男女共同参画に関する指針の策定、推進のための組織の設置のほか、教員選考に関する規程等において女性を積極的に採用する旨を明記するなど、女性教員の採用の促進に向けた取組が行われている。
  •  南予水産研究センターのセンター長に水産学の専門家を特命教授として招へいするとともに、他大学及び地方自治体から客員教授(3名)、客員研究員(16名)を受け入れるなど、外部有識者の活用を推進している。
  •  事務系職員の人事評価を本格実施し、評価結果を平成21年度からの給与等の処遇へ反映させることとしており、その実施が期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載25事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  全学的に配置した研究コーディネーターが科学研究費補助金の申請書に関するブラッシュアップを行い、採択件数は298件(対前年度比16件増)、採択率は39.4%(対前年度比2.4%増)となっている。
  •  学長裁量経費「省エネインセンティブ経費」500万円を確保し、平成19年度電力使用量実績が対平成18年度比1%以上節減した部局に対して、換算した予算を追加配分している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)社会への説明責任に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  各部局等の関係者・学生を構成員とする「愛媛大学ホームページリニューアルに関する検討グループ」において検討した構造設計に基づき、ウェブサイトを全面リニューアルしている。
  •  「あいだい博2008」を開催し、地域企業、一般市民、高校生に対して特色ある研究活動等を紹介するとともに、企業に対する共同研究相談、法律相談、入試相談等を併せて実施し、積極的に情報提供を実施している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.職場環境・修学環境

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  施設マネジメント委員会による整備計画の検討結果に基づき、長期借入金による学生寄宿舎の改善整備の工事契約を行ったほか、共通教育棟の改善整備に伴いスペースを確保して、「愛媛大学ミュージアム」(博物館)を設置することとしている。
  •  施設の有効活用の方策として、各学部の使用面積に対して基本となる面積を基準として定め、スペースチャージ制導入の基本方針を定めている。
  •  全学経費から財源を3,000万円確保し、施設維持管理等計画に基づき、計画的に維持保全整備を実施している。
  •  化学物質管理システムの利便性を高めるために、ユーザーの意見に基づき、「化学物質管理の手引き」を改定し、平成21年度から大学指定の容器による実験廃液の回収を全学的に行うこととしている。
  •  城北地区総合防災訓練を実施し、救助袋による避難訓練、消化器を使用した初期消火訓練、起震車での地震体験等の実体験を通じて、防災に関する理解を深めている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載23事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  共通教育の見直しを行いカリキュラムの全体構成を従来の2区分(教養科目・基礎科目)から3区分(初年次科目・教養科目・基礎科目)とし、またユニバーサルな科学教養を柱とする「科学リテラシー」科目を導入することとしている。
  •  IT化推進チームにおいて、IT機器・ソフトウェア資産・視聴覚機器等の整備方針(「愛媛大学における情報化推進計画」)を策定している。また、e‐Learningシステムの総合情報メディアセンターでの運用体制を確立するとともに、利用促進を図る方策を検討し、利用方法等を広く構成員に周知している。
  •  ルーブリック評価(学習到達状況を評価するための評価基準表を用いた成績評価方法)について、各教員向けファカルティ・ディベロップメント(FD)スキルアップ講座を開催している。
  •  グローバルCOEプログラム「先進的実験と理論による地球深部物質学拠点」により、世界的レベルの先端研究と若手研究者の育成が進められている。
  •  先端的研究拠点の施設等において、テニュア・トラック制度を採り入れ国際公募で採用した若手教員6名が研究活動を開始している。
  •  先端研究の推進と地域との連携を目指した水産研究拠点として、愛媛県愛南町に「南予水産研究センター」を設置している。
  •  研究協力会会員企業を訪問し、科学技術相談を行うとともに、企業のニーズを収集し、外部資金の増収に努めている。
  •  農学部附属農業高等学校を愛媛大学附属高等学校に改組して、総合大学の附属高等学校という特性を活かした高大連携プログラムを導入している。

附属病院関係

  •  地域医療を担う医師の確保等のため、地域医療学講座を設置、地域サテライトセンターを活動拠点として、地域医療への関心を高めさせる教育体制を確立している。また、再生医療研究センターに細胞プロセシングセンターを設置、再生医療・細胞治療の臨床試験を実施できる環境を整備している。診療では、集中治療室(ICU)の増床(6床→8床)、新生児集中治療室(NICU)の増床(6床→9床)、脳卒中集中治療室(SCU)の新設(3床)と、高度な医療体制の提供に積極的に取り組んでいる。
     今後、魅力あるプログラムの提供で地域医療を担う医師の養成を推進するとともに、高度急性期治療の中核を担う病院としてのさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  女性医師の離職を防ぎ、復職を積極的に支援する、女性医師キャリア支援プログラム「地域のマドンナ・ドクター養成プロジェクト」を開発し、3名の女性医師が同プログラムを活用して、研修を行っている。
  •  がんプロフェッショナル養成プランにより、愛媛大学腫瘍センターが主催する「がんプロフェッショナル養成インテンシブコース講演会」を4回開催して、教育研修の推進を図っている。
(診療面)
  •  肌の老化予防や皮膚がんの早期発見を目的として「抗加齢皮膚ドック」を開設している。
  •  脳・心臓疾患の多様化と患者数の増加に伴い、冠動脈疾患集中治療部を脳卒中・循環器病センターに統合し、医師4名を配置して、診療体制の拡充・専門化を図っている。
(運営面)
  •  診療現場に役立つ分析システムとして、診断群分類包括評価(DPC)と出来高の収支差額を含めた患者別原価計算、損益分岐点確認を実装した経営分析システムを導入している。
  •  看護必要度、繁忙度、必要看護師数等のデータを基に応援体制を強化し、業務量調整や休暇取得のための取組を行ったことにより、看護師の離職率が改善(対前年度比1.3%減)している。(平成20年度10.6%)
  •  手術部看護師の7名増員、局所麻酔手術(眼科・皮膚科等)を短期手術室で実施等により、病院全体で手術件数が416件増加し、入院請求額8億2,000万円の増収につながっている。 

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --