国立大学法人山口大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 山口大学は、「発見し・はぐくみ・かたちにする 知の広場」であることを理念に、地域の基幹総合大学及び世界に開かれた教育研究機関として、たゆまぬ研究及び社会活動と教育の実践を最大の使命に掲げ、中期目標の達成を目指している。
 業務運営については、学長のリーダーシップを支援し、大学として戦略的な運営を行うため、平成20年4月に「大学評価」、「国際・社会連携」及び「医学部附属病院」担当の学長特別補佐を置き、学長を本部長とする「社会連携戦略本部」、「国際戦略本部」及び「IT戦略本部」を設置している。また、カリキュラム改善とファカルティ・ディベロップメント(FD)活動に外部有識者の視点を採り入れるため、高等学校長経験者と企業経営者を教育コーディネーターとして採用している。
 財務内容については、外国人留学生・研究者用宿泊施設及び学生寄宿舎の効率的運用を図るため、民間からの借入金による施設整備を行い、併せて料金改定も行っている。
 施設設備の整備については、民間資金の借入れ、自己資金及び寄附金等を活用して学生寄宿舎の整備として、吉田地区国際交流会館の改修、常盤寮2号棟の改修及び女子寮新築を実施し、学生生活支援施設の老朽改善整備を行っている。
 教育研究の質の向上については、 山口県及び財団法人やまぐち産業振興財団と連携し、県内の大学、高専その他の機関のコーディネーターが参加する「やまぐち事業化支援・連携コーディネート会議」を設置し、学内外のコーディネーターの連携を強化し、地域企業ニーズに応える活動を実現する環境を整備している。また、高校での未履修科目への対応や学生の多様なニーズに応えるため、学長裁量経費による「放送大学を活用した共通(教養)教育改善プログラム」を組織的に推進している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学長のリーダーシップを支援し、大学として戦略的な運営を行うため、平成20年4月に「大学評価」、「国際・社会連携」及び「医学部附属病院」担当の学長特別補佐を置き、学長を本部長とする「社会連携戦略本部」、「国際戦略本部」及び「IT戦略本部」を設置している。
  •  学長裁量経費に、新たに国からの補助事業、委託・委嘱事業に対し、補助事業終了後に自立して事業を継続実施するための経費として「教育改革等プログラム自立支援経費」を創設している。
  •  目的積立金を「教育研究高度化積立金」として教育研究の質の向上及び組織運営の改善に充てることとし、教育研究用の建物改修及び大型設備の充実、収入が見込まれる建物改修等に充当している。
  •  カリキュラム改善とFD活動に外部有識者の視点を取り入れるため、高等学校長経験者と企業経営者を教育コーディネーターとして採用している。
  •  役員も参加した事務系幹部職員選考制度を導入している。
  •  副課長・係長等に適任者5名の女性職員を登用するとともに、15名の女性職員を採用するなど、女性教職員の採用・登用の促進に向けた取組を推進している。
  •  監事監査については、実地監査終了後に監査対象者からの監査事項に対する回答と監事コメントを学内限定のウェブサイトに掲載し、学内構成員との意識の共有を図り大学運営等に活用している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載25事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  受託研究、受託事業及び寄附金等による外部資金受入額は、27億435万円(対前年度比1億4,508万円減)、外部資金比率は6.9%(対前年度比0.5%減)となっており、外部資金獲得に向けた取組が期待される。
  •  外国人留学生・研究者用宿泊施設及び学生寄宿舎の効率的運用を図るため、民間からの借入金による施設整備を行い、併せて料金改定も行っている。
  •  農学部附属動物医療センターの改修を行い、診療施設を充実することで診療サービスを向上させ、対前年度比で約600万円の増収となっている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  山口大学自己点検評価システム(YUSE)に新たなデータ様式「全学・学部附属教育研究施設等における活動」を設け、教育研究支援活動状況のデータについても提供できる体制を充実させるとともに、教員の「全般的活動評価」を実施し、評価結果の全体概要をウェブサイトに公表している。
  •  学術機関リポジトリ(YUNOCA)については、新たに国立情報学研究所の委託を受け、県内5大学の共同事業でリポジトリ構築を開始し、山口大学がその核となり事業を展開している。
  •  学生の視点を生かした広報活動を行う「広報学生スタッフ」を組織し、「キャンパスライフ」に学生生活を紹介し、保護者向け「宅配便」の一部記事の取材を担当させた。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理、3.大学における情報の安全管理、4.大学人としてのモラルの確立

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  民間資金の借入れ、自己資金及び寄附金等を活用した学生寄宿舎の整備として、吉田地区国際交流会館の改修、常盤寮2号棟の改修及び女子寮新築を実施し、学生生活支援施設の老朽改善整備を行っている。
  •  メディア基盤センターは、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の導入のため、内部監査及び最高情報責任者(CIO)に対するマネジメントレビューの実施に基づき、ISMSの点検を行い、改善のための措置を進め、情報セキュリティ管理に関する国際規格(ISO/IEC27001)の認証を取得している。
  •  スペースチャージシステムの導入・拡充を図り、共有施設の効率的な運用の推進については、施設の有効活用に関する規則に基づき、学部ごとにスペースチャージシステムの試行を行っている。
  •  実験研究の高度化、情報化の進展、実験環境の安全等に対応した維持管理の観点から、施設パトロール結果に基づき、前年度の維持管理計画書の見直しを行い、教育学部講義実験棟外壁剥離補修、附属特別支援学校厨房天井改修及び灯油庫屋根防水改修等を行っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載16事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  「目標達成型大学教育改善プログラム」を策定し、全学部・研究科において、「教育改善FD研修会」を開催し、FD研修の充実を図るための教育アドバイザーを配置している。
  •  共通教育科目「TOEIC指導」を見直し、「Basic English」の開設及び90分の授業に対してe‐learningによる180分の時間外学習を必須として、単位の実質化を図っている。
  •  高校での未履修科目への対応や学生の多様なニーズに応えるため、学長裁量経費による「放送大学を活用した共通(教養)教育改善プログラム」を組織的に推進している。
  •  「自主活動情報選定機関」を設置し、学外から寄せられたボランティア情報等を選考して、良質な情報のみを学生に紹介することとしている。
  •  教務情報システムの更新に合わせて、「Webシラバスデータベースシステム(CABOS)」を統合し、修学支援システムを導入し、教員が学内外からアクセスし、担当授業科目の履修者に対して緊急連絡をウェブサイト上で可能にしている。また、学生授業評価及び教員授業評価に関する「教育情報システム(IYOCAN)」についても統合を進めている。
  •  民間資金の借入れ、自己資金及び寄附金等を活用して学生寄宿舎の改修並びに新築を行っている。
  •  優秀な若手教員を育成するために、学長裁量経費に「若手研究者支援制度」を新設している。
  •  ライフサイエンス分野の充実を図るため、ライフサイエンス支援室を設置し、プロジェクトプロデューサー、コーディネーター及び職員を配置している。
  •  2万件余の電子ジャーナルと数種類のデータベースを導入しており、これを効率的に活用するため、文献検索と原文情報への素早いアクセスを可能にした「山口大学学術情報リンク」を構築している。また、自宅から電子ジャーナルにアクセスできるリモートアクセスシステムを導入し、研究者の利便性の向上を図っている。
  •  県内の小中学生を中心に、技術の楽しみを伝える「長州科楽維新プロジェクト」を推進し、「教材開発研究会」を8回開催し、県下で「出前科楽教室」を実施している。
  •  山口県及び財団法人やまぐち産業振興財団と連携し、県内の大学、高専その他の機関のコーディネーターが参加する「やまぐち事業化支援・連携コーディネート会議」を設置し、学内外のコーディネーターの連携を強化し、地域企業ニーズに応える活動を実現する環境を整備している。
  •  留学生受入れを拡大するために募集広報対策を組織的に実施している。留学生センターのウェブサイトに英語版、中国語版、韓国語版を追加し、大学紹介についても、英語版、中国語版、韓国語版を作成している。

附属病院関係

  •  卒後臨床研修の一環として、山口大学病院群で相互参加のできるワンポイント・レクチャー指導を採り入れ、学内外の指導医・研修医・学生等が「松下村医塾2009」を開催するなど独自の取組を行っている。また、修復医学教育研究センターでは、世界に先駆けて心臓、肝臓、血管疾患に対する自己骨髄細胞導入治療を実施するなど、先進医療の推進を図っている。診療では、病院情報システムにおいて、情報システムの操作マニュアル、広報資料掲示、中央診療部門とのウェブサイト連携、クリニカルパスの登録等の一元管理によって、医師・コメディカル等のスタッフ間の情報連携を円滑に行っている。
     今後、積極的にチーム医療を推進していくとともに、良質な医療人の養成に向けたさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
 がんプロフェショナル養成プラン事業により、臨床腫瘍・放射線治療・腫瘍外科専門医コースを開設し、山口県がん診療連携拠点病院として、多職種専門職の教育研修を実施している。
(診療面)
  •  診療連携室に看護師・メディカルソーシャルワーカー(MSW)を配置し、病棟ベットサイドでの転院・在宅等の支援を強化、また、山口県肝疾患診療連携拠点病院に指定されており、肝疾患診療に対する中心的な役割を担っている。
  •  県内遠隔地の教育関連病院とのネットワークを構築し、遠隔放射線診断及びカンファレンス、遠隔病理診断を実施、ポジトロン断層・コンピュータ断層複合撮影装置(PET‐CT)検査、病理検査の情報連携を新たに開始している。
(運営面)
  •  先発薬品から後発医薬品への切替を実施しており、切替品目数は21品目増となり、医薬品・医療材料の価格交渉により医療経費率が37.7%と前年度よりも低い水準となっている。
  •  病床稼働率は、目標の86%以上に対して、86.8%の実績、平均在院日数(一般病床)は、目標16.4日以内に対して、15.6日の実績となり、目標を達成している。
  •  外部評価では、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価(Ver5.0)の認定を受け、特に集中治療と救急部門に関しては、他の病院のお手本になるという高い評価を受けている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --