国立大学法人鳥取大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 鳥取大学は、21世紀を迎えて教育、研究、社会貢献、診療等の面で大学が発揮すべき機能を十全に伸展させるため、「知と実践の融合」を理念として掲げ、1)社会の中核となりうる教養豊かな人材の育成、2)地球的人類的社会的課題解決への先端的研究、3)地域社会の産業と文化等への寄与を教育研究の目標としている。
 業務運営については、学長のリーダーシップの下に、「トップマネジメント推進事業」の費用を資金運用益等で確保し、私費外国人留学生緊急支援(450万円)等の戦略的なトップマネジメントを展開している。
 また、職員が自発的な大学等における修学又は国際貢献活動を行うため、2年若しくは3年の範囲内において取得できる自己啓発等休業制度を導入している。
 財務内容については、事務の効率化を図るため、島根大学との「物品等の共同調達に関する協定」に基づく共同調達で、調達費用を削減している。
 その他業務運営については、施設整備マスタープラン(鳥取キャンパス編)に引き続き、米子キャンパス編を策定し、大学全体の施設整備マスタープランを完成させるとともに、今後の施設整備の基本方針と方向性を明確にしている。
 教育研究の質の向上については、地域学部の地域政策学科、地域環境学科において、それぞれ学科教科書を出版するなど指導方法の改善のために組織的に取り組んでいる。また、大学教育支援機構内の教育センターにキャリア支援部門を設置し、キャリア教育のポリシーを定めたり、「キャリアデザイン」等の関係講義を開設するなど支援体制を強化している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学長のリーダーシップの下に、平成21年度から教育政策担当副学長を廃止し、新たに国際交流推進を担当する副学長を配置することとし、国際交流の推進体制を強化し、弾力的な大学運営を行っている。
  •  学長のリーダーシップの下に、「トップマネジメント推進事業」の費用を資金運用益等で確保し、私費外国人留学生緊急支援(450万円)等の戦略的なトップマネジメントを展開している。
  •  10の教育研究組織を見直し、又は見直しを決定し、社会のニーズや新たな学問の発展に適切に取り組んでいる。
  •  職員が自発的な大学等における修学又は国際貢献活動を行うため、2年若しくは3年の範囲内において取得できる自己啓発等休業制度を導入している。
  •  人事関係業務の効率化を図るため、人事企画課と人事管理課を人事課に統合するとともに、研究協力業務及び社会貢献業務を充実させるため、研究協力課と社会貢献推進課を研究・地域連携課に統合し、業務運営のスリム化を図っている。
  •  看護師等の交代制勤務者の利用にも対応するため、附属病院に設置している「すぎのこ保育所」を週3日は24時間保育とし、24時間保育を行う日に看護師等の夜勤等を割り振るようにする等の措置を行っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載59事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  産学・地域連携推進機構に設けた外部資金獲得支援室に助言支援者を配置して、科学研究費補助金の申請予定者に助言支援を行った結果、新規採択件数は80件(対前年度比14件増)、新規採択金額は2億1,397万円(対前年度比4,262万円増)となっている。
  •  産官学連携コーディネーターを組織したコーディネート体制により科学技術相談を行った結果、共同研究、受託研究及び奨学寄附金による外部資金が13億3,000万円(対前年度比1億9,135万円増)となっている。
  •  事務の効率化を図るため、島根大学との「物品等の共同調達に関する協定」に基づく共同調達で、調達費用を削減している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質を確保しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載14事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  大学評価室を設置し、評価担当教員を新たに増員して大学評価活動の機能強化及び充実を図っている。
  •  大学のイメージとなるUI(ユニバーシティー・アイデンティティ)の確立と普及を推進するため、シンボルマーク及びイメージキャラクターを決定し、広報誌「風紋」等の各種冊子及びホームページで活用するとともに、「風紋」の発行回数を年2回から年4回として、最新情報の広報を推進している。
  •  大学の広報目的に資する情報を発信するとともに、地域に開かれた交流の場として、「鳥取大学広報センター」を設置している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  平成20年度に米子キャンパス編を策定し、大学全体の施設整備マスタープランを完成させ、今後の施設整備の基本方針と方向性を明確にしている。
  •  施設マネジメントの一環として、共用スペース等の創設に活用するため、有効活用調査シートによる机上調査を実施し使用状況実態調査を行って調査結果について部局長に通知し、改善を図っている。
  •  地域学部、工学部等の大型改修に合わせて、共用スペース(プロジェクト実験室、共同実験室等)を確保している。また、地域学部の改修に合わせて、全学共用施設として、「鳥取大学広報センター」のスペースを創出している。
  •  設備等整備支援事業の創設により、学内資金の運用を活用して、農学部附属動物病院の整備に着手している。
  •  「鳥取大学化学物質管理の手引き」を作成し、化学物質使用者に配布するとともに、教職員及び学生を対象とした「化学物質管理の研修会」を鳥取地区及び米子地区において延べ4回開催し、化学物質の適正な管理の啓発を行っている。
  •  環境委員会を主体として、「ゴミ出し検定試験(初級)」を実施し、テスト結果が80点以上の合格者に対し、理事(環境担当)名の認定書を発行し、学生の環境意識向上を図っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  成績評価基準の明確化を図り、シラバスの評価基準表記の妥当性を点検するため、英語では教科書・成績評価基準の統一を、さらに生物学・化学でも平成21年度より教科書を統一することとしている。
  •  地域学部では、地域政策学科、地域環境学科において、それぞれ学科教科書を出版するなど指導方法の改善に組織的に取り組んでいる。
  •  大学院連合農学研究科(博士課程)では、全国6連合農学研究科と協力して、多地点遠隔講義システムを導入して教育方法を充実している。
  •  釜慶大学(韓国)とのダブル・ディグリー・プログラム実施に関する覚書に基づき、留学生を平成18~20年度に各1名、地域学部に受入れている。
  •  大学教育支援機構内の教育センターにキャリア支援部門を設置し、キャリア教育のポリシーを定めたり、「キャリアデザイン」等の関係講義を開設するなど支援体制を強化している。
  •  次期電子計算機システムの更新における基本方針、要件項目等を取りまとめ、仕様策定委員会での検討の方向性を示している。さらに、今後の全学的な情報政策における基本方針を策定するため、鳥取大学高度情報化推進構想(案)を取りまとめている。
  •  館種を超えた複数の図書館が病院図書室の支援体制を構築するために、鳥取県立倉吉厚生病院図書室並びに倉吉市立図書館と同病院図書室との間で相互協力に関する協定を締結している。
  •  医学部では、がんプロフェッショナル養成プラン及び社会人学び直しニーズ対応教育推進プログラム等により、地域医療に貢献する優れた医療人の養成事業を展開している。
  •  「附属学校のあり方検討委員会」を設置し、4回開催するとともに、「実務プロジェクト」を23回開催し、附属学校園の教育理念、教育目標、附属学校の適正な学級数、学級定員数等の将来構想について検討を進めている。

全国共同利用関係

  •  全国共同利用の研究施設である乾燥地研究センターでは、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。平成20年度は、グローバルCOEプログラムの中で、国際乾燥地農業研究センター(シリア)との間で共同研究を開始している。さらに、中国科学院水土保持研究所等との連携を強化し、現地研究の質的向上を図るとともに、砂漠研究所(米国)との間では、共同研究に向けた協議を行うなど、乾燥地科学分野の研究を推進している。

附属病院関係

  •  初期研修プログラムの一環として、研修医1名と医学生2名が米国コロンビア大学メディカルセンターでの海外研修を行うなど、幅広い医療知識を習得させるための取組を行っている。また、文部科学省事業「再生医療の実現化プロジェクト(ヒト幹細胞から機能性肝細胞への分化誘導技術開発の研究プロジェクト)」が採択され、トランスレーショナルリサーチの推進に取り組んでいる。診療では、鳥取県3病院が協力して情報ネットワークによる周産期患者情報の共有ができるシステムを開発し、安全で安心な出産ができる医療提供体制の整備が図られている。
     今後、地域医療の核となる医療連携体制を確保しその充実を図るとともに、3次救急医療機関として高度な医療を提供していくためのさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  山陰と阪神を結ぶ医療人養成プログラムにより、連携大学間による医師の研修交流が実施されている。
  •  潜在看護師復職支援のための「いつきてもいいよスクール」において、6名の受講者を受入れ、うち4名が鳥取県内の医療機関に復職をするなど成果を上げている。
  •  初期臨床研修医に基本的診療知識と技能を習得させるため、教育セミナー40回、シミュレータ研修を2回開催して、質の高い教育体制に努めている。
  •  平成19年度から実施している静脈注射・静脈留置針の院内認定看護師制度に加えて、新たに平成20年度から緩和ケアサポートナースも院内認定制度に加え、医師との役割分担推進に積極的に取り組んでいる。
(診療面)
  •  鳥取県からの委託事業「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業」を受け、子どもの心の診療拠点病院推進事務室を設置して、様々な子どもの心の問題に関する診療支援を行っている。
  •  都道府県がん診療連携拠点病院として、がん登録の実施、癒しの場として「がんサロン(さくらサロン)」を開設、がんに関する治療成績・手術後5年生存率の公表など社会からの要請が高い診療に取り組んでいる。
(運営面)
  •  病院長が個別にヒアリングを実施し、診療内容の見直しを促すなどの指導を行い、平均在院日数の短縮(平成20年度14.2日(対前年度比1.4日減))、入院単価の増加(平成20年度57,561円(対前年度比2,219円増))等の経営改善に努めている。
  •  特定任期付職員として、助教10名ほか計69名を増員している。また、24時間保育所の設置後、女性医師・看護師の利用者が増加し、人材の確保及び安定雇用に一定の効果を上げている。
  •  2回にわたって、診療科別延患者数・1日当たりの新入院患者数等の実績を勘案して診療科別病床数の見直し・再配置を行い、病床稼働率を上昇させている。(平成20年度82.0%(対前年度比0.3%増))

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --