国立大学法人奈良女子大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 奈良女子大学は、「男女共同参画社会をリードする人材の育成」、「教養教育、基礎教育の充実と専門教育の高度化」、「高度な基礎研究と学際研究の追究」、「開かれた大学」の4つの基本理念に基づく様々な取組を行っており、特に女性の社会進出を教育面で支援するとともに、広くアジア諸国と連携・協力した女子教育を積極的に推進している。
 業務運営については、事務系職員の人事評価を本格的に実施し、評価結果を処遇に反映しており、評価できる。
 また、男女共同参画に関する指針を策定し、推進のための組織を設置するほか、女性教員採用促進のためのアクションプランを策定し、女性教員比率について数値目標を設定するなど、女性教員の採用の促進に向け取り組んでおり、今後さらなる推進が期待される。
 財務内容については、財務分析結果から、実験装置等の教育研究基盤設備の老朽化が推測されたため、詳細な調査を行い中型実験機器等を整備している。
 教育研究の質の向上については、東アジアにおける古代・奈良を基本的視座とした活動及び東アジア及び欧米諸国との比較研究の完成と過去の実績を総括しながら、シンポジウム等を開催するとともに成果を図書として出版し、さらにこれまでの実績を踏まえ日本のアイデンティティ探求の新たな展望の構築と国際的な研究連携活動の推進を図っている。今後とも文理融合型の教育研究の推進が期待される。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.教職員の人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  事務系職員の人事評価について、「奈良女子大学事務系職員に係る人事評価実施要項」が平成20年10月に策定され本格的に実施し、評価結果を平成21年1月の処遇から反映しており評価できる。今後、教員個人評価結果の処遇への反映についても取組を行うことが期待される。
  •  男女共同参画に関する指針やアクションプランを策定し、推進のための組織を設置するほか、女性教員比率について数値目標を設定するなど、女性教員の採用の促進に向け取り組んでおり、今後さらなる取組が期待される。
  •  学長を中心とするトップマネジメントを根幹とした予算編成方針を定めた上、重点施策経費を見直し、「年度計画重点推進特別経費」を「計画的重点施策費」に、「教育・学生支援統括経費」を「教育改革・学生支援経費」に組み替えるなど、教育研究の活性化を図る予算配分を行っている。
  •  戦略的資源配分として、学長が全学と部局の計画を勘案して人事計画を定めるなど、人事管理手順の明確化を図っている。
  •  事務の効率化・合理化の観点から事務機構を見直して、人事課を廃止し、総務・企画課に統合している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある

(理由) 年度計画の記載37事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるほか、事務系職員に係る人事評価制度を本格実施し、評価結果を処遇に反映させる取組が行われていること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  創立百周年を迎えるにあたり、「奈良女子大学基金」を創設し、広く社会に向けて寄附金を募集している。
  •  財務分析結果から、実験装置等の教育研究基盤設備の老朽化が推測されたため詳細な調査を行い、中型実験機器等の整備を行っている。
  •  一般管理費比率が6.0%(対前年度比0.9%増)となっていることから、削減に向けた取組が期待される。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教員の活動を「教育」「研究」「社会連携」「管理・運営」の4つの分野に分類し、教員の多面的な評価を本格的に実施している。
  •  創立百周年に向けた広報活動を行うとともに、私鉄駅構内に設置した専用掲示板及び日本最古級のグランドピアノ(通称:百年ピアノ)によるランチタイムコンサートの開催等により大学の認知度向上に積極的に取り組んでいる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学内専用ウェブサイトに「電気、ガス、水道、エレベータ設備等障害情報」を創設し、設備等に不具合が発生した際には、速やかに全学に周知できる体制を整備している。
  •  全学的視点に基づいて役員主導で施設の有効利用を計画立案するシステムにより、耐震改修工事に際しては、スペース及びクオリティーマネジメントの考え方に則り、役員主導で整備に係る基本的な考え方を定め、若手教員用研究室及び共同利用実験スペースの整備等、教育研究スペースの有効活用を図っている。
  •  夜間・休日における学外者・不審者の侵入防止を図るため、入退館管理システムの適用範囲を拡大し、セキュリティのさらなる向上に取り組んでいる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載18事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  社会をリードする女性人材の育成を推進するため、毎月定例会議を開催し、学部等と連携しながら教育業務の企画・立案・実施・改善を行っている
  •  「キャリアデザイン・ゼミナール」では、学生のニーズに沿った多様な31科目を開講するなど、キャリア教育の推進に取り組んでいる。
  •  生活環境学部では、今まで開講されていた3つのインターンシップ科目(専門科目)に加え、「衣環境学学外実習」と「生活文化学学外実習」の2つを新規開講し、「住環境学学外実習」を単位化するなど、インターンシップ制度の拡充を行っている。
  •  「女性の高度な職業能力を開発する実践的教育」、「理系の実践型女性科学者育成」に関連する大学院博士前期課程7専攻・博士後期課程2専攻において、実践力を持つ人材養成に向けた授業科目群を新たに導入するなど、カリキュラムの充実を図っている。
  •  「なら学プロジェクト」、「ジェンダー言語文化学プロジェクト」、「子ども学プロジェクト」の3プロジェクト研究の成果を教育に還元するため、関連科目を開設するなど、専門教育の充実を図っている。
  •  キャリアカウンセラーの有資格者をキャリアアドバイザーとして雇用し、専門的視野から各学生の就職相談に対応するとともに、同窓会組織との共催により、教員・就職支援室員も参加する就職懇談会を開催している。
  •  リサーチ・アシスタント(RA)雇用の促進、博士論文提出可能な者を対象としたRA採用、博士研究員制度による若手教員の育成等、若手女性教員等に対する研究支援と研究者育成を行っている。
  •  総合研究棟(理学系B棟)に授乳等が行える多目的室(フィッティングルーム)を新設するとともに、育児・介護等に携わる女性教員に対して博士後期課程修了者等を教育研究支援員として配置し、教育研究環境の整備充実に努めている。
  •  東アジアにおける古代・奈良を基本的視座とした活動及び東アジア及び欧米諸国との比較研究の完成と過去の実績を総括しながら、シンポジウム等を開催するとともに成果を図書として出版し、さらにこれまでの実績を踏まえ日本のアイデンティティ探求の新たな展望の構築と国際的な研究連携活動の推進を図っている。今後とも文理融合型の教育研究の推進が期待される。
  •  南京大学及び蘇州大学(中国)へ大学教員・大学院生を派遣し、教育研究上の国際交流を一層促進すると同時に相手大学の教育研究活動の発展に寄与している。
  •  附属中等教育学校においては、大学との連携を強化しつつ、理科・数学教育を重点的に実施するスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業を実施し、新たな中高一貫教育を推進させている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --