国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 奈良先端科学技術大学院大学は、情報、バイオ、物質という重点3分野における最先端の研究を推進し、その成果に基づき、我が国の科学技術の推進を担う人材を養成し、社会に貢献することを使命とする取組が進められている。
 業務運営については、先端科学技術を担う女性研究者の育成のため、男女共同参画準備室を設置するとともに、教職員・学生への啓発のため、シンポジウムを実施するなど、男女共同参画の推進に努めている。
 財務内容については、他機関に帰属していたものも含む複数の特許権をパッケージ化するなど、積極的な知的財産権の運用を行っている。
 自己点検・評価及び情報提供については、学外有識者からなる全学外部評価会議において、教育、研究及び管理運営等の活動について改善点等を検討し、報告書として取りまとめるとともに、第2期中期目標・中期計画の検討に活用されている。
 教育研究の質の向上については、学位授与に至るプロセス管理を進めるため、全研究科で複数指導教員による研究進捗状況の中間評価の実施、個々の学生の学修状況を迅速に把握し達成度の評価及び適切な指導を行うための「電子教育カルテ」の開発等を行っている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  事務職員等を対象に「NAISTを良くするアイディア」を募集し、緊急性・必要性等を考慮し、実現可能なものから順次行うとともに、将来、改善が必要な事項については、計画的に業務改善を行うこととされている。
  •  大学運営の国際化に対応するため、大学独自の採用制度により高度な英語能力を有する事務職員を選考するとともに、英語による大学生活を可能にする取組として、学内文書、規程等の英語化や事務職員の英語能力向上のための学内英会話研修、海外スタッフ・ディベロップメント(SD)研修等が実施されている。
  •  役員会等主要な会議に電子会議システムを導入し、会議資料の電子化を図ったことにより、会議運営業務の軽減に加え、迅速な事前資料配付による効率な会議運営が行われている。
  •  先端科学技術を担う女性研究者の育成のため、先端科学技術型ワークライフバランスの実現に向けて、男女共同参画準備室を設置するとともに、教職員・学生への男女共同参画活動への啓発のため、「男女パートナーシップによる先端科学研究の活性化」と題したシンポジウムを実施するなど、男女共同参画の推進に努めている。

平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  大学院博士課程について、学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載16事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、大学院博士課程において学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったこと等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  他機関に帰属していたものも含む複数の特許権をパッケージ化するなど、積極的な知的財産権の運用により、4,337万7,000円を獲得し教育研究の充実等に活用している。
  •  教員の選考に当たっては、助教は、原則として5年間を限度とする任期を付して人事の流動性を高めるとともに、教授及び准教授は、優秀な若手教員を採用することとしている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  平成19年度に実施した自己点検・評価を検証するため全学外部評価会議を開催し、教育研究及び管理運営について、外部有識者から意見を求め、報告書として大学ウェブサイトで公表を行うとともに、大学院教育の国際化プログラムの実質化等の意見を第2期中期目標・計画の策定に活用している。
  •  研究成果等を報道機関に積極的に情報提供することにより、メディアを通して効果的に社会へ情報発信するとともに、その際、記者会見用バックパネルを活用するなど、大学のブランド力を向上させる工夫を行っている。
【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載3事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  全学情報環境として、超高速キャンパスネットワークを基盤とした一つの大きな分散処理環境を実現のため、高密度サーバによる基盤サーバや最新鋭の研究支援システム等を導入し、性能・機能・セキュリティの強化及び先端科学技術研究への対応を図っている。
  •  バリアフリー化への取組として、出入口の自動ドア化を進めるとともに、身体障害者用駐車場及び出入口のスロープに屋根を設置し、利用者の利便性の向上が図られている。
  •  省エネルギーステッカーの配布や電力使用料の公表等による啓発活動を行うとともに、高効率照明への更新や屋上遮光ネット等の設置等の省エネルギー対策を推進した結果、電気使用量が前年度と比べ2万kwhの削減を行っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  各研究科に外国人特任教員を配置し、英語授業及び論文作成等の個人指導を行うとともに、定期的な英語能力テスト、海外の研究者による先端分野の講義、e‐learningによる英語学習等、英語教育プログラムを充実している。
  •  学位授与に至るプロセス管理を進めるため、全研究科で複数指導教員による研究進捗状況の中間評価の実施、個々の学生の学修状況を迅速に把握し達成度の評価及び適切な指導を行うための「電子教育カルテ」の開発等を行っている。
  •  大学院教育のグローバル化の推進のために、FD専門の講師及び各研究分野の優れた教員を海外から招へいし全学的な国際FD研修会を実施するとともに、海外の大学院教育の調査が行われている。
  •  電子図書館では、利用者一人一人の利用形態に合わせたサイトを構成できる「My Library 機能」を導入し利便性を高めるなど、学生の自主的学習環境を向上させている。
  •  優秀で意欲のある私費留学生を支援するため、寄附金、競争的資金等を活用し、渡航費の支給、リサーチ・アシスタント(RA)としての雇用、入学料及び授業料の免除を行う大学独自の外国人留学生特別支援制度の構築に取り組んでいる。
  •  若手教員の自律的な研究テーマや融合領域研究について学内募集を行い支援するなど、研究推進のための戦略的な取組が行われている。
  •  地域の小・中・高等学校等と連携した理科教育活動にも積極的に取り組むとともに、県内のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校と、組織的な教育連携協定締結に向けて協議を始めるなど地域連携に取り組んでいる。
  •  海外の教育研究機関との組織的な教育研究連携を進めるために、新たに14機関と学術交流協定を締結するとともに、学術交流協定に基づき、若手教員や学生の交流を積極的に行っている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --