国立大学法人奈良教育大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 奈良教育大学は、創立以来の学問・学芸を尊ぶ学風を継承し、高い知性と豊かな教養を備えた人材、とりわけ人間形成に関する専門的力量を備えた有能な教育者を育てることを使命として、「少人数教育」による教育・研究の充実、「奈良・世界遺産」を生かした教育・研究の充実、「体験型キャリア教育」の教育・研究の充実という3つの柱を掲げ、社会的・地域的要請に応えるべく、様々な改革等の取組を推進している。
 業務運営については、事務系職員の個人評価を本格実施し、評価結果を処遇に反映しており、評価できる。また、大学教員については、個人評価の結果、学長が特に優秀と認めた者について、処遇に反映することができることとしている。この他、教職大学院を設置し、独自のカリキュラム・フレームワーク(7つの目標資質能力基準)により修了時の資質能力を保証し、専門性を兼ね備えた教員の養成を行うこととしている。
 財務内容については、近隣大学と物品等の共同調達に関する協定を締結して共同購入を行うことによりコスト削減を図っている。
 自己点検・評価については、個人評価において各教員に研究業績、授業担当状況等についての自己評価の具体化を求め、完成度の高い評価方法の確立を目指している。
 教育研究の質の向上については、カリキュラム・フレームワーク項目のシラバスへの関連付けなどの観点から、授業における提出課題等の根拠資料のデジタル化による蓄積試行等を行っているほか、学生ボランティア活動の活性化のため、ボランティア支援総合センターを設置し、情報の共有化や学内外における支援事業の窓口の一元化等が図られている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  事務系職員の個人評価を本格実施し、評価結果を平成21年1月の昇給から反映しており、評価できる。また、大学教員については、個人評価の結果、学長が特に優秀と認めた者について、処遇に反映することができることとしている。
  •  教職大学院を設置し、独自のカリキュラム・フレームワークにより修了時の資質能力を保証し、専門性を兼ね備えた教員の養成を行うこととしている。また、平成17年度から開始した一連の理数教育プロジェクトを統括する拠点として、理数教育研究センターを設置し、教育プログラムの開発、運用等を行っている。
  •  大学と附属学校の一体的な運営、組織的に附属学校全体の運営に関する校務の総括、附属学校の機能の充実及び附属学校相互間の連絡調整を行うとともに学校教育の課題に対応するため、新たに附属学校部を設置している。
  •  次世代育成支援の一環として、学内規則を改正し、産前産後休業期間においても特任教員を配置することができることとしている。
  •  能力・適性に応じた人事の仕組み、人材育成策、事務の簡素化・合理化等、今後の方向性を定め、必要な改善に取り組むため、「事務改革への取り組み」を作成し、個別的・具体的事項について改善に努めている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある

(理由) 年度計画の記載23事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、事務系職員について個人評価結果の処遇への反映の取組が行われていること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  公募情報の全教員に対する電子メールでの周知やウェブサイトへの掲載等申請支援体制の整備により外部資金の獲得に努め、受託研究及び寄付金(120周年記念事業募金を除く)は平成19年度に比べ、144%の増収となっている。この他、外部資金比率は1.1%(対前年度比0.2%増)となっている。
  •  近隣大学と物品等の共同調達に関する協定を締結して共同購入を行うことによりコスト削減を図っている。
  •  「資金運用に関する要項」を定め運用を開始し、平成20年度に250万円の利息収益(対前年度比225万円増)となり、教育研究の質の向上及び組織運営の改善に活用することとしている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実,2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  個人評価の各欄の末尾に説明欄を設けて各教員に研究業績、授業担当状況等についての自己評価の具体化を求め、評価者と被評価者間の誤解や食い違いが解消され、双方が納得できる完成度の高い評価方法の確立を目指している。
  •  「奈良教育大学出版会」を設立し、研究成果の社会や地域への発信に努めている。
  •  大学創立120周年を記念して、学生・地域住民により一層大学へ親しみを感じてもらい、大学構成員のアイデンティティを高めるため、イメージキャラクターを選定し、大学をアピールする際に幅広く活用している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載4事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  「施設整備の基本方針」を改訂し、配分面積の超過の是正に取り組み、共同利用スペースとして140m2を捻出している。
  •  目的積立金の活用により、学生食堂の増改築と機能向上(書籍・売店の拡幅・食堂の多目的利用)を図るため、平成20年6月に教職員・学生・保護者を委員とする「学生食堂整備事業プロジェクトチーム」を設置し、学生等のアンケート、意見等を踏まえて改修計画を策定している。
  •  附属学校特別支援学級の校舎改築に伴い、埋蔵文化財調査を実施したところ、聖武天皇の病気平癒を祈願して光明皇后が建立したとされる新薬師寺七仏薬師堂(金堂)と推定される大型基壇建物遺構が検出されたことから、大学の重点事項に沿って、埋蔵文化財発掘調査跡地周辺及び文化財の保存・活用について検討を行っている。
  •  警察から専門家を招き、交通安全教室や防犯訓練を行い、教職員の安全教育の啓発に努めている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載13事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  卒業者アンケートで、授業の満足度等だけでなく、学習上の改善点等の事後評価も実施している。また、平成21年3月の卒業(修了)の段階で卒業生及び修了生にアンケートを実施し、8割の満足度を得ている。
  •  カリキュラム・フレームワーク項目のシラバスへの関連付けなどの観点から、授業における提出課題等の根拠資料のデジタル化による蓄積試行等を行っている。
  •  平成17年度から開始した理数教育プログラムを終了した卒業予定者に対し、「高い教科専門性と高度な教育実践力を持つ優れた理数科教員である」ことを認定するSuper Science Teacher(SST)認定制度を制定し、学長名で大学としてSST認定を行っている。
  •  学生ボランティア活動の活性化のため、ボランティア支援総合センターを設置し、情報の共有化や学内外における支援事業の窓口の一元化等を図っている。
  •  奈良県立平城高校との教育連携に関する協定に基づき、同校教育コース3年生の卒業研究制作に対し、大学教員及び大学院生が多面的に指導・支援を行っている。
  •  平成21年度からの教員免許状更新講習の円滑な実施に向けて、県内の4大学及び1短大、奈良県教育委員会との連携・協力により、予備講習を実施している。
  •  大学と附属中学校が連携した科学教育の成果として、科学部がFLL(ファーストレゴリーグ)の国内大会で準優勝に輝いており、この結果、平成21年5月初旬にデンマークで開催される世界大会への出場権を得ている。FLLはブロックで作ったロボットをコンピュータ制御する競技で、科学部の活動は、大学教員、院生・学部生が支援している。また、FLLとは別のロボットコンテストであるWorld Robot Olympiad(WRO)においても関西大会・日本大会(レギュラーカテゴリー準優勝)と進み、世界大会において優秀賞を獲得している。
  •  教職大学院の設置に伴い、大学院修士課程の2専攻においては、知識基盤社会を多様に支える教員及び教育者の育成を目指すこととし、教育プロセスの明確化を図るとともに修士論文指導や学位論文審査の在り方を改善し充実を図ることとしている。
  •  平成20年3月卒業者(教員養成課程)の就職状況は卒業者数135名に対し、正規採用が59名、臨時的任用が32名で、平成20年教員就職率は67.4%、進学者を除くと74.6%となっている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --