国立大学法人神戸大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 神戸大学は、「真摯・自由・協同」の理念を掲げて発展を遂げ、高度に国際性に富む研究教育を実践する総合大学として、さらなる飛躍を目指し、学長のリーダーシップの下で策定したミッション・ビジョンステートメント「神戸大学の使命」と「神戸大学ビジョン2015」、「神戸大学ビジョン2015アプローチ」の実現に向けて取組を進めている。
 業務運営については、戦略的に取り組む施策を推し進める経費としてビジョン推進経費等を新たに創設し、ビジョン実現に向けた取組を推進している。また、男女共同参画に関する指針を策定し、推進のための組織を設置するとともに、女性教員採用比率を向上させるための達成目標と措置を策定するなど、女性教員の採用の促進に向け取り組んでいる。
 一方、年度計画に掲げている組織目標推進に係る新たな評価制度を整備するまでには至っていないことから、着実な取組が求められる。
 財務内容については、附属病院収益及び補助金収益等が増加している。また、外部資金獲得に向けた積極的な取組により、外部資金比率は8%(対前年度比1.0%増)となっている。
 自己点検・評価及び情報提供については、神戸大学情報データベース(KUID)の活用により効率的にデータの収集、確認ができる環境を整備するとともに、評価作業のノウハウについて作業履歴を基にマニュアルを作成している。
 教育研究の質の向上については、仕事で使える英語プレゼンテーション力「PEP」(Professional English Presentation)を養う特別履修コースの開設、国際的な学術・文化交流と情報発信のため中国事務所(北京)を拠点とした「北京神戸大学デー」の開催、学生生活上の諸問題について「学生なんでも相談」窓口の設置等に取り組んでいる。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  世界トップクラスの研究教育機関となること等を目指し「神戸大学ビジョン2015」を踏まえ、戦略的に取り組む施策を推し進める経費として「ビジョン推進経費」、教育研究基盤設備の再生に資する経費として「設備更新費」を新たに創設し、ビジョンの実現に向けた取組を推進している。
  •  男女共同参画に関する指針を策定し、推進のための組織を設置するとともに、女性教員採用比率を向上させるための達成目標と措置を策定するなど、女性教員の採用の促進に向け取り組んでいる。
  •  大学のICT戦略を実現するため、学長裁量枠を活用して、学長の下に置く企画室に、情報システムに精通した実務経験者を採用している。
  •  職員が職務に関連した能力開発、資格取得等のために、自発的に学外機関主催の研修会等へ参加する機会を設けることを目的として「自己啓発職務専念義務の免除制度」を試行的に導入し、事務職員4名が6日間、医療職員42名が73日間、職務に関連する能力開発を行っている。
  •  統合ユーザ管理システム(KUMA)を導入し、各業務システムのユーザ認証機能の統合を推進し、各業務システムの認証に伴う管理業務の効率化を実現している。

平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「平成19年度の成果に基づき、組織目標推進(管理)の対象職員を拡大するとともに、職務遂行上必要となる能力について評価するための職務行動シートの導入を図り、新たな評価制度を整備する」(実績報告書15頁・年度計画【72‐1‐1】)について、平成20年度においては、組織目標推進の対象職員を拡大することについては試行案にとどまっており組織目標推進の対象職員の拡大には至っていないこと、試行の実施方法については、さらに検討を行うこととなり、新たな評価制度を整備するまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載39事項中38事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  平成16年度以降の決算実績値の動向を分析するとともに、運営財源の推移、平成19年度財務状況についてデータを比較分析し、「神戸大学の財務状況」として冊子及び大学ウェブサイトで公表している。また、他大学との決算の比較を行い、財務分析結果を次期中期目標・中期計画の素案策定に活用している。
  •  附属病院収益及び補助金収益等が増加している。また、受託研究等収益、受託事業等収益及び寄附金収益の外部資金獲得に向けた積極的な取組により、平成20年度の外部資金比率は8%(対前年度比1.0%増)となっている。
  •  神戸大学基金における募金活動により、企業や卒業生等から先端医学・生命科学の世界的拠点整備、海事・海洋研究の国際的拠点構築及び奨学金等に対して合計9億8,557万円(対前年度比6億1,393万円増)の寄附を得て事業に取り組んでいる。
  •  物件費削減や教職員のコスト削減への意識改革を促すことを目的として、事務局コスト削減プロジェクトを設置し、即座に実行に移せるもの(推定削減額1,940万円)、中・長期の検討が必要であるもの(推定削減額6,084万円)に分類し、実行に移している。
  •  特許関係費用に係る経費の節減に取り組み830万円の経費を節約するとともに、企業との共同出願案件については、共同出願件数の約5割を企業側の全額負担とすることにより大幅な経費節減を行っている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載14事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の基本的な目標、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  神戸大学情報データベース(KUID)を活用して、全学的な状況を俯瞰し、効率的にデータの収集、確認ができる環境を整備するとともに、評価作業のノウハウについて作業履歴を基にマニュアルを作成しており、平成21年度から評価実務担当を7名から5名に減員することとしている。
  •  東京オフィスにおいて、研究シーズ発表会の広報活動、高等学校等への訪問や首都圏における就職支援相談等を実施している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載17事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備と活用等、2.安全管理、3.環境保全、4.大学支援組織等との連携強化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  平成18年度に行ったスペースマネジメントの調査分析の結果を基に、各学部・研究科の人材養成と卓越した研究及び若手教員へのスペースの再配分計画を検討し、六甲台地区の総合研究棟等の改修工事に反映させている。
  •  「施設相談窓口」が全学に浸透し、施設利用者に対して敏速な対応(学内電子掲示板「Webly Go」による依頼書受付、回答、現地調査)を行うことにより、施設設備維持管理の効率化、サービス向上に積極的に取り組んでいる。
  •  神戸における主要先進国首脳会議(G8)の環境大臣会合を契機として、「神戸大学環境年2008」と位置付け、G8神戸エコフェスタ「神戸大学・神戸市協働公開講座―環境共生都市をめざす神戸の取組や歴史について学ぶ―」等の活動を通して地域社会や国際社会に貢献していくメッセージを発信している。
  •  実験中の事故及び災害等が発生した際の対応等について、職員が効果的に利用できるよう緊急時の連絡先、各種規程、マニュアル等を保管した危機管理ライブラリーを設置し、全学の状況を把握し適切な対応がとれるよう努めている。
  •  新入生・教職員に対し、4種抗体検査(麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎)を実施し予防接種を勧奨している。また、濃厚接触者に対する麻疹ワクチンの接種、新たに設けた「麻疹登録制度」による学生への「麻疹登録済証」の交付等にも取り組んでいる。
  •  卒業生と大学との関係を維持・発展させることを目的として、神戸大学卒業生ネットワーク(KU‐Net)を構築し、本格的運用を開始している。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、大腸菌を用いた遺伝子組み換え実験が適切な方法で行われていなかったことについては、講習会・研修会等の実施、研究室単位での教育訓練等の実施、安全管理に関する啓発活動の実施等を実施し、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載38事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  仕事で使える英語プレゼンテーション力「PEP」(Professional English Presentation)を鍛える特別履修コースを開設し、2年次後期の集中受講により卒業年次までに、TOEIC800点以上を取得の上、最終試験に合格した者に大学から公式の「PEP Certificate」資格を付与している。
  •  全学でのファカルティ・ディベロップメント(FD)の本格的な展開として、ピアレビュー(教員相互の授業参観)を全部局で実施することを決定し、部局ごとに実施計画を策定した上で実施し、授業参観レポートやピアレビューレポートを作成している。
  •  県内外の高等学校からの施設見学や入試説明に積極的に取り組み、46校2,659名が来学している。
  •  教育の達成状況の検証・評価のため、「授業評価アンケート」、「卒業・修了時の学生へのアンケート」、「卒業・修了生アンケート」、「就職先機関へのアンケート」を実施し、その結果を分析・検証している。「授業評価アンケート」では、質問項目を統一し、全学部・研究科の評価結果を同じ基準で俯瞰できる仕組みとしている。
  •  学生生活上の諸問題について、学生センターに「学生なんでも相談」窓口を設置し、問題解決へのアドバイスを行うほか、相談内容によって、さらに適切な相談窓口等を紹介している。
  •  特命職員制度を活用して、知的財産関係についての有識者を採用し、工学部及び医学部において、知的財産関係の授業を担当している。
  •  国際的な学術・文化交流と情報発信を行うため、中国事務所(北京)を拠点として学術交流を推進した成果として「北京神戸大学デー」を開催し、国際シンポジウム、講演会等による討議・交流を行っている。
  •  中国・四川大震災に際して調査団を現地に派遣し、「四川大地震での日本企業被災状況とBCP(Business Continuity Plan)」調査及び「四川大震災による斜面災害」の現地調査を通じ、「災害リスク減災戦略研究」を推進するとともに、現地の成都理工大学と連携を深め学術交流協定を締結している。
  •  ウェブサイトによる履修登録システム(教務情報システム)に統一様式のシラバス機能を追加し、開講科目のシラバス登録を行って運用を開始するとともに、休講補講掲示機能も導入し運用を開始している。
  •  授業外での外国語体験の場として「ランゲージ・ハブ室」、「CALL教室」を開放し、学生の自主学習意欲をサポートしている。

附属病院関係

  •  「社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」の実績を踏まえ、病院独自の対応で医学教育専門家を招へいし、初期・後期研修医に対して内科医/クリニシャンエデュケーターの米国式養成コースを開催している。また、財団法人先端医療振興財団と診療連携に関する協定を締結し、難治性骨折の臨床研修を推進するなど、先端医療分野の開拓を進めている。診療では、リウマチ科、感染症内科、病理診断科、放射線腫瘍科を新たに設置するなど、がん診療連携拠点病院や特定機能病院としての診療機能の充実に取り組んでいる。
     今後、広域救急医療のための救命救急センターの設置に向けた検討や、9つの戦略プロジェクトの着実な成果、組織横断的な事務部門チームによる戦略的な経営企画・立案のさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  「大学病院連携型高度医療人養成推進事業(山陰と阪神を結ぶ医療人養成プログラムほか5プログラム)」により、具体的な専門医・臨床研究者養成プログラムの策定に取り組んでいる。
  •  兵庫県病院局、兵庫県丹波市と「地域医療循環型人材育成プログラム」の実施協定を締結し、3名の医師がプログラムに参加しており、地域医療貢献に繋がっている。
(診療面)
  •  小児医療を強化するために従来の病棟を「こどもセンター」としてリニューアル、また、集中治療室(ICU)を12床増床(合計36床体制)し、重症患者に対する診療体制を強化している。
  •  神戸広域脳卒中地域連携協議会に参加し、脳卒中連携パスを実施、院内においても新たに25件のクリティカルパスが認定され、合計105件のクリティカルパスが運用されている。
  •  「かかりつけ医紹介システム」の構築に向け、神戸市医師会主催の会議へ出席するとともに、開業医との顔の見える連携作りのため診療所訪問を行うなど、地域医療連携に取り組んでいる。
(運営面)
  •  病院経営企画課を新たに設置、また、診療科支援チーム、診療情報分析チームの2つの組織横断的な特別チームを設置して、経営改善のための企画立案機能の強化を図っている。
  •  コンサルタント会社との共同作業及び経営学研究科の教員助言等により、医師・コメディカルを含めた9つの戦略プロジェクトにより、診療科別の目標管理を設定し、経営に対する意識やコスト管理意識の向上に取り組んでいる。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --