国立大学法人兵庫教育大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 兵庫教育大学は、教員の資質能力の向上に対する社会的要請に応えるために、「兵庫教育大学21世紀新構想大学プラン」を策定し、教育実践学の確立及び教育研究における高度の質の達成、学校教育における実践的指導力を持った教員の養成と現職教員としての優れた資質・力量を備えた人材の育成、及び教育実践学の高度な研究・指導能力を持った人材の輩出等5つの基本的目標を掲げ、その実現に向けて取り組んでいる。
 業務運営については、教員の業績評価を本格実施し、平成19年度から既に人事評価を本格実施している附属学校教員及び事務職員と併せて、評価結果を処遇に反映しており、評価できる。
 この他、教職大学院の設置に伴い、既設大学院修士課程の改革に取り組み、教育研究組織の必要性、改編を行う専攻・コースの制度設計の考え方等について、大学院組織改革検討委員会において検討を行い、大学院修士課程の新しい組織編成案を決定している。
 一方、大学院専門職学位課程(教職大学院)について、平成20年度において一定の学生収容定員の充足率を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。また、男女共同参画の推進のための具体的な行動計画や推進体制が整備されておらず、環境醸成を図る取組も乏しいことから、積極的な取組が求められる。
 財務内容については、科学研究費補助金の獲得に向けて、学系長会議において「科学研究費補助金の採択件数を増やすための方策」を策定し、説明会・相談会の実施、学内アドバイザリースタッフによるサポート等に積極的に取り組んだ結果、獲得額は約7,900万円(対前年度比約2,000万円増)となっている。
 教育研究の質の向上については、教員就職率が83.5%で、5年連続で全国第1位を達成しているとともに、教育内容の充実を図るため、新教育課程を開始して新しい時代の要請に応える人材を養成することとしている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教員の業績評価を本格実施し、平成19年度から既に人事評価を本格実施している附属学校教員及び事務職員と併せて、評価結果を平成21年1月の昇給から反映しており、評価できる。
  •  「大学広報・社会連携・現職教員・同窓会」、「国際交流」、「教育支援」、「学生支援」、「附属学校園」の5分野を担当する5名の学長特別補佐を置き、それぞれの担当領域において、学長のリーダーシップの発揮と円滑な大学運営に貢献している。
  •  教職大学院の設置に伴い、既設大学院修士課程の改革に取り組み、教育研究組織の必要性、改編を行う専攻・コースの制度設計の考え方等について、大学院組織改革検討委員会において検討を行い、大学院修士課程の新しい組織編成案を決定している。
  •  教職大学院の教育課程の主要部分である学校現場等における実習を円滑に行うため、教育実践コラボレーションセンターが203校ある実習校(連携協力校)の実態把握を行い、実習生の研究内容のマッチング作業、大学と実習校の共同研究の企画・立案等を通して、大学と教育現場とのコーディネートに取り組んでいる。
  •  平成18年度に構築した「組織業務評価システム」を有効に機能させるため、検討を行い、FD活動推進チームの設置や国際交流に関する業務の事務一元化等、既存業務を見直している。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した中期計画の多くの事項に対して年度計画が設定されていないことについては、大学全体としての適正な目標管理のため、継続的に中期目標・中期計画に対応した年度計画を適切に設定し、中期目標の達成に至る道筋を社会に広く示しつつ、計画的な業務の推進に努めることが期待される。(平成21年度計画では改善済み)

平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  大学院専門職学位課程(教職大学院)について、学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。
  •  男女共同参画の推進のための具体的な行動計画や推進体制が整備されておらず、環境醸成を図る取組も乏しいことから、積極的な取組が求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成のためには順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、大学院専門職学位課程(教職大学院)において学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったほか、教職員について人事評価を本格実施し、評価結果を処遇に反映する取組が行われていること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  科学研究費補助金の獲得に向けて、学系長会議において「科学研究費補助金の採択件数を増やすための方策」を策定し、説明会・相談会の実施、学内アドバイザリースタッフによるサポート等に積極的に取り組んだ結果、獲得額は約7,900万円(対前年度比約2,000万円増)となっている。
  •  管理的経費の抑制のため、省エネルギー、業務の外部委託、契約方式等の見直し、消耗品の節約等の取組により、平成19年度に比べ0.6%の節減となっている。
  •  教育研究充実積立金を活用して、教育実践学の研究拠点となることを目指した「教材文化資料館」の設置に向けて取り組んでいるほか、共同研究や国際交流等の推進のため、総合研究棟の新設のための準備を行っている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実,2.情報公開等の推進

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  平成19年度から一般に公開している学術情報リポジトリのコンテンツの充実を図り、教育現場にとって関心の高い教材資料や学術雑誌掲載論文等を551件新たに登録し、総登録件数は1,486件となっている。
  •  海外からの来学者や留学生の増加等に伴い「平成20年度大学概要」は従来の和文に英文を併記するとともに、ウェブサイトの留学・国際交流のトップページを整理・改修し、「留学ガイドブック」については4か国語(日本語、英語、韓国語、中国語)で構成している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載3事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  施設設備の点検・評価に基づき、施設の効率的な維持管理と教育研究スペース等の有効な活用を図るため、建物基準面積算出表を作成している。
  •  省エネルギー並びに契約電力超過対策を検討し、学内に周知するとともに、環境保全の状況に関する報告書を作成している。
  •  平成19年度に作成した「危機管理対応マニュアル」について見直しを行い、自動体外式除細動器(AED)による救命措置に関する内容を更新し、全教職員に配付して、周知徹底を図っている。

【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載4事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  平成19年度に作成した新教育課程に基づき、学部新入生を対象に基礎的なアカデミック能力を育成する「初年次セミナー」や、情報活用能力の向上のために「情報処理基礎演習2.」を新設している。
  •  民間奨学団体の新たな推薦枠を開拓し、平成20年度に2つの奨学団体から奨学金を受給している。また、新たに民間株式会社からの寄附金を基金として、現職教員の学生を対象とした教員育成研究奨学金事業を開始している。
  •  大学教育改革支援事業をはじめとして、各種プロジェクト研究に取り組み、研究発表会の実施や研究報告書等の公表によって、地域社会に研究成果を還元している。
  •  大学教員を講師として近隣の学校教育現場に派遣し、園児・児童・生徒の指導や教員支援を行う「スクール・パートナーシップ」事業で、特例を除く全大学教員の参加登録を得たほか、派遣実績で109件(対前年度比13件増)を達成している。
  •  兵庫県内28大学の産学官連携活動を推進する「ひょうご神戸産学学官アライアンス」に加盟し、携帯電話用学習教材開発等の共同研究のほか、教育関連企業と新たに連携し、新学習指導要領に対応した教育方法に関する共同研究を開始するなど、産学連携の共同研究を推進している。
  •  文部科学省研究開発学校の指定事業において、地域の「子育て支援プログラム」との連携を推進し、地域における保護者支援に貢献しながら「親育ちの評価システム」を作成し、検証と提言を行っている。
  •  小学校における英語活動等国際理解活動推進事業では大学教員と附属小学校教員のほか、地域の教育委員会と連携した実践的な共同研究を実施している。
  •  新たに屏東教育大学(台湾)及び浙江師範大学(中国)との間で交流協定を締結したほか、独立行政法人国際協力機構(JICA)の協力を得て、国際理解と国際協力教育を推進・実践する教員の養成を進める「海外協力教育プログラム」を大学院修士課程で開始するなど国際交流を推進している。
  •  平成20年3月卒業者(教員養成課程)の就職状況は卒業者数170名に対し、正規採用が86名、臨時的任用が56名で、平成20年教員就職率は83.5%、進学者を除くと87.1%となっており、5年連続で全国第1位を達成している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --