国立大学法人大阪大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 大阪大学は、教育・研究・社会貢献を通して国民と社会の信託に応えることにより、「地域に生き世界に伸びる」という理念の実現に向けての取組を積み重ね、業務運営、教育研究等のさらなる推進に取り組んでいる。
 業務運営については、今後の中長期的な大学運営の方向性を示す「大阪大学グラウンドプラン」及びその取組を示す「大阪大学活動方針2008」を策定し、戦略的な運営に取り組んでいる。また、全学及び部局の産学官連携問題委員会の見直しを行い、運営のスリム化を図っている。
 財務内容については、補助金等の事業執行に際して教員個人の負担を軽減し、研究の円滑な進展に寄与するため研究資金立替制度を有効活用している。また、複写機契約の随意契約から一般競争入札による総合複写業務支援サービス契約への見直し等により大幅な経費等の節減と業務の軽減が期待される。
 自己点検・評価及び情報提供については、概算要求に係る学内ヒアリングにおいて、達成状況評価の結果と各部局の特記事項及び留意事項を参考資料として有効に活用している。
 環境への取組については、付近住民に開かれたキャンパス整備を行っており、財団法人都市緑化基金から第19回「緑のデザイン賞」緑化大賞を授与されている。
 教育研究の質の向上については、大学院生を対象にした大学院高度副プログラムを開始している。また、産学連携推進本部による技術移転、共同研究等の推進等により新たな共同研究講座の設置や、次世代照明デバイス等の大型の共同研究が拡大するなど効果が現れている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  経営協議会委員の意見を取り入れ、今後の中長期的な大学運営の方向性を示す「大阪大学グラウンドプラン」及びその取組を示す「大阪大学活動方針2008」を策定し、戦略的な運営に取り組んでいる。
  •  総長裁量枠である「大学基盤推進経費」について、競争的資金等の間接経費の大学裁量分からの財源組み入れの仕組みを、定額から定率に変更するなど、より機動的な配分が可能となるよう改善している。
  •  概算要求事項の選定・優先度等の検討に「組織評価」を活用し、その結果を学内の予算配分に反映している。
  •  男女共同参画を一層推進するための検討資料とするために、学内に女性教員雇用についてのアンケート及び19部局に対するヒアリング調査を実施し、調査結果をフィードバックするなど必要な改善に取り組んでいる。
  •  全学及び部局の産学官連携問題委員会の見直しを行い、7部局の産学官連携問題委員会を廃止し、当該部局の教授会等での審議を行うことができるよう運営のスリム化を図っている。
  •  卓越した研究を行っている研究者に対しては、部局長の裁量で学内委員会委員を免除するなど教育・管理運営上の負担軽減を行っている。
  •  より優秀な研究者の確保及び育成を図るため、常勤の研究員を雇用することのできる制度導入を決定し、専門業務型裁量労働制を適用するなど、多種多様な個々の研究活動に即したフレキシブルな労働時間とすることができるようにしている。
  •  業務改善提案制度において、従来は「業務改善提案書」により、現状、問題点、提案内容及び予想効果を記載の上で応募を求めていたものを、今後はアイデアのみでも応募を可能としたことにより、大学全体の業務改善に対する意識の向上を図っている。
  •  これまで自主運営されていた吹田地区の保育所を学内保育施設として設置し、受入れ人数を増員し、受入れ年齢を拡大するなど教職員にとってより働きやすい環境を整備している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載48事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  補助金等の事業執行に際して教員個人の負担を軽減し、研究の円滑な進展に寄与するため研究資金立替制度を有効活用している。
  •  発明承継判定の新基準として活用を重視したより総合的な評価法を運用したことにより365件の申請を行い、特許権料による収入は8,034万円(対前年度比668万円増)となっている。
  •  複写機の契約の見直しを行い、随意契約から一般競争入札による総合複写業務支援サービス契約により、大学全体で賃貸借契約と保守等契約を一本化し、4年の複数年契約を締結したことにより、従来と比較して平成21年度から平成24年度の4年間の節減総額は、約4億5,000万円となることが見込まれ、大幅な業務の軽減にもつながっている。
  •  事務手続きの簡素化等を実施する中で、人件費を含めた行政コストの低廉化に資する事務合理化案(14件)を実施し、業務量として年間約3,000時間の削減を図っている。
  •  長期・短期を組み合わせた資産運用により約1億6,204万円(対前年度比約4,760万円増)の運用益を得ており大学基盤推進経費の財源として有効に活用している。
  •  一般管理費比率が2.7%(対前年度比0.4%増)となっていることから、削減に向けさらなる取組が期待される。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載16事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  概算要求の学内ヒアリング時において、達成状況評価の結果と、各部局が作成した特記事項及び留意事項を参考資料としており、また、年度計画の進捗状況を確認するなど有効活用している。
  •  「大阪大学の最先端研究」を発行し、研究懇話会等での配付や、3か所の海外拠点を通じ、海外の研究者への情報発信ツールとして活用するなど研究成果に関する広報活動を強化している。
  •  ウェブサイト管理を機動的に実施するウェブデザインユニットを新たに組織し、英語版に関しては、英文エディターを雇用した体制作りを行い、日英ページコンテンツの一対一対応を実現する準備を進めている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備等、2.安全・衛生管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  各部局への施設キャラバンによるプリメンテナンスの実施に対する啓発活動の結果、維持管理マニュアルの活用、屋外階段の錆止め塗装、駐車場の舗装等のプリメンテナンスを効果的に実施している。
  •  これまで一部利用者負担としていた附属図書館のデータベースサービスを無料化したことにより利用件数は40万件を超えている。
  •  新たな植栽整備を実施し、付近住民に開かれたキャンパス整備を行っており、既存の景観を活かした植栽整備が周辺環境に配慮した計画として、財団法人都市緑化基金から第19回「緑のデザイン賞」緑化大賞を授与されている。
  •  施設情報管理システムにエネルギーの使用実績を入力し、電力量の需要予測を行い、学内専用ポータルサイトに「週間でんき予報」を公表するなど省エネルギー意識の啓発を行っている。
  •  事故災害のレベルに応じた全学的な緊急連絡マニュアルを整備し周知徹底を図っている。また、核燃料物質の適正管理を図るため、核燃料物質管理室による全学を統括管理する体制を整備し、学内すべての取扱施設を巡視点検している。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、研究費不正使用防止のための体制・ルールのうち研究機関における委員会の設置等が整備されていなかったことについて、調査委員会規則の制定、不正防止計画の策定、競争的資金等の使用に係るルールや意識に関するアンケート調査の実施、相談窓口の設置等、指摘に対する取組が行われている。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、安全衛生ガイドライン、安全衛生教育ビデオ等を作成するまでには至っていなかったことについて、作成を完了し、全教職員への配付、講習会への活用等、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載31事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  大学院生を対象に専攻のカリキュラムに加えて、専門分野を横断して幅広い分野の素養を身につけ、高度の専門性を獲得するため、副専攻的な教育を実施する独自の大学院高度副プログラム(14件)を開始し、全プログラムで527名が受講している。
  •  これまで助教を対象に行われてきた全学ファカルティ・ディベロップメント(FD)研修を全教員を対象として2度実施し、341名が参加している。
  •  共通教育において優秀な成績を上げた学生50名に対して大阪大学教養教育奨学金(総額約1,000万円)を授与するとともに、課外研究奨励費(800万円)、課外活動総長賞(200万円)等による修学支援と課外活動支援を行っている。
  •  教養を育む環境整備の一環として、国立美術館・国立博物館のキャンパスメンバーズ(関西地区利用)に加入し、学生の無料入館を可能にしている。
  •  世界トップレベル研究拠点(WPI)である免疫学フロンティア研究センターにおいて、免疫学グループとイメージンググループの連携を強化し、さらに第3の研究グループとしてバイオインフォマティクスグループを編成し研究を推進している。
  •  研究・産学連携室の下に産学連携推進本部を設置し、特許の権利化、技術移転、共同研究を推進する体制を整備したことにより、新たに7つの共同研究講座が設置され、次世代照明デバイス及び薄膜太陽電池の開発等の大型の共同研究が拡大するなど効果が現れている。
  •  独立行政法人情報通信研究機構との間で、「脳情報通信分野における融合研究に関する基本協定」を締結し、脳情報通信の研究開発を加速させる体制強化を図っている。
  •  地域の活性化並びに知的好奇心の高揚に寄与するために社学連携活動の全学的発信拠点として、大阪大学21世紀懐徳堂を設置し、「中之島講座」等の事業を行っている。
  •  欧米の有力大学から理工系の学生の受入れを推進するため、短期プログラム「FrontierLab@OsakaU」を開始し、31名を受け入れている。

全国共同利用関係

  •  全国共同利用の附置研究所、研究施設である、蛋白質研究所、接合科学研究所、核物理研究センター、レーザーエネルギー学研究センター、サイバーメディアセンターでは、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。
  •  蛋白質研究所では、日本蛋白質構造データバンク(PDBj)を管理・運営し、蛋白質の立体構造情報のデータベース化を推進しており、平成20年度は新たに世界全体の28%(1,993件)のデータ登録を行っており、ウェブサイトから取得されるデータ件数は18,913,247件(対前年度比17,814,716件増)となっている。
  •  レーザーエネルギー学研究センターでは、高速点火実証実験(FIREX‐Iプロジェクト)等の推進を目指し、世界最高出力のLFEXレーザーを完成させている。また、特定非営利活動法人レーザー技術推進センターの協力を得て2シフト制を導入し、稼働時間の延長(18時以降)が図られ、激光XII号レーザーのショット数が649ショット(対前年度比14%増)となっている。

附属病院関係

<医学部附属病院>
  •  卒後教育開発センターを中心に、教育の質の向上に努めており、初期臨床研修では、2年目の研修に選択コース方式を採用して、研修医の自主性を尊重したプログラムを展開している。また、未来医療センターでは、臨床研究プロトコールの開発支援のため4つのワーキンググループを設置し、10件の臨床プロジェクトが進行中であり、先端医療の開発・応用の実践に取り組んでいる。診療では、国立大学病院長会議の医療安全管理体制担当校として、医療安全や医療の質向上に向けた体制を構築するとともに、大阪府の委託を受け、ドクターヘリの運行を開始するなど、地域医療貢献に大きく寄与している。
     今後、引き続き移植医療・先端医療・トランスレーショナルリサーチなどの更なる先進的な取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  「大学病院連携型高度医療人養成推進事業(大阪大学・大学病院連携型専門医養成事業)」により、専攻医を広く全国より募集するため説明会を開催している。
  •  臨床治験事務センターを臨床試験部へ改組し、すべての疫学・臨床研究の審査を支援する自主臨床研究部門を新たに設置している。
(診療面)
  •  救命救急センターとの連携により、脳卒中急性患者を200名以上受入れるとともに、tPAによる急性期血栓溶解療法を20例実施し、早期治療に対応している。
  •  移植医療については、心肺同時移植の一例目を実施するとともに、国内で最も多い脳死臓器移植を実施するなど、大学病院として高度な医療提供の役割を担っている。
  •  診療におけるセンター化を推進しており、平成19年度評価結果に対するその後の進捗状況も詳細に記載されており、着実な成果をあげている。
(運営面)
  •  2つの保育所開設により、女性医師の育児サポート体制を強化している。
  •  副病院長を室長とする、病院人事労務室、病院企画推進室、病院経営企画室を設置し、戦略的中枢機能の強化を図るとともに、意思決定のさらなる迅速化に繋げている。
  •  総長の下に附属病院経営改革ワーキンググループを設置、業務改善増収方策の検討を行い、病院経営適正化の推進を図っている。
<歯学部附属病院>
  •  歯科研修医に対して、医療安全や感染対策、臨床研究等に関する講演会・ガイダンスを行っており、教育体制の向上に取り組んでいる。また、垂直歯根破折歯に対する保存的治療法の開発をはじめ、ほか4プロジェクトの臨床研修を推進しており、先進医療の充実に努めている。診療では、時間外救急歯科治療患者(約2,500名来院)の対応によって、吹田市長から感謝状を贈呈されるなど、地域の中核病院としての使命を果たしている。
     今後、再生歯科医療等の臨床的研究の向上に努めるとともに、医学部附属病院とも緊密な連携を図りながら、病院経営基盤の健全な確保に向けた更なる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  歯科臨床研修の拠点とするために一般歯科総合診療センターの充実とスキルアップラボラトリーの整備を行うとともに、歯科医師臨床研修評価システム(DEBUT)の運用・改善を全国の中心となって実施している。
  •  厚生労働省事業「平成20年度再生医療推進基盤整備事業」の支援を受け、細胞処理センター(Cell Processing Center)を設置し、再生歯科医療研究の集中化を図っている。
(診療面)
  •  社会的要請かつ専門性の高い顎変形症や口唇口蓋裂に対するチーム医療の充実に取り組んでいる。
  •  総合案内及び医療相談に看護師長を配置し、患者の案内、各種相談に対応させるとともに、ニュースレターを新たに作成して月1回、最新の歯科医療情報を発信している。
(運営面)
  •  診療科ごとの明確な目標値の設定、診療組織の整備、診療室の改装等の努力により、外来患者の大幅な増加に繋がっている。
  •  病院長、副病院長、評議員からなる執行部委員会を開催して病院運営の基本案を作成した後、病院運営委員会で迅速な意思決定を図っている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --