国立大学法人京都教育大学の平成 20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 京都教育大学は、教育研究水準の向上を図り、教養高き人としての知識、情操、態度を養うとともに、教育専門職に必要な資質、能力を有する人材の養成を行うことを社会的使命として、「教育研究の活性化」や「実践力のある教員の養成」等に取り組んでいる。
 業務内容については、学長のリーダーシップの下、法人運営の効率化と4法人室(企画調整室・教学支援室・大学評価室・情報化推進室)の綿密な連携を目指し、これまでの4室による合同会議を「法人室会議」とし、定期的に開催している。
 一方、男女共同参画の推進に向け、行動計画や推進体制が整備されておらず、環境醸成等を図る取組も乏しいことから、積極的な取組が求められる。
 財務内容については、大学ウェブサイトにコピー用紙使用状況を掲載したほか、コピー機器使用に関する啓発活動を実施するなど、経費節減方策の充実に努めている。
 自己点検・評価については、年度計画に掲げている大学院における現職教員確保について、目標を達成しておらず、着実な取組が求められる。
 その他業務運営については、CO2排出抑制の取組として、平成22年度末までに大学の温室効果ガスの総排出量を1%削減することを目標とする「温室効果ガス排出抑制等のための実施計画」を策定している。一方、学生による不祥事が発生していることから、今後再発防止に向けた取組が求められる。
 教育研究等の質の向上については、教育実習の効果をより高めるため、実習と並行した新設科目「初等教科教育実践論」を導入し、学部における教員養成を実践的な方向に改革しているほか、7つの私立大学と連携して連合教職実践研究科(教職大学院)を開設し、既存の教育研究科のカリキュラム改革も進めている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学長のリーダーシップの下、法人運営の効率化と4法人室(企画調整室・教学支援室・大学評価室・情報化推進室)の綿密な連携を目指し、法人室会議を定期的に開催している。
  •  大学の運営・評価等において、経営協議会の学外委員、連合教職実践研究科の外部評価委員会委員、各附属学校の学校評議員をはじめ、教育研究以外の委員会等でも外部有識者の積極的な活用を図っている。
  •  役員会による内部監査室の評価において、「科学研究費補助金の監査を中心としており、全般の業務監査が不十分である」との指摘を受けており、室員を増員することにより充実と強化を図ることとしているが、今後、改善に向けた取組が期待される。
  •  平成19年度に着手した大学教員個人評価の試行について、個人評価及び分析を行い、各教員へ評価結果を通知している。今後、附属学校教員、事務職員も含めた本格実施及び処遇等への反映に向けての取組が期待される。
  •  定年延長について段階的に65歳まで延長する制度と、これに併せて、特定教員に関する規程を制定し、学部及び大学院教育の充実のため定年年齢を超える教員を採用する制度を平成21年4月から導入することとしている。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  男女共同参画の推進に向け、行動計画や推進体制が整備されておらず、環境醸成等を図る取組も乏しいことから、積極的な取組が求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載25事項中すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善、4.人件費削減の取組

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  科学研究費補助金の間接経費の一部を教員の所属する学科等に配当して研究条件の改善を図っている。
  •  大学ウェブサイトに掲載している「省エネ・経費節減への取り組み」の項目にコピー用紙使用状況を掲載したほか、コピー機器使用に関する啓発活動を実施するなど、経費節減方策の充実に努めている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に 人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究 の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実,2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  中期計画・年度計画の進捗状況の収集については、表計算ソフトを使った「自己点検ファイル」により管理を行っており、情報・意見交換の手段として活用し効率化を図っている。
  •  「学術情報リポジトリ」の構築のため、サーバー機器の購入、セットアップ作業及びテストデータ投入を終え、試験運用を開始している。
  •  教員情報データベースの継続的な情報収集に努め、論文352件、著書95件、解説・報告書等124件、芸術作品等192件等を新たに入力している。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「大学院における現職教員確保については、教育学研究科と連合教職実践研究科との特徴を活かしつつ3分の1確保を目指す」(実績報告書19頁・年度計画【21‐3】)については、市教育委員会及び府教育委員会との折衝等取り組んでいるものの連合教職実践研究科の現職教員占有率が26%となっており、年度計画で目指す3分の1の割合を満たしていないことから、年度計画を十分には満たしていないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成のためにはやや遅れている

(理由) 年度計画の記載6事項中5事項が「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  安定した施設環境確保に視点を置き、附属学校においては教育目標を明記し団地ごとに施設整備計画図等をまとめるなど、キャンパスマスタープランの改訂を行っている。
  •  CO2排出抑制の取組として、環境ワーキンググループにおいて検討を重ね、平成22年度末までに大学の温室効果ガスの総排出量を1%削減することを目標とする温室効果ガス排出抑制等のための実施計画を策定し、加えて、それを進めるためのアクションプログラムを策定している。今後、計画的に取り組んでいくことが期待される。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  学生の集団による不祥事については、事件に対する大学側の認識が不十分であったこと、このような問題に対応する取組を行ってきておらず、危機管理の体制が十分には機能していなかったこと等から、今後再発防止に向けて全学的な取組を徹底することが求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められるが、危機管理への対応策に改善が求められること等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  平成18年度に入学定員を学校教育教員養成課程へ一本化する改組を行ったことに伴い、新たに教育実習と連動した「初等教科教育実践論」を必修科目として導入するなど、学部における教員養成をより実践的な方向へ改革している。
  •  教育実践力を備える多様な教育者の育成を目指して、7つの私立大学と連携して連合教職実践研究科(教職大学院)を開設するとともに、既存の教育学研究科のカリキュラムもより実践的な方向へ改革を進めて2つの大学院を併設させている。今後、連合のメリットを活かした展開が期待される。
  •  成績評価におけるグレード・ポイント・アベレージ(GPA)制度の導入に向け、評価区分を4段階から5段階へ変更することを決定したほか、評価基準に関する調査を行うなど、評価方法の見直しを進めている。
  •  「教職キャリア実践論」の非常勤講師枠を拡大し、特任教員2名、非常勤講師4名(2名増)の体制としたほか、「教員採用試験対策総合セミナー」を開催するなどキャリア教育・就職支援を充実させている。
  •  知的財産GP「知的財産創造・活用力を育成する教員の養成」及び特別支援GP「KYOの特別支援教育トライアングルプラン」の研究成果をハンドブックや報告書としてまとめている。
  •  京都府・市教育委員会及び京都府内の大学と連携し、「京都地区大学連携教員免許状更新講習連絡協議会」を設置・開催しているとともに、教員免許状更新講習を試行している。
  •  7つの附属学校が一堂に会して、それぞれの研究の成果について報告し合う「京都教育大学附属学校園総合研究発表会」を開催している。
  •  教員が一定期間集中的に調査・研究・研修に従事し、自己研鑽や専門分野の教育研究能力の向上を図るサバティカル制度を導入するため、「京都教育大学サバティカル研修規程」を制定している。
  •  平成20年3月卒業者(教員養成課程)の就職状況は卒業者数213名に対し、正規採用が70名、臨時的任用が52名で、平成20年教員就職率は57.3%、進学者を除くと69.3%となっている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --