国立大学法人滋賀医科大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 滋賀医科大学は、医療機関や医療情報のネットワーク構築が求められているなどの滋賀県の地域の特徴を考慮しつつ、独自の新しい医学・看護学の教育・研究を推進するとともに、その成果を滋賀の地から国内はもとより世界に発信し、医学・看護学の発展に貢献すること及び高度な医療を提供することによって、人々の福祉の向上に寄与することを目標としている。
 業務運営については、教職員に対し、「法人化前と比較して」、「働きがい、生きがいについて」、「コミュニケーションについて」及び「中期計画について」を共通テーマとした理事・監事ヒアリングを実施し、業務改善等に活用している。
 財務内容については、平成25年度までの中長期的視点に立った損益予測と資金管理計画の策定や、戦略的資源配分後に投資対効果・目標数値の達成状況について検証を行っている。
 自己点検・評価及び情報提供については、独自に目標・計画データベース「進捗ナビ」を構築し、中期計画・年度計画の進捗状況管理、実績報告書作成作業等の効率化が図られ、関係教職員の実務負担が軽減されているなど、評価できる。
 教育研究の質の向上については、特任教授の配置や学長裁量経費の配分等による5つの重点領域に対する支援を行った結果、栄養と血圧に関する国際共同研究の成果が海外主要科学雑誌に掲載されるなどの効果が現れている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  役員会で議論された課題をリスト化し、役員や各課室長に会議終了後速やかに周知するとともに、課題や対応状況等のウェブサイト上での可視化に取り組んでいる。
  •  全教職員のうち、74名の教職員に対し、「法人化前と比較して」、「働きがい、生きがいについて」、「コミュニケーションについて」及び「中期計画について」を共通テーマとして理事・監事ヒアリングを実施し、業務改善等に活用している。
  •  平成21年度から、大学院博士課程の5つの全専攻に「高度専門医養成部門」を開設することとし、大学院教授制度を設けている。
  •  客員教員、特任教員、大学院教授、病院教授等の制度を活用し、教育・研究・診療体制の充実を図るとともに、医員の週4日勤務制の導入、看護部における2交代制の推進、夜勤専従看護師の配置等、柔軟な勤務時間体制を促進している。
  •  若手事務職員を中心とした業務の電子化(効率化)プロジェクトにより、共通テーマに沿った取組と各課でテーマを設定して、業務の電子化・効率化を推進し、スクリーン会議による会議資料の削減、出張報告書等のウェブサイト掲載・電子化することにより業務時間を短縮している。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  女性教員比率については、増加しているものの、男女共同参画のための具体的な行動計画や推進体制が整備されておらず、環境醸成を図る取組も乏しいことから、積極的な取組が求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載47事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  法人化以降役員会で審議され投資した戦略的資源25件について、資源配分後検証ワーキンググループで投資対効果・目標数値の達成状況について検証を行っている。
  •  平成25年度までの中長期的視点に立った損益予測と資金管理計画を策定し、将来の大学経営の状況を予測しつつ、適切な経営戦略を随時確認しながら実施している
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載35事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  独自に目標・計画データベース「進捗ナビ」を構築し、中期計画・年度計画の進捗状況管理、実績報告書作成作業等の効率化が図られ、関係教職員の実務負担が軽減されているなど、評価できる。
  •  第2期中期目標・中期計画策定の資料とするため、教員と事務職員からなるSWOT分析ワーキンググループを設置し、大学の強みと弱み及び外部環境変化の分析を行い、その結果を基に課題や改善策等について検討している。
  •  ブランディングプロジェクトを始動させ、新たにロゴマークを策定するとともに、各種グッズのデザインを一新する等の取組を実施している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある

(理由) 年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるほか、自己点検・評価作業の効率化・負担軽減を図る取組が行われていること等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理、3.基本的人権等の擁護

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  建物及び附帯設備の補修等の必要性について把握するため、施設課相談依頼票を提出させた上でヒアリング等を行い、緊急性のあるものから順次施工している。
  •  学内ESCO(Energy Service Company)事業(独自の省エネルギー対策)として継続6事業と新規8事業の合計14事業を実施し、ガス及び電気消費量の削減を図っている。
  •  新たに作成した「緊急時対応カード」を全教職員及び全学生に配付し、常時携帯させることにより、緊急事態発生時における連絡体制の周知徹底を図っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載26事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  平成21年度入学者から、医学科学生の入学定員を10名増員するとともに、滋賀県より奨学金が貸与され、医師の定着策が図られている。
  •  臨床実習・アドバンスOSCE(客観的臨床能力試験)の実施・スキルズラボのシミュレーター活用により、学生の身体診察技能・急性期重症患者処置能力・救急蘇生能力の向上に取り組んでいる。
  •  急性期重症患者に対する臨床判断能力の向上を目的として、臨床実習(第5学年)において、定期的に急性期重症患者のシミュレーションや救急蘇生シミュレーションのトレーニングを行っている。
  •  里親(医師・看護師)と学生とのマッチングにより、地域(里親)による学生支援プログラムを継続して実施し、学生が地域医療を実体験している。
  •  副学長をトップとする研究活動推進室を中心に、5重点領域分野の中間評価を行い、その結果を公表している。
  •  特任教授の配置や学長裁量経費の配分等による5つの重点領域に対する支援を行った結果、栄養と血圧に関する国際共同研究の成果が海外主要科学雑誌に掲載されるなどの成果が出ている。
  •  医師不足に陥っていた地域病院に、新たに内科医4名を派遣することにより、内科入院受入れや夜間救急医療の再開を可能としている。
  •  早い段階で医学・看護学を身近に感じてもらえるように、県内高等学校との間に高大連携協定を行い、授業を行うとともに、県内の小中高校生を対象とした出前授業を実施している。
  •  県内5病院の院長及び県がん患者団体連絡協議会等で「がん診療連携拠点病院フォーラム」を開催し、拠点病院の在り方の検討を行っている。

附属病院関係

  •  平成20年度の医師臨床研修医は募集定員46名の受入れを達成、また、初期研修プログラムの改善を図るとともに17回の卒後臨床研修セミナーを実施するなど、研修医教育の充実に努めている。また、6件の国際共同治験、小児領域の医師主導型治験4件(国立大学病院最多実施数)を実施するなど、臨床研究の強化を図っている。診療では、感染制御部を新設し感染防止体制の強化を図るとともに、麻酔科医や看護師の増員によって手術件数の増加(5,758件(対前年度比230件増))を達成している。
     今後、回復期リハビリテーション病棟新設後の運営、専門外来・センター化の機能集約型診療体制の強化に努めるとともに、専門診療と総合診療のバランスも十分考慮しながら、患者本位の医療の実践に向けたさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  大学病院連携型高度医療人養成推進事業(コア生涯学習型高度専門医養成プログラム)により、高度シミュレーターの整備、スキルズラボの充実を図っている。
  •  世界初のMR対応内視鏡やMR対応ロボット等の新しい技術を開発し、臨床例への応用を開始する取組を行っている。
(診療面)
  •  産科オープンシステムを維持し、ハイリスク妊娠症例を数多く受け入れており、新生児医療においても、新生児集中治療室(NICU)では、94.1%の稼働率を維持し、さらに、地域医療機関との連携による小児救急医療も充実させ、地域医療に貢献している。
  •  循環器内科では、難度の高い冠動脈疾患や不整脈に対するカテーテル治療を240例施行し、心臓血管外科では、冠動脈バイパス手術や大動脈手術を359例施行し実績を上げている。
(運営面)
  •  外来カルテの電子化の実現、手術オーダリングシステムの導入による手術スケジュール調整の合理化等、効率的な病院経営に取り組んでいる。
  •  医師不足に陥っていた東近江地区の病院に、新たに内科医4名の医師を派遣し、内科の入院受入れや夜間救急医療の再開につなげるなど、地域医療に貢献している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --