国立大学法人三重大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 三重大学は、教育・研究の実績と伝統を踏まえ「人類福祉の増進」、「自然の中での人類の共生」、「地域社会の発展」に貢献できる「人材の育成と研究の創成」を目指し、学術文化の受発信拠点となることを基本理念としている。
 業務運営については、学長による「業務改善活動ワークショップ」を開催し、管理職員における業務改善に対する意識改革を図っている。また、三重県内の6研究機関との緊密な連携の下で「女性研究者支援モデル育成」事業として、研究環境の整備や意識改革等、女性教員が研究と出産・育児等を両立し、その能力を十分に発揮しつつ研究活動を行える仕組みの導入を進めている。
 この他、伊賀市等との連携の下、伊賀地域を中心とした文化、教育、学術、経済及び社会の進展を図るため、創造開発研究センター伊賀研究拠点を設置している。
 財務内容については、研究領域横断型の「三重大学リサーチセンター」設置要項を整備して7つのリサーチセンターの設置や先端研究シンポジウム開催等により、外部資金獲得に向けた取組を推進している。
 環境に配慮した取組では、環境省の「容器包装3R推進環境大臣賞」の優秀賞を受賞している。
 教育研究の質の向上については、20科目のPBL(問題発見解決型学習)セミナーの開設、実践英語教育の充実、15科目のキャリア教育関連授業の開設、「大学生のためのレポート作成ハンドブック」の配布等、一般教育科目の指導方法改善のための組織的取組を行っている。また、大学間交流協定校のスリウィジヤ大学(インドネシア)との大学院レベルでのダブルディグリープログラムを締結し、国際的なカリキュラムを拡充している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学長による「業務改善活動ワークショップ」を開催し、管理職員における業務改善に対する意識改革を図っている。
  •  伊賀市等との連携のもと、伊賀地域を中心とした文化、教育、学術、経済及び社会の進展を図るため、創造開発研究センター伊賀研究拠点を設置している。
  •  年俸制の在り方・基本方針について検討を行い、関係規程を整備するとともに、創造開発研究センター伊賀研究拠点の准教授を年俸制適用職員として採用している。
  •  三重県内の6研究機関との緊密な連携の下で「女性研究者支援モデル育成」事業として、研究環境の整備や意識改革など、女性研究者が研究と出産・育児等を両立し、その能力を十分に発揮しつつ研究活動を行える仕組みの導入を進めている。
  •  教育職員の任期制の拡充等について検討し、平成21年4月開設の大学院地域イノベーション学研究科の全教員に任期制を適用することとしている。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題とした指摘事項については、大学院博士課程において、学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったことについては、93.2%となっており、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載31事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  研究領域横断型の「三重大学リサーチセンター」設置要項を整備して7つのリサーチセンターの設置や先端研究シンポジウム開催等により、外部資金獲得に向けた取組を推進している。
  •  大学後援会の母体となる「三重大学全学同窓会」を設立し、三重大学振興基金の募集活動を推進している。
  •  電気供給契約を複数年契約とすることで、使用料金に対して年1%の割引を受けることが可能となり、平成20年度の電気料金は5,558万円(対前年度比518万円減)となっている。
  •  学内ウェブサイトによる物品リサイクルシステム構築と運用開始等を実現させ、経費削減及び資源の有効利用を推進している。
  •  留学生宿舎を寄附金及び目的積立金で建設し、留学生受入れ支援体制を整備している。
  •  三重県内の高校生等の利便性の向上を目的に、予備校が行う大学入試模試への教室の新規貸付を行う他、有料職員宿舎の入居率向上を図るため、特任教員、研修医、独身者へも貸与資格を拡大するなど、貸付基準を緩和している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  産学連携、地域貢献活動の取組等を学長ブログとして日常的に配信し、10万件を越えるアクセスが記録されている。
  •  地元記者クラブ等へ積極的に情報提供を行い、大学関連の新聞記事について700件以上掲載されている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  全学を対象とした環境マネジメントシステム(ISO14001)の認証を継続するとともに、環境に配慮する取組である3R(Reduce、Reuse、Recycle)推進活動が評価されて、環境省の「容器包装3R推進環境大臣賞」の優秀賞を受賞しており、評価できる。
  •  施設マネジメント(不用物品の処分、備品・書類等の集約化)により、新しい組織のスペース(女性研究者支援室、知的障害者の雇用対策のためのスペース、地域イノベーション学研究科のためのスペース)を創出し、有効活用を図っている。
  •  施設・設備の維持管理を効率的に行うため、平成21年度から従来14業務に分割発注していた保全業務のうち、大学が直接契約する必要がある4業務を除き一元化し、複数年契約を行い、職員の業務軽減及び経費削減を図ることとしている。
  •  「危機管理計画書」をまとめ、想定する危機事象を13項目に分類し、分類ごとに担当理事や担当組織を定め、対応することとしている。
  •  研究室に直接納品される場合の受領・確認方法を統一するなど納入検収体制の見直しを実施している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  20科目のPBL(問題発見解決型学習)セミナーの開設、実践英語教育の充実、15科目のキャリア教育関連授業の開設、「大学生のためのレポート作成ハンドブック」の配布等、一般教育科目の指導方法改善のための組織的取組を行っている。
  •  専門教育においてPBL教育授業科目を200科目以上に拡充するとともに、e‐ラーニング「三重大学Moodle」を活用した授業を760科目に拡充するなど、学部教育や大学院教育の指導方法改善のための組織的取組を行っている。
  •  キャリア教育を充実するため、共通教育においてキャリア教育科目15科目を開講し、共通教育センターにキャリア教育を担当する特任教授(教育担当)を配置している。
  •  「クラブ・サークル顧問教員指針」の作成を行うとともに、活動中の事故防止に向けた注意喚起を行うとともに、「AED(自動体外式除細動器)研修会」、「安全対策セミナー」等を実施している。
  •  大学間交流協定校のスリウィジヤ大学(インドネシア)との大学院レベルでのダブルディグリープログラムを締結し、国際的なカリキュラムを拡充している。
  •  タイの協定大学との覚書に基づき、7名を国際インターンシップに派遣し、帰国後実施報告会を開催している。また、国際交流の一環として、「語学研修」、「英語による国際教育科目」、「国際インターンシップ」、「3大学国際ジョイントセミナー&シンポジウム」を総称した国際キャリアアップ説明会を行っている。
  •  各附属学校園においては、附属での人材育成システムを充実するために研修プログラムを策定し、プログラムに基づいて転入教員の授業研究や在職年数に応じた研修を実施している。

附属病院関係

  •  臨床研修プログラムでは、初期・後期ともに独自のオリジナリティあふれる多彩なプログラムを提供し、特に初期研修ではプログラム(小児科、産婦人科)を新設して研修医の確保に努めている。また、血管内治療に使用するための新しいステントグラフトの開発に成功するなど、先端医療の開発に積極的に取り組んでいる。診療では、都道府県がん診療連携拠点病院として、医師やコメディカルスタッフへの研修、がん症例相談や診療支援等、三重県の中心的な役割を担っている。
     今後、新病棟開院等を見据えて、高度な診療ニーズに対応するためにも、7対1看護体制の導入・看護職員の安定的充足に全力を挙げるとともに、地域教育基幹病院・特定機能病院として地域の医療水準の向上に向けたさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  大学病院連携型高度医療人養成推進事業等により、卒後臨床研修部に専属医師スタッフの増員を行い、高度で専門的な医療を担う専門医の育成を支援している。
  •  臨床研究のために、米国、ドイツに関連診療科の医師を派遣、また、中国、タンザニアから外国人教員4名を受け入れ、医療技術の向上を目指した研修を実施している。
  •  治験拠点病院事業により、治験患者相談窓口の充実、治験コーディネーター(CRC)の常勤化・専任化の推進等、機能強化に取り組んでいる。
(診療面)
  •  生活習慣病の予防と早期発見を促進するために検診センターを設置し、ポジトロン断層・コンピュータ断層複合撮影装置(PET‐CT)検診、コンピュータ断層撮影装置(CT)肺検診及び前立腺がん検診等を推進して、二次予防の普及に貢献している。
  •  肝疾患診療連携拠点病院の指定を受け、肝炎相談支援センターを設置、肝炎を中心とする肝疾患診療体制の確保と診療の質の向上に努めている。
(運営面)
  •  債権回収対策に対応するため、弁護士を配置し、医療費未収金の未然防止、早期回収に努め、1,000万円を超える医療費未収金を収納して改善を図っている。
  •  病院ウェブサイトを全面的にリニューアルし、外部からの視点で、診療内容や経営状態等、分かりやすい情報をリアルタイムで掲載している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --