国立大学法人岐阜大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 岐阜大学は、人と情報が集まり知を交流させる場、体系的な知と先進的な知を統合する場、学問的・人間的発展を可能にする場、それらの成果を世界に発信し、人材を社会に送り出す場となることによって、学術・文化の向上と豊かで安全な社会の発展を推進し、「知の伝承と創造」を追求している。
 業務運営については、教員の人事評価を実施し、その結果を平成20年6月の勤勉手当から反映しており評価できる。この他、教育職員の職種ごと(教授、准教授、講師及び助教)にポイント数を定め、従来の定数を基に各部局に割り当てたポイント総数内で職種や人数を部局長が決定できるポイント制を導入し、弾力的、効率的に教員配置できる人事管理を実施している。
 財務内容については、資金運用方針を策定し、資金運用益の確保に努め、約3,600万円(対前年度比約1,000万円増)の運用益を得ており、教育研究用設備更新等に活用されている。
 一方、年度計画に掲げている同窓会連合会の設立については、設立までには至っていないことから、着実な取組が求められる。
 自己点検・評価及び情報提供については、教員が一定の年齢に達する年度に、その前年までの6年間の貢献度実績・自己評価表を基に部局長評価及び学長評価(総合評価)を実施し、それら評価結果を対象教員に通知するとともに、個人評価及び大学評価の向上に取り組んでいる。
 教育研究の質の向上については、教養教育については、教養教育推進センター内の企画運営委員会においてカリキュラム編成を検討し、「自分らしいキャリア設計」を前・後学期に開講してキャリア教育を実施している。また、「人生を決めた書物」、「レポートの書き方」を刊行するなど、種々の視点から教養教育の実質化に取り組んでいる。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教員の人事評価について、教員業績評価に基づき、評価結果を平成20年6月の勤勉手当から反映しており、評価できる。
  •  教育職員の職種ごと(教授、准教授、講師及び助教)にポイント数を定め、従来の定数を基に各部局に割り当てたポイント総数内で職種や人数を部局長が決定できるポイント制を導入し、弾力的、効率的に教員配置できる人事管理を実施している。
  •  外部資金担当副学長、附属病院・国際交流担当副学長等を新たに配置して学長のリーダーシップの下、戦略的なマネジメント体制を整備している。
  •  教育職員が60歳から65歳までの間で定年を自己選択して60歳から定年までの目標を設定し、学長が裁定する選択定年制を導入している。
  •  大学内に保育園「ほほえみ」を設置し、全教職員に対して次世代育成に関するアンケートを実施するなど、男女共同参画推進や次世代育成支援に取り組んでいる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある

(理由) 年度計画の記載44事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるほか、教員を対象とした評価制度を導入し、その評価結果を給与システムに反映する取組を実施していること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  科学研究費補助金の採択率向上を目的としたプロジェクトディレクター制度を発足させ、学内の科学研究費補助金審査経験者等による若手教員の申請書作成指導を実施している。
  •  資金運用方針を策定し、資金運用益の確保に努め、約3,600万円(対前年度比約1,000万円増)の運用益を得ており、教育研究用設備更新等に活用されている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「岐阜大学同窓会連合会(仮称)を立ち上げる」(実績報告書24頁・年度計画【54‐1】)については、検討は行われているが、同窓会連合会の設立までには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載14事項中13事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教員が一定の年齢に達する年度に、その前年までの6年間の貢献度実績・自己評価表を基に部局長評価及び学長評価(総合評価)を実施し、それら評価結果を対象教員に通知するとともに、個人評価及び大学評価の向上に取り組んでいる。
  •  大学広報誌の編集を外部委託し、誌面の充実を図るとともに、外国人をパート職員として採用し、英文ウェブサイトを大幅に整備・改訂した。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  世界トップレベル国際研究拠点「物質‐細胞統合システム拠点」のサテライト設置機関指定に対応した実験設備を整備している。
  •  施設利用状況調査における稼働率の低い講義室にプロジェクター等を設置するなど講義室機能の多様化を図ることにより、平成20年度の全学平均稼働率を58.8%(対前年度比10.3%増)に改善している。
  •  地球温暖化対策計画に基づく環境対策改修計画マスタープランを策定し、環境に配慮した設備等の改修を計画的に推進することとしている。
  •  消防署と協議の上、少量危険物貯蔵庫を各部局の各階に配置するとともに、薬品等管理規程に少量危険物管理責任者並びに薬品管理を追記する等、危険物の適切な取扱い及び保管管理を推進している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載18事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  岐阜薬科大学との連合大学院(連合創薬医療情報研究科)において、「国際的視点に立つ創薬研究者養成のための実践的な教育研究システム」が戦略的大学連携支援事業に採択され、工学研究科(博士前期課程)生命工学専攻に創薬コースが新設され、博士後期課程に接続する創薬人材の育成システムを実現している。
  •  教養教育については、教養教育推進センター内の企画運営委員会においてカリキュラム編成を検討し、「自分らしいキャリア設計」を前・後学期に開講してキャリア教育を実施している。
  •  「人生を決めた書物」、「レポートの書き方」を刊行するなど、種々の視点から教養教育の実質化に取り組んでいる。
  •  学生相談ラウンジにおいて多くの学生相談に応じるとともに、生涯健康教育講義の実施や教材冊子の配付を通して、学生の生涯健康教育を充実させている。
  •  「物質‐細胞統合システム(iCeMS)拠点サテライト・ラボ」を人的、財政的に支援し、サテライト研究を推進する体制を整備し、成果を国内外に広く紹介している。
  •  「社会資本アセットマネージメント技術研究センター」を設置し、社会基盤メンテナンス・エキスパート養成を社会人に対して実施している。
  •  「地域枠」入学定員として10名の定員増を図り、県の医師不足の解消、地域医療の確保に寄与している。
  •  学外公募により地元の非特定営利法人(NPO法人)から提案された事業と連携可能な教員を募集し、地域住民の目線に立った地域連携事業を推進している。

附属病院関係

  •  魅力的な初期臨床研修プログラムを提供するために、研修期間中のコース変更を可能にしたこと、外科に特化した特別コースを新たに設けるなど、柔軟な対応を行っている。また、特色ある診療の開発導入計画について各診療科にヒアリングしており、必要な支援を行っている。診療では、クリニカルパスを利用した効率的な医療に取り組んでおり、高い適用率(平成20年度45%、対前年度比2%増)を維持している。
     今後、地域の拠点病院として他の医療機関との連携を図りつつ、自院の得意診療分野をさらに高めていくための具体的な取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  大学病院連携型高度医療人養成推進事業(東海若手医師キャリア支援プログラム)により、医師キャリア支援のためのプログラムを作成している。
  •  がん、難病、エイズ、肝疾患の拠点病院の事業の一環として、医療従事者の教育・研修を提供し、地域医療の充実を図っている。
(診療面)
  •  7対1看護体制に移行し、診療報酬の大幅な増収に結びつけている。
  •  女性の職場復帰を支援する体制を整備し、麻酔科疼痛治療科において、短時間勤務の女性医師1名を採用している。
(運営面)
  •  学外委員を含む病院経営企画会議については、学内委員メンバーの一新を図り、病院経営に貢献できる体制作りを行っている。
  •  電子カルテなどの医療行為関連情報を多様に分析し、診療科ヒアリング資料や年度目標達成度合いの資料として活用している。また、病院としての得意分野を推進するプロフィットセンターとして、「手術部」、「集中治療室(ICU)・冠疾患集中治療室(CCU)」、「循環器分野」、「臨床腫瘍部門」の4部門を位置付けて整備充実を図るなど、戦略的な取組を行っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --