(議事録)障がいのある学生の修学支援に関する検討会(第8回)

【竹田座長】  ただ今から障がいのある学生の修学支援に関する検討会第8回を開催いたします。
 皆様には,御多忙中にもかかわらずお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。本日は,前回に引き続き報告書第一次まとめ案の作成に向けて検討を行っていただく予定にしております。
 委員の皆様におかれましては,17時までの3時間と長時間にわたりますがどうぞよろしくお願いいたします。
 なお,本検討会においては,御発言される場合には必ず挙手をした上でお名前を述べてから御発言いただきますようお願いいたします。
 まず配付資料について,事務局より確認をお願いいたします。

【事務局】  事務局の方から,配付資料について確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第を御覧いただければと思いますが,配付資料につきましては,資料1-1,1-2,これは検討会の報告の案でございます。それから見え消し版になっております。また,資料2といたしまして,当面の検討スケジュールというのがございます。
 以上3点が配付資料でございますので,過不足等がありましたら事務局までお申しつけいただければ有り難いと思います。
 以上でございます。

【竹田座長】  それでは議事に入りたいと思います。
 本日は前回に引き続き,報告書第一次まとめ案の作成に向けて検討を行うということで,前回同様,議論に資するため案を用意しております。
 まず前回の議論を踏まえ修正した点について,事務局より御説明をお願いいたします。

【事務局】  それでは,事務局の方から資料1-1及び1-2に基づきまして説明をさせていただきたいと思います。
 前回との変更という観点でございますので,資料1-2を御覧いただければと思います。
 まず今回,2回目の報告書案の議論でございますが,前回変更した点を中心に御説明をしたいと思います。時間も時間でございますので,できるだけディスカッションの時間をとりたいということで,ごくごく簡単にポイントだけ述べさせていただきたいと思います。
 まず資料1-2を御覧いただければと思いますが,1枚めくっていただきまして,目次のところにありますように,「はじめに」と「おわりに」というのを付け加えさせていただきました。
 「はじめに」においては,背景と今の状況について,条約の関係,基本法の関係について記載してございます。「おわりに」については,最終的にまとめを付け加えたのが大きなポイントでございます。
 そのほか,基本的には前回頂いた議論に基づきまして整理をさせていただき,前回の素案の構成を分かりやすく整理をしたというものでございます。
 例えば4ページにありますように,検討会における対象の範囲を明確化するであるとか,あるいは対象範囲,それから決定のプロセスを明確化する,あるいは機会の確保に関すること,それから大学の行うこと等々について,具体的に役割分担を記載したというところでございます。
 ただ,一方で,資料のページでいいますと15ページ,16ページでございますが,例えば15ページの財政支援のところにつきまして,あるいはこの報告書で言いますと16ページの,例えば「おわりに」のところの4番目の丸でございますけれども,いろんな高等教育機関あるいは高等教育以外の進展状況に応じて随時見直しを図っていくとか,ミニマムリクワイアメントについて,若干これからの知見を踏まえてリバイスをしていくというような記載ぶりにしてございますので,この点についてはまた先生方から種々御意見を頂いてリバイスをしていきたいと思っています。
 ここら辺については,前回の御議論を踏まえて,先生方には事前にお配りしておりますので,御覧いただいているという前提で議論を進めていただければと思います。
 先生方にお配りして見ていただいた後にあと2点ほど,ちょっと修正した点がございますのでそこだけ申し添えたいと思います。
 14ページの通信教育のところにつきましては,インターネット等について少しだけ具体的に書かせていただいております。先生方にお配りした資料で青字又は緑字のものがございますが,それに加えまして「インターネットを活用した」ということで一部修正をさせていただいているところがございます。
 そのほか,就職支援,これは資料1-2の15ページ,就職支援のところでございますが,ハローワークや地域,NPOとしていたところでございますけれども,「ハローワークをはじめとする労働関係機関」ということで字句の修正をさせていただいております。
 そういったことで,前回の議論から整理をさせていただき,また具体的な記載をさせていただいた修正を加えさせていただいておりますので,これを踏まえて,また改めて先生方の御意見を賜れば有り難いというふうに思っております。
 簡単ではございますが,以上でございます。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 引き続きまして,前回,前々回を通して,一通り始めから終わりまで御意見を伺いましたので,今回は全体的に議論を進めていこうというふうに考えております。
 なお,次回で最終的に本報告をまとめたいと考えておりますので,御発言をされる場合には,恐れ入りますが対案修正文案を御提示いただければ幸いでございます。
 どなたからでも結構ですので,御意見がありましたらよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 今までの議論をまとめておりますので,だんだん回を追うにしたがって,委員の皆様のコンセンサスに近づいてきているかなという感想はもっております。
  福永委員。

【福永委員】  福永でございます。ちょっと2回ほど出れませんで,もうそういう議論は終わったと言われるのかもしれませんが,少し読ませていただいて気になることがございました。
 資料1の方で言えば11ページですが,大学入試の改善というところの丸が五つあります。一番最後の丸のところの「センターにおいては,」から始まる文章ですが,書いてあることは非常に納得できることなんですが,一番最後に「その決定過程の改善が図られるべきである。」という文章で終わっています。これは決定過程に問題があると,そういうふうな認識でございましょうか。

【竹田座長】  先に殿岡委員,いかがでしょうか。
 事務局の方から,もしあれば。では,殿岡委員はちょっと次にお願いします。

【大学入試室】  大学入試室室長補佐をしております佐藤でございます。
 本来,室長の平野が出席するところをほかの業務が重なっておりますので,代理で出席させていただいております。
 今,福永先生からの御指摘のありました点,その決定過程の改善というところ,前段の四つの中身とも絡んでくるとは思うのですが,現在の障害種や障害の程度とどういう措置をするかということの,まずそれが前提にあって決定していくというプロセスということ自体が,どういう困難度があるのかという確認をとって,それに応じて配慮を決めていくべきではないかという御議論もございましたので,その決定プロセスよりも,まずそういう定義付け,どういうふうに決定していくのか,何に基づいて決定するのかという,その辺りからもう少し工夫が必要なのではないかということの御指摘かと理解しています。

【竹田座長】  いかがでしょうか。

【福永委員】  普通,決定過程というと決定のプロセスですね,どういう議論をして誰が決定するかというふうな,例えば委員会の配置とか,そういうものを思い浮かべてしまうんですけれども,今の御趣旨だと,むしろニーズに応じた配慮が一層なされるよう一層の改善が図られるべきで,そういう文章で十分ではないかと思います。決定プロセスとか過程と書くと,そこは組織を変えろという話になってしまう。

【竹田座長】  ありがとうございます。御指摘のとおりかなと思うので,この辺はちょっと文言について修正をする必要があるかもしれません。検討したいと思います。
 殿岡委員,お願いいたします。

【殿岡委員】  殿岡です。今の入試センターのところで言えば,現在特別措置を受けた学生の数というのは発表されているわけですけれども,特別措置を申請した人の数というのは発表されていないわけですね。
 ですから,今までこういう議論があったことを振り返ると,それぞれの人はどういう申請をして,そしてどのように決定されたかという意味における決定というのもここに含まれてきているのかなと,「決定過程」という言葉がいいかどうかは議論があると思うんですが,そういうところに組み込むという姿勢を,やはり修文できればというふうには思っております。
 加えて,見させていただいたところで言えば,これは近藤委員,大島委員ほか皆さんが指摘されているように,障害種程度に応じた類型化から困難に応じた類型化へと,これが入試における障害の社会モデル化というところと対応していきますので,ボトムアップでのアプローチというよりは,困難ベースの支援へどう踏み込んでいけるかという部分で,具体的にそれは議論が必要だと思うんですが,突っ込んでいけると,今後の入試センターの在り方,あるいはここでも話されたような目が見えなくて読めないことと,発達障害で読めないことの,読めないという困難のために支援を考える上では重要かなと思っております。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 また,多分この決定過程の先ほどの修正の御意見でも出た障害者一人一人のニーズに応じた配慮というところで,趣旨は同じかなと思いますので,その困難ベースという議論は多分最初からあったと思います。ちょっとこの辺の言い回しを,少し個別ニーズという辺りに,分かりやすい修正を検討していきたいなと感じています。
 そのほか,いかがでしょうか。中野委員,お願いします。

【中野委員】  中野です。以前の議論の中で,今回の扱う範囲を明確にした際に,教職員のことについては,中・長期課題に盛り込むべきではないかという議論があったかと思うんですが,前回の議論のときにはそのことをちょっと私も失念してしまっておりまして,この中には反映されていないんですが,その点に関してはどうでしょうか。これは確か白澤委員からの御提案だったと思いますが。

【竹田座長】  事務局。

【事務局】  今,先生言われるように,中・長期的な課題の中に入れるべきかどうかというのがございまして,そこはディスカッションをして,そっちに入れていただいてもいいんですが,一応今入れているのは「おわりに」の中に,この言い方でいいのかどうかというのはございますが,「おわりに」の下から2個目の丸で一応教育の話をして,そのほか通学を含めた移動支援,食事の介助,うんぬんかんぬん,支援や障害のある教職員に対する配慮について,というところで記載をさせていただいているつもりでございます。
 これは,この位置がいいのかというのは御議論いただければと思いますが,まだ議論がどの程度かというのはありましたので,事務局としては取りあえずここに入れさせていただきました。

【竹田座長】  よろしいでしょうか。今回,障がいのある学生の修学支援に関する検討会ということで,初めてですので,やはり対象とする学生というところに力点を置いて,「おわりに」のところに教職員のことも組み込んだという形でよろしいんじゃないかなというふうに思います。
 そのほかいかがでしょうか。吉永委員,お願いします。

【吉永委員】  富山大学,吉永でございます。せっかくこちらの文章について,御議論いただいていたのでそれに付け加えなのですが,「このほか,通学を含めた移動支援,食事の介助,医療的ケア等」というふうに書いてあるのですが,介助に関しましては,恐らく食事だけじゃなくて様々な形の介助があるんではないかなというふうに想像しておりますので,できましたら「等」を付けていただく形で「食事等の介助」というふうにしていただくといいのではないかなというふうに思いますがいかがでございましょうか。

【竹田座長】  いかがでしょうか。

【事務局】  そういう修正をいたします。

【吉永委員】  ほかにも多分いろんな細かな介助があると思いますので。

【竹田座長】  そのほか,いかがでしょうか。広瀬委員,お願いします。

【広瀬委員】  放送大学の広瀬です。後ろの方で,前の資料1-1の方で言いますと12ページですけれども,「教材の確保」の中に「視覚障害や読字障害(ディスレクシア)のため文字が見えない,見えにくい,」というのがあるんですけれども,ディスレクシアの場合は見えないとか見えにくいのではなくて読めないということなので,これは文字が見えにくいあるいは読めないというふうにした方がいいかなというふうに,小さなことですけれどもそれが一つです。
 それからもう一つは,放送大学に関わるところなんですけれども,今度資料1-2の方で14ページ。青く直してくださっていて,「テレビ,ラジオ,インターネットを活用した教育を実施しており,」という14ページの下の5番の二つ目の丸のところです。「インターネットを活用した教育を実施しており,さらに,放送授業の字幕付与」とありますが,これは放送授業及びインターネットの字幕付与も進めているということです。放送授業やインターネットの字幕付与もまだ全部ではないんですけれども進めているという段階ですね。
 あと,その中で「その他の通信制大学等においても,同様の配慮を行っている場合がある。」というのは,これはちゃんと確かめたのでしょうか。私も知りたいというふうに思います。ほかの通信制の大学と称するところで,印刷教材やビデオやら,そういったものに対しての配慮というのは本当になされているんでしょうか。

【事務局】  ここはまだ,私どもで確認しておりません。確認をした上御提示いたします。

【広瀬委員】  そうですね,ちょっとお願いします。これがどうなのかなということです。

【竹田座長】  広瀬委員,今のインターネットの字幕付与というのは動画のようなものですか。

【広瀬委員】  そうです。テレビ授業が,そのままインターネットでオンデマンドで見られるようになっておりまして,そこに付くということです。

【竹田座長】  分かりました。殿岡委員,お願いします。

【殿岡委員】  殿岡です。先ほどのインターネットの字幕付与ですけれども,私どもこの10月から新しく障害学生の受入れ調査を実施させていただいていて,既に500を超える大学様にお返事いただいて回収を進めているんですけれども,既に一部の大学でインターネット送信に字幕を付けている大学があり,それから,これから字幕を付けようとして相談が上がっている大学が複数みられます。

【広瀬委員】  ありますか。

【殿岡委員】  あります。
 また,その動画に対して,オンデマンドでアクセスは可能かとか,あるいは資料がテキストデータになっているかどうかという事業を進めている大学も重複していますが複数あります。

【広瀬委員】  では,またおっしゃってください。ありがとうございます。
 では,これでオーケーですね。ありがとうございます。

【竹田座長】  そのほか,いかがでしょうか。では,広瀬委員。

【広瀬委員】  あともう一つ気になったのは,例えばEUの場合のエラスムス計画で,なぜEUが25か国そろってエラスムス計画をやるかというと,ギリシャの学生がイギリスに行っても,フィンランドの学生がポルトガルに行っても,同じような支援が受けられるという状況をEUは目指しているからなんですね。
 その場合,ここの障害学生というところに,留学生というのはもちろん含まれるべきなんでしょうけれども一個も言及していないです。

【竹田座長】  事務局,お願いします。

【事務局】  一応今回対象というのを明確にしようということで,資料1-1で言いますと4ページの3.本検討会における検討の対象というのを今回変えさせていただきました。
 その中で,一番上の丸に「検討対象とする『学生』の範囲」ということで「我が国における,大学等に」ということで,科目等履修生等,それから研究生,留学生ということで明確にしたところでございます。

【広瀬委員】  はい,ありがとうございます。私が見落としておりました。ありがとうございます。

【竹田座長】  それでは白澤委員,お願いいたします。

【白澤委員】  今のところで一つ,大学院生や研究生については,恐らく学生には大学等に入学を希望する学生及び在籍する学生には含まれているのだとは思うんですが,ちょっと明確にしておいた方がいいのではないかと思われました。
 それから,少し私の方でもまだじっくりと検討していないんですが,これは全体を通して見たときに,大学院での研究の配慮についてしっかりと明記されているかどうかという点について,改めてその視点から一度全部見直す必要があるのかなというところは思っております。それについてはちょっと事務局の方でも御検討いただければと思います。
 それとは別に,情報保障のところで,少し文面を御検討いただきたい部分があるんですね。それは資料1-1の方の7ページのところなんですが,(4)の教育方法等のところで,「情報保障・コミュニケーションの配慮」というところが非常にあっさりとしているので,もう少し書き込んでいただけないかなというところです。
 文面の案としましては,まずどの範囲での情報保障のことを指しているのかということをきちんと提示しておいた方がいいと思うということと,それから障害のある学生と障害のない学生が平等に参加できるように情報保障を提供するのだということ,そして情報保障を提供するというのとともに,コミュニケーション上の配慮を行うということを記載するということで,その3点を網羅した文章としていただきたいと思います。一応,現時点での私の案としては,例えば「大学が提供する様々な教育機会において,障害のある学生も障害のない学生と平等に参加できるよう必要,かつ適切な情報保障を提供するとともに」,ちょっと長くなりますが,文章は編集してください。「コミュニケーション方法への配慮を行う」などというような形で,情報保障を行うということとコミュニケーション上の配慮を行うことは分けて,かつ情報保障というのがきちんと入るようにしていただきたいなと思います。
 同じように,12ページの「教材の確保」のところについても,視覚障害についてはかなり細かく困難があって,だから点訳教材が必要なのだといったような説明があるんですけれども,ここで唐突に「字幕教材」というのが出てくるんですね。ここも少し,これもちょっと文章の流れの問題かもしれないんですけれども,せっかくこういうふうに入れていただけるのであれば,一つ前文を追加していただいて,「聴覚障害など音声の聞き取りや理解に困難のある学生の場合は,動画などの視聴覚教材の利用が困難な状況がある」などというように,聴覚障害学生あるいは字幕教材がなぜ必要なのかといったような説明が何かしら加わった方が,次につながりやすいのではないかというふうに感じました。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。事務局,お願いいたします。

【事務局】  今,白澤先生から言われたもので3点あったと思いますが,まず1点目の大学院のところでありますけれども,これも入れ方の問題かもしれませんが,例えば定義のところで「はじめに」の一番上に「大学等」としております。
 この大学等の意味でございますけれども,これは2ページの下のところの注に「別に注記のない限り,『大学等』は大学(大学院を含む)」ということで,一応大学等の中に含んだ概念として全て入れておりますので,別記して大学及び大学院とするか,大学等で読むかということで,我々の趣旨としては大学院もそれで読むというようなことで報告書は書かさせていただいたつもりでございます。
 それから教育方法の情報保障とコミュニケーションのところは,文章を頂いてそれを案に検討したいと思います。
 それと,もう一つのところの聴覚障害についても,確かにおっしゃるとおりなので,何か案文を一緒に相談させていただければ有り難いというふうに思っております。

【竹田座長】  よろしいでしょうか。では,吉永委員。

【吉永委員】  富山大学,吉永でございます。
 白澤委員の御指摘にありました情報保障とコミュニケーションの範囲ということなんですけれども,今ちょっと私がぱっと思い付きで考えたところで,やはり大きく分けて三つ範囲があるんじゃないかなと思います。
 一つは,やはり履修上のことですよね。例えばカリキュラムだったりとか,あと突然の教室変更であったりとか,そういったものですよね。休講情報だったりとか,そういったような情報ということになるかなと思います。
 また,二つ目は,授業の中で実際にその授業をする際の情報保障やコミュニケーションの在り方については,ある程度障害のある方には一定の配慮が必要だと思います。
 三つ目は,正しく大学院生,特にやっぱり学部生の4年生だとか,大学院生に関する研究資料に関するところですよね。それについての情報保障やコミュニケーションは必要だろうと思います。
 特に,発達障害の学生さんについては,情報保障とコミュニケーションというのは二つの柱になります。具体的に,やはり教育上の配慮というふうになりますと,特にやっぱり発達障害の方であれば,コミュニケーションの方法が独特なので,そこに対してやはりきちっと配慮していかなければいけないというようなコンテクストもあるかなというふうに思うので,もし入れていただくとすれば,そのような内容での範囲等を定めていくことになるだろうなというふうに思いまして,発言させていただきました。

【竹田座長】  よろしいでしょうか。白澤委員。

【白澤委員】  今の吉永委員からの御意見は,そのとおりだと思うんですね。先ほど私が出した様々な機会というのは,この前ページの6ページに一応定義づけられている言葉なんですよね。これを使うことによって,ここに挙げられている,かなり幅広いものを包含する形になるのかなと思いまして,授業等だけではなく,それ以外の場面もかなり幅広く実施していただけるのかなと思っています。
 あと,先ほどコミュニケーション上の配慮というのを挙げたのは,これは先生方の御意見を頂きたいところですけれども,その他の大学生活上のコミュニケーション配慮という意味も含むんじゃないかと思うんですよ。そこをどこまで記載するか,ここの様々な教育機会の中には生活面というのは出していないですし,あと通学等についても生活面にかかるものというのが,余りこの中には触れられていない部分なので,その辺りをどうするかはちょっと,発達障害の学生さんへの支援とともに,検討しなければいけないところかなと思います。

【竹田座長】  一応,(1)の基本的な考え方というところで,基本理念を改めて先頭に持ってきていただいたことで,形としてはいいまとまり方になったんではないかなというふうに思っているわけですが,今のいろいろ御意見を頂いたような個別の詳細なものについては,できるだけ集約していくと事例という形になるので,非常に読みにくい形になりますので,今白澤委員がおっしゃったような,やはり機会の確保という,これは参加の前提になりますので,それを一番上段に書いてあって,それでこういう例えば教育の方法等ということが出てくると,そういう流れでよろしいんではないかなというふうに思います。
 それから,生活面については,前回,前々回の議論の中では,今回は生活面に関しては,議論の対象には直接的には含めないということで,合意を頂いたかなというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
 そのほか,いかがでしょうか。では近藤委員。

【近藤委員】  東大の近藤です。まず先ほどの教育方法等のところで「教材の配慮」の部分の丸の二つ目になるんですけれども,細かいところですが,2行目「特に視覚障害の学生が受講する際に」とあるんですけれども,これは後半の印刷物障害等の言及もありますので,是非ここを「視覚障害等のある」というふうにしていただければと思います。
 それから,教育方法等の,今のページの下の「公平な試験の配慮」のところですけれども,ここは確か前回,巖淵委員の方から支援技術の利用などを促進する,若しくは認めるということの文言追加の提案があったか思うんですけれども,これだと一般的な試験に参加できるように配慮するような,公平な試験の配慮のように見えてしまうので,いわゆる参加の仕方を変えるという意味で,是非ちょっと文言をまた相談させていただければと思うんですけれども,支援技術の利用について追加するということを入れていただきたいと思います。
 それから,最後ですけれども,6ページの(1)機会の確保の次の(2)の「情報発信」というところがあるんですけれども,今更ですけれども,ここでの情報を出すことの意味というのは,いわゆる情報公開,ディスクロージャーの意味と,あと説明責任を果たすということの意味がありますので,発信というと善意として情報を出すような意味合いがありますから,ここは情報発信ではなく情報公開,若しくは何か説明責任的な用語に変えていただいた方が意味合いがよりよく伝わると思いました。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。今の情報発信のところに関しましては近藤委員のおっしゃるとおりかなと。どちらかというと義務的な,大学がやっていることをきちんと説明する,その責任を明確にするということだなというふうに思いますので,そのように修正できればというふうに思います。
 それから,前半の試験の方の配慮等々については,代案を事務局の方に頂きまして検討させていただきたいと思います。
 では,巖淵委員よろしくお願いします。

【巖淵委員】  DO-IT Japanの巖淵です。ちょうど,先ほどの代案のところなんですけれども,私も入試及びふだんの試験での評価の部分が,やはりちょっと気になっておりまして,例えば支援技術をとってみましても,前ページに出てくる教材の中での支援技術の活用によって情報へのアクセスを保障しましょうということで,ふだんの学習活動では利用していながら,いざ試験になると,やはり公平性というところと合理的配慮ということが現状としてうまくいっていませんで,ふだん使っている自分たちのアクセス方法を使わせてもらえない。ゆえに,自分たちの本来の能力ということは正しく評価されていないということは,現実としては非常に問題となっています。
 それが特に入試でも生じるのですが,ここの試験というところの文言の中で,例えば「留意し,」という2行目のところの点のところ,例えば「留意しつつ,試験時間の延長や支援技術の利用など」というようなことを入れて,その後に続いて「障害のある学生の能力・適正等を適切に判定するために,必要な合理的配慮を提供し,障害のない学生と公平に試験を受けられるよう配慮する。」といったような,確かに試験時間の延長と支援技術だけが合理的配慮ではないのですが,代表的なことであるということと,やはり技術の利用ということは非常に大きな観点にはなってくると思いますので,例えば具体的に二つを挙げたことによって,評価にも合理的配慮というところは非常に関わってくるよということを明示することは大切かなと思います。

【竹田座長】  いかがですか。
 配慮についてはほかにも,多分いろいろ考えられて,日本ではまだかもしれませんけれども,以前,近藤委員が御紹介くださったかと思いますが,試験を集約して行うような試験室を別に設置してなんていう大学なんかもアメリカでは多いというふうに,そういう工夫がいろいろ今後出てくる可能性はありますので,その辺,今日本で考えられることが実際行われているようなことをもう少し具体的に記載するということですよね。そういう理解でいいかなと思います。

【巖淵委員】  そうです。基本はそういう要望と,あと私自身のテーマでもあるかもしれません。支援技術というのは支援技術だけに限らず,初回辺りに大島委員も言っていましたように,例えばパソコンですが,必ずしも特殊な支援技術というカテゴリーではないかもしれませんけれども,障害のある学生さんにとってみれば筆記用具で,それがなければ教育活動に参加できないという方はたくさんいらっしゃるという状況ですから,技術については明言をしていくということが,一つ大きな効果があるのかなというふうに感じて,是非技術の利用は評価の適切性の部分に入れていただければと思います。

【竹田座長】  ありがとうございます。また,ちょっと文言等修正を検討したいと思います。
 そのほか,いかがでしょうか。大島委員。

【大島委員】  今の巖淵委員と近藤委員の方からお話のあった部分に関連するのと,少し戻ってしまう部分との両方ですけれども,まず巖淵委員からもお話のあった支援技術の点なんですが,資料1-2の13ページですね,最初の方にもお話のありましたセンター試験においての記述についても,そういったお話があったかなと思ってしまっていたんですけれども,記述として入っていないので,是非殿岡委員からもお話のありました「困難に応じて」いう点もそうですが,是非こちらも一例として,支援技術の活用というのは入れていただければなというふうに思いました。
 ちょっとお話が戻ってしまうんですが,その困難別のお話なんですけれども,やはり特にこの特別措置というものがあることが知られていないというお話がこれまでもあったと思います。特に普通校から受験する障害のある子ですとか,あとは身体でない障害のある人やその先生には,特別措置の存在が本当に知られていないということもあるので,障害という言葉だけではなく,やはり困難に応じてしっかり措置があるんだよということの意味からも,困難別にというような言い方をしていただければなというふうに思いました。
 少しまた戻ってしまうんですけれども,近藤委員と巖淵委員からお話のあった公平な試験の配慮のところですけれども,こちらは支援技術の活用・利用というのを入れていただきたいのは正にそのとおりと思うんですけれども,何かしっくり来ないなと前から思っていまして,もしかして試験というものと評価の中ではなくて,ここは別の括弧としてあってもいいのかなと思ってしまったのですがいかがですか。
 試験については,入試と同じように個々の困難に応じた配慮を行うというような話で,評価は評価で配慮をしつつも「評価基準の変更で及第点を下げる等」ということが正当な評価じゃないという点も一つの項目として入れてもいいかなと思ったんですが,こちらはちょっと皆さんで御議論いただければというふうに思いました。

【竹田座長】  まず最初に,センター試験の方の困難別ということですが,先に言いますけれども,これはもう少し詳細を大島委員に教えていただきたいんですが,先ほどの議論で,障害種別,従来のカテゴリーではなくて,障害があっても多分個別のケースに応じて対応することが求められるので,そのニーズを把握して対応するような形にしたいということだったかなと思いますが,目に見えない困難という辺りが,ちょっといまひとつフォローできなかったので申し訳ございません。

【大島委員】  特に目に見えない困難がというわけではないんですけれども,身体の障害で,では車椅子に配慮をした試験会場を用意しましょうとかということではない配慮をしていただける可能性があると思っています。
 例えば読みに障害のある人に,PCかどうかは分からないんですけれども,読み上げを行うテストとかというのも今後の可能性としてはあると思いますので,そういったものも含めると,単に障害別にというふうに言ってしまうと,とても紋切り型といいますか,分かりやすい障害しか対象にしていないようなイメージがあるように思うので,困難に応じたという言い方をしていただけると,様々な困難に対応するというイメージになるのかなと思います。

【竹田座長】  ありがとうございます。多分,先ほどの「一人一人のニーズに応じた配慮」ということの文言を少し考えるというところで,また御意見を大島委員に確認させていただければと思います。
 それから,今のもう1点の,2点目の方についてはどうでしょうか。

【広瀬委員】  ちょっとそれに一つ,今の大島委員の部分です。「類型化された」という言葉は,余りポジティブな感じがしないので,どうしても置きたい理由はないんじゃないかなと思うんですけれども。だから,障害等の種類,程度に応じて,ニーズに即したサービスというような形にして,ここは類型化というのが入っているんですよね。13ページの2の方の四つ目の丸ですね。「類型化」という言葉は割と,何か否定的な感じがちょっとしてしまいます。ステレオタイプというか。

【近藤委員】  それについて,ちょっとまとめてもいいですか。

【竹田座長】  近藤委員お願いいたします。

【近藤委員】  今おっしゃっていただいた部分で,殿岡委員もおっしゃっていたところなんですけれども,例えば今の大学入試センター試験というのは,「肢体不自由」という枠と「視覚障害」という枠と「発達障害」という枠と「聴覚障害」というのと「その他」という枠があって,まず障害種別で分類されて,その障害種別で申請を出してそれぞれ配慮が認められるかどうかというのが個々に検討されるという枠になっています。
 一方,例えば,SATというアメリカのカレッジボードが行っている試験がありますけれども,あの場合は,書くことに困難がある,読むことに困難がある,それからあとは計算することに困難があるというふうに,まず試験を受ける上でどんな困難があるのかを選択をして,その理由として,なぜならば私はこういう障害があって,書くことの困難性につながっているのですというふうに,障害種別は後からくるようになっています。
  一方で,例えば脳性まひのある学生がいて,それが「肢体不自由」という枠で応募してしまうと,だったら肢体不自由の,書くことの困難ということは一般的に行われるので,それについては支援されますねと。ところが,例えば脳性まひのある学生の場合だと,眼球運動のコントロールが難しい場合があって,実際には読むことに困難があると,読字障害様の困難があっても,それはメニューには挙がっていないので,あとは肢体不自由ですからそこには要請することはできませんというふうに,これは誤解が起こった場合だと思うんですけれども,そういうことが起こってしまう可能性があると。
 そういうことで,まず障害の種別で分けるのではなくて,まず困難で分けて,その困難から,その理由として障害の種別が出てくるというふうにするというアプローチが大原則であると思うんですけれども,確かに今のこの文章を見ると,広瀬委員がおっしゃったように,「類型化された特別措置の内容から特別措置希望者が希望するものを選択することを基本とする」と書いてあって,そうなると今のような誤解のような事例が起きやすい可能性は確かにあると思いますので,これはJASSOの前回紹介させていただいた報告書の中で,困難ベースのものに必ず変えるべきということを提案させていただいたんですけれども,このように変更した方がいいのではと私も思いました。
 長くなりましたが,以上です。

【竹田座長】  事務局お願いいたします。

【事務局】  事務局の方から補足でありますけれども,これは今のものを肯定しているということではなくて,広瀬先生それから近藤先生の言われるように,困難度というか一人一人のニーズに応じてというような趣旨で書いているところでありまして,入試の改善のところの4番目の丸は,これは現在センター試験においては障害等の種類,程度に応じて類型化された特別措置からピックアップしてやると。したがって,今後センターにおいては具体的な配慮の決定に当たっては,申請者の個々の状況,これはいわゆる困難度だと思いますけれども,に応じた柔軟な対応に努めるべきということで,これは4番目の丸は,今こうなっているのでそれを変えていくというようなところの文章でありますので,全く先生方が言われている趣旨で書いているつもりでございます。

【竹田座長】  よろしいでしょうか。今の御説明のとおり,パッケージからカスタマイズしたものというような,基本的には機能を重視した形にすべきという,そういう提言になるかなと思います。
 福永委員,お願いします。

【福永委員】  今の課長と同じ趣旨の発言をしようと思っていました。

【竹田座長】  ありがとうございます。
 大島委員,先ほどの2点目のお答えについて,ちょっともう一度お願いします。少し間,ディスカッションをあけてしまいました。

【大島委員】  資料1-2の9ページ目なんですけれども,「公平な試験の配慮」のところですが,ここは評価のことと試験のことの両方が入ってしまっているのかなというふうに読めてしまったんですね。
 試験については,今の大学入試センター試験と同じように,困難に応じた配慮を行うというのがもちろん必要だと思うんですけれども,それと評価を合理的配慮に基づいて行うということは,同じところに書くというよりは別のところで一つ独立させた方がいいのかな,どうかなというふうに思いました。

【竹田座長】  ありがとうございました。試験は,どちらかというと技術的な問題とか方法論になるかなというふうに思います。評価は,もうちょっと全般的なものになるかなと思いますので,ちょっとその辺は検討させていただければと思います。
  鈴木委員,よろしくお願いします。

【鈴木委員】  鈴木です。白黒の方なんですけれども,4ページの3「本検討会における検討の対象範囲」の「障害のある学生の範囲」の,2番目の丸の「したがって,」のところですが,制限を受ける状態にある学生を対象としたということで,これは本人か御家族か分かりませんが,希望したという部分が今回は実は削除されているんですね。これは何か意図があったのかどうか。それは議論では「希望する人のみ」ということだったと思うんですけれども。その部分をちょっと伺いたくて。
 発達障害のケースだと「希望する」が入るか,入らないで1%が,5%,10%になっちゃうような形なので非常に大きなところかなと思いまして。

【竹田座長】  事務局の方は,何か補足はありますか。

【事務局】  ちょっと今,整理をいたします。

【吉永委員】  ちょっとよろしいですか,そのことに関して。

【竹田座長】  吉永委員。

【吉永委員】  吉永でございますが,私の記憶はあやふやなんですが,こちらは高橋委員が御提起された,いわゆる支援をするための具体的な根拠資料というものを求めていくというようなことの内容とリンクしているんじゃないかなというふうに思います。
 恐らく,何でもかんでも希望する学生さんを直ちに支援するというようなことではなくて,というような流れから,恐らくその文言と整合性を図るために削除されたのかなというふうに,ちょっと想像してみたのですがいかがでしょうか。

【事務局】  確かに,今先生が言われたようなことでだと思うんですけれども,それであれば,ここで例えば学生さんなりが支援をしっかりと希望し,そして障害及び社会的障壁によりうんぬんの学生ということで,二つのリクワイアメントというような形にすると,その条件を満たした学生を対象とするということになるかと思いますので,希望した学生全てということではなくて,希望し,相当程度やっぱり見直ししなければいけない学生さんを対象とするというような文言,その方がよろしいということでございましょうか。

【広瀬委員】  よろしいですか。

【竹田座長】  はい,よろしくお願いします。広瀬委員。

【広瀬委員】  放送大学の広瀬です。鈴木先生に質問なんですけれども,今言ったのは,発達障害の学生さんは,自分で希望しない場合があると。そこで希望するかしないかによって数がかなり変わるということですよね。
 それは実はとても大切なところで,アメリカでは自分で希望しない限り支援しません。クラスの中に明らかにおかしいと思われる子がいても,その子に対して「障害者支援室に行きなさい」とは言えないんですね。相談に来れば,それなりにあれですけれども,そこはプライバシーというか自分で決めるということがありますので,そこをどうするかというのは難しいところだと思います。
 「君,ちょっとおかしいから行ってごらん」みたいなことを言うとアウトなんですよね。だからそこは本当に皆さんに考えていただきたいと思います。

【吉永委員】  すみません,よろしいですか。

【竹田座長】  吉永委員。

【吉永委員】  吉永でございます。私は原案どおりでいいんじゃないかなと思っています。
 といいますのも,今回,学生の対象としては,今回のような希望するとかしないとかそういったことを抜きに,こういう対象にしておいて,なおかつ見え消しでない方の白黒の方の,大学等における合理的配慮の決定過程において,「合理的配慮の合意形成過程においては,学生本人のニーズと意思を尊重する。」というふうに書いておりますので,この二つの文言をもって,実際の支援内容は決められていくという考え方でよろしいのではないかなというふうに私は考えておりますが,いかがでしょうか。

【竹田座長】  その前にちょっと確認なんですが,鈴木委員,この白黒の,資料は二つあって飛び飛びになって分かりにくいんですけれども,白黒の方ではどの箇所を言っているのか,もう一度ちょっと確認を。大事な部分だと思いますので。

【鈴木委員】  では,白黒ということか,この資料1-1の4ページの3「本検討会における検討の対象範囲」に「検討対象とする『障害のある学生』の範囲」がありまして,その二つ目の丸ですね。「したがって,」のところで,これが青字の書いてあるところだと「希望する」という文言があるんですけれども,それが削られているのでということで,ちょっと疑問を提起させていただきました。
 青字の方は,資料1-2は,4ページの「検討対象とする『障害のある学生』の範囲」の3番目の丸,ここは「配慮を希望する場合の全てを」というような文言が入っています。

【竹田座長】  これも,今広瀬委員おっしゃったようにとても大事なところかなと思うんですね。
 多分,今までの議論の中では,希望しない学生についてはこういう対象にはならないというような議論があったかと思いますが,御講演いただいた米国の方の支援というのは,基本的には多分,自分から支援してほしいというリクエストが大前提というようなことかなというふうに思います。でないと,結局支援とはそもそも何なんだということになってしまいますよね。全て大学が見つけ出して,支援をする対象というところから大学の責任ということになりますと,これは非常に混乱を来す可能性もあるかなというふうに思いますので,ここはやはり本人の意思というものは何らかの形で入れた方がいいのではないかなというふうに思うんですけれども。
 これは多分書き方の問題かなとは思いますけれども,ある程度どういう支援が必要かということは,本人からのリクエストがあって,それで大学が対応するというのが,ある意味では大事なところになってくるかもしれません。ちょっとその辺,少し詰めさせていただきたいと思います。
 では,白澤委員お願いします。

【白澤委員】  白澤です。同じところなんですが,支援,本人のニーズに基づくという意味で「希望する場合の全てを」というところを入れるか入れないかという議論とともに「診断書にかかわらず」という部分もあるかと思うんですね。
 そこについては,ここの箇所を削除することによって,障害がある学生であってというふうになっているので,この診断書の有無が全く記載されない形になっているんですよね。ここをどう捉えるかは,かなり解釈が異なるんじゃないかと思うのですが,その後の白黒の方の7ページの合理的配慮の決定の部分を見ると,三つ目の丸に「合理的配慮の決定に当たっては,他の学生との公正性の観点から,学生に障害者手帳,診断書等々の提出を求める」ということが書かれてあるんですよね。ということは,診断書がない学生については支援をしないということになるのか。その辺り,ちょっと整理した方がよいかと思われますが,いかがでしょうか。

【竹田座長】  それは,いかがでしょうか。クオリフィケーションというのは,これもやはり非常に重要な問題なので,ある意味では,個人の責任という部分も明確にしなければいけないのかなというふうに個人的には思いますが,この原案の7ページで,今の日本で根拠とできるものが使われているのかなというふうに思いますけれどもいかがでしょうか。殿岡委員。

【殿岡委員】  殿岡です。今議論になっている部分が,資料1-2で見え消しされている部分で,やはり基本的には全て復活させるような形がいいかなと思っていて,手帳や診断書の有無にかかわらず希望するということによって,この間の基本法改正を含めて,やはり障害を困難ベースで捉えていく障害の新しい概念に一番近いものだと思うんですね。
 自分に明らかに困難があるんだけれども,医者が診断書を作ってくれないといったようなことも含めて,様々なことが起こっている中で,具体的な困難の内容に応じて配慮が行われるという点では,以前の記述を私は評価していたものですから,ここで「障害」といってしまうと,何か手帳所持者とかという従来の障害に応じて支援するという印象があって,その上で困難をどう測るかという議論は本来は課題になると思うんですけれども,今測っている基準は障害を測っているわけで困難を測っているわけではないので,困難をどう測っていくかというのは,やはりもっともっと検討になってくるかなとは思いますので,間口は広くしていければなと思っております。
 ここからは私の意見なんですけれども,一つは資料1-1の6ページ,機会の確保のところで,大原則でのところですが,「障害があることのみを理由に」という部分が2か所あるんですね。これはかなり配慮が限定しているわけですね。
 では,「のみ」でなかったらいいのかという議論には基本的にはならないし,もっと言うと,差別禁止部会の部会意見なんかでも,障害に基づく差別あるいは障害に基づく均等待遇,均等待遇における直接差別,間接差別,関連差別をまとめた概念が必要だとされています。だから,「障害に基づく差別を禁止し入学を拒否することなく」とか「障害に基づく均等待遇を禁止し入学を拒否することなく」とかというふうに,きちんと基本法にのっとった議論を踏まえたような表現で書き込んでいただければと思っております。

【竹田座長】  2点ありますが,まず1点目の方からよろしいでしょうか。
 まず1点目の方についてはいかがでしょうね。ちょっと近藤委員などから御意見を頂ければと思いますが,ある程度,やはりクオリフィケーションが非常に大事なのではないかなと思います。

【近藤委員】  近藤ですけれども,殿岡委員の意見は非常によく分かるんですけれども,多分,困難というのが多分決められない。やっぱり現時点では,何らかのクオリフィケーションで,しかもこれはかなり広い範囲のクオリフィケーションになっているので,例えば診断書がないと駄目とも書いていないですし,例えばもう既に,ある程度支援状況があるということであったり,しかもそれも「等」と書いてある。何らかの根拠を示すということが本質の意味であって,手帳がある,診断書があることというのを要件として課しているわけではなく,根拠が存在しているということを意味しているということなので,これはやはり,私は必要なことなのではないかというふうに思いました。

【竹田座長】  これは必ずしも診断書だけではなくて,例えば高等学校段階での支援の実績とか,あとはいろいろな箇所で行われている様々な心理検査の結果だとか,それはある程度御本人が提供してくださらないことには,多分効果的な支援というのはできないので,やっぱり不可欠なのかなというふうには思いますが,広瀬委員はいかがでしょうか。

【広瀬委員】  例えば,ここに「大学が支援が必要だと認めた」というのを1個入れてもいいのかなと思うんですね。例えば入学してきたけれどもうつ病になっちゃったと。そのときに,必ずしも,動けなくなっちゃって,診断書を求めるというところまでたどり着けないかもしれないわけですよね。
 だから,ちょっとファジーですけれども,「大学等が必要と認めるものも含む」というようなところをちょっと入れておけば,「大学等」というのが大学等の障害者支援室なのかあるいは保健センターなのかそこはちょっと難しいけれども,そういった文言を入れておいてもいいかなという気がいたします。
 大学が明らかに,この人は何の診断書もないけれども絶対にこの支援が必要だというふうに分かった場合にはできるというようなものを,ちょっと入れておいた方がいいかなと思います。
 それから,あと6ページの「障害があること」,この「のみ」というのはどうして入れたんでしょうか。「のみ」をとったら何とかなるかなというか,何か特に。

【事務局】  いえ,特にないかと思います。

【広瀬委員】  そうですか。

【事務局】  今言われたように,同じですので「のみ」をとった形で修正いたします。

【広瀬委員】  ええ,そうですね。「のみ」は要らない。

【竹田座長】  事務局。

【事務局】  ただ一つ,例えば,今,広瀬先生が言われたように,大学が求めるといったときに,多分ほかのことでもそうなのかもしれないんですけれども,今度,僕たちはこれを実際に動かそうとしたときに,例えばどういう報告書を大学に提示をしたときに,次のアクションとして大学がどういう基準で学生に何を求めるかというのは,大学個々の判断になっていきます。
  それでも一見いいのかなと思うんですけれども,僕たちが今何をやろうとしているかというと,うまく大学で受入れの促進をしてもらおうといったときに,大学事務局なり何なりがどっちの方に行ってくれるかというのはちょっと心配でありまして,そうすると,今広瀬先生が言われたように,大学の判断でとかということになると,また本当にファジーになって,大学もどうしていいのか分からないということもあるかもしれない。入ってくる学生も,この大学には何を言われるのか分からないということになると,学生さんにとっても,少しちょっとファジーになってきてしまうので,近藤先生,それから座長が言われたように,ある程度のきちんとした,あるいは,本当に高校での支援の状況であるとか,そういったものでもって,何となくみんながそうだよねというようなものを程度提示しないと,現場で使えなくなってしまうと,そこはまた裁量行政になってしまうので,そこはいかがなものかなというのはちょっと感じましたので。

【吉永委員】  ちょっとよろしいでしょうか。

【竹田座長】  では,吉永委員。

【吉永委員】  ありがとうございます。大学が必要と認めた場合というのでも,私はすごくすばらしいなと思っていたのですが,もし松尾課長のおっしゃるとおりであるとすれば,例えば折衷案として,専門家の前に例えば学内外のというふうに入れてみるとか,それはいかがでしょうかね。
 要は,学内にも当然,保健管理センターとか障害学生支援室の専門家はいるわけです。その方の所見ということも入るし,当然それがその方が大学にいなければ,外の専門家でそういった所見を依頼するということもできるかなと思うので,ということはいかがでしょうかということなんですけれども。

【竹田座長】  検討したいと思います。殿岡委員,お願いします。

【殿岡委員】  そうしたら,ここの配慮を希望する場合ということはいいとして,その前の段階,見え消しの部分で「手帳や診断書の有無にかかわらず」という,前の部分は復活させることは可能ですか。見え消し版の対象範囲のところですね。範囲のところにはきちっと,それは残した上でだったらいいと思うんですけれども。

【竹田座長】  これは先ほど話した7ページの方に,かなり具体的には書いてあるかなというふうには思います。

【殿岡委員】  だから,4ページの方で,障害者手帳や診断書の有無にかかわらず,学生本人が障害があってという,見え消しで消しているところを復活させてもらって,7ページの根拠資料に関する記述を入れた上でということでどうでしょうか。

【竹田座長】  いかがでしょうか。そこは今回の対象とするかどうかというよりは,合理的配慮の内容にすごく関わってくるのかなということで,多分これは7ページの方に入ってきているように整理したのかなと思うんですね。
 つまり,そうでないと,今度は逆にそういう根拠がないということで,入り口のところでも少しバリアができてしまう形に逆になってしまうのかなというふうに思われますが,いかがでしょうか。
 白澤委員,関連で発言しますか。

【白澤委員】  同じところですけれども,殿岡委員がおっしゃっていることに,基本的には賛成なんですけれども,例えば4ページの「障害がある学生であって」という言い方,これはかなりちょっと限定的な印象を受けるので,例えば「障害等により困難性が認められる学生であって」という形にするとか,ちょっとやっぱり,障害がある学生と限定されている部分はもちろんあるんでしょうけれども,言い切ってしまうところを少し和らげてはどうかなというのが一つの案です。あるいは,もともとの表現を復活させるというのもいいかもしれませんが,もともとのものはかなりラディカルではありますよね。そこまでいけないということであればもう一歩引いた形もあるかなとは思いますが。
 あと,7ページの先ほどの診断書については,基本的に求めるということで,その方が良いということであればそれは構わないとは思うのですが,例えばアメリカの場合は,最近は合理的配慮が内容に応じて,いつでも何でもかんでも診断書を求めるという形よりは,もう少し柔らかになってきているという話がありましたよね。なので,他の学生との公平性の観点から,必要に応じてこれらの診断書等を求めることが重要であるというような形,ケースによって大学が判断できる形,また大学が必要と認めたときには出してくださいということが言えるような形にした方が柔軟性があるのかなと思いますがいかがでしょうか。

【竹田座長】  まず1番目の方ですけれども,すみませんが,もう一度お願いします。

【白澤委員】  障害等により困難性が認められる,何らかの困難性が認められる学生であって。

【竹田座長】  困難性が認められる学生が対象になるということですか。

【白澤委員】  困難性が認められる学生であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある学生,ですね。

【竹田座長】  これはやはり希望とかリクエストというのは,やっぱりすごく大事かなというふうに思うんですね。やはり障害がある学生全てが対象で,これは全般的に非常に大事なポイントとして自立というのはあると思うんですね。
 やっぱり支援の内容も,入学後どんどん変わってきて,必要だった支援が必要なくなるケースというのも多々あると思うので,そういう観点からすると,障害のある学生,困難性というのも非常に大きなものですね。困難性がなくなる場合もありますので,つまりそこの困難性があるという入り口の部分は,確かに余り垣根は作らない方がいいと思いますが,本人がリクエストする場合にはその根拠が非常に必要であると。
 要するに,多分委員の皆さんが考えていることは同じだと思うんですけれども,入り口から余り垣根は作らない方がいい。支援は飽くまでも本人が求めるべきである。そのときに効果的な支援をするための根拠,材料はどうしても不可欠だし,それを御本人が準備するのは個人の責任だというような,そういう趣旨で,多分どなたも反対はないのかなと思いますので,多分文言の問題だけだと思うんですね。
 ただ,先ほども言いましたように,あちこちに同じようなことが出てくると非常に読みにくくて,あとは細かな日本語の言い回しで,何か一つ単語が入ったからこの部分はカバーできているとかというものではないかなと思うので,ちょっと今いろいろ頂いた御意見は多分基本的には同じだと思いますので,垣根は作らない。だけれども,そこから先は,その人の支援の必要性を判断して,それから大学の裁量というのは,確かに余り入れてしまうと,一番困るのは地域差とか大学間差というか,ある大学ではここまで認めているけれども,こっちはここまでしかできないとか,その差が余り大きくなるというのも望ましいことではないかなというふうに思うので,その辺は7ページの方にあるようなものも,ある程度きちんと踏まえた上で,こういう根拠に基づいて,ここまでだというようなことに,これがだんだん回り始めたときに共通理解になるものが進んでいくような形になっていくのが一番いいんじゃないかなと思います。
 では,近藤委員。

【近藤委員】  近藤です。それについて質問ですけれども,例えば権利条約でいうところの合理的配慮というものをここで論じているとするのであれば,やっぱりイニシアティブは本人がもっているということが基本になってくるものですけれども,ここは結構ぼかしてあるような気がするのですね。
 ここの障害学生とは何かというのは,別にそれが支援対象かどうかというのはまた関係なく,ただ障害のある学生とは何かというだけの話なので,それが合理的配慮をどう決めるかという段階では,本人のイニシアティブのもとに合理的配慮のニーズが発生するという,イニシアティブを本人にもたせるという権利を認めることなので。
 そうだとすると,やはりここは,私は余り最初の「『障害のある学生』の範囲」というところは大きな問題になっていないと思いまして,それよりも,やはり7ページのところで,さっき広瀬委員からの意見などでちょっと議論になっていたところなんですけれども,いわゆる父権主義的に誰か他者が決めるということではなくて,イニシアティブを本人に持たせるということをより明言するように,これは「過度な干渉やハラスメント」とか「本人のニーズと意思を尊重する」とかいう微妙な表現になっているんですけれども,もうちょっとはっきりと「イニシアティブを持たせる」ということの文言に変えることで,十分対応可能なのではないかと思ったんですが,いかがでしょう。

【竹田座長】  ちょっと待ってください。中野委員の方から先にお願いします。

【中野委員】  今の近藤委員の意見に関しては,賛成でございます。
 これはやっぱり決定の一番最初に,「ニーズに基づいて行う」ということを最初に書いていただいた方がいいんじゃないかと思うんです。
 それから,7ページの最後のところの,「なお」の後の部分が先ほどから議論になっていますが,これは私の理解では,障害者手帳若しくは診断書,若しくは心理検査の結果というように,これはアンドではなくて,どれかを持っていればいいというふうに理解をしたんですけれども,そのように確実に読みとれれば,例えば中途の障害の場合に診断書はあるんだけれども障害者手帳が出ないというケースがあって,診断書だけあれば支援をしたいんですが,これがアンドになったら非常に困るわけですが,オアであれば診断書だけで支援できますし,それからオアになっていれば学内外の専門家の所見さえあればいいので,これが全部オアになっていれば大概の学生に関しては支援ができるのでいいなというふうに思いました。
 以上です。

【竹田座長】  一つずつよろしいでしょうか。
 これは多分,オアかと思うのですが。事務局。

【事務局】  今,先生が言われたように,これは後ろの方はオアで結構だと思います。
 それと,あとは近藤先生からありましたように,例えば資料1-1,4ページのところの「『学生』の範囲」でありますけれども,これはもう一回読み直すとやはりちょっとトートロジーで,「『障害のある学生』の範囲」の丸二つ目でありますけれども,「したがって」のところ,「障害がある学生であって」という部分は,これはちょっとトートロジーなので,例えば,広く読むということで「本検討会において検討対象とする『障害のある学生』の範囲は,『障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は,学生を対象』とした。」ということで,ここはそういう形にし,そして後ろの合理的配慮を決めるときに,オアのいろんなリクワイアメントを出してもらうというようなことで対応すべきという今の議論というのは,修文可能なのかなというふうに思っているところでございます。

【竹田座長】  よろしいでしょうか。大体それで整理できたかなと思います。
 では,松尾委員,お願いします。

【松尾委員】  松尾です。別のところですけれども,先ほど大島委員がおっしゃった8ページの公平な試験の配慮のところなんですが,一応入試や単位認定というふうに書いてあるんですが,例えば本校の場合は,実験とか実習とかも単位認定に関わりますので,試験だけではなくて「公平な試験等の配慮」というふうにしてもらって,やはり入試はちょっと別枠に抜けていただいて,後でも出てきますので外していただいて,「単位認定等のための試験等」若しくは「試験」か,もうはっきり「実験」とか「実習,実技においては,例えば,評価基準の変更や」,及第点というのは余り使わないような気がするんですけれども,「合格基準を下げる等は合理的配慮ではないことに留意し」ということで,最後は「障害のない学生と公平に試験等」若しくは「単位認定等を」というふうに書くと,多分何もしなくていいんだというふうにとられそうなので,どこかに評価方法を変えるのは有りというのを書いていただければ,例えばもう最初の方に「単位認定等のための試験などにおいては,評価方法を変えることはあるにしても,例えば基準の変更とか合格点,合格基準を下げるというのは合理的配慮じゃない」というふうにしていただいた方がいいかなと思います。

【竹田座長】  松尾委員にちょっとお伺いしたいんですけれども,特に理工系の方のJABEE等で,やはり実技等の基準というか,評価のときに支援の有無というものがどういうふうに取り扱うかということについて,余り具体的には議論してこなかったんですけれども,多分そういうことも含めての御意見だと思うんですが。

【松尾委員】  この前,ちょっとほかの大学から障害がある学生のJABEEについてどうかというお問合せがあって,こういう理屈で同じようには取扱いができないので,こういうふうに判断してこれで評価をしましたという証拠を残せば多分いいと思うんですよね。
 例えば実技ができないという場合があるので,それは別にこういうことで,同等の力があるというふうに判断したということを示さないといけないので,そういうことを含めると,もう少しこれを膨らませて書いていただいた方がいいかなというのと,あとやっぱり入試はちょっとここからは外してもらった方がいいかなという気はしました。

【竹田座長】  ありがとうございました。入試は入試で,実際の大学の中での単位認定についても,評価基準と評価方法という辺りをしっかりと,見込みというか,それをできればなというふうに思います。
 近藤委員の次に殿岡委員。

【近藤委員】  一言だけ。ここで入試を外してしまうと,後の方のが,センター試験だけになってしまうので,外すというか別枠を設けるということでどうですか。それだけ確認でお願いします。

【竹田座長】  殿岡委員。

【殿岡委員】  先ほど障害の範囲に関しては中野委員,近藤委員の案に基本的には賛成ということで,整理させていただければと思います。
 あと,別件なんですけれども,白黒版の7ページのところで,通学に関してなんですけれども,この中の文言には珍しく「必ず確認する」というふうに,「必ず」という表現が入っているんですけれども,「合理的配慮の決定」の丸の2番目です。
 繰り返しになるのですが,昨今やはり様々な法制度の不備などによって困難を極めているのがここの通学の部分で,「必ず確認」というとやはりここに困難をもっている人たちが入学できないという事態にもなりかねないので,「必ず」というのは消してもらった方がいいかなと。必ずすべきでないという意見ではないのですが,現行の制度の中でいうと「必ず」は取っておいた方がベターかなと思います。

【竹田座長】  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。巖淵委員。

【巖淵委員】  巖淵です。先ほどの入試に関連して,これは大学の入試の配慮で,その後はセンター試験というところの確認なんですけれども,その前に「中・長期」というのがありまして,この内容はやはり短期的にはもう書くのは難しいということの理解で後回しになるだろうなというのを危惧しているんですが,この内容の一部なりとも,何かしら公開を一部でもするのかなということについて,入試は大変問題だというふうに最初から申し上げさせていただいておりますが,ちょっと一度確認だけはさせていただきたいと思って発言しました。

【竹田座長】  これは事務局の方から何かコメントはございますか。
 最初の議論では短期というのは1年単位というような認識で,次年度以降が中期以降ということだったかなと思いますけれども。

【大学入試室】  すみません,失礼いたします。大学入試室,佐藤でございます。
 中・長期的なところにつきまして,入試の関連といたしまして,主としてセンター試験における配慮について,どのようにイメージしているかということが大きいのかなと思いますけれども,結局,皆さんからいろいろと御意見を伺っておりますが,実際にそれに基づいて出願をする受験生にとって本当に効果的な情報というのは,どういうふうに情報提供があり得るのかという点については綿密にいろいろと調査してからでないと,なかなか難しいというのが現実ではないかと正直思っております。
 正に,障害種別,程度等で大体こういう支援をしますよと,多分受験を申請する側にとって,一つの目安として一定の効果があるやり方だとは思うんです。それは,こういう困難度ですとこういう支援をやりますというものについて,どのように情報を整理して,かつそれを理解しやすいように出していかなければいけないということを考えると,中途半端な形では多分出せない。余計混乱を招く可能性がございますので,そこはちょっと慎重にかつ速やかにとは思いますが,1年,2年ですぐにというのは,ちょっと正直難しいのではないかというふうに思っております。

【竹田座長】  多分,先ほど類型化という表現がいいかどうか分からないんですが,ある意味ではパッケージ化された実績というものが基本になりつつ,こういう検討会での取りまとめ案が出されることで,それが少しずつ収縮されていくことは,もちろん今回の検討会の影響というか,そういう効果としては期待できるのかなというふうに思いますので,中期まで全然動かないということではないというふうには理解しておりますけれども。

【事務局】  念のためでございますけれども,一応この検討会の検討状況というのは,もちろん入試センターでも逐次情報は共有するようにしておりますが,何分センター試験というタイトなスケジュールの中で,御本人の確認を的確にして,的確に対応するということを考えると,混乱した情報というのは出せない,出すことによって余計手間をかけてしまうということになりかねないので,その辺りも含めて,情報出すときは慎重に,事故が起こらないような出し方をしなければならないという認識があるので,1年とか2年という短い時間を切って確実にということはちょっと難しいのかなというところでございます。

【竹田座長】  今,現状でも類型化にプラス専門家の判定ということをもとに,行われている配慮のバリエーションは現実にはかなりあるのが実態かなというふうには思いますので,類型化という言葉はすごく印象が強いですが,決して現状はそういう紋切り型ではないのかなというふうに思いますが,困難度別ということで,それが今後ますます変わっていくというふうに理解していただければいいのかなというふうに思っています。中野委員,いかがでしょうか。

【中野委員】  巖淵さんがおっしゃることはすごくよく分かるんですが,入試とそれから入った後の支援というのは一体でないといけないので,今回これが出ることで,大学は本格的に全ての大学で障害のある学生を受け入れる体制を作り始めますよというところをまずスタートしていただいてから,入試に関してはもっと大きな改革をしていった方がいいかなと。そうでないと,入ってきたはいいけれどもうちでは支援はできませんというような話になったときに,最初のところにあった障害を理由に拒否せざるを得ないというような話が出てくるのはより不幸な話かなというふうに思いますので,まずはこれで走っていただいて,その後でなるべく早い段階で入試制度改革も含めて検討していただくのがいいのかなというふうに思っています。
 それと,入試に関して,これを読んでいくと,私学は取りあえず何もしなくていいのかしらというような印象を正直なところ受けているんですが,そこはどういうふうに捉えたらよいでしょうか。この文章全体を通してみてみると,国立については明言してあるんですが,私学はそれぞれでどうぞというような感じに受け取れてしまうんですが,その辺はどうなんでしょうか。

【竹田座長】  特にそういうことではなくて,私学ももちろん対象となります。

【中野委員】  大体,先進的なところはセンター試験に準拠してやりましょうというふうになっているんですが,ただ私のところにいろいろ相談に来られた私学の中には,うちはまだ体制が整っていないのでセンター試験並みのことはできませんとか,やっぱり入試でやったことを入学後に整備しないといけないので,そこにはまだ時間が掛かりますから当面はちょっとまだできませんよとか,それから入ってくるときに,支援はできないけれどもそれでもいいんですかという約束をしてから入れるとかというような話があるので,この文言でそういうことが起こらないようになるのかなというところがちょっと気になったところでした。

【竹田座長】  実際の運用では,つまり拠点という話が出てきましたよね。ですので,私学の中で,もちろん非常に歴史が古くて何十年もそういうことを積極的にやるところもございますので,やはり大学の規模とか歴史とかそれによっても異なるのかなというふうに思いますが,この内容については必ずしも国立大学を念頭に置いたものではないというふうに読み取っていただければと思います。

【中野委員】  今申し上げたのは入試に関してだけです。入試が明確に触れられているのは,前の方であった入試の評価のところがちょっとあっただけで,あとは中・長期のところでセンター試験のことがずっと書いてあって,もしかしたら私学からすると,そこが余り明確に読み取っていただけないかなというふうにちょっと心配をしたわけなんです。

【竹田座長】  何か事務局,ありますか。

【事務局】  ちょっと工夫をしてみたいと思います。決して,別に国立だけにやってほしいという趣旨ではありませんので。

【竹田座長】  では,最後に殿岡委員に御意見を頂戴して,その後休憩を入れたいと思います。よろしくお願いします。

【殿岡委員】  前段の議論でもあったんですけれども,センター試験というのは,国立だけではなく私学も利用できるわけですよね。入試はいろんな形態の入試があるわけですけれども,センター試験の全てのことを一つの私立大学でやることは確かに難しいというよりも,受験生があったときに,その受験生に対するセンター試験の基準並みの配慮というのは,ノウハウとか,どこに委託したらいいかということが分かっていれば,入試に関してはある程度できると思うんですよね。
 入学の配慮ももちろん大事なんですけれども,センター試験を利用するか,若しくはセンター試験並みの配慮を実施するということを,やはり私学にも課すということが合理的配慮を義務であるという基本法との関係では必要かと思います。やはりここはある程度整理して,各大学ごとの入試についてはセンター試験並みの配慮基準に引き上げる,その上でセンター試験については更に高いところ,障害種から困難性へという,また更に高い次元に上っていくと思うんですけれども,少なくとも現行の障害種ごとのセンター試験の配慮は一つの基準だと思うので,ここに私立大学の試験水準を,私は感覚的には5年以内ぐらいかなと思うんですが,3年か5年の間ぐらいでは,ここで引き上げていくということは,何か表現できないかなと,そういうふうに思います。
 繰り返しますが,センター試験の基準で全部準備しなければ合理的配慮をしていないという意味ではなく,受験生があったときに,センター試験の基準の中でできる部分はクリアしていくというのは書き込めるんではないかなというふうに思っております。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。これは,先ほどの公平な試験のところで,試験と評価という議論がありました。ちょっとこの辺り,少し試験の公平性というところが,多分一番プライオリティーが高い部分だと思うんですけれども,国立,私立問わず,試験の方法も様々ですので,やはりこれは細かいことではなくて,基本理念という形で公平な試験ということを前提に少し文言を検討してみます。

【殿岡委員】  センター試験を利用することもできるわけですから,ですから,それも含めて配慮する一つの基準になるといいなと思います。

【竹田座長】  ちょっと議論の途中ではありますけれども,10分間休憩を入れさせていただきたいと思います。
 50分から開始というふうにいたしますので,よろしくお願いいたします。


(休憩)


【竹田座長】  それでは引き続き御意見を頂ければと思います。どうぞ御自由によろしくお願いいたします。吉永委員,どうぞ。

【吉永委員】  富山大学,吉永でございます。
 ちょっと議論を変えてしまって申し訳ないのですが,資料1-1の6ページにあります(3)の決定過程のところで「大学等は,大学等の体制面,財政面を勘案し,『均衡を失した』又は『過度の』負担について,個別に判断することになる。」ということなんですが,こちらをできれば「均衡を逸しない,又は過度でない負担」というふうにしていただきたいんです。
 と言いますのは,要するに,バランスを欠いたとか過度の負担ということから議論を出発して,それが否定されれば支援が行われるというふうに述べるわけですね。むしろ権利条約の趣旨としてはそうではなくて,そもそもこの支援というのがバランスを欠いたものでないか,若しくは過度でないかということを考えた上で,それがもし仮に否定されれば行われないということだと思うんです。
 これはかなり重要でして,特に出発点がそこまで違うと,やっぱり具体的な結果について,かなり重大な違いが出てくるのかなと思うので,もしよろしければ,そのように変更していただけないかなと思いますがいかがでございましょうか。

【竹田座長】  その辺は検討させていただきます。
 福永委員,お願いします。

【福永委員】  そこが出ましたので関連してその次ですが,「合理的配慮の合意形成過程」のところで丸が二つありまして,一番最初に「学生本人のニーズと意思を尊重する。」という文が書いてありまして,次に大学教員等のうんぬんを避けるということが書いてありまして,またもう一度学生の意思決定に関することに戻っているんですね,それを支援するという部分ですね。「一方で,配慮を希望する学生の意思表明が」という文章に,話が戻っているんですが,「一方で」以下は,上の6ページの一番最後の方に付けた方が,何となく話としてすっきりするのかなと。
 ですから,意思尊重をするというのと意思尊重するために支援をするというのをまず丸で書いて,次にそのときに気を付けることを書くというふうにした方が,これは表現の問題ですけれども,すっきりするのかなと思いました。

【竹田座長】  ありがとうございました。後で検討させていただきます。
 そのほか,いかがでしょうか。中野委員お願いします。

【中野委員】  今の次のところで,「合理的配慮の決定」のところなんですけれども,これまでの議論の中で,学内で調整がうまくいかなかったときに第三者機関が必要ではないかというお話が出ていたと思います。
 実は,最近ある大学から相談を受けたのは正にそこで,学内で決裂してしまって,それで調停という形で入らせていただいて,今正に調整作業をやっているところなんですが,学内に専門家がいない場合に,なかなかこれがすごく難しいので,何とかそういったシステム化というのができないでしょうかというようなお話がありました。
 これは中・長期の課題の中に入れていただいても結構だと思いますが,多分,第三者の機関が入る必要性があるかなと思いますので,どこかに入れていただけると有り難いなと思います。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございます。確かに拠点校のその中身の部分のところでも,そういう拠点校の一つの業務というか,機能の可能性という話の中でもそういうお話が出てきたかなと思います。

【中野委員】  それで,続けてよろしいでしょうか。
 今の話ですが,拠点校では難しいというふうに理解しています。なぜかというと,同じような規模,同じような学部を持っている大学で,支援経験のある大学でないと話が合わないんですね。
 実は,今回来たケースは,最初に公立大学に行って,規模も違うし,それから持っている学部も全然違うのでということで,規模の同じ大学で支援をしているところという話がきましたので,そういうようなことも考えて相談機関というのは決めていかないといけないかなというふうに思っています。

【竹田座長】  ありがとうございました。そのほか。広瀬委員お願いします。

【広瀬委員】  放送大学の広瀬です。
 今の御意見につながることなんですけれども,アメリカの大学の場合,もしこういった配慮がなされない場合,それがどのようなプロセスで,最後は最高裁までいく場合があるんですけれども,学内のADA委員会,あるいは学生支援室でのコーディネーターとの話合い,そこで決裂すると地域の人権オフィスに行く。そして,そこで駄目だったらば,連邦の裁判所にいく。その次が最高裁に行くみたいな,上まで行くケースはほとんどなくてどこかの段階で話がまとまるようになっているんですけれども,もしこういうことが配慮されるということになったときに,「いや,うちの大学は全然してくれませんよ」といった場合,どこにそれを持っていったらいいんでしょう。アンラッキーといって,学生がそこで何もできないということになったらば,やはりそういったシステムとしての下支えがあるからこそこういうことができると思うんですけれども,その辺はいかがでしょうか。

【竹田座長】  アメリカの場合はADAがありますので,ADAのコンプライアンスオフィサーがそういう業務を担うというお話は伺っておりますが,基本的には多分,アメリカでもできるだけ,学内で何とか調整して,そうならないようにという努力をされているんではないかなというふうに思うんですよね。
 ですので,第三者機関の調停と中野委員がおっしゃるのはいろんな意味があって,何か紛争的なイメージをもちますけれども,アドバイス的なイメージというものも非常に大事になるかなと。そういう意味で,拠点校の役割ということは議論の中で出てきています。
 一方で,紛争処理ということになると,またそれは拠点校とか学校のレベルでは機能的には難しい部分というのはあるかと思います。

【広瀬委員】  それから前にも申し上げましたけれども,アメリカの場合はもしADA法を守らないと,罰則として連邦政府からの助成金がカットされるという重大な事態が発生します。しかし,ここでは,大学側が「それは無理だよ」といったときに,何か罰則とかあるいはプラスになるものとかというのは,何かお考えなんでしょうか。

【事務局】  すぐに罰則というのは,大学のアカデミアの中でというのはなかなか難しいと思いますけれども,例えば,今,先生が言われたように,アドバイスというのと,それから罰則ということでいうと,大学自体の評価の観点に入れるというのはあるかと思います。
 そこは例えば,今,大学の改革のいろいろな取組をやっていますけれども,その中に大学でのいろんなビジョンづくり,評価をどうするかというのはあろうかと思います。
 あともう一つは,確かにそういう紛争が起こった場合には,次のステップとして司法に行くというケースがあると思いますけれども,それをどう構築していくかというところだと思いますけれども,すぐにそういう枠組みができるかというと,なかなかどうかなというのもあります。ただ,中・長期的には,先生が言われたように,アメリカでは多分副学長がそういうことをやって,そういう司法での紛争のための準備を行うというような,逆に大学側の管理体制がしっかりしているということもありますけれども,日本ですぐにそこまでいけるかどうかというのはありますが,中・長期的には,場合によってはそういうこともあるのかもしれません。

【広瀬委員】  例えば,文科省からの補助の予算を減らすといったら,大学は本当に真剣に検討し始めると思います。アメリカは実際そうなんですよ。連邦政府の援助がないということは,もう全部の,医学部から何からの研究資金にも関わるので,その辺どうなんでしょうか。

【事務局】  可能性としては,すぐにそこまでいけるかどうかは別としてでしょうか。

【竹田座長】  中野委員,福永委員,殿岡委員の順でお願いします。

【中野委員】  今の件に関しては,私が先ほど申し上げた件は,大学側が拒否しているというよりは,障害学生がクレーマーになっているケースがあるんです。
 それで過度な支援を要求していて,それに対して大学側は非常に真摯に対応しようとしているんですが,どんどん要求する支援というのが膨らんでいって,専門家である私が見ても,これはもう明らかにほかの学生よりも過度なサービスをやっていて,これは公平ではないと思われました。そのときに専門家がいないと各大学では判断できなくて,やろうとすればするほど厳しくなって,最終的にはインセンティブがなくなってしまうんですね。
 やっぱり障害学生を受け入れると大変なので,ちょっと次からは慎重に判断しようかという話になってしまうのが怖いので,第三者機関でちゃんと相談に乗ることができれば,仲介して,そのクレーマーになっている学生も,どうすればうまくいくかというところが分からないからなので,そこをうまく調整してやれば問題が解決するケースというのはあるかなと思って発言させていただきました。補足でした。

【竹田座長】  福永委員。

【福永委員】  大学に対する強制力という問題ですが,ちょっと読ませていただいたときに,中・長期的な取組の中に認証評価の話が出てきますね。認証評価にどこまで書くかというのは問題ですし,すぐ結論は出ないと思うんですが,認証評価というのは大学にとっては非常にきつい。これは認証されなければ大学ではないわけですから,ある意味では非常に慎重であるべきでもありますが,大学のそういう取組を非常に加速するものではあると思います。

【竹田座長】  ありがとうございました。殿岡委員,お願いします。

【殿岡委員】  先ほどの合意形成過程と関係するところで,最初の意思表明とも関係するんですけれども,私は当事者側から少し話したいんですけれども,まず自分自身が自分のニーズを知らなかったというところから始まって,本人が大学受験のときや入学直後に,自分の意見,ニーズをきちっと証明できるかというとできません。できないものがある。このときに,専門家によるアドバイスももちろんそうなんですけれども,一方では障害者団体によるピアサポートによって見つけ出すということも非常に大事なんですね。
 私どもの団体でも仲介業務のようなことをしたこともありますし,それから一方では,障害当事者の側に立って代弁していく,ニーズを表明していく中で,本人のニーズが自分でも過度ではないかとか,自分が過度に要求してきた気持ちの元は何であったかとかということを解明していく作業も,ピアサポートでは非常に重要であるとして,意思決定あるいはニーズ表明に対する支援ということを分かりやすく書き込まないと,どうしても大学側は大人数で,片一方が個人になっちゃうと,そこはバランスがとれなくなってしまう。
 だから,完全に公平な仲介的な業務ももちろん必要だし,それから学生にとってはNPOのようなところから支援を受けてニーズを表明して,それを基に決定過程に入っていくというような部分がここには抜けていて,この資料の限りは障害学生は自由でクリアで,いつでも自分のニーズはよどみなく発言できるというイメージで書いているわけですけれども,実際はそうでないことがたくさんあるので,大学生として,やはり支援を受けながらも自己決定だとか,ニーズを表明できるということを具体的には設けていただいて,やはり1項目,丸印を立てていただくとクリアになるのかなと思います。それによって,では大学に話す前にこういう機関があるから相談してみるとか,自分のニーズをもう一回振り返る時間を持つとか,本来こういったことは初等・中等教育段階で,それも含めてあるべきだと思うんですが,現行そこまで言ってしまうと進まないので,そういったことを書き込んでいただければと思います。

【竹田座長】  ただ今の件は,先ほども議論がありました7ページの上の方で意思表明のプロセスの支援ということで,このときは一方でハラスメントの禁止のようなことと学生のニーズの尊重というところで整理するというところであった議論かなと思うんですが,そのプロセスの支援の仕方については,多分実際,大学によってもピアサポートを活用したりとか,あるいは場合によって専門家がいれば専門家が支援してくださって,いろいろかなというふうに思いますけれども,今殿岡委員のおっしゃった意思表明のプロセスの支援ということはとても大事だと思いますので,先ほどのようにここはやっぱりちょっと整理して,学生の意思表明ということはきちんと記述することにしたいと思います。

【殿岡委員】  一方で,意見表明が全く出ない学生に,事前に大学からのパワーハラスメントとかがあってというようなことが,特に精神障害の学生に多いんですよ。やっぱりハラスメントがあると,もうそこから先,正常な協議が行われなくなっていく,それから私どもが呼ばれるみたいなこともあって,それはかなり厳しい過程もあるので,やはり両側のプロセスを丁寧に書き分けるという形がいいかなというふうに思っています。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。中野委員,白澤委員の順でお願いします。

【中野委員】  違うところでよろしいでしょうか。
 資料1-2の方の10ページの(5)支援体制の学生ボランティアの活用の部分です。学生ボランティアの活用に関しては,いろんな議論があるとは思うんですが,まず私の主張としては1点目,この学生ボランティアの活動は「学生,教職員の理解啓発」の後ろに持ってくるべきだと思います。
 学生ボランティアは,うちの大学では少なくとも余り積極的には利用しないという方針にしています。理由は,支援の質が確保できないからというところが一番大きな部分で,他大学の支援の中でもそれはあります。例えば自分の試験とぶつかってしまって,ボランティアを休んでしまうというようなことが実際に起こっています。
 その意味で考えると「積極的な活動を促す。」というところは,ちょっと私としては言い過ぎかなと思うんですが,せめて譲歩して「理解啓発」の方が上で「学生ボランティア」を下げていただきたい。
 それと,なお書きのところで「事前に十分な研修を行った上で実施する。」とありますが,研修を行っただけでは質が担保できないので,「事前に十分な研修を行い,支援の質を確保した上で実施する」というように文言を改めていただきたいと思います。
 学生ボランティアと障害学生の衝突というのは,いろんなところでかなり起きていまして,支援の質が低かったときに,クレームを言えないというようなことも起こっています。もし,そこでトラブルが起こったときに,ほかの様々な学生活動の中に影響が出てきますので,この部分の書き込みはかなり慎重にお願いしたいと思います。

【竹田座長】  いかかでしょうか。ただ今の御意見について,白澤委員の御発言は関連,ありますでしょうか。また別の御意見でしょうか。

【白澤委員】  関連もあります。

【竹田座長】  では,そちらも含めてお願いします。

【白澤委員】  2点あります。1点は同じところですね。この中で,これはただの文言ではあるんですが,学生ボランティアの1個上の部分の「人的配置」のところですけれども,「手話等の通訳者」というふうにある部分は,ちょっと文言に違和感がありますので,是非「手話通訳等の支援者」などの言い方にしていただければと思います。
 あわせて,人員のところで,後ろの方に中・長期的課題ということでも人員について触れられているんですね。中・長期的課題の7番「専門的人材の養成」というところです。中野先生のおっしゃったところが,ここにつながってくるのかなというふうに思うんですけれども,白黒のもので言うと13ページに当たります。
 この中で,人員というのが,かなり曖昧に定義されているなという気がいたしますので,例えば,一つ目の丸の中で,「各大学に障害に対する専門的知識や技術を有する人材(障害学生支援コーディネーター,専門教員など)」というのを入れていただくとか,あるいは次の丸ですね,「障害のある学生に十分な情報保障を行うためには,その教育内容について専門的な知識を持ったノートテイカー,パソコンノートテイカー,手話通訳者などの支援者の養成,確保を行うことが必要である」というように,もう少し具体化した方が内容が伝わりやすいのではないかと思います。具体的にどういった人材を養成していく必要があるのかということを明確にすることが,今中野先生がおっしゃった学生ボランティアで曖昧になされている支援を,より専門的にしていくことにつながるのではないかと思いますので,御検討いただければと思います。

【竹田座長】  すみません,最初の方をもう一度お願いします。資料が1-2と1-1が両方になってしまって場所がちょっと把握できておりません。

【白澤委員】  ごめんなさい。1点目は細かいことで申し訳ないです。これは1-1の資料ですと8ページの(5)支援体制の中の二つ目の丸です。「担当部署の設置及び適切な人的配置」のところで「手話等の通訳者」という部分ですね。これは「手話通訳者等の支援者」などの言い方がいいのではないかと思います。よく手話通訳者は「手話さん」,「手話の人」とか言われてすごく憤慨している人たちがいるので,ちょっと書き方を工夫していただければと思います。

【竹田座長】  通訳者等の支援者ですね。
 今,支援者の質の問題が出てきたかなというふうに思いますけれども,この点について,委員の先生方の中で御意見があればお願いします。中身の順番は多分,上位,下位という概念ではないのかなとも思うんですけれども,ボランティアの活用自体は避けて通れない部分もあるのかなとは思うんですけれども,確かに中野委員おっしゃるように,質の担保という辺りは,今後も継続的に問題になってくることでもあるかなと思うんですよね。
 あとは人材の養成について,白澤委員がおっしゃった専門的人材の養成のハードルが結構高いので,要するに,ここで養成できるところとできないところというのはもちろんありますよね。そうしますと,拠点校でもできるところ,できないところがあって,そういう人材養成の仕組みをどういうふうに考えていくかというのは次のステップになっていくので,多分この中・長期的な部分に書かれているのかなというふうには思いますが,ボランティアができることによっては大学という場ではマンパワーとしては無視できない存在ではあると思います。
 それから,もちろん専門家でないとできない部分もあるので,その辺は今後研究が重要な課題なのかなというふうに思っています。書く順番,書き方については検討させていただきたいと思います。大島委員,お願いします。

【大島委員】  今のところに関連してなんですけれども,1-2の資料ですと15ページの「専門的人材の養成」のところなんですが,最後の丸で「安定的な雇用が保障されるよう」という部分は,これまでの議論でも非正規の人が多くて,特に問題としては,もちろんモチベーションもありますし,せっかくスキルを身に付けてもそれが継承されないという点が問題だという議論があったかと思います。ちょっと言葉について,何というふうに書いたらいいかは難しいんですけれども,スキルの継承を重視することからも安定的な雇用が必要というか,これもスキルと言ってしまうと余りよくないかもしれないんですけれども,安定的な雇用を保障されるべき理由について少し書かれてあるといいかなというふうに思いました。
 それと関連してなんですけれども,1-2の資料の方で,冒頭にいろいろ調査結果とかを入れていただいて現状を書いていただいているのがすごくいいなと思っているんですけれども,最後の丸で,1-2の資料ですけれども,4ページの一番上のところです。最後のデータとして,支援している部署が入っていますが,同じ調査で専門の教員が何人いて職員さんが何人いてというデータもあったかと思いますので,そのデータも先ほどの部分とつなげるために,これぐらいの教員さんがいて,職員さんがいて,そして長くはなってしまうと思うんですけれども,できたら正職員さんが何人で非正規の人が何人でというようなデータもこちらに入るといいかなというふうに思いました。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。その辺,ちょっと資料を検討させていただければと思います。
 広瀬委員,お願いします。

【広瀬委員】  広瀬です。今の言葉をもし付け加えるならば,白黒の13ページですけれども,大島委員がおっしゃったところに,例えば「支援のノウハウや技術の継承をするに当たって,これらの専門的人材が」というようなことを入れたらいかがでしょうか。
 それからもう1点気になるというか,これでもいいのかなと思うんですけれども,こういった障害者支援の大学での支援を語るときに一番大切なのは,アカデミックスタンダードは維持する,アカデミックスタンダードは絶対に譲らないということを,まずぽんと書くというのが多いんですね。それはやっぱり大学教育に対してはすごく大切で,今ここで6ページの「機会の確保」というところに「高等教育の質を維持しつつ,」というのがあるので,これでも,そういうふうにはもちろんとれるんですけれども,結構ここはきちんと書いておくということが大切ではないかなという気がします。

【竹田座長】  ありがとうございました。今広瀬委員のおっしゃった大学教育の質の問題というのは,こちらの検討会では終始一貫合意が得られているのかなというふうに思いますか,よろしいでしょうか。その辺もちょっと文言を検討させていただきたいと思います
 そのほか,いかがでしょうか。高橋委員どうぞ。

【高橋委員】  信州大学の高橋です。今のところに関連してなんですけれども,ちょっと具体的にこういう表現にしたらというのはまだないんですけれども,今ディプロマ・ポリシーという形で学位授与の方針というのは明確にしているので,余り具体的なものになっていないケースも多いかなとは思いますけれども,それが一つの基準というかそれにマッチしたというか,それを満たすといったようなことを入れていくことで,一つ,抽象的に質を保証するというだけではなく,何かもう一歩具体的にということであれば,大学ごとにディプロマ・ポリシーがあるはずなので,それを原則とするようなことを何か入れられるといいかなと思ったんですけれども,すみません,ちょっとまだ文章化できていないので,ちょっと投げるだけになっちゃいますけれども。

【竹田座長】  その質について,具体的に記載するということですので,是非文章もまた御検討いただいてよろしいのではないでしょうか。事務局の方から先に。

【事務局】  今,高橋先生とか広瀬先生が言われたポリシーの件は,ある程度明確に書いた方がいいと思います。
 それで,私どもも今14ページの「おわりに」のところでとか,そういったところには少し書いてあるんですけれども,それをもうちょっと前向きに持っていくとか,そういったような形で,またこれ以外のいい文章があれば頂ければ,それで記載するようにいたします。

【竹田座長】  殿岡委員,お願いします。

【殿岡委員】  殿岡です。2点あります。1点目は資料1-1の11ページ,高大連携の部分なんですけれども,「障害のある進学希望者においては,特別支援学校に通う生徒のほか,自らの障害に気付かないまま」ということで書いてあるんですが,実際には,大学進学者の7割は一般の高等学校から進学をしていて,そういうわけで障害に気づいていない方もいらっしゃいますけれども,十分に障害に気付いている方もいます。
 残りの3割は,特別支援学校から大学に進学をしているということなので,事実をもとに書けば,高等学校及び特別支援学校にということで,その中で,自分で障害に気付いているということもそうなんですが,高等学校の先生方が,障害とか合理的配慮に関する理解をされていなくて,高等学校の中で配慮が行われない結果,自分の困難性に気づくのが遅れていくとか,合理的配慮を受ける習慣がないまま大学受験に臨んでいるというのが実態なので,ここは基本的にここに書いた方がいいかなと思います。具体的には今言うとおりでいいと思うんですけれども,修文をされたらいいかなと思っています。
 2点目は「おわりに」ですが,資料1-1の14ページのところなんですけれども,検討課題として「医療的ケア等」ということが入っていて,これは検討課題ではあるんですけれども,現にこの4月に大学で医療的ケアができる事務連絡が出ていますので,医療的ケアに関しては,やはりこれは1項目立てて,何月何日付の事務連絡を添えて大学でも医療的ケアができることになって,その内容とか配慮が今後の大学に関しては検討になるとか,これだと医療的ケアの実施自体が検討課題のようにイメージしますので,ちょっと現実と合わない気がするので,もう現に今は医療的ケアは大学側に申請すればできるということになっていますから,これは記載するべきと思います。
 それと障害をもつ教職員に関してですけれども,前回の確認なんですけれども,最初,検討課題ということであるんですが,この範囲の中で,研究生とか障害のある教職員の中にも多数,学生の範囲の中に入ってくる教職員の方もおられるので,教職員だったら検討課題に書くことは重要ですが,教職員も場合によっては学生の範囲に含まれてきて,そこの部分では合理的配慮は必要とか対象になるということは,書き込んだ方がいいのかなというふうに思います。
 以上です。

【広瀬委員】  広瀬ですけれども,今おっしゃったことについて,研究者はとても大切だと思うんですね。大学は学生だけを教育するわけではなくて,本当にその国の研究の大きな担い手であるので,エラスムス計画なんかでは,それをはっきりさせています。研究者が異動しても,必ずサポートの水準を同じにするというふうに言っているんですね。だから,やっぱり,なぜEUがあれだけお金をかけてエラスムスでやるかというと,やはりその研究者が異動して,そこで支援されるということが,EU全体の技術や科学を進歩させるということがあるからなんです。
 ですから,学生だけとか,教職員とここで分けていますけれども,ビジティング・スカラーはどうなるんだ。もし日本でそういうサポートをしてくれないなら,日本へ行かないよということが起きてきているんですね。
 逆に言えば,ヨーロッパに行けば,必ずサポートしてくれるから行こうと。そういうことに今なってきていると思うんですけれども,その辺はいかがでしょうか。

【事務局】  おっしゃるとおりで,重要だと思います。
 ちょっとビジティング・スカラーとか,研究者の書きぶりをどうするかというのはあって,あとは例えば支援の部分でも,要するに研究者に対するいろんな支援と学生に対する支援,やっぱりレベルが相当異なってくるように思います。例えばノートテイカーに対しても,そこはちょっと書きぶりが難しく,これはやらないということじゃなくて,それは広瀬先生とか殿岡先生が言われるように重要だと思います。課題だと思うんですけれども,どう書き込み,どう支援していくかというのは,僕たちも繰り返し申し上げていますけれども,ここに書けば全てが物事が進むということではなくて,書いたことによって大学の意識が変わって,そしてそこに来られる学生さんがしっかりと光をもってくるということが重要なので,書けばそのまま進むということではないので,どんな書き方をすると大学が実際動いて,それでいい方向にいくかというのをちょっと工夫をしたいというふうに思います。
 そこは決して排除するわけでもなく,そこは本当に悩みなので,逆にいろいろないいアイデアを頂いて,現場で動きがとれるような形にしょうようできれば有り難いなと思っています。

【殿岡委員】  プラスの原稿で,職員,教員と研究者の支援とか配慮とか書いていただいて,学生としての部分は当然検討されていないわけで,そこの部分だけでも,やはり明確にしておいていただければと思います。

【事務局】  あと,もう一つ私どもは,これは最終的には来月でこれをまとめようと思っているんですけれども,決してそれで終わりということじゃなくて,恐らく,今殿岡先生が言われたように,いろんなところでやっていく知見を蓄積をして,それを一例として,ほかのところがそれをまねていく。そして,多くの大学で均てん化していくというのが重要だと思っていまして,そういったことで,しっかりとここにも書かせていただいていますけれども,引き続き,やっぱりそういう知見の蓄積をしたりとか,一回で完璧にするというのは不可能だと思うんですね。この報告書も完璧には多分ならないので,一次まとめという形にして,そして次にまたいろんな議論をして,それをよいものにしていくということですので,今先生が言われたような,いろんなところでやられている活動というのは,むしろここに書くのもそうですけれども,それとは別にやはり蓄積データとして拠点なりネットワークを作って,そこにはめていくことによって,みんなで共有して,そしてそれがまた違う大学にも展開していくというようなことで広めていくのがよいのではないかと思います。
 それと,やれていることと,これからやるべきことというのはよく書き分けていかないと,やれることをマストで大学に提唱するということになって,これもまたやっぱりいい事例としてやっていて,それがうまく大学の中に広がっていくと。そこにはやっぱり,あめとむちというか,おいしいことと罰というか,そういうこともあわせながらやっていくという部分について,文章はいろいろと,今頂いたコメントは工夫をしてやっていきたいと思っています。

【竹田座長】  ありがとうございました。教職員,学生と,なかなか大学の場合には分け切れない部分も多々あります。ただ一方で,今事務局からあったように,これは一次まとめですので,これを出した後に今度少したったところでフィードバックをして,また直していくという作業は当然必要になってくると思いますし,それからやはりこれは全部リンクしていますから,先ほどの質の問題もありまして,研究者,もう既に大学院のレベルでさえ支援に相当な困難が予想されるわけですよね。現状で大変な難しい問題,それから先ほど松尾委員からあったような,そういう技術系,理工系の支援という問題もすごくありますし,これは多分出した後に,いろんな問題点がまた浮き彫りになってくると思いますので,継続的にこういった検討を進めて,いろいろな大学,いろいろな場面,いろいろな専門性にフィットした形というのが時間とともにだんだんできてくるのかなというふうには思っておりますので,これは飽くまでも最初のたたき台というようなことになってきます。
 そのほか,いかがでしょうか。では,高橋委員で,次に白澤委員にお願いします。

【高橋委員】  資料1-1の8ページのところの項目をお願いします。上から三つ目の丸のところです。「学外における実習やインターンシップにおける配慮」のところです。
 1点,言葉の部分で,一つは「教員免許や資格の取得」というところで教員免許がどんと出ているので,すごく何か気になってしまってというか,そしてそれに続けて読んでいくと,どうしても「実習」というのが教育実習というふうに頭に来てしまうので,教員免許も資格の一つなので資格の中に入れちゃってもいいのかなというのはあります。それとちょっと別に本質的な問題として,これも今答えが出るかは分かりませんし,ここに文章にしてくださいではなく,ちょっと御意見をお伺いしたいのは,この文章の最後「柔軟な実習が可能となるよう配慮する。」という流れでいきますと,とにかく何とか実習を受けられるようにしてよという何かそんな感じを受けるのですが,実際には大学として実習に出してはまずいというようなケースがあって,つまり実習に出すことによって,実習機関というのは学外の一般の利用者があるような機関,医療機関であったり教育機関であったりと。場合によっては,そこの利用者に対して迷惑がかかるとか,事故が起こるといったようなことが想定されるケースもある中で,実習に出すということを全てのケースにおいて前提とするような形だとちょっと心配かなというのがあります。
 特に,教員免許が出ていたということもあるんですけれども,教員養成の在り方といったようなところで,ちょっとこのまま教員になるのは厳しいという学生に対して,大学側である程度判断するようにというような意図も込めた新たな制度の変更もある中で,ちょっとこことの兼ね合いでどうしたらいいのかなと思っています。でも,あからさまに何か制限するというようなことを書くのもどうかなということでちょっと御意見を頂ければと思います。私の方で問題を出すばかりですみませんが,ちょっと答えが今ないんですけれども。

【竹田座長】  ありがとうございました。いかがでしょうか。白澤委員の前に御意見を頂きたいと思います。とても大事な点かなと思いますが,ここでは配慮ということですけれども,どちらかというと適格性の判断もすべきであるという御意見かと思います。殿岡委員。

【殿岡委員】  私自身も大学で教育実習を受け教員免許を取った一人ですが,やはりアカデミックの部分と共通するところで,表現自体もちょっと異論があるんですが,迷惑を掛けるということが障害に起因しているのか,それともアカデミックな能力の中身に関する部分なのかによってやはり違うわけですね。
 例えば,私は自分で字は書くことはできませんが,教育実習に行くと実習録というのを毎日書かされるわけですけれども,実習録は,その当時パソコンで打つことは禁止されていて,手書きしなさい,夜中までかかってもいいから手書きにしなさいと言われて大変だった記憶があります。ですから,それが障害に関わることであれば配慮するべきだし,それは相手に迷惑と言ったら障害をもつ学生の実習は成り立たない。
 一方で,やはり教育実習に行くには,それまでに必要な単位を取って,学内でいろんなプロセスを踏んでいくわけですね。そのプロセスを配慮してもらうのは難しいということであれば,実習しないということが一般学生と共通にあるわけで,そこは障害に起因する部分とアカデミックに起因する部分を書き分けていくことは必要なのかなというふうに思います。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございます。多分,今の殿岡委員の御意見は,受入先の機関との情報交換の中身が,合理的配慮についての情報交換ということかなというふうに理解しましたが,高橋委員の御意見は合理的配慮ということとは別に,またそういう対象者の適格性というふうな問題の提起だったかなと思いますけれども,もちろん合理的配慮の情報交換のところで理解いただくということは,今後一番基本的なことにはなってくるかと思います。

【高橋委員】  もう少し具体的なことで言うと,例えば,教育実習であったり病棟実習みたいなものでも,利用者の方とのコミュニケーションというものが不可欠である状況の中で,コミュニケーション自体が障害の機能障害の部分としても制限があるということで,実習で達成しなければいけない部分の本質的な内容が,障害と直接関わっているということによって,その部分をほかの方法で置き換えることが難しいという場合に,果たしてそもそも実習に行けるのかということもありますし,その専攻で卒業できるのかという場合も出てきうるのかなとは思うんですよね。
 本来であれば,そういったことに耐え得るかどうかを入試で判定して,それに耐え得る学生が入学してくるというのが前提だとは思いますが,実質的にはそれを全て実現することは難しい状況の中で,言ってみれば専攻選びのミスマッチではあるんですが,本人の意識と外からみた場合のマッチングが合っていないケースというのが実際にあると。
 そういった場合に,本人の意識としてやりたいんだけれども実現が難しい状況の中で,外からそれに対して制限を掛けるというようなことがあり得るのかというようなところが現実問題として課題になっているもので,ちょっと問題提起させていただいたというところがあります。

【竹田座長】  多分,その問題は,このまとめが出た後に,一番あちらこちらで出てくる問題なんじゃないかなというふうに思いますし,非常に大事な問題だと思うんですね。特に資格とか社会に出ていく上での人材養成を大学はするわけですので,その障害そのものが,本質的にその人の希望しているものとミスマッチがある場合,先生はミスマッチという言葉を使いましたけれども,それを誰がどういうふうに言えるのか,一方でハラスメントという言葉もありますし,障害を理由としての受入れを拒否しないという大前提との両立というか,そこはすごく難しい,かじ取りが難しい問題かなというふうに思うんですけれども,ほかの委員の先生方はいかがでしょうか。米国の状態とかについて,広瀬先生,いかがでしょうか。

【広瀬委員】  広瀬です。今,具体的なイメージで言うと,例えば過去に発達障害をおもちの学生さんが教員の実習に行ってやっぱり大変なことがあったとかということはあるんですね。ですから,イメージとして,殿岡委員が教育実習に行って,例えば自分で字が書けないというのは,もちろん今はコンピューターに置き替えられたり,そういう殿岡委員がいい先生になられるというのは私はとてもイメージできるんだけれども,本当に発達障害の学生さんでコミュニケーションそのものがとても難しい方がいたときに,本当にその辺をどうするかと。成績はいいんですよ,とても。大学院に行かれるぐらいのAが並んでいる。でも教育関係の先生になるのはどう考えても難しい,そういう方たちが結構いらっしゃるんですね。だから,そういうことをおっしゃっているんだろうなと理解したんですけれども,そうでしょうか。

【高橋委員】  具体的にはちょっとそういうイメージはしております。

【竹田座長】  恐らく大学の現場では,そういう学生に「あなたはそれができませんから駄目です」ということは言えないんじゃないかなと思うんですね。つまり,もう入学しているような場合には。

【広瀬委員】  それでも言っていますね。いい先生ほど一生懸命それを伝えようとしますね。相手はとても怒るんだけれども,どうして君が先生になるのは向いていないかというのを,本当にA4何枚にも書いて,その子に一生懸命伝えて,そのとき私はその先生が立派な先生だというふうに思ったんですけれども,簡単にAを出して早く卒業させたいという先生もいる一方で,本当にその子が将来ミスマッチじゃないところで十全に人生を送ってもらいたいというときに,やっぱり先生の中にはそういう努力をされる方もいらっしゃるんですね。
 では,それをハラスメントというのか介入というのか,人権はどうなんだということがあるけれども,私はそのときその先生はとても誠意のある先生だと思ったんですね。

【竹田座長】  そういう先生にリスクを負わせるような仕組みは良くないと思うんですね。やっぱりカウンセリングの体制とか,カウンセリングといってもいろいろあると思うんですけれども,そういうその人の進路に関わるようなカウンセリングができるような人材というものがすごく大事というか必要ですよね。非常に必要な人材として,その支援の中身に位置付けられるべきなんじゃないかなというふうに思います。

【広瀬委員】  カウンセリングもその人は受けたんですけれども,もう学内のカウンセラーはふらふらになって,いつもストーカーのように追いかけられるみたいなそういう場合もあるんですね。
 カウンセラーというのは,週に何回か外部から委託されてくる方ですから,実際に先生と協調した動きとかというのはなかなかできないし,それは東京の某有名私学で体験したことなんですけれども,多分高橋先生はそういったイメージをされていると思うんですね。
 視覚障害,聴覚障害あるいは車椅子ユーザーとかという,はっきりとした支援が分かっていたり,困難がある程度サポートできやすいものはいいんですけれども,やっぱり発達障害とかということになってくると,本当にキャラクターそのものにも関わってくるので,そこが本当に悩ましい部分だと思うんですけれども。

【竹田座長】  ほかの委員はいかがでしょうか。では,近藤委員からお願いします。

【近藤委員】  おっしゃっておられることは非常に分かるんですけれども,例えば精神障害のある人であったとしても,薬理を非常に上手に使えていたとしたら教員になるのも当然十分に考えられて,自閉症スペクトラム障害があったとしても働き方によってはできる。そのベースとなる資格を取得するために大学に行くということは,これは自己決定なのでできるべきですし,それをいわゆるパターナリスティック的に禁止できるような枠組みになっていたりとか,欠格条項的に働くようなものを入れるべきではないと僕は思います。もし今の議論の問題の本質が,例えば本質的な要綱として必要なのにそれを達成できない形になっていて,それにもかかわらずこの文章がさながらそれにも対応しなさいというふうに読める可能性があるということだとすれば,「個々の学生に応じた柔軟な実習」という言葉ではなくて,やはり「実習においても合理的な配慮を行うこと」というふうな形にするというのが,今の妥当な答えになるのではないかなと私は思いますが,それはいかがでしょうか。

【竹田座長】  吉永委員。

【吉永委員】  すみません。私も頭がまとまっていないんですが,実際に学外の実習のときに合理的配慮を提供するのは大学でもあるんですけれども,一方で実習先でもあるんですね。実習系でさっきの合理的配慮を行うことの根拠をどこに求めていくのかというのは結構難しい問題かなと。
 大学が合理的配慮をしてくださいということを要請をして,実習先が分かりましたという形なのか,それとも大学の意思とは全く関係なく,別のどこかからの論理で実習先が合理的配慮を提供しなければいけないのかというところは,少し整理できればこの問題は結構もっとクリアになるんじゃないかと思うんですね。

【竹田座長】  殿岡委員。

【殿岡委員】  最初の質問についてですが,今の段階で各身体障害と,発達障害は分けて議論すべきところは当然ですが,私は20年前に実習を受けた当時はそういう配慮はなかったんです。
 当時,発達障害という言葉はほとんど耳にしなかったんですけれども,一方で,身体障害だから配慮をすべきということもなく,一日誰かが付いていなければ実習しては駄目だとかということを言われてきたんですね。
  20年先に発達障害に対する配慮がどの程度進歩しているか分かりませんけれども,やはりそれに基づく合理的配慮という形になっていくと思います。
 資格というのは,場合によってはその人の一生を決めることがあるわけですね。だから,欠格条項はなくなっていくということは,そういった学生たちが資格を取れるようになることや,資格を取れる学部に入れるということなので,欠格条項に関する改正から約10年がたつわけですけれども大学にそういう学生がいるということ,これはひいては,障害学生が少なからずいるということが当たり前になって,資格を取ることも当たり前になっていくこと,範囲が広がってくるから大変というイメージがあると思うんですけれども,基本的には,新たな分野で合理的配慮の提供について果敢に挑戦していく大学を支援していくという国の流れは変わらないのかなと思うんですが,その辺よろしければコメントを。

【竹田座長】  それはどちらに。事務局。

【事務局】  大学で取得することができる資格等にはいろいろな種類がございますので,流れとしてはそういう方向であると思います。
 ここでは合理的配慮という言葉と概念を記載をしていますけれども,その次には,具体的に,合理的配慮についてどこでどう運用するのかということになりますので,それはやはりいろんな第三者の意見であるとか,やっぱりグッドプラクティスを積み上げながら検討していくということで,殿岡先生が言われた思想は私たちもそうだというふうに思います。

【竹田座長】  高橋委員から御意見を頂いたところからの議論ですけれども,資格や実習にも種類が結構いろいろあるんですよね。教員免許ということが最初に書いてありますけれども,福祉系の資格もございますし医療系の資格も多々あると思いますので,今ここは教育の方法等についてという部分における記載ですので,その資格の内容に応じた合理的配慮について実習先と情報交換を密にして理解を得て,合理的配慮の範ちゅうにおいて実習がスムーズにいくような配慮を大学側の責任としてお願いするというような趣旨を加えた文章を考えて書くという形が一番いいのではないかなというふうに思うんですね。
 余りここに将来構想みたいなものまで含めると,かえって曖昧になってしまってよくないんではないかと,今の議論を聞いて思いました。よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。そのほか,いかがでしょうか。中野委員。

【中野委員】  2点あるんですが,一つは「はじめに」のところで,ここにいろいろな背景等が書いてありますが,大学等が障害のある学生を支援するんですよという一言が,明確に書かれていないところがちょっと気になっているところで,是非それを明確に書いていただいた上で,本検討会ではうんぬんというふうに続けていただけるとうれしいなというのが1点です。
 それから,今回の議論の中で大学等の議論をずっとやっているんですが,高等学校問題というのは今回の範囲でないことは了解しているんですけれども,それがどうなっているのか気になっておりまして,初中局の方で高等学校の合理的配慮も含めて議論しているというふうに考えてよろしいのかどうか,ちょっとお教えいただきたいんですが。

【事務局】  整理上はそういうことになります。

【中野委員】  どなたが一番よく御存じか分からないんですが,初中局の議論の中で,例えば高等学校の教材等の問題に関してはまだ明確にはされていなくて,例えば教科書バリアフリー法で保障されている教科書に関しては,実は高等学校までは入っておらず無償給与の対象にはなっていません。なので,事実上,例えば視覚障害のある学生の場合,小中はオーケーで,今回の改正で大学が大分対応できるようになるんですが,高等学校がぐっと抜けてしまう話になってしまうのですが,これは初中局の方に申し送るという形になるんでしょうか。

【事務局】  私どもは同じ文科省の中ですので,そういうことで申し送ることになるかと思われます。

【中野委員】  分かりました。ありがとうございました。

【竹田座長】  そのほか,いかがでしょうか。あと10分ほどです。

【近藤委員】  今,中野委員かおっしゃったことは,非常に重要な問題だと思っているんですけれども,我々も相談業務の中で主に言われることが,高校は義務教育ではないからということで,学校側の判断によって,いわゆる放校処分になるとか,そういったことが,かなり自由にできるようで,障害のある生徒が排除されるというパターンが非常に多いんですね。
 こういう形というのは,何かまるで大学における合理的配慮のようなものが高等教育場面では適用されているパターンが多いような感覚を持つことが非常に多くて,この問題は今の形ですと多分宙ぶらりんのまま残り続けることになると思います。義務教育ではないということと,教育において合理的配慮を提供する必要はないということは,これは全くそぐわないことですよね。義務教育ではないということは言い訳にならないと思うのですが,現状では,いわゆる高等学校側からの排除の問題が非常に多いので,是非どのような枠にすべきなのかということについて御意見というかお知恵を頂けたらうれしいなと思っています。

【竹田座長】  はい,よろしくお願いします。

【事務局】  義務教育というのと無償というのはちょっと概念が違うように思います。日本の場合も,義務教育ではないけれども,だんだん無償に近づいていきましょうという方向性なんだと思いますが,確かに高等学校教育はいろいろな意味でエアポケットになってしまっているという御指摘はそのとおりです。
  義務教育に関しては,かなりいろいろなことが整備をされつつあり,それから高等教育に関しては,いろいろ改革という中で議論はされている。しかし,高等学校教育になると,都道府県,個々の学校の自主性みたいな話になっているところが今まで非常に多かったのではないかと思います。
 本来であれば,初等・中等教育の中で,高等学校教育の障害のある子供たちに対する国の問題について議論されるべきだと思うんですけれども,必ずしも十分にそれができていない部分が恐らくあるかなと思いますが,もう一つの流れとしては,高等学校教育の在り方,多様性の中で,しかし高等学校に関しての質の担保,質保障というのをどういうふうに図っていくべきかということは,部会を作って議論をされていますので,そういう中でも少し障害のある生徒さんたちに対しても少し意識してもらうようなことを問題提起するというのも一つの方法としてあるのかもしれません。
 もちろん,特別支援教育の方の流れからの議論というのもあり,そちらでももう少し触れてほしいというのはありますけれども,もう一つは高等学校教育の中に多様な学生,多様な生徒さんがいて,多様な進路があるという中で,障害がある生徒についてどう考えていくかという話もあるかと思います。
 それから,高校と大学の接続の問題につきましては,今正に議論を大学入学者選抜だけではなくて,高校教育,それから大学教育の目指すところがうまくかみ合っていくようにということで検討を始めましたので,そちらの方でも障害がある学生さんの入学者選抜の問題なども当然そこに入ってきますし,高校教育と大学教育をどうつなげていくべきかというところも,ちょっと意識させていただければと思いますので,いろいろなところに少しずつでも入っていくように,私の方でも努力をしたいと思います。
 いずれにしろ,ここの場では,ここの問題は十分には議論はできていないだろうということで,ほかの場に少しふさわしいところ,ふさわしい議論を出させていただければと思います。

【竹田座長】  ありがとうございました。では,殿岡委員,吉永委員の順でお願いします。

【殿岡委員】  議論を蒸し返すわけではないんですけれども,初等中等教育分科会報告の基本的環境整備の定義のところで,高等学校に関しても少し触れられているんですが,やはり議論は十分ではない。
 一方で,内閣府差別禁止部会報告では,高等学校に関して,実質的に義務教育に相当するということから高校は義務教育に準ずるものという文言が加えられています。
 翻って,大学に関しても,やはり高等教育に関する進学率は日本は5割を超えたということに達し,やはりここの充実という意味で,基本的な環境整備と合理的配慮に関して,やはり高校でできているからこそ大学でもできるんだという高大の接続の議論を是非続けていただくように,あえて記載してほしいと思います。

【竹田座長】  人材育成は大学から始まるわけではないと思いますので,高大連携のテーマはとても大事かなと思います。では,最後に吉永委員。

【吉永委員】  すみません。検討会,取りまとめの案をどうこうしてくれという話ではないという前提としてお話ししますが,発達障害者支援法がございまして,これは平成17年4月に施行されていて障害者権利条約より前に施行されているものなんですが,その第8条の2項に「大学及び高等専門学校,発達障害者の障害の状態に応じ,適切な教育上の配慮をするものとする。」というふうにはっきりと書かれてあるんですね。これは,確かに発達障害者に限ったものとはいえ,大学と高等専門学校が主体としてこういうふうにすべきだということを書いた現行法は,多分これだけなんじゃないかなと思います。そうですよね。
 だから私としては,取りあえず,そのことについて教育上の配慮ということが,恐らくこの意見書の取りまとめにおける合理的配慮の教育方法等というところに十全に含まれているということは十分に理解しています。そのことについて全く問題ないのですが,ただ,現行法とこの取りまとめの案では,多分重みが全然違うかなと思うので,例えば第三者から,「はじめに」のところに発達障害者支援法が書かれていないのはどうしてと聞かれたときに,どう答えていけばいいのかを考えたとき,一つの考え方としては障害者基本法が十分に発達障害者支援法の意図を酌み取る形で制定されているというようなことをいうことができれば,一つの答えになるのかなと思うのですが,その辺り,是非教えていただけないかなと思います。

【事務局】  例えば発達障害者支援法では,適切な教育上の配慮をするものと定めているなどのようにして,一応全部入っているような書き方を工夫したいと思います。

【竹田座長】  ありがとうございました。たくさんの御議論を頂戴しました。
 頂いた御意見を踏まえて,次回の検討会では,報告書案をまとめて御提示できればというふうに考えております。どうも長時間ありがとうございました。
 最後に今後の検討スケジュールについて,事務局より説明をお願いいたします。

【事務局】  資料の2を御覧いただければと思いますが,本日20日,第2回目の原案の検討を行いまして,次回は12月18日,3時に行いたいと思います。そこである程度のまとめをさせていただければと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【竹田座長】  それでは,以上で障がいのある学生の修学支援に関する検討会第8回を終了したいと思います。

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高等教育局学生・留学生課

-- 登録:平成26年02月 --