(議事録)障がいのある学生の修学支援に関する検討会(第2回)

【竹田座長】  それでは,ただ今から障がいのある学生の修学支援に関する検討会の第2回を開催いたします。皆様には御多忙中にもかかわらずお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
 今回から初参加の委員の先生の御紹介をさせていただきます。石川准先生,静岡県立大学国際関係学部教授の石川先生に今回から御参加いただきます。
 石川先生,御挨拶を一言よろしくお願いいたします。

【石川委員】  静岡県立大学国際関係学部の石川といいます。よろしくお願いします。
 初等中等教育の方では,特別支援教育の在り方に関する特別委員会の委員長代理をしております。1回目はちょっとスケジュールの調整ができなくて参加できませんでしたので,少し乗り遅れてしまいましたけれども,よろしくお願いいたします。

【竹田座長】  ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は,まず,本検討会に資料を御提供いただいた委員より,その内容について御発表いただきます。続きまして,本検討会の進め方及び論点や合理的配慮の定義等について御議論いただく予定としております。
 なお,本検討会においては,御発言される場合には必ず挙手をした上で,お名前を述べてから御発言いただきますようお願いいたします。また,通訳の方のためにゆっくり御発言いただきますようお願いいたします。
 まずは,会議資料について事務局より確認をお願いいたします。

【事務局】  それでは,文部科学省の学生・留学生課の森山と申します。本日は,御多用中のところを御参加いただきまして,誠にありがとうございました。
 配付資料につきましては議事次第にございますとおり,配付資料1から8,参考資料1から9ということで配付させていただいております。過不足等ございましたら事務局まで,議事の途中でも結構でございますので,遠慮なくお知らせいただければというふうに思います。

【竹田座長】  よろしくお願いいたします。
 それでは早速ですが,本検討会に資料を御提供いただいた委員より,内容を御発表いただきたいと思います。
 初めに,先日,近藤委員と白澤委員がアメリカの障害学生支援の取組について視察されたとのことです。まず,近藤委員より御説明をお願いします。

【近藤委員】  お待たせしました。東京大学の近藤です。
 それでは,私の方からは「アメリカの高等教育機関における差別禁止と合理的配慮」というタイトルで,アメリカの現在の合理的配慮の法的枠組みを中心として,どのような大学の中での取組がされているのかというお話をさせていただきます。30分間と時間が限られているので,少しさくさくと進めたいと思います。
 まず初めに,日米の障害学生数というのを簡単に取りまとめたものを示しています。これはアメリカの2008年の統計になるんですけれども,高等教育機関の学部学生が2,000万人いるというふうに報告されています。そのうち,障害のある学生の数は,10%ほど,約1割の学生に障害があるというふうな統計が報告されています。一方,日本なんですけれども,こちらは日本学生支援機構の調査によるものですが,大学院までこちらは全て入れた数になりますけれども,こちら324万人。これは人口比から考えて,アメリカよりは大分母数が少ない数になるんですけれども,324万人。そのうち,障害のある学生はおよそ1万人です。なので,比率としては0.3%というふうに大きな開きがあります。この格差の理由の一つとして考えられることというのが,やはりアメリカの中で差別禁止法という障害のある人の差別禁止法の枠組みで,障害学生による大学へ配慮を求める権利というのが保障されているということが一因にあるのではないかというふうに言われています。
 実際に,我々も視察で訪問したロチェスター工科大学であるとかボストン大学,それからマサチューセッツ大学,これはボストン校というところになりますけれども,どれぐらいの数が障害学生の支援室に登録しているのかということを尋ねてみました。そのところ,ロチェスター工科大学,こちら私立大学になるんですけれども,1万5,000人の学生のうち700名程度,障害学生支援室に登録していると。それからボストン大学,こちらも私立大学になりますが,3万人の学生のうち450名。これ,「+」をつけているのは,アクティブに障害学生支援室を利用している学生の数が450名程度で,実際の学生数,登録だけしている学生の数を含めると,ちょっと何人か分からないという回答だったので,450名というふうに,「+」というふうに書いています。それから,マサチューセッツ大学ボストン校,こちらは公立の,パブリックの大学になりますが,こちらは1万6,000人の学生のうち1,000名に障害があるというふうに報告をしてくれました。
 これら全て口頭で伺ったことなので,正確な数字かどうかというのは,それぞれ違いがあると思うんですけれども,同じように,2010年から11年にかけて,私が個人的にその他の大学で伺った障害学生支援室への登録数というのをインタビューしたことがありました。例えばワシントン州にあるワシントン大学という,これは公立の大学ですが,4万3,000人の学生のうち1,000名程度障害学生支援室に登録している。それから,ハワイ大学のマノア校,これも公立です,2万人のうち1,400人。それから,モンタナ大学というモンタナ州の公立の大学ですが,こちらは1万人の学生のうち1,200人というふうに,いずれも傾向としましては,やはり公立の大学に非常に多くの障害学生が登録をしていると。およそ10%という割合というのも,これら個別の大学の状況を聞いてみても,やはりあながち間違いではない状況であるということが分かりました。
 そこで,一番初めに差別禁止法というお話をしたんですけれども,まず初めに,障害のある人への差別と,大学の中でどのような差別が考えられるかというお話をしたいと思います。
 まず,障害のある人への差別の中で一つあるのは,やはり障害によって平等な機会を得られないことというのがあります。
 具体的にどんなことがあるかというと,まず,障害を理由とした直接の差別として,障害があることを理由に排除されるという場合があります。例としましては,入学をしたいと言っている学生に障害があるということが分かった場合に,障害を理由にして入学を拒否するということが直接差別の例として考えられるのではないかと思います。実際の理由としましては,障害学生を支援する体制がないとか,様々な理由が言われることはあるとは思うんですけれども,いずれにしても障害を理由に入学を拒否するといったようなことがこの例に当たると思います。
 それから,間接差別の例ですけれども,障害があると参加が難しい要件を設けるというのがそこに当たると思います。例えば,紙に印刷された文字の視覚的な認識に障害のある学生,もちろん視覚障害の学生もそうですけれども,学習障害であったりとか,あとは視覚認知に困難のある高次の機能障害などの学生が考えられますが,そういった学生で,かつ,点字のように触って読めるような文字が読めない学生というのもいます。そういう学生に対して,仮に音声での受験,若しくは人間による代読などの方法が提供されなかった場合,その場合は彼らは入学試験を受けるということができないということになりますので,結果として進学の機会ということから排除されてしまうということになります。このようなことが差別として考えられます。
 米国においては,こういった障害者差別の禁止ということを定めた法律というのがあります。
 特にそのうち,高等教育機関においての差別に関わるものとしては,リハビリテーション504条というのがその中心的なものと言われています。これは,政府の予算的支援を受けている機関と政府機関のサービス及びプログラムにおける障害者差別を禁止しているというもので,1973年に定められたものです。
 それともう一つは,障害のあるアメリカ人法と言われる法律で,ADA法と言われる法律なんですけれども,これはもともとは1990年に成立したもので,アメリカ社会における雇用であるとか公共サービス,それから公共施設,電話通信での障害者差別を禁止しているものです。このうち大学は,公立の大学は公共サービスというところに含まれますし,私立の大学も公共施設というところに含まれるということになるそうです。実際には,障害の種別というのに,1990年に制定されたADA法では,ある程度制限があったそうなんですけれども,この2008年の改正ADA法というところで,更に広い範囲の障害の種別も含まれて,障害に関しては,アメリカの社会において,その公民権を認めるための重要な法律になっています。
 この二つが深く関わっています。この両方の法律において,障害への差別禁止及び障害のある人もない人も平等な機会を持つことを実現するというために合理的配慮,これはリーズナブル・アコモデーションの訳語ですけれども,この合理的配慮の提供というアプローチがとられています。
 実際のアメリカの大学における合理的配慮の例を幾つか列挙しようと思います。これは飽くまで例なのですが,代表例というふうに考えていただいていいと思います。
 まず初めに挙がるのが,代表的なものとしては試験の配慮です。例えば別室での受験。例えばADHDといった注意に困難のある学生が,騒がしい場所での受験ということが非常に難しいという場合に,別室の静かなところで受験を受けると。これはADHDだけにかかわらず,騒がしさであるとかそういったことに困難を抱える障害のある学生については提供されます。それから時間延長です。読み書きに困難があるために,ほかの人よりも時間がかかってしまう場合にテストの時間延長を受ける。それから,代筆,代読ですね。例えば肢体不自由があったり,読み書き障害があるために,文字を書くということが難しい場合,口頭で発したものを書き取ってもらうとか。こういった様々なサービスが,その個々のニーズに応じて提供されるということになっています。
 それから,今度は記録を代替するということでノートテイキング,それから録音の許可,こういったことも一般的に行われています。ノートテイキングというのは,つまり,誰かほかの人がその人の代わりにノートを取るというサービスで,非常に一般的に行われているものです。
 それから,次に挙げられるのが教材へのアクセシビリティの確保です。アクセシビリティというのは,いわゆる日本語に訳すと利用可能といったような言葉に当てはめられると思いますけれども,通常,紙の印刷物というのは,やはり障害のある学生にとってはアクセスが困難なものです。例えば視覚障害のある学生,それからLDによって読み書きに障害のある学生というのは,紙の印刷物を見ても認識するということが難しいですし,肢体不自由のある学生の場合はページめくり,紙の印刷物をページめくりしたり持ち運ぶということが難しいという場合もあります。そういった学生たちのためには,教科書・教材の代替フォーマットというのを提供するということが行われています。例えば点字であったり,音声で提示をしたり,録音ですね。それから,拡大して提示,見やすくして提示する。若しくは,電子テキストファイルを提供して,それを音声読み上げソフトなどで読むといったことが考えられます。これは,もともとそういった電子データが利用できる場合というのはいいんですけれども,大学などの場合というのは,その電子データが直接手に入れることができないものというのもありますので,そういったものは大学の中で製作をして提供するということも一般的に行われています。それから次に,字幕のないビデオ教材などへ聴覚障害のある学生などがアクセスするために字幕を追加するといったことも行われています。
 それから次には,音声言語へのアクセシビリティとして,聴覚障害のある学生のために手話通訳を提供する。それから,リアルタイム・キャプショニングですね。今まさに発話されている音というのをリアルタイムにタイピングなどで文字として記録をして,視覚的に認識できるように,それを提示してあげるといったものですね。そういったことが一般的に行われています。
 それから次に,建物とその機能へのアクセシビリティとして,車椅子のユーザーなどがそのメインになると思うんですけれども,教室であったり寮であったり,あとはコンピュータールームですね。誰もが使うことができるコンピューター室のコンピューターだとか,例えばキーボード,通常のキーボードやマウスを使うことが難しいという場合に,スイッチなどでコントロールできるとかそういったことが考えられます。それから,図書館であるとか実験室などですね。実験室などではビーカーとか試験管とかそういったものが,例えば障害のある学生でも使える,使いやすいようなものになっているか,若しくはそういったものが音声で認識できるといったものが用意されたりすることもあります。こういったことが考えられます。
 それから,これは以上の全てに当てはまるんですけれども,1から5までのものというのは,もちろん人手によるサポートであったり,若しくは何らかのサービスとして提供される場合ももちろんあるんですけれども,それ以外に,テクノロジーによってサポートされるということも非常に一般的に行われています。例えば試験の代読であるとか,あとは教材へのアクセシビリティ,そういったところでは音声読み上げソフトや装置といったものが使われることが考えられますし,コンピューター室へのアクセス,若しくは実験室での音声での,例えばビーカーとか目盛りとか,そういったものの内容を見る代わりに,テクノロジーを使って音声で提示をしてあげるとか,あとは,書くことができなくても音声を発することで,それを文字として入力するであったりとか,そういった様々なテクノロジーというのが大学の中で利用できる若しくは利用できるように何らかのサービスが用意されているということが,非常に一般に行われています。
 こういったことは代表的な例なんですけれども,実際には,これらが合理的配慮ですというふうに,これは提供すべきことですというふうに法律に書かれているというわけではありません。これは,合理的配慮の基本的な考え方というのが,個々の状況,個々の大学の状況であるとか,あとは,そこに通ってきている,様々な障害であったり障害から来る困難やニーズであったりそういった状況というのは個々に異なっているので,これをやりなさいというふうには定められていませんが,こういったものは多くの大学で一般的なものとして提供されています。
 それから,こちらは法律の中に書かれていることなんですけれども,高等教育機関が平等な機会を保障すべき事項としては,高等教育機関への採用と入学において差別があってはならない,それから,高等教育に関連するアクティビティからの除外があってはならないというふうに決められています。この高等教育に関連するアクティビティとしては,例えば,学術的プログラム,研究の機会,職業訓練,住居,健康保険,カウンセリング,経済的援助,体育,運動競技,レクリエーション,交通,その他課外活動,若しくはその他の高等教育プログラムの参加から除外されること,若しくはそれらに関連した利益・サービス・援助を否定されることがあってはならないというふうに,いわゆる大学の中で行われている活動というのはこういう活動ですよと,この活動については除外されることがあってはならないので配慮を提供してくださいというふうに書かれているというわけです。
 これらを実現するために,高等教育機関としては,まず,有資格障害者に対して,費用負担の上,合理的配慮を提供する必要があるというふうに定められています。ここで特徴的なのが,この有資格の障害者,クオリファイド・パーソンズ・ウィズ・ディスアビリティズ(qualified persons with disabilities)という言葉なんですけれども,これはいわゆる職務に伴う本質的な機能を遂行できる障害者というふうに定められています。この職務というのは,もともとがやはり雇用や労働においての法律やルールとして合理的配慮が作られたためにこのように書いていますけれども,大学においては,いわゆる学業や大学への参加,そこに対して本質的な機能を遂行できる障害者に対して合理的な配慮を提供する必要があるというふうに定めされているということです。これは非常に特徴的な言葉だなというふうに思います。
 それからさらに,リハビリテーション法及びADA法の法令順守コーディネーターを大学の中に置く必要があります。これらは,多くは障害学生支援室,そちらのディレクターなどが兼務するということが多いようです。
 最後に,障害学生からの異議申立てですね。例えば,配慮の内容について同意ができない場合であったり納得ができないような場合,そのような場合に異議申立てが公正に行われて,また,それが迅速かつ公正に処理される手続を保障する必要があるというふうに定められています。
 実際に,障害学生による合理的配慮の申請の流れの例なんですけれども,これは飽くまで一例ですが,一般的な流れだと思います。障害学生は障害学生支援室へ,まず登録を自分で行います。これは自ら行う必要があります。それから,障害学生支援室と共同で,どのような配慮が利用できて,また必要であるかというのも決定します。次に,最近かつ適切な障害に関連する証明文書を提出する必要があります。自分は障害がありますということを,しっかりドキュメントを提出する必要があるということです。これは条件によりますけれども,文書を発行するために,例えば医師であったりとか様々な資格のある人,そういった専門家のもとを訪れて文書を発行してもらったり,追加的な障害についての検査が必要とされるという場合もあります。これはもちろんケース・バイ・ケースですけれども,こういった必要がある場合もあります。それから,障害学生支援室に配慮を申請して,場合によっては各教員に配慮依頼書を提出して,必要な配慮について各教員と話し合うといったことが行われる。これが一般的な合理的配慮の申請の流れです。
 それを図にしたものなんですけれども,まず障害学生は,障害学生支援室,こちらのディレクター,いわゆる室長ですが,室長が504条とADA法のコーディネーターを兼ねていることがあります。責任者ですね。そして,多くの場合に配慮内容の決定権を持っています。このような配慮をするということを学内で決定するという権利を持っているということです。障害学生は,こちらの障害学生支援室に対して配慮申請であったり証明,自分の障害についての証明の提出であったり,配慮内容の異議申立てといったことを行うということになります。実際には,教員に対して障害学生が直接やり取りをするということも一般的に行われています。配慮申請であったりとか若しくは交渉ですね。このような配慮をしてほしいといったような交渉などを行う場合もあります。
 すみません,ちょっとここで追加で資料を。これはちょっとお配りできなかったので,回させていただきたい。回覧させていただきたいんですけれども,こちら,今回訪問したマサチューセッツ大学ボストン校の障害学生支援室に置かれている登録文書ですね。それで,障害学生支援室が,いわゆる各教員に対してこういう配慮をしてくださいということを届けるような文書であったり,障害学生支援室に対して,私はこういう配慮が必要ですということを記載するような文書と,もう一つは,先ほど少し話しました教材,代替フォーマットと言われる紙ではない教材を,こういうものが自分は必要ですということを申請するための,ハワイ大学の申請書ですね。そちらを今回覧させていただいています。このような形で教員に直接依頼をするということも,もちろんあるということですね。その際には,障害学生支援室は,法的に定められた配慮の義務や内容に関して,教員に通知を行うということを行います。
 この障害学生支援室は,比較的学内組織の中では上位に位置付けられていることが多く,例えば副学長であったり学長,そういったものの下に設置されるということが多いです。なので,教員に対して,この配慮はもう決定事項なのでしてくださいというふうに,直接通達することができるような位置付けにあるということですね。なので,教員に対する調整などに余り過剰な負担がかからないというところがあると思います。
 障害学生は,配慮内容の異議申立てについては直接障害学生支援室に言えばいいんですけれども,支援室の例えばスタッフであるとか支援室の体制などに対して異議申立てがある場合というのは,もちろん直接ADAコーディネーターに言うわけにはいきませんので,これは実際には人事部の中にある平等機会課とか,あとは市民権課と言われるような課がありますので,そちらに対して直接異議申立てをするということもできます。これがいわゆる学内での障害学生支援の枠組みなんですけれども,実際には大学に対して障害学生支援の異議申立てをするということもできます。そのような場合には,大学に対して異議申立てが必要な場合には,例えば州の市民権局,オフィス・オブ・シビルライツと言われるようなところに直接申請を出したり,さらに,例えば州以上の,もっと大学全体に関わるようなことであれば,連邦の教育省の市民権局といった学外機関に対して異議申立てをするということもできるというような制度が実装されています。
 こちらはちょっとお配りした資料から少し追加してしまった部分がありまして,それについてちょっと御説明したいのですが,まず一つは,障害学生支援室のディレクターというのは,このような決定権を持って振る舞うわけですから,どのように,何が合理的なのかということを把握しておく,専門性として把握をしておくということが必要になってきます。そのためには様々な専門性を共有するための枠組みとして,例えば,ここにAHEADという高等教育障害協会という協会の例を挙げましたけれども,こちらは障害学生支援室のスタッフなどが多く登録をしているアメリカの協会になります。こちらに登録をしたりして,いわゆる専門性を高めるといったことを行っています。専門性,専門的な知識だったり,経験であったり,いわゆる合理性についての経験値,そういったものを共有するといったことも行われています。もちろんAHEADだけに限らず,こういう集まりというのは様々,例えばネット上のメーリングリストなどもございまして,そういったところで,この配慮というのはこういうニーズのある学生に対しては果たして合理的だろうかといった議論をしたりということも一般的に行われています。
 さらに,この図の出発点というのは,私は障害学生というところから出発したんですけれども,障害学生についても,この自立と自己決定ということがかなり求められます。これは,自分にこういうニーズがありますよということを,いわゆる障害学生支援室に対しても教員に対しても,自ら説明する必要があるということです。そして,自分に必要な支援はこういう支援です,こういう配慮です,この配慮を得ることができれば自分はこういうことができますよということを明確に伝える必要があるというふうな自己決定ということも求められます。ですので,実際に我々,様々な障害学生支援室を訪問したんですけれども,そのときにも,この自立と自己決定を学生の中で育てていって,自立した,いわゆる社会人として育てていくということが非常に重要であるということをディレクターなどがおっしゃっておられました。
 ただ,そこに移行支援とニーズというのがあるということをおっしゃる方もいらっしゃいました。移行支援というのはつまり,アメリカの高校までと大学までの大きな違いというのは,高校までは教員であったり専門のスタッフが特別支援のニーズのある人を発見して,サポートを行って,その人に必要なサポートを決めて,どんどんあちら側からやってきてくれるわけですね。ところが,大学に入ると法律の枠組みも変わってしまいますので,自らそれを説明する必要があるというふうに大きな変化が訪れます。なので,いわゆる,いきなりそれを大学に来て,さあ,じゃ,あなた,今日から大学生なのでやってくださいということはなかなか難しいですから,その移行支援の教育ニーズというものがあるということをおっしゃるディレクターの方が多かったです。
 それから,障害者への合理的配慮の中で,今度は合理的配慮とされないものというものが,またこれは法律の中で再び決められています。
 まず一つ目は,プログラムの性質を根本的に変更するものです。障害のある学生が入ってきたので教育プログラムの内容を全く違うものに変えてしまう,あとでこれ実例はお見せしますけれども,そういったものは合理的配慮とはしないというふうに定められています。
 それからもう一つは,本質的な学術的な要件を低めたり免除する。例えば入学試験の免除であるとかそういったものもそうだと思いますが,本質的な機能や能力がない者に対して,それを免除して受け入れるといったことは合理的配慮には当てはまらないというふうに言われています。
 それから,甚だしい財政又は管理上の負担を生じるものというのも合理的配慮には当たりませんというふうに書いてあります。
 それから,個人的な装置やサービスの提供というのも当てはまりません。例えば車椅子を,その個人用の車椅子を提供する,それから個人が使うアテンダントを提供する。眼鏡であるとか。あとは,チューターサービスというのは多くの大学で行われているわけなんですけれども,更に専門的で個人的なチューターというのをその障害学生のためだけに提供するであったり,個人的な利用や勉強で代読者を使いたいので代読サービスを個人的に付けてくださいといったものというのも認められないというふうに書かれています。合理的配慮とされないというふうに書かれています。
 こちらは実際に認められなかった事例を,ボストン大学やNTIDでの事例というのを少し伺ってきたのでそのお話をしたいと思います。
 例えば,レポートの課題の提出期間をほかの人よりも2倍に延ばすということが,まず認められなかったというお話がありました。これは,実際そのように提出期限を2倍に延ばしていくと,結果として,例えば半期で終わる授業が,その人だけは1年間かかってしまうというふうに,プログラムの性質自体が完全に変わってしまう。授業期間自体が倍になってしまうということで認められなかったと言っていました。
 それから,危険性のある動物であった場合のサービス・アニマルを利用すると。例えば,介助犬というのはもちろん一般的なものなんですけれども,何か危険な動物を,危険な動物が何だったかちょっと私は伺っていないんですけれども,ゴリラとかって冗談でおっしゃっていましたけれども,いわゆる危険な動物であった場合,何か分かりませんが,そういったものは利用できないと。
 それからあとは,手話通訳と文字通訳を同じ授業で同時に提供する。手話の通訳を提供しているのと同時にリアルタイムのキャプショニング,そのリアルタイム・キャプショニングも同時に提供するということは行われないということが言われていました。
 それからあとは,例えばの話なんですが,演説の授業,いわゆるパブリックスピーキングというかそういった授業がある中で,不安障害のために人前で話すということが全くできないという学生がいたと。なのだけれども,演説の授業をとるということをしようとした場合に,それが認められなかったという事例をお話ししていただきました。
 あとほかには,屋外イベントでの会場までの道はアクセシブルにすると。例えば,屋外で何か,誰かの挨拶,学長の挨拶のイベントなんかがあって,そこにみんなが行くという話になったときに,そこの屋外の会場までの道路はアクセシブルにして,車椅子でも移動できるように確保する。ところが,人員を出して車椅子を押して移動支援をするといったようなことはしないといったことが言われていました。これはもちろん,その移動については,例えば,そこで何か事故が起こったときに押している人というのがその責任を負うということはできないなど,様々な理由があるとは思うんですけれども,また,先ほどの個別のアテンダントということに当てはまるなど幾つかの理由はあると思いますが,実際に認められなかった配慮として挙げられていました。
 ですけれども,これらは必ずどこの大学でも決して認められないというものではないというふうに考えられます。これは飽くまで個別事例であるというふうに注意していただきたいと思います。個々の特別な理由があって,関係者の合意形成というのができれば,それは個々に認められるという場合も当然あります。
 例えば,これはちょうど別件で,私,白澤さんと議論していて出てきたお話なんですけれども,手話通訳と文字通訳を同じ授業で同時に提供するのはないという話を,私,何度か聞いたことあるんですけれども,例えば,手話の通訳と同時に英文で書かれている文字の理解というのも十分にしておく必要がある授業,例えば法律についての学習であるとか,英文の文言も同時に手話に加えて理解しなければいけない。そういうものに対しては,リアルタイム・キャプショニングも同時に提供するといったような事例も考えられるそうです。
 こちらにやはり本人と,それとその支援を提供する大学側がリーズナブルであるというふうな合意が得られれば,これは個別に提供することができますので,そういったことも十分考えられると思います。なので,いわゆるお仕着せではないということですね。関係者間の合意が重要であるというふうに考えていただければと思います。
 このように,合理的配慮という言葉というのは,昨年,日本の法律の中に初めて出てきたような日本にとっては非常に新しい概念ですので,やはり善意に基づく望ましい配慮全般なのではないかといったような誤解があるような気がします。これは私の主観ですけれども,そのような気がします。アメリカにおいては,合理的配慮というのは,これは504条及びADA法によって,その意味が法的に定義された法律用語であって,いわゆる一般的な善意的な配慮というものとは異なるという点に注意する必要があると思います。
 しかしながら,この合理的配慮というのは,合理的配慮の枠を超えるものは提供しない,してはならないといったようなルールは存在してはいないという点も重視しておく点だと思います。
 さらに,合理的配慮だけが公平な機会保障の手段ではないという点にも注意が必要です。例えばリハビリテーション法の501条や503条では,公的な機関においては積極的差別是正策,いわゆるアファーマティブ・アクションといわれるものも同時に提供する必要があるというふうに定められています。したがいまして,この合理的配慮と積極的な差別是正策というのは,両者は公平な機会実現を目指すための車の両輪のような形でアメリカの大学内で行われていて,いわゆる合理的配慮に関することも一般的に行われていますし,それをずっと超えるような障害者サービスというのも積極的に行っている大学もあるということですね。そのようなプログラムもあるということです。
 これは配付資料にないまとめになります。その他のポイントを追加したものですけれども,いわゆる合理的配慮についてはその個別性というのが非常に重要です。例えば,視覚障害のある人は必ずこのサービスが必要といったものはないです。視覚障害の状況によっても,もちろんどのようなニーズがあるか。例えば,点字が必要な人がいれば音声が必要な人もいるというように,ニーズは個々に違いますのでその個別性というのは非常に重要です。
 さらに,このリーズナブル・アコモデーション,合理的配慮と訳されていますけれども,このリーズナブルということについては,もともとは道理が通ったといったような意味ですので,やはり道理が通る,つまりそれに納得ができるということが非常に重要になります。例えば配慮の内容について,この配慮をやっておけば全て又は全員のケースに当てはめ可能な正解であるといったようなものは存在しません。なので,皆さんよくおっしゃることというのが,ケース・バイ・ケース・ベーシスであると,個々の事例に応じて変わります。
 それから,レベル・ザ・プレイングフィールドという言葉は非常によく使われていて,いわゆるそういう合理的配慮を提供することによって,学生たちの能力にげたを履かせるわけではないと。障害があるために参加が難しい人に対して,公平な土俵で勝負ができるように土俵を整えてあげることなのであるというふうなこと,これは皆さん共通しておっしゃいます。これは,やはりいろいろな団体であったりとか議論の場などで,社会の中でそういった考え方というのが既に共有されているということだと思います。皆さん共通しておっしゃることです。
 それから,個別のケースで,いわゆる当事者,当事者というのはこの場合障害学生と大学と教員ということが含まれると思いますが,その間で納得と合意形成を作るということがゴールになっています。なので,例えば504/ADAコーディネーターと言われる,いわゆる障害学生支援室の人たちというのは,その三者の間で合意を形成するための役割をコーディネーターとして果たしているということです。それぞれの訪問した大学で,これまで一体何件ぐらい異議申立てがありましたかという質問をしてみたんですけれども,たまたま訪問した幾つかの大学では,これまで私が赴任している間は1件もないとか,あとはこれまで2件だけあったとか,そういったお話を伺いました。つまり,その間で合意ができれば問題になることもなかったということだと思います。
 さらに,これは経験値としてになると思うんですけれども,これまでの長い差別禁止法の歴史の中で,社会的にリーズナブル,どのような配慮であればリーズナブルであるのかという落としどころ的な感覚というのが,かなり社会的に醸成されて共有されている。そのために,このようなサービスであれば本人も納得するし,周りもここまでだったらできるといったような概念が共有されていると言えるのではと思います。
 それから最後に,制度的な権利保障と公民権についてなんですが,合理的配慮においては,どのようなサービスを提供するか,それ自体よりも,むしろ公平な機会保障を実現するような仕組みが非常に重要視されているということが法律の内容からも分かります。例えば,コーディネーターを,必ずADAコーディネーターを置いていて,その配慮の決定権をそこに持たせていたり,異議申立てをするためのプロセスというのをしっかり法律に明記して,かつ大学内にも実装していたりというようなことです。そういったことが重要であると考えられます。
 それから,こういった合理的配慮というものを長い間やってくることで,結果として,皆にここまでを提供すればいいというのが何となく共有されているので,円滑で効率的な支援の機会拡大につながってきた歴史があると感じられます。
 この合理的配慮というのは,大学での障害者参加のいわゆるセーフティネット的な役割であって,飽くまでも最低ラインを定めているようなものであって,それを更に超えるようなアプローチというのは,もっと別のアファーマティブ・アクション的にも行われているということですね。
 それから,この辺りはもう繰り返しになるので割愛しますけれども,いわゆる障害学生は公民権を持つ自立した市民として扱われているということですね。そのような枠組みの中で扱われているというふうに考えられると思います。
 以上で,報告とまとめをこれで終わらせていただきます。すみません,多少時間オーバーしてしまいました。

【竹田座長】  近藤委員,ありがとうございました。
 合理的配慮については,非常に具体的な事例を挙げて,分かりやすく御説明いただいたと思いますが,御参加の委員の先生方から何かご質問等ございますでしょうか。
 また後ほどディスカッションの時間も十分ありますので,それでは,引き続きまして,白澤委員の方から,同じく視察に参加されましたので,資料の御説明の方をよろしくお願いいたします。

【白澤委員】  筑波技術大学の白澤です。引き続きまして私の方から「視察から見た米国の障害学生支援」ということで,特に近藤先生の方からは,差別というのは,障害者に対してイコール・オポチュニティを提供しないことが差別だというふうにお話がありましたけれども,じゃ,そのイコール・オポチュニティを追求するために一体何が行われているのかということをお話ししながら,合理的配慮というものとの関係を述べていきたいと思います。
 報告の内容としましては,これら4点を予定しています。まず初めに,視察に行ったということで,その視察の概要について簡単に御報告します。それから,一般的な支援体制がどうなっているのか。これは近藤先生がかなりお話しくださいましたので,割愛しながら一部お話しさせていただく形になるかと思います。その上で,支援の質を引き上げる取組。社会全体の障害学生支援というものをどんどん引き上げていくために,一体どのようなことが行われているのかということで,複数の大学の事例を取り上げて具体的なお話をさせていただきます。最後に,今後求められる取組ということで全体のまとめをさせていただく予定です。よろしくお願いします。
 視察の概要ですけれども,日程としましては,先々週に当たります6月10日から17日までの1週間,アメリカの東海岸の方に行かせていただきました。この企画は,日本財団が企画をして実施してくださったもので,文部科学省でもこうした取組が始まったので,是非一緒にアメリカの方に渡米してそこで行われている障害学生支援の現状を見に行こうということで企画されたものです。
 視察自体は1週間でしたけれども,私自身はPEPNet-Japanという聴覚障害学生支援の活動の中で,これまで10年来,アメリカの方には複数訪れて視察をしてきておりますので,そうした成果も含めてお話しさせていただければと思います。
 視察地はこの地図に示したとおりです。アメリカの東海岸,ニューヨーク州にありますロチェスター工科大学と,ボストンのボストン大学,それからマサチューセッツ大学ボストン校,この3校を中心に報告させていただきます。
 まず,一般的な支援体制として,この図は近藤先生がお話しになったものと同じなので割愛しますけれども,具体的にロチェスター工科大学の障害学生支援室がどんななのかということで写真を提示させていただきました。向かって左側が障害学生支援室のエントランス部分ですね。ここで700名の障害学生に対して3名のスタッフが対応している。日本と比較しますと,非常にたくさんの障害学生を少ないスタッフで受け入れて,かつかなりそのスタッフが大きな権限を持って,サービスの内容の決定あるいは支援の可否の決定等を行っているという状況でした。また,右側にはテストセンターということで,定期試験時の配慮を行うためのブースがありまして,そちらの様子が写真に提示されています。個別ブースが並んでいて,その上には,実はちょっと写真では切れてしまっているんですが,監視カメラが各ブースごとについているんですね。その監視カメラの様子を下のモニターで,各部屋の様子が映っていまして,そのモニターで中の様子を見て不正等が行われていないかという監視下で試験を受けるという状況があります。
 こうした様子はほかの大学でも非常に一般的に見られまして,こちらはマサチューセッツ大学の支援室の様子ですけれども,左上のエントランスを抜けると真ん中の窓口のところのような形でカウンターが広がっていて,その奥にはテストセンターがあるというような状態でした。
 マサチューセッツ大学の方では,障害学生が支援を受ける際に,最近は必ずしも文書等を要求しないんだというようなことをお話しされていました。先ほど,合理的配慮の実施のためには文書の提出が必要というようなお話がありましたけれども,ADA法の2008年の改正で,これまで余りにも文書,文書ということで求め過ぎたということがありまして,最近その点が見直しされつつあるというふうなお話がなされていました。ただ,それはサービスの内容にもよりまして,例えば試験の配慮を受けるときには文書が必要ですとか,この範囲なら文書は特に要らないなどのサービスの内容によって決定されているということです。
 ボストン大学については,この仕組みは先ほどお話がありましたので。
 ここまでが一般的な,ごくごく典型的な支援室の様子です。
 では,これに加えまして,もう少し詳しく個々の大学の取組を見ていきたいと思います。ここでは,支援の質を引き上げる取組ということで,先ほど近藤先生の方からは,合理的配慮というのは当事者間の落としどころを探っていく過程なのだというお話がありました。だけれども,その落としどころというのは社会の現状によって決まっていくわけですね。過度な負担にならない範囲というのは当事者間で話し合って決められる。その落としどころという点なので,それが社会の時代とともに少しずつ変わっていくものです。そのためには,その落としどころをどんどんどんどん引き上げていくような取組というのが必要になるかと思います。今回お話しする事例は,特にそうした支援の落としどころを引き上げる取組,あるいは支援の質をどんどん引き上げていくための先駆的な事例というふうに捉えていただければと思います。
 まず,最初に御紹介するのはロチェスター工科大学の例です。このロチェスター工科大学というのは非常にユニークな大学で,私立の工学系の大学なんですけれども,たくさんあるカレッジ,たくさんある学部の中の一つにNTIDという聴覚障害者のための専門の学部というのが入っている,そういう大学です。例えて言うなら,筑波大学のような総合大学,筑波大学のような大きな大学の一つの学部として,本学のような,筑波技術大学のような聴覚障害者を対象として聴覚障害者に対する直接教育を行うような,そういった学部が一つ入っている。そのような形の大学というふうにお考えください。
 ここには,先ほど近藤先生からありました700人の障害学生が在籍しているんですけれども,その障害学生700人以外に,聴覚に障害のある学生が1,550人在籍しています。大変な数だと思います。この聴覚障害学生のうち半数は,今お話ししましたNTIDという聴覚障害者のための特別な学部で,手話を使って教育を受けているという環境にあるんですけれども,残りの半分の学生たちは,ロチェスター工科大学の別の学部にメインストリームして,支援をつけながら,聞こえる学生とともに授業を受けているという状況にあります。
 そうした状況ですから,手話通訳等のサービスも非常にたくさんの数を確保しなければいけませんし,工科大学で相当難しい内容,そして学部レベルだけではなく大学院の修士課程や博士課程と,非常に高いレベルの支援サービスというのを提供していかなければいけないことになります。なおかつ,ADA法の中には合理的配慮の例として,単に手話通訳を提供していかなければいけないというふうに書いているだけではなくて,そこに,クオリファイド・インタープリター,クオリファイドな手話通訳を提供していくということが例の中に記載されているのですね。ここにクオリファイドという文字が入っているのは非常に大きな意味がありまして,その場その場で求められる質をきちんと確保できるような,そうした通訳者を提供していかなければいけないというのが一つの事例として挙がっているわけです。ですから,ロチェスター工科大学でも,この工科大学という非常に専門性の高い授業の内容を伝えるために,必死になってクオリファイド追求,あるいは,聞こえない学生のイコール・オポチュニティの追求というのがなされています。
 そのためにどういうことをしているかというと,学内には,まず,120人の手話通訳者が職員として雇用されています。それだけでもかなり驚きなんですが,それらの通訳者たちは,全学部にわたって通訳をするとなると非常に大変です。ですから,その通訳者を2,30人ごとの通訳者チームに分けて,各専門分野に分かれてチームとして構成しているわけですね。こちらに四つのチーム,記載されていますけれども,一番左端から,例えばサイエンス&エンジニアリング,科学や機械工学の分野を担当する手話通訳者チームがあり,そこにマネージャー,コーディネーターが配置されて,日々専門の勉強をしながら手話通訳に当たるというもの。あるいは,その隣のように一般教養のチームがあって,そこの分野の専門的なお勉強をして通訳に当たるといったような形で,非常に専門化された形で通訳トレーニングが行われているということです。
 加えて,このコーディネーターやマネージャーというのは,かなり長い間手話通訳の経験を持っている人たちです。ですから,通訳者としてもベテランで,そうした方にスーパーバイズを受けながら自分の力を磨いて通訳に当たるという環境が整えられているわけです。また,マネージャーの中にはろう者,聴覚障害のある当事者も含まれています。ろうのマネージャーというのは非常に人気があって,自分の手話通訳というのを客観的に当事者の立場で意見をもらいながら,その通訳チームとして頑張っていけるということで,非常に支持されているということでした。
 また,大変興味深いのは,この下に宿舎生活,学内安全ということで,様々な大学生活の分野の項目が並んでいますけれども,こちらは各専門チームが担当する学業以外の部分の通訳分野というのが定められている様子です。例えばサイエンス&エンジニアリングのチームでは,宿舎生活や学内安全等に関する通訳事例が発生したときにはこちらのチームが担当する。また,隣のチームの場合は,教職員にも聞こえない人はたくさんいますので,教職員の中で会議に参加する等で通訳が必要なときにこのチームが担うといった形で,学生生活のありとあらゆる分野,非常に幅広く,学業だけではない分野についても通訳担当が決まっているということです。
 これらは手話通訳のチームなんですけれども,そのほかに,リアルタイム・キャプショニング,一番右にありますけれども,文字通訳のためのチームが構成されていたり,あるいはノートテイク,右下にあります。ノートテイクのチーム等があるということです。
 また,この手話通訳者たちは,日々雇用されて技術トレーニングを積んでいるので,その通訳に対する評価というのもかなり厳しく行われていて,ランクごとに四つの段階に分かれているということです。一番下の通訳見習いから始まって,アソシエイト・インタープリター,インタープリター,シニア・インタープリター,一番上は,今までの4段階だけではなく,更にもう1段階設けてはどうかということで,今,インタープリター・リーダー,手話通訳のリーダーという立場を設けてはどうかという検討がなされているというお話でした。
 実際の様子がこちらの写真に掲載されています。アクセス・デパートメントの中に入っていくと,分野ごとのコーディネート室が並んでいて,四つのコーディネート・ルームというのが立ち並んでいるかと思います。この一つ一つが日本の障害学生支援室よりもはるかに高い機能を持った支援室ということになります。
 コーディネートルームの中をのぞくと,このような形でカウンターがあって専用のシステムを持っているんですね。聴覚障害学生が履修登録をすると,ごめんなさい,一般の学生も同じですけれども,履修登録のシステムと統合されたシステムがあって,聞こえない学生が履修登録をすると,自動的にアクセス・デパートメントの方に情報が届いて,この授業には手話通訳が必要ということで派遣をするという仕組みになっているそうです。
 また,手話通訳者が120人おりますから,これらの手話通訳者には専用の居室が割り与えられていて,4,5人ごとで一つの部屋を共用して使っているそうです。これらの手話通訳者のための専門的トレーニングを行うための担当,トレーニングを提供するための担当者という人も別個に配置されていて,専門の研修等も担っているということでした。
 もちろん,今お話ししたようなサポートの仕方というのは,全ての大学においてできるものではありませんし,その規模が要求されているというものでもありません。それは,合理的配慮という考え方からははるかに上に飛び出たものだとは思うんですけれども,だけれども,合理的配慮の中では,やはり大学の規模に応じて可能な限り質の高い,可能な限り聞こえない人,障害者のイコール・オポチュニティを保障するような,そうしたサービスを提供しなければいけないということについては考えられているということです。
 というのも,そもそもADA法あるいは障害者の権利条約というのは,障害者の完全参加を目指した法律というふうに言えます。例えばADA法の中では,英語ですけれども,身体あるいは知的な障害というのは,いかなる理由があったとしても,社会への完全参加を妨げるものになってはならないということが一番冒頭に,ADA法の一番最初の出だしに記載されています。また,障害者の権利条約であっても,この条約の原理原則,一番基本的な原理原則として,この条約というのは障害者のフル・パーティシペーション,完全参加を求めることである。単なる参加ではなく,フル・パーティシペーションという言葉が使われている。また,イコール・オポチュニティを保障していくものであるということが記載されています。
 ですから,合理的配慮の基本的な考え方として,まず何よりも,この法律のもとで障害者の完全参加を保障するために,様々な策を講じていかなければいけないのだというのが前提にあるわけですね。このサービスというのは,決して最低限のサービスでいいという問題ではない。また,代替品を提供しておけばそれでいい,何か間に合わせの代替品でそれでよいというそういう話でもない。聴覚障害者,障害者に対して,きちんとその場合の等質な参加を保障するものでなければならないという考え方が法律の原則に脈々と引き継がれています。
 ただし,そこで提供される配慮は合理的と認められる範囲でなければならないということです。それが合理的配慮の考え方で,ともすると,負担にならない範囲で配慮しておけばよいのかなというふうにとらえられがちですけれども,そういう問題ではない。まずはサービスをきちんと提供しなければならない。だけれども,過剰な負担の場合には,これを免責する場合もあるというようなものであるというふうにお考えいただければと思います。
 例えば,今,ロチェスター工科大学の例を提示しましたけれども,ボストン大学,普通の大学ですけれども,こちらの大学では,こちらに登録している手話通訳者に伺ったところ,新人の手話通訳者に対してはきちんとスーパーバイザーがついて,その通訳者が大学の中で通訳をできるように指導しながら通訳をしていくというようなお話でした。また,その新人手話通訳者の技術というのがきちんと評価されて,品質管理がなされている。あるいは,通訳のための研修会を実施して,専門知識を提供しながら通訳に当たってもらうということが一般的な大学でもなされているそうです。また,例えば博士課程の学生なんかが,手話通訳がついても,この通訳では内容が分からない,もっといい通訳にかえてほしいというふうに話をしたら,それは認められるということです。これは,今の通訳ではイコールな環境が保障されていないというふうに見なされて,合理的配慮がそがれている,合理的な配慮になっていないというふうに考えられるという判断だそうです。
 ただ,ここまでは合理的配慮という流れの中の最高峰まで突き詰めたらここまでになったという,そういう事例だったと思うんですけれども,一方,NTIDの中では,障害者が大学に通うことで,最終的に得られる結果を平等にしようという結果平等の考え方,機会平等ではなく結果平等の考え方から,合理的配慮の範ちゅうを超えた取組というのもたくさん行われています。例えば,聴覚障害者に対しては非常に手厚い教育機会が設けられていまして,多彩なコース編成を持って,できるだけ質の高い教育にアクセスしてほしい,させてあげたいというような取組がなされています。
 例えばこれ,ちょっと分かりづらい図なんですけれども,ロチェスター工科大学の中の各種学部の名前が略字で書かれているところです。一番左が,CASTというのが情報工学ですね。情報工学の学部,あるいはビジネス学部といった学部があって,一番右にNTIDの学生たちが学んでいる学部というのがあります。一般的な学生は直接学士号を取得するようなプログラムに参加するわけなんですけれども,聴覚に障害があるとどうしても,高校までの教育,高校までの学力にばらつきが出てきますから,みんなが学士課程に入れるというわけではありません。ですので,直接学士コースに入る学生もいれば,その前に学士準備コースとして,二,三週間のプログラムを受けてから大学にチャレンジするという学生のためのコースも設けられている。あるいは,2年間の編入コースということで,最初,1,2年の間,基礎教育の間はNTIDの中で手厚い教育を受けて,その上で,ある程度の力を持って4年制の方に編入していく。そういったコースも設けられているという形で,様々な形で聞こえない学生がより高度な教育にアクセスできるように保障している。こんな取組も行われています。
 また,大学の中にはラーニングセンター,聴覚障害者のための専用のラーニングセンターが設けられていて,手話のできる教員が聴覚障害学生にマンツーマンで指導をするとか,あるいは聴覚障害者のためのキャリアセンターなども設けられていて,就職にもつながるような取組がされています。
 こうした指導の結果,聴覚障害学生のロチェスター工科大学の中での卒業率は68%と非常に高いのだそうです。ロチェスター工科大学の一般の学生の卒業率は60%なので,聴覚障害学生の方が卒業率が高いという現象が起こっているそうです。これに対しまして,他の一般の大学,アメリカ全体の大学の聴覚障害学生の卒業率というのは,実は25%と非常に低いんですね。なので,この現状ではいけないと,もっとやはり聴覚障害者が,教育支援だけではなく教育そのものを保障していかなくてはいけないということで,NTIDのような大学機関が存在するというお話でした。
 また,このグラフも非常に面白いんですが,ちょっと細かくて恐縮ですが,このグラフはNTIDの卒業生の収入,年収を年齢ごとにグラフで表したものだそうです。この青の線,一番上にある青色の線が,4年制のコースを卒業した聴覚障害者の生涯年収を示したものです。上から2本目になりますけれども,水色がアソシエイト・ディグリー,2年間の準学士コースを終えた聴覚障害学生です。これらは,最終的な年収としては非常に高くなっていて,一方,グレーのラインで,途中で落ちているラインがあるのは分かりますか。これは,NTIDに合格はしたんだけれども,NTIDに入らず別の大学に入ったという人たちの年収を年ごとにとったものだそうです。これを見ると非常に顕著なんですが,40歳ころで年収が途絶えて落ちている。恐らくこれ,40歳以降は障害年金のお世話になるというような形で社会生活を送っているのだろうというふうに推測されます。
 このように,教育に投資することによって,その人本人の能力ももちろん伸びるし,本人の収入も伸びていく。更に加えて,社会保障として国が提供しなければいけない予算も手がかからなくなってくるということです。教育への投資は,まさに社会への投資なんだということをうかがわせるグラフになっております。
 一方,マサチューセッツ大学にもやはり同じように,この教育への投資というものの重要性をうかがわせる事例を見せていただきました。これは,マサチューセッツ大学の中のインスティテュート・フォー・コミュニティ・インクルージョン,コミュニティの中でのインクルージョン,統合教育を考える施設,センターの取組なんですけれども,ここでは知的障害者への大学教育というのに取り組んでいるんですね。連邦政府の補助金プロジェクトとして運用しているプログラムなんですけれども,知的障害のある子供たちで,高校を卒業する年齢になっても高校の卒業試験に受かることができない生徒たちというのを大学に迎え入れて,大学の学位は取らないという形,大学の中で,日本でいうと生涯教育みたいな感じですね。大学論文の生涯教育のような形で,大学の中の一般の障害のない人たちのコースに一緒に入って,週に一つでも二つでも授業を取ってもらう。また,大学の中のクラブ活動とか様々な活動に参加してもらって,その人の全人的教育に役立つような取組をしているということです。
 これ,一見,聞くと突飛な活動のように思えるんですが,これが非常に社会の意識を変えて,今ではアメリカ全体の法律にまでつながっているということです。HEOAという,Higher Educational Opportunity Act,これまで高等教育の機会を得られなかった人たち,障害者だけではなく,様々な人たちに高等教育の機会を与えようという法律が今できていまして,このマサチューセッツ大学の取組を皮切りに,現在,全米で23州27大学で,このモデルプログラムが行われているということです。
 今までお話し,残りの最後の二つでお話ししたような取組というのは,合理的配慮の範ちゅうを超えたものではあるんですけれども,やはりこうした取組が確実に社会的な認識を高めていって,合理的配慮の範囲,先ほどお話があった社会全体の落としどころというものを引き上げる取組になっているというのは間違いないと思うんですね。こうしたことを考えると,現在この検討会の中では,合理的配慮の体系ですとか,何をどう進めていくかというお話をしているところではあるんですけれども,単に合理的配慮だけを見ていくというだけではなくて,やっぱり合理的配慮というのが社会的になされていくように保障する仕組みを作っていくとか,あるいは合理的配慮を提供している大学にちゃんとインセンティブを与えていくとか,それから合理的配慮そのものの範囲を引き上げていくような,そうした取組が求められるのではないかと思います。
 これらを受けて,最後,今後求められる取組ということでまとめたのが最後のスライドです。
 これ,上へ行くほど様々な取組のレベルが上がっていくというか,質の高い取組になっていくというイメージで作ってあるんですけれども,なかなか支援が進まない大学,全く支援ができていない大学というのは,現在まだまだ存在するかと思います。そのため,まずは合理的配慮を実施していく,あるいはこれから障害学生支援を進めていくということになったときには,やはり最低ラインの確保というのは,日本の今の現状を見ると,どうしても必要になるのではないかと思います。そのために,現行行われているような支援に関する予算支給,これを拡充していく,あるいは現在と同様に続けていくとともに,それだけではやっぱり足りなくて,支援窓口の設置を義務化するですとか,あるいは不服申立ての仕組みをきちんと作っていく。それから,小さい文字でちょっと遠慮がちに書いていますけれども,例えば支援ができないんであれば,支援を何度言ってもできないような大学に対しては,予算をカットしていくあるいはペナルティを与えていくなどの取組も,もしかしたら必要かもしれないと考えます。
 一方で,ある程度の取組をしたい,している,あるいはこれからもっと障害学生支援の体制を整えていきたいという大学については,より合理的配慮が進むような仕組みが必要です。そのためには,例えば今JASSO等で行われていますけれども,障害学生支援をどのようにしたらいいのかということを,それぞれの大学機関に対して伝えていくための研修機会を設け強化していくということ。あるいは大学同士の情報交換体制ですね。自分の大学でどうしたらいいか分からずに困ったときにほかの大学と話ができる,そうした体制を作っていく。それから人員の養成・配置。これは,障害学生支援に直接関わる支援者という意味でもそうですし,障害学生支援をコーディネートしていくコーディネーターという意味でもそうです。それらの養成や配置が求められる。さらに,支援を行っている大学を評価していく,インセンティブを与えていくような取組ですね。例えば,大学の評価項目に対して,障害学生支援でどのようなことが行われているかということをきちんと評価するような項目を追加していったり,また,取組の具体的内容を情報公開するよう求めて,誰が見ても一目瞭然な状況を作っていくなどの取組が必要だと思います。
 さらに,こうした合理的配慮をやっている全ての大学の底上げ,全ての大学を更に実践的に高めていくために,分野ごとの拠点校形成というふうに書きましたけれども,先進的な事例への先行投資というのもやはり重要な役割になるのではないかと思います。今GP等の枠組みがありますけれども,そうした取組を更に続けて予算や人員を重点配分していく。そして,障害ごとなのかあるいは分野ごとなのか,どういう形がいいか分からないですけれども,新しい取組,これから求められるような取組に対して,きちんと投資をして育てていく。それらの試みが必要ではないかと考えています。
 今回の視察については,詳しい内容を東京財団の三原さんがまとめてくださっています。ホームページに記載しておりますので,是非参考にしていただければと思います。
 それから,PEPNet-Japanの方でも過去に数回視察を行っておりますので,その報告書がホームページに記載されています。また,前回お話しさせていただいた支援担当者に対する調査,この報告書についてもホームページの方にございますので,よろしければ参考にしていただければと思います。
 長い時間になりました。どうもありがとうございました。

【竹田座長】  白澤委員,ありがとうございました。米国における支援,その質を高める取組について,かなり詳しく御説明いただいたというふうに思います。
 委員の皆さんの方から,何かご質問等ございますでしょうか。
 よろしゅうございますでしょうか。
 それでは時間が限られておるんですが,続いて高橋委員の方から,発達障害のある学生の支援についての資料を御提供いただいておりますので,その概要について簡単に御説明いただければと思います。よろしくお願い申します。

【高橋委員】  信州大学の高橋です。
 今回のテーマに関しまして,一つは,米国の大学における報告があるということで,ちょっと私も以前それを資料論文にまとめたことがありましたので,それを関連資料として紹介したいということ,それから,合理的配慮に関しまして書いた文章がまた二つありますので,それを資料として紹介させていただきたいということでお時間を頂きました。5分以内で,資料の概要について紹介させていただきたいと思います。
 まず,資料3-1ですけれども,これは2008年の「LD研究」という雑誌に掲載された資料論文です。これは,アメリカの大学の障害学生支援室に関しまして視察に行ったものを,その支援組織という,組織の在り方という観点からまとめた,4大学をまとめた資料になっております。実は,そのうちの一つはボストン大学ということで,一つ重なっているものもあります。
 その中の一つだけ,ポイントとしてお話をさせていただきますと,その支援組織の在り方も,ちょうど資料2枚目になりますけれども,サービスのレベルに関しては段階がありまして,本当に最低限の合理的配慮をアレンジするための組織というレベルから,合理的配慮の範ちゅうを超えたというお話もありましたけれども,そういった非常にレベルの高いサービスを提供する組織を持っている大学,そういった段階があるんだということです。ただ,そのような高度なサービスを提供する大学に関しましては,そのサービスは有料ということで提供されていることが多いようです。ですから,それが日本における支援の在り方に関しても一つ参考になるかなと思っております。
 ちなみに,日本でそのような有料の高度なサービスを発達障害のある学生に対して提供しております事例といたしましては,私立の明星大学さんの方で,自閉症を中心とした発達障害のある学生さんに対する訓練プログラムというのを提供している例があります。
 それから,資料3-2ですけれども,こちらは私,教育講演ということで,講演録のようになっておりますけれども,実質的には,講演を起こしたものというよりは,この合理的配慮の内容に関しまして,日本でこういった範囲が考えられるのではないかということを,私のアイデアを書き起こしたものになっております。基本は,今紹介のありました米国の合理的配慮の考えにのっとっておるんですけれども,その範囲を超えるサービスとして,限界設定が重要だろうということも考えておりまして,大学が提供する範囲を超えたサービスの例といたしまして,学外での生活全般を含めたようなサービス,これはやはり大学が提供すべきサービスの範囲を超えてくるのではないか,そういったことも紹介しております。
 最後の資料3-3になりますけれども,こちらは日本心理学会の,これは学術論文誌というよりは会報になります。そこに特集があるということで書きました雑誌記事のようなものになっております。ここは,合理的配慮の中でも,その中で心理検査の利用,アセスメントに関して特化した内容になっております。
 これ実は,近藤委員そして白澤委員の報告の中にもありましたように,発達障害に関しましては詳しい検査結果というものがとても重要になってきます。それは,発達障害に関しましては外から見えにくいということで,どこまで支援したらいいのかということが,若しくは誰がその支援を受けるべき対象なのかということが分かりにくいということで,検査が重要視されております。
 一方で,日本の発達障害学生支援に関する現状を見ますと,ほとんどそういったアセスメントを活用した支援というのが提供されておりません。これは,初等中等教育におきましても,就労支援の現場におきましても,発達障害のある方への支援ということに関しましては認知機能のアセスメントということが基本になっているのに対し,高等教育機関での支援のみ,そういったことが欠落しているという現状に非常に危機感を感じておりまして,一生懸命啓発的に重要性を訴えている。その一つであるということになっておりますので,お時間のあるときに読んでいただけると有り難いと思います。
 以上です。

【竹田座長】  高橋委員,ありがとうございました。
 ただ今の資料の御説明につきまして,何か委員の皆さんより御質問等ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは,続きまして殿岡委員の方より,日本の障害学生支援の現状と課題について資料を頂いておりますので,御説明の方をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【殿岡委員】  全国障害学生支援センターの殿岡と申します。
 今日は,アメリカからの発表などあるということで,比較をしつつ,今回の論点整理も兼ねて,少し日本の現状と課題をまとめてみました。お手元の資料4を御覧ください。
 まず,2枚目のスライド,日本の障害学生の現状ということなんですけれども,文科省の調査,そして私どもの調査を含めて推計いたしますと,毎年の受験者が大体2,500名です。そして入学者が800名から900名,大体これぐらいです。この800名から900名の中で,学校基本調査では特別支援学校から大学へ行かれた方の数が出ていますので,それは除きますと,大体7割がインクルーシブ教育,つまり高等学校から大学へ進学していて,残りの3割が特別支援学校から進学しているというのが現状であります。この800名から900名を単純に4倍しても1万人にはならないということで,実はこの1万人というのは入学した後に判明した者も含まれております。どうもこの1万人という数字が,マスコミ等も含めて話にも出てはいるんですが,やはりこの辺,厳密に調べてみて,入学試験を通ってきた人の数がどう増えているかということと在籍者がどう増えているかということは,別次元の問題ということで数字を確認していきたい。そう考えますと,入学試験における障害者の割合というのは0.14%という数字で,0.3よりもはるかに低い,というような現状であります。
 次は3ページ目のスライドを御覧ください。これは,大学入試室がとられている,さっきも言った身体に障害を有する者等の入学状況という調査をまとめたものであります。数等について省略をします。
 4枚目のスライドにいくんですけれども,障害学生を受け入れるといったときに,受け入れるというのがかなりあいまいなんだね,表現がね。何をもって受入れと言うのか。私ども障害学生支援センターの大学案内障害者版,この調査でいきますと,まず受験可というのと,可否未定,受験不可と,三つ分けております。受験可というのは,学生から相談が来る前の段階,だから相談がない段階で,この視覚障害や,あとは障害種別ごと受験を認めるということを宣言しているんです。その上で,事前相談といって,受験できることを条件に,前提として,合理的配慮の内容を詰めていく。この状態と,もう一つ,可否未定というのは,個別に見てから,個別に相談・志願を受けてから,受け入れるかどうか判断します。これは,事前協議で受け入れるかどうかを判断します。ある程度の指導が文科省を通じて言われれば,この事前協議は行わないようにということが通知では示されていました。
 そのほかに,受験時の配慮内容を示しておりますが,受験可でも受験時の配慮はしないという方が現状では多い。つまり,この場合は,配慮しなくても入学できた学生だけを受け入れるという状況ですね。そして,皆さん一番気になるのは,この入学後の配慮という状況。それから支援体制と,こういう人たちが,じゃ,どこの段階で受け入れている。つまり,一般的に受け入れているというと,在籍者がいるということをベースにしますが,このケースで見ていただくと,やはり厳密化して聞かなければ,その実,どういう状態に大学があるかということを正しく判断することはできないわけね。
 また,障害ある教職員への合理的配慮というのももちろんあります。これは東大のバリアフリー支援室が有名ですけれども,障害学生だけじゃなく,障害のある教職員も含めるという考え方は日本でも起こってきています。
 はっきり先ほど言った受験可否ですね。私ども,過去15年間で8回調査をしていますが,実は徐々にこの可否未定の割合が増える傾向があります。それから,結果的に在籍者が増えているということと,門戸が開放する,全ての大学で障害をもった人たちに機会が保障されているということは,イコールになっていないということは明らかですし,なおかつ受験不可,こういう事情,受験不可が認められているのは,防衛大学校なんかはちょっと特殊あるいは海上保安大学校の場合は特殊ですし,少なくとも現下の学校教育法上の大学には欠格条項は存在していませんので,にもかかわらず,障害の人は受験を認めないと言っても日本では大学として存在ができるということではあるんです。
 そして,ここは飛ばしていきますけれども,何らかの配慮を行うという大学が増えてきているんですが,例えば視覚障害で,点字による出題ということがきちっとあるところは67校。つまり,点字で受験したい人は,特に個別の学力試験がある場合,この点字による出題がある学校の中から大学を選択しなければいけない。かつ,そこには受験可の大学もあれば,可否未定の上で配慮して試験を行う大学もあるということで,必ずしも疑問は潰れておりません。簡単な配慮という点では,もう古い歴史,下の方の白いところ,そういう歴史ももちろんあります。
 同じことが聴覚障害にも言えるんですけれども,今日は全体の情勢がメインではありませんので,ざっと流しておきます。
 肢体障害に関してもこれぐらいですね。しかし,パソコンによる回答というのはまだまだ少ない。これは他の人がかなり御研究されている分野でもありますね。
 論点整理の前に幾つか明確にしていきたいんですけれども,今,検討されているのは,大学の中の合意的配慮ですね。ですが,じゃ,この検討会で何,誰に対して誰が行う支援を検討するのか。この辺は非常に重要ですね。国が各大学に対して行う配慮みたいな,独法等を含めた入試センターや,それから学生支援機構が大学に対して行うものあるいは障害者個人に対して行うもの,各大学が行う配慮,この辺ですね。もちろん,合理的配慮の内容というのは,支援機構のガイドブックでもまとめてきているし,私ども当事者として支援センターでもまとめてきている。もうかなりいろいろまとめはあるわけですね。しかし,それをまとめたらいいのかというと,誰が誰に対して行う支援かということをまとめていかないと,やっぱり見えてこないものがあります。
 そして,高等教育における権利条約の整理ですね。
 第2条の「他の者との平等を基礎として」と,これは非常に重要です。他の者というのは,ここでは障害のない人ですわ。ここが,日本でこれまで行われてきた基準というのは,障害のある人同士を比べて,この人は1.5倍だ,この人は1.3倍だと,障害のある人同士を比べることの方が多かったですね。しかし,権利条約はそうではなく,障害のない人との平等ということ,ここが基礎になった。これが重要であり,この検討会へ擦り合わせによって,あの人は1.3倍だけど,この人は1.5倍,これはなぜかといった議論も落ちているんですわ。それをはっきりとこの2条をしっかりと踏まえることが重要です。
 また,4条の一般的義務では,「差別となる既存の法律,規則,慣習及び慣行を修正し,又は廃止する」と。これができるのは各大学じゃなくて国なんですね。国家ができるものになる。じゃ,こういう差別となる既存の規則や慣習があるのか,ないのか。これも国だからできること。この辺は権利条約との関係で,合理的配慮だけではなく,こういう契機によって,この権利条約を生かした例えというのも細かく見ていく必要があると思います。
 もちろん第24条は言うまでもないことですから,もう今日は省略。
 じゃ,昨年の局長通達,支援ですね。24年度の実施要項にそれは何と書いてあるか。入学志願者の健康状況については,原則としては入学者選抜の判定資料としないと書いてあって,その上で2番目,健康に配慮する場合は募集要項にその事由を具体的に記載しなさい。それ,具体的に記載する学校はかなり少ないです。でも,普通はこう書いてあります。そして,健康を理由として不合格の判定を行うについては,疾病など心身異常のために志望学部等の教育の目的に即した履修に耐えないことが,入学後,保健指導等を考慮してもなお明白の場合に限定しと,この場合は不合格判定していいということが書いてあるんですね。これが本当にこの文言でいいのか。だって,心身に異常ということが,これ,現行法にはほとんどないところで,障害は異常と定義する,文科省はいいんですかということも踏まえて,要項のやつでもこう書かれています。で,真に教育上やむを得ない場合のほかはこれを見直すと。これが文言ですね。
 ただし,さっき言った権利条約の,それぞれの権利の考え方において,まず,この要項がどうあるべきかということは非常に微妙です。これは実施要項ということで,一番トップにあるところを紹介させていただきました。
 また,時間も限られているので紹介しますが,国の障害学生支援ネットワークというのは多岐にわたっています。今日は説明できませんけどね。それをちょっと図にしてみたものがこういうふうに,直接的には大学と障害学生の間でこの合理的配慮行われるわけですけれども,そこに向かっていく余裕が何しろない受験があるわけですね。これをどう活用していくことが日本の支援を伸ばしていくことなのか。この辺もやはりかなり検討課題になると思いますし,これは国の検討会だからできる部分でもあるわけです。各大学でも現況ではいろんな検討をしてきた。でも,国の検討会だからできるものは何なのかということはほぼ明確化になると思います。
 そして,国の組織だけでも,実は私も調べてみると,いろんな課にまたいでいます。入試室では,さっき言ったように要項を作って,調査やって,学生・留学生課はこの検討会を主催しています。それ以外に,国立大学法人の支援課や私学助成課,もしかしたらこれ,私もいろいろ知っているんですが,各部の名前が古いとかいうことだったら教えていただければと思いますけれども,実は,国立大学の経費と私立大学の経常費の出し方もかなり違います。同じ配慮をしてもお金の出るプロセスが違う。この辺がどういう区分けをしているかということを丁寧に見ていく必要はあると思います。
 また,独立行政法人の方は,入試センターも配慮しています。支援機構は特別支援課と奨学金事業。奨学金事業は,前回言いましたけれども,かなりこれも問題をはらんでいますし,特別支援課の方は,これも意外と知られていないんですが,障害学生の支援というのはできないんですね,厳密には。特別支援課ができるのは,障害学生を受け入れる大学の支援をすると。この大学支援ということが余りにもはっきり出てきていないことですね。その点は,セクションができることを明確化していくことは重要です。それ以外に,実はこれもマイナーなんですが,学位授与機構の中に大学評価の項目として障害学生支援があります。特別支援教育総合研究所は研究ですね。また,国立リハビリテーションセンターでは,その他修学支援等もすると。独法だけでもこれだけいろいろ分かれているんですね。つまり,大学の支援と評価をどこの機関がどうまとめていくか,この辺も重要な検討課題かなと思っております。
 そして,そのほか大学内の組織として,支援センターや,それから学生組織,そして教員・研究室単位での実践,あるいは,大学コンソーシアムという大学間連携によって行われている支援例もあります。大学の組織もいろいろ分かれていて,これらをいかに有機的に結びつけていくかが重要ですね。
 そのほか,ここはもう見てもらうだけ,飛ばしますけれども,当事者の組織も,私どもを初め,いろいろな組織が歴史的に発生し活躍してきています。そうした組織がやはり今後支援に与える影響も大きいと思いますので,これらの育成あるいは発展ということももちろん重要です。
 一方,大学教職員機関のトップライトとして,DO-IT JAPANという組織がありますね。既存の組織をいかに有効に連携していくかということが重要であります。
 海外は,アメリカに対しては出ました。AHEADも出ました。参考にということで,NDSUでアメリカ障害学生同盟という障害学生の当事者組織の方も紹介しておきます。また,カナダ,ヨーロッパも,広瀬さんの研究がもう非常に参考になるんですが。じゃ,アジアはないかというと,アジアも実はしっかりできてきています。韓国は特別選抜制度を既に持って差別禁止法も持っております。また,アフリカ各国では,JICAの研修生からいろいろな情報が入ってきて,もう障害学生支援というのは世界的な課題でもあります。
 ちょっとざざっとしかないんですが,論点整理の観点として,まず,障害範囲の問題があります。これ,去年の基本法改正で,障害は難病を含む社会モデルへの転換がされています。ですから当然,ここの検討会が基本法に沿っていくならば,医学モデルではなく社会モデルとしての障害の定義をしていただくように。そして,内容と決定方法,この辺は先ほど出ていますね。だから省略して,各機関の役割と支援内容で,大学が何をすべきか,そのために国は何をすべきか,その他の機関は何をすべきかというようなことを重層的に作ることによって,この合理的配慮の内容が生きてくると。
 それから,合理的配慮の内容に関しては,参考資料がもう一つあるんですけれども,基本としては障害者基本法の4条,つまり,合理的配慮を提供しなければ差別であると。差別として規定されると。これを裁判規範とするには,なお差別禁止法が必要だと言われておりますが,これ,しなければ差別になるということが現行法上の関係である以上,ここを基点としないと,アメリカがやっているからとか,どこがやっているからという,事例でもそうなってきまして,現行法の中に基本法がまずあると,これはしっかりリンクしていくことが重要かと思います。
 時間がないので省略します。で,今日もちょっと厚生労働省,自立支援法の担当者が来ていないんですが,ここで前回言いました,障害学生が通学や学外で自立支援法を使えない,こうするとそういう制度が引っ掛からないときにおいては,去年の初めに総合福祉法の骨格提言として,教育関連分野等の財源調整することによってシームレスに使う制度を作っていこうという観点,ここはしっかり押さえていかなきゃいけんかなと思っております。
 ちょっと時間ないそうで,駆け足になりますけれども,ごく簡単に紹介させていただきました。ありがとうございます。

【竹田座長】  殿岡委員,ありがとうございました。
 障害学生支援の現状と課題ということで,中長期的なものも含めて,今後の議論にかける貴重な丁寧な御提言も示していただいたのかなというふうに思いますが,委員の皆さんより何かご質問等ございますでしょうか。

【白澤委員】  すみません,一ついいですか。

【竹田座長】  白澤委員,お願いします。

【白澤委員】  白澤です。
 すみません,質問ではないですし,本質的なところから少しそれるんですが,14ページのスライドで予算のところ,国立大学,私立大学とも,今一般経費に変わっているので,記述が違いますよね。前回も予算についてはよく分からないという指摘がございましたので,次回で構いませんので,是非個別の大学がどういう形で予算をもらっているのかという辺りを,御説明資料でも頂けると助かるかなと思います。よろしくお願いします。

【竹田座長】  ありがとうございます。

【殿岡委員】  まず,そうですね。これに関しては,実は大学で,私立も,なかなか一般経費が出てこない部分で,予算の決定方法,これを併せて御提示いただけると大変貴重な資料になると思います。よろしくお願いします。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 それでは,事務局の方で,この点に関しては一つ。
 殿岡先生以下,近藤委員,白澤委員,高橋委員には,どうも資料の御提示ありがとうございました。

【大島委員】  すみません,もう一つよろしいですか。

【竹田座長】  はい,どうぞ。

【大島委員】  日本マイクロソフトの大島です。すみません,殿岡委員に一つ質問させてください。
 御説明の中の表の数字で,入学者に占める障害学生の割合が,日本学生支援機構さんで調査されている在籍者数と隔たりがあるとの話でしたけれども,確かにおっしゃるように,発達障害などの入学後判明が含まれることというのはそれで分かるんですが,今まで活動をしている中で,入学時,試験時,試験を受ける際に障害があるということを明らかにすることで不利になるんじゃないかとか,配慮申請をすることをためらったりだとか,あと,配慮申請自体を知らないで申請をしないで,入学してからは支援を求めることで在籍者数としてカウントされるというような,そこのギャップというのがあるのかなというふうに思っています。
 殿岡委員としては,そういう声を聞いていたりとか,又は調査されていたりとか,そういう入学時,試験時に言えていない人の声というようなものを,調査やデータなどで,もしお持ちでしたら教えていただければと思いました。

【殿岡委員】  私自身も,かなり前ですが,高校にいるときに明確な受験拒否を受けて,この環境でいい大学に行こうとすると,やはりためらったという経験を持っている。そして,受験可否について問い合わせましたら,これだけ多くの学校がふるいにかけられる。受けるかどうかすらふるいにかける相談をするよと言っている以上,やはり自分に不利になるかもしれない情報を,それは事前に大学に出すということに非常に抵抗を持っている学生がいることは確かです。
 また,大学が厚生労働省の自立支援法で制度を作るなら受け入れますという学校もあるのです。そして,実際に自立支援法は,現行,教育分野には使わないわけですけれども,それを条件として受け入れているようなこともされている。そうすると,そういう学校に,じゃ入れるかというと入れないわけですね。
 少なくとも,さっきの通知も含めて,全ての学校の門戸開放というのは大前提で僕はあると。つまり,相談に行くときは,ふるいにかけられに行くんじゃなく,受ける前提で配慮内容を相談する。いわゆる事前相談の形をとらなければ困難性が高い,例えば,実際に常時ケアと人工呼吸器をつけている学生も大学院にいます。それで,年齢の高い学生ほど,具体的に言おうと思ったら,ふるいにかけられるんじゃないか,言えなくなってきた。結果,大学が学力があるにもかかわらず,大学というのは来てほしくないという学生すらいるわけで,やはりそこを,そもそも障害学生を受け入れなくても成り立つという大学は日本にはないんだということを明確にすることが基本であり,そのときに,その上で合理的配慮が載るということをしてお話しできればと思います。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。

【吉永委員】  すみません,質問。

【竹田座長】  吉永委員,どうぞ。

【吉永委員】  富山大学の吉永でございます。殿岡委員に御質問させていただきたいと思います。
 骨格提言というお話を頂きました。パーソナルアシスタント制度の創設というところがあるんですけれども,このような重度訪問介護の利用に関して,大学で提供すべきサービスであってその制度を創設する,それに対して文科省の方で御支援いただくというようなスキームなのか,それとも,今既存にある行政サービスの拡充という形で,それの創設を図っていくのかということについて,お考えの方を教えていただけないかなと思いまして,御質問させていただきます。

【殿岡委員】  もう私,原理的には両方。これ,大学が独自にサービスを行うのを国で支援する方法も,それから,既存のサービスを利用する方法もあっていいと思います。
 ただ,重度訪問介護というのは,常時介護を必要とする人が受けるサービスであります。日常生活で介護を受ける人が,大学の門をくぐった途端に必要なくなるということは現実的にあり得ないわけで,大学の門をくぐろうと門から出ようと,そういう介護が必要な人はそういう介護が必要なわけですよ。ここにおいてシームレスなものが必要であるという点では,例えば技能者を認定するとか資格を作るとかいろいろあるから,スキームを作れれば,既存のところに財的援助をする,きちっとルールのものをちゃんと作って,文科からも厚労からもお金が出るというような仕組みの方が合理的ではないかなと原理的には思います。
 ただ,ここから先は,いわゆる支援事業を含めた予算的な話になると,政党間とか,いろんな議論があることも承知はしていますが,政治的なことはちょっと置いておいて,原理的には,その人がどこにいようとも同じサービスが受けられるべきだし,ましてや高等教育,勉強しようとしたときだけ使えなくなるようなサービスはやはり人権的におかしいですよ。学ぶことによって社会に貢献しようとする,自立支援法の本来の趣旨からも外れているよと。
 現実には,先週ですか,総合支援法が法改正で参議院を通りましたので成立したわけですが,その中の附則に3年度の見直しというのがあって,ここに教育分野でどれだけ,それによって介助が使えない結果ボランティアに依頼するあれでは,そのことで大学進学はあきらめるということをしっかり事例として出して,次の法改正につなげる。あるいは,次の法改正,3年を待たないでも学生はいるわけですから,その間に緊急支援的な施策を設けては実行するということを含めていかなければ。遊びに行ったらトイレ介助を受けられる。でも,大学に行ったら受けられない。こんな状況で勉強しようと思うような学生がどんどん厳しくなっていく。こういう状況を政府は,国は無視できない状況だと思っております。
 あとは,具体的にあった海外の事例もありましたが,今ある現行の各大学の中のアテンダント制度とかいろんな制度との整合性に関しては,もうちょっと細かい制度設計が必要かなというふうに思っています。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございます。よろしいでしょうか,吉永さん。
 それでは,時間も来ておりますが,この後,非常に大事な議論がありますので,本日は,今後の議事,検討会の進め方及び論点等についてということで,資料5にございますが,そちらの方の御確認を頂くということでよろしいかというふうに考えておりますけれども。
 それでは,事務局の方から御説明,よろしくお願いいたします。

【事務局】  それでは,時間が超えておりますが,資料5を御覧いただきたいと思います。先ほど委員の方々の御報告もございましたが,抜けている点も多々ございますが,今後の検討の進め方と論点等について,事務局としての案を作らせていただいております。
 まず,1から6という形で分けさせていただいておりますが,一番最初といたしまして,進め方でございますが,一番最初に,本検討会における検討の対象の範囲というふうなものをしっかりここでまとめると。高等教育機関ということで,大学,短期大学,高等専門学校,これは通信教育の課程も含むというふうなことですとか,あとは,入学前段階,入学後の段階,卒業後の段階ということで,ここの部分を検討の対象としてはいかがかと。
 2番目といたしまして,本検討会における合理的配慮というものの定義というふうなものをしっかりここで御議論いただくと。
 それと,3番目といたしまして,合理的配慮の決定等の方法について,これも御議論を頂いて,そのあとから4番目としまして,合理的配慮の観点としまして,先ほど1番目にお話しいたしました,入学の前の段階,入学後の段階,あとは卒業前ということの段階で,三つの段階に分けて議論を,合理的配慮の観点についてきちんと整理をして御議論いただくというふうなことにしたいと。
 あと,その後に5番,6番ということで,各大学の支援体制の整備,これはハード面もございますしソフトの面もございますので,そこの部分について御検討いただく。
 最後になりますけれども,これらの上記の4から5の御議論を踏まえまして,今後,国ですとか大学等が取り組むべき短期的課題ですとか中長期的課題について整理をしていくというふうな流れでいかがでしょうかという提案でございます。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 ただ今の御説明を一応まとめますと,まず,検討会の対象範囲の決定と,それから,本検討会における合理的配慮の定義づけ,これは非常に重要な問題かなというふうに思います。また,合理的配慮の決定方法等,それから,合理的配慮を検討するに当たっての観点整理と。また,国や大学等がすべき支援体制の整備,そして最後に,今後取り組むべき短期的・中長期的課題の整理ということを,順に追って検討していくというのが,そういう提案かというふうに思いますが御意見等ございますでしょうか。
 殿岡委員,よろしくお願いいたします。

【殿岡委員】  殿岡です。
 まず最初に,検討の対象ですけれども,まず,学生だけはなくて,障害を持っている教職員,これが,教職員という定義もあれですけれども,院生,そして研究者,そういったことを含めて。大学において,やはり教育と研究が密接に連携している以上,学生だけの配慮ということではやはり足りない。学生が院生になり研究生になり,そうした一連の流れがあるとすれば,教育・研究を一体とする意味で,教職員というものにもしっかり配慮することは検討すべきだろうと思います。
 それから,もう一つの検討の対象に,大学の中の支援の在り方も,それは多く,今までの研究も含めてまとめてきているわけですね。そして,各機会を捉えてこれまで障害学生支援について非常に貴重な御意見をまとめてこられているわけです。ですから,それをもう一回改めるのではなくて,やはり国がどうすべきか,独法がどうすべきか,その中で大学はどうすべきかということを,重層的に検討していくことこそが文科省に置かれた検討会の意味ではないかなというふうに思います。
 それから,2番の合理的配慮の定義に関しては,やはり条約だけではなくて,障害者基本法をしっかりと踏まえて,それを行わないものを差別と定義すると。もちろん過度な負担はもとよりありますけれども,基本法4条との整合性を持った形で合理的配慮は定義すると。権利条約はまだ理由にしませんけれども,基本法は現行法ですから,成立している現行法ですから,ここにしっかり挙げていくと。
 それからもう1個,障害の定義,社会モデルにすると。これも基本法に沿っていく。その上で決定方法等や,そして観点ですね。いわゆるどこに影響を上げていくだ。これで例示列挙が限定列挙にならないように,もう観点という言葉があるわけですけれども,今や観点としてまとめる以上は,やはり今大きく普及していくよりもこれから開発すべき。さっき高橋さんがおっしゃった,私どもは支援であるとか,これから開発すべき優先課題をしっかりとここに見据えていくということまで,ただの網羅的なものとは違う,やはり姿勢,国の姿勢なのかなと思っております。
 以上4点が,論点についての案に対する私のコメントとなります。以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 そのほかの委員,高橋先生。

【高橋委員】  じゃ1点,信州大学の高橋です。
 (3)番の合理的配慮の決定方法等に関しまして,この後御説明もあるかもしれませんが,資料7の方にもその論点例等が挙げられておるんですけれども,初等中等教育段階における整理というものを基本にしつつも,もう一つの参考資料といたしまして,大学入試センター試験におきます特別措置の決定の手続等についても参考にすべき資料かなというふうに考えます。それは,センター試験と入学後が整合性がとれないということになると,いろいろな問題もあると思いますので,そういった資料を検討課題に加えていただきますということ。そしてまた,今後の検討会スケジュール等においても,関係者からのヒアリング等もあるのかなと思うんですけれども,場合によっては,そういった辺りで御説明を頂くということも参考になるのではないかなというふうに思いました。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 次,広瀬委員,お願いいたします。

【広瀬委員】  放送大学の広瀬です。今日,ちょっとコメントしたいと思ったことが幾つかあります。
 まず,日本と米国やカナダ,豪州,ヨーロッパでは,ADA法のような強い法律があるかないかの決定的な違いがあります。ですから,今日,リーズナブル・アコモデーションという言葉が出てきたけれども,近藤先生もおっしゃるようにこれは法律用語です。絶えず訴訟社会の中でせめぎ合って,アメリカは判例法ですから,その中で10年,20年かけて,絶えず絶えずそのことが話題になっているわけです。ですから,コーディネーターがAHEADで集まっても,リーズナブル・アコモデーションを今の時点でどこで区別をするかとか,どこまで許されるか,つまり,これは訴訟に勝てるか負けるかの問題です。
 それから,ADAコーディネーターがいるというのも,私はちょっと近藤先生とは違う体験をしていて,ADAコーディネーターは障害者支援室とは全く別に作らなくてはいけない。つまり,副学長とか学長の直属で,ADAコーディネーターは学内の障害者支援を向上させるためではなくて,学校,大学を連邦政府の訴訟に負けないようにするための部署なんです。つまり,連邦政府のところで大学が差別禁止法に準じていないということで負けるとなると,連邦政府からの助成金がカットされるんです。これはもう大学の大問題です,運営に関わる。ですから,ADAコーディネーターは,大学内でそのような差別禁止法に触れることはないかを厳重にチェックする体制なんです。つまりそれは,学生も,それから教職員も,さっき殿岡先生がおっしゃったように,実は食堂で働いている皿洗いの人まで,もしそこで何かADAに抵触するようなことがあった場合に訴訟になると。そこをチェックするのがADAの,火元責任者と言ったら変ですけれども,大学に置かれているんです。そのぐらいに大学の運営にとって急所なんですね。
 ですから,この段階で合理的な配慮をどうするかというのをここで決定するにしても,アメリカの,実はこの合理的配慮という言葉をここで使うのがいいかどうか,それも検討する必要があると思うんですね。全然違う社会の決定の成り立ちの中で,我々はある程度のボトムラインを決めていかなくちゃいけないと思うんですけれども,そのときにアメリカ型のリーズナブル・アコモデーションという概念をここで使うのが良いのかどうか,それも大変重要なところではないかなと思います。つまり,向こうはと言ったら変ですけれども,アメリカの大学はしっかりとアリバイをきちんと作って,どこからも責められない形にするというのがとても大切なことなんですね,この障害者支援にとって。そういった,ある意味クールなところもあるので,また,その中でいいサービスを行っていこうというのがアメリカ社会ですので,この我々が作る合理的配慮というのが,どのような形で,こうこうですよというふうに作るのであれば,この合理的というのを,アメリカでは絶えず絶えずセミナーをやって,全米の中で何か所も何か所もセミナーをやっているという前提を押さえている必要があるということも認識しなくちゃいけないと思います。

【竹田座長】  ありがとうございました。とても重要な御意見ですね。
 石川委員,お願いいたします。

【石川委員】  石川です。
 2点コメントをさせていただきたいのですが,まず1点目は,4のeの修学についての支援に対応して,その5だとどうなるのかということなんですけれども,ハード面,ソフト面ということが挙げられていて,施設・設備と,それから教員あるいは支援体制ということなんですが,アクセシブルな教材の提供というのは,学生にとっても,それから教える側の教員にとっても,一番重要な問題の一つなので,これについて個々の大学としてできることはやらなければいけないし,また,各大学だけではいかんともし難い事柄に関しては,大学外の社会的なアソシエーションとの連携であるとか,各大学間の連携であるとか,そういったようなことがやはり有効だし,また検討すべきことではないかというふうに思います。ですので,それで,6でもう一回すくい取ることは可能かもしれないんですけれども,5の中で検討課題として,やはりここは中心的なところになると思いますので,アクセシブルな教材の調達や提供についてというのは,この中に入れていただきたいなというのは1点です。
 もう1点は,今の広瀬先生の御意見とも関連するんですが,初等中等教育の方でも,合理的配慮という概念をどのように取り扱うかについて相当,ワーキンググループにお願いして,そこで議論していただいたんですけれども,委員会の方でも相当頭を悩ませたテーマでして,権利条約では合理的配慮というのは中心的な概念になっているんですけれども,あるいは基本法でも必要かつ合理的な配慮というふうに書いてはあるんですが,その基盤となる法理論的な考え方とか,それから国内法との整合性とか,そういったところでなかなか難しい概念でもあると。大事だけども難しい概念で,考え方を伝えるという点ではいいんですけれども,実際にその制度の中に組み込んでいこうとすると,なかなか扱いづらいところがあって,結局は,特特委の方でどうしたかというと,基礎的環境整備と合理的配慮という,これを2本柱というか両輪としてやっていくという,そういう枠組みにして整理をしています。それが正解かどうかは分からないんですけれども,合理的配慮の定義について,資料,まだ紹介されていませんけれども,本委員会の資料では,その合理的配慮についての定義をほぼ参照するような形で,本委員会でもというような資料も用意されておりましたので,一応そのとき,特特委における合理的配慮というのは,もう一つ,基礎的環境整備という概念と対になっているというのを一応申し上げておきたいというふうに思います。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 では最後に,中野先生,よろしくお願いします。

【中野委員】  慶應大学の中野です。時間がないと思いまして,個別に資料を用意してありますので,後で配付をさせていただきたいと思います。
 ここで申し上げておきたいのは,6番のところで,今後の課題の整理の際に,実効力のある目標というのを是非ともこの委員会の中で考えていただきたいと思うんです。福祉や教育を持っていない私立大学の立場から言うと,大学の経営の中に障害学生支援を位置付けない限り,私学にとっては,これは実現できない問題であろうと思います。是非ともそれを,ペナルティの形にするのかインセンティブの形にするのかは別として,今現在,障害学生で支援を要望することができていない学生たちというのがたくさんいて,その学生たちに対して,この委員会の結論というのがある一定の,例えばそれが論拠になるような,そういう具体的な実効力のある目標というのを最後のところで出していただきたいなというふうに考えています。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 非常に幾つも重要な御意見,御提案を頂きましたので,今後の進め方につきましては,頂いた御意見も踏まえまして,私と事務局の方で相談しまして,改めて検討会の方に御提案させていただきたいと思いますが,よろしいですか。
 それでは,そのようにさせていただきたいと思います。
 本日はちょっと座長の不手際で大分時間が延長してしまいましたが,引き続きました議題につきましては次回以降,時間をかけて議論できればというふうに思います。
 最後に,今後の検討会のスケジュールにつきまして,事務局から御説明の方をよろしくお願いします。

【事務局】  本日で第2回目の検討会でございますが,資料8を御覧いただきたいと思います。次回の検討会でございますが,第3回といたしまして,7月上・中旬と書いてございますが,皆様方のまた御予定をちょっとお聞きいたしまして,なるべく早い時期にセットをいたしたいと思っております。
 ただ,本日,スケジュール感で言いますと,報告書の取りまとめを第5回でということにはしておりますが,この5回にとらわれることなく,次回それも検討していただきたいんですけれども,まだもう少し報告書の取りまとめまでに時間を要するのではないかというふうに思っておりますので,5回と言わず,まだ何回か検討会を重ねて開催させていただければというふうに思っておりますが,いかがでございましょうか。

【竹田座長】  ただ今のスケジュールにつきまして,場合によっては少し回数を増やして検討したいという御提案ですがいかがでしょうか。非常に重要な議題が幾つかございます。
 高橋委員。

【高橋委員】  すみません,ちょっとスケジュールに関してなんですけれども,実は事務局のメールのやり取りでも日程調整で少しお願いしたところではあるんですけれども,次回だけということではなく,長期的に会議の日程を決めていただけると非常に有り難いと言いますか。ほかのものとの日程調整が,大分先のものであれば可能なんですけれども,もう1か月を切ってきた中で,例えば,自分が日程調整して招集した会議等をスケジュールし直すということは大変困難ですので,是非長期的に先の方まで日程を決めていただけると有り難いと思うんですけれども,いかがでしょうか。

【竹田座長】  殿岡委員,お願いします。

【殿岡委員】  前回,副大臣の答弁というのもありましたけれども,可能なものは概算要求に乗せていきたいということで,もし文科省側からあるいは我々の側からも,要するにすぐに受け入れられて優先的に議論すべき事項があるんであれば,それはしっかりと出した上で間に合わせると。それと合理的配慮の方とかをしっかりと切り分けていかないと。まだいろいろな点はありますけれども,来年度もうやらないと困ること,それがあればしっかりと出していきたいと思います。また,今年度の要項とか,そういう割合短期的にやるべきことはやはり優先した上で,さっき高橋委員がおっしゃったように長期的に日程をとって,論点をしっかり論じていければと思います。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 スケジュールにつきましては事務局とも少し練って,また先生方に相談しながら,非常に恐縮ですが,御提案したいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,以上で障がいのある学生の修学支援に関する検討会の第2回を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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-- 登録:平成26年02月 --