文部科学省では、令和4年度の大学における教育内容等の改革状況について調査を行い、この度、その結果を取りまとめましたのでお知らせいたします。
大学における教育内容・方法の改善等の実施状況について定期的な調査を実施し、国民への情報提供に努め、各大学のより積極的な教育内容等の改善に関する取組を促す。
・調査対象:国公私立793大学(令和4年度 学校基本調査のデータにある807大学のうち、短期大学、専門職大学、専門職短期大学、令和4年度に学生の募集を停止した大学を除いた大学数。)
・調査方法:調査票等を令和5年9月に文部科学省ホームページに掲載、全大学に令和5年12月までの間で回答依頼を行い、回答後に集計作業を実施。
・回答率:98%(781大学が回答。うち、各母数および内数は以下の通り。)
【大学全体】国立86大学、公立96大学、私立599大学の計781大学
【学部段階】国立82大学、公立93大学、私立583大学の計758大学
【研究科段階】国立86大学、公立87大学、私立479大学の計652大学
(1)三つの方針に基づいた大学教育の質の向上のための取組
大学において育成すべき力を学生が確実に身に付けるためには、三つの方針(卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針)に基づいて個々の授業科目等を越えた大学教育全体としてのカリキュラム・マネジメントを確立し、教育課程の体系化・構造化を行い、学生等へ分かりやすく示すこと、学修成果に関する情報の把握・測定を通じた教育内容の質向上に向けた取組を行うことが重要である。平成29年度から三つの方針の一体的な策定・公表が各大学に義務付けられ、また令和2年1月には、学修者本位の教育の実現を図るための取り組むべき事項と留意点をまとめた「教学マネジメント指針」(中央教育審議会大学分科会)が策定された。このような中で、三つの方針の達成状況を点検・評価している大学は年々増加していき、約92%まで達している状況である。
しかし、
・三つの方針に基づく教育の成果を点検・評価するための、学位を与える課程共通の考え方や尺度を策定している大学は74%
・学修状況の分析や教育改善を支援する体制の構築をしている大学は約66%
・全学的な教育目標等とカリキュラムの整合性を検証する全学的な委員会を設置している大学は約49%
に留まっており、策定・公表した三つの方針に基づいた具体的な取組の広がりも十分とは言えない状況にある。三つの方針に基づく大学教育の質の向上のための、各大学における具体的な取組の更なる進展が必要である。
(2)社会に対して積極的に説明責任を果たしていくための取組
各大学が、学生や学費負担者、入学希望者等の直接の関係者に加え、幅広く社会に対して積極的に説明責任を果たしていくことが重要である。また、大学教育の質向上という観点からも、情報公表には重要な意義がある。情報公表に関する各種法令(※1)において、情報公表が義務付けられているところであり、本調査では全ての大学において一定の情報公表が行なわれていることが確認されている(教育研究活動等の情報を公表している大学は約100%)。
しかし、
・学生の学修時間を公表している大学は約56%
・大学の教育研究活動を通じた学生の成長実感を公表している大学は約43%
・教員一人当たりの学生数を公表している大学は約64%
に留まっており、「教学マネジメント指針」において社会からその公表が強く求められている上記項目等の公表については、十分とは言えない状況にある。地域社会や産業界、大学進学者等の大学の外部からの声や期待を意識し、社会からの信頼と支援を得るという好循環を形成するため、さらに社会からの評価を通じた大学教育の質の向上を進めるためには、より多元的な情報を公表し、大学全体の姿をできるだけ包括的に描く必要があり、各大学におけるより積極的な取組が期待される。
(3)履修証明プログラムに関する取組
履修証明プログラムは、大学の社会貢献を促進する一環として平成19年12月に創設されたのち、平成30年11月の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(中央教育審議会)等を踏まえ、リカレント教育の推進を図るために、プログラム総時間数の下限に関する要件の短縮やプログラム全体に対する単位授与を可能にするなどの制度改正が行われてきた。
平成30年度と令和4年度の実績を比較すると、
・平成30年度 開設大学数が168大学(22%)、受講者数が5,002人、証明書交付者(修了者)数が3,460人
・令和4年度 開設大学数が207大学(27%)、受講者数が9,314人、証明書交付者(修了者)数が6,703人
と着実に取組が進展されていることが明らかとなった。
社会的なニーズの高まりを踏まえ、各大学においてリカレント教育の推進に向けた、新たなプログラム開設や受講者数、修了者数の増加を図る取組が更に進展することが期待される。
(4)大学におけるハラスメント等防止のための取組
学生がハラスメントに悩まされることなく学べる環境は、個々の学生の学びを支える基本的な前提条件であるのみならず、学生の学びを深く充実したものとするためにも重要である。また、令和2年度には、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律および関係省令等の施行により、事業主が講ずべき職場のハラスメント対策に関する義務が強化されていることも踏まえ、大学の全ての構成員が安心して教育研究その他の活動に取り組むことができるよう、大学においてハラスメント等防止のための取組の確実な実施が求められている。
令和4年度においては、ほぼ全ての大学でハラスメント等防止のための取組が実施され(約100%)、学生及び教職員向けの相談窓口が設置されている(約99%)。
一方で、
・学外機関を活用した窓口を設置している大学は約26%(令和2年度:約22%)
・学内の調査・対策機関に第三者を含める等の取組を実施している大学は約51%(令和2年度:約45%)
となっている。
文部科学省は、令和4年11月に大学等におけるセクシュアルハラスメントを含む性暴力等の防止に向けて、周知・啓発、相談体制の整備、被害者救済のための適切な措置、行為者の厳正な処分及び再発防止の徹底等に確実に取り組むよう通知し、令和5年9月及び令和6年9月においても、学内規則の整備、教員採用段階におけるセクハラ・性暴力等を原因とする懲戒処分歴等の確認、学外の関係機関との連携等、取組の更なる推進について通知した ところである。各大学においては当該通知も踏まえ、ハラスメント等の防止や対応に関する取組のより一層の充実が期待される。
(※1)情報公表について、学校教育法第113条では、「大学は、教育研究の成果の普及及び活用の促進に資するため、その教育研究活動の状況を公表するものとする。」とされている。また、学校教育法施行規則172条の2において規定する事項を公表することが義務付けられているとともに、その他学生が修得すべき知識及び能力に関する情報を積極的に公表することが努力義務となっている。
各大学での分析等の活用に供することを目的として一部の設問を除き、個別の大学の回答内容について、大学名や学部名等が特定又は推定されないよう匿名処理を行った上で、公表いたします。
なお、「地域」「規模」の区分けについては、以下のとおりです。
○地域
学校コード(令和4年5月1日時点)にある都道府県に基づき、下表のとおりに区分。
北海道・東北 | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 |
関東 | 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県 |
中部 | 新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 |
近畿 | 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県 |
中国・四国 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県 |
九州・沖縄 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
○規模
学術情報基盤実態調査の《付録》規模別大学一覧表(令和4年5月1日時点)に基づき、下表のとおりに区分。
A(5学部以上) | B(2~4学部以上) | C(単科大学) |
各大学における教育内容等の改善に関する取組として、教学マネジメント指針に関する取組事例を紹介いたします。(令和2年度 文部科学省委託調査「教学マネジメントの確立に資する事例の把握等に関する調査研究」報告書(PDF:6180KB)より引用)
電話番号:03-5253-4111(内線:3334)