大学における教育内容等の改革状況について(令和3年度)

 文部科学省では、令和3年度の大学における教育内容等の改革状況について調査を行い、この度、その結果を取りまとめましたのでお知らせいたします。

1.調査目的

 大学における教育内容・方法の改善等の実施状況について定期的な調査を実施し、国民への情報提供に努め、各大学のより積極的な教育内容等の改善に関する取組を促す。

2.調査方法等

・調査対象:国公私立793大学(令和3年度 学校基本調査のデータにある803大学のうち、短期大学、専門職大学、専門職短期大学、令和3年度に学生の募集を停止した大学を除いた大学数。)
・調査方法:調査票等を令和4年10月に文部科学省ホームページに掲載、全大学に令和5年1月までの間で回答依頼を行い、回答後に集計作業を実施。
・回答率:98%(775大学が回答。うち、学部段階の母数は国立82大学、公立91大学、私立579大学の計752大学)

3.調査結果

1 概要

<進展が見られた事項>
 近年各大学によって取り組まれるようになり、全国的にはまだ普及していないが、進展があった事項は以下のとおりである。
・学部段階において、カリキュラム編成上の取組としてナンバリング(※1)を実施している大学数
…H29:360大学(48%)→R03:539大学(72%)
・学部段階における成績評価基準の明示について、一部の科目をルーブリック(※2)により明示している大学数
…H29:159大学(21%)→R03:242大学(32%)
・教員の業績評価として、ティーチング・ポートフォリオ(※3)を導入している大学数
…H29:199大学(26%)→R03:297大学(38%)

<特記事項>
(1)三つの方針に基づいた大学教育の質の向上のため取組
 大学において育成すべき力を学生が確実に身に付けるためには、三つの方針(卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針)に基づいて個々の授業科目等を越えた大学教育全体としてのカリキュラム・マネジメントを確立し、教育課程の体系化・構造化を行い、学生等へ分かりやすく示すこと、学修成果に関する情報の把握・測定を通じた教育内容の質向上に向けた取組を行うことが重要である。平成29年度から三つの方針の一体的な策定・公表が各大学に義務付けられ、また令和2年1月には、学修者本位の教育の実現を図るための取り組むべき事項と留意点をまとめた「教学マネジメント指針」(中央教育審議会大学分科会)が策定された。このような中で、年々上昇傾向にあるものの、三つの方針の達成状況を点検・評価している大学は約89%に留まっている状況である。
 また、
・三つの方針に基づく教育の成果を点検・評価するための、学位を与える課程共通の考え方や尺度を策定している大学は68%
・学修状況の分析や教育改善を支援する体制の構築している大学は約63%
・全学的な教育目標等とカリキュラムの整合性を検証する全学的な委員会を設置している大学は約46%
に留まっており、策定・公表した三つの方針に基づいた具体的な取組の広がりも十分とは言えない状況にある。三つの方針に基づく大学教育の質の向上のための、各大学における具体的な取組の更なる進展が必要である。
 
(2)社会に対して積極的に説明責任を果たしていくための取組
 各大学が、学生や学費負担者、入学希望者等の直接の関係者に加え、幅広く社会に対して積極的に説明責任を果たしていくことが重要である。また、大学教育の質向上という観点からも、情報公表には重要な意義がある。情報公表に関する各種法令(※4)において、情報公表が義務付けられているところであり、本調査では全ての大学において一定の情報公表が行なわれていることが確認されている(教育研究活動等の情報を公表している大学は約100%)。
 しかし、
・学生の学修時間を公表している大学は約51%
・大学の教育研究活動を通じた学生の成長実感を公表している大学は約39%
・教員一人当たりの学生数を公表している大学は約64%
に留まっており、「教学マネジメント指針」において社会からその公表が強く求められている上記項目等の公表については、十分とは言えない状況にある。地域社会や産業界、大学進学者等の大学の外部からの声や期待を意識し、社会からの信頼と支援を得るという好循環を形成するため、さらに社会からの評価を通じた大学教育の質の向上を進めるためには、より多元的な情報を公表し、大学全体の姿をできるだけ包括的に描く必要があり、各大学におけるより積極的な取組が期待される。
 
(3)新型コロナウイルス感染症の影響による遠隔授業を活用した大学数の増加について
 令和元年度末より新型コロナウイルス感染症の影響により、大学においては、遠隔授業の活用が進んだ。令和3年度実績を確認すると、約70%と前年度(約50%)より約20%増加していることが明らかになった。
 
(4)履修証明プログラムに関する取組
 履修証明プログラムは、大学の社会貢献を促進する一環として平成19年12月に創設されたのち、平成30年11月の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(中央教育審議会)等を踏まえ、リカレント教育の推進を図るために、プログラム総時間数の下限に関する要件の短縮やプログラム全体に対する単位授与を可能にするなどの制度改正が行われてきた。
 平成29年度と令和3年度の実績を比較すると、
・平成29年度 開設大学数が163大学(21%)、受講者数が5,311人、証明書交付者(修了者)数が3,740人
・令和3年度 開設大学数が204大学(26%)、受講者数が8,688人、証明書交付者(修了者)数が5,884人
と着実に取組が進展されていることが明らかとなった。
 令和4年度調査においては、社会的なニーズの高まりを踏まえ、各大学においてリカレント教育の推進に向けた、新たなプログラム開設や受講者数、修了者数の増加を図る取組が更に進展することが期待される。


(※1)ナンバリング
カリキュラムの体系性を示す為に、各授業科目に意味づけされた番号を付与すること。
 
(※2)ルーブリック
米国で開発された学修評価の基準の作成方法であり、評価水準である「尺度」と、尺度を満たした場合の「特徴の記述」で構成される。記述により達成水準等が明確化されることにより、他の手段では困難な、パフォーマンス等の定性的な評価や、質的評価、直接評価に向くとされ、評価者、被評価者による標準化等のメリットがある。
 
(※3)ティーチング・ポートフォリオ
大学等の教員が自分の授業や指導において投じた教育努力の少なくとも一部を、目に見える形で自分及び第三者に伝えるために効率的・効果的に記録に残そうとする「教育業績ファイル」、もしくはそれを作成するにおいての技術や概念及び、場合によっては運動を意味するもの。ティーチング・ポートフォリオの導入により、(1)将来の授業の向上と改善、(2)証拠の提示による教育活動の正当な評価、(3)優れた熱心な指導の共有等の効果が認められるとされる。なお、ここでいうティーチング・ポートフォリオには、教員の教育面の取組だけでなく、研究や社会貢献の取組状況も含めた記録等(いわゆるアカデミック・ポートフォリオ)も含まれる。
 
(※4)情報公表について、学校教育法第113条では、「大学は、教育研究の成果の普及及び活用の促進に資するため、その教育研究活動の状況を公表するものとする。」とされている。また、学校教育法施行規則172条の2において規定する事項を公表することが義務付けられているとともに、その他学生が修得すべき知識及び能力に関する情報を積極的に公表することが努力義務となっている。

2  調査結果の資料

お問合せ先

高等教育局大学教育・入試課学務係

電話番号:03-5253-4111(内線:3334)

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(高等教育局大学教育・入試課)