大学における教育内容等の改革状況について(平成30年度)

文部科学省では、平成30年度の大学における教育内容等の改革状況について調査を行い、この度、その結果を取りまとめましたのでお知らせいたします。

1.調査目的

大学における教育内容・方法の改善等の実施状況について定期的な調査を実施し、国民への情報提供に努め、各大学のより積極的な教育内容等の改善に関する取組を促す。

2.調査方法等

・調査対象:国公私立782大学(短期大学、平成30年度に学生の募集を停止した大学を除く。)
・調査方法:文部科学省ホームページに調査票・回答票等を掲載し、全大学に回答依頼の文書を発出。各大学の記入後に回答票を回収、集計。
・回答率:97%(761大学が回答。うち、学部段階の母数は国立86大学、公立85大学、私立590大学の計761大学)

3.調査結果

1 概要

<特に進展が見られた事項の例>
(1)継続的な進展が見られた事項
各大学において継続的な取組がなされ、大きな進展が認められる事項は以下のとおりである。
・学部段階において、カリキュラム編成上の取組として、シラバスの作成にあたり、内容を担当教員以外が検討・修正する機会を設定している大学数
  ・・・ H24:391大学(53%)→ H30:648大学(88%)
・学部段階において、初年次教育(※1)でプレゼンテーションやディスカッション等の口頭発表の技法を身に付けるためのプログラムを実施している大学数
  ・・・ H23:512大学(70%)→ H30:631大学(85%)
・学部段階において、シラバスで準備学修に関する具体的な指示を記載している大学数
  ・・・ H24:410大学(55%)→ H30:656大学(89%)
・学部段階において、GPA制度(※2)を導入している大学数
  ・・・ H23:453大学(62%)→ H30:702大学(95%)
・学部段階において、学生の学修時間や学修行動の把握を行っている大学数
  ・・・ H23:269大学(37%)→ H30:631大学(85%)

(2)近年進展が見られた事項
近年各大学によって取り組まれるようになり、全国的にはまだ普及していないが、進展を認められる事項は以下のとおりである。
・学部段階において、カリキュラム編成上の取組としてナンバリング(※3)を実施している大学数
  ・・・ H24:125大学(17%)→ H30:396大学(54%)
・学部段階において、履修系統図(カリキュラムマップ、カリキュラムチャート)(※4)を活用している大学数
  ・・・ H24:353大学(48%)→ H30:563大学(76%)
・FD(※5)としてアクティブ・ラーニング(※6)を推進するためのワークショップまたは授業検討会を行っている大学数
  ・・・ H25:205大学(27%)→ H30:293大学(39%)

<今後の課題と考えられる事項の例>
(1)三つの方針に基づいた大学教育の質の向上のための各種取組
大学において育成すべき力を学生が確実に身に付けるためには、三つの方針(卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針)に基づいて個々の授業科目等を越えた大学教育全体としてのカリキュラム・マネジメントを確立し、教育課程の体系化・構造化を行い、学生等へわかりやすく示すこと、学修成果に関する情報の把握・測定を通じた教育内容の質向上に向けた取組を行うことが重要である。
この点について、平成29年度から三つの方針(卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針)の一体的な策定・公表が各大学に義務付けられているところである。
しかし、
・大学全体で定める人材養成目的や学位授与方針等とカリキュラムの整合性を考慮している大学は約82%
・全学的な教育目標等とカリキュラムの整合性を検証する全学的な委員会を設置している大学は約45%
・シラバスに人材養成の目的もしくは学位授与の方針と当該授業科目の関連を記載している大学は約58%
・学位水準の向上に資する、日本学術会議が作成している分野別の教育課程編成上の参照基準を活用している大学は約19%
にとどまっており、策定・公表した三つの方針に基づき教育の質を向上させる具体的な取組は全体的な広がりを見せておらず未だ十分とは言えない。今後、三つの方針に基づく教育の実質化に向けた取組の更なる進展が必要である。

(2)学修成果の把握・可視化のための各種取組
学修者本位の教育の観点から、一人一人の学生が、学修成果を自ら説明することができるようにするため、また、大学が教育成果を説明するとともに、教育活動の改善を図るための前提となる点検・評価を行うことができるようにすることが重要である。このため、個々の授業科目の成果が、「卒業認定・学位授与の方針」に定められた資質・能力を身に付けることにどのように寄与しているかを明らかにすることが、学修成果・教育効果の把握・可視化を考える上で非常に重要である。
この点について、学部段階において、学生の学修成果の把握を行っている大学数は年々上昇傾向(H30:401大学(54%))にあり、その把握方法としても外部の標準化されたテスト等による学修成果を調査・測定をするアセスメントテストを活用する大学は75.8%(学生の学修成果の把握を行っている大学の内数)と進む一方、教学マネジメント指針(令和2年1月中央教育審議会大学分科会)において、成績評価及び学修成果の把握をするに当たって、有効な取組とされている
・学修評価の観点・基準を定めたルーブリック(※7)の活用は約17%(同上)
・学修ポートフォリオ(※8)の活用は約26%(同上)等
十分に広がっていない取組もみられる。また、学修成果に関する情報の活用方法としても、学生への履修指導やキャリア相談に活用している大学は約52%(同上)と未だ十分な数値となっていない。
今後も引き続き、個々の学位プログラムの内容に応じて学習成果・教育成果の把握・可視化のために必要な情報を各大学が自主的に策定・開発を計画的に進めていき、学生が、「卒業認定・学位授与の方針」に定められた学修目標の達成状況を可視化されたエビデンスとともに説明できるよう取組を更に進めることが必要である。


(※1) 初年次教育
   高等学校から大学への円滑な移行を図り、大学での学問的・社会的な諸条件を成功させるべく、主として大学新入生を対象に作られた総合的教育プログラム。高等学校までに習得しておくべき基礎学力の補完を目的とする補習教育とは異なり、新入生に最初に提供されることが強く意識されたもの。

(※2) GPA制度
授業科目ごとの成績評価を、例えば5段階(A、B、C、D、E)で評価し、それぞれに対して、4、3、2、1、0のように数値(グレード・ポイント:GP)を付与し、この単位あたりの平均(グレード・ポイント・アベレージ:GPA)を出して、その一定水準を卒業等の要件とする制度。

(※3) ナンバリング
カリキュラムの体系性を示す為に、各授業科目に意味づけされた番号を付与すること。

(※4) 履修系統図(カリキュラムマップ、カリキュラムチャート)
ここでは、学生に身に付けさせる知識・能力との対応関係等を示した科目区分の下に授業科目を構成し、科目区分間、授業科目間の関係性や履修順序(配当年次)等を示すことにより、授業科目の体系的な履修を促すことを目的とした図を指す。

(※5) FD
ファカルティ・ディベロップメント(大学の教育の内容及び方法の改善を図るための教員の組織的な研修等)の略。

(※6) 能動的学修(アクティブ・ラーニング)
教員の一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法を指す。発見学修、問題解決学修、体験学修、調査学修等が含まれ、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効な方法とされている。

 (※7) ルーブリック
米国で開発された学修評価の基準の作成方法であり、評価水準である「尺度」と、尺度を満たした場合の「特徴の記述」で構成される。記述により達成水準等が明確化されることにより、他の手段では困難な、パフォーマンス等の定性的な評価や、質的評価、直接評価に向くとされ、評価者、被評価者による標準化等のメリットがある。

(※8) 学修ポートフォリオ
学生が、学修過程ならびに各種の学修成果(例えば、学修目標・学習計画表とチェックシート、課題達成のために収集した資料や遂行状況、レポート、成績単位取得表など)を長期にわたって収集し、記録したもの。

お問合せ先

高等教育局大学振興課大学改革推進室

電話番号:03-5253-4111(内線:3334)

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(高等教育局大学振興課大学改革推進室)