大学における教育内容等の改革状況について(平成29年度)

文部科学省では、平成29年度の大学における教育内容等の改革状況について調査を行い、この度、その結果を取りまとめましたのでお知らせいたします。

1.調査目的

大学における教育内容・方法の改善等の実施状況について定期的な調査を実施し、国民への情報提供に努め、各大学のより積極的な教育内容等の改善に関する取組を促す。

2.調査方法等

•調査対象:国公私立777大学(短期大学、平成28年度に学生の募集を停止した大学を除く。)
•調査方法:文部科学省ホームページに調査票・回答票等を掲載し、全大学に回答依頼の文書を発出。各大学の記入後に回答票を回収、集計。
•回答率:98%(767大学が回答))

3.調査結果

1 概要

<特に進展が見られた事項の例>
(1)継続的な進展が見られた事項
各大学において継続的な取組がなされ、大きな進展が認められる事項は以下のとおりである。
・学部段階において、能動的学修(アクティブ・ラーニング )を取り入れた授業科目の増加を図っている大学数
  ・・・ H26:452大学(62%)→ H29:529大学(71%)
・学部段階において、シラバスの作成にあたり、内容を担当教員以外が検討・修正する機会を設けている大学数 
  ・・・H25:468大学(63%)→ H29:629大学(85%)
・学部段階において、学生に対する個別の学修指導にGPA を活用している大学数
  ・・・ H25:422大学(57%)→ H29:581大学(78%)
・学部段階において、学生の学修時間や学修行動の把握を行っている大学数
  ・・・H25:441大学(60%)→ H29:639大学(86%)
・SD を大学全体で実施している大学数 ・・・H25:542大学(71%)→ H29:694大学(91%)

(2)近年進展が見られた事項
近年各大学によって取り組まれるようになり、全国的にはまだ普及していないが、進展を認められる事項は以下のとおりである。
・学習管理システム(LMS:Learning Management System) を利用した事前・事後学習の推進に取り組んでいる
  大学 数・・・H25:283大学(38%)→ H29:409大学(55%)
・全学的な履修指導または学修支援の取組として、学修ポートフォリオ を取り入れている大学数
  ・・・H25:190大学(25%)→ H29:275大学(36%)
・全学的なIR を専門で担当する部署を設置している大学数
  ・・・H25: 96大学(13%)→ H29:290大学(38%)

<教学マネジメントの確立に関連する各大学の取組状況について>
令和2年1月に中央教育審議会大学分科会が取りまとめた「教学マネジメント指針」では、三つの方針(特に「卒業認定・学位授与の方針」及び「教育課程編成・実施の方針」)に基づき、学修者本位の教育の実現を図るための教育改善に取り組みつつ、社会に対する説明責任を果たしていく大学運営、すなわち教学マネジメントがシステムとして確立した大学運営の在り方が示されている。
以下では、本調査における調査項目のうち同指針との関係で参考となるものについて、同指針のⅠ~Ⅴ の順にまとめる  。

(1)「Ⅰ 『三つの方針』を通じた学修目標の具体化」関係
「三つの方針」の達成状況を点検・評価している大学は542大学(71%)であり、一定の取組が見られるところである。もっとも、点検・評価に当たって学外の者が参画して意見を取り入れる機会を設けている大学は279大学(36%)に、点検・評価するための学位を与える課程(プログラム)共通の考え方や尺度 を策定している大学は253大学(33%)に留まっている(いずれも大学全体の数値)。

(2)「Ⅱ 授業科目・教育課程の編成・実施」関係
「卒業認定・学位授与の方針」に定められた学修目標を達成するための授業科目・教育課程の編成・実施に関連する事項として主なものを上げると以下のとおりである(いずれも学部段階もしくは大学全体の数値。)。
 ・ナンバリング を実施する大学 :260大学(48%)
 ・履修系統図(カリキュラムマップ、カリキュラムチャート) を活用する大学 :533大学(72%)
 ・シラバスの作成にあたり、内容を担当教員以外が検討・修正する機会を設定する大学 :629大学(85%)
 ・能動的学修(アクティブ・ラーニング)を取り入れた授業を実際に行っている大学 :676大学(91%)
 ・大学全体で定める人材養成目的や学位授与方針等とカリキュラムの整合性を考慮している大学 :597大学(80%)
 ・TAを配置する大学 :507大学(66%)
 ・学修ポートフォリオ を提供する大学 :275大学(36%)
 ・シラバスに人材養成の目的もしくは学位授与の方針と当該授業科目の関連を記載する大学 :377大学(51%)
 ・シラバスに授業における学修の到達目標を記載する大学 :739大学(99%)
 ・シラバスに各回の授業の詳細な内容を記載する大学 :730大学(98%)
 ・シラバスに準備学習に関する具体的な指示を記載する大学 :632大学(85%)
 ・シラバスに準備学習に必要な学修時間の目安を記載する大学 :346大学(47%)
 ・全ての科目について成績評価基準をシラバスにより明示する大学 :728大学(93%)
 ・全ての科目について成績評価基準をルーブリックにより明示する大学 : 34大学( 5%)
 ・一部の科目について成績評価基準をルーブリックにより明示する大学 :159大学(21%)
 ・GPAに応じた履修上限単位数を設定している大学 :245大学(33%)

(3)「Ⅲ 学修成果・教育成果の把握・可視化」関係
学修成果・教育成果の把握・可視化に関連する事項として主なものを上げると以下のとおりである(いずれも大学全体の数値。)。
 ・GPA制度を導入している大学 :688大学(93%)
 ・GPAを学生に対する個別の学修指導に活用している大学 :581大学(78%)
 ・GPAを退学勧告の基準としている大学 :154大学(21%)
 ・学生の学修時間や学修行動の把握を行っている大学 :639大学(86%)
 ・課程を通じた学生の学修成果の把握を行っている大学  :393大学(53%)
 ・ディプロマサプリメントなどの資料を交付している大学 : 33大学( 4%)
 ・アンケート形式により卒業生の意見を聴く機会を設けている大学 :376大学(51%)

(4)「Ⅳ 教学マネジメントを支える基盤(FD・SDの高度化、教学IR体制の確立)」
FDに関しては、その具体的な内容として比較的普及しているものとしては、教員相互の授業参観(433大学・57%)、教育方法改善のためのワークショップまたは授業検討会(363大学・47%)、講演会・シンポジウム等(512大学・67%)があげられる。また、新任教員を対象とした研修会等についても、過半数となる405大学(53%)が実施している 。FDに関する専門家の活用状況としては、自大学の常勤の教職員を専門家として活用している大学が193大学(25%)であり、外部の専門家を必要に応じて活用する大学が474大学(62%)である。
SDに関しては、694大学(91%)が大学全体で実施しており、参加率が75%以上の大学は362大学(47%)である 。
教学IRに関しては、本調査では教学IRに限定せず調査を実施しているところであるため、指針との関係では必ずしも整合的ではないが、これを前提とすれば、全学的なIRを専門で担当する部署を設けている大学は289大学(38%)であり、IR部局における担当業務として比較的多くの大学において行われているものとしては、学生の学修成果の評価のためのデータ収集、評価の実施・分析(210大学・27%)、学生の学修時間の把握のためのデータ収集、分析(193大学・25%)があげられる 。

(5)「Ⅴ 情報公表」
情報公表に関連する事項として主なものを上げると以下のとおりである(いずれも学部段階もしくは大学全体の数値。)。
 ・大学全体のGPAの平均値や分布状況を公表している大学 : 31大学( 4%)
 ・学部又は学科のGPAの平均値や分布状況を公表している大学 : 74大学(10%)
 ・教員又は授業科目ごとのGPAの平均値や分布状況を公表している大学 : 34大学( 5%)
 ・教育研究活動等の情報を公表している大学  :767大学(100%)

<今後も注視すべき事項>
大学の質保証の向上を促すためには、これまでに示したような取組を通じて各大学において教学マネジメントの確立を図ることが重要となる。同指針に関連する取組の状況がどのように変動していくのかを引き続き注視していく必要がある。例えば、「学部の壁を越えた充実した教育課程の構築」(36.5%)や「卒業認定・学位授与の方針に基づく組織的な教育への参画・貢献についての教員評価の実施」(16.2%)など、年々上昇傾向にあるものの十分な数値になっていない。各大学が教学マネジメントを確立するために、さらなる取組の充実が必要であり、課題となっている数値を勘案した上で、教学マネジメント指針の浸透に向けた取組みを加速化してまいりたい。
 

(※1)初年次教育
高等学校から大学への円滑な移行を図り、大学での学問的・社会的な諸条件を成功させるべく、主として大学新入生を対象に作られた総合的教育プログラム。高等学校までに習得しておくべき基礎学力の補完を目的とする補習教育とは異なり、新入生に最初に提供されることが強く意識されたもの。

(※2)GPA制度
授業科目ごとの成績評価を、例えば5段階(A、B、C、D、E)で評価し、それぞれに対して、4、3、2、1、0のように数値(グレード・ポイント:GP)を付与し、この単位あたりの平均(グレード・ポイント・アベレージ:GPA)を出して、その一定水準を卒業等の要件とする制度。

(※3)FD
ファカルティ・ディベロップメント(大学の教育の内容及び方法の改善を図るための教員の組織的な研修等)の略。

(※4)学習管理システム(LMS:Learning Management System)
eラーニングの運用を管理するためのシステムのこと。学習者の登録や教材の配布、学習の履歴や成績及び進捗状況の管理、統計分析、学習者との連絡等の機能がある。

(※5)学修ポートフォリオ
学生が、学修過程ならびに各種の学修成果(例えば、学修目標・学修計画表とチェックシート、課題達成のために収集した資料や遂行状況、レポート、成績単位取得表等)を長期にわたって収集したもの。これらを必要に応じて系統的に選択し、学修過程を含めて達成度を評価し、次に取り組むべき課題をみつけてステップアップを図ること等を目的としている。

お問合せ先

高等教育局大学振興課大学改革推進室

電話番号:03-5253-4111(内線:3334)

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(高等教育局大学振興課大学改革推進室)