大学における教育内容等の改革状況について(平成28年度)

文部科学省では、平成28年度の大学における教育内容等の改革状況について調査を行い、この度、その結果を取りまとめましたのでお知らせいたします。

1.調査目的

大学における教育内容・方法の改善等の実施状況について定期的な調査を実施し、国民への情報提供に努め、各大学のより積極的な教育内容等の改善に関する取組を促す。

2.調査方法等

•調査対象:国公私立776大学(短期大学、平成28年度に学生の募集を停止した大学を除く。)
•調査方法:文部科学省ホームページに調査票・回答票等を掲載し、全大学に回答依頼の文書を発出。各大学の記入後に回答票を回収、集計。
•回答率:98%(758大学が回答))

3.調査結果

1 概要

<特に進展が見られた事項の例>

(1)継続的な進展が見られた事項
各大学において継続的な取組がなされ、大きな進展が認められる事項は以下のとおりである。

・学部段階において、初年次教育(※1)で学問や大学教育全般に対する動機付けのためのプログラムを実施している大学数
… 平成24年:526大学(71%)→ 平成28年:579大学(79%)
・学部段階において、シラバスで準備学修に関する具体的な指示を記載している大学数
… 平成24年:410大学(55%)→ 平成28年:620大学(84%)
・学部段階において、学生に対する個別の学修指導にGPA(※2)を活用している大学数
… 平成24年:379大学(51%)→ 平成28年:554大学(75%)
・学部段階において、学生の学修時間や学修行動の把握を行っている大学数
… 平成24年:299大学(40%)→ 平成28年:627大学(85%)
・FD(※3)に関するセンター等の組織を設置する大学数
… 平成24年:577大学(75%)→ 平成28年:663大学(87%)
(2)近年進展が見られた事項
近年各大学によって取り組まれるようになり、全国的にはまだ普及していないが、進展を認められる事項は以下のとおりである。

・学習管理システム(LMS:Learning Management System)(※4)を利用した事前・事後学修の推進に取り組んでいる大学数
… 平成24年:251大学(34%)→ 平成28年:391大学(53%)
・全学的な履修指導または学修支援の取組として、学修ポートフォリオ(※5)を取り入れている大学数
… 平成24年:174大学(23%)→ 平成28年:259大学(34%)
・学部段階において、シラバスに準備学修に必要な学修時間の目安を記載している大学数
… 平成24年: 67大学(9%)→ 平成28年:250大学(34%)

<今後の課題と考えられる事項の例>
1. 大学教育の質の向上のための教学マネジメントの確立について

 大学において、単位制度の趣旨を踏まえた教育の実質化を実現するためには、各大学が、学長のリーダーシップのもとで「三つの方針」に基づく体系的で組織的な大学教育を、学位を与える課程(プログラム)共通の考え方や尺度を踏まえた点検・評価を通じた不断の改善に取り組みつつ実施すること(教学マネジメントの確立)が重要である。
 この点について、教学マネジメントに関して学長を中心とする運営体制を確立している大学は約71%であり、一定の取組は行われているものの、授業科目を関連させた組織的な教育を全ての学部・研究科で実施している大学は約47%であり、全学的な取組を行っている大学は未だ全国的な広がりを見せているとは言えない。
 また、教学マネジメントとして実施している取組として、例えば、
・ 教育改善に関するPDCAサイクルの確立を図っている大学は約50%
・ 学修状況の分析や教育改善を支援する体制の構築を行っている大学は約50%
・ 学外の関係者・関係機関との連携・協働を行っている大学は約33%
にとどまっており、徐々に広がりを見せているものの、未だ十分とは言えない。今後、各大学の教学マネジメントに係る取組の充実や、組織的な教学マネジメント体制の確立が一層求められる。
 また、大学における教学マネジメントが確立され、三つの方針が達成されているかどうかを検証するためには、学修成果を可視化し、学内外から一定の点検・検証が可能なものにする必要がある。
 この点について、課程を通じた学修成果の把握を行っている大学は約51%にとどまっている。各大学において、卒業認定・学位授与の方針等に照らして学修成果を適切に把握し、教育課程や教育方法の改善、就学支援等の様々な方法でより一層活用されることが望まれる。

2. 教職協働の推進について

 大学が行う業務が複雑化・多様化する中、大学運営の一層の改善に向けて、大学総体としての機能を強化し、総合力を発揮するためには、教員・事務職員等の垣根を越えた取組が一層必要であり、各大学において教員と事務職員等とがより一層連携協力して業務に取り組む(教職協働)必要がある。
 この点、教職協働に係る取組が行われている分野については、例えば、就職支援や進路指導が約75%、学生募集活動が約78%、学生相談や生活支援が約79%と、主に学生支援に係る取組が比較的充実して取り組まれている。
 他方で、例えば、教育方針の立案や推進については約53%にとどまっており、教学に関する教職協働は各大学において全学的な教学マネジメントを確立するうえで教員と職員が連携して取り組むことの重要性を踏まえながら、より一層の取組の充実が望まれる。



(※1)初年次教育
高等学校から大学への円滑な移行を図り、大学での学問的・社会的な諸条件を成功させるべく、主として大学新入生を対象に作られた総合的教育プログラム。高等学校までに習得しておくべき基礎学力の補完を目的とする補習教育とは異なり、新入生に最初に提供されることが強く意識されたもの。

(※2)GPA制度
授業科目ごとの成績評価を、例えば5段階(A、B、C、D、E)で評価し、それぞれに対して、4、3、2、1、0のように数値(グレード・ポイント:GP)を付与し、この単位あたりの平均(グレード・ポイント・アベレージ:GPA)を出して、その一定水準を卒業等の要件とする制度。

(※3)FD
ファカルティ・ディベロップメント(大学の教育の内容及び方法の改善を図るための教員の組織的な研修等)の略。

(※4)学習管理システム(LMS:Learning Management System)
eラーニングの運用を管理するためのシステムのこと。学習者の登録や教材の配布、学習の履歴や成績及び進捗状況の管理、統計分析、学習者との連絡等の機能がある。

(※5)学修ポートフォリオ
学生が、学修過程ならびに各種の学修成果(例えば、学修目標・学修計画表とチェックシート、課題達成のために収集した資料や遂行状況、レポート、成績単位取得表等)を長期にわたって収集したもの。これらを必要に応じて系統的に選択し、学修過程を含めて達成度を評価し、次に取り組むべき課題をみつけてステップアップを図ること等を目的としている。


お問合せ先

高等教育局大学振興課大学改革推進室

電話番号:03-5253-4111(内線:3334)

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(高等教育局大学振興課大学改革推進室)