令和8年8月31日
文部科学省
我が国の科学技術・イノベーション政策においては、科学技術・イノベーション基本法に基づき、第7期科学技術・イノベーション基本計画(令和8年3月27日閣議決定)が策定され、今後の政策の方向性を明確に示し、講ずべき施策が総合的に取りまとめられている。
国立研究開発法人科学技術振興機構(以下、「本法人」という)は、以下の業務を総合的に行うことにより、科学技術の振興を図ることを目的としている。
<1> 新技術の創出に資することとなる科学技術に関する基礎研究、基盤的研究開発、新技術の企業化開発等の業務
<2>国立大学法人から寄託された資金の運用業務
<3> 大学に対する研究環境の整備充実等に関する助成の業務
<4>我が国の科学技術情報に関する中枢的機関としての科学技術情報の流通に関する業務
<5>科学技術の振興のための基盤の整備に関する業務
本法人は、国の科学技術・イノベーション政策推進において、中核的役割を担う機関であり、この政策的位置付けや役割自体は変わることがなく、今後も、ファンディングエージェンシー(FA)機能を発揮することにより、大学や国立研究開発法人、企業等と協働した研究開発推進体制を構築する「ネットワーク型研究所」として、我が国の科学技術・イノベーションの一層の強化・発展等に貢献していくことが期待される。
我が国の現状として、研究開発や人材に対する投資の低迷や、研究力の低下、特に人材の観点においては、各国に比して研究者数の伸びが小さい点、博士号取得者数の長期的減少傾向、国際的研究コミュニティの中核となり得ていないこと等の課題がいまだ解消されていない。また、近年は、生成AIや次世代半導体等の先端的技術分野における国際競争の激化、基礎研究から社会実装までの加速度的短縮と科学とビジネスの近接化、科学技術・イノベーション政策の安全保障化、さらに科学技術人材の国際的獲得競争等が激化するなど、科学技術・イノベーションを取り巻く環境は著しく変化している。
こういった情勢に対応するには、研究開発投資や人的資本への投資の抜本的な拡充など、科学技術・イノベーション政策の強力な推進により、新たな技術領域における成果創出が進展し、持続的な経済成長が確保され、更なる科学技術・イノベーションを生み出す好循環を作り出す必要がある。
我が国の科学技術・イノベーション政策推進において、本法人に期待される役割は一層大きくなっており、基金事業等を中心に、近年、全体の事業数及び予算規模は大幅な増加傾向にある。その一方、職員数は限られており、新たな常勤又は有期の職員の確保や、事業運営に関わる職員の一層の能力向上、職員の高年齢化等の課題も明らかになってきている。
このような状況を踏まえ、本法人が期待される役割・機能を発揮し、我が国の科学技術・イノベーションの反転攻勢に貢献できるよう、次期中長期目標の策定を行う必要がある。
本法人の業務及び組織については、中長期目標期間終了時に見込まれる中長期目標期間の業績についての評価結果、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月24日閣議決定)をはじめとする既往の閣議決定等に示された政府方針、さらに、上記の本法人を取り巻く環境を踏まえ、「適正、効果的かつ効率的な業務運営」という独立行政法人の業務運営の理念の下、「研究開発成果の最大化」という国立研究開発法人の第一目的が達成できるよう、以下のとおり見直し、次期中長期目標・中長期計画の策定等を行うこととする。
本法人の業務は、第7期科学技術・イノベーション基本計画等の国の科学技術・イノベーション政策に即応して実施するとともに、機動的に見直していくことが適切であることから、中長期目標期間は5年とする方向で検討する。
次期中長期目標の策定に当たっては、以下に示す事項を踏まえた上で、本法人の果たすべき役割を具体的かつ明確に記載するものとする。また、目標の達成度に係る客観的かつ的確な評価を行う観点から、達成すべき内容や水準等を分野の特性に応じて具体化した指標を設定することとする。
○優れた研究者等を対象とする基礎研究や基盤的研究開発等に対する支援(国の方針等に基づく研究開発支援)の強化
国の方針等に基づき、優れた研究者を対象とする戦略的な基礎・基盤研究への支援を最重視した上で、社会実装・事業化、国際協力・国際頭脳循環を含め科学技術・イノベーションに係る取組を戦略的に推進する。
○大学・研究機関等における研究開発や人材育成、成果の社会実装、組織体制の整備・改革等に対する支援の強化
大学等において、研究開発と科学技術の人材育成を一体的に推進するため、人材育成、研究環境、及び産学連携等の取組を強化するとともに、大学等の組織改革を後押しする取組を推進する。
○科学技術・イノベーションを支える多様なシステム・制度等の整備・支援の強化(AI時代の科学技術・イノベーション政策の在り方含む)
調査・分析、政策提言、情報基盤の整備、研究セキュリティ・研究インテグリティ、科学が関わる社会課題の解決、科学技術コミュニケーション、広報といった、科学技術・イノベーションを支える多様なシステム・制度等を整備し充実させる取組を強化する。
○科学技術に関する研究開発の戦略的な推進
・基礎・基盤的研究開発の戦略的強化・推進を、最重要施策と位置付け、支援を充実・強化する。
・第7期科学技術・イノベーション基本計画をはじめとする国の方針等を踏まえ、国家的・社会的課題への対応に向けた先端科学技術・戦略技術分野に関する研究開発支援を充実・強化する。
○産学官共創及びイノベーション・エコシステムの形成・強化
・アカデミアと企業等との幅広い連携を加速・強化し、大学等の研究成果の社会還元や、科学技術・イノベーションの水準向上や産業競争力の強化を図る。
・大学等における先端的研究と、応用・社会実装・技術移転の好循環を目指し、技術移転、スタートアップ創出、大学の知財マネジメント力の向上、起業人材の育成等に取り組む。
・産学官の多様なステークホルダーが結集した拠点の形成等により、地域・地方大学の研究・産学連携を強化する。
○戦略的な国際科学技術活動の推進・展開
我が国の科学技術の水準の向上と、科学技術を通じた国際的プレゼンスの維持・向上のため、欧米等の科学技術先進国、ASEAN諸国やインド、オーストラリア等との協力拡大を中心とした、優れた研究者の招聘・派遣や組織間の人材交流、国際共同研究などにより、重層的・戦略的な国際協力を推進する。
○大学・研究機関等の機能強化・研究水準の向上
大学の組織としての機能を強化するため、世界水準の研究開発拠点の形成を推進することで、国の研究・教育活動の中心である大学の研究力・人材育成機能を強化する。
○社会で活躍する多様な人材の育成・確保
・国の科学技術・イノベーション推進の中核的基盤は「科学技術人材」であり、大学・研究機関等をはじめ、社会の多様な場で活躍する研究者、技術者、研究開発マネジメント人材等の科学技術人材の育成・確保を推進する。
・将来にわたる優れた科学技術人材の継続的輩出のため、初等中等教育段階から高等教育まで、学校教育段階に応じた科学技術人材の育成を推進する。
・女性研究者や若手研究者、外国人研究者等を含む多様な科学技術人材が一層活躍できる環境整備等を推進する。
○先端研究施設・設備等の基盤整備の促進
全国の研究者が挑戦できる魅力的な研究環境を実現するため、以下を実施する。
・研究開発の基盤を刷新し、最先端の研究施設・設備等を整備・高度化
・研究資源を効率的に配分し、研究基盤のエコシステム形成に向け、技術職員や研究開発マネジメント人材等の高度専門人材も含む「コアファシリティ」の戦略的な整備支援や、大学・研究機関等が有する研究設備・機器等の産学官による利活用・共用の推進
・良質な研究データや研究情報等の収集・整備・利活用等を含め、幅広い研究基盤を整備・強化
○科学技術と社会に関わる研究基盤の強化
・AIの急速な進展等の社会の状況を踏まえつつ、トップ研究者との継続的な対話及び国内外の科学技術動向等を収集・分析を通じて、最先端の動向の把握や意見集約を敏速に行い、政府や地方自治体、関係機関の政策立案や、大学、研究開発法人、FA等の活動に資するべく、エビデンスに基づく有効な提案を行う。
・地球規模課題の解決や、科学技術・イノベーションによる新たな価値創造に向けて、人文・社会科学も含めた多様な分野の研究者やステークホルダーが参画し、「総合知」による分野・領域横断的な研究開発・社会実装等を推進する。
○科学技術振興等に関わる制度・枠組みの整備・改革
・科学技術の急速な進展や研究活動の国際化・オープン化に対応し、我が国の国際的に信頼性のある研究環境の構築に貢献するため、研究セキュリティ・研究インテグリティ及び研究倫理に係る取組を推進する。
・新興科学技術の出現等、科学技術と社会との関わりが拡大・変容し、様々な問題が顕在化していることも背景に、国内外の大学・研究機関や研究者自身が遵守すべき制度・規範・指針等を整備し、徹底を図る。
○社会共創に向けた取組の推進・発展
国が取り組むべき課題や社会的ニーズ等に係る国民の期待や要望、関心等を把握し、政策の企画・立案等に適切に反映するため、以下を実施する。
・科学技術や科学技術政策の重要性・必要性を国民に発信し、説明責任を果たすことで、国民の理解・信頼・支持・共感を得るための取組を強化。これに向けて、政府や大学・研究機関、研究者と国民との双方向での対話に基づく科学技術コミュニケーションを促進する。
・多様なターゲット層やコミュニケーション手法を踏まえ、あらゆる機会を捉えた、多層的な科学技術コミュニケーションや戦略的な広報活動、科学技術コミュニケーションに関わる人材の育成、活躍機会の拡大を、幅広いステークホルダーの参画を得ながら推進する。
○効果的な研修の実施や、大学・国立研究開発法人・ファンディングエージェンシー・関係府省・海外機関等との人材交流等により、機構職員の能力向上・キャリア形成に資する効果的な人材育成を推進する。
○昨今、事業数や基金を含む予算規模が拡大する一方で、職員数が限られている現状に鑑み、上流から下流まで一貫した効率的な基幹業務プロセスの確立が求められる。本法人全体の業務を俯瞰した上で、縦割りの打破による部門横断的な連携の強化や、大小様々な業務段階に応じて、AI活用・DX推進も含めた抜本的な業務改善・その普及・展開、部署の整理・集約を推進する。
○我が国全体として、科学技術・イノベーションを推進する観点から、研究開発法人やファンディングエージェンシー間で、取組、好事例やノウハウの共有・横展開等の一層の連携・協力・対話を強化する。
○国や関係機関等との情報共有・連絡体制等を構築することを含め、研究セキュリティ・研究インテグリティ強化に向けた取組を着実に推進し、実効性を高める。
以上
科学技術・学術政策局 人材政策課