独立行政法人大学入試センターの見直し内容(令和7年8月29日)

令和7年8月29日
文部科学省

1.政策上の要請及び現状の課題

 独立行政法人大学入試センター(以下「本法人」という。)は、大学に入学を志願する者に対し大学が共同して実施することとする試験に関する業務等を行うことにより、大学の入学者の選抜の改善を図り、もって大学及び高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。以下同じ。)における教育の振興に資することを目的としている。
 我が国においては少子化が急速に進み、世界では、緊張化する国際情勢、世界経済の不安定化、AIの進展による効率化とリスク等、国内外の諸情勢は急激に変化している。このような諸課題に直面する中、高等教育機関においては、社会・生活基盤を支える人材、地域の成長・発展をけん引する人材、世界最先端の分野やグローバルな競争環境で活躍する人材など厚みのある多様な人材を育成していくことが求められている。
 今後、一人一人の学生がより一層、必要な能力を高めていくことができるようにするためには、各大学がそれぞれの教育理念に基づき、生徒が高等学校段階までに身に付けた力を、大学において発展・向上させ、社会へ送り出すという大学教育の一貫したプロセスを前提として取り組むことが求められている。その中で、大学入学者選抜においては、アドミッション・ポリシーに基づき、学力の三要素(①知識・技能、②思考力・判断力・表現力等、③主体性を持ち、多様な人々と協働しつつ学習する態度)を多面的・総合的に評価・判定し、その後の大学教育につなげていくことが必要である。
 これらを踏まえて、本法人においては、大学入学共通テストにおける問題作成、採点その他一括して処理することが適当な業務を実施するほか、大学入学者選抜の方法の改善に関する調査研究の推進、進路選択に資するための情報提供など、大学入学者選抜におけるナショナルセンターとしての役割を果たす必要がある。

 このような現状を踏まえ、本法人は以下に示すような課題に対応していくことが必要である。


 1 引き続き大学入学共通テストの良質な問題作成に努めるとともに、受験者にとって公平かつ公正に、また安心かつ安全に大学入学共通テストを実施することが必要である。
 
 2 大学入試のナショナルセンターとして、時代の要請や国際動向を的確にとらえながら、大学入学者選抜の改善に資する先導的基盤研究や政策的・社会的課題に即応した実践的研究の実施と、その成果の情報発信が期待されている。
 
 3 18歳人口の減少等による共通テスト志願者数の減少に伴う収入の減少や、物価高騰や人件費上昇等に伴うコスト(支出)の増加が見込まれていることから、安定的な財政基盤確保に向けた収支改善方策とともに、持続可能な大学入学共通テストの運営について検討する必要がある。

 

2.講ずるべき措置

(1)中期目標期間

 本法人は、我が国の大学及び高等学校における教育の振興に資することを目的にしており、長期的視点に立って行われる必要があることから、中期目標期間を5年とする。

(2)中期目標の方向性

 現中期目標期間に行ってきた事務・事業を継続して実施することを基本とし、以下の内容については、次期中期目標において重要事項として位置づける。

(2)-1 大学入学共通テストの円滑な実施

  • 大学入学共通テストについては、知識・技能のみならず、思考力・判断力・表現力等も重視して評価を行うものとして、問題作成、試験の実施、答案の採点・成績提供及びその他一括して処理することが適当な業務を滞りなく実施する。その際、業務内容についての社会的な説明責任を果たすとともに、引き続き機密保持の徹底及び必要な情報セキュリティ対策の充実を図る。
  • また、少子化が進み受験生の人数も大きく減少することが見込まれる中、現在の実施体制等に関して各地域においても様々な論点が生じてきていることを踏まえ、今後の実施運営の方法の在り方について検討を進める。
  • さらに、本法人の設置目的を踏まえ、大学入学共通テストを通じた高等学校教育等への影響についても分析を実施する。

(2)-2 大学の入学者選抜方法の改善に関する調査研究

  • 大学入学者選抜及び大学入学共通テストの改善に向けて、国内外の動向を踏まえて先導的・実践的な調査研究を推進する。
  • 持続可能な安定的試験実施に向け、CBTの導入など新技術を活用したテストに関する調査研究を実施する。
  • 研究成果については、外部評価等によりその検証を行いつつ、各大学における専門人材の育成も含め、大学入学者選抜の改善に資するよう、積極的な情報発信に取り組む。また、大学入学者選抜に関する研究の活性化に向けて、大学入学共通テスト等のデータの研究における利活用の促進のための検討を進める。

(2)-3 業務運営及び財務内容等に関する事項

  • 18歳人口の減少に伴う受験者数減等による収入減や物価上昇等による支出増が予測されることから、引き続き業務の効率化・合理化に努めるとともに、中長期的な収支計画に基づき、持続的・安定的な財政基盤の確保に向けて、収支改善方策等について検討を行う。

4 災害や感染症等のリスクヘの対応

  • 予見が困難な不測の事態にも適切に対応できるよう、大学入学共通テストの運営において十分な対策を講じる。

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高等教育局大学振興課大学入試室