独立行政法人日本スポーツ振興センター見直し内容

 令和4年8月26日
文部科学省

1.政策上の要請及び現状の課題

 文部科学省では、スポーツを通じて、国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営むことができるスポーツ立国の実現を目指しており、スポーツに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、平成23年に施行されたスポーツ基本法に基づきスポーツ基本計画を策定し、スポーツ振興の取組を着実に実施してきたところである。
 令和4年度から8年度までの5年間を対象として策定した「第3期スポーツ基本計画」(令和4年3月文部科学大臣決定。以下「基本計画」という。)に基づき、スポーツ振興に関する具体的な施策に取り組むとともに、学校管理下における児童生徒等の死亡事故や障害・重度の負傷を伴う事故を限りなく減少させるため、学校保健安全法及び同法に基づく学校安全の推進に関する計画に基づき、学校安全に係る施策に取り組む必要がある。
 独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「本法人」という。)は、スポーツの振興や児童生徒等の健康の保持増進を図ることを目的とする法人であり、我が国のスポーツ振興の中核的な役割を担う機関として、スポーツ基本法、基本計画等に基づき、国、地方公共団体、スポーツ関係団体等と連携・協働しながら、我が国のスポーツの発展を支えるとともに、災害共済給付の実施及び当該事務から得られた情報を活かし児童生徒等の事故予防に貢献することが期待されている。
 我が国においては、令和2年に入り、新型コロナウイルス感染症の拡大が急速に進み、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京大会」という。)は開催が1年延期され、更にほとんどの競技が無観客で実施されるという、過去に例のない形で開催された。東京大会は、国籍、性別、年齢、障害の有無等にかかわらず多様な人が同じ場に集い、それぞれの能力を発揮して競い合い、互いを認め合う場となった。こうした姿は、「する」「みる」「ささえる」を通じて東京大会に関わった世界中の人々に大きな感動を与え、相互理解を一段深めるとともに、共生社会の価値を実感させた。東京大会を経た後の、我が国におけるスポーツの在り方については、東京大会開催を通じて得られた「スポーツ・レガシー」を、どのように継承・発展していくのかにかかっている。本法人においても、東京大会の有形・無形のスポーツ・レガシーの継承・ 発展に向けて関係団体と連携・協力しながら取り組むことが求められている。また、すべての人がスポーツにアクセスできる社会を目指すとともに、「する」「みる」「ささえる」スポーツの価値を享受できるよう、スポーツを楽しめる環境の構築を通じ、スポーツを軸とした共生社会を実現することが求められる。
 本法人の業務及び組織については、中期目標期間終了時に見込まれる中期目標期間の業績についての評価結果、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月24日閣議決定)をはじめとする既往の閣議決定等に示された政府方針、さらに、上記の本法人を取り巻く環境を踏まえ、日本のスポーツ界における中核的な拠点としての政策実施機能を的確に発揮しつつ効果的かつ効率的な業務運営を確保するため、以下のとおり見直し、次期中期目標・中期計画の策定等を行うこととする。

2.講ずるべき措置

 上述した法人に求められる政策上の要請及び現状の課題を踏まえ、以下の措置を講ずる。

(1)中期目標期間

 本法人の中期目標期間は、基本計画の取組を着実に実施すること及びその評価を行う必要があることから、5年とする。

(2)中期目標の方向性

 次期中期目標の策定に当たっては、以下に示す事項を踏まえた上で、本法人の果たすべき役割を具体的かつ明確に記載するものとする。また、目標の達成度に係る客観的かつ的確な評価を行う観点から、達成すべき内容や水準等を具体的に示した指標を設定することとする。

〇基本計画に基づいた事務・事業の実施
 基本計画は、令和4年度から8年度までの今後の5年間のスポーツ政策の重要な指針となるものであり、国、地方自治体や具体的施策の担い手であるスポーツ関係団体とともに本法人の役割について幅広く記載している。そのため、本法人の事務・事業については、本基本計画に規定されていることを中心に適切に実施していくこととする。
 
〇スポーツ施設の民間事業化の推進や適切な管理運営
 国立競技場等のスポーツ施設の民間事業化を進め、当該施設をスポーツ大会への活用に加え、地域におけるスポーツの拠点・まちづくりの中核的な存在の一つとなり、東京大会のレガシーとして、長く、国民の皆様に親しまれる場となるよう、積極的な利活用の在り方等について検討を進めるとともに活用の促進を図ることとする。
 また、本法人が所有する他のスポーツ施設と同様に施設運営に係る環境負荷を減らす取組を推進するとともに、スポーツ事業を主とした利用率の向上や維持管理費の抑制を図ることとする。
 
〇スポーツ振興くじの売上拡大及び効果的な助成の実施
 スポーツ振興くじについては、令和3年度の売上が過去最高を記録するなど順調に売上を拡大させているところであるが、より一層のスポーツ振興財源を確保するため、令和2年12月に改正された「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」(平成10年法律第63号)の趣旨を踏まえ、スポーツ振興投票の対象国内リーグの発展に十分配慮するとともに、魅力的な商品開発や業務運営の更なる適正化、効果的な広告宣伝等の販売方法の工夫をすることにより、更なる売上拡大を図ることとする。
 また、スポーツ振興くじ助成については、前述の法改正により収益の使途が拡大されたことを踏まえ、地域スポーツの振興に一層役立つよう、助成対象団体のニーズ等を把握し、助成メニューの不断の見直しを行うこととする。
 加えて、スポーツ振興助成制度の主旨が国民に理解され、広く社会に浸透するよう引き続き取り組むこととする。
 
〇国際競技力の向上
 基本計画や「持続可能な国際競技力向上プラン」(令和3年12月スポーツ庁長官決定)を踏まえ、我が国の国際競技力向上の中核拠点であるハイパフォーマンススポーツセンターの機能強化を図りつつ、JOC、JPC、各競技団体、地域のスポーツ医・科学センター及び大学等と連携し、オリンピック・パラリンピック競技の一体の強化を前提としながら、地域とも連携を図りながら国際競技力の向上に取り組んでいくこととする。
 
〇社会情勢に対応した災害共済給付業務及び学校安全支援業務
 災害共済給付業務については、引き続き、加入率の向上に努めるとともに、受給者の利便性の向上、業務運営の効率化等の改善に取り組み、社会情勢に対応した給付を行うこととする。
 また、災害共済給付業務から得られた学校事故情報を分析及び調査・研究することにより、学校における事故防止を促進するとともに、学校安全の情報が学校現場の教職員まで行き渡るように工夫するほか、新たな関係団体との連携・協力関係を構築することとする。
 
〇スポーツ・インテグリティ
 高度化するドーピング等に対応するため、インテリジェンス機能の向上や国内外の関係機関等との連携強化を図るとともに、国際的なドーピング防止活動に関しWADAやUNESCO等における国際的なドーピング防止体制の不断の改善のための支援を行うこととする。
 スポーツ団体を対象としたガバナンス・コンプライアンスに関するモニタリング及び助言の実施や、スポーツ・インテグリティに関する研修会の開催等を通じ、引き続き、スポーツ団体の適正なガバナンス確保に向けた取組を推進することとする。
 
〇国内外の情報の分析・提供等
 多様な主体におけるスポーツの機会創出に資する情報についても収集・分析する際、スポーツによる健康増進やスポーツを通じた共生社会の実現の観点にも留意するとともに、収集・分析した情報が広くスポーツの振興に活かせるよう、効果的な情報発信や施策への反映の方向性についても検討していくこととする。
 
〇管理運営の効率化
①業務運営の効率化
 理事長のリーダーシップの下、業務成果の最大化を図るため、組織運営について不断の見直しを行うとともに、適切な人員配置や関係機関との連携や外部委託を行うことにより、迅速かつ効果的、効率的な組織運営を行う体制を構築する。
 また、業務継続や効率化の観点から、引き続き、業務のデジタル化・オンライン化に取り組む。その際、「情報システムの整備及び管理の基本的な方針」(令和3年12月24日デジタル大臣決定。)にのっとり、情報システムの適切な整備及び管理を行う。
 
②財務内容の改善
 本法人が保有するスポーツ施設の稼働率の向上を図るとともに、定期的に利用料金を検証するなど、自己収入拡大を図るために必要な措置を講じる。また、他の優良事例を参考としながら、新たな寄附金の獲得の方策を行う。
 
③内部統制の推進
 引き続き、理事長のリーダーシップの下、役職員の意識改革、監査体制の強化など内部統制の強化の取組を推進する。
 
④情報セキュリティ対策の推進
 本法人は多岐にわたる業務により蓄積された情報を有するため、これまで以上に情報セキュリティ対策が重要となっている。引き続き、「サイバーセキュリティ基本法」(平成26年法律第104号)に基づき策定された「政府機関等のサイバーセキュリティ対策のための統一基準群」(令和3年7月7日サイバーセキュリティ戦略本部決定。)に従って、情報セキュリティ対策を推進する。また、外部機関が実施する監査結果等を踏まえ、リスクを評価し、必要な情報セキュリティ対策を講じるものとする。

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