独立行政法人日本学術振興会見直し内容

 令和4年8月26日
文部科学省

1.政策上の要請及び現状の課題

(1)中期目標期間

 独立行政法人日本学術振興会(以下「本法人」という)は、学術研究の助成、研究者の養成のための資金の支給、学術に関する国際交流の促進、学術の応用に関する研究等を行うことにより、学術の振興を図ることを目的とする我が国唯一の資金配分機関である。
 本法人が担う「学術研究」は、「科学技術・イノベーション基本計画(令和3年3月26日 閣議決定)」において、新しい現象の発見や解明のみならず、独創的な新技術の創出等をもたらす「知」を創出するものと位置付けられており、ますます重要性が高まっている。また、本法人が実施する業務は、文部科学省の政策目標の達成に向けて不可欠なものであることから、本法人には、引き続き我が国の学術振興の中核機関として、研究者の活動を安定的・継続的に支援する役割が求められる。

(2)現状の課題

 我が国の研究力については、諸外国と比較して、論文の質・量ともに相対的・長期的に地位が低下するとともに、若手をはじめとした研究者の置かれる環境の改善が大きな課題となっている。また、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、これまで当たり前に続けられてきた国際的活動を変容させるなど研究者や学術の中心を担う大学等にも大きな影響を及ぼしており、その変化に適切に対応することも必要である。
 本法人においては、全ての研究分野における第一線級の研究者や研究機関とのネットワークを有していること、膨大な研究課題情報の蓄積など我が国の研究動向を分析できる貴重なリソースを有していること、世界各国の学術振興機関から高い信頼を確保していること、膨大な申請を公平・公正に審査・評価するノウハウを有していること、コロナ禍においても研究現場に寄り添った対応を柔軟かつ遅滞なく行っており、研究者コミュニティから高い信頼を得ていることなどの強みを有する一方で、積極的な企画提案や法人の活動・成果に係る情報発信といった面において、それらの強みが十分に生かし切れていないという課題を有する。また、ニーズの高まりに伴って増大する事務・事業を適切に遂行するために、業務の更なる効率化と戦略的な人材育成・確保に取り組むことも必要である。
 本法人は、上述のような学術研究を取り巻く課題を踏まえたうえで、自らの強みを生かし、課題を克服するための取組を進めることが求められる。

 

2.講ずるべき措置

(1)中期目標期間

 本法人が実施する業務は、研究助成や研究者養成など長期的な視点に立って推進すべきものが多いことから、中期目標期間を5年とする。

(2)中期目標の方向性

 本法人には、学術の振興を図ることを目的とした唯一の資金配分機関として、国の科学技術・イノベーション政策等における役割を認識しつつ、学術における不易流行を見定め、自らも変革し、事業を展開する役割を期待する。また、その変革に当たっては、学術の中心を担う大学等との密接な連携協力の下、社会構造や研究環境の変化に対応するため、大学等の変革促進をも見据え、戦略的に事業の見直し・改善に取り組むとともに、新しい取組にも果敢に挑戦することが望まれる。
 こうした役割の実現に向けて、次期中期目標においては、今中期目標期間に行ってきた事務・事業を継続して実施することを基本とし、以下の内容を重点事項として位置付ける。
 
○企画提案機能の強化
・膨大な研究課題情報等のリソースを保有する本法人の強みを生かし、これらの分析から得られる学術動向や研究者を取り巻く環境の変化を捉え、戦略的に事業の見直し・改善等を行うとともに、新たな企画にも積極的に取り組む。また、本法人が実施する事業の視点だけではなく、我が国全体の学術振興に資する提言も行う。
 
○若手研究者の安定的・効果的な育成に資する環境整備の促進
・関連する政策動向も踏まえて、トップ研究者の登竜門である特別研究員制度の一層の充実を図る等、優れた若手研究者を安定的・効果的に育成するための環境整備を促進する。
 
○国際関係事業の戦略的な推進
・関連する政策動向も踏まえながら、本法人が取り組む事業全体を俯瞰し、事業の見直し・再構築も視野に入れた国際関係事業の今後の在り方を示す総合指針を策定し、これに基づき戦略的な事業運営を行う。
 
○広報機能の強化
・情報発信すべきターゲットや重点的・優先的に取り組む課題等を明確化した広報戦略を策定し、これに基づき本法人の広報機能の強化を図る。
 
○法人運営・マネジメントの更なる改善
・科学研究費助成事業等の審査プロセスのデジタル・トランスフォーメーション(DX)等を推進するなど業務の効率化を推進するとともに、戦略的な人材育成・確保等によって体制強化を行うことで、機動的かつ戦略的な法人運営を可能とする組織整備を行う。

お問合せ先

独立行政法人日本学術振興会見直し内容について

研究振興局学術研究推進課