独立行政法人国立青少年教育振興機構の見直し内容

令和2年9月17 日
文部科学省

1.政策上の要請及び現状の課題

 独立行政法人国立青少年教育振興機構(以下「本法人」という。)は、我が国における青少年教育のナショナルセンターとして、青少年をめぐる様々な課題へ対応するため、青少年に対し教育的な観点から、より総合的・体系的な一貫性のある体験活動等の機会や場を提供するとともに、青少年教育指導者の養成及び資質向上、青少年教育に関する調査及び研究、関係機関・団体等との連携促進、青少年教育団体が行う活動に対する助成を行い、我が国の青少年教育の振興及び青少年の健全育成を図ることを目指す法人である。

 第3期中期目標期間においては、第3期教育振興基本計画(平成30 年6月15 日閣議決定、対象期間:平成30 年度~令和4年度)において「集団宿泊活動やボランティア活動、自然体験活動、地域の行事への参加などの豊かな体験を充実することとされた学習指導要領も踏まえ、学校や青少年教育施設等における自然体験活動や集団宿泊体験活動、国際交流体験など、様々な体験活動の充実に取り組む。」こととされていることに基づき、体験活動の推進等を行ってきた。

 また、子供・若者育成支援推進大綱(平成28 年2月9日子ども・若者育成支援推進本部決定)においては、自己形成のための支援や子供の貧困問題への対応等として体験活動の推進等が基本的な施策として位置付けられていること、国土強靭化基本計画(平成30 年12月14 日閣議決定)においては、災害時に、自らの命は自らが守るという意識を持ち、自らの判断で避難行動をとれるよう、地域の自治組織等を通じ、継続的に防災訓練や防災教育等を推進するとともに、地域社会等で防災に係る指導者・リーダー等の人材育成に取り組むことが求められており、国立青少年教育施設のある地域社会からの要請に沿って当該施設が大きな役割を果たしつつあることなどからわかるように、青少年をめぐる多様な課題に係る本法人の果たすべき役割は大きくなっている。

 AI 技術が高度に発達するSociety5.0 時代にあっては、折しも新型コロナウイルス感染症への対応を契機に、オンラインによる学習やWEB 会議におけるコミュニケーションの場など、新しい技術を活用した多様な主体との連携・協働による学びがより一層進展していく。
 このような流れの中で体験活動についても新しい在り方を模索していく必要がある一方、青少年が自然の中で五感を目一杯に働かせながら仲間と一緒に困難を乗り越えていったり、地域社会で大人たちとふれあい交流したりといった、画面越しではなく直接のコミュニケーションによる活動は、このような時代だからこそ重要性が一層高まっていくと考えられる。

 本法人が有する国立青少年教育施設では、宿泊利用と日帰り利用を合わせた総利用者数が毎年約500 万人を推移しているものの、我が国の小・中・高等学校の児童生徒数は年々減少傾向にあること等から、宿泊利用者数が減少傾向にある。そのため、学校や関係機関・団体との連携をさらに強化することにより、青少年をめぐる多様な課題やニーズに応じた体験活動の推進や、体験活動の重要性や効果についてのより一層の普及啓発を図るための更なる方策が必要である。

 このような現状認識を踏まえ、本法人は以下に示す課題に対応していくことにより、様々な社会的要請に応え、我が国の青少年教育の振興及び青少年の健全育成に資する施策を実施することが求められる。


【課題】
  • より多くの青少年に国立青少年教育施設を利用してもらうとともに、青少年をめぐる多様な課題に迅速に対処できるよう、各国立青少年教育施設の特色を活かした独自の事業やプログラムの追求、宿泊利用者数の現状分析、関係機関・団体との連携強化によるニーズの把握、観光業など新たな業種との連携、広報の充実等に努めること。その際、ICT の活用などこれからの時代に即した方策を検討すること。
  • とりわけ学校利用が減少傾向にあることを踏まえ、学校側のニーズの把握や、施設の利用促進の方法を検討しながら、学校の教科等の学習に関連付けた体験活動の充実を図るなど、さらなる学校教育との連携強化に取り組むこと。
  • 青少年教育のナショナルセンターとして、引き続き、現代の青少年を取り巻く課題や国の施策を踏まえつつ、体験活動の普及・啓発に際して説得力のあるアウトカムの把握など、今後の青少年教育の振興に資する調査研究を実施すること。また、調査研究による成果やデータを活用し、事業の企画・立案や体験活動プログラムの開発に反映すること。
  • 近年、大規模な災害が頻発する中、我が国において国土強靭化の取組は喫緊の課題となっており、災害時には被災自治体だけでは対応しきれない状況もあるため、国立青少年教育施設において、自治体の境界を越えた「広域防災補完拠点」として、防災・減災教育の推進や、災害対応拠点として所要の施設整備を計画的に進めること。また、防災拠点は情報拠点でもあることに留意し、防災のための人材養成に寄与すること。
  • 新たな自己収入財源の確保などの増収策を検討すること。
  • 理事長のリーダーシップの下で内部統制を推進する体制を整備・運用し、業務や組織の効果的かつ効率的な業務運営に努めること。
  • サイバーセキュリティ基本法(平成26 年法律第104 号)に基づき策定された「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群」(平成28 年8 月31 日サイバーセキュリティ戦略本部決定。平成30 年7 月25 日改定)に従って、情報セキュリティ対策を講じること。
  • さらに、「サイバーセキュリティ対策を強化するための監査に係る基本方針」(平成27 年5 月25 日サイバーセキュリティ戦略本部決定。平成28 年10 月12 日改定)に基づき、独立行政法人国立青少年教育振興機構の業務上、マイナンバーや個人情報を取り扱うことから、国の方針に基づいて体制を整備するとともに、情報管理の徹底に加え、サイバー攻撃等への対応の強化など、セキュリティ対策に万全を期すこと。
 

2.講ずるべき措置

 上記で述べた本法人に求められる政策上の要請及び現状の課題を踏まえ、以下の措置を講ずる。

(1)中期目標期間

 中期目標の期間は、令和3年(2021 年)4月1日から令和8年(2026 年)3月31 日までの5年とする。

(2)中期目標の方向性

 前述のように体験活動の重要性はより一層高まっているとともに、多様化、複雑化する青少年をめぐる課題の解決のために、地域社会から本法人とりわけ各国立青少年教育施設に寄せられる期待は大きなものとなっていることを踏まえ、第3期中期目標期間に行ってきた事業・業務のうち引き続き必要なものは継続して実施することとするほか、全国28 の国立青少年教育施設の特色を活かした事業展開を行うため、そのさらなる個性化・高度化・拠点化を図ったうえで、以下について重点的に取り組む。

○ 国の政策実現に向けた取組

  • 国土強靭化計画への貢献、防災・減災教育の推進
  • SDGs 達成への貢献、ESD の推進
  • 新学習指導要領への対応
  • 青少年教育の振興に資する調査研究の充実

○ 家庭・地域の教育力の向上、体験活動の普及

  • 「体験の風をおこそう」運動の推進
  • 「早寝早起き朝ごはん」国民運動の推進
  • 青少年教育施設・団体、民間企業等とのネットワーク強化
  • 広報力の強化

○ 機構と地域の連携・協働の推進による地域貢献

  • 地域の実情に合わせた教育事業等の実施
  • 地域の教育団体や民間企業等と協働した施設の管理運営の実施

○ 研修支援(特に宿泊利用)の充実

  • 学校との連携・協働による体験活動プログラムの充実と検証
  • 専門的スキルを有する職員や外部研修指導員等の養成、指導・支援の更なる充実

○  業務運営及び財務内容等に関する事項

  ・ 内部統制・ガバナンス等の充実
     理事長のリーダーシップの下で内部統制を推進する体制を整備・運用し、今後想定される制度改正等にも的確に対応する      
  ための業務改善や柔軟な組織体制の見直しとこれに必要とされる職場環境の整備等を推進し、適切な業務運営に努める。

     ・ 業務の効率化・運営体制の整備
     業務の複雑化・高度化等に対応するため、業務の更なる効率化、合理化に努める。また、新たな自己収入財源の確保な
  どの増収策を検討する。

   ・情報セキュリティ対策の推進
   「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群」に基づき、本法人が定めた情報セキュリティ対策の基本方針及
   び対策基準等に従って、情報セキュリティ対策を推進する。さらに、サイバーセキュリティ戦略本部が実施する監査の結果等
   を踏まえ、リスクを評価し、必要となる情報セキュリティ対策を講じる。

お問合せ先

総合教育政策局地域学習推進課青少年教育室