国立研究開発法人科学技術振興機構見直し内容

令和3年8月27日
文部科学省

1. 政策上の要請及び現状の課題

(1)政策上の要請

 我が国の科学技術・イノベーション政策の推進に当たっては、科学技術・イノベーション基本法に基づき、第6期科学技術・イノベーション基本計画(令和3年3月26日閣議決定)が策定されており、当該計画において我が国が目指す社会(Society5.0)として「持続可能性と強靱性を備え、国民の安全と安心を確保するとともに、一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会」が示されている。
 国立研究開発法人科学技術振興機構(以下「本法人」という。)は、科学技術の振興を図ることを目的とする国立研究開発法人であり、科学技術基本計画の中核的な役割を担う機関として、これまでも自らの研究開発戦略立案機能を活用しつつ、ファンディングエージェンシー機能を発揮することにより、国立研究開発法人や大学、企業等と協同した研究開発推進体制を構築するネットワーク型研究所として、我が国研究開発全体の成果の最大化に貢献してきた。
 このような役割自体は今後も変わるところはなく、第6期科学技術・イノベーション基本計画においてもその実現を担う中核的機関として、昨今の国内外における情勢変化や新型コロナウイルス感染症の拡大等を踏まえつつ、当該計画に示された「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靱な社会への変革」、「知のフロンティアを開拓し価値創造の源泉となる研究力の強化」、「一人ひとりの多様な幸せ(well-being)と課題への挑戦を実現する教育・人材育成」に沿って、社会変革に資する研究開発推進、新たな価値創造の源泉となる研究開発の推進、多様な人材の育成などの取組を進めるとともに、これらにまたがる横断的取組として研究開発戦略の立案及び社会との共創による「総合知」の創出・活用を、これらを支える基盤的取組として情報基盤整備などをはじめとする科学技術イノベーション基盤の強化を図ることが求められる。
 加えて、大学ファンド創設に伴い、その運用と運用益による大学の研究環境整備及び若手研究者支援に関する助成業務が本法人に追加されており、本法人に期待される役割は一層その重さを増している。

(2)現状の課題

 本法人は、ネットワーク型研究所としてファンディングエージェンシー機能を発揮することにより、国立研究開発法人や大学、企業等と協同し、それぞれに最適な研究開発推進体制を構築することができる点に強みを持つ一方、職員の高年齢化が進んでおり、現状では定年制職員の最多層が40歳代後半から50歳代前半となっている。豊富な経験が業務に活かせるメリットもあるが、このまま高年齢化が進めば、情勢の変化に柔軟に対応し、斬新な発想で業務を刷新する機能が弱体化する恐れがあるとともに、最多層が定年を迎える際には急激な人員不足に陥る可能性がある。
 加えて、現行の第4期中長期目標期間において、革新的研究開発推進プログラムが終了したものの、ムーンショット型研究開発事業、創発的研究支援事業、次世代研究者挑戦的研究プログラム、大学ファンド等の様々な事業が創設された結果、本法人の事業数は増加している。一方で、職員数は約1割減少しており、これは革新的研究開発推進プログラムの終了に伴う退職者が出ているものの、社会的に有効求人倍率が上がっていることにより職員採用が芳しくないことが原因と見込まれる。さらに、大学ファンドの立ち上げに伴い今後も必要な人的リソースの増加が見込まれている。
 また、増加傾向にある事業・プログラムを限られた職員数で運営するため、プロパー職員の中心業務は制度全体の運用になり、研究現場でのOJTに割けるエフォートが低下、職員の能力向上の機会が減少している。

2.講ずるべき措置

(1) 中長期目標期間

 本法人の業務は、第6期科学技術・イノベーション基本計画等の国の科学技術政策に即応して実施するとともに、機動的に見直していくことが適切であることから、中長期目標期間は5年とする。

(2) 中長期目標の方向性

 次期中長期目標の策定に当たっては、以下に示す事項を踏まえた上で、本法人の果たすべき役割を記載するものとする。また、目標の達成度に係る客観的かつ的確な評価を行う観点から、達成すべき内容や水準等を分野の特性に応じて具体化した指標を設定することとする。

○重点的研究開発課題

 国立研究開発法人に求められる研究開発成果の最大化に向けて、第6期科学技術・イノベーション基本計画等に定められた施策を着実に実行する。特に、以下の研究開発課題に重点的に取り組む。

  • 国内外の科学技術イノベーションに関する動向調査・分析により我が国全体の研究開発戦略や政策立案に貢献するとともに、社会との共創に向けた取組により「総合知」を創出し、研究開発による新たな価値の創造や社会変革を先導する。
  • 科学技術の活用による社会課題の解決と新たな価値の創出に向けた研究開発の推進により、未来の産業構造と社会の変革を加速させる。
  • ネットワーク型研究所として研究開発マネジメントを推進するとともに、研究者が研究に専念できる環境整備等を行うことにより、新たな価値創造の源泉となる世界トップレベルの科学技術を牽引する研究開発を推進する。
  • 将来の新たな価値創造に資する人材の育成・確保に向けた取組を行うとともに、国際共同研究や交流の促進やイノベーション・エコシステムを支える科学技術情報基盤の整備により、多様な知を活用した研究開発成果の最大化に貢献する。
  • 大学ファンドについて、調達した巨額の資金を適正に運用・監視するとともに、その運用益により、大学に対し、国際的に卓越した科学技術に関する研究環境の整備並びに優秀な若年の研究者の育成及び活用の推進に資する活動に関する助成を行う。

○外部機関との連携の強化

 第6期科学技術・イノベーション基本計画においては、競争的研究費改革として、切れ目ない支援により知の創出と活用を最大化することが求められており、本法人は研究機関、企業、大学等との人事交流のみならず、他のファンディングエージェンシーとの人事交流も含めた連携の深化に取り組む。

○人材育成機能の強化

 優秀な人的リソース確保のため、若手職員の採用・中途採用の強化をはじめ、定年延長の検討や再雇用等、年齢・性別を問わず多様な職員の活用を一層進めるとともに、研究情報や事業推進上の情報については、DX化を進めることにより業務の効率化を図る。さらに、他のファンディングエージェンシーとの人事交流も含めた連携の深化や研修の機会を提供することにより、職員の資質・能力向上を図るとともにその能力を発揮できる環境の整備に取り組む。
 また、職員個々人の経験と見識のみに頼る方法では全体を俯瞰した的確な判断は困難になりつつあるため、データを解析・解釈して将来を展望した能動的な活用を行う職員の資質・能力の向上を組織的に行う必要がある。

○運営の効率化及び組織の見直し

 国立研究開発法人としての目的・役割を果たすため、事業間の連携の強化や業務・組織改革を行うなど、理事長のリーダーシップの下で一体的な業務運営を行う体制を構築するとともに、事業の評価を行い、PDCAサイクルを循環させる。
 また、大学ファンドの立ち上げにあたり、これを新たな科学技術・イノベーション推進のためのツールとして確立するべく、運用体制及び人材の確保や制度の整備に取り組む必要がある。
 一方で、限られた人的資源の中、昨今のムーンショット型研究開発事業、創発的研究支援事業、次世代研究者挑戦的研究プログラム、大学ファンドなど様々な事業の立ち上げ及び運用に対応していくためには、機構全体の既存の各事業やプログラムの社会における必要性を見直し、効率化を行うことが重要である。このため、多様な事業を担う中で得られたノウハウの集約・活用により、事業の効率化を行うとともに、相対的に必要性の低下が予見される事業やプログラムについては早期に事業内容の見直し、廃止、又は類似事業との統合等を検討する。
 このほか、厳しさを増す国際情勢下において、オープンサイエンスとのバランスを取りつつ、カウンターインテリジェンスや研究インテグリティなどの組織的課題に対し、理事長のリーダーシップの下、政府・関係機関と連携しその強化に取り組む。
 また、日本科学未来館については、コロナの影響による入館者数の減少に対し、令和3年4月1日より着任した新館長の下、with/postコロナ時代における運営の在り方について検討する。

○財務内容の改善に係る見直し

 業務の効率化及び合理化等のため、保有資産等については費用対効果を踏まえ不断の見直しを行うとともに、これまでの見直しによる不要不動産等については国庫返納手続きを進め、返納を完了する。
 そのほか、外国人研究者宿舎については平成3年の竣工から30年が経過し老朽化が進んでいる事、周辺の住宅供給による需要減など竣工当時からの社会的状況の変化を勘案し、廃止も視野に入れて今後の事業の在り方について結論を出す。

○情報セキュリティ対策の推進

 引き続き、「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群」に沿って本法人が定めた情報セキュリティ規程及びガイドライン等に沿って、高度化・複雑化するサイバー攻撃への技術的対策や新たなツール利用にかかるセキュリティ研修などの人的対策等を推進する。
 また、オープンサイエンスの推進とのバランスを取りつつ、カウンターインテリジェンスへの対応を進める。

お問合せ先

国立研究開発法人科学技術振興機構見直し内容について

科学技術・学術政策局人材政策課
 

(科学技術・学術政策局研究開発戦略課)