独立行政法人日本学術振興会の見直し内容

平成29年8月25日
文部科学省


1.政策上の要請及び現状の課題

 独立行政法人日本学術振興会(以下「本法人」という。)は、学術研究の助成、研究者の養成のための資金の支給、学術に関する国際交流の促進、学術の応用に関する研究等を行うことにより、学術の振興を図ることを目的とする我が国唯一の資金配分機関(ファンディングエージェンシー)である。本法人が担う「学術研究」は、「学術研究の推進」という概念が初めて盛り込まれた現行の「科学技術基本計画」(平成28年1月22日 閣議決定)において、「イノベーションの源泉」であり、「改革と強化」を進めるべきものと位置付けられている。また、本法人が実施する業務は、文部科学省の政策目標の達成に向けて不可欠なものであることから、本法人には、引き続き我が国の学術振興の中核機関として、研究者の活動を安定的・継続的に支援する役割が求められる。
 一方で、学術研究を取り巻く状況は、日々変化を続けている。情報通信技術の急速な進化やグローバル化は学術研究に構造変革をもたらし、研究者が国内外の垣根なく協働していく時代となり、各国の研究者による国際共同研究も急速に拡大している。また、諸外国は研究開発投資を拡大させ、学術における国際的な競争も激しさを増している。こうした状況の中、我が国と主要先進国の研究者との共著論文数は停滞するなど、国際的なトップレベルの学術研究から取り残される危機に直面している。加えて、将来の学術研究の水準を高めていくためには、若手研究者を養成・確保し、その自立を促していくことが不可欠であるが、昨今、経済的な不安に対する懸念や、修了後のキャリアの見通しが不透明なことなどから、優秀であっても博士後期課程への進学を躊躇・断念している者が多数いる状況にある。
 
このような現状認識を踏まえ、本法人においては、従来の役割に加え、以下に示すような経営課題に対応していくことによって、学術の現代的要請(挑戦性・総合性・融合性・国際性)に応え、国内外で学術研究を先導する研究者を増やすとともに、学術研究の裾野を広げるべく優秀な若手研究者を確保・支援することが求められる。

  • 学術研究を取り巻く状況の変化を踏まえ、国際的かつ総合的視野に立った業務運営を行うこと。
  • 学術における国際的な競争が激しさを増し、国際協働の重要性が高まる中、人・資金・情報を通じた強固な国際研究基盤を構築し、我が国のプレゼンスを高めていくこと。
  • 優秀な人材が博士後期課程への進学や研究者の道に進むための環境を整備するとともに、早期に自立して新たな領域の開拓に挑戦するための支援を充実させること。
  • 科学研究費助成事業(以下「科研費」という。)の抜本的改革の定着を図りつつ、課題等の把握とその改善に取り組むとともに、科研費の充実・強化に係る国の取組を踏まえて適切に対応することにより、卓越した研究成果が持続的に生み出されるための環境を創出すること。
  • 理事長の強力なリーダーシップの下で業務や組織の適切な改善を行い、効果的かつ効率的な業務運営を実現すること。
  • サイバーセキュリティ基本法(平成26年法律第104号)に基づき策定された「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群」(以下「統一基準群」という。)及び「サイバーセキュリティ対策を強化するための監査に係る基本方針」(平成27年5月25日サイバーセキュリティ戦略本部決定)を踏まえ、独立行政法人として情報セキュリティ対策を徹底すること。

2.講ずるべき措置

(1)中期目標期間

 本法人が実施する事業は、研究助成や研究者養成など長期的な視点に立って推進すべきものが多いことから、中期目標期間を5年とする。

(2)中期目標の方向性

○ 事業体系の整理と組織体制の整備

  • 国内外の垣根なく事業を推進しつつ、それらを支える基盤を構築する観点から、本法人の事業を「学術研究支援」、「研究者養成」、「大学の教育研究機能強化支援」に係る事業のまとまりに応じ整理した上で、事業の枠を越えた「国際研究基盤」、「学術情報分析基盤」の構築を、本法人の事業を総合的・戦略的に展開していくための「基盤的業務」と位置づけ、事業部等の組織の転換等を含めて、必要な組織体制を整備する。

○ 国際的な研究基盤の強化のための取組

  • 戦略的な国際共同研究の在り方や外国人研究者の招へいと定着促進策、海外研究連絡センターの運営の在り方について検討し、必要な改善・強化を行うことにより、強固な国際研究基盤を構築する。 
  • 本法人が行う各種国際関係事業の実績を総括するとともに、多岐にわたる国際関係事業を体系的に整理し、発信する。

○ 若手の挑戦を支援する人材育成事業の充実のための取組

  • 「特別研究員事業」や「海外特別研究員事業」、「若手研究者海外挑戦プログラム」等の若手の挑戦を支援する人材育成事業について、国内外の関連事業にも留意しつつ、事業に係る応募・採用動向や採用者を巡る環境の変化等を随時把握することにより、採用者の処遇改善や制度改善等の対応を行い、充実を図る。

○ 科研費の充実・強化に資する審査システム改革推進等の取組

  • 科研費審査システム改革による審査システムの充実・強化は、審査委員となる研究者のみならず、科研費に応募する研究者も含め、科研費に関わる全ての研究者により支えられていることに鑑み、説明会等を通じた普及活動と研究者の声を踏まえた課題の把握に努めることにより、新たな審査システムの理解向上に資する取組を行うとともに、一定期間経過後の再評価を行う。 
  • 科研費のうち、文部科学省が審査・評価業務を行っている「新学術領域研究」について、業務の一元化を念頭に、必要な体制を整備する。

○ 効果的かつ効率的な業務運営の実現に資する取組

  • 複数の部署にまたがる共通的な業務について、一元的な運営が可能な組織体制を整備する。
  •  学術システム研究センターにおける機動的な運営体制を活かし、新たな課題への提案・助言に努める。また、同センターとの連携を図りつつ、グローバル学 術情報センターの体制を強化し、本法人の活動に関する情報分析機能を充実するとともに、得られた情報を事業の枠を超えて活用することにより、総合的視点に立った企画立案と事業改善を実現する。
  • 効果的な広報活動に資する体制整備を図るとともに、本法人の事業内容及び成果等の情報の積極的な発信に取り組む。
  • 他のファンディングエージェンシーや大学等の幅広い関係機関との連携を進めるとともに、研究者や国民の意見を積極的に吸い上げることにより、効果的な事業改善に活かす。
  • 引き続き、学術研究分野における男女共同参画に配慮する。
  • 本法人の業務を継続的かつ発展的に遂行するため、中長期的な視点で、本法人の核となる職員の育成・充実を図る。
  • ICT等を活用した業務システム整備に取り組む。
  • 引き続き、統一基準群に沿って策定した情報セキュリティ・ポリシーに基づき、情報セキュリティ対策を推進することに加え、サイバーセキュリティ戦略本部が実施する監査において特定される課題を解決する。

お問合せ先

独立行政法人日本学術振興会の見直し内容について

研究振興局振興企画課
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