平成26年度行政事業レビュー「公開プロセス」 1日目 議事録(6月19日(木曜日)分)

1.日時

平成26年6月19日(木曜日)13時00分~16時10分

2.場所

文部科学省15F特別会議室

3.事業名

事業番号1:産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業
事業番号2:女性研究者養成システム改革加速事業
事業番号3:地域の特性を活かした史跡等総合活用支援推進事業

4.議事

【岩瀬政策評価審議官】
それでは、お時間となりましたので、ただいまより文部科学省公開プロセスを開会させて頂きます。
私は、進行役を務めさせて頂きます文部科学省政策評価審議官の岩瀬でございます。よろしくお願いいたします。
外部有識者の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席頂き、誠にありがとうございます。なお、皆様の御紹介につきましては、時間の都合上省略させて頂きますので、お手元の資料で御確認を頂きたいと思います。また、今回の公開プロセスの取りまとめ役は、日本大学総合研究所教授の有川博委員に務めて頂きますので、よろしくお願いいたします。
【有川委員】
よろしくお願いいたします。
【岩瀬政策評価審議官】
それでは、具体的な議事に入らせて頂きます。これからの時間帯は、産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業について御議論を賜りたいと存じます。初めに、事業概要の御説明をさせて頂きます。事業担当課は5分以内で簡潔に説明をお願いします。
【説明者】
専門教育課長の牛尾でございます。よろしくお願いいたします。まず、事業レビューシートで簡潔に御説明したいと思います。本事業につきましては、平成24年度から26年度の3か年を予定して行っている事業でございます。政策的な位置付けといたしましては、個性が輝く高等教育の振興の中の教育研究の質の向上というものとして位置付けております。
事業の目的及び概要でございますけれども、社会的・職業的自立について課題のある学生が増えているということから、産業界のニーズに対応した人材の育成を図ろうということでございまして、そのために地域におきまして大学、短期大学のグループを作り、そこと産業界等との間での連携体制を作りまして、更にそこでの御議論等を踏まえた具体的な大学の教育内容の改善を図っていくというものでございます。予算額でございますけれども、24年度は22億5,500万円、26年度は16億9,600万円となっております。成果目標、成果実績につきましては、本事業科目で開発いたしました事業科目の受講人数、活動指標につきましては大学グループと産業界との間で設置された産学連携会議の数ということを記載させて頂いております。
もう少し具体的な内容につきまして追加資料を用意しておりますので、そちらで御説明させて頂きたいと思います。まず、おめくり頂きまして1ページ目でございますけれども、本事業の背景となります政府の方針等まとめております。ポイントとしましては、学校から社会、職業への移行が円滑に行われていないということ、その原因としては先ほど申し上げたような社会的・職業的自立が十分に図られていない。そこを改善するために大学における教育の在り方も見直すべきではないかということでございます。
続きまして2ページ目をおめくり頂きますと、本事業の取組の概要をまとめてございます。これも一部繰り返しになりますけれども、左側の図にございますように、圏域を超えた少し広い地域におきまして大学のグループ及び地域の産業界等の連携体制を作りまして、そこでの御議論、あるいは産業界が求める人材についてのアンケート調査などを行った上で、その結果を踏まえて産業界のニーズに応えたような授業科目などを開発するということでございます。
3ページ目でございますけれども、具体的な本事業に参加しております大学の固有の名前と連携している相手先を一覧にしております。
続きまして4ページでございますが、本事業の予算の具体的な使われ方をまとめております。緑の枠で囲っております中の太い点線の上の方が参加しております全ての大学で実施しております事業開発等に必要な経費、点線の下の方がグループの取りまとめ役である幹事校がグループ内の調整、あるいは広報活動に要する経費という形で整理をさせて頂いております。
それから、5ページ目でございますが、これはこの産学連携体制において人材ニーズについての調査をした具体の例を二つのグループだけではございますが、記載させて頂いているところでございます。
続きまして、6ページが具体的に各大学、グループで取り組んでおります事業改善の事例でございます。幾つかの類型に分けてそれぞれのグループがどんなことをしているか、科目の名称等でございますけれども、お示しさせて頂いております。もう少し詳しい内容につきましては、7ページから10ページまでそれぞれ簡単ではございますが、記載しておりますので、また適宜御覧頂ければと思います。
1事例だけ少し詳しく御紹介させて頂きますと、11ページを御覧頂ければと思います。これは東北地域におけます弘前大学の事例ということでございますが、右の上のところに書いてございますように、まず、このグループで産業界に対して人材についてのどんな能力を求めるかということについてのアンケート結果が出ております。そこで示されておりますような課題発見解決力ですとか、コミュニケーションスキル、こういったものに注力をいたしまして、具体的な取組としてやっておりますのが、その左側に書いてございますような内容の事業でございます。地域企業からの具体的な経営課題の提示を頂いて、その解決策を学生がグループ枠を通して提案するといった内容になっているところでございます。
その結果の学生の評価でございますけれども、小さくて恐縮ですが、右下にございます。学生の一般的な、基礎的な能力を測るペーパーテストによって判定しましたところ、この科目の履修生の方が未履修生、ピンクが未履修生で赤が履修生でございますが、能力の向上が、能力が高いという結果が出ているということでございます。
最後の12ページに活動実績と、あと今後の課題ということでまとめさせて頂いております。課題といたしましては、一定の成果を上げているものの、各グループ内での成果の共有がとどまっているのではないかということ、それから、各大学で取り組まれております内容が社会的・職業的自立に必要な特に基礎的な能力の獲得に関するものに限られているといったことが課題ではないかと考えておりまして、そういった点については改善を図るべきであると考えているところでございます。
簡単でございますが、以上、冒頭の説明は終わらせて頂きます。よろしくお願いいたします。
【岩瀬政策評価審議官】
それでは、私の方から論点について御説明させて頂きます。お手元の論点等説明シートを御覧ください。まず、一つ目として事業の目的に照らして、事業の仕組みや進め方は適切であったかという点。二つ目として、事業の成果や課題をどのように活用していくのかという点。三つ目として本事業により産業界のニーズを踏まえた教育改革は進んでいるのかという点。以上3点について御議論頂ければと思っております。
それでは、外部有識者の皆様からの御質問等をお願いいたしたいと思います。外部有識者の皆様におかれましては、事業担当課への質問等を通じ、無駄の削減のみならず、より効果の高い事業に見直すとの観点から御議論をお願いいたします。また、質疑等と並行して適宜お手元のコメントシートへの記入をお願いいたします。説明者は外部有識者からの御質問に対し、簡潔、明瞭に回答するようお願いします。発言を希望される方は、机上の名札を立てて頂き、私から順に指名させて頂くということでよろしくお願いいたします。
河村委員、お願いします。
【河村委員】
御説明、ありがとうございます。まず、論点の1番目のところからお尋ねしたいと思います。論点の1番目に事業の目的に照らして仕組みとか進め方が適切であったかというのが挙がっていますけれども、この点について御質問させて頂ければと思います。
産業界のニーズに対応したという、そういう目的になっていますけれども、これを実際に実施するときに大学とか短期大学とかになりますと、もう学部ごとの専門性というのは本当に様々に分かれると思うのですけれども、それに対して産業界といっても、本当にいろいろな業界があるわけで、その産業界のニーズってひとくくりにできるものではないのではないかと私は思うのですが、にもかかわらず、なぜこれを、事業を実施するときにここの、先ほどの資料のところの3ページにあるように地域ごとに大学のグループを組ませたのか。
中を拝見すると、一つのグループの中に工学系の大学はあり、総合大学はあり、短期大学はあり、それから、芸術系の大学はありということで、これで一体どうやって、就職先だって、それこそ産業界、業種、違うでしょうし、どうやってやるのかなという気がするのですが、果たしてこういう組み方で効率的にこの目的が達成されているのかどうか、そのあたりを御説明、お願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【説明者】
お答えいたします。まず、こういう形をとった理由でございますけれども、具体的な学生さんが実際に就職するような企業さんとの具体的な連携関係を作っていきたいということがございまして、まず一つ、地域というもので着目をさせて頂きました。大学生ですので一定の広がりを持った就職をしておりますので、圏域ではなくて一定の広がりを持った地域にしたということでございます。
それから、おっしゃるようにいろいろなタイプの大学、多様な大学が含まれているのはそのとおりでございまして、それが故にそれぞれの大学、得意、不得意、違っていると思います。そういったものをお互いに補い合えるという関係も期待しているということでございます。
具体的な教育効果の面で1点だけ御紹介させて頂きますと、7ページの具体例の6番目を御覧頂ければと思います。おっしゃるようにこの北九州市立大学と九州女子短期大学、一見しますと特に共通性の見当たらないような二つの大学でございますが、この北九州市立大学の工学部の学生と女子短大の保育の勉強をしている学生さんが共同する形で幼児向けのおもちゃを作るというようなワークショップをアクティブラーニング形式でやっておりまして、異なる専門の学生たちが一緒に学ぶという効果はあるのではないか。これは実際、企業の中でもこういうことは行われるようなことだと思いますので、そういった効果もあるのではないかと私どもは考えております。
それから、先ほど課題として申し上げたように、そうは言いつついろいろな分野でございますので、取組の内容がどんな分野にも共通する一般的な能力の育成になっているということは御指摘はそうかなと思っておりまして、我々もそこは課題として認識しているということでございます。
【岩瀬政策評価審議官】
田辺委員、お願いします。
【田辺委員】
同じく最初の事業の仕組みや進め方は適切だったかということなのですけれども、今回、これは数多くの大学をグループにして、資金を提供するということになっているのですけれども、教育改善という観点から見ると既存の事業内容を変えるというか、つまり、一方的な授業をするというか、知識を受けるだけではなくて、このアンケートを見ても、結局、主体性とか実行力とか計画性というのは、つまり、普通の授業の中でも学生が考えるというか、問題を発見するとか、そういう中で培われると思うのですけれども、そういうふうにせずに何かキャリア教育みたいな形になっていて、本来、大学の教育ではないようなことをやろうとしたのではないかという点がまず1点目ですね。つまり、既存の大学の教育自体をもっと主体性とか、高めるような、そういう教育の改善というのが本来の産業界のニーズに対応した形ではなかったのかというのが1点目。
2点目が、なぜ各大学にこの毎年1,000万円以上、多額の大学に配るような仕組みに、つまり、教育改善でしたら、既に教育に携わっている教員もいるわけですし、職員もいるわけですから、そういった人を活用すれば、各大学に1,000万円以上の資金を配る必要はなかったのではないか。その2点について教えてください。
【説明者】
まず、1点目でございますけれども、大学の授業の在り方と一般として、主体性、アクティブラーニングと言われるようなものが必要であるというのはおっしゃるとおりで、それについては別途取組を進めさせて頂いております。ただ、そういった能力についても、やはり学問を通じて形成されるものもございますし、私どもとしてはより職業、企業の実態に近いような形で、より実践的に役に立つような形で培うにはこういうキャリア教育的なものを企業の皆さんのお力もお借りしてやるのが効果的ではないかと考えて、こういう事業をしているということでございます。
それから、そういう意味では、既存の事業の改革というよりは、新たに産業界の方などに来て頂いたりして、新しい授業科目として起こしておりますので一定のお金は必要なのかなと。ただ、これ、仮にこの3年間が終わった後も継続して実施して頂くということですので、この3年間だけでこの費用を見るのか、その後の効果も考えて費用を見るのかというのは、考え方があるかと思います。
以上でございます。
【岩瀬政策評価審議官】
松浦委員、お願いします。
【松浦委員】
松浦でございます。参考資料の5ページを拝見いたしますと、産業界が求める人材のニーズの調査、アンケート結果というのがございます。この中で比率がかなり高いのは、一般的なマナーですとかコミュニケーションスキルですとかというような、いわば人間としてそもそも備えなければいけないようなことができていないということが産業界からニーズとして挙がってくる。人間の神経回路は18歳で御存じのとおりほぼ出来上がるわけでございまして、高等教育においては出来上がった人格に対してどのように更に専門的な知識を与えるか、問題解決能力を与えるかという観点なわけでございますから、この産業界から挙がってきたニーズのうちかなりの部分は本当に高等教育局の事業として行われるべきものなのであるのかどうかということについての御見解をお聞きしたいと思います。
【説明者】
もちろんここに挙げられている能力が大学だけでとか、大学で特に培われなければいけない能力かというとそうではないというのはおっしゃるとおりだと思います。初等中等教育段階から徐々に身に付けて頂くべき力であると思っております。ただ、やはりそのコミュニケーション力といっても、高校生までの閉じられた世界の中でのコミュニケーション力と企業や社会の中でのいろいろな、それこそいろいろな専門分野の年齢層も違うような方たちとのコミュニケーション力を付けるという意味では、大学ならではの取組の必要性もあるのではないかと認識しております。
【岩瀬政策評価審議官】
水上委員、どうぞ。
【水上委員】
パワーポイントの方の資料の11ページ目なのですけれども、右下に対人基礎力とか、対自己基礎力とかが未履修生よりも履修生の方が高くなっているというデータがあるのですが、これはこのプログラム全体、つまり、150校ぐらいの大学でいろいろやられていると思うのですけれども、このプログラム全体でこういう、つまり、履修生と履修生ではない人の間でコンピテンシーの能力が伸びたというような結果というのは出ているのでしょうか。
【説明者】
私どもが中間的にこの事業の成果を各大学から確認したところで、全ての大学でこういう形で確認できているわけではございません。現実にここで使っているプログラムという形で行われているのは、全体で19大学は確認しておりますけれども、その他の大学については確認できておりません。
【水上委員】
例えば19大学の平均だとどうなるんですか。
【説明者】
19大学のうち、比較優位性まで検討しているのは、そのうちの5大学でございまして、その5大学について、すみません、高いというところまでは確認しておりますが、数値的に平均で何点の差があるとかそこまでは、申し訳ございません、今、そこまでのデータはございません。
【水上委員】
ちなみに、この未履修生というのは具体的に言うと誰になるんですか。同じ学部の同じ学年の人ということですかね。同じ学部の同じ学年で履修した人と履修していない人。
【説明者】
はい。そういう理解で結構です。
【水上委員】
履修する前と履修した後では、比較しているデータってあるんですか。
【説明者】
大学によってはあります。
【水上委員】
同じ人で履修する前と履修する後で。
【説明者】
この大学ではない例では、そういうデータも持っております。
【水上委員】
何でそんなに評価指標がばらばらなんですか。つまり、検証しようと思ったら統一で、この事業、少なくとも、そもそも対人基礎力とかコミュニケーション能力というところを大学で国費を使って伸ばす必要があるかという根本的な議論はあるにしても、少なくともこの事業をやったせいで伸びましたという話を言うのだとすると、少なくとも統計的にこの150の大学では平均値として伸びていますという御説明はあってしかるべきかと思うのですが、そこはいかがですか。
【説明者】
そこまで事前に統一的な評価のやり方を示していなかったというのは、これは反省点として率直に申し上げたいと思います。
【水上委員】
じゃあ、それは現時点では分からない。そもそも成果が、そういう意味で全体として挙がっているかどうかは、特に網羅的にやっているところで有意な結果が出るところ、5大学だとすると、多分、統計的にも、およそ結果が出ているかどうか有意には分からないということになるんですかね。
【説明者】
最終年度に向けては、今回、こういう実態であることが分かりましたので、評価をきちんとやるようなお願いをこれからしていきたいと思っているところでございます。
【水上委員】
大学の側の話と同時に、これは産業界のニーズに対応するということなんですけれども、産業界の方の満足度、例えばそれによってこの大学の学生のレベルが上がったとか、そういう話、産業界の側に成果を確かめるということは何かやられているんですか。
【説明者】
網羅的な形ではこれもまだ現段階では行われておりませんので、今後に向けてそういう作業も必要であると思っております。
【水上委員】
それって何で事業を始めるときにそれをやらなかったんですか。
【説明者】
そこは不十分な点であると反省しております。
【水上委員】
なるほど。一旦終わります。
【岩瀬政策評価審議官】
河村委員、お願いします。
【河村委員】
成果の指標のところなのですけれども、このレビューシートで拝見すると、アウトプット指標が設置された産学連携会議の数、アウトカム指標が授業科目を受講した人数となっているのですけれども、このアウトカム指標は、これはアウトカムではないのではないですか。アウトプットなのではないですか。最終的にはやはりきちんとした社会人たる人間になって頂いて、きちんと就職していって頂く、そこが最後のアウトカムなのではないのかなと思います。
ここから先はコメントとして申し上げますけれども、先ほども御質問させて頂いて御説明も頂いたのですけれども、こういう組み方をすると高等教育でありながら、これだけいろいろな大学を、地域が近いということでごちゃごちゃに一緒にしてしまうことによって、すみません、やっていらっしゃるプログラムというのを拝見すると、本当にこれって高等教育ですることなのかなというようなものになってしまうと思うんですね。
しかも、これ、拝見すると、実際に例えば後発の公立大学とかでも、私も承知しておりますけれども、非常に高い就職率を誇って、実践でガンガン学生を鍛えてやっていらっしゃる地方の公立大学でありながら、学生の方が正直ですから、全国から志願者が押し寄せていると思います。そういう大学もおありになりますよね。そういういい事例が全然共有できていないし、いい大学がどうやっているかというと、こういう例えば就職促進プログラムというのを特別なプログラムでやっているんじゃないんですよ。大学の本体のプログラムとしてガンガン教育をして学生をたたき上げる、絞り上げるわけですよね。それが全然できていなくて、正直申し上げて、このプログラムを拝見すると、各地域の就職率かちょっと問題がおありになるような、失礼かもしれないけれども、そういう大学を寄せ集めて、そこに補助金をばらまく。その中身もそういうわざわざプログラムを作った先生方の人件費とか、事務費とか、そういうところにわざわざこの財政が厳しいときに国がお金を使う必要があるのかなと私は思います。
以上がコメントです。
【岩瀬政策評価審議官】
田辺委員、お願いします。
【田辺委員】
追加の質問ですけれども、私、インターンシップとかを学生がやるというのは非常に重要だと思いますし、インターンシップをやるために地域で産業界と大学が個別にやるよりはグループでいろいろ相談したりして進められて、非常に有意義だと思うんですね。そういう意味では、今回のこの改善事業といいますか、これで例えばインターンシップも推進されていますけれども、どの程度の学生が実際インターンシップをされたのかというのを教えて頂けますか。
【説明者】
すみません、データはあるんですけれども、ちょっと今。
【岩瀬政策評価審議官】
松浦委員、お願いします。
【松浦委員】
先ほど御質問してお答え頂いた件について追加でございます。意見も述べてよろしいんですかね。
【岩瀬政策評価審議官】
結構でございます。
【松浦委員】
先ほど来申し上げているように、これ全体をレビューいたしますと、やはりパワーポイントの5ページの、先ほどは違うページを挙げましたけれども、例えば5ページの柔軟性とか、ストレスコントロール力とかというような点も非常に大きな割合を占めている。主体性はそうかなとは思いますけれども、全体を眺めると、先ほど来申し上げているように本当に高等教育だけでこれを全部飲み込むということは、私、大学の教員ですので、確かにこういうことが必要な学生がどんどん増えてきてしまって困っているという認識は自分でも持っておりますけれども、本来、こういうものは初等中等教育ですとか、家庭教育ですとか、そういうプロセスの中で十分に教育なりをして、ある程度の常識を付けた大人として高等教育がその後のフォローを受け持ち、産業界とのリンクを図っていくというようなことで、論点としてはやはりこの事業を、言ってみると初中と高等教育、初中のしわ寄せを高等教育が全部吸収しますというようなプロジェクトのように見えてしまうんですね。
であれば、高等教育としては専門性ですとか、研究者を輩出するとか、そういう使命があって、国際競争に勝てるような人間を育てていくという使命があるわけですから、そこにこういう初中でやるべき事業が入ってきてしまうということは一つ問題ではなかろうかと。この事業自体を見直して、初中に頑張って頂く部分は初中にきちんとやって頂くというようなことが必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【説明者】先生も十分御承知の上でおっしゃっているのだと思うのですけれども、大学も非常に多様化しておりまして、先生がおっしゃるようなことで対応していける大学もあるとは思うのですけれども、現実に私ども実際の学生を抱え、かつ産業界の方からも現実の問題として、現に今大学から卒業されている方について、こういう声を頂いているわけですので、私どもとしてはやはり政策的に対応する価値があるとは思っております。ただ、もちろん初中教育でも一生懸命やるべきだというのは、そのとおりだと思います。
【岩瀬政策評価審議官】
1点、外部有識者の皆様におかれましては、コメントシートへの記入を併せてお願いいたします。記入が済んだ方につきましては挙手を頂けましたら、事務局の方で回収いたします。
では、松浦先生、お願いします。
【松浦委員】
過渡的なプロジェクト、いわゆるもう大学生になってしまった方々、近々なりそうな方々については、もう初中の教育の段階は終わってしまっているということで、当面の間、こういうような事業が必要であったということは私もよく理解いたします。ただ、将来的に私が先ほど申し上げたような体系的なプログラムの組み直しというようなものを是非御検討頂くべきなのではなかろうかと思います。
私の発言は以上でございます。
【岩瀬政策評価審議官】
水上委員、お願いします。
【水上委員】
やや意見的な話になるのですが、私は現時点において大学生が現実に課題発見能力とか、コミュニケーションスキルが足りていない。かつ、それが産業界のニーズなのだとすれば、大学がそれに対応した教育プログラムを提供すること自体は別に悪いことではないと思います。ただ、それはそういうつもりでやるのだったら、それはまさに大学の本業であって、国に言われたからやるのではなくて、各大学が自らの競争力を高めるために積極的な自助努力として行っていくべきものだと思うのですが、例えば国としては、これでやって例えばコンピテンシーの比較みたいな統一的に比較可能な評価指標は例えば国が示してあげますよと。
これに基づいて適切に有意な、統計的に意味のあるデータをちゃんと蓄積したところについては、文部科学省として公表することを手伝ってあげますよ。つまり、頑張ったところについてはちゃんと公表してあげますよと。頑張ったところは公表されるから競争力付きますよね、だから、皆さん頑張ってくださいということで全く足りるのであって、わざわざ国が補助を出すということには特段意味はないように思いますが、その点はいかがでしょうか。
【説明者】
大学が本来的に自ら取り組むべき課題であることは、そのとおりだと思いますけれども、ただ、現実の問題として産業界とより深く連携をして教育の在り方を議論し、かつ具体的な教育の改善につなげていくということになると、一定の政策的な誘導の補助は必要なのかなと思います。ただ、繰り返し先ほど来御質問頂いているような事業のやり方については、種々改善すべき点があるというのは認識しております。
それから、すみません、遅くなりましたけれども、先ほどのインターンシップの実績だけ御報告させて頂きますと、平成25年度につきましてはこの関係のグループの大学で1万6,448人という……。
【田辺委員】
1万6,000。そんなに。
【説明者】
はい。ということでございます。
【岩瀬政策評価審議官】
有川委員、お願いします。
【有川委員】
これまでの議論に補足的な質問になるかと思うのですけれども、このスライドの資料の3ページを見せて頂くと、幾つかの大学、あるいは幾つかの地域が抜けているのですけれども、まず、全ての大学に対して、この事業に対する参画を一応アピールしたのか、声を掛けたのかどうかという点と、それから、参加してこなかった大学、あるいは参加してこなかった地域については、どういうふうな理由によるのか分かりましたら教えて頂きたいのですが。
【説明者】
呼び掛けについては広く全ての地域、全ての大学にしておりますけれども、参画していないところについての理由の把握はできておりません。
【有川委員】
やはり参画してこないところの大学とか地域の理由をきちんと分析しておかないと、どういったものが大学とか地域の要求なのかというのが分からないように思うのですけれども。
【説明者】
すみません、その理由は把握はできておらんのですけれども、元々これ、公募いたしまして、一度応募がありまして、幾つかの地域で抜けがございましたので、再度募集をさせて頂いて、結果的に二次募集までやって、それで最終的に一部の県が抜けたということでございます。その理由については把握しておりません。申し訳ございません。
【岩瀬政策評価審議官】
梶川委員、お願いします。
【梶川委員】
今までの御質問等と少し重複してしまうと思います。それからまた少し抽象的な御質問になるのですが、ここで講座の特徴的なものとして、やはりかなりキャリアの作り方であったり、コミュニケーション能力であったり、主体的な自己形成のような、今までの御意見があったように、ある意味では一般的な教育プログラムに近いものである。そういうときにこの新たに大学を支援して公費を入れて予算措置で何か政策目標を作られる場合に、どのぐらい具体性のある政策目標であれば、今、御省としては、その一つの別の事業として考えておられるのか。大学が本来はこういうものをいろいろ考えながら、日常的にやらなければいけないという感触もあるので、各先生、このテーマであると本来業務なのではないかという、私もそこは思って、何かこういう特殊性があれば新たな公費の投入をされるという基準みたいなものをお持ちなのでしょうか。
【説明者】
お答えが抽象的になるかもしれませんけれども、結局、必要性を感じつつも、実際の大学は専門教育ということでそれぞれの学部なりの専門教育はされているわけですけれども、実際に学生さんがその専門に直結した職業に就けるかというとそうではないということで、産業界からもこういういろいろな足りない部分があるということでお声を頂いているのだと思っておりますので、やはりそこは本来やるべきなのかもしれませんけれども、実際、全然できていなかった大学について、こういう新しいキャリア教育についての試みをやって頂くというのは、我々としては十分国として支援をさせていく必要がある事項なのかなという認識でございます。
【生川会計課長】
すみません、一般論でございますので、私からもお答えをさせて頂きたいのですが、この大学のシステム改革というのは、この件だけではなくていろいろな形でやらせて頂いております。この後、御説明をさせて頂く例えば女性研究者の育成であるとか、あるいは若手研究者の育成であるとか、いろいろな形で支援をさせて頂きますが、文科省として決まった何かクライテリアがあって、ある一定のものを超えると支援をするし、そうでないものは支援しないという明確なものが必ずしもあるわけではございませんが、ただ、一般的に社会的に非常に要請の強いものについては、何らかの形で対応をさせて頂いている。本件についても産業界との連携、産業界が放出する人材を育成するというのは非常に社会的に強い要請があると私どもは認識しておりますので、そういった意味でこういったプログラムを作らせて頂いているということでございます。
【梶川委員】
すみません、そこは分かるのですが、ただ、産業界が要請する人材をというのは、今、強いのですけれども、歴史的に見ても大学教育としては強いかなという気がいたしまして、今、おっしゃったように指導されるというのは行政として当然だなと思うのですが、私がお聞きしたいのは追加的な国費を投入してまでやらなければいけないものの判断というのは、何か基準がおありになる。例えば今、外国語教育というのも非常にテーマがあるので、実は外国語教育にある種の予算を付けておやりになるということも考えられるかもしれません。これは勝手に思い付きで言ったことなんです。何か追加的国費を入れられるということの基準みたいなものが政策目標の具体性とどういうふうにリンケージして全体の運営費交付金等々と整理が付いているのかなというのが質問の趣旨ではあった。
【岩瀬政策評価審議官】
予定の時間が参っておりますので、まだコメントシートへの記入をなされていない外部有識者の皆様におかれては、コメントシートへの記入をお願いします。事務局はコメントシートの回収をお願いします。他方、コメントシートの取りまとめには若干のお時間を頂きますので、その間、外部有識者の皆様方には引き続き御議論をお願いいたします。
水上委員、お願いします。
【水上委員】
今後について少しお聞きしたいのですが、この事業は26年度終了事業ということでいいんですかね。このまま終わるということでいいんですか。
【説明者】
こういう形での事業は本年度限りと思っておりますけれども、産学連携をして産業界のニーズに応えた教育改善というのは引き続き課題であると思っておりますので、私どもとしても既に課題のところで書かせて頂いたような、例えば今日も御指摘がございましたけれども、余りにも一般、基礎的な力のところに限られているのではないかといったようなことも課題だと思っておりますので、そういったことを考慮しながら違う形を少し考えていきたいと検討しているところでございます。
【水上委員】
すみません、具体的に言うと専門的なことをもっとやるということですか。
【説明者】
そういうことも一つ考えられると思っております。
【水上委員】
専門的なことをやるということだったら、普通に専門教育機関なんだからまさに本業なんじゃないんですか。何でそこにまた国費を投入するんですか。
【説明者】こもまだやると決めているわけでもございませんけれども、例えば産業界の方からは、こういう専門分野であれば当然知っておいて頂きたいようなことについての認識が大学と産業界でずれているんじゃないかとか、そういった御意見も頂きますので、別にこの形をそのまま専門教育に当てはめるということを言っているわけではなくて、そういった課題に応えられるようなことを少し考えていきたいと思っているということでございます。
【水上委員】
ちなみに産業界の側は、もちろん重視する機能はコミュニケーションスキルとか何とかなのだと思うんですけれども、そういう機能を大学で高めてほしいというニーズまでは確認されているんですか。
【説明者】
そこまで厳格に確認しているかというと、そうとまでは言い切れませんけれども、ただ、大学を卒業した人が持っていてほしい力がこうであって、現実にそれが付いていないのであれば、それは、一つはやはり一番出口の近いところで補ってほしいという声であると私どもは理解しております。
【水上委員】
ここから意見ですが、この事業は現時点では当該事業によって開発された事業内容によって、実際に学生の能力が伸びたかどうかの判断もできない。企業のニーズが適切に満足されて、企業が満足したかどうかも分からない。そもそも企業が大学にこのような機能を求めているかどうかも分からないという状態で3年続いてきた事業で、かつ、そもそもこういった機能は大学の本業ではないかという問題があるということからすれば、やはりこれは総括として考えるとすると、この時点で、26年で潔く終了するべき事業であると私としては考えます。
【岩瀬政策評価審議官】
松浦委員、お願いします。
【松浦委員】
旧来、例えば文科系と理科系では企業のニーズというのがかなり違うということは、皆さん御承知のとおりであろうかと思います。例えば理科系ではドクターコースまで行くと企業としては、もう採用したくない。マスタークラスで企業が採用して、その後、企業で教育をしたいということですから、理系の卒業生というのは、大部分はマスタークラスを卒業して就職するというのが現状であります。文科系に関しては、むしろ、本当に大学院に進学してしまうと、あとは教員、あるいは研究者として残るしか道がないというのが現状ということになるわけです。そこで、一つ問題になるのは、大学の方では旧来、やっぱり専門性を高めるために専門的知識を享受するということに力点をずっと置いてきています。
それに対してやっぱり産業界のニーズというのはどんどん変わってきますので、どうしても出口まで教育した内容と産業界がその時、その時に求める力というのが、能力というものがディスクリプタンシーを起こしていくということがございますので、例えばお金の使い道ですけれども、産業界の方々の、代表的な産業界の方々を特任教員として雇用して、そういうところでセミナー形成をするとか、そういうような形でもって大学教育が本来担ってきたベーシックな専門性の教育を高める部分に関しては、大学はきちんと力点を置きますけれども、特任教員として企業等々から有能な方々を雇用して、そこで実際に今のこういう業界ではこういうニーズがあって、こういう専門的な知識が必要なんですよ、経験が必要なんですよというところでインターンシップにつなげていくというところで資金を投資するということであれば、私はそれはそれで意義があることではないかなとは考えています。
【岩瀬政策評価審議官】
ただいま記入頂いたものを取りまとめしておりますが、御意見、御発言がおありの委員がおられましたら、どうぞお願します。
田辺委員、お願いします。
【田辺委員】
すみません、補足で。これは補助事業ということですけれども、大学側はどの程度負担したというふうに考えておられますか。
【説明者】
仕組みとしては定額補助という形をとっておりまして、上限を設定して、それ以上は国費は出さないという形でやっておりますけれども。
【説明者】
25年度については、各大学、全大学分なのですけれども、約1億円負担しているような状況でございます。
【田辺委員】
20億に対して1億円ということ。
【説明者】
そうです。20億円に対して1億円負担しております。
【岩瀬政策評価審議官】
梶川委員、お願いします。
【梶川委員】
大学に生徒の就職等も含め、非常に有効な事業を行いたいという思いが強いと思うのですけれども、これ、今、こういうもので公費の負担がないと、大学自身がほぼ類似的な、産学共同的なものに取り組むようなことというのはあまりないと思われますでしょうか。大学としても地域の企業とコラボレーションして、いい事業をしていたいというようなことはすごく御自身たちあると思うのですけれども、その辺どういうふうにお考えなのか。お金がないとやっぱりやらないということでしょうか。
【説明者】
もちろん自己財源で努力されている大学もあると思いますけれども、一つは、このコミットの仕方がやはりより深くできるかどうかというあたりは、こういうお金がある方が、例えば連携先を増やしたりとかいうこともできますし、1大学がお願いするというよりは、やはりこういう大きな大学グループがお願いした方が、きちんとした産業界側の方もそれなりのまとまった対応をして頂けるというメリットが、こういう事業にはあるのではないかと思います。
【梶川委員】
大学グループとかということは、環境作りに御省が少しお手伝いをするというようなことで、同じようなプログラムが動くということはないでしょうか。
【説明者】
ほかにもいろいろな形がございますけれども、単なる環境作りだけでどこまで御協力、実際、企業の方たちも来て頂けるかというあたりは、より一定のお金を使わせて頂いた方が効果はあるかなと思っております。
【岩瀬政策評価審議官】
河村委員、お願いします。
【河村委員】
追加で実情をお尋ねできればと思いますけれども、例えばパワーポイントの12ページとかに活動実績のところで公開シンポジウムの開催とか、ホームページの開設により取組事例の共有なんていうのが挙がっているのですけれども、こういうことというのは、こうやって国がわざわざプログラムをお作りになって促さないと、やろうという認識というのは実態としてあまり各大学というのはお持ちではないということなんですか。すみません。
【説明者】
ここについては、そういうことではなくてむしろ公費を使っているので、しっかりとオープンにして共有してほしいということをそれぞれのグループにはお願いしてやって頂いているということで、どんな大学でも自分の大学のいいことについて、外に出すことについては積極的だと思いますけれども、これについては特に先生方に再三おっしゃって頂くように公費が投入されていますので、よりしっかりした形で外部に普及して頂きたいということでやって頂いております。
【河村委員】
分かりました。各大学の危機意識といいますか、認識なんですけれども、これはこうやって本当に国が後押ししなければというか、大学の実態、松浦先生からあったような、そういう実態という話は私も聞きますし、この世代の子供を持つ親としては本当に耳が痛い部分もありますけれども、そういう実態があって、でも、各大学の危機意識というのはどのぐらいあるのでしょうか。こういうことを国から言われなければやらないのかどうか、就職率とかって外に分かってしまいますし、どうなんでしょう。それから、ほかの大学がどういうプログラムをやって、どういう教育をして大学が成果を上げているかって、分からなくもないな思うんです。そのあたりはいかがでしょうか。
【説明者】
各大学はもちろん危機意識はあると思います。18歳人口も減っている中で学生確保に非常に皆さん苦労されているわけですので、そのときに入学側が見ているのは出口のところでございますので、そういう意味で危機意識はございますけれども、ただ、どこまでできるかということになると、なかなか大学の今回っている資源の中だけでは十分な取組がし切れないということがあったりとか、表面的にこういう講座をやっていますみたいな話は、多分、よその大学の情報が入ると思いますけれども、それを実現するための具体的なやり方とか、そういうところまではやはりこういう仕組みを作っていかないと、なかなか大学同士の壁というのも崩し難い部分もあるのかなと感じております。
【河村委員】
もう1個、大丈夫ですか。それで更にお尋ねできればと思うのですけれども、こういうことを促してくれと。国全体として、先ほど、もう今、大学に入っている子たちとか、これからもうすぐ入る子たちというのは、初等中等教育はもう終わってしまっているからということで、そういうことも現状もちろんおありになると思うのですけれども、じゃあ、どうやって改革してもらうかといったときに、国としての促し方で、こうやってプログラムを設けて、お金を付けるから改革しろというふうに言うのと、逆に私なんかは、これは大学の本業としての本来のプログラムのところで対応すべきではないかという御意見がたくさん出ていると思うので、私もそうだと思うのですけれども、それをしなかったら、逆に本来の運営費交付金の方とか、それから、私学助成とかも大変厳しく御省でやっていらっしゃるのは、それも承知していますけれども、そちらの方をチラつかせると言ったら失礼かもしれませんけれども、そういう形でやった方が、こうやって漫然とお金を配ってしまうよりも、もしかしたら効果があるのではないのかなという気もしますが、そのあたりはどうお考えになりますでしょうか。
【説明者】
そういう選択肢もあるかなとは思いますが、ポジティブなお金を付けた方がよりいいプログラムを作ろうというインセンティブは高まるのではないかという意味で、こういう形を取らせて頂いているということでございます。
【河村委員】
ありがとうございます。
【岩瀬政策評価審議官
 水上委員、お願いします。
【水上委員】
ちなみに、恐らく元々これって大学の本業だよねというところについてはあまり争いがなくて、あとは、それでもなおやらなければいけないかという話なのだろうと思うのですけれども、こういうお金をもらっていないけれども、すごく頑張っている大学というのはどれぐらいあるんですか。
【説明者】
今、数字的に申し上げられるようなものはございません。
【水上委員】
これ、ある意味では、こういうお金をもらわないと頑張らないとすると、すごくまずいことですよね。本来業務だから。だとすると、そこを少し確認した方がいいと思うんです。こういうお金をもらわないと大学がこの分野を本当に頑張ってくれないのだとすると、そこをどうするかということの方が本質的な課題、お金を配りますという解決策ではなくて、お金をもらわないとやらないという状態になっているとすると、それはもっと根本的な問題があるのではないかということが、私はむしろ問題なのではないかと思うのですが、その点についてはどうお考えですか。
【説明者】
より正確に申し上げると、本来業務ではあるのですけれども、多分、今まで多くの大学で本来業務の範疇に入っていなかったことなのだと思います。何人かの先生におっしゃって頂いたように、幾つかの特に優れた大学では、もう専門教育をやるだけで人材が養成できてしまうような、そういう大学像の下では多分これは本来業務として認識されていなかったと思います。ただ、今の社会の現実においては、これは本来業務とせざるを得ないということなのではないかなと私は思っております。
【水上委員】
すみません、その点、結構重要なところで、つまり、大学というものの社会から期待されている役割というのは、社会の中で一部変わってきていて、一部ものすごく研究しているタイプの大学というのはもちろんあるのだけれども、大学というのは、そういう大学ばかりではなくて、まさに社会で働いていく、普通の社会人を育成していくプロセスを担っているところもあって、そういうところについてはまさにこういう機能が本来はもっと早く本来業務に位置付けられているべきはずだったんだけれども、それが現状なかなか位置付けられていないということだとすると、逆に言うと173大学にだけ補助金を出すというような話だと、逆に社会のニーズに適用できないですよね。だって、大学の数はこれより圧倒的にたくさんあるわけでしょう。だとすると、こういうことをちゃんと頑張った大学が報われるし、頑張らなかった大学は淘汰されるという仕組みをむしろ作らないと、根本的には駄目なのではないかと思うのですが、そこはいかがですか。
【説明者】
この173大学にとどまらない話だというのは、おっしゃるとおりだと思いますので、私どもとしてはここで培われたものは是非ほかの大学に公費をもらってやっている以上は還元してほしいというのが一つございます。ある一定のところまで達すれば、もうおっしゃるとおり、あとはそれぞれの大学の努力に応じて学生が集まったり、集まらなかったりという世界にだんだん移行していくのではないかなと思います。
【水上委員】
だとすると、この事業は173大学やって一応成果はまとめて、一定のノウハウ、知見は貯まったのだから、あとはそれを各大学は自由に使ってもらって、ここから先は競争ですよ、だから、こういう補助事業はもうやりませんよということでいいですか。
【説明者】
今、こういうスタイルでやっている、こういう内容のことについては一定の成果をむしろ公表してやってもらえばいいと思いますけれども、産業界のニーズに応える部分がこれだけでいいのか、あるいは御意見の中で、もう少し専門の部分でもあるのではないかとか、いろいろございましたので、この形がどうかということは別にすると、産学連携についての教育改善の仕組みはまだ必要なのではないかと思っています。
【水上委員】
やはり事業で考えた場合は、これから新しいやり方を考えますからまたお金を付けますという話ではなくて、一旦はこの枠組みで終わったのであれば終わったということをはっきりさせるべきではないか、これは意見ですから答えを頂かなくて結構ですが、そういう意見です。
【岩瀬政策評価審議官】
まだ御意見等おありのようでありますけれども、コメントシートの集計が取りまとまりましたので、取りまとめ役の有川委員より評価結果及び取りまとめコメント案の提示をお願いいたします。
【有川委員】
頂きましたコメントシートのコメント、大きく分けますと三つぐらいですか、更に集約すると二つぐらいになるのかもしれませんけれども、一つはやはりこの大学の教育といいますか、就職を含めた改革を進めていくための大学側のいろいろな要望といいますか、あるいは大学の自主的な取組に対する対応が十分でないという意見がかなり出ております。紹介させて頂きますと、各大学、学部の本来の改革を図るよう促すべきではないか。改革に成功し、一定の成果を上げている大学が具体的にどのような事業プログラムを設けたのか、そういった成果をモデルとして共有を図るのが最も効果的ではないかという意見、あるいは大学の自主的な取組を支援する方式をとるべきである。あるいは本当に高等教育に求められるニーズを改めて洗い出して、そういった施策を構築すべきだという意見。
一方では、大学の養成とマッチングしなければいけない、今度は逆に産業界の方のニーズを十分把握していないという問題に対しても指摘が幾つか出されておりまして、産業界のニーズに関しては、より具体化して成果目標を設定するべきである。あるいは産業界のニーズの対応を適切にとって、それをきちんと把握した大学がこの施策に取り組んでいくべきだという意見などが出されております。それらに関連して三つ目となるのかもしれませんが、事業の目的が明確でなくて、参加大学グループだけの就職率を上げるのが狙いとすれば、そもそも大学や、あるいは民間の方の力に委ねるべきではないかという意見が出ております。
これらの意見に基づきました評価の判定結果の分布を申し上げますと、Aの廃止が4名、Bの事業全体の抜本的改善が2名という形になっております。Bの抜本的改善の意見を述べられた方のコメントもほぼ廃止に近いような、根本的な問題があるという指摘でありますので、数的な意味合いでもそうでありますが、結論として、最終的な評定としては廃止という形にしたいと思います。それから、その廃止という評価に基づく取りまとめコメントといたしましては、まず、大学側の方の自主的な取組を支援する仕組みというものを考えるべきだ。一方では、産業界のニーズに対応するという施策であれば、産業界のニーズをきちんと把握した上で事業、施策を進めていくべきだ、そういった形のコメントにしたいと思いますが、いかがでしょうか。では、よろしければ、こういう形で結論にしたいと思います。
【岩瀬政策評価審議官】
ありがとうございました。
それでは、以上をもちまして産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業の公開プロセスについては終了させて頂きます。
次の女性研究者養成システム改革加速事業については、5分間休憩の後、14時5分開始といたします。よろしくお願いいたします。

( 休憩 )

【岩瀬政策評価審議官】
それでは、2こま目を始めさせて頂きます。これからの時間帯は、女性研究者養成システム改革加速事業について御議論を賜りたいと存じます。初めに事業概要の御説明をさせて頂きます。事業担当課は5分以内で簡潔に説明をお願いします。
【説明者】
それでは、よろしくお願いいたします。資料、添付資料を用いて説明をさせて頂きたいと思います。まず、添付資料の1枚目でございますけれども、この事業の概要でございます。事業概要でございますが、この資料でございます。事業概要でございますけれども、本事業でございますが、女性研究者の採用割合が低い特に理・工・農を中心といたしまして、女性研究者の具体の採用をすることによりまして採用システム・養成システムの構築を目指す。そういった大学への支援ということでございます。モデル構築事業でございます。
この事業でございますが、大学の自主経費も充当しながら効率的な執行をしているものでございます。事業自身は5年間の事業でございますが、例えば3年間で中間評価をし、1機関が中止になってございまして、都合、最終的には11機関の補助をしてございます。女性研究者の支援事業でございますが、私ども現在、本事業と、それから、女性の環境整備事業をしてございまして、この事業のレビューとともに併せて次の事業、この事業は最終年度でございますが、どう活かしていくのかということも併せてレビュー頂けると有り難いと思っております。
資料2ページ目でございます。資料2ページ目は、これはアウトカムということで、養成システムと採用システムの具体的な例を挙げてございますので、御覧頂ければと思います。事前説明の際に宿題として頂きましたもので、具体的にこの機関からほかの機関に流動化、転任していることがあるのかというお問合せでございました。例えば北大の事例で言いますと、助教の方を採用し、数年後、大阪府大の方に准教授として行っているというようなケース等々、上位職又は同レベルでの転籍、転任というのがございます。また、採用時の質の保証でございます。これも事前説明のときの宿題としてございましたが、九大で申し上げますと、応募倍率が年度で異なりますけれども、17倍から23倍という倍率でございます。公募人数は毎年10名ほどなのでございますが、10名採択されたケースもあれば、5名ということで必ずしも数だけでいっているわけではございません。質ということも含めて採用人数を精査してございます。
資料をおめくり頂きまして3ページでございますが、これは女性研究者、具体に採用された方々の業績でございます。
資料4ページでございますが、アウトプットといたしまして、私ども何を使えばいいのかというのはございましたが、女性研究者の数、上位職への登用、それから、研究の活性化ということでまとめさせて頂いています。
次の5ページ、早口で恐縮でございますが、5ページでございますが、これはフォローアップでございます。広島大学、九州大学、農工大と自大学への展開と他大学への展開でございます。事前説明のときにございましたが、どう広がっているのかということでございます。フォローアップでございますが、例えば養成システムにつきましては、11機関補助してございますが、基本的に事業後も11機関全て継続をするということでございます。採用システムにつきましては、これは人件費がかかりますが、基本的に11分の6が同規模で継続、4が減少はするけれども継続ということでございます。1機関だけは、いまだ未定でございますけれども、これもフォローアップをしてきちんと継続をして頂くように私どもとしてはフォローアップをしていきたいと思ってございます。
資料6ページでございますが、現在の女性研究者の課題というものをまとめております。この事業につきましては成果が出てございますが、国全体としましてはやはり数の問題、それから、上位職への登用という課題がございます。この事業をいかに横に、あるいは進化をさせていくかということが課題でございます。
7ページ、それをまとめて今後の課題について整理をさせて頂いたものでございます。本事業の課題が7ページの左の上に書いてございます。また、この事業に関わらず、女性研究者の支援の在り方について、現場の研究者からの意見を取りまとめてございます。また、関係団体からの要望、政府の方針、こういったものを整理いたしまして、右に四つの課題というものを私どもこの事業に限らず、今後の女性事業についての課題というものを整理してございます。
8ページをおめくり頂ければ、その課題につきまして具体的にどうやっていくのか、今検討しているところでございまして、それを整理させて頂きました。まずは大学・研究機関との改革のサイクルと一体化するということ、これにつきましては例えば中期計画、中期目標と合わせて位置付けをするというようなこと、また、本事業であります採用・養成システムの構築、さらには環境整備事業と一体化をして運用すること、あるいは横展開するためのプラットフォーム化。例えば複数の大学が連携して取り組む等々でございます。また、いろいろな他の事業も含めまして支援メニューの柔軟化ということを検討したいと思っております。
次のページをめくって頂き、それ以降は数字でございますので、参照して頂ければと思います。また、最後のページ、1枚目、14ページでございますが、これは昨日、事前説明のときに宿題として頂いたものでございますが、博士後期課程の在籍者及び修了者と、それから、研究者の数、それについての男女比でございます。14ページの上にありますように、修了者は女性3割、研究者になる方14%ということで、ここには有意な差がございますので、ここを何とか埋めていきたいということでございます。
また、最後に1点だけ、昨日ございましたけれども、事業実施の補助と自主採用、それから、次のフォローアップ、それから、そうでない場合のコントロールとしての増加、それをどういうストーリーでもって女性研究者の質を上げ、増やしていくかということでございますが、ここに記載してございませんけれども、事業実施機関11機関、この事業中で307名の女性研究者が新規で採用されてございます。これは補助事業では255名、自主経費で52名でございます。それを1年間当たりにしますと全体で61名になります。1機関当たり1年間で5.5人、新規採用ということでございます。
また、ここに、14ページにありますように事業実施期間におきましては、終了後も引き続き自主事業でもって女性研究者を採用するという計画が40名ということで、1機関当たり3.6名の女性研究者の採用を今見込んでおります。また、コントロールとして、ほかの大学を含めて、補助していない大学も含めて1機関当たりのこれまでの数字の平均は2.6というのがおおよその概算でございます。これはいろいろな数字がありますので、おおよその概算でございます。1.3倍で事業実施期間は女性研究者を増やすということでやってございます。したがいまして、こういった事業、この評価いろいろありますけれども、環境整備事業と併せてうまく横に展開をさせていきたいと思ってございます。
簡単ではございますが、以上でございます。
【岩瀬政策評価審議官】
それでは、私から論点について御説明させて頂きます。お手元の論点等説明シートを御覧ください。まず、一つ目として事業の成果は上がっているのかという点、二つ目として事業の成果や課題をどのように活用していくのかという点、三つ目として今後の女性研究者支援の在り方をどのように考えているのか、以上3点について御議論頂ければと思っております。
それでは、外部有識者の皆様からの御質問等をお願いしたいと思います。説明者は外部有識者からの御質問に対し、簡潔明瞭に回答するようお願いします。
松浦委員、お願いします。
【松浦委員】
最初の質問でございますけれども、これはいわゆるマイノリティー保護政策という位置付けではなくて、国の男女平等参画というような観点から立案された案というふうに考えてよろしいのでしょうか。
【説明者】
はい。そのように考えてございます。
【松浦委員】
続けてよろしいですか。
【岩瀬政策評価審議官】
はい。
【松浦委員】
次に、本来、そういう政策であれば、例えば大学の研究者、研究所の研究者等々が、男女の比率が今、男性が圧倒的に多いものをだんだん比率を変更していきましょうというのが基本的な考え方であると考えますが、今ここに補助金を付けるということは、現在の研究所や大学の現場での認識がやはりなかなか男女平等参画という方にシフトしていきづらいということもあって、それを加速するために一時的に措置をしているという考え方でよろしいでしょうか。
【説明者】
はい。あくまでも一時的ということでございますけれども、あくまでもモデル事業ということで、モデル、そのシステムの構築、それを次は横の展開をするということで拡大を図るというようなことでございます。
【松浦委員】
では、私がお聞きしたいことを続けて御質問してしまいますけれども、このシートを拝見すると、いかに優秀な女性を登用するかということでプランが作られていますが、女性は出産等々いろいろなイベントがあるということもありまして、その間、欠員になりますと、実は男性の方の職員に非常にプレッシャーがかかるという現実も一方ではございます。その辺を女性の方からの評価のアンケートはお採りかもしれませんけれども、男性側、そちらからこういうようなプロジェクトを推進するに当たり、自分たちの負荷がかえって増えてしまって困るというような御意見はないですか。
【説明者】
この事業が終わってから男性のみにとったアンケートというのは今のところございません。ただ、やる前、それから通常で、例えば女性研究者の少ない理由として、女性と男性にアンケートをとったものがございます。これは例えば評価のシステムでありますとか、ライフイベントのときのいろいろな支援というようなことがございます。そういうこともございまして、この採用システムと養成システム、これはこの事業でございますけれども、それに加えて今環境整備事業というのを併せ行っておりまして、これでは例えば保育の問題であるとかやってございます。
ただ、もう一つ、この採用・養成システムで申し上げれば、具体的な事例として農工大の事例がございまして、これは1プラス1ということがございます。これは女性研究者を1名、そこで採用した場合には、これは具体的には補助事業で採用した場合には大学の自主経費として、その学部に研究支援員を配置するというものでございます。この研究支援員は女性、男性関係ないわけでございますけれども、したがいまして、そういったことで女性研究者を1名増やすということで、そのチーム、その学部に支援員が増えるということで、そういうインデュースといいますか、誘導といいますか、インセンティブ、経費を付けることによって全学の意識、男性も含めて意識改革を進めていくというようなこともここに内包してございますので、そういったいろいろな大学のアイディアをうまく吸い上げるといいますか、誘発するような形で事業運営をしていきたいと思ってございます。
【松浦委員】
更にいいですか。
【岩瀬政策評価審議官】
はい。
【松浦委員】
連続して質問してしまいます。女性の職場における地位の確保ですとか、昇進ですとか、上位職への昇任、上位層に占める女性の割合を増やそうというような趣旨で一時的にまずブースタとしてこういうような資金を投入して、大学、現場の意識を変えていって、将来的にはやっていこうということは理解いたしました。そういうような誘導政策をしたとして、女性問題に関しては、実はこの人事登用プラン以外に非常に重要なインフラ側の整備というものが伴っていないと、幾ら優秀な女性を確保しても、その方々が活躍できないということがあると私は認識しています。
例えば先ほど出産というお話をいたしましたけれども、これは産休の問題、医師の立場で申し上げると、赤ちゃんの免疫力が一番落ちるのは6か月目でございますから、例えば6か月で産休をやめてしまって現場に復帰するというのは本当は、研究者にとってはいいのかもしれませんけれども、赤ちゃんにとっては一番リスクが高いときにお母さんから離れるということでして、もう少し長い間、例えば1年とか、1年だとハイハイになれるし、保育所にも入れるんですから、そういうような形でもってインフラを整えることができないかということ。
また、研究者は多分、多くの機関で裁量労働制をとっていらっしゃると思うんですね。研究というのは裁量労働にぴったり合った、フィットした考え方である。そうすると、現状の裁量労働制というのは夜の10時までということに規定をされているわけですが、例えば認可保育所等のインフラであれば早い時間に終わってしまって、結局、その女性研究者は研究を6時、7時に切り上げざるを得ないということに直結してしまうということで、むしろ、ここは無認可保育所というのは例えば24時間やっているところもありますし、そういうところの有効な活用ができないかということ。これが1点目。
それから、次に出産の次ですけれども、女性がきちんと働くためには、お子様が急に病気になられるということはよくある話でございまして、そこでスポンと穴があく。これがやっぱり現場で非常に困るという原因になるかと思います。いわゆる普通の保育以外に病児保育、それから、病後児保育というものがきちんとインフラとして整ってこないと、本来の意味での女性支援という形にはならないのではないか。そうしますと、病児保育というのは一番重要でございます。朝起きたら突発的にその子供が高い熱を出してどうにもならないというようなことなわけでございますので、例えば広い大学の敷地を持っているところであれば、そこの一部を国有財産の貸付料みたいな形でもって提供して、そこに小児科のクリニックを誘致して、その上に病児保育所を、これは外部でも結構ですね。民間の力を利用して併設をして頂いて、そういう病児、あるいは病後児、この二つについてフォローアップできる体制というようなインフラの整備というものも伴わないと、せっかくこういう人事制度を作っても、これがなかなか有効に機能できないのではないかなというような感じで、まとめてコメントさせて頂きました。
【説明者】
なかなか大きな課題がございます。まず1点目の無認可保育の件でございますけれども、どう使うのかというのが課題だと思いますけれども、今、国立大学で言いますと、約50の大学が自分の大学の中に保育施設を持ってございます。そういったところは多分、相当遅くまで、御覧頂いた農工大も結構遅くまでやっております。それからあと、今、先生から頂いた病児保育、病後児保育でございますけれども、大学では医学部のあるところはやっているケースが多いと聞いてございます。なかなかそこまで手が回っていないというのが現状だと思います。ただ、ここは重要な課題でありまして、私ども環境整備事業と併せてシステムの構築と、それから、環境整備事業と併せてインフラ整備というのは必要だと思っておりまして、そういった抜本的な改革をしながら、うまく女性研究者の登用といいますか、採用の支援ということにつなげていきたいとは思ってございます。
【説明者】
数値的な補足だけしたいと思います。先ほど課長の方から申し上げましたとおり、本件の環境整備につきましては別の事業の方でやってございます。先生御指摘のとおり、女性研究者の採用、養成のシステムは構築したけれども、途中でやめてしまってはそこで途切れてしまいますので、そういった点は非常に重要だと認識をしてございます。そちらの研究活動の方の支援事業で申しますと、離職者数につきましては、この事業、平成18年からやっているのですが、平成17年、事業の開始前の段階で機関当たり年間34人、離職をされているという状況がございました。今、平成23年の数字でございますが、これについては10.1人、3分の1まで減っているという状況でございます。引き続きしっかりやっていきたいと思っています。
【松浦委員】
ありがとうございます。
【岩瀬政策評価審議官】
河村委員、お願いします。
【河村委員】
少し話が戻ってしまうのですけれども、松浦先生も最初に聞いてくださったのですが、そもそもこの女性研究者の養成の後押しをなぜするのかということをもう少し突っ込んでお尋ねできればと思います。先ほどマイノリティー施策ではないというのをお答えくださったのですけれども、では、何か、女性がかわいそうだからするわけではないと。じゃあ、何のためにするのか。男女共同参画意識とかってありますけれども、じゃあ、何で男女が共同で参画しなければいけないのか、そこら辺をやっぱりきちんと考えを持っておくことが、例えばこの事業の成果をどういう指標とかで評価するかとか、今後どういうふうに展開させていくかとか、どういうふうに自律的なものとして持続可能にしていくかに大きく影響してくると思いますので、その点からまずお尋ねできればと思います。
【説明者】
完全にお答えできるかどうかあれですけれども、基本的に多様な価値観を入れることによって研究にイノベーションを生むという今の政策の流れの一つでございます。日本は人口がどんどん減少していきます。その中でやはり活躍できるのだけれども、いろいろな制限でもって活躍できないような、ダイバーシティ社会を作っていきたいということ、そのためには老若男女、それから、外国人、全ての人材を活用せねばならないということだと思います。その中で特にこの事業については女性というのはいろいろなハードルがあって、研究の現場に来ていないという現状、これはさっき数字でも博士課程の学生の数と研究者の数が修了後は3割なのだけれども、14%が研究者になっている数字を最後のページでお示しさせて頂きましたけれども、こういった数字のアンバランスがありますので、もしそこにいろいろなハードルがあるのであれば、そこをまずはクリアしていく。
そして、そこで活躍したくない人も、男も女の方もいらっしゃると思います。それは自由でありますけれども、活躍したいのだけれども、それがハードルでできないというようなことは、そこはしっかりと除去していくというようなことだと思います。そういう意味でマイノリティー施策ということではなくて、ダイバーシティ社会、それから、研究現場でもいろいろな方が入ってこられる現場を構築していくという観点での施策だと思ってございます。その中での採用システムと養成システムの構築をまずはしていく、それを広げていくというような展開だと理解してございます。
【河村委員】
続けてよろしいですか。では、続けて、ありがとうございます。そのように認識してくださっているということで、そのダイバーシティができる社会ということで、この研究の分野でもってということで是非続けてお願いできればと思いますが、ただ、その際に今御説明くださったような目的でやるということになると、例えばこの政府の政策で、だからこそここにレビューシートもあって、やれアウトプット指標が何だ、アウトカム指標が何だということになるのですけれども、この事業は今年度でおしまいとして、これから先を考えていらっしゃると思うのですが、もしそういうお考えでやってくださるのであれば、私ももちろんそれに賛成なのですけれども、最終的なアウトカムというのは、例えばこの女性研究者を養成するシステムを作った大学の数が幾つあるかとか、それこそ女性研究者を何人採用したとか、前に比べて何人増えたとかということではなくて、現実にはちょっと難しいかもしれないのですけれども、そうやって女性研究者が入った、増えた組織が、学部なら学部とか、すみません、もっと専攻とか研究室なのかもしれませんけれども、そこでの成果がどれぐらい上がったかというような指標、これはもしかしたらなかなか取りにくいのかもしれませんが、そういうものこそ最終的なアウトカム指標として設定すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【説明者】
おっしゃるとおりだと思います。このシステムの構築は、まずはシステムの構築ということでやらせて頂きましたけれども、最終的には、これは研究のアクティビティが上がるということでございます。したがいまして、どういう指標がいいのかというのは、さっき先生が言われましたように、その教室なら教室、あるいは学科のアクティビティを何で測るかということでございますけれども、簡単に言えば論文であるとか、外部資金の獲得であるとか、そういったもの、それからあとは実際にピアレビューをして、そこがいいかどうかということだと思います。
まずは、そういう意味でお示ししましたのがこの3ページにあります成果であり、そしてまた4ページにあります、これは数と上位職なのですけれども、研究の活性化ということで4ページの右の下にございますけれども、外部資金の獲得とか、そういったものを数値で、これはもう少し我々はフォローアップをし、精査し、そして今、先生が言われたように本当の研究現場でのアクティビティというのをどういう形でフォローアップしていくのかというのは、少し検討していかないといけないなとは思ってございます。
【河村委員】
ありがとうございます。テクニカルには難しいところもあるのかもしれないのですが、研究の活性化に実際につながっているという数字が少し確認できつつあるのかなと思います。農工大も私も行かせて頂いて、そうやって立派に続けていらっしゃる方がいらっしゃるのだなと思いましたので、こういう取組が望ましいのは、こういう国が具体的にお金を付けてとかということでなくても、もっと自律的に続いて広がっていくことが大事だと思いますので、そういった意味で、それこそ大学全体の意識を変えて頂くためにもどういう成果が上がってきたのかということは、是非確認をお願いできればと思います。
それとあともう一つ、支援、これから先、こういう形でお金、予算を付けてやっていくのかどうかというのは、また少し別の議論があると思いますけれども、もし仮に何らかの形で続けるのであれば、その受益を受ける形で採用してもらえる女性研究者の側がありますよね。それに対しても、ちょっと厳しいかもしれませんけれども、ある程度の、これぐらいのことは達成してくださいよという目標を設けてもいいのではないでしょうか。やっぱりこれだけ国の財政が厳しい中で、私も環境整備も、もちろんまだ少し必要なのではないかなと思うのですけれども、そうやっていろいろ手助けをしてもらって、予算を付けてもらって、それで研究させてもらう以上は、それなりの成果は出さないと、それは駄目だというようなことは、ちょっと厳しいかもしれませんけれども、それぐらいのことを女性の側にも要求してもいいのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。
【説明者】
おっしゃるとおりだと思います。どういう形がいいのか、そこはまた我々の中でも検討したいと思っていますし、現場の声も聞いて、実際、農工大でも成果が上がっているケース、御覧頂いたと思いますので、ああいったケースはどういう形にすればより成果が上がるのか、少し工夫をしてみたいと思います。おっしゃるとおりだと思っております。
【河村委員】  もう一つだけ意見なのですが、環境整備、まだ続けていく必要がある部分が残るのかなとは思います。だらだら支援する必要はないですが、ただ、この分野の特殊性もあるかなと。特に農工大に行っても感じましたけれども、世間では女性に対して参画を促すための指標として、例えばどこどこの会社だと育休の取得率が何%とかということを持ってきますよね。でも、違う、もっと厳しい世界なんだなというのは私もお邪魔してつくづく感じました。やっぱり育児休業なんか取っていられないんですよね。
産休を取るだけでもブランクになって研究にはということがありますので、であれば、じゃあ、どういう環境整備が必要かというと、世間で言えばなかなかゼロ歳児を預かってくれるところは、まだそんなに多くはないと思いますし、学内、国立大学であれば結構学内に保育所があるとかというお話はありましたけれども、是非やっぱりそういう取組を環境整備、できているところはいいですけれども、まだのところについては、そういうところの手を差し伸べるということは、この分野はやっぱり独特の事情があると思いますので、世間のように育児休業を1年取らせて、そこで1歳過ぎれば結構保育所が入れるから、それから会社に復帰してねというのとはちょっと違う厳しい世界でいらっしゃるのもよく分かりますので、それに合った環境整備をお考え頂ければと思います。
【岩瀬政策評価審議官】
外部有識者の皆様におかれましては、コメントシートへの記入も併せてお願いします。記入が済んだ方は挙手頂けましたら、事務局の方で回収させて頂きます。
田辺委員、お願いします。
【田辺委員】
それでは、3点質問させてください。まず、1点目、フォローアップですけれども、これは事業実施中は成果が上がっているのですけれども、終わった後にこのシステムを、システム改革を維持するとかいうことが重要だと思って、御説明にもありましたけれども、既に終わっている大学で採用システム・養成システムをきちんと維持して、なおかつ――なおかつといいますか、ちゃんと女性職員を採用していくということをちゃんと確認されているということなのですが、ただ、そこで今年度はやるけれども、来年度はやらなくなるとかいう、短期的に聞かれたときだけやってしまうというのでは本来の効果ではないので、フォローアップをきちんと過去や将来の5年間ぐらい見た上で続けるとか、それでなおかつうまく、そこで取りやめたら逆に補助したお金を返してくださいとか、何かそういうことをしないと、結局、お金がなくなるとやめてしまう。フォローアップ、1年目は強く言われたからやったけれども、2年目はやらなかったと。そこら辺をどう考えておられるのか、まず1点目、御質問です。
【説明者】
今言われたように、先ほど申し上げましたようにフォローアップをして、養成システムについては全機関行うということでございます。あと、採用システムについても多くの、大部分の機関はやって頂くのですが、ただ、人件費がかかりますので少し規模は減るかもしれません。先生が言われましたように継続してフォローアップをしたいと思っています。それで、事業が終わればこういうシステムがなくなるということにしないために、そのためにできるだけ自主経費と合わせた形で事業を実施期間中も行うということで、例えば採用につきましては5年間の事業ですけれども、3年間はこちらから、それのプラスアルファと4年目、5年目は自主経費ということで、そういったことで、大学側にもある程度コミットメントしてもらうというようなことをしたシステムを内包してございますので、全くおっしゃるとおりで継続してフォローアップしたいと思っております。
【田辺委員】
2点目ですけれども、せっかくいいモデルができたのですから、それを積極的に文科省としてほかの大学にPRしたり、それはどういう形でやられていますか。
【説明者】
なかなか統計的にということはあれでございますけれども、例えばここに今日も来て頂いていますけれども、POシステム、これは全大学を毎年1回か2回、確実に回って、そして指導するとともに、その方を通じて宣伝をしてもらったり、あるいはセミナーを開いて行うというようなことをやってございます。これから更にそれを展開するために幾つかの大学と連携して、その拠点大学が普及するとか、そういったことも今後検討していきたいと思っております。
【田辺委員】
それは大学にとってみると、自分の大学だけがうまくいった方が競争力が付くわけで、つまり、ほかにどんどん広めるということは大学に任せるのではなくて、文科省が主体になってやらないと、じゃないかなと思います。
【説明者】
はい。
【田辺委員】
3点目ですけれども、そうやっていいモデルを是非ほかの大学も導入しようというときに、ほかの大学に対する支援を今後どうされるのかという、つまり、この事業と同じぐらいの補助は難しいと思うのですけれども、せっかくいいモデルを自主的にやろうということなのですが、そのときは何らかの支援は考えておられるのでしょうか、今後どうされる。
【説明者】
そこはこれからでございますけれども、ただ、全く同じような形で支援を継続する、これはずっと支援になりますので、できるだけ自主経費を多くしてもらいながら均てん化するということだと思います。そのときにイニシャルの部分が必要であるかどうか、これは少し我々も精査をし、大学側の意識の問題もありますので、検討していきたいと思っています。ただ、一番難しいのは、ここで支援をさせて頂きました11機関は、意識の高い機関でございます。そこから更に広めるということになりますと、もっと強固な意識改革が必要でありますので、そこは環境整備事業でありますとか、いろいろな整備事業と合わせるような形で国の政策を大学の方にお願いするというようなことを検討していきたいと思っております。
【岩瀬政策評価審議官】
梶川委員、お願いします。
【梶川委員】
単純な御質問なのですが、これは偶然国公立というか、私立大学は対象ではないんですか。それとも実績として私立大学はなかったということですか。
【説明者】
実績としてなかったということです。
【梶川委員】
それは審査をされて適した応募がなかったということですか。
【説明者】
審査基準をあらかじめ設けまして、その中で優れた大学を採用させて頂いたということでございます。
【梶川委員】
女性の雇用を伸ばそうという意味で言うと、その「優れた」という意味は、その政策観点から適した大学が私立にはなかったという意味ですか。その優れたという意味は、研究のレベルとかということではなくて、その優れた大学がないという意味が、女性の雇用を伸ばすのに優れていないというのがどういう基準なのかがいま一つ、どういうことかなというのは思ったのですけれども。
【説明者】
すみません、優れた大学という意味は、この事業は基本的に採用のシステム、養成のシステムを作るものでございますので、そういった観点で優れた採用のシステム、先駆的な養成のシステムを取り組もうという観点で審査をさせて頂いて、その結果、採択した大学が12大学だったということでございます。
【梶川委員】
私立の大学はそこには入らなかったと。
【説明者】
よろしいでしょうか。計画採用の際の妥当性、効率性というのを評価の基準にしてございます。例えば養成計画採用システムの数値目標でありますとか、それの具体性でありますとか、そういったものを事業計画として挙げて頂いております。その観点で評価をした結果、たまたま国立大学だけが選ばれたということだと思います。決して優れていないとかではなくて、予算の規模もございますので、2年間で採択したのは11機関ということでございますので、12番目にあったのかどうか、そこは今現状は分かりませんけれども、その予算規模と、それから、計画の妥当性を判断して採択された数が今のここにお示しした機関ということだと思います。
【梶川委員】
これ、人件費の補助を少しされるということは、先ほど来話題の運営者側に対するインセンティブという部分で、基本は運営経営者の意識に働きかけを、まあ、この場合は金銭的にされたいと。ただ、意識そのものに対する直接的な啓蒙的活動というのについては、まずどのようにお考えかというのと、もう一つ、今、結果的には国公立の学校、国立大学なわけで、そういう意味では本来御指導される立場としては、国が割と直接的に経営方針に、もちろん学の独立というのはございますけれども、私立よりはコミットメントのできる、ある種、雇用政策のようなものなのではないかなという気がするのですけれども、そういう御指導の可能性が高い国立大学に金銭的なインセンティブを働かせて雇用政策をより前に進められるということが何か、私立大学であればすごく分かるのですけれども、国立大学だともう少しストレートな経営方針への意識改革に対する御指導みたいなものは可能性がないのかなという気が少ししたのですけれども。
【説明者】
ストレートにお答えできるかどうかあれなんですけれども、先生が今言われたように意識啓発ということは重要だと思います。意識啓発といった場合にはガバニングボードに加えまして大学の場合はやっぱり学長、総長と、それから、学部、学科もございますので、その方々。それから、そこにおられる先生方のシニア層でありますとか、若い多様な方がいらっしゃいます。そういった方々の全体の意識を改革するということが重要だと思っております。そういう意味で、例えば中期計画、中期目標であるとか、いろいろな手法がございます。ただ、今回のダイバーシティ、この女性研究者の参画ということは、国家として女性の活動を支援し、活動、なかなか社会に出てこられていない女性の活動を支援するという国家の意思をしっかりと明確にするということでございます。
その上で、例えば運営費交付金であるとか、いろいろな大学のダイレクトな形がございますけれども、ここは国家としての意思を示すということ。それで、いろいろな大学に具体的に聞いてみますと、学長のガバナンスというのもございますけれども、国としてやっぱりある程度の後押しをしているということがあると、学長のガバナンスも効きやすく、また、意識改革の後押しといいますか、誘導政策にもなるということで、そういう意味でこの事業を展開してございます。これは私立であっても、国立であっても恐らく同じだと思います。
たまたま国立大学だけになってございますけれども、決して私立を排除した事業ではございませんで、純粋に事業計画の妥当性から判断したこの採択になってございますので、先生が言われるように意識改革であるとか、そういうのはほかの手も合わせてやっていくというのは、これはそのとおりだと思っております。ただ、補助事業でございますので、国としてやるべきダイバーシティ政策についての支援をある程度大学任せではなくて、我々として大学に意思を働かせるというようなことで補助事業になってございます。
【梶川委員】
私も国としてそういう方針がはっきり出た方が大学は動かれやすいだろうなということは全く同感でございまして、ただ、国立大学であれば、国としての方針というのは非常に出しやすい状況であって、こういう金銭的インセンティブがないと国としての方針が出ないということではないのかなという気が少しして、さっきおっしゃったように一般に同僚の研究者等々まで広く意識を持って頂くという意味で言えば、こういうインセンティブというのは経営の中ではインセンティブになりますけれども、御一緒に働く同僚の中で、そのダイバーシティに対する理解が進むということに直接的につながるかなという気が、思ったものですから、この程度の金額であればむしろ啓蒙活動を徹底された方が多くの男性研究者に意識改革がいけるのではないかなという気もしたということでございます。すみません、最後、長くなりました。
【岩瀬政策評価審議官】
コメントシートの記入が終わっておられない有識者の方がおられましたら、お願いします。事務局は回収をお願いします。コメントシートの取りまとめには若干のお時間を頂きますので、その間、引き続き御議論をお願いします。
水上委員、お願いします。
【水上委員】
お願いします。まず、1点目、事前の勉強会の中で、今、14ページにあるような博士後期課程の修了者における女性の割合と、その後の研究者の割合とかというのが分からないとなかなか評価できませんねという話をさせて頂いたところ、すぐに出して頂きましてありがとうございます。割と行政レベルでやっているとすごく対応して頂けるところとそうでもないところがあるのですが、大変御説明頂く中ですばらしく対応して頂いたなと思いますので、まず感謝申し上げたいなと思います。
ちなみに、ここまで出して頂いておいて恐縮なのですけれども、理学系、工学系の場合はどうだというのって分かったりしますか。分からなければ、ここまでやって頂いたので無理にとは言わないのですが。
【説明者】
すみません、すぐにはあれですけれども、一般論で言えば、女性と男性で……。よろしいですか。
【説明者】
これは平成24年度のデータでございますけれども、大学院博士課程の女子学生割合、理学が18.3、これに対しまして例えば教授ですと4.0%、准教授10.8%、助教の方は15.1%。工学系の博士課程の女子学生は16.3%おりますけれども、教授が3.1%、准教授が8.3、助教の方が13.6。農学系に関しましては、学生さん33.8%ですけれども、教授が4.7、准教授が10.9、助教が21%ということで、やはり教員の方が非常に少なくなっております。
【水上委員】
なるほど。今の数字をお伺いすると、最初、添付資料の1枚目に女性研究者の分野別採用割合というところで、系列別に目標が設定されていますけれども、大体この目標値、例えば理学系だと20%とか、工学系だと15%という数字と博士後期課程における女性の割合というのがほぼ、ほぼ一致してきて、つまり、博士後期課程の割合と同じぐらいの割合が女性研究者としても存在しているべきだという目標を設定されているという理解でいいですか。
【説明者】
はい。そうです。この目標は第4期の科学技術基本計画での目標設定でございます。先生が言われたとおりでございます。
【水上委員】
現状を見ると、そうであるにも関わらず、大体その目標の半分ぐらい、つまり、本来であれば博士後期課程でそのままいくとすれば、この倍ぐらいの人がなるはずなのになかなかそうなっていないということなのですけれども、その一番の理由は結局何なんですかね。
【説明者】
複数、恐らく理由があると思いますけれども、まず一つは自分の先をどうしたらいいのかという不透明感ということだと思います。あとは、まずはその場の不透明感と、それから、将来にわたる不透明感で申し上げると、研究者になったときに忙しい。ライフイベントがあってどうという一つと、それからやっぱり男社会での評価の問題、それから、そこから先でありますけれども、研究者及び、ポストの関係で言えばアカデミックに残れる人の数というのは、これは限定。女性が増えたとしても限定される。これは男も一緒でありますけれども、その先、例えば企業であるとか、そういった研究者以外での活躍の場の問題等々あると思います。そういう意味で、今回、採用・養成システムは、その大学におけるものと、もう一つ多分大きくあるのは企業であるとか、そういったところでのキャリアパスをどう構築していくかというのは、これは男性の研究者もそうなのですけれども、等しくあるのだと思います。
【水上委員】
複雑にいろいろ絡み合った議論をするとだんだん話が複雑になるのですが、まず整理をしたいのは、もちろん女性研究者の方々の中には、本当はすごく優秀なのだけれども、その研究者になる以外の道を自ら志向されて研究者にならないという方もいるのでしょうが、博士後期課程に在籍していて自分自身も研究者の道を志したいと思っていて、かつ能力的には男性に全然劣るところがないのに今の大学の人事制度等の関係で、機会の点で不均衡が発生して女性が不利な地位に置かれているという状況が存在しているというふうに理解しているのでしょうか。
【説明者】
はい。そういうのもあると思います。多くの場合、様々に女性研究者に対して採ったアンケートがございますけれども、その中でもやはり大きな課題としてそういうのが挙げられてございます。
【説明者】
補足を1点だけよろしいでしょうか。
【水上委員】
どうぞ。
【説明者】
過去、アンケートを採ってございまして、女性研究者が少ない理由の上位について御説明申し上げます。まず、家庭と仕事の両立は困難であるというのが女性の場合は6割若しくは男性の場合は5割の方が挙げている。2点目、育児期間後の復帰が困難であるというのが女性の方が約46%、5割弱、男性の方は3割。三つ目が業績評価において育児、介護等に対する配慮が少ないというのが女性の方は36%、男性の方は2割という形で挙げてございます。
【水上委員】
そのように考えたときに、つまり、ここで一つ問題になるのは、先ほども議論の中で出たんですけれども、女性研究者の割合を増やすということ自体を目標にするべきなのか、それともそこ自体を目標にするべきではなくて、女性研究者が働きやすい環境を整備するということを目標にするべきなのか、それはどっちだと考えられているんですか。
【説明者】
両方だと思いますけれども、基本的には環境を整備し、そして採用システム・養成システムについての不利益がないような形を作るということだと思います。その結果として、ダイバーシティ社会ということで女性の活躍の場が増え、そして進出することが増えるということがゴール。したがいまして……。
【水上委員】
ごめんなさい。ここ、すごく重要なところなのでかぶせるのですけれども、つまり、国として数値目標を設定するか、しないかというところが結構大事で、国としては飽くまで環境整備をするのだけれども、結果的に女性が増えたらいいなという話を考えるのか、女性をとにかく3割にしようというふうに数値目標を設定するのか、それは国の意思の問題としてどちらなんですか。
【説明者】
今、現状で申し上げますと、第4期の科学技術基本計画では数値目標を設定してございます。ただし、それは前の勉強会でもございましたけれども、質を問わずに、何を問わずに数値ということではなくて、やはり環境を整備し、しっかりと活躍できる女性がしっかりと活躍できる場を作っていく。その結果として、本当はさっき言いましたこの数がございます。3割という女性の数がございますので、それと同じようなところまで普通に持っていく社会、それを目指すということだと思っております。
【水上委員】
ここも1個重要なところなんですけれども、女性研究者の割合が増えていくと、結果として大学における研究自体が活性化して、研究のレベル自体も上がっていく。つまり、女性の研究者を増やすという目標設定は、もう少し上位の目標設定である大学の研究の研究力が高まるということに対して、相当の因果性があると考えておられますか。
【説明者】
因果性がある――それを何かのデータでもって証明できる因果性があるかどうかというのは少し……。
【説明者】
大学の教員になりたい方というのは非常にたくさんおられるんですね。ですから、黙っていても応募される方はたくさんいらっしゃるんです。ただ、そのままにしておきますと、女性の優秀な方が埋もれたままでなかなか発掘されないんですね。ところが、数値目標を設定いたしますと、ある程度女性を採らなければいけないということで、機関も優秀な方を探そうという探す努力をされるんですね。ですから、今までは埋もれてしまっていた方を発掘して頂くということが、数値目標を設定することによって可能になるということです。
【水上委員】
まず、これまで私はあまりスタンスをはっきりしないで質問をしてきたのですけれども、私は数値目標を設定すること自体は別にいいと思うんです。ただ、そのためには恐らくそうやって、30%が数値目標にするのかどうかという議論は他の要素もありますから、全く博士後期課程と同じ割合にするかどうかという議論はありますけれども、少なくとも今より高い数字を数値目標として設定するということ自体は、私はいいことだと思っているのですけれども、今、私、この事業で何が一番問題だと思っているかというと、その数値目標の達成に向かっているのかどうかが分からないということなんです。
つまり、例えば30%にしようと思うと、女性研究者って27万人ぐらいにしなければいけない。研究者って今88万7,000人いて、うち12万人が女性だから、今から15万人ぐらい増やして27万人ぐらいにしなければいけないわけですよね。20%にしようと思ったって5万人以上増やさなければいけないですよね。ということを考えたときに、この事業って40人採用しましたとか、60人採用しましたという事業ですよね。数値目標を設定するのはいいのですけれども、数値目標を設定するのだったら、何年後にそれを目指してどうするのかというアクションプランをちゃんと考えていかないと、この事業をやっていっても数値目標というか、この14.4%って全然増えないのではというのが私の疑問なのですが。
【説明者】
まず、数値の正確な状況を申し上げますと、14.4%というのは、これは大学も企業も全て入れた数字でございます。ここで申し上げた30%というのは、大学における数の目標でございまして、現在、大学においては24.2%が女性でございます。したがいまして、24.2%を25%ないしは30%にするというのが数値目標でございます。
【水上委員】
例えば30%にしようと思うと、つまり、何人増やせばいいんですか。
【説明者】
すみません、その数字はちょっとあれですけれども、計算をします。まずは24.2%を最終30%にしようとした場合には、これは先ほど申し上げましたこの期間、事業、11機関において事業実施後も行って頂く育成ですけれども、これはほかの大学と比べまして1.3倍になります。したがいまして、今の24.2%を1.3倍に全部がなれば31%ということになりますので、これは全部に広げるということになります。ただ、数字を今、すみません、後であれしますけれども、申し訳ございません。そういった形で基本的に数字に向かっていると思いますが、ただ、最終的にこの事業はこのシステムを広げる、システムを作るということでございますので、一応、数字はそういうことで向かってはいますけれども、いかにこれを広げていくかということが今後の課題だと思ってございます。
【水上委員】
1点確認したいのですけれども、全部の大学がこの割合で伸びれば達成するとしたときに、全部の大学にこれと同じ補助事業をしようと考えているわけではないということですよね。
【説明者】
はい。
【水上委員】
だとすると、例えばこういう大学で実際に成果を示して採用することがこの補助を受けたところはできたのだから、かつ、教育水準としても成果が上がっているというのがここまでの総括なんですよね。だとしたら、ほかの大学についても同じだけ採用してもらうことをむしろ目標として、少なくとも国立大学については、もうお金をもらわなくてもこうしてくださいというふうに目標を設定して、むしろ、達成しなかったところは運営費交付金を削りますよということぐらいやらないと、本当の意味で女性の登用って進まないんじゃないですか。だって、女性の登用を進めると研究の成果もより上がるし、ダイバーシティの獲得もできるんですよね。だったら、もっと本腰を入れてやるべきで、だとしたらお金を付けるというのではなくて、強制するべきなんじゃないですか。
【説明者】
多分、私どもも大学の側の意識でありますとか、大学がどういうふうにしたら動くのかというのは、多分、いろいろな手法があると思います。一つのやり方で動くということでは多分ないのではないかと思います。したがいまして、今、水上先生が言われたような手法であるとか、いろいろな手法を多分多岐にわたって行う。多分、大学の中でも今の財政状況でありますとか、いろいろありますので、そういったものを多岐にわたってシステム改革を促していくというようなことなのかなと今思ってございます。その方法も一つあると思いますけれども、いろいろな方法を駆使しないとなかなか、これまで動かなかった大学をやっぱりちゃんと促進して頂くということは、困難ではないかなと思ってございます。
【水上委員】
最後、これは意見ですが、私自身は多分、女性自体は能力においては全く男女として平等だと思いますが、現時点において、つまり、人事を採用している側が大変男性の比率が高いということから、普通にやると機会の上で男性の方がより採用されやすくなるという傾向は多分あるのだと思うんです。そうだとすると、一旦はその状況を破壊するところまでは外部から強制力を働かせないと、普通の状況になかなかならないのではないかなというのが私の意見です。なので、一定の強制力を働かせる必要が私はあると考えています。
その点については、いろいろな考え方があると思いますけれども、男女の共同参画で、かつ女性の登用を進めることで研究の水準自体も上がるのであれば、ある水準までは目標を設定するということは十分にありだと思いますし、その目標を超えて更にモデル性のある女性採用プロセスとか、更に環境整備をやっているという新規性とモデル性があるところに限って、更にプラスで助成するということはあるかもしれませんが、標準はここまでやってよねというところは義務にするべきで、標準はここまでやってよねというところに助成をするのはおかしいということではないかなというのが私の意見です。
【岩瀬政策評価審議官】
コメントシートの集計が取りまとまりましたので、取りまとめ役の有川委員より評価結果及び取りまとめコメント案の提示をお願いいたします。
【有川委員】
頂きましたコメントシートにつきまして、コメント、大きく分けると三つぐらいに分けられるような意見が出ております。一つは施策をとった機関についての今後の持続性をどう維持するかという点、二つ目はこの施策モデル事業として行われた効果をいかに水平展開するかという点、三つは本施策の手法を更に工夫する余地があるという意見になるかと思います。
まず、施策をとった、事業の対象となった機関の持続性については、本プログラムの趣旨は理解できるけれども、インフラの整備事業と並行して実施することがやはりこの事業の効果を上げることになるだろうという事業の一体性といいますか、その辺の連携を求める意見が一つ。
それから、今後の本事業の効果測定やフォローアップがやはり一番重要で、これを十分行う必要があるという意見。それから、水平展開につきましては、研究面での成果を上げた大学の事例がもっと広く各大学に認識されるように、国が中心となって促進していくべきだという意見。あるいは良い事例以外に失敗事例も、これまで議論が余り出ていませんけれども、失敗事例も含めて原因分析や評価を行って、それを水平展開だけではなくて持続性の方も合わせて適切なフォローアップをやっていくべきだという意見。
それから、三つの手法の工夫につきましては、今も議論がありましたように、もう少し補助を出すだけではなくて規制的な意味合いの施策も展開するということで、国として数値目標を設定して、それに達しない大学については交付金を減らす、あるいは逆にその成果を上げている大学に対しては積極的に補助を与えるという、そういう手法の更なる工夫が必要なのではないかという意見を頂いております。
こういった意見に基づいた最終的な評価結果につきましては、Aの廃止とDの現状どおりはありませんで、Bの事業全体の抜本的改善が2名、それから、Cの事業内容の一部改善が4名ということになります。一部改善が4名と数的には確かにこちらが多いのでありますが、抜本的改善の中の意見もこの一部という、一部の中にも抜本的な意味合いも入っているのだという理解をして頂いて、この委員会としての最終的な評価結果はCの数と、それから、一部に更に強い意味を込めさせて頂いて、事業内容の一部改善という結論をとりたいと思います。
そして、これに対するコメントとしては、今言いましたように施策の持続性をきちんと確保できるような工夫を更に行い、更にこの施策の水平展開が効果的に行われるように工夫を更にされたいというのと、併せて本事業の更なる手法の工夫についても検討を加えて頂きたいという、そういうふうな案でいかがでしょうか。よろしいでしょうか。では、それで。
【岩瀬政策評価審議官】
ありがとうございました。
それでは、以上をもちまして女性研究者養成システム改革加速事業の公開プロセスについては終了とさせて頂きます。
次の地域の特性を活かした史跡等総合活用支援推進事業については、5分間休憩の後、15時10分開始といたします。よろしくお願いいたします。

( 休憩 )

【岩瀬政策評価審議官】
それでは、3こま目を始めさせて頂きます。これからの時間帯は、地域の特性を活かした史跡等総合活用支援推進事業について御議論を賜りたいと存じます。
初めに事業概要の御説明をさせて頂きます。事業担当課は5分以内で簡潔に説明をお願いします。
【説明者】
文化庁記念物課長の髙橋でございます。本日はよろしくお願いいたします。お手元に資料を幾つかお配りしておりますけれども、こちらの横長のポンチ絵を中心に説明をさせて頂きますので、よろしくお願いいたします。
まず、文化財についての国の役割でございますけれども、文化庁の役割ということになりますが、私ども文化財の保存を行うのはもちろんでございますけれども、その保存のみならず、いわゆる活用ということもその任務にしてございます。その活用を行う上での具体の事業というものが、今日御議論頂きます地域の特性を活かした史跡等総合活用支援推進事業ということになってまいります。この事業目的のところを御覧頂きますと、いわゆる文化財の総合的な公開活用を推進するとうたってございますけれども、この総合的な公開活用というのは具体的にどういうことなのかということでございます。
分かりやすい例で申し上げますと、資料の4ページを御覧頂けますでしょうか。こちらで左側の復元的整備とうたっているところでございますけれども、整備前の写真を御覧頂きますと、いわゆる山になっておりまして、なかなか一般の人にはこれが何なのかが分かりにくいということで、これを整備する。一般の方々に分かりやすい形に持っていく。それが整備後のところの写真でございますけれども、こういう形でいわゆる古墳というものが良く分かるようになる。あるいは発掘したものが出てきて、それを記録して、また埋め戻すということだけではなかなか文化財というものが理解できません。
そういうことで、こうしたハード面、大路を再現するというようなことをやって当時の状況を体感してもらう。そこはここにある復元整備以外にも他のページにございますが、例えば少し前に戻って頂くと、歴史的建造物の復元であるとかいうような形で、あるいはガイダンス施設を造ったりということで、そこは地域のニーズを踏まえて複数のメニューを用意しております。いずれにしても、一般の方々に分かりやすい形で文化財というものを表すということでございます。ただ、このように単に整備しただけでは、それを見て、なるほどねということで終わってしまうこともあります。いわゆる従来型の整備というのは、そんなようなことでやってきたわけですが、この事業は単なる整備だけで終わらせるのではなくて、ソフト事業とセットにして実施をする。
ソフト事業というのは、例えば先ほど御覧頂いた4ページの写真で言いますと、整備途中から地域住民、あるいは子供たちに実際に復元を体験してもらう。もちろん、最後の仕上げは専門家がきちっとやりますのであれなのですが、こういう形でまさに文化財を肌で感じてもらうような事業をセットにして、いわばハード、ソフト相まって事業を実施するということでございます。その結果、人々に文化財を通じた地域のアイデンティティの再確認をして頂くとか、そこの文化財がいわば地域のシンボルということで、住民たちから、まさにこれは後世にきちっと伝えていこう、守っていこうというような危惧を醸成するといいましょうか、あるいは郷土愛というものを育成するということに資するということでございます。そんなことを目的としてこの事業をやっております。
ただ、我々としては何でもかんでも補助しようということでもなくて、地域において、その文化財をどう整備し、その整備をするだけではなくて、今後どう活用していくかというところを明確にプランとして位置付けているところに対して補助をしているというのがこの事業でございます。
簡単でございますが、概略説明でございます。
【岩瀬政策評価審議官】
それでは、私から論点について御説明させて頂きます。お手元の論点等説明シートを御覧ください。まず、一つ目として地域のニーズを踏まえた事業となっているのかという点。二つ目として、事業目的に照らし、事業の設計について改善・見直しが必要な点はないのかという点。三つ目として事業実施の結果、史跡等の公開活用等はどのように進んでいるのか、以上3点について御議論頂ければと思っております。それでは、外部有識者の皆様からの御質問等をお願いいたしたいと思います。説明者は外部有識者からの御質問に対し、簡潔明瞭に回答するようお願いします。
河村委員、お願いします。
【河村委員】
御説明、ありがとうございました。質問させて頂きます。今御説明くださったようにソフト事業とセットでなさる。それで、何でもかんでもというわけではないということで当然おっしゃって、明確なプランとして位置付けられているところに対してこの事業で支援をするというふうに御説明くださったのですけれども、その何でもではないというところで、もう少しお尋ねできればと思うのですが、では、そもそものところでどういう文化財に対して支援するのかというところのこの線引きというのは、すごく素人の質問で恐縮なのですけれども、明確なんですか。特に今回視察に行かせて頂いたように後になってから、ごく最近になってから実は文化財であったことが分かるというようなものもあったりすると思うのですけれども、ここの線の引き方によっては、ある意味、この対象となる事業がどんどん広がっていってしまいそうな気もしますが、その辺はいかがでしょうか。
【説明者】
各史跡とかの数というのは、全国で3,000ほどございます。じゃあ、その3,000について全てやるのかというと、なかなかそこはそういうわけでもなくて、自治体において整備基本計画というようなものを作っていたりします。そういうものを作っている対象の史跡というのがまた限られた数ということになってございます。ここに具体の物とかがあるのですが、名称はいろいろあるのですけれども、文化財を地域の中でどのように位置付けて、どのように今後使っていくのかということを各自治体において、まさに外部の有識者の方に入って頂いて、検討委員会のようなものを作って、そこで議論してまとめられているのが一般的でございます。
その中には私ども文化庁の方からも専門の調査官が参画させてもらったりして、いろいろ議論をしながら作っていくというわけなのですが、そうしてそういうものを作ったところについて、今度、実際にこの事業でどこを対象にするのかということになってきますと、そこはそれぞれの自治体において、それぞれの財政状況もございます。この事業は飽くまで半額補助でございますので、その裏負担分について自治体の方で負担をして頂くことになりますから、そこは市としてどのタイミングでそういう整備に掛かれるかということはまたそれぞれいろいろ御意見を頂きながら、実際の補助対象を決めていくというようなプロセスになってございます。
【河村委員】
すみません、念のためですが、その3,000ぐらいあるとおっしゃった史跡の数自体がこれからどんどん増えるとか、そういうことはないんですか。それはもうある意味大体フィックスされたものと理解してよろしいのでしょうか。
【説明者】
史跡の数は毎年増えてございまして、お手元の資料の中に過去10年の、この横長の資料ですが、史跡名勝天然記念物指定件数変遷表というものがございます。これで見ますと、例えば一番上の史跡で言いますと20件弱程度、年によって変動はありますけれども、こんな形で毎年指定件数は増えてございますので、ここは今後もそれなりに増えていくのだろうとは思っております。
【河村委員】
追加でよろしいですか。すみません。では、そのときの基準というのは、それは動かない国としての基準がおありになって、その基準に合ったものがたまたま見つかったから、こうやって少しずつ増えているということですか。
【説明者】
はい。おっしゃるとおりです。そこは文化審議会という専門の機関がございまして、審議会がございまして、そこで学術的な判断、価値判断を行っていて、これは国指定のレベルだということは、そこで御議論頂いて毎年こういう結果になっているということでございます。
【岩瀬政策評価審議官】
田辺委員、お願いします。
【田辺委員】
この事業の目的は、各地域といいますか、自治体が取り組もうとするものを支援するということで非常に良いと思うんですけれども、ただ、この事業の目的を実施するために実際、文化庁でしている内容として、資金を出しているだけではないかという気がするんですね。何かというと、本当は自治体がどういうふうに計画を作ったらいいかとか、そういう公開活用モデルというのを、逆にいろいろな事例を御存じなわけですから、そこから抜き出してこういうふうにやるといいよと自治体に対してそういう情報を提供するとかということが事業の中でやられているのかどうか。
2番目、そうやってせっかく整備したのに、その地域以外の人は知らないわけですよ。そもそも整備したところ、整備した結果こういう議論ができましたというのを文化庁として広くPRしているのかというと、していないようですね。ホームページを見てもなかったような気がするんですよ。ということは、お金だけ出して、その地域の人だけが一生懸命苦労して、地域の中ではやっている。だけど、ほかの地域に幾ら、例えば私も古墳を少し見せてもらいましたけれども、府中市に古墳があるなんて知らない人は、府中市が幾らPRしても分からないわけですよ。
そもそも文化庁とか何かどこかで、いや、府中市にはこういうのがあるよというのをやれば、府中市、行ってみようかとか、そうではなくて府中市のホームページにしか載っていないようであれば、誰も気が付かないのではないかという意味で、この活用支援推進事業としてお金を付ける。極端に言えば、お金を付けるだけでは、それは本当の趣旨になっていなくて、もっと、さっき言いましたように計画作りでちゃんとこういうことをやるといいよとか、そういうモデルとかやり方の提供、あるいはアドバイス、それとそのできあがった後、それを広く普及、PRする。そういうところまでやられているのかどうか、あるいはやられていなければやった方がいいのではないかと思うのですが、いかがですか。
【説明者】
実は先ほど少し例に取り上げた整備基本計画を作ったり、あるいは実際にその事業に入った後も、入る前の計画段階からもそうなのですが、今日はたまたま2人、専門の調査官が出席しておりますけれども、私ども文化財調査官という者がおりますので、彼らがそれこそ全国を飛び回って指導を行っている。具体的に例えば復元ならどういう形でやったらいいかとかいうことを直接指導を行ってございます。ですから、彼らはほとんどいなかったりするわけなのですが、少ない人数で全国を飛び回っているので。
そういうことをやりつつ、ですから、お金を出すだけではなくて指導、助言とセットでやっているということと、それから、2点目で先生に御指摘頂いた情報発信のところについては、それはまさにおっしゃるとおりで、それで、私どももこの整理の非常に優良事例というものを今集めていまして、これはこの事業とはまた別に予算を取りまして、その中で事例研究をやっております。それで、何とか近いうちにそれを全国に発信しようと思っているのですが、その別の事業とこの事業とまさにセットのような形でやっていきたいと思っております。
【田辺委員】
補足ですが、今、話を聞いていて、調査官の人がやられるというのは非常にいいことだと思うのですけれども、ただ、お2人が来てもらうだけではなくて、自治体が勉強したいときに、そういうのがきちんと情報としてどこかにきちんとあるとかいうのも必要かなと思うんですね。だから、直接指導も、これもまた非常に重要だと思いますし、それは多分効果的だと思うのですけれども、いわゆる幾つか、それもいっぱい厚い報告書がありますだけではなくて、いろいろな形で自治体の人が見られるようにするといいなということ。
2番目の、やったからには、金を付けたんですから全てをちゃんと出すべきで、確かに私は、いいものは、ここはいいよというのをちゃんと評価してあげるとか、これも重要だと思いますけれども、お金を付けて整備したやつは必ずみんなに伝えるというのがなかったら、結局、うやむやになってしまって、逆にうまくいかなかったところは金をかけたのにこんなものかという、フィードバックといいますか、できるような仕組みにして、みんな元気よくやるようにすることがこの事業が生きるのではないかと思います。
【説明者】
1点目のところにつきましては、私どもの方で整備の手引のようなものを作っておりまして、それを見ればある程度のことは各自治体で分かるという形にしております。それに加えて、あと直接の指導という形でやってございます。
それから、2点目のお話は誠にそのとおりだと思っておりますので、私どももそういうことができるように努力をしてまいりたいと思っております。
【岩瀬政策評価審議官】
松浦委員、お願いします。
【松浦委員】
御提示頂きました資料の1ページ目に戻ってしまって大変恐縮ではございますが、タイトルの中に総合活用支援という言葉がございますね。この総合活用支援という意味ではいろいろな観点があるのだと思うのですけれども、活用ですから必ずアウトカムというものが当然必要であろうと思います。一つは地域の住民に、子供たちに参加して頂いて、そのアイデンティティをきちんと継承していくというような御説明は先ほど頂きましたが、例えばそういうことをしたからといって、総合ですから、例えば経済的なアウトカムというのもあるかと思うのですけれども、例えば府中市の古墳だったら、府中の人は知っているけれども、ほかの人は知らない。要するにビジターを誘致して、それでその史跡を核にして経済的な効果を発揮するとかというのであれば、そういうアウトカムも必要であろうというのですけれども、この総合的というふうに非常に広い網がかかっているので、その辺の理解がしにくいのですけれども、何か追加的に御説明とかございますでしょうか。
【説明者】
その「総合的」の意味でございますけれども、私どもが意図していたのは、この中でも幾つかメニューを提示してございますけれども、いろいろな地域のニーズ、実情に応じてその整備の仕方というのは違ってくるだろうと思っておりますので、それに合わせたいろいろなメニューを提示しているという意味でございます。それで、目的については先ほど冒頭申し上げたようなところを意図しているのですが、経済的な効果というところまで直接に意図しているかと問われると、そこまではということがあるのですが、結果としてそういうのはあるのだろうとは思っております。
【松浦委員】
国としてはきちんと整備計画を立てられた地方自治体からの申請に対して審査をして、これに補助金を交付しているということですけれども、ですから、そういう意味では、文化庁としてそういうアウトカムをきちんと設定しているのかという御質問をするよりは、本来は各自治体に対してこれをきちんと整備することによってどのようなアウトカムを目標としているのかというような調査というか、審査、そういうものがないとやはりこれをやった意味というものが良く分からないのではないかというように思いますが、その調査項目の中に、審査項目の中にそういうものがきちんと入っているのでしょうか。
【説明者】
現時点ではそこまで求めておりません。ですから、どういう経済的効果があるのかと問われたときにすぐ、今この場でお出しすることはできないのですが、先生の御指摘は誠にそのとおりだと思っておりますので、そういうことも考慮に入れて今後この事業の実施に当たっていきたいと思っております。
【松浦委員】
連続した質問で大変恐縮です。私は別にアウトカムは経済的なものだけだとは思っておりませんので、前半のアイデンティティうんぬんに関して、あるいは全国に散らばる貴重な史跡に関してこれを保存するという趣旨に関しては、特に異論はないのでございますけれども、幾つかの地方自治体のアウトカムをきちんと審査対象にして頂く必要があるのだろうということと、もう一つは、もし経済効果ということをお考えになるのであれば、これは文化庁単独の政策というよりは、官公庁ですとか国交省による交通アクセスですとか、要するに宿泊施設の整備が民間の力でどういうふうになっているのかとか、そういうこともやっぱり整合性を取りながらやっていかないと、実際的な、経済的な観点から見るだけでは成果は上がらないのではないかなと思うのですけれども、その辺に関していかがですか。
【説明者】
その点は全く異議ございませんので、そういう方向で努力したいと思います。
【岩瀬政策評価審議官】
水上委員、お願いします。
【水上委員】
事業の目的について少し確認をしたいのですけれども、このレビューシートの事業目的のところには地域の特性を活かした史跡名勝天然記念物及び埋蔵文化財の総合的な公開活用を推進することを目的とするとあるのですが、この「推進する」のところまでで手段なような気がするんですね。なので、推進した結果、何を目的としているのかをもう1回教えて頂けますか。
【説明者】
今の補助要綱にはこういう書きぶりになっているのですけれども、先生御指摘のようにやや手段じみた感じがございます。なぜこういう公開活用をやるかと申し上げますと、冒頭少し触れましたように、これによって文化財を通じた地域のアイデンティティの再確認でありますとか、まさに地域のシンボルとしてその文化財を位置付けて、地域の郷土愛でありますとか、あるいは文化財の保護、保護観念の醸成といったようなものを養っていくということでございます。
【水上委員】
そうすると、いわゆる地域復興とか、経済的なメリットというのは、この事業の目的にはなっていないということでいいんですかね。
【説明者】
直接意図しているわけではございません。
【水上委員】
じゃあ、間接的にはそういうこともあるかもしれないけれども、つまり、この事業が税金を使うのに適しているかどうかを判断するときには、そこではなくて飽くまでその地域のアイデンティティ等々がこれによって醸成されたということが検証されているかで考えればいいということでいいですか。
【説明者】
はい。先ほども申し上げたように経済的効果が全くないというわけではないと思っております。当然、効果としてそういうことはあろうと思います。文化財を整理すれば、そこに人が来るという……。
【水上委員】
すみません、じゃあ、少し聞き方を変えますけれども、実際に採択する事業を選定するときに経済的効果というのは見ているんですか、見ていないんですか。
【説明者】
現状では見ておりません。
【水上委員】
見ていないんですね。
【説明者】
はい。
【水上委員】
ということは、少なくともそれはたまたまそういう効果も実際には発生することがあるけれども、事業を行うに当たっては別にそれは見ていないということですね。
【説明者】
はい。そのとおりです。
【水上委員】
なるほど。だとすると、例えばこれをやったことによって当該地域の人に、この史跡がどのぐらい浸透したかとか、あるいは史跡を取り巻く歴史的なメッセージ、こういう事情があったみたいなことがどのぐらいこの整備をしたことによって浸透したかとかというところが一つストレートな成果指標になるのだと思いますけれども、そのあたりはどうなっているんですか。
【説明者】
お手元にお配りした、この23から25年度に整理が完了した史跡等の活用実績という3枚物の資料を御覧頂けますでしょうか。縦長のものです。よろしゅうございますでしょうか。こちらに整備が終了した、多くの史跡等はまだ整備途上だったりするものですから、整備が完了したものについて、その実績を少し調べてみました。
全部で20件ございますけれども、それぞれ効果のほどはまちまちなのですけれども、多くのところで来訪者の数がこうでしたよでありますとか、あるいは学校現場での利用が非常に増えているという状況でありますとか、あるいはこの史跡の整備をきっかけに地域のお祭りができて、毎年そこでやるようになりましたでありますとか、あるいはその文化財を守るための地域の保存会というものができましたというような形で整備されたものについては、それぞれの地域に浸透していっているというのがお分かり頂けるのではないかと思っております。
【水上委員】
こういう実績を出して頂いたこと自体は大変すばらしいと思うのですけれども、これを踏まえて例えば20件ある中で文化庁としては、これは非常に良かったな、整備して良かったな、Aランクですね、これはちょっとどうだったのかな、Bランクですね、これは出すべきではなかったな、Cランクですみたいなものの評価って実際できていますか。
【説明者】
正直言って、そういうような評価はしてございません。
【水上委員】
つまり、この事業はある意味文化ではあるのですけれども、国が国税を投入するということは何らか検証する必要があると思うんです。何の実績もないよりは、一応、実績が出てきたということは、私は評価されるべきだと思うのですけれども、実績が出てきたら、次にそれをどう評価するかということが大事だと思うのですが、これ、評価のところが良く分からなくて、これ、人数を見ても、例えば増えているものもあれば、減っているものもあるし、結局、これはうまくいったと言えるのか、うまくいったと言えないのかというところが、正直、この実績を見ても良く分からないんですね。つまり、どういうものだとうまくいったと考えるのかというところが分からないと、今後どういうものにお金を付けていくべきなのかというのが分からないですよね。そこの方針はどうなっているんですか。
【説明者】
そこはまさに我々も同じ思いでおりまして、こういう状況を踏まえて、これも最初に少し触れました、別途こういう事例検証を今やってございます。そういう中で優良事例というものをピックアップして全国の自治体に近いうちに配布しようということで、今、準備を進めているところでございます。
【水上委員】
ちなみに、これは申請する時点でこういう評価軸で、こういうふうに効果を検証する予定ですという計画というのは示されていないんですか。各自治体が国に補助金を申請するわけですけれども、その時点で我々としてはこういう成果指標、自治体自身は、我々としてはこういう成果指標で見ようと思っていて、こういうふうに検証しようと思っているというのは、申請段階で出させてはいないんですか。
【説明者】
現状では、そういうことはやってございません。
【水上委員】
そういうのもやっぱり要るんじゃないですかね。つまり、国が成果指標を出すのもいいですけれども、一方では自治体自身が自主的にやっている部分もあるので、彼ら自身はこの事業で何を実現しようと思っていて、結果としてその実現しようとした計画は達成したのか、しなかったのかということは恐らく検証しないと実際にはいけないと思うのですが、それは今後はやられるおつもりだという理解でいいですか。
【説明者】
はい。確かに国が一律に何か基準を設定してというよりは、ある程度の基準は必要なのかもしれませんけれども、その地域の状況に応じてそれぞれが目指すところというのは恐らくあると思います。ですから、今、先生に御指摘頂いた点は非常に我々にとっても有意義なお話ですので、是非中に組み入れていきたいと思っております。
【水上委員】
是非勘違いをしないで頂きたいのは、国として基準が全く要らないという話ではないと思うんですね。つまり、完全に計画を丸投げしてしまうと、達成できる計画を最初に出されてしまうとおしまいだということになので、国としてはもちろん国費を出すことによって必要な、少しジェネラルな水準とか閾値というのは必要なのだと思うんですけれども、それだけでは多分、史跡等々は性質がそれぞれ異なっているので、それに上乗せする形で各自治体が載っけて、計画値を対象に出してもらう。それに対して実績を検証するということを是非まずやって頂ければなと思います。
ここからなのですけれども、そういう意味で、現時点ではこの事業、まだ検証が不十分かなと思っているのですが、補助率という意味で、ある意味でこれは自治体の側にしてみると、今の時点でも半分出しているわけで、地域のために非常にプラスになるという判断をしてやられているわけですけれども、だとすると、もう少し自治体に出してもらうという選択肢はないでしょうか。つまり、国が半分出しますよという話ではなくて、もう少し自治体が、例えば3分の2とか、自分たちで、まさにこの地域にこの史跡は絶対に必要だから是非やろうという非常に強い意欲があって、自らも計画を提出してきてという本気なところというんですか、というところについて一定の後押しを国がするということは意味があると思うのですけれども、これ、文化財のいわゆる保護、保全ではなくて活用なので、活用である以上は自治体の側がもう少し本気度を見せたところに、むしろ集約していくという考え方が私はあるのではないかと思いますが、その点はいかがですか。
【説明者】
そういう考え方もあろうかと思うのですが、ただ、実際に自治体の方々からお話を聞くと、逆に国の補助率をもっと上げてほしいというような御意見が多かったりするわけでございます。ただ、私どもとしては、そういう御要望に対しては、逆に今先生がおっしゃったようなことで、これはまさに地域の方で、地域にどこまでやる気があるかという問題なのだから、そこは国がここまでで限界ですということで強く申し上げているというところでございます。
【水上委員】
最後、意見で、実はあまり争いがなかったということが分かって良かったのですが、私自身は、自治体が本当にある程度本気で前のめりになってくれているところにしないと、活用である以上は筋が通らないのではないかなと思います。自治体にしてみれば、それは国が全部出してくれるのが一番良くて、少しでもたくさん補助してくれるのがいいに決まっているのですけれども、そうなってくるとだんだん計画とかも甘くなってきて、お金を出してくれるからまあいいかということになっていくんですね。自分の財布で勝負すると、本当にこれって地域に意味があるんだろうかということをよりシリアスに考えることになりますので、適切な整備をするという意味でもやはりもう少し自治体に負担を求めた方が、恐らく質の高い史跡の活用ができるのではないかなというのが私の意見です。
【岩瀬政策評価審議官】
外部有識者の皆様におかれましては、コメントシートへの記入も併せてお願いします。記入が済みました場合には挙手頂けましたら、事務局の方で回収をさせて頂きます。
梶川委員、お願いします。
【梶川委員】
今、水上さんが言われたのとほとんど同じですので結構なのですが、これ、制度的立て付けで補助金率というのを案件によって動かしていくということは、今現在ではないのですが、ある程度進まれたときに、その裁量をしていけるような余地というのは制度としてあり得るのでしょうか。
【説明者】
現在は、このポンチ絵を1枚めくって頂いた2ページのところで、4.のところでございますけれども、いわゆる保有団体については補助率を下げているということはやってございます。ただ、それ以外のものについては、恐らく補助金の考え方ということになってまいると思いますので、この事業だけではなくて、その国の国庫補助全体でどう考えていくのかということになってくるのかなという気はいたします。
【梶川委員】
この一つの事業の設計としては、案件でというのは難しいかなということでございますか。これ、今ずっと議論のように自治体から見た座標軸というか、アウトプット、アウトカムと、国から見てこの文化財はみたいな話という、少し事と次第によっては事業が進んでいくと意味合いが違ってくるかなという気もしたもので、その評価基準を国として別に持たれるということがあり得るのかなということだったのですけれども、まあ、それは制度的立て付けとして難しいのかなという御質問です。
【説明者】
国指定の史跡ということで言えば、価値の違いを更にどう付けるのかということになってくるので、逆に今、史跡の更にランクが上で特別史跡というものがございます。特別史跡について逆に補助率を上げるのか。今は特別史跡であろうが、普通の史跡であろうが、50%にしております。それは結局、特別史跡になれば補助率が上がるということに例えばしてしまうと、逆にそれを目的に、学術的な価値ではなくて、補助率を上げんがために特別史跡を目指す動きというものが出かねないので、そういうこともあって我々は一律50%ということで、今やっているということでございます。
【梶川委員】
はい。
【岩瀬政策評価審議官】
松浦委員、お願いします。
【松浦委員】
2点御質問でございます。少しかぶるかもしれません。この事業の趣旨からすると活用なのでございますけれども、活用のために整備、修復をする、あるいは展示するためのモデルを作るというような話なのですけれども、やはり目的の中に地域経済の活性化みたいなことを入れておかないと、じゃあ、これは修復したけれども、その後の維持管理についてはどんな計画があるんですか。修復しておしまい。また何十年かしてボロボロになってしまったから、また補助してくださいというお話になりかねないということで、私はやっぱり地方自治体の計画そのものの中にこれを実現したときに、これを維持管理していくための経済的な裏付けというものをきちんと述べて頂くべきだろうと一つ思います。
それともう1点でございますけれども、国中に貴重な史跡はたくさん分散しているのだと思います。それを総合的に活用するということではありますけれども、総合的に活用したいけれども、経済的には貧しい自治体とかもありますし、東京都のように富が集中しているようなところもあるというところで、一律50%ということになると、どうしても非常にやる気はあるのだけれども手を付けられないという自治体もあって、水上先生御指摘の逆パターンですけれどもね。だから、やる気と経済力をきちんと評価をして、補助率の変動というものが工夫できないのかどうかというあたりがやっぱり私としてはお聞きしたい点でございます。
【説明者】
目的の中に地域の活性化のようなものを入れるということについては、是非その方向で考えたいと思っております。
2点目の件については、先ほど梶川先生からのお尋ねに対する答えと同じになってしまうのですが、いろいろ補助率に段階を付けるということについては、補助金の在り方全体の中でどう考えるか、この事業だけではなくてということがまずあろうかと思います。その上で、あとは文化財というものについて、同じく国指定というものについて、そこにいろいろそれぞれの自治体の事情によって補助率に差を付けるということが果たして適切なのかどうかということは、これは検討させて頂きたいと思います。
【松浦委員】
ありがとうございます。
【岩瀬政策評価審議官】
有川委員、お願いします。
【有川委員】
事業の変遷と実施状況図を見て頂きながら、この事業、レビューシートを見ると25年度が初年度にはなっているのですけれども、しかし、これ、多岐にわたるメニューの原因を探っていくと、史跡等の方の事業は平成元年にスタートがあり、また、埋蔵文化財の方は平成16年度あたりにスタートがあるわけでして、かなりの事業がずっと現在のところに集まってきた、集約されてきたという状況になっているのですが、先ほど来いろいろ議論、委員から指摘があった目的が非常に地域のアイデンティティとか、あるいは郷土愛の確保とかというやや抽象的なのですけれども、この辺の目的は、その当初から変質してきていないのかどうか、同じ目的がずっと続いているのかというのと、もし抽象的な目的が続いているのだとすると、成果指標の設定とか、それに基づく測定というのは、これも委員から指摘は頂いていますけれども、これまだ立てることは難しかったのか、そして今後どうやってそれを立てるつもりなのか、その辺を教えて頂けますでしょうか。
【説明者】
例えば史跡の整備の関係で言いますと、平成元年に始まってしばらくは、要すれば整備をすること自体が目的だったということでございます。今の形態に近い形になったのが平成23年度でして、このときにハードとソフトの一体化を図ったということでございまして、この時点から単に整備するだけではなくて、その後どうそれを使っていくのかという視点を取り入れたということでございます。
したがって、まだこの事業が始まってそれほど年数がたっていないということもあって、今、先生に御指摘頂いたように評価指標というものをどう立てるかというのは非常に難しいなと思っていて、我々も苦慮しているのですが、今回、先ほど御説明申し上げた、こういう活用実績のようなものを取ることによって何とか成果をと思っておりますが、ここは更に改善をしていきたいと思っております。
【岩瀬政策評価審議官】
コメントシートの記入、まだ終わっておられない有識者におかれては、記入をお願いします。事務局は回収をお願いします。コメントシートの取りまとめに若干のお時間を頂きますので、その間、引き続き御議論をお願いします。
河村委員、お願いします。
【河村委員】
補助金の出し方のところの問題意識で御質問させて頂きます。それで、要件がいろいろあってということで、この資料にもお書きになっていて、それで、実際にどの遺跡に対してどの要件が当てはまってという資料も御用意頂いてありがとうございます。
まず、お尋ねしたいのですが、この縦長の補助要件一覧の資料を見ると、色が塗ってあるアからオのところに丸が付くと更にたくさんの要件を満たさなければいけない、そういう状況があると思うのですけれども、この下半分に出てくるような遺跡というのは、赤い、ピンクのところには丸がありませんけれども、こういう遺跡というのは、それこそ先ほどお話のあったような、この事業の前身の事業も含めてハード面での整備というのは、かつてあって、それがもう終わって、どちらかというと普及・啓発の方が中心になっているという、そういう理解でよろしいでしょうか。
【説明者】
はい。そのとおりでございます。
【河村委員】
分かりました。であれば、その補助の出し方なのですけれども、難しいのですけれども、国に、お金に余裕があればということはもちろんあると思う。まあ、なかなかそういう状況でもなくなってきていると思いますので、一つの考え方として、確かにこの補助対象事業の(1)のところ、最初の整備のところ、ハードのあたりは、これは確かに自力でやれといってもなかなかきついところもあるかなと思いますので、国が半分というのは分からなくはないのですが、例えば(3)の普及・啓発の事業のところについては、もう少し国の負担率を下げるという形で市町村なら市町村、それから、都道府県に持って頂くような形というのができないのかどうか。
それから、それをできるようにするためには、例えばこの実際の文化財を活用するときに入場料とかは取っていらっしゃらないのだろうと思うのですけれども、そういうところで例えばいらしてくださる方に少し薄く負担を求めるとか、そういう対応があってもいいのではないかなという気がしますが、そのあたりはどのようにお考えになりますか。
【説明者】
恐らく参加体験型、例えば古代の体験とかいうような場合にいろいろな道具とかを使ったりしますけれども、そういうところは実費負担とかでやっているところもあると思っております。ですから、全てが税金でということではなかろうと思っております。
また、最初の御指摘のソフト面については、補助率を下げるということについては、これはやはり自治体サイドからすれば、補助率を上げてほしいと思いこそすれ、下げるということについては相応の反対があろうかと思っております。また、逆に規模はそんなに大きくありませんので、それぞれの一自治体当たりにすると。そうすると、逆に国の補助率が下がると、そもそも予算化が難しくなる。今、国が半分出すからということで何とか事業をやっているところもあったりするわけですので、そこは貴重な御意見とは思いますけれども、もう少し地方の実態をよくよく聞かないとなかなか、今この場で「はい」というようなことは申し上げにくいなと思っております。
【岩瀬政策評価審議官】
では、水上委員、お願いします。
【水上委員】
先ほど松浦委員との議論の中で経済的な目的も一部目的の中に入れていくという話がありましたけれども、そういう視点を入れるのであれば、一つの考え方としては、今後、こういう文化財ですとか史跡とかというものに対する維持や管理というものって、通常は何年とか何十年かに一度定期的に発生してくるわけですけれども、一旦きちっとした整備をして公開して、それによって何らかの独自財源、収入がそこから生まれてくるような場合は、その先に発生するような維持管理がそこから出てくるということが、例えば考えられる案件があり得るかと思うんですね。そういうものについては、例えば少し高い補助率で整備を積極的にしてもらって、代わりに独自財源が生まれるから、その先は国としてもお金を出さなくてよくなるので良かったねということは一つ考えられるかと思います。
もちろん、これはどこでもできるわけではなくて、かなりきちっとした事業性を評価したところしかできないと思いますけれども、逆にそういうところに限っては高い補助率を認める。そうでないところについては、基本的には別に経済的に意味があるわけではないので、それは自治体がかなり高い割合、出してくれないと無理ですよねというような一つ線引きをすると、複数補助率というのを考えたときに割と恣意的になりにくいのではないかなと考えております。これは意見なのですが、そのあたりも御検討頂ければなと思います。
【梶川委員】
これ、国としてはあまりこの優先順位みたいなものというのは、今の段階でお持ちのものではない。これはあくまでも自治体の有効活用というか、コミュニティ活性ということなので、いわゆる国が管理全体として見ておられる文化財として、よりこっちを先にしてほしいなみたいな、そういう思いというのがあるようなことはないわけですか。
【説明者】
はい。飽くまで文化財を管理している自治体側主導で今この事業をやっているというところでございます。
【梶川委員】
そうすると、本当に主体性は自治体におありになるということなわけですね。
【説明者】
はい。
【梶川委員】
はい。
【岩瀬政策評価審議官】
いかがでしょうか。
【梶川委員】
事実確認に近いのですけれども、そうすると、これ、自治体の財源がだんだんきつくなってくると、この予算規模自身も自動的に落ちてこられる可能性もおありになるということでしょうか。
【説明者】
はい。理論上はそうだと思います。ただ、例えば今年度については、予算額を上回る希望を頂いております。
【岩瀬政策評価審議官】
ほかにいかがでしょうか。水上委員、お願いします。
【水上委員】
時間があるようなので、やや視点の違うところからなのですけれども、いつもこういう文化物をレビューで評価をするときには大変悩ましくて、つまり、文化というのは元々余り経済合理性、経済合理性と言ってしまうと文化ではなくなってしまうという側面がありますよね。一方で、国の税金を使っている以上は文化なので完全につかみ金ですというわけにもいかないというところになってくると思うのですけれども、そこで、国としてどういう評価指標を設定して、今後、文化というものを捉えていくかという基本的な方針って結構大事だと思うのですが、そのあたりの考え方って何か議論されていますか。
【説明者】
文化財ということではなくて、文化全般ということでございましょうか。
【水上委員】
文化財と文化全般で考え方が違うのであれば、とりあえずここは文化財の事業なので文化財で議論して頂ければと思うのですが。
【説明者】
まさにこの文化財の中でも特に史跡とかいうものですけれども、これについてどう評価していくかというところが非常に悩ましいので、我々も今悩んでいるというか、検討途上にあります。ですから、繰り返しになりますけれども、こういうようなことをやってみたりして、だんだんこれを、今日いろいろな御意見を頂きましたので、更に改善を加えていきたいと思っております。
【水上委員】
恐らくこれ非常に難しいので悩むところだと思うのですが、基本的には検証可能な複数の指標を作るということだと思うんですね。1個の指標で文化を評価するのは多分なかなか難しいと思うんですけれども、検証できませんというわけにはいかないので、だとすると複数の指標の合わせ技でどうやって評価するかということになるのだと思うんです。
さっきので言うと、例えば経済上の目的という意味で言うと割と分かりやすくて、その後の維持、メンテナンスのコストが収益によってどのぐらい賄えたのかというようなところが非常に重要なポイントになってくるでしょうし、あるいは本当に地域のアイデンティティということだとすると、そもそもその史跡の抱えている歴史というものが、その地域の中でどのぐらい重要なのかということとか、元々その地域の中の歴史の中での認知度みたいなものがこれぐらいあって、それを特に地域の人々が、特に子供たちの間でどのぐらいまで浸透させたいと思っているのかという地域の中の目標みたいなものもあるかもしれないと思うんですね。
そのあたりのこと、つまり、経済的な指標と非経済的な指標というのは、多分、どっちも大事なので、恐らく複数指標で評価するということにされるしかないのかなという理解を基本的には持っています。そのあたり非常に悩ましいところだと思いますが、いずれにしても何か評価しないと、今後なかなかレビューをやる以上は難しいので、固めて頂ければなと思います。
【説明者】
大変貴重な御示唆を頂きましたので、考えてみたいと思っておりますので、また引き続き御指導のほどよろしくお願いいたします。
【岩瀬政策評価審議官】
コメントシートの集計、申し訳ございません、まだ作業中でございますので、御意見等ありましたらお願いします。
【水上委員】
1点だけ、すみません。逆に国としては、これ、是非公開のために整備したらいいのになとすごく思っているのに、自治体の側がちっとも言ってきてくれないというケースというのはあるんですか。
【説明者】
今までそういうものはないですね。
【水上委員】
だとすると、基本的には自治体のイニシアティブに任せたとしても、その結果として変なことにはならないという理解でいいですかね。
【説明者】
はい。また、日頃から自治体とは我々コミュニケーションを密にしておりますので、変なことにはならないと思っております。
【水上委員】
分かりました。
【岩瀬政策評価審議官】
お願いします。
【梶川委員】
全然論点ではないので、先ほど調査員とおっしゃいましたっけ、御指導に行かれるというような、これ、こういうノウハウというのは、今、国で皆さんがお持ちのものと、自治体サイドでノウハウにかなりばらつきというか、そういうソフト的御指導みたいなものが施策的に今後必要になったりするというようなことはどうなんでしょうか。補助金が出なければ、お金がなければやらないということもあるのですが、ノウハウ的なものも育てていかれるということはすごく大きなことかなと思うので、そういう観点でお聞きしているのですけれども。
【説明者】
おっしゃるとおりでして、仮に事業を行わないところであっても電話の問合せとかも結構ありまして、そういったノウハウを常に情報提供しているところでございます。全国にある程度専門の職員も大分配置されてきているのですけれども、配置されていないところもありますので、そういったところには県を通してとか、県の指導も入っておりますので、直接国からではなくて県の文化財課とか、文化振興課とか、そこにもたくさんの専門職員がおりまして、そういったものも直接県の中のは指導して頂く。それからまた国の方の指導もしていくといった形で、複数の形での指導をしていっているという現状があります。
【岩瀬政策評価審議官】
田辺委員、お願いします。
【田辺委員】
今見ていて気がついたのですけれども、この補助要件の中の(1)のケ、これに丸が全然付いていないんですね。耐震というのは非常に重要だと思うのですけれども、何でないんですかね。今まさに耐震のことというのは、建物も非常に重要だと思うんですけれども、これ、何でケが全然ないのかなという。
【説明者】
その事業の項目が追加されたのが、まだ25年度からということで、25年度が初年度になります。耐震、基本的に我々記念物課が扱っているのは不動産でして、その上の建物とかというのが必ずしも我々の記念物課の管理ではなくて、参事官室であったりとかというところが多くありますので、そういった意味での耐震というのは対象物がそもそも少ないというのがございます。まだ始まったばかりで、まだ手を挙げておりませんので、実際にはまだ申請がゼロということでございます。
【田辺委員】
なるほど。分かりました。これからですね。
【岩瀬政策評価審議官】
それでは、コメントシートの集計が取りまとまりましたので、取りまとめ役の有川委員より評価結果及び取りまとめコメント案の提示をお願いいたします。
【有川委員】
頂きましたコメントシートの意見、大きく分けると三つぐらいに分けられるのかと思います。一つは本事業の目的をもう少し明確に示すという問題と、二つ目はこの本事業の成果を測定する指標設定の工夫が必要だということと、三つ目はこの補助事業の本事業の手法として、補助率等にも更に工夫をしてめり張りの効いた施策にする必要があるのではないかという、そういう意見が出ております。
若干個別に読ませて頂きますと、施策の目的を明確に示し、明確に示された目的の下にメニューの整理を行うとともに、目的に即した指標の設定と効果の測定を行う必要があるという意見。あるいはアウトカム指標があってしかるべきであるけれども、どうもその指標が十分ではないので、事業体の出してくる計画の審査に当たっては、その指標をよりどころにしてきちんと審査をすべきだという意見。あるいは個別案件ごとの評価を行うことが十分でなくて、成果目標が曖昧だという指摘、その改善を求める意見が目的や指標のところで出されております。
それから、補助の在り方というか、補助率を含めた補助の工夫については、補助率をその施策の目的に応じて上下するような工夫も必要だろう。あるいは自治体にある程度イニシアティブを持たせるような普及・啓発のような事業については、自治体側の負担をもっと上げても良いのではないかという意見。そのほか文化財の活用については、特定の当該自治体だけではなくて、ある程度広域的な活用というものもあっていいのではないかという意見なども出されております。
こういったコメントに基づきまして、評定は3対3に分かれたのですけれども、Bの抜本的改善が3名と事業内容の一部改善が3名に分かれましたが、同数で事業の改善という場合は、より重たい指摘の方という指針が一つありますが、今見て頂きましたように、ほとんどのコメントが一部改善というより抜本的な改善、指標を含めた抜本的な改善を求めておりますので、当委員会の最終的な評価結論としてはBの全体の抜本的改善というのを求めたいと思います。
そして、それに伴うコメントとしましては、事業の目的を更に明確に示す工夫をされたいということと、その明確にされた目的、示された目的の下での本事業の成果指標の設定と、その指標に基づく測定の在り方を工夫されたいということと、本事業のより効果的な執行のための補助率を含めた工夫を更に検討されたいという、そういう意見でいかがでございましょうか。よろしいでしょうか。では、そういうことにいたします。
【岩瀬政策評価審議官】
ありがとうございました。
それでは、以上をもちまして地域の特性を活かした史跡等総合活用支援推進事業の公開プロセスについては終了させて頂きます。本日は、以上をもちまして終了となります。明日は13時から超小型衛星研究開発事業について公開プロセスを実施いたしますので、よろしくお願いいたします。本日は、ありがとうございました。

── 了 ──

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-- 登録:平成26年07月 --