平成24年6月20日(水曜日)13時00分~17時50分
文部科学省講堂(東館3階)(中央合同庁舎7号館)
【髙橋会計課長】
それでは、ほぼ定刻になりましたので、ただいまより文部科学省公開プロセスの2日目を開会させていただきます。
議事に入る前に、これからの議事にご参加いただく評価者の皆様をご紹介させていただきます。
東京学芸大学客員教授、藤原和博様でございます。
【藤原】
藤原です。
【髙橋会計課長】
公認会計士・税理士和田義博事務所の所長、和田義博様でございます。
【和田】
よろしくお願いいたします。
【髙橋会計課長】
クレディ・スイス証券株式会社チーフ・マーケット・ストラテジスト、市川眞一様でございます。
【市川】
よろしくお願いいたします。
【髙橋会計課長】
それから、テーブル反対側に変わりますが、大阪大学工学研究科環境・エネルギー工学専攻教授の堀池寛様でございます。
それから、神奈川大学人間科学部特任教授、南学様でございます。
【南】
よろしくお願いいたします。
【髙橋会計課長】
大妻女子大学教職総合支援センター所長、酒井朗様。
【酒井】
よろしくお願いいたします。
【髙橋会計課長】
以上6名の評価者の皆様にご参加いただいております。
それでは、コーディネーターの伊藤様、よろしくお願いいたします。
【伊藤コーディネーター】
それでは、これから本日3事業についての公開プロセスの作業に入りたいと思います。昨日に引き続きまして、本日コーディネーターを務めます伊藤と申します。よろしくお願いいたします。
今日は3事業、各自1時間半程度で結論を出すということになっております。評価者の方は、昨日に引き続きのお願いでございますが、できる限り一問一答でご質問いただければというふうに思います。また、これは、説明者の方も含めて、できるだけ簡潔にご質問、ご答弁いただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。
それでは、皆様、お手元の冊子51ページからになります。留学生短期受入れと日本人学生の海外派遣を一体とした交流事業です。
それでは、まず神本政務官より選定の理由につきましてお願いいたします。
【神本政務官】
昨日に引き続きまして、評価者の皆様、今日もどうぞよろしくお願いいたします。
私のほうから留学生短期受入れと日本人学生の海外派遣を一体とした交流事業、これを公開プロセスの対象事業として選定いたしました基本的考え方についてご説明いたします。
本事業につきましては、事業規模が大きく、また、今後も新成長戦略等に基づいてグローバル人材の育成と高度人材の受け入れ拡大を推進していく必要があることなどから、政策の優先度が非常に高い事業であるということで選定いたしました。事業成果の検証のあり方等について、ぜひともご検証いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【伊藤コーディネーター】
ありがとうございました。
それでは、ご担当よりご説明をお願いいたします。
【説明者】
それでは、説明させていただきます。私は、文部科学省で学生・留学生課長をしております松尾と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
資料でございますが、コーディネーターからありましたように、51ページからとなっています。今回のこの公開プロセスの事業ですが、日本人学生のグローバル化を目指しまして、日本人学生の海外派遣、これは長期のものと、それから、大学の交流協定に基づきます1年未満の派遣、受け入れの事業となっています。
資料51ページはレビューシートになっていますが、これは文字で書いていますので、恐縮ですが、56ページからポンチ絵になっていますので、これで説明させていただきたいと思います。
今回のこのレビューですが、先ほど申し上げましたように長期の派遣、それと1年未満の交流協定に基づく派遣、受け入れの事業ということになっています。
まず、私のほうから大きく3点ご説明させていただきたいと思います。
まず、56ページは背景説明です。続きまして、57ページは最近の政策動向ということで、政府の決定、あるいは民間からの提言ということになっています。そして、58ページ目以降が各事業の個別の事業概要となっていますので、この3点について簡単にご説明させていただきたいと思います。
まず、56ページの資料ですが、今の背景です。これは、政務官からもありましたとおり、グローバル化については、世界がグローバル化しておりますので、日本人学生もグローバル化に対応しなければいけないということです。左側が日本人の海外留学の状況、右側が外国人留学生の受け入れです。
まず、56ページの左側をごらんいただければと思います。日本人の海外留学の推移ですが、2004年がピークになっていまして、8万3,000人です。これが徐々に減少していまして、直近のデータによりますと、2009年では、6万人弱となっています。
一方で、真ん中の棒線ですが、アメリカについては、おそらく授業料の高騰等の影響もあると思いますが、ピーク時4万2,000人から半減というような状況になっています。
一方、一番下の三角のグラフですが、これは、大学の交流協定に基づく留学です。交流協定に基づくということで、質の保証をしながらの交流の推移ですが、これは確実に伸びている現状です。直近のデータ、2010年ですが、2万9,000弱です。もちろん日本人の18歳人口はピークに250万ぐらいあったものが、今は120万~110万ということですので、それに伴って数が減るのは当然ですけれども、ここ数年、やはり18歳人口に占める割合も減少している状況です。
一方で、海外を見ますと、中国、韓国、インド等の、台頭している国が相当な伸びになっております。したがって、これらの国々との比較から日本の劣位というのがあるわけでして、学生の海外派遣を伸ばし、グローバル化に対応する必要があるということです。
その理由、原因を分析したのが左側の下ですが、国大協、東大等の調査によるデータを記しています。大きく4つほど原因があるかと思っております。
まず1点目ですが、海外留学にメリットを感じるかどうかということです。今、日本国内ですべて甘受できるということで、例えば就活への有利さ等々でメリットを感じるかどうかというのは当然あるわけですが、ここは企業とともに改善しながら進めていかねばならないところです。
2点目は、就職活動の早期化、長期化に伴いまして、例えば3年で留学に行こうとした場合には、そこが阻まれるということです。これも企業活動とセットで改善していくということで、昨年、就活ルールを定める経団連の倫理憲章に、留学経験も配慮した採用活動をするということを明記することで対応しています。
3点目が、やはり経済的な問題です。ここは解決していかなければいけない。これをいかに進めていって、そしてフォローアップしていくかというのが今回の大きな課題であろうかと思っています。
最後に、大学の体制の問題が大きな課題としてあります。例えば単位認定の問題ですとか、そういった形で留学しやすくする環境をつくっていくということ。したがいまして、今回の事業とともに、例えばグローバル人材育成事業であるとか、世界展開力といった大学のグローバル化とセットで運用していくのが課題になってくると思います。
一方で、外国人留学生の受け入れの状況ですが、これは右のほうを見ていただければと思いますが、ここ数年、留学生の受け入れについては順調に伸びてきています。ただ、震災の影響もありまして、昨年については約2.数%の減ということで、13.8万人の海外留学生が今、日本で勉強している現状でます。
下の円グラフを見ていただければと思いますが、留学生の数ですが、アジアがやはり多いということです。一方、交流協定に基づく留学生は、アジアだけではなく、ヨーロッパや北米からの受入れも多くなっています。こういった形で内なる国際化を進めながら、日本人のグローバル化に寄与するという観点で、ここを政策として伸ばしていきたいというのが今回の背景です。
続きまして、57ページを見ていただければと思いますが、これは、近年の政策動向について記した資料です。左側が政府の決定文書、右側が産業界等々からの要請、要望、それから声となっています。
政府の方針の下に書いております新成長戦略ですが、これは一昨年6月に閣議決定されたものです。2020年までに実現すべき政策目標ということで、グローバル人材についても明記されています。特に高等教育の国際化、それから、外国人学生・教職員の戦略的な受け入れ、それから、日本人学生の留学・研修支援ということです。最終的に数値目標を出し、それを受けた形で翌年の1月に新成長戦略実現2011を決定し、長期だけではなく、やはり気づきの観点、学びの観点から、3カ月未満の交流を行う事業への支援が明記されていおります。こういったものにのっとって、現在、事業を展開しているところです。
また、本年6月にグローバル人材育成推進会議で決定された文書です。グローバル人材というのは、一番下の参考のところに書いておりますが、1段階から5段階まで、最終的には交渉・折衝を行うレベルまで人材を高めていくということですが、ここに記していますのは、18歳ごろからおおむね20歳代前半までに、1年以上ないしはそれに相応する経験を積んでもらって、グローバル化に対応するということです。
人数的な目標ですが、先ほど申し上げました18歳人口、今は110万人~120万人、その約1割の11万人を目標として、1年以上の経験をしてもらう。ただし、それだけではなくて、やはり厚みのある中間層の人材の育成という観点から、1年未満の短期留学を含む海外経験、それから、内なる国際化ということで、外国の留学生の受け入れも促進するということが明記されています。
これに合わせて、ここに記載しておりませんが、6月には雇用戦略対話、また、その下のワーキンググループで、日本人の留学の促進、内なる国際化について議論されています。
また、右を見ていただきますと、産業界からの提言ということで、産学協働人財育成円卓会議、また、日米のカルコンでも同旨の提言がされて、それを受けた形で、高等教育の国際化に向けた体制整備、それから、日本人学生の海外経験の促進、これについては海外インターンシップと連携しながら促進していきたいということです。
こういったものを背景として、次の58ページが、今回の具体的な事業です。58ページに一覧にしていますので、これでもって最近の動向についてご説明したいと思います。
まず、この目的ですが、先ほどの背景と政策動向のとおりですが、まず大きく3点です。1点目は、グローバル化社会に対応した、ある程度高いレベルで交渉のできるグローバル人材の育成という観点です。それから、分厚い中間層ということで、中間的な人材のグローバル化ということです。そして、大学の国際化の促進、さらには内なる国際化の促進ということです。
事業は、幾つかございますけれども、変遷を58ページでごらんいただければと思います。一番最初に、平成7年度に短期の受け入れ・派遣、3カ月以上1年未満を開始しております。その9年後、平成16年度に、より長い修士、博士の学位取得を目的とした長期派遣を開始しました。また、平成23年度に、3カ月未満の派遣・受け入れの事業を開始しております。
そして、今年度、24年度については、派遣の拡大という観点で、長期派遣については100人を200人に、短期派遣のうち、3カ月以上1年未満の派遣を760人から2,280人に、事業展開させていただいております。
その次、具体的に事業の概要についてご説明したいと思います。59ページです。
長期派遣ですが、これは、大学及び個人からの応募ということで、平成16年度から開始しております。審査の要件、フォローアップについては、59ページの5ポツの審査実施方法、それから、フォローアップに記載のとおりですので、割愛させていただきます。
今後のフォローアップの仕方ということですが、やはり採用時の審査の厳格化、それから、継続的なフォローアップを実施したいと思っています。継続的に進路のポジション等もこれから追いかけていきたいと思っています。
資料60ページ、61ページは、短期の派遣、短期の受け入れですが、どちらも大学間の交流協定に基づいて一定の質を保証しながらの事業です。
目的としては、長期の派遣への動機づけ、それから、長期ではなかなか行けない学生もおります。そういった厚みのあるグローバル人材の育成をするということ、それから、短期ということもあって、学業、語学等グローバル化の必然性の気づきを与え、次のステップに進んでもらうことを目的としている事業です。
60ページの短期派遣については2つ事業がございます。3カ月以上1年未満、それから、平成23年度から開始しました3カ月未満、ショートビジットです。
3カ月以上1年未満ですが、これは、各大学の推薦に基づくものとプログラム枠の2種類がございますが、近年、徐々にプログラム枠に重点を置いているところです。
そういった形で、他の大学の国際化プログラム、例えばキャンパス・アジアのプログラムであるとか、今年度から開始しますグローバル人材育成推進事業といったプログラムと連携しながら、大学の国際化と学生の奨学金の支給を合わせて運用したいと思っています。
実施要件、審査要件、フォローアップは、60ページの四角に書いてある審査の観点、フォローアップに記載のとおりですが、計画が明確にされているかどうか、大学の国際化・国際競争力強化に資するものであるかどうか、自費ではなかなか経費が支弁できない学生であるか否か等も判断しながら審査しております。
引き続き、審査を厳格化するとともに、継続的なフォローアップの実施、例えば学生の単位取得、意識の変化等々についても強化したいと思っています。
これはまだできておりませんが、例えば実施主体であります日本学生支援機構の内部に有識者会議を設置し、継続的に運営体制、フォローアップの体制の見直しを行っていきたいと思っています。
続きまして、右の3カ月未満、ショートビジットです。これは平成23年度から開始した事業です。したがいまして、3カ月未満ということで、例えば3月に行った学生は今ちょうど戻ってくるところですので、今フォローアップをしているところです。ここは、やはり長期への動機づけ、厚みあるグローバル化人材の育成、それから、学業への、あるいは留学への気づきという観点を求めております。
3カ月未満ということで、より質の保証が担保されなければならないということで、例えば単位認定、単位付与というのを大学に慫慂し、長期への動機づけをしていきたいと思っています。
審査の観点、それから、フォローアップは、四角のところにあります審査の観点、フォローアップに記載のとおりですので、割愛させていただきます。
今後の改善としまして、まだ1年目ですので、フォローアップを見て改善点を抽出せねばならないと思っていますが、やはり明確な目標設定がなされているかどうか、あるいは継続的なフォローアップが大学においてなされるかどうか。それは例えば数値目標だけではなく、次のステップにどう行くか、勉学をどう行っているか、あるいは学生間のネットワークをどう構築しているか、学生の意識変化がどうなっているかといったことについて、きめ細やかにフォローアップをしていきたいと思っております。
61ページですが、これは短期の受け入れです。大学内の内なる国際化を進めるという観点で、やはり同様の趣旨で大学間の交流協定に基づく3か月以上1年未満、3か月未満の受け入れです。審査の観点、フォローアップも記載のとおりですので、時間の関係もありますので割愛させていただきますが、同様の趣旨で受け入れをするということです。
資料62ページですが、本事業の派遣、受け入れの国別の状況等々について記載しております。
事業の概要は以上です。
【伊藤コーディネーター】
ありがとうございました。
それでは、会計課長より論点のご説明をお願いいたします。
【髙橋会計課長】
それでは、続きまして資料63ページに論点説明のシートを掲げております。
今回の論点ですが、幾つか掲げておりますが、まず、事業の必要性でございます。今、説明がありましたうち、特に3カ月未満のショートステイ・ショートビジットについては、これまで大学が自主的に実施できた交流協定締結校との学生交流事業に対する支援になっているのではないか。言いかえれば、大学の本来の経費をもって行う事業ではないかといった観点が1つでございます。
それから、本事業の成果目標が明確に設定されているのか。事業の成果、例えば学位の取得状況でありますとか、進路等の検証はどうなっているのか。さらに、3カ月未満のショートスティ・ショートビジットについて事業目的に対する成果がどうなっているのか、こういった論点があろうかと思います。
また、事業の有効性に関しましては、これも23年度からのショートステイ・ショートビジットを新たに実施しまして、留学生の数は大変大幅に増加しておりますが、それに伴って、選考するに当たって、目的を達成するに足る人材であるかどうかといったところが適切に判断されているのか。
さらに、留学・派遣期間の多様化は、外国人留学生の受け入れ数や日本人学生の派遣数の増加につながるものの、グローバル人材として求められる知識レベルや質の確保ができているのか。人数以外の成果の検証をどうしていくのか。こういった論点、多岐にわたりますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【伊藤コーディネーター】
それでは、ご質問、ご意見、お願いいたします。市川さんからどうぞ。
【市川】
すいません、よろしくお願いします。先ほどのご説明の中で、これ、すいません、余談なんですけれども、57ページ目の下のグローバル人材育成推進会議の中で、「グローバル人材の育成のため、18歳頃から概ね20歳代前半までに1年以上の留学ないし在外経験」と書いてあって、それがグローバル人材のステップだというような書き方がしてあって、私、すごいショックを受けたんです。私は、公立の小学校、中学校を卒業し、公立の高校に行き、私立の大学に行き、それまでほとんど海外経験はなかったんですけど、外資系に勤めてもう18年。このカテゴリーでいくと、私はグローバル人材ではないのかなと思って、今、非常にショックを受けたんですけれども、すいません、それは余計な話です。
【市川】
お伺いしたいのは、今、会計課長からもお話がありましたけど、ショートステイ・ショートビジットについて、特にショートビジットのほうについてなんですが、ちょっと確認なんですけれども、このショートビジットの数というのは、例えば56ページ目にある日本からの海外留学生というところの数にはカウントされますか。
【説明者】
入ってないです。
【市川】
これは入ってないんですね。
【説明者】
はい。
【市川】
それはよかったです。これがもし入っていたら、これもまたショッキングなことだったと思うんですけど。
【市川】
実はショートビジット等について、あくまでホームページベースなんですが、各大学がどういう取り組みをされているのかというのを拝見していたところ、例えば、名前は申し上げませんが、比較的大きな金額を受け取っておられる、ある国立大学においては、まさに先ほど会計課長からのお話もありましたとおり、そもそもやっていた交流事業として毎年学生の交換をしていた。それも、ここは1週間です。ほぼ1週間、7日間の交換をしていたものが、昨年の学内報に書いてあるんですけれども、今回からショートビジットの支援がついてよかったですみたいな書き方がしてあるんですが、内容の問題はあるにしても、もともとあった制度であるということ、それから、1週間の訪問であるということ。これを国の支援とすることについて、もう一回、意義をちょっと説明していただけませんでしょうか。
【説明者】
おそらく個別のプログラムについて云々というのはなかなか難しいわけですけれども、まず、ショートで行くということについては、やはり次の留学の気づき、それから、戻ってきた学生の意識の向上が見られるのは明確です。
【市川】
意識の向上が見られるのが明確だというのは、どこで判断されているんですか。
【説明者】
今、アンケート調査といいますか、フォローアップ調査を行っているところですけれども、今回、こういうことがありましたので、緊急で幾つかの大学に抽出で調査を行いました。その中で、、数値的に示すことができるものではありませんが、学生の声として、例えば異文化の体験で視野が広がった、インターンシップを通じて国際的な企業への就職の動機づけであるとか、あるいは戻ってきてから英語の勉学への意識の向上、それから、異文化交流で次の学習への気づきになったという声があります。1週間という期間がいいのかどうか、そこはよく我々も検証しなければいけないところだと思います。
それから、語学だけで行くようなプログラムは極力採用しないようにすることが重要で、やはり学生間ネットワークであるとか、あるいは次のステップになるということを評価して、次の事業に展開していかなければいけないことだと思います。
【市川】
わかりました。では、もう少し時間をいただいてもよろしいですかね。ほかの某私立大学、かなり大きな大学です。名前は言いませんが、今、語学だけに偏らないようにということでしたけれども、28あるビジットのプログラムが全部語学なんですけど、これはご存じですか。
【説明者】
それはショートビジットですか。
【市川】
ショートビジットです。
【説明者】
極力それはないように……。
【市川】
いや、ご存じかどうかだけ教えてください。
【説明者】
今のデータは知りません。
【市川】
あともう一つ、先ほど一定の質を保証しながらというふうに言っておられましたよね。それはそれでいいですね。
【説明者】
はい。
【市川】
ほんとうにいいですね。
【説明者】
はい。
【市川】
その大学がショートスティ・ショートビジット、ショートビジットの募集を学内でかけている、その大学の留学センターの広報文があるんですけど、そこに書いてあるのは、「本奨学金はこれまでの学業成績や家計状況によることなく、資格と要件を満たした参加者全員が対象となります」と書いてあります。資格とは何か。「資格とは本学の正規課程に在籍する者」としか書いていない。それは、今おっしゃった内容と、ここの募集の要項は随分違うのではないかと私は思うんですが、いかがですか。
【説明者】
そこはよく確認いたします。
ただ、一方で、大学の間での交流協定に基づくプログラムということですので、プログラム自体の質の保証はされていると思います。
【市川】
ちなみにプログラムの中身も幾つか見させていただいたんですけど、要は、これ、大学の名前がわかっちゃうといけないんですが、旅行案内ですよ、旅行案内。特に驚いたのが宿泊先なんですけれども、宿泊先どこでもいいんですよ。ただ、行く先の大学のキャンパス内の宿舎で、同じ大学の学生との相部屋だと書いてあるんです。つまり、泊まるところが、その大学の人しか一緒にはならないということなんです。
今、草食男子とか、いろいろ情けないことが言われる状況ですから、動機づけをしてあげるというのは、もしかしたら大事かもしれません。そんな必要は全くないと私は思っているんですけど、大事かもしれない。
でも、その中が自分の大学の学生としか一緒に泊まれないような仕組みに国費を出して、これも留学の数にはカウントされていませんが、基本的には交流留学という名前がついているわけですよね。実態は、それに資する内容にはあまりにもなっていないんではないかという気がしますが、いかがですか。
【説明者】
今、先生からおっしゃられた例えば相部屋云々ということであれば、そこをよく検証して、次のプログラムで、そういうのはなるべくないようにしなければならないと思っております。
ただ、一方で、今、先生が言われたように、気づきの点であるとか、そういったところはありますので、運用については、1年目で、ほんとうに手探りの状況もございましたが、しっかりとよく精査したいと思います。
【市川】
最後に、意見がましいことを言わせていただきますけれども、経団連に対して留学したかしないかについて、それを評価の対象に入れるように申し入れをされたというお話でしたが、はっきり言って関係ないと思うんですよ。企業はやはり生き残りをかけているので、企業がどういう人を採用するかというのは、使えると思うか思わないか。
【説明者】
おっしゃるとおり。
【市川】
ですよね。別に極端な話、留学したからグローバル人材なのか。そもそもグローバル人材と殊さらに言うこと自体、おかしな話だと私は思うんですけれども、グローバル人材、グローバル人材といって、何なのかさっぱりわかりませんが、それと同時に、留学したかどうかといったような形而上的な問題ではなくて、学生の本質をどう育てていくかということをもっと考えていただかないと、国のお金を使って莫大な運営費交付金、私学助成を投入している中で、この手の仕組みを続けても、企業がほんとうにこの人を採りたいと思うような人材は、いつまでたっても育たないのではないかという感想を申し上げて、ここでの一連の質問を終わらせていただきます。
【説明者】
先生がおっしゃるとおりで、企業は使えるか使えないかということだと思います。したがって、留学に行ったことを評価してくれということではなくて、留学に行ったことを適正に評価して欲しい、そこでやったことを評価して欲しいということが1点。
2点目は、今、就活というのが3年の中途から始まります。留学に3年で行ってしまうと就活の時期を逃してしまうという環境があります。そこを配慮して欲しいということで、経団連の倫理憲章に今回書き込まれたということを申し上げたところです。
先生が言われるように、はっきり言って使えるか使えないかというところです。別に形而上学的に行ったからどうということはないと思いますが、そういった環境も整備するということなんだと思います。
【市川】
最後にします。多分、逆に整備してあげるからだめなんですよ。(笑)整備してあげるから弱くなっていくんですよ。そもそも授業の単位として与えられている研修に1週間行く。そういう制度がそもそもあった。そこに8万円のお金をつけてあげるから、だからだめなんですよ、だから強くなれないんですよ、と私は思いますけどね。
【伊藤コーディネーター】
私から今の流れで1点確認なんですが、一番最初のご説明の中で、この短期の派遣についてはより質の担保が求められるというお話をされていて、先ほど市川さんのご質問の中で、その質の担保というのは留学生の質なのか、プログラムの質なのか、それはどちらなんですか。
【説明者】
基本的に見ているのはプログラムの質です。
【伊藤コーディネーター】
プログラムの質ですか。
【説明者】
はい。そこはさらに、例えば留学生の選定に当たって、ここから一歩踏み出さなければいけない部分は私どももあると思っております。ただ、今見ているのはプログラムの質です。
【伊藤コーディネーター】
多分、その部分で、一方で改善のポイントの中で、「参加学生の条件厳格化」と書いているということは、この後、学生の質の担保は必要だというご認識だと思うんですが、現状においては、先ほど市川さんからご指摘のあった、ある大学で参加条件はもうだれでもいいよとなっていることについては、現状はもう仕方がないということなんでしょうか。
【説明者】
そこは改善を検討したいと思います。あとは、大学の国際化の体制整備と合わせて、このプログラムを運用することによって、そこは一定程度の質の担保をこれからしていきたいと思っています。検証していきたいと思います。
【伊藤コーディネーター】
今は短期派遣のところの議論が続いていますが、もしここの短期派遣、短期受け入れのところ、もう少し関連で。堀池さん、どうぞ。
【堀池】
3カ月未満というのはなかなかいい制度だなと最初に私は思いまして、割合、長期で行くのは学生にとって、先ほど松尾課長がおっしゃったように、留年の危険とか、就職の障害とか、いろんな障害があるわけです。それは、また別途、後で議論になると思うのですけれど、短期で、夏期休暇とか、そういうときに幅広く海外に出すと。しかも、今までの制度は、大体成績のよい者というのが多くて、そういう観念が多分学生一般にあるので、先ほど市川先生がおっしゃったような、そういう文言になるのかなという気もいたしますが、はっきり言わせてもらいますと成績が中くらいの子も、低いレベルの子も、あまねくある程度の審査要件をもって海外に出すというのは、非常に意義があるんじゃないかなと存じます。
特に、松尾課長の話にもございましたけれども、やはり異文化と触れ合う体験を若いうちにさせておくというのは、教育的効果が若ければ若いほど高いと思いますので、できたら大学の若年の学年、あるいは高校とか、そういったところまでウイングを伸ばしてやるということは、国として非常に価値のあることだと思います。
支援条件の厳格化というのは非常に難しいとは思うんですけど、ここで議論するのは個々のプロジェクトに対してどういう縛りをかけるかという話になると思います。そういう意味で、それぞれのプロジェクトを考えられるところで、例えばコーディネーターを置くとか、ある程度学生の事前事後のさばけ方の変化とか、そういったものをコーディネーターがしっかり記録して、グループとして記録をとって、ある程度時間的な余裕を持って判断していただけるというのが非常に大事かなというふうに思います。その辺は、文部省として、そこまで考えておられるのかどうかということをちょっとお聞きしたい。
【説明者】
まず、フォローアップですが、今、先生がコーディネーターと、そこまではちょっと考えておりませんでしたが、それがやはり重要ということで、フォローアップの体制のあり方は強化したいと思っています。
【市川】
ちなみに先ほどの大学の件、もうlつだけ申し上げますと、オブリゲーション、受けた学生の方の義務としてあるのは、所定のプログラムを修了すること、これは当たり前ですよね。それ以外に何をしなければいけないかというと、学習成果に関するレポートを期日までに提出することと書いてあるんですよ。これはいいなと思ったら、A4・1枚、表紙不要。つまり、A4・1枚の紙で、ここであると31日以上60日以内であれば、国から16万円の支給が受けられるということに、少なくとも形としてはなっているということです。
【伊藤コーディネーター】
南先生。
【南】
やはりショートビジットのクオリティーに関して、まだこのレベルの議論というのはあまりにも遅い。大変恐縮な言い方ですけども、私自身の体験で言うと、二十数年前ですがアメリカの語学研修に、大学独自の奨学金をもって送り出していたのは、その時代でももう既に遅いのだから、せめて単位の取得ぐらいにしようということで大改革をしまして、このときに一番便利だったのはアメリカのサマーセッションだったんです。
サマーセッション、ご承知のように短期集中型で、しかもドミトリーもあいていますから。それで企画したのは、とにかく単位取得のために行けと。それから、教員には取得の単位を事前にちゃんと協議をして、帰国後、単位をとってくれば、それをちゃんと認定しましょう。それから、ドミトリーは、向こうの大学に話をして、絶対に日本人同士は同室にしないでくれということまで言って派遣したんですね。これはもう二十数年前の話です。
十数名セレクトして、全員が無事に単位をとってきましたけれども、これは激烈なことで、彼らもほんとうに苦労して、たった1科目というか、単位にすると2単位か4単位だったと思いますが、それだけでも集中してやっと取得できた。その彼らに聞いて一番おもしろかったのは、そのクラスの授業は単位取得の日本人は全然いないんだと。ただ、語学取得クラスの学生は、8割は日本人だというようなところを非常に強調したし、必要な図書を買ってきたので、帰りの成田で荷物をあけたときに本ばかり並んでいて、税関で、おまえは何をやってきたんだ。ほかのみんなはブランドばかりなのにとビックリされた。その子たちは本をいっぱい買ってきた。あえて長く説明するのは、二十数年前でもそういった体験ができたということなんですね。
そのレベルでも、実は2つの大学の交流で、同じ学部の交流体験をした学生とセッションで体験を発表させた。ある大学は交流だけにして、ホームステイを楽しみ、単位取得を目指さない。となると、結果的には市川さんがおっしゃったようなところで、感想というのは、とても楽しかった、ペットと遊んだというレベルでした。授業がすごく厳しくて、こんな体験ができたという学生と、はっきり分かれたんですね。二十数年前ですら、そういう体験ができた。
それを今の時点でショートビジット。まさに3カ月未満ですよ、2カ月未満のプログラムでも、そういったことができる。しかも、そういった情報は、二十数年前でもあふれていた。というので、そこをプログラムだからといって、これから検証するというのはちょっと遅きに失しませんか。
【説明者】
すいません、プログラムというのは、今やっているショートビジットのプログラムが23年度からの開始ですので、そこがどういった内容であるかを検証するということです。
【南】
いや、ですから、ねらいに気づきとおっしゃいましたよね。気づきの段階なのかなというところなんですね。確かに今、学生全体の学力はすごく低下しています。私も実際教えていて、これほどと思いますけれども、それとショートビジットというか、留学の問題とは別にリンクしているわけじゃないのです。
【説明者】
ちょっと1点だけ申し上げますと、例えば南先生が言われた二十数年前というのは、やはり大学の進学率が十数%の時代、二十数%の時代だと思いますが……。
【南】
いえいえ、とんでもない。もう40%行っている時代です。
【説明者】
今は5割を超えて、そのほかを入れると7割ぐらいの進学になっているわけです。現状を踏まえますと、海外留学というのはぐっと落ちてきています。それは、多分、就職の問題であるとか、留学にメリットを感じないとか、いろんな理由があるんだと思います。
ただ、いろいろなアンケート、例えば名古屋大学のアンケートをとってみても、留学に行きたいという学生は実は8割いて、ただ、そのためには経済的な問題と大学の体制の問題、それから、やはり気づきの問題があるというのがアンケートで出ています。
そういった意味で、短期をどれくらい多くすればいいのか、これはやはりいろんな議論の余地はあると思いますが、短期から長期へというのは、気づきの観点でまだまだ残された課題としてあって、ただ、そのときに単位認定であるとか、それから、ドミトリーを一緒にしないであるとか、そういったことはきめ細やかに見ていかなければいけない。そこは不足している点はあろうと思います。
【南】
いや、私があえて二十数年前と申し上げたのは、学生の質というよりも、既にその時点で、そのくらいの情報はありましたよということなんです。
【説明者】
わかりました。
【南】
もう高等教育、つまり、大学行政のプロの方々なので、そのぐらいの情報はあるだろう。したがって、もしこうしたショートビジットが何らかの形で必要であれば、ガイドラインはもう既にできるはずだろうという意味で申し上げたんです。
【説明者】
わかりました。
【伊藤コーディネーター】
藤原先生。
【藤原】
ちょっと視点を広げまして、前のレビューのときに私が要求した、国のレベルで各省庁が留学や海外派遣に対してどのように税金を投入しているかという表をきっちり出していただいたんですね。ほんとうにありがとうございます。こういうの初めて出てくるんですよ。最初の仕分けのときから数えて3回ぐらいやっていますけど。
【藤原】
非常にすばらしい表を出していただいているんです。これは、多分、傍聴の方には行っていないですね。簡単にちょっと言いますけども、この予算以外に5つ出していただいているんですね。非常に有名なのは、国際協力機構、青年海外協力隊ですね。これは153億円使って、アジア、アフリカ、中南米、中近東の人々のためにと、どちらかというとODAに近いような、そういう人的な技術の協力ということをやっていることは、割とみんな知っているわけです。
それから、外務省が一定期間、原則2年間、各国際機関へ職員として派遣して、国際機関の正規職員となるために必要な知識、経験を積む機会を提供するというのが10億円。これはこれで、目的が非常にはっきりしていると思います。
この2つ以外に、あと3つありまして、経済産業省のMETIグローバル人材インターンシップ派遣事業が7億円投入されていて、これは、若手人材の開発途上国、インフラ関連部門等への派遣等を行う。これは、明らかに産業振興というか、道路とか水道とか鉄道とか、日本は非常に強い。これ、原子力が入っているのかどうかわかりませんが、インフラをシステムとし輸出するときのベースをつくったり、人脈をつくったりするということで、これも目的としては非常にはっきりしていて、疑う余地のないというか、いい予算じゃないかと思うんです。
それから、外務省が去年の3次補正で72億円突っ込んだやつですけれども、アジア太平洋地域及び北米地域との青少年交流「キズナ強化プロジェクト」という、予算を取るために無理やり名前をつけたなという感じがあるんですが、これ、どの程度今年実現するのか知りませんが、これもなかなか文句がつきにくいというか、被災地で一番苦労した、非常に悲惨な目に遭った被災地の青少年を海外に派遣することで、目を開かせるという目的だと思うんです。
それから、日本学術振興会の海外特別研究員事業、これは、すぐれた若手研究者を海外に派遣するという、これも目的がはっきりしていますね。22億円。
これに対して、この文科省の予算なんですが、ちょっとねらいが絞り切れていないなという印象が私は非常にしちゃうんですね。なので、結局は大学の補助じゃないのと。語学留学プラス、むしろ遊学に近いものなんじゃないのと。遊学補助金みたいに見られても仕方がない運用実績かなというふうに感じてしまうんですね。
もちろん、海外の経験はしないよりしたほうが絶対いいんですよ。できたら1割じゃなくて、その1世代全員に、小・中・高・大のうちいずれか行ってもらったら、日本ももっと目の開かれた国になるんじゃないかなと思いますし、行かないより行ったほうがいいわけですが、でも、遊学補助ぐらいのことに国費が投入されるべきなのかどうかというのは議論しなければならない。多分、この場での議論は、そういうことじゃないかなと思うんですね。それだったら自分で働いて行けよと。こういうのがまともな感覚ではないかと思うんですが、このまともな感覚に対して、もし言いわけがあればぜひ聞きたいなと思います。
【説明者】
今、藤原先生から言われたように、ほかの省庁のプログラム、例えば国際機関に行く、あるいはインフラの企業にインターンシップで行くというのがございます。
【藤原】
目的がはっきりしていますね。
【説明者】
文部科学省の派遣については、まず2種類あって、長期の部分は学位取得を目指して、戻ってくるまでちゃんとグローバルな――グローバルという言い方はあれですけれども、ちゃんと活躍してもらうと。
1年未満の短期については、やはり長期に向かうステップであるということと、やはりこれだけ社会がグローバル化していますので、中間層もいや応なくグローバル化していかなければならないわけであります。
日本国として、全体をグローバル化していくに当たって、もちろん9割方は、我々国が支援できない方なので、民間、それから、ご自身のお金で、働いて行かれてている方です。大学の中で、交流協定に基づいてプログラムの質を保証して、そこでしっかりと勉学して戻ってきた者に国としてグローバル人材育成をするという観点で、しっかり支援して、日本国内のグローバル化に資してもらうということです。
【藤原】
ちょっとグローバル、グローバルと言えば予算が通ると思わないでほしいんですが、私、一応ヨーロッパにも住んでいたものですから、例えばヨーロッパでグローバルといった場合には、自分で働いて稼いでいくことを指しますけど、そういうのを自立した学生というふうに呼んでいたと思うし、間違っても親からとか、そういう子はグローバルと言わなかったと思うんですよ。
日本だけ、大学が面倒を見て、遊学で行ってらっしゃいね、お小遣いもあげますよみたいな感じになっちゃっていいのかどうか、それはどうなんですか。自己矛盾があると思いません。
【藤原】
かえってスポイルしちゃって、さっきの市川さんの発言に近いんだけど、要するに、それじゃグローバル人材にならないんじゃないのと。
やるんだったら、私、大学で非常に成功している国際教養大学の例を出してみたいんですが、実際に例えば1年生のときにTOEFLも下限を設けて、それ以上にならなければだめ、留学の資格なしと。しかも、なおかつ2学年から3学年のときに、1年間留学するのが必修だと。つまり、それは単位を取ることが必修で、それができなかったら落第よと、非常にわかりやすいですね。
もし日本の大学がそっちに向かうというんだったら、文科省の力をもって、そっちに向けたほうがよっぽど全体の国際化が図れるんじゃないですかね。
【説明者】
先生が言われる遊学というか、例えば今の基準で、今、先生が言われたように、例えば単位認定、あるいは単位取得であるとか、その後のフォローアップをして、しっかり出口のところで評価するということは重要だと思います。
【藤原】
入り口のところでもTOEFLの条件をつけたり……。
【説明者】
もちろん入り口と出口。
【藤原】
それから、単位を絶対に取ると、そういうことですよね。それ、今つけているの。つけていないから、先ほどの市川さんのような指摘が起こるんじゃないの。
【説明者】
今は、3カ月から1年についてはつけておりますが、SSSV、3カ月未満については単位を取得することが望ましいとなっていますので、そういうのをある程度条件化するとか、経済的に行けない学生も中にはいます。したがって、そういう人に限定した形での支給にするとか、そこはもうちょっと厳しくすることはあろうかと思います。
したがって、遊学という表現にはこだわりがあるんですけれども、そういったことでもって厳しく入り口と出口をするということは……。
【伊藤コーディネーター】
多分、今までお話しされているのは、きっと3カ月以上1年未満のお話と、長期についても、そういう縛りをかけているということだと思うんですが、それはもともとやってきている事業ですよね。今日、特に議論になっている3カ月未満、23年度からやるからこそ、本来は、そういったノウハウの蓄積があって、ちゃんと遊学ととられないような仕組みが必要なんじゃないか。
先ほどのご説明の中では、やったばかりだから、この後のフォローアップが大事だというお話になってしまっているんですが、そこは、もうこれをやる段階から、それをやっていない限りは、結果的に、先ほどの大学のような実態が出てきてしまうんじゃないかという指摘だと思うんです。そこはいかがなんでしょう。
【説明者】
そこは、我々もなるべく意を尽くしてやったつもりでありますけれども、やはり不足している部分は、ご指摘のとおりあったかもしれません。したがって、そこは今の事業について、もう一度再評価して、その次の展開といいますか、そこに生かしていきたいと思っております。今のプログラムが完璧だというつもりはありません。
【説明者】
藤原先生のお話に関連して、大学教育全体としては、今おっしゃったようにしっかりした学びの密度を高めていく、これは2つあって、高いモチべーション、それから、やはり負荷をかける。その2つの掛け算でやっていく。それは国際教養大学にしても、APUにしろ成功されていますし、いろんなやり方はありますけれども、そういう要素を取り入れていこうということですが、その文脈の中で、このSSSVも考えていこうということです。
23年度からスタートして、多少、課題点はありますけれども、そこについては、思想としてはしっかりやっていくと。ですから、遊学ととられないような、逆に帰った後、高い動機づけをもって勉強していって、さらに留学につなげていくような、あるいは自分で勉強して、社会に出て、また留学の機会を持つとか、そのような人材をつくっていく方向にやっていきたいと思っていますので、そこは、そういう方向で考えたいと思います。
【伊藤コーディネーター】
コメントシートのご記入をしながらでお願いいたします。これ、複数の事業に分かれていますが、評価自体は1つの評価でお願いいたします。
個別に、例えば、これは要らないんじゃないかというようなご意見があれば、それはコメントの中でご記入いただければというふうに思います。
では、南先生。
【南】
やっぱり今の日本の大学にとって一番の課題は、当然、大学の教育の質保証になりますよね。その中の一番の入り口では、日本の大学の場合、教育に対してあまりにも注力されてこなかったので、シラバスというのは随分昔からやっていますけど、シラバスをもうちょっと充実させようとか、科目ごとにナンバリングをしていこうだとか、ということがまだその入り口に差しかかっている段階です。
私の知る限りにおいては、ほとんどの大学がナンバリングすらやっていないというような中で、やはり大学の質保証のために、大学の学生の質を上げるというところに、当然、留学制度補助金も入ってくると思うんですね。だから、もうちょっとその辺は課の壁を越えて、質保証のために、どうやって貴重な資金を使っていくのかというのをもう少し議論しないとまずいんじゃないかと思うんですね。
先ほど20年前でも、単位取得に関していろんなプログラムも既にあるし、使おうと思えばできるというようなことを申し上げたのは、要するに、そのぐらいのクオリティーコントロールは最初からビルトインできるはずだということで申し上げたので、気づきだからだということでトライアルでやって直していくのは、このご時世において、それはちょっとないんじゃないか。むしろ、質保証の中で、きちんとした位置づけの中で、大学に対してシラバスの充実、つまり、シラバスとナンバリングができてなければ、クオリティーの問題として、外国の授業の単位を認定するなんていうことはできないわけですよ。
そこから始めていくと、大学の授業そのものが、今、日本の大学の大半がやっていないシラバスの充実とナンバリングに少しでもインセンティブになる可能性があるとか、少なくとも、そのぐらいの改革に向けての政策のミックスは必要じゃないかなと思うんです。
【説明者】
まさしくご指摘のとおりでして、これは、留学の問題だけではなくて、大学教育全体の我が国の課題ですから、ご指摘のとおり、シラバスについても、結局、つくるだけであって、そこでアサイメントを示して、課題図書を示して、どれだけ勉強するかというところまでやっているところについては、まだまだ数としてはほんとうに限定的でございます。ですから、ナンバリングにしてもなかなか進んでいないと。
ですから、今、中教審で議論しておりますけれども、3月に審議のまとめを出して、むしろ、全体としては教学の改革をしっかり進めていくという方向を、すべての大学にやっていこうということで、今出させていただいております。
その文脈の中で、この国際の事業でございますけれども、先ほど松尾課長が申し上げましたように、大学推薦だけではなくて、むしろプログラムと連携させていこうと。具体的には、今年の予算からグローバル人材育成推進事業という事業をつくりまして、そこは、留学するための体制整備をしていこうという話でございます。そこではかなり負荷をかけておりまして、今おっしゃったようなナンバリングとかシラバスを義務化するとか、英語での授業をしっかりするとか、入学時でのプレースメントをしっかりやっていくという形で、卒業時点においては、これぐらいの能力を持ってほしい、そういう人材をどれだけ育てるかということを、目標を設定していただいてやろうという形で、これは新規事業だと思っています。
できれば、そういう事業をやる場合について、これは体制整備ですから、個人的な学生に対してのフェローシップはありませんので、そこをやる採択されたプログラムと連動してSSSVを考えていくということを、むしろ積極的にやっていこうという方向ですので、今、先生がおっしゃったような趣旨で、私どもとしては改革していきたいと思っております。
【南】
もう既にそれだけの材料があるんだったら、そういうたてつけにしてほしいなと。今、このお話を聞いた中では、とてもじゃないけど、その辺が酌み取れないし、はっきり言えば、今の大学の問題というのは、学生の質が低いというのは別に文科省が悪いどうのこうのよりも、大学自体が若者だけをとろうとして、少ない若者をめちゃくちゃにとる。入試で入ってくる学生のほうが少数派になってしまっているという中では、中学から高校に行くのにもほとんど入試が成り立たない、それから、高校から大学に行くにも入試が成り立たない。要するに、受験勉強もきちっとしていない中で、どうして学力の水準が維持できるのかという段階に、今、日本はあると思うんです。
これに対して、大学に入った以上はこれだけの負荷がかかるよ、もう落第も当然だというぐらいの質を高める大学行政の転換をしていかないと、入り口コントロールの時代では、もうとてもとても立ち行かない。そのぐらいの構えで、この事業も、せっかくこれだけの国費を投入するんだったら、きちっとたてつけをしてほしかったなと思うんですね。
【伊藤コーディネーター】
和田先生、どうぞ。
【和田】
ショートビジットのお話大体わかったんですが、ショートステイのほうについて、これも23年度から人数が増えて、かなりの予算をつけることになりましたけれども、この事業の効果をどのように評価しようとされているのか。また23年度、1年終わっただけですけれども、これもしっかりしていただかないといけないところだと思いますので、お聞かせいただきたいんですが。
【説明者】
このショートステイは内なる国際化を目指すということです。これもフォローアップをし、評価していくことになります。今、学生の声、大学の声というのを聞いて、それでフォローアップしていくということです。
短期についても、大学からの声を聞いておりますけれども、途上国の学生にとっての奨学金、それから、将来の留学先として日本を選択する際のポイントとして評価されているということと、あとは日本企業に入りたい人、インターンシップへの参加や、学生間でのネットワークといったものが構築されているということでありますので、さきほど南先生からも御意見がありましたが、そういったところをきめ細かく見て、次の選定の基準などに生かしていきたいと思っております。
【伊藤コーディネーター】
市川先生。
【市川】
先ほど来、経済的な事由でという話がよく出て、学生の方も経済的な事由で留学をためらう方がいると。その経済的理由というのはどういう、これは、基準があるのかどうかわかりませんけれども、何をもってして経済的な問題ということが言えるんですかね。
【説明者】
例えば今、日本において大学に行くにも経済的な格差で進学が変わるというのもあります。
【市川】
56%の方は行っているわけですよね。
【説明者】
ただ、それでも今のデータで言いますと、収入でもって進学率が明らかに変わっております。
【市川】
ただ、この話というのは、既にそこはクリアされて、大学に通われている56%の方を前提に話していますよね。
【説明者】
そうです。
【市川】
そこにおける、さらなる経済的な理由というのは何を。
【説明者】
したがって、プラスアルファの資金を出して海外に行くという……。
【市川】
いや、どこでこれが経済的な理由だという判定を、これがほんとうに経済的な理由なんだ、留学に行かない理由なんだという判定をどこで下しているのか、評価しているのかというところをお聞きしたいんですけど。
【説明者】
そこは、明確に例えば幾ら収入があるとか、そういったことで大きな数的なメルクマールで判断しているわけではありませんが、学生からの申告で、例えば生活状況であるとか、そういったものを申告してもらうことになろうかと思いますが、市川先生が言われたように、明確に例えば350万の収入の方以下であれば、経済的に困窮だということでメルクマールがあるわけではありません。
【市川】
そこまで、例えば保護者の方の年収が幾らだとか、そういう話ではないのかもしれないんですけれども、例えば学生にアンケートをとって、留学に行かない理由、金があれば行くという項目をつくったら、多分、みんな丸をすると思うんですよ。
【説明者】
おっしゃるとおりだと思います。
【市川】
お金がないから留学に行かないといっている学生が、では、授業をさぼってパチンコ屋でパチンコしないかというと、多分していると思うんですね。これは推測の話ですけど。(笑)
【市川】
つまり、経済的な理由というのは、ほんとうに何だということですね。極めて高い生活レベルのスペックを考えて、そのスタンダードのもとに経済的理由といっているのか、それとも、ほんとうに学習するに当たって、さらに、その学生の方がもう一段お金をかけることによって、要は世の中に対して貢献できる人になっていくところの、その限界的な部分を埋める手段として考えるのかというところによって、また、この話というのは全然変わってくる話だと思うんですよ。
【説明者】
我々としては、後者でありますけれども、それが全体的にきめ細やかに見られているかどうかというと……。
【市川】
できないですよね。
【説明者】
したがって、それは申請する大学で見てもらうということになるんだと思いますけど、それがほんとうに見られているかどうかですね。そこは、よくチェックをしていく必要があります。
【市川】
これは、必ずしも2年しかやっておられないことですから、そうかどうかわからないんですけれども……。
【説明者】
まだ1年。
【市川】
1年しかやっておられない、2年目という意味で。各大学の配分の仕方を見ていると、やはり大きな大学に大きなお金が行っているような印象になるんですね。統計的にとると、多分、そのような話になるのかなというイメージであって、その意味では、先ほど申し上げた、かなり審査基準を甘く設定しておられる大学は、日本を代表する有数の私立大学であるわけで、むしろ、大学に対してどういう基準でプログラムを設定し、どういう生徒を選んでいるのかということは、それは文部科学省として要件をしっかりしていただかないと、何のためにやっているんでしょうかと。これは、経済的なという意味も含めて、そこをぜひ検討していただきたいと思います。
【説明者】
そこは十分に検討します。
【伊藤コーディネーター】
酒井先生。
【酒井】
今の経済的なというところで、一方では、授業料も払えずに大学を中退していく学生が問題になっているかと思うんですけれども、そういう中で、逆にそうした層の中に、非常にアスピレーションの高い学生をどう支援していくのかということが、一方で非常に大きなねらいではないかと思うんですね。そうした目的意識が、この中にどれほど盛り込まれているかというのがちょっと見えない。ですから、対象者としてだれにこれを授与するのかといったところが不明確であるのが非常に大きな問題ではないか。
ですから、20年前、30年前と大きな違いは、いや応なしにグローバルといいますか、国際社会に出ていかなければならない時代になってくる中で、多様な人材がさまざまな経験を積んでいくということがむしろ大事ではないか。
言ったついでにもう一つ、例えばどういう領域の学生を送り出そうとしているのかというところのねらいがあるのかどうか。例えばいろんな大学で国際関係の学部ですとか、外国語学部ですとか、そうしたところはこうしたプログラムに非常に乗ってくるんだと思いますが、やはり今求められているのは経済や経営関係の関心を持った学生ですとか、エンジニアの学生ですとか、いろんな学生が外に出ていかなければいけない中で、そうした学生に対するプログラムとして、これが提供されているのか、その辺はいかがでしょうか。
【説明者】
まず、多様な人材、だれを出すかということでありますけれども、経済的な部分は、どう見るかというのはありますが、そこはよくウオッチするようなたてつけにしたいと思います。
それから、どんな領域かということですが、今の現状だけ申し上げますと、これは交流協定に基づくということでありますが、今、先生が言われたように、例えば、またグローバルと言いますが、ということになると、やはり外国語学部、国際関係もありましょうが、例えば経済、経営、それから、インターンシップであるとか、そういったところにある程度比重を置くとか、そういったこともあると思います。
今、現状では全体的にやっていますので、そこはたてつけをよく考えるということをしたいと思います。
【酒井】
大学側は、要するにこういうことに関心のある教員と学部、それから、それに関心のない学部と分かれると思うんです。この問題は、そうした関心のない学部に対して動機づけを与えるというプログラムとして運営されるべきなんではないかと思うんですが。
【説明者】
そこはおっしゃるとおりだと思いますので、改善点を検討したいと思います。
【伊藤コーディネーター】
コメントシートを、もしまだの方がいましたらご記入をお願いいたします。
今日は本来、短期派遣だけではなくて短期受け入れ、また、長期派遣ということがセットでこの事業は組まれていますが、冒頭の会計課長からの論点の中にもありましたように、今日、議論としてはショートビジット、短期派遣のところに、皆さんの議論としては中心だったなと思います。それは、その部分が中心の論点だということで、お聞きの方もご了承いただければと思っています。
その部分で関連なんですが、多分、先ほど和田先生から受け入れ部分の効果測定はどういうふうにやったらいいかという部分、これは、多分、ほかの部分とセットで、受け入れ、また派遣することの効果測定は難しいという最初の問題意識もあって、フォローアップをどうやっていくか。3カ月未満のほうは23年度からなんで、先ほど少しアンケート調査をやっているというお話がありましたが、3カ月以上1年未満の部分の効果測定はどのようにされているんでしょうか。
【説明者】
派遣・受け入れについては、効果測定といいますか、出口のところでございますけれども、60、61ページにありましたとおり、フォローアップ調査を行っておりまして、実施報告書を大学と学生から提出していただき、次の施策に生かすということでやっております。
【伊藤コーディネーター】
平成7年からやられているんで、その意味でのフォローアップ状況をどう反映させているかということも実績としてはあると思うんですか、今はどうなんでしょうか。
【説明者】
そこは審査の観点について厳格化するであるとか、あるいは大学の国際化とどうつながっているか等についての報告、フォローアップをして検証するということです。ということで、審査の観点につけ加えたりしております。
ただ、一方で、先ほど義本のほうからも言いましたけれども、やはり大学の改革とセットで考えていくことでありますので、今後とも我々、PDCAサイクルを事業の中で回すとともに、大学の中でしっかりと、これを次の国際化にどう生かしているのか、改革に生かしているのかを検証するということだと思います。
具体的にあるのは、フォローアップ、それから、事業報告を提出してもらって、次の実施要件に生かしていると。例えば3カ月以上1年未満であれば、大学からの推薦だけではなく、プログラム審査にするとか、そういったことで制度改革を行っております。
【伊藤コーディネーター】
今は、どちらかというと大学にスポットを当てているというふうに感じたんですが、行った学生がどうなっているかという調査はされているんですか。
【説明者】
はい。具体的には、1年以上については学位認定の取得状況等の調査を行っております。1年未満3カ月以上については、大学からの報告と、個別の学生からの報告を受けて、次のプログラムに生かす。
先ほど申し上げました大学からの報告だけではなくて、学生からの報告と合わせて、次のプログラムの展開に生かしているということです。
【伊藤コーディネーター】
本来であれば、それは51ページの成果目標、アウトカムに入るべき項目だと思います。
【説明者】
わかりました。
【伊藤コーディネーター】
南先生。
【南】
ちょっとわきの、だけど本質的なものが、私、事前の勉強会のときに申し上げました寮の問題、ドミトリーの問題です。特に受け入れの問題ですけれども、日本の場合、ずっと大学紛争の時期があって寮に対しては非常に否定的だと思いますが、これも私の経験で言うと、それこそ10年、20年ぐらい前から、一部、日本人学生と留学生が一緒に住むような寮というので、いろいろトライアルがされてきたと思うんですね。
まさにおっしゃるようにAPUだとか、その辺では、それが相当うまくいっている。こういったことに対して、さらにお金をつけろという意味では全然なくて、そういったドミトリーをつくることに対するインセンティブがないと、特に短期の場合は非常に苦労しますよね。これは、私もいろいろ経験していますけれども、とにかく短期の受け入れというのは物すごく大変ですよね。
ですから、そういった基盤整備ということにも、単なる奨学金だけじゃなくて必要だろうと。もっと言うと、高等教育局全体として、予算の使い道だとか、そういったことの柔軟性というのがあるのかどうか。例えば私学助成にしても、国立大学の運営交付金にしても、そういったカウントの仕方、配分基準の中に組み入れるとか、総額抑制の中ですから新規には難しいと思いますが、やはり重点をどこに置くのかとか、それを質保証の中でというような、そういった組み立て方はできているんでしょうかというか、すべきだと思っているんですが。
【説明者】
今は寮の価値というか、意義というのはかなり見直しがあって、結局、外国人と日本人の学生がまじるということもそうでしょうし、日本人同士でも結局、同じ釜の飯を食って、価値観が違う人間と生活することによって、いろんな経験を広げていくというように、かなり注目されていまして、むしろ、幾つかの大学で寮を整備していこうという方向が出てきています。
ご案内のとおり、国費で寮を建てるということについては、今の財政事情が厳しい中においては非常に難しいですけれども、その中においても、例えば借り上げの問題とか、あるいは自治体にも協力をいただいて、今年度の予算から少しそのような試みをしております。地域にある企業のところにも提供いただくような形にするとか、あるいは民間の事業者、大学で組んでいますけれども、PFIで建てるということ、例えば近隣の大学同士で考えるという動きがありますので、その辺は我々としてはウオッチしております。
それを、逆に言うと、ストレートに私学助成とか運営費に入れるということについては技術的な問題がありますけれども、ただ、寮について評価して、それを一定の事業の中で考えていくというような点はできる話ですから、その辺は少し工夫して考えていきたいと思います。
【南】
ですから、一般にこのショートビジットだとかショートステイのときに、どうしても奨学金で受け入れいいよという一般論はもうとっくに過ぎなきゃいけないなと私は思っていまして、もっと具体的な基盤整備ということに対して、一体何が必要なのか。ドミトリーにしたって、立命館APUみたいなものとか、いろんな形態があるわけですから、それこそがまさに文科省としてはいろんなガイドラインをつくって、大きな大学でもちょっと欠けていますし、国際部門は非常に片隅に行っていると。
特に中小の大学については何のノウハウもないし、かつ大学の職員ですら留学経験もないし、大学の先生方もないという状況ですから、そういったことはやはり文科省としてきちっとしたガイドラインをつくって、何らかのインセンティブを出していかないと、こういった個別の事業だけで追っていくと達成できないという感じがすごくするんですよね。
【説明者】
今、宿舎の件については、ほんとうに大きな問題で、私も研究所にいたとき、研究所に外国人研究者が、来られるのでも相当大変で、外部に部屋を借りる場合には我々が保証するなど大変なところがありました。今、義本が言ったようにPFIでやったりとか、大学でも相当工夫しています。
私どもで調査したところ、留学生の宿舎については、去年、JASSOの宿舎が事業仕分けで廃止になったところですが、自前の留学生宿舎も徐々に増えていまして、留学生宿舎に入居させているケース、それから、先生が言われたように、一般の学生用宿舎に混住で留学生を入居させているケース、それから、外部の民間のアパートを大学が保証して借りているケース、この大きく3つの種類で4対5対1くらいの割合になっています。
長期の学生については、残念ながら1年間はそこで何らかの手当てをして、2年目以降は民間で独自で探してくれと。短期をなるべく優先するということで、今回の事業で受け入れている学生についても、約9割は大学があっせんして、あと1割は独自、あるいは同じ国から来ている先輩のつてなどで見つけています。また、宿舎以外のインフラについてもケアして、全体で受け入れ環境をつくっていくというのが多分大事になってくると思っています。
【伊藤コーディネーター】
念のため申し上げますが、仕分けで議論になったときは、多分、学生支援機構が持っていた施設だと思うんですけど、あのときの議論は、施設が必要だというところはだれも否定していなくて、実は2,600ぐらいしかないし、老朽化も進んでいるから、今の動きのように大学が持つとか、そういう方向へ転換していこうよという中での廃止ですよね。
【説明者】
おっしゃるとおりです。それで、今、大学に売却を進めているところです。
【伊藤コーディネーター】
それはいい流れだと思います。(笑)
【伊藤コーディネーター】
堀池先生。
【堀池】
ちょっと話が変わるのですけれど、寮の話と一緒に、最初に課長がおっしゃったところの56ページの体制の話がありまして、もう時間がないので、ご質問させていただきたいのですけれど、ここで学生が海外に非常に出にくくなっている原因の1つに、景気が悪くなって就職状況が悪くなっている中で留年したくない、休学したくないとか、そういうかなり卑近な事情がありまして、そういう意味でいうと、海外の大学と単位の互換というのがあまり進んでいない。大学院は結構進みつつあるのですけど、学部に関しては非常に出遅れていまして、ある程度国のリコメンデーションとして、休学してアメリカに行っていても3年の単位はとれて、4年生になって帰ってきて、卒論研究をやれば、ちゃんと卒業できるんですよという風な、そういう制度をある程度仕掛けていかないと、留学生は増えていかないのだと思うんです。
それから、海外に出て行くと日本の会社に就職できない。かわりに外資に入りやすくなるというメリットがあるとしても、その辺の学生にとってのオプションを増やすというのを合わせて考えていかないと増えないと思うのですけど、その辺はどういうふうにお考えでございますか。
【説明者】
おっしゃるとおり、帰国後の単位認定が困難というのが体制の中に入っていましたけど、まさしくそのとおりで、帰国して、あるいは休学せずに交換で行ったとしても、結局、制度に合わなくて単位認定されないということがあります。
ですから、そこはしっかり大学で情報を整えて、学生に対して提供するとか、今、ラーニングアグリーメントといっていますけど、帰国後に単位認定する基準とか手続の情報がありませんので、それをしっかり整備していくということがありまして、それをしっかり進めていくということを考えたいと思っています。
それは一大学ではできないこともありますので、そこはいろいろな形で国、あるいは関係する支援機関と連携しながら、それを整えていくということも考えたいと思いますし、実は先ほど南先生にお答えしたグローバル人材推進事業の中にも、逆に、その要素を織り込んでやろうということでございます。体制整備は非常に重要な課題だと思っております。
【伊藤コーディネーター】
もう少しご意見があれば。酒井先生。
【酒井】
今のことに関連しまして、要するに、プログラムの評価の観点なんですけれども、留学した学生に対する評価とともに、このプログラムを入れたことによって、大学そのものがどう変わったのか。要するに、今の単位認定のあり方ですとか、いろんなところでどう変わっていったのかというところが、やはり組織の変革に結びつけていかないと有効活用できないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
【説明者】
おっしゃるとおりだと思います。フォローアップの中にも、プログラム全体の評価というのもございますし、それらも含めて考えていく必要があると思います。
【堀池】
また全然違う話で、ちょっと前から気になっているのは、受け入れ側の月額8万円というのは一律で結構だと思うんですけど、出すときに、アメリカと中国で同じ月額でいいのかというのはどうお考えなのでしょうか。
【説明者】
確かに地域の差は、考慮したほうがいいのかもしれません。そこは、検討課題とさせていただきたいと思います。
【堀池】
もうちょっとそういうことをすると、同じお金でたくさん出せるのじゃないかと思います。
【伊藤コーディネーター】
もしもう少しご意見がありましたら。藤原先生。
【藤原】
留学生がなぜ減るかということについて、経済的な問題に帰そうとしている感覚があるんですが、それは間違いですよ。若い人たちがなぜ海外に留学しないかというのは海外の魅力が減っているからです。それは、例えば豊かな層の人でも一緒です。
今やニューヨークとかパリがあこがれじゃなくなっちゃって、東京で一番うまいフランス料理が食えるということも含め、日本が一番豊かだし、平和だし、エンターテインメント含めましておもしろくなっちゃっているので、もちろん放射能の問題はあるにしても、いまだに、こんなに楽しくて平和で安全な国はないんですよ。
そういう意味で、若い人たちが海外に目が向かないのは、ある意味当たり前で、そのことをしかってもしようがないし、では、どのような動機づけで行くかといえば、かなり厳しく、単位をとるためにはこうだとか、この基準を満たさなければ企業に入れないということをかなり厳しくやらないと、無理だと思いますね。
それから、奨学金的な感じで、3カ月のステイをというにおいもあるんですが、それはないんじゃないですかね。3カ月ぐらいのことであれば、働いて行ってほしいと私は思います。1年を超える、目的がはっきりした、そういうものは応援してあげていいんじゃないかと思うけれども、本来、大学が留学させるというのは、大学側も独立法人にもなっているんだし、私立はもちろんですけれども、私企業の寄附を募ったり、卒業生の寄附を募って、それによって名前つきの留学制度をつくって、要するにネーミングつきの留学制度を募って、それを大学が自分の努力で募集するのが基本じゃないかなと僕は思いますけどね。とにかく遊学まで国費でやるのは、私は間違いだと思います。
【南】
関連していいですか。これはショートステイ、1年から3カ月だとか、3カ月未満とか、この形でいくかなというところもあって、つまり、クオリティーの問題、交流プログラムに対してある一定の期間がありますよね。それは1週間の国際会議じゃどうしようもないですけども、そういったプログラムの質に応じた形での奨学金、あるいはプロジェクトに対する支援というほうが実質的な効果が上がる可能性があるんじゃないか。割と形式的に期間でもって、留学の期間設定だといろいろあって、市川さんがおっしゃるように、大学にとっては1つの財源ですから、ありとあらゆるいろいろな形で学生をやる。
ところが、もしプロジェクトになった場合には、もう少し全然別個の観点で、より国際性を高めるとか、例えばショートステイにしても、ショートビジットにしても、これがどういうふうに波及するのかという段階を経た上での最初のインセンティブになるとか、もう少しはっきりするような気がするんですよね。
だから、期間設定よりも内容のプログラム、しかも、それが順次拡大していくという、そのような形はどうかと思ったんですけど。だから、ここ、ちょっと形式的に流れ過ぎちゃう。だから、いろんな議論が錯綜しちゃうんじゃないかと思うんです。
【説明者】
そこは予算の枠もありますが、検討の余地はあると思います。そうすると、プロジェクト指向で、ほんとうにいいプロジェクトに対して出すという。
【南】
ですから、要するに高等教育も競争的資金ということで、いっぱいメニューがあって、それをもう少し統合しないと、各大学というのは一つ一つのメニューを担当の教員が一生懸命抱えてやっていくという段階で、もちろん研究はそれでいいと思いますけど、教育というのは全学的な取り組みなので、もう少しメニュー化して、インテグレートした形で、交付金なのか、統合補助金なのか、その辺の工夫をぜひしていただきたいと思う。
【説明者】
そういう観点もあって、例えば先ほど義本が言ったグローバル人材育成推進事業とうまく連携して、そことセットでいくとか。大学側でも2件申請を行ったが、一方は採択されて、もう一方は採択されないという状況になるので、それはワンセットで、連携をしていかなければいけないと思います。
【説明者】
もともと仕分けもいただきましたので、大分減りましたけれども。(笑)
ただ、それにしても、やり方としましては、この事業自身、留学というのはもともと個人単位で行くということから出発していますけれども、今、お話がありましたように、交流協定とか、プログラムベースで教育の質をどう高めていくかという話ですから、今、先生がお話しいただいたことも貴重なご指摘ですから、少し考えていく必要があると思います。
【南】
高等教育に関しては、まだまだ投資の余地がいっぱいあると思うんです。私は、削るという意味ではなくて、もっと事業の効率化を目指した、インテグレートされたプログラムにしてほしいなというところなんです。
【伊藤コーディネーター】
取りまとまっておりますので、最後に和田さん。
【和田】
58ページあたりから留学生支援制度の概要のところ書かれているんですけれども、グローバル化社会において活躍できる人材の育成というようなことが目的になっておりまして、これは、私の個人的な見解かもしれませんけれども、ショートビジット、3カ月未満で、例えば1カ月でも留学すれば、こういうことがグローバル化社会において活躍できる人材の育成であるかどうかということになると、それを全く否定するつもりもございませんけれども、やはり基本には長期派遣といいますか、こちらへもっと。1年なり2年なり留学することによって、ほんとうのグローバル。それがもちろんグローバル化社会において活躍できる人材とも言えないと思うんですが、少なくともそういう長期留学に移っていく、その動機づけになることも、多分、ショートビジットには大きな目的があるんだろうと思います。
したがって、少し時間はかかることかもしれませんけれども、フォローアップの段階で、しっかりその辺をお考えいただくことと、それから、選定とか何かも、そういう方向へ力を向けていく、そうされたらよろしいのではないかというふうに思います。
【伊藤コーディネーター】
それでは、結果がまとまっておりますので、私のほうからご報告いたします。
留学生受入れと日本人学生の海外派遣を一体とした交流事業につきまして、廃止という方が3名、抜本的改善はおられません。一部改善という方が3名です。同数ですので、取りまとめを含めて政務官から申します。
【神本政務官】
熱心なご議論、ありがとうございました。今ご報告ありましたが、本事業につきましては、廃止3名、一部改善3名ですけれども、同数の場合には取りまとめ役が評価を最終的に決めるということですが、これは、分布を考えれば、必ずしも票が最多でないものについても、それは選択肢になり得るということですので、私の判断としては抜本的改善という結論にさせていただきたいと思います。
たくさん貴重なご示唆をいただいております。高等教育改革全体の方向を踏まえて、ショートステイ、ショートビジット、長期派遣も含めて、それぞれの事業の目的を明確にすることが非常に重要だと思います。
ほかの省庁がやっている、明確な目的が出されているのに比して、ここでは明確ではないというご指摘もございました。目的を明確にしながら、対象者の選抜方法や単位取得など、プログラムの内容等を、大学の教育の質を向上させるということとしっかりと連携しながら、より効果的な事業のあり方を検討するべきだということが1点でございます。
特に3カ月未満のショートステイ・ショートビジット、特にショートビジットにお話が集中しておりましたけれども、これについては、各大学等がこれまで自主的に実施してきた学生交流事業の関係についてきちんと整理するとともに、経済的理由で参加が困難な学生等、支援対象を重点化するなど、しっかりと見直しをすべきだということで、まとめにしたいと思います。
例として二十数年前にもう既にこういう経験があるのだから、きちっとガイドラインをつくるなどできるのではないか、プログラムの質向上のためにできることがあるのではないかというご指摘も受けていることを付記したいと思います。
以上です。
【伊藤コーディネーター】
以上で終了いたします。ありがとうございました。
次の事業は10分後、14時40分から再開といたします。
( 休憩 )
【髙橋会計課長】
それでは、定刻になりましたので再開いたしたいと思います。神本政務官、この後、国会、参議院の本会議がございますので、ここで一度中座させていただきます。失礼いたします。
(神本政務官退室)
【髙橋会計課長】
それでは、引き続きまして総合型地域スポーツクラブ育成推進事業の公開プロセスに入らせていただきます。説明者の方はよろしくお願いいたします。
それでは、議事に入る前に、これからの議事にご参加いただきます評価者の皆様をご紹介させていただきます。
東京学芸大学客員教授、藤原和博様でございます。
【藤原】
お願いします。
【髙橋会計課長】
公認会計士・税理士和田義博事務所所長、和田義博様でございます。
【和田】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
クレディ・スイス証券株式会社チーム・マーケット・ストラテジスト、市川眞一様でございます。
【市川】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
法政大学スポーツ健康学部教授、山本浩様でございます。
【山本】
どうぞよろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
神奈川大学人間科学部特任教授、南学様でございます。
【南】
よろしくお願いいたします。
【髙橋会計課長】
大阪教育大学附属高等学校平野校舎教諭、松田雅彦様でございます。
【松田】
お願いします。
【髙橋会計課長】
それでは、コーディネーターの伊藤さん、よろしくお願いします。
【伊藤コーディネーター】
それでは、皆様、お手元の冊子65ページからになります。事業番号4番です。総合型地域スポーツクラブ育成推進事業について議論してまいりたいと思います。
それでは、まず徳久審議官より事業選定の理由についてご説明をお願いいたします。
【徳久政策評価審議官】
それでは、私のほうから総合型地域スポーツクラブ育成推進事業を公開プロセスの対象事業として選定した基本的な考え方についてご説明いたします。
本事業でございますが、この事業は長期継続事業であり、制度等の見直しの余地が大きいと考えたため、公開プロセス対象の事業として選定いたしました。スポーツ基本計画を踏まえた事業内容の見直しなどについてご検証いただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
【伊藤コーディネーター】
それでは、ご担当よりご説明をお願いいたします。
【説明者】
スポーツ振興課長の嶋倉と申します。よろしくお願いします。
お手元の資料65ページでございます。レビューシートでございます。
総合型地域スポーツクラブ育成推進事業、私どもスポーツ・青少年局スポーツ振興課のほうで担当しておりまして、根拠法令というのはスポーツ基本法、昨年できた法律でございますが、第21条、これ見出しは、地域におけるスポーツ振興のための事業への支援等というふうになっているものでございます。
また、関係する計画・通知等でございますが、これは、今ご説明がございましたように、ある程度継続しておりまして、今現在のものとしては今年の3月30日にスポーツ基本法に基づいて制定されましたスポーツ基本計画でございますが、それ以前はスポーツ立国戦略、さらにその前は、前の法律に基づいて策定しておりましたスポーツ振興基本計画、これに基づいて行ってきておったものでございます。
事業の目的でございますけれども、スポーツ基本計画等におきまして、スポーツを通じて新しい公共を担い、コミュニティーの核となれるよう、各市区町村に少なくとも1つは総合型クラブが育成されることを目指すというふうになっておりまして、これを踏まえまして、地域住民が主体的に運営して、そして、子どもから大人までだれもが参画できる地域密着型のスポーツ活動の場でありますところの総合型地域スポーツクラブの育成を推進するという事業でございます。
これにつきましては、資料後ろの72ページのほう、ちょっとごらんいただけますでしょうか。72ページ、上下に分かれていまして、その上でございます。総合型地域スポーツクラブ、どういうものかということを、ちょっと時間を使ってご説明させていただきたいと思います。
スポーツクラブというふうに言いますと、例えば駅の近くのフィットネスクラブのようなハード、建物とスポーツ器具、これがあることを前提にしたものと誤解されることが多い部分がございますけれども、この総合型地域スポーツクラブというのは、法的に言えば社団であったり、組合であったり、あるいは人と人とのつながりでございます。左側にあります地域住民の中でスポーツ振興に関心のある方、また、スポーツ振興を通じて地域の活性化に取り組もうという関心のある方々がクラブを立ち上げ、クラブマネジャーですとか、指導者ですとか、ボランティアスタッフなどという形でクラブをつくり、そのクラブが、右下のほう、赤い部分でございます。総合型地域スポーツクラブが定期的には例えばスポーツ教室だったり、スポーツのスクールであったり、サークル活動――これは文化も含みます――こういうものを行ったり、あるいは下にある世代間の交流を図る行事、イベント、それから、学校の授業や部活との連携、あるいは地域住民全体を対象としたイベントを行ったり、これに関連して、また右上のほうにあります医師による健康相談等を行う。こういう人と人とのつながりで、スポーツの事業を行うことを通じまして人のつながりをつくり、最終的には地域の活性化にも取り組んでいこう。そのために設けているのが、この総合型地域スポーツクラブでございまして、建物をつくろうというものではございません。
また、左上のほうに戻りますけれども、地域住民、それぞれの方々がスポーツに関心のある方、あるいはスポーツをやってみようかなというように思った方々が会員として会費を払ったりすることになるわけでございますけれども、自分の趣味に合った種目、あるいは自分の世代と異なる世代の方々と一緒にスポーツ活動を行う。あるいはまじめに、例えばどこかの大会に出て勝とうというところから、ちょっと時間があるのでたまに体を動かしてみようかなという、私ども多種目、多世代、多志向というふうに言っておりますけれども、さまざまな方々のスポーツのニーズにこたえ、地域の住民の方々みずからが運営していく、こういうものとして今、整備を進めているものでございます。
すいません、先ほどの65ページに戻ります。こういうものをつくるために、次の事業概要のところでございますけれども、大きく3つやっております。
創設準備中のクラブの担当者と先進クラブの関係者との連携を図るクラブミーティングの開催、クラブ育成アドバイザーを養成し、そして、準備中の総合型クラブへ派遣し支える。そして、総合型クラブの育成に関する各地域の先進的な取り組み事例等をまとめて、クラブづくりに役立つ情報を提供していく。こういう事業でございまして、これを実施方法としては委託の形でやっております。
予算額につきましては、平成21年度の段階では3億9,300万円ほどございましたけれども、24年度においては、事業仕分け等によって項目を落としたり、あるいは中身を精査したりしている関係で、24年度は1億3,700万円という形になってきております。事業の中身については、70ページの1枚紙がございます。ごらんいただきます。大きく総合型クラブ育成推進事業の実施、調査の実施というのは私ども事務的でございますけれども、このア、イ、ウが今の丸のところでございまして、内訳としては、イの総合型クラブ育成アドバイザーの養成・派遣という部分が、全体1億3,700万円のうち1億1,000万円ほどを使っておるという状況でございます。
たびたび申しわけございません。また、65ページのほうに戻ります。この事業に基づきますアウトカム、アウトプットのところをちょっとご説明したいと思います。
アウトカムのところ、これ、成果指標というところで、成人の週1回以上のスポーツ実施率ということを指標に掲げております。これ、実は右上のほうで計画が3つ並んでおりますが、その一番下の一番古い計画、平成18年に改定になっていますが、策定したのは平成12年でございます。平成12年の段階で、成人の週1回以上のスポーツ実施率、成人の方で週1回以上スポーツを実施される方が半分以上を目指そうという形が掲げられまして、その計画が22年度に終了しまして、22年度に続きましてつくったスポーツ立国戦略、ここで目標が50%から65%に引き上げられておりまして、これに対する達成度をこの右側に示しております。
この達成度、21年度に週1回以上、スポーツを実施される成人の方の割合45.3%になっております。実はこの時点では、まだ50%が目標だったんでございますが、最新のデータが21年度しかなくて、今現在課せられている65%という目標に対します達成度は7割程度という形になっております。
ただ、この22年、23年度なぜないかという部分、左側の括弧書きに書いてございますけれども、内閣府、大体、3年に1回ぐらい調査をお願いしておりまして、その中でとっておりますものですから、最新のデータが21年度となっているものでございます。
続きまして、アウトプットのところでございます。2行に分けて書いてございますけれども、先ほど上の基本計画のところで申し上げました、各市区町村に少なくとも1つはつくるということがまず掲げられましたので、これを総合型クラブの設置率、全市町村に対するところの設置している市町村の数の割合という形で掲げています。これが21年度の64.9%から、23年度は75.4%に至っております。実数書いておりませんのは、市町村の数が変わっておるわけでございまして、最新の23年度で言いますと市区町村の数は1,747で、クラブを設置している市区町村が1,318、ほぼ4分の3まで来ている。まだ設置されていない市町村が421、430ほどあるという段階に来ておるわけでございます。
また、既にご指摘もいただいておりますけれども、1つの市に1つあれば、それで十分なのかと言われますと、そういうことでは決してございませんで、2つ目、3つ目も私どもアドバイザーにアドバイスしていただいているところでございまして、新しく創設された総合型クラブの数、それ自体を見てみますと、21年度に137、22年度に209、23年度に127、波がございまして、大体130から200をちょっと超えたところまでの幅で上下しているというのが、20年度以前をさかのぼっても似たような状況になっております。
こういうことを踏まえまして、私どもも24年度の活動見込みのところ、括弧書きで書いてございますが、先ほど申し上げました残り430ほどの市町村、市町村の数もこれからまだ変わってくるものだろうとは思っておりますけれども、これを今現在のスポーツ基本計画、今後10年間を見通して5年間で取り組む施策を書いてある基本計画を踏まえまして、単年度で80ぐらいの市町村に新設させていただきたい。
また、80の市町村で新しくつくるという状況を考えますと、過去の率から考えて、クラブの数としては130ぐらいに何とかなるんじゃないかという形で、この24年度の活動見込みを置いているところでございます。
その次、単位当たりのコストの部分でございます。これ、実はクラブを新設するためにアドバイスをするといっても、地域住民に対するアンケート調査を行ったりする広報から、中心になっていただく方を探して、その方にいろいろと各方面に汗を流して、足を使って、時間をかけて説得し、また協力を取りつけていく、そのような作業にアドバイザーもくっついて、一緒になって支えていくわけでございますけれども、私ども話を聞くと、1つのクラブをつくるのに3年ぐらいはかかるものだというふうに言われておりますので、正確な分析はちょっとできない部分がございますが、単純に過去3年間の数字、21年度から23年度に創設されたクラブの数と、その期間の本事業の予算の合計額、473クラブを8億500万で見ますと、1クラブつくるのに170万円ぐらいかかっているというふうに私ども読んでおります。
続きまして、次のページ、66ページでございますが、私ども担当という形で点検いたしました。
目的・予算の状況、資金の流れ、費目・使途等については、それなりにしっかりやってございますけれども、特にここで私どもも丸をつけられなかった部分がございまして、不用率のところについては、不用率は決して大きくありません。100%使っている状況でございますが、この活動実績、成果実績のところ、私ども三角の部分をつける形になっております。
先ほど言いましたように、活動実績は見込みに見合ったものであるのか。先ほども申し上げましたように、やっぱり年度によって上下がございます。これをもうちょっと、毎年、上のほうに張りつくような形ができないのかどうか。あるいは類似する施策があって、それを参考にすることができればとは思うんでございますが、類似の事業もございませんで、この活動実績もこれでほんとうに十分、あるいはお金は十分に生かしたというふうな数字になっているかどうかと言われますと、私どもも、それを十分だというふうに胸を張れるだけのデータがないところでございまして、右側の文章のところでも、3行目でございますが、ある程度実効性の高い事業となっているんではないかと考えておりますけれども、これがベストというわけでは必ずしもないだろうと思います。
ちなみに成人の実施率などを見ますと、ちゃんと向上はいたしておりますし、また、総合型クラブをつくったことによってどれぐらいの効果が起きたかという形のところ、文章に書いてございますけれども、73ページをちょっとごらんいただけますでしょうか。
アンケート調査でございますけれども、クラブをつくりますと……すいません、73ページの上の表でございます。当然、クラブをつくりますと地域住民のスポーツの参加機会が増える。これは当然のことでございますが、新しい公共のところにも関係しておりますけれども、世代を超えた交流が生まれた、あるいは地域住民間の交流が活性化した。こういう形で地域住民がそれぞれつながりを持って、もちろん、つながっただけではなくて、ここからさらに地域活性化等を工夫してやっていっていただきたいというところまで私どもねらいとしてはおりますけれども、直接、そこの結果のところは把握しておりませんが、やはり、ねらいとしてのものはできているんではないかと考えております。
しかしながら、また66ページに戻りますけれども、各項の評価の下の点検結果のところでございますけれども、総合型クラブの育成を加速するというのは、まだまだ今後必要になっている状況だと思っております。
したがって、望ましい総合型クラブのあり方ですとか、支援策については検討を行って、その成果に基づいて総合型クラブの支援策の改善を図らなくちゃいけない、地域の実情に応じたきめ細やかなクラブの育成を促進する必要がある、これは否定できないところだと思っております。
そのページの一番下でございます。補記というところでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、本事業、既に仕分け等になっておりまして、大きくやったのが第一弾のところで、当時は総合型クラブ育成支援チームの設置等もございまして、この部分を項目として落としたり、費用を圧縮したりしてきております。
続きまして、67ページでございます。先ほど委託というふうに申し上げました。今現在、23年度の実績でございますが、ここずっとでございます。一者応募という形になっておりまして、私ども文部科学省のほうから公益財団法人日本体育協会のほうに、職員旅費50万円を除きまして、ほとんどすべてが行っておりまして、体育協会のほうでアドバイザーを育成したり、アドバイザーを派遣し、また、ミーティング等を開き、関係資料も集めて提供してもらっているというのが状況でございます。そのお金の内訳は68ページに書いてあるところでございます。
そういう形で、私どもの事業につきましては、所期の目的はそれなりに達しつつあると思いますけれども、従来から指摘されておりましたお金の使い方、また、国の事業としてどうかという部分は、また今回、ご指摘をいろいろ踏まえて考えていきたいと思っております。
私どもの説明としては以上でございます。
【伊藤コーディネーター】
ありがとうございました。
それでは、会計課長より、本事業の論点についてご説明お願いいたします。
【髙橋会計課長】
それでは、資料の74ページ、論点説明シートをごらんいただきたいと思います。
7点ほど、ちょっと多岐にわたる論点を書き並べておりますが、まず、スポーツ基本計画では、そこに書いてあるような形の位置づけにされておりますが、21年11月の事業仕分けでは予算の縮減といった評価もいただいております。そういったことも含めて、国としての取り組みをまず抜本的に見直す必要があるのではないか。
より具体的には、目的を達成している都道府県に対しては、クラブ間のネットワークを活用するなどすれば、アドバイザー派遣をする必要はないのではないか。
3点目として、総合型地域スポーツクラブの育成・定着のためには、その運営が行政からの支援に依存することなく、クラブみずからが自主的・自立的・持続的に活動を続けていくための財源・人材の確保が必要ではないか。こういった観点から事業の必要性をごらんいただきたいと思います。
それから、事業の有効性の観点からでございますけれども、このスポーツクラブが自主的・自立的に運営され、かつ持続的活動を続けていくために必要な地域特性、地元の特性や諸課題の解決に向けたニーズを踏まえた具体的な取り組みが行われているかどうか。
また、この費用の大半は、育成アドバイザーの派遣に占められておりますが、総合型地域スポーツクラブの育成にどのぐらいの効果が得られているのか、そういった検証の観点でございます。
最後に、執行方法といたしましては、今見ていただきましたように、この公募が一者応募となっておりますけれども、委託内容等の見直しを行うべきではないか。そして、当初予定の成果までは今至っておりませんけれども、継続して受託しているものに対する財政支援になっている側面があるのではないか。
こういった論点を挙げさせていただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤コーディネーター】
ありがとうございました。
それでは、ご質問、ご意見、お願いいたします。南先生。
【南】
これ、前回、事前のときにも申し上げたことですが、ちょっとコメントもしていただきましたが、要するにスポーツ基本計画の中で各区市町村に1つという目標の立て方自体で、前回申し上げましたように370万の横浜市と、170人ぐらいの東京都青ヶ島村を同じ区市町村の中でくくって、少なくとも1つというと、これ、計画としては整合性が全然とれないというようなことで申し上げたと思うんですが、やっぱり達成率ということで、どうしてもこういった成果指標が出てくると、都道府県の中でこうやって幾つかが達成しているしと。この辺の考え方。先日、実際に田園調布のスポーツクラブに行って、私もあえて聞いたんですけども、この総合型地域スポーツクラブというのはどのぐらいの後背人口といいますか、できるのか。都市部では、たった一例ですけど、大体、中学校区ぐらいかなというようなお話を聞いたわけですね。
確かに人口レベルで言うと、中学校区で大体1.5万人とか、平均で2万人から1.5万人ぐらい、ちょうどいい規模かと思うんですが、こういった総合型地域スポーツクラブは、顔の見える範囲でなければなかなか成り立たないというようなことであると、スポーツ基本計画がどういうことであれ、1つの目標の立て方というのは、各中学校区程度に1つぐらいで、その達成率を都道府県の段階でどのぐらいかというふうにやらないと、72ページに出てくる設置状況とか達成状況、これは、実態を反映できない数字になると思うんですね。まず、その辺についていかがでしょう。
【説明者】
総合型地域スポーツクラブ、これ自体は、特にヨーロッパのほうで前例があり、それが社会活性化へ機能していることを考えると、我が国においても必要となるだろうという形で行政的に取り入れられてきて、ある意味、ないところからつくっておるものでございますので、その段階で基礎自治体、実は各市区町村1つというのは合併前の段階で言っている話でございまして、その段階から市区町村の数が減っていますから、実数としての目標の数字も実は半分ぐらいになってきているところでございますが、それよりも地域の活性化まで考えると、今ご指摘のありましたように、ほんとうは地域的な人の顔が見える、つながりがつくれる中学校区だとは思いますけれども、当時、つくった現状、それから、今現在の現状を考えても、すべての中学校区に1つつくりなさいという形のものは、少なくとも今までは達成は難しいかなという形でとってきておらなかったということでございます。
その一方で、実際の現状を見てみますと、人口で言うと341人の小さな村でもつくっておられるところがございます一方で、140万人ぐらいの大きな政令市においてもつくっておられないところがございまして、このスポーツ振興、あるいはスポーツを通じた地域活性化のあり方というものを、私どもがもうちょっとしっかりやって、それを中学校区単位でやっていきなさいというふうに考える方法もあろうかなとは思いますけれども、今までのところは、そこの部分がちょっとできておりませんで、もしかしたら、今後はそこの部分も考えていかなくちゃいけないのかもしれません。
ただ、今のところ、文部科学大臣が策定しました基本計画においても、中学校区に1つつくれというところまでハードル引き上げる段階には至っておらない状態でございます。
【南】
私が申し上げたのは、中学校区につくれという意味ではなくて、その程度の人口的な規模で、当然、人口密度だとか、都市条件だ、あるいは農村部で全然違いますから、中学校区ということを私は申し上げているんじゃなくて、総合型地域スポーツクラブが成り立つ基盤というのは、この事業を始めてからもう既に8年弱たっているというところで、まだこういった数字を追っかけていること自体が、私は、1つの政策的な対応としてはまずいんじゃないか、おくれているんじゃないかなということです。
それはともかくとして、もう一つ、これも前に申し上げたことですけれども、総合型地域スポーツクラブにとって一番の必須条件は組織であることはもちろんなんですが、それと同時に絶対に施設がなければ成り立たない事業ですよね。これに対してどういった形で取り組むのかというので、実際にはどういった形で学校開放を使ったり、地域施設を使ったりという資料はちょっといただきましたが、いずれにしても、どのスポーツクラブも非常に苦労しているわけですよね。それに対して、文科省として政策的な意味での支援というのは何か考えていらっしゃるんでしょうか。
【説明者】
現実的には、総合型スポーツクラブの大部分は、地域の学校の学校開放を使っている。それも、ほかのスポーツ団体、地域の方々と共通した形で時間を分けてもらうような形で利用させていただいているのが現実でございます。大きなところ、それから既にありますけれども指定管理をとるところまで行ったり、あるいは学校開放の時間調整とか、管理とかを請け負うような形で、地域の方々に対するスポーツ機会を提供するより、積極的なコーディネート役もひっくるめてやっているようなところもございます。
私どもとしては、そこの部分について特段のお金とか、制度的なものを出しているわけではございませんで、現状、そこの部分、もちろん地域の人々の熱意と理解とがうまくいっているからだけでございまして、うまくいかない部分を行政としてどうするかというのは課題ではございますが、私どもとしては、そういう学校開放をうまく使うということ。それから、できればNPO法人等になって指定管理も行えるようになること。そのような形で財政基盤を確立していってくださいということを、ある意味アドバイスしているのが現状でございます。
【南】
でも、いただいた資料の中で、学校開放を主たるNPOをつくったりして、かなり主導的に展開しているところは6団体しかないんですよね。先日、やはり田園調布、大田区のクラブに行ったときも何が一番苦労されていましたといったら、既得権との調整だと。既得権は一体何といったら、学校開放で既に使っている地域のさまざまな団体との調整ですね。これに対して何らかの支援というのは考えていらっしゃるんでしょうか。
【説明者】
学校開放のときの管理の仕方の部分については、その学校の設立以降の経緯がございまして、なかなか一律にはできませんで、私どもとしても、そこをこうしなさい、ああしなさいとは現実言っておりません。できるだけ多くの方が利用できるように開放の方法ですとか管理の仕方、さらにお金がある場合、いろんな事例という形でございますけれども、学校開放しやすい施設をつくるなりして取り組んでくださいという形での事例紹介とアドバイスという形でやってきているのが現状でございまして、それを超えるお金という部分は、学校の現状が違い過ぎますので、手がなかなか届いておらないところでございます。
【南】
私、金を配れと申し上げているつもりは全然ないし、文科省として総合型地域スポーツクラブに本気で取り組むんであれば、一番問題点になっている施設の確保ということに対して何らかの政策的な対応をすべきだろうということで申し上げたんですが、それに対しては、種々いろいろあるからやっていないということになると、結局、これは役に立たないということになってしまうわけですよね。
達成率どうのこうのと、先ほど言ったように、区市町村という意味で成り立つ達成率で言うと、先ほどのカウント数で約7割だというんですが、現実的にどこまで総合型地域スポーツクラブとしての恩恵を受けるというか、それにかかわる人たちがいるのかというと物すごく少ない。そのほとんどが施設の利用でつかえてしまっている。これに対応しなかったら、この事業を進めるという意味はどこにあるんだというところなんですけども、いかがでしょうか。
【説明者】
指定管理の部分にいては……。
【南】
いや、指定管理はかなり進んだ段階なんで、私は、指定管理は別に議論するつもりは全くない。
【説明者】
ですから、指定管理……。
【南】
基本的に、少なくとも一番基本になるような学校施設しかないわけですよね。ほかにも社会体育施設その他いろいろありますけれども、一応、押しなべて、先ほどのご説明のように一番は学校開放の問題だと。これに対してどういう対応をなさるのかというところです。
【説明者】
ですから、つくり出してからまだ期間がございません。8年もたったのか、8年しかたっていないのかということはございますけれども、基本的に、これは、社会のあり方、学校単位での地域のつくり方、支え方のあり方を変更させるものでございますので、まだまだスタートしたばかりだと思っています。
指定管理につきましても、実は3,000のうち120が何らかの形で指定管理を請け負っているところまで行っております。このようなことを考えますと、やはり今後も各クラブが地域住民に対して、実際にクラブがやるとメリットがあるよということを示しながら広めていくものだと思います。もちろん、それに対して私どもとしても、学校開放を進めるべきということは従来から取り組んできておりますし、お金の話ではありません。学校管理しやすい施設のつくり方とか、管理のあり方を具体的に事例として示しておる。もちろん、それは、今後さらに総合型クラブの方々が開放されている施設を使いやすいようにするために、住民の方々の理解、あるいは学校サイドの理解を得られるような部分について手助けはしていかなくちゃいけなくなるんだろうと思っておりますけれども、アドバイザー自体については立ち上げるところだけでございますので、今現在の状況を見てアドバイザーの必要性、それなしというわけにはいかないんじゃないかと思っております。
【伊藤コーディネーター】
一たんここで整理いたしますが、山本先生、最後にします。
【山本】
クラブ育成アドバイザーを派遣して、なおかつなかなか100%にならないという現状、この背景には一体何があると理解しているんですか。
【説明者】
やはり総合型クラブという部分が、地域の人々の熱意と努力でスポーツに対する関心と地域活性化についての関心を盛り上げながら、地域の人たちに動いてもらう、汗を流してもらうようにもっていく、そういう役割を担っている部分でございますので、地域の方々が総合型スポーツクラブをやると楽しい、さらに地域も活性化するという部分の成果をしっかり見せていくことが課題だと思います。
そこの部分もアドバイザーの方々にいろいろ聞くと、総合型クラブとは何ぞや、できるメリットは何ぞやという部分があって、そこら辺の部分を理解いただくのに時間がかかるというふうに言われています。
私どもも、先ほどもございましたけれども、クラブがほんとうに全国津々浦々で大体の地域、地域にあるような状態になれば、このクラブの存在するメリット、地域住民に対するメリットというのはわかってくるとは思いますが、今現在は、そのクラブの数自体がまだ少ない。そして、それぞれできているクラブも財政的に、あるいは活動的に、人的に十分な基盤はまだございません。クラブのメリットを隣の地域に住んでいる方が見ればわかるというところまで行っておらないのが一番の問題だと。そこの部分を行政がしっかりと、クラブをつくることのメリット、つくることに対して、そんなに地域の方々に負担になるわけじゃないんです。みずから地域住民として地域に参画しながら、楽しみながらやっていただければいいんだよということをもうちょっとわかりやすく言っておかないと、ここの加速という部分は難しいのかなというのをちょっと反省として思っている状態でございます。
【山本】
もう一ついいですか。この制度、総合型地域スポーツクラブの発案から、たしかしばらくは育成アドバイザーの存在はなかったはずですよね。これができた後と前とで大きな変化があるんですか。
【説明者】
平成16年からこの事業あったんですけど、平成15年のところでは、クラブ数が833であったのが、特に1年ですぐできるというわけではないんですけれども、2年、3年かかるところもあるんですが、クラブ育成アドバイザーができることによって、クラブ数が例えば平成15年では833のクラブが平成16年では1,117、平成17年では2,155ということで、これは、クラブ育成アドバイザーさんに活動していただいて、掘り起こしをしていただいてという結果であるというふうに思っております。
【山本】
それとともに、この数字そのもの、75%というのは市区町村をベースにした最低1個というところですよね。ところが、育成アドバイザーが非常に優秀で、地元の理解も進んで、それから横の連携もいいとなりますと、既に1つの市区町村に1個あるにもかかわらず、2個、3個とできてくる。そういうケースもあるんじゃないかと思うんですが、その辺の実数は何かお持ちでしょうか。
【説明者】
クラブの設立につきまして、やはりアドバイザーの方が1人いるか、2人いるかによって、実はでき方が違っております。クラブアドバイザーの方が1人よりも複数、複数よりも人数、一番多いのは広いもんですから北海道さんに4人配置したりされていますけども、より多くのアドバイザーの方がいると、1人のアドバイザーで行くよりも2人のアドバイザーが話をしたほうがということなのかもしれませんが、やはり加速しております。1人当たりの設立支援クラブ数が多くなっております。
そういうふうに考えますと、アドバイザーを薄くやるよりは、やはり複数の方が1つのクラブを支えることによって、基本的に、アドバイザーの方々は自分でクラブを立ち上げてきた経験を持っている方が多いもんでございますから、実際こういうふうな苦労をしたんだけれども、こういうふうな成果が上がるというのが1人ではなく、2人の方から聞ける、あるいは3人の方から聞けるというようなことが効いているんではないか。そのように考えますと、やはり実体験に基づくアドバイザーの力というのは非常に大きなものだと。地域住民に理解していただく上では非常に大きなものになっていると考えております。
【説明者】
補足ですけども、平成20年から22年の3年間にクラブ育成アドバイザーの派遣人数と翌年のクラブ新設数というのを見てみると、クラブ育成アドバイザー1人当たりに対しまして新設クラブ数は約2.7クラブというふうになっています。また、クラブの未設置市町村への新設するクラブ数は、クラブ育成アドバイザー1人に対しまして約1.4クラブというふうなことで、今、課長が申しましたようにクラブ育成アドバイザーが1人より複数配置、あるいは配置の人数が多くなるほど、翌年の新設クラブ数及びクラブ未設置の市町村で新設クラブ数が増えるという結果になっておりまして、クラブの新設には大変有効であるというふうに思っております。
【伊藤コーディネーター】
市川先生。
【市川】
すいません、ちょっと具体的な数字の確認をさせていただきたいんですけれども、秋田県には今、クラブアドバイザーの方おられますか。
【説明者】
秋田県は1人です。
【市川】
1人ですか。では、福島県はどうですか。あと、すいません、一緒に聞いてしまいますけれども、石川県、それから兵庫県、島根県、高知県、熊本県。まず、秋田ですね。
【説明者】
秋田1人、福島はゼロ。
【市川】
福島はゼロですね。
【説明者】
それから、石川県がゼロですね。
【市川】
ゼロですね。それと兵庫県。
【説明者】
兵庫はゼロです。兵庫は、基本的に全市に……。
【市川】
100%あるからですね。それと島根県。
【説明者】
島根県はゼロでございます。
【市川】
ゼロですね。高知県。
【説明者】
高知もゼロです。
【市川】
ゼロですね。熊本県。
【説明者】
熊本は1人。
【市川】
1人おられるんですね。わかりました。
【説明者】
23年度の数字は以上です。
【市川】
実は私、ホームページを47都府県全部ひっくり返して、どなたがなっているか見たんですよ。空白県があるんですね。そこでちょっとお伺いしたいのは、例えば福島県は、今、設立準備中のクラブは何クラブありますか。
【説明者】
準備中ですか。
【市川】
準備中です。あと福島は、いつからいらっしゃらないのかももしわかったら教えていただきたいんですけど。――もういいですか、数字言っちゃって。
平成23年度総合型地域スポーツクラブ育成状況というデータが文部科学省のホームページの中にあって、これは、昨年の7月1日現在ですからちょっと古いんですけど、それを見ると、福島県は今、創設準備中のクラブ数が9あるんですよ。時系列がわからないのでわかりませんが、仮に今、アドバイザーの方がゼロ人であったときに、では、創設準備中のクラブというのは一体どなたがどういう形で面倒見ておられるんですか。
【説明者】
福島県も、それ以前については配置しておりましたので、その段階の分は残っているんじゃないかと思います。
【市川】
では、石川県にも3つありますよね。
【説明者】
石川県も22年まで配置しておるところでございます。
【市川】
何で23年以降いなくなっちゃったんですか。
【説明者】
基本的に状況を見て、支えることがどれだけ必要かによって、委託先のほうで判断していますし、私どもの予算のほうも若干減ってきておりますので、私どものほうからは単価の部分は決めております。あと、活動日数等を見合って、どこの県に配置するかというのを委託先で判断するんですが……。
【市川】
では、例えば島根県は14クラブが昨年の7月1日の段階では創設中なんですけど、島根県もそうですか。みんな、これ、大丈夫だという状況になったんで配置していない。
【説明者】
去年、23年度には島根県はおります。
【市川】
おられたんですね。要は、いらっしゃる県といらっしゃらない県があって、全体の人数で、多分、四十数名ぐらいのところで管理されているのかもしれませんけれども、大都市も含めて未設置の自治体が多い県とか、それから少ない県とか、どういう基準でアドバイザーを配置しておられるのかというのが、このデータを見ると全くわからないんですよ。つまり、何をもってしてアドバイザーをこの県には置かなければならないとしている要件になっているのか。というのは、非常に論理的に説明しにくい配置になっているんじゃないかと思うんです。ちょっとその辺、どういう基準で置いておられるか、教えていただけないですか。
【説明者】
基準自体と言いますれば、3年ほど前ですと60数名置いておりましたのが、今年度は頭数としては42になっておりまして、もう一つ、先ほども若干申し上げましたけど、アドバイザーの方自体が実はみずからクラブを立ち上げて運営されている方だったりします。そこで、自分のところのクラブのてこ入れとかに戻らなくちゃいけないというような事情と、私どものほうから委託するお金の事情、そういうことを考えて配置していただいているところでございまして、確かに明確な基準は、ほんとう言うとあってしかるべきだと思いますし、私どものほうから県単位で指定することは、しっかり進めるんであれば県単位で何人、何人という形でやればいいのかもしれませんが、今申し上げたようなアドバイザーとなる方の事情、そして、私どものほうから必ずしも必要な部分、委嘱できるような金額になっていないというような事情がありまして、今、このような結果になっているんではないか。その部分は、逆に言えば、もうちょっと集中的な話は考えなくちゃいけないかもしれませんけれども、そこまでは私どもも、委託も至っておりません。
【市川】
ちなみに、先ほどの山本先生の質問の裏返しの質問を最後にもう一つだけさせていただきたいんですけれども、では、アドバイザーがおられないにもかかわらず、自発的にクラブができたケースというのはありますか。
【説明者】
あります。実はこのたび、小さいところの状況どうだというふうに伺ったときも、アドバイザーの方、その県にはいらっしゃるんですけど、その土地には行っていないはずだというところがありまして、先ほど言いました小さなところもアドバイザーの方は行っていないというふうに聞いております。
そのようなことを考えますと、やはり地域住民の地域活性化なり、スポーツを通じた地域活性化なりに対する理解がある意味、自発的に高まるような地域は、アドバイザーはそれほどなくてもいいのかもしれない。先ほど言ったような地域の部分、アドバイザーの場合は立ち上げの苦労と同時に、立ち上げた後の組織のお金とか人の回し方、そういう、ある意味、行政事務に近いような部分がございますけれども、小さな自治体だと、そこの部分は住民と自治体、一体とまでは言いませんけれども、重なっている部分が非常にあって、そこの部分は、自治体のサイドがしっかりと必要だというふうに考えれば、あとはお手の物というのもおかしいですけれども、従来やっているものに近いんで、自発的に立ち上がっているようでございまして、先ほども若干申し上げましたように、行政サイドが各小学校区につくるんだという形で、とりあえずつくってしまうと、そこのところでうまくいかないところもたくさんあろうとは思いますが、うまくいくところの例を隣近所でも参考にしていけば、それはそれなりにできているんだと。
そういうふうな形で、アドバイザーがすべて立ち上げているわけでは決してございません。やはり難しいところ、ほうっておくと立ち上がらないところを集中して行っていただくというのが支援のあり方かなと思っています。
【市川】
これ、多分、後で藤原先生から、そこはあると思うんですけど、アドバイザー、方針としてクラブを立ち上げていかなきゃいけないという方針なんですけど、山本先生からもご質問がありましたけども、その中でクラブを立ち上げる障害は何なのかというときに、そこがアドバイザーで乗り越えられるものなのか。それとも、もっと別の大きな理由があるのかというのは非常に重要なところで、仮に大きな理由があるのであるとすれば、それは、むしろ、そちらのほうに集中すべきところではないかとも思うんですね。
実際にアドバイザーの方がいれば伸びると先ほどおっしゃっておられましたけども、それは、極めてざっくりとした数字であって、平均的にとかという話で。でも、実は今申し上げましたように、今、設立準備中のところでも現時点においてはアドバイザーがおられないところもあったりとか、人口とか、設置していない市の数とか、いろいろリンクをしてみたんですけど、どう考えてもそこが整合性のとれる数が出てこないというところを考えると、お金の使い方というか、人の配置の仕方とか、それから、トータルで見たこの制度のあり方という点に関しては、正直、しっかりした考えがあまり見受けられないというのが、私が今、この数字を見たところです。
【伊藤コーディネーター】
藤原先生。
【藤原】
私、この分野については、ほとんどプロなんで、例えばヨーロッパでうちの息子を総合型のスポーツクラブに入れていたこともあるし、それから、今現在、杉並区のある総合型スポーツクラブで、私はテニスの会員で、そこで60代、70代の方々とかなり楽しくやっているということもあるんで、その現場の話、あるいは和田中に関しては地域社会というものについてどっぷりやりましたので、ほとんどマクロ、ミクロともにいろんな問題点がわかっているつもりなんです。
2つのマクロ的な視点と、ミクロ的な視点、両方とも僕は指摘してみようかなと思うんですけども、最初に、とにかくこの予算のあり方、今、市川さんがこだわった部分ですが、要はアドバイザーに払うのか。例えば同じ2億円が確保できた場合でも、校長に渡しちゃったほうがいいのか、教育長に渡しちゃったほうがいいのかというようなことも含め、多くはほとんど校長がこういうものを邪魔しますので、要するに外に使わせたくない。使わせると壊されたり、面倒くさいからと。その辺がほぼ校長権限になっていますからというようなことで、それは、ちょっと後ですごく細かいことも例をとって申し上げたいと思うんですが、まず、予算のあり方なんです。実はこれの前のレビューで、24年度の予算、政府案における地域活性化施策をリストにしていただいたんですね。これ、ほんとうに丁寧な表で、傍聴の方にはちょっと配られていないようなので、僕が若干ざっと言いますけれども、政府トータルで地域活性化に関しての施策が7省庁にわたって30以上あります。うち文科省内で7つあるんですね。
例えばですが、内閣府に特定地域再生事業費補助金というのがあって、日本再生のための戦略に向けてに示された成長型長寿社会、地域再生の実現に向けた課題と我が国の経済社会にとって共通の特定の政策課題の解決に資する地域再生計画の策定事業の実施を支援みたいなものから、文部科学省の結構大きな予算である85億円の学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業もありますよね、大ざっぱに言って。これ、多分、学校支援地域本部の事業の延長になるものだと思いますけど、あるいは厚生労働省のほうには300億円もある地域子育て支援拠点事業(ひろば型)というのがあって、これも地域において子育て支援拠点の身近な場所への設置を促進するとともに、子育て家庭へのきめ細かな支援により機能拡充を図る。これ、多分、放課後居場所の延長になるものですよね。
それから、農林水産省には地域における産学連携支援事業というのがあり、経産省には地域商業再生事業があり、国土交通省にもなぜか、新しい公共の担い手による新たな地域づくりみたいなのがあるんですね。
こういう中で、僕は、なぜ地域社会を再生するというのが一本化されないのかがずっと疑問で、この表をわざと出していただいたわけですけども、こういうところで、できたら学校を核にして地域社会を再生するというのをもうちょっと予算を集めて、本格的にやったらいいと思うんですが、なかなかそうならないですね。
そういう中で、一方、文科省に85億円の予算が別にありながら、アドバイザーに2億円というものの根拠、ここをもうちょっとたださないといけないかなと思っているんですが、私は、対案として同じ2億円なら、とにかく学校開放してくれと。そのモデル校として200万ずつ100校の校長に渡しちゃったほうが早いんじゃないかとさえ思うし、あるいは100の自治体の教育長に200万の予算を渡しながら、この総合型地域クラブに絶対開放してねということをやっちゃったほうが、命令はできないんでしょうけども、そういう指示が行っちゃったほうが早いよう気もするんですけども、なぜアドバイザーなんですかね。アドバイザーの養成・派遣に2億円のほうが、私が今言った校長や教育長を動機づけるよりも効果がより高いという理由を言っていただけます。
【説明者】
きちんと分析しているわけではございませんけれども、1つ、例えば100校、これが仮に1,000校だとしても、我が国全体のところでやってください。例えば1,000校に対して100万、500万あげますという形でやってしまうと、どういうところがあくとかというと、既に地域との連携がうまくいっている学校になってしまいます。そこの部分は、ほうっておいてもということは決してございません。けれども、ある意味、お金の投じ方としては難しい部分に投じてやっていく必要があるんではないか。それに対して、ある意味、易きに流れるという言葉は不適切だとは思いますけれども、そういうやりやすいところがスタートしてしまうんではないかという部分が1つ懸念としてはございます。
その一方で、確かに、そういう形で運営に使えるようなお金まで渡したほうが永続するのは間違いないんですが、もう一つの理由であるところの地域の活性化という形を考えますと、地域の活性化をやるためにノウハウある人にやらせるという部分は確かに必要ですが、それはそれでメリットあると思いますけども、総合型クラブの場合は、先ほども若干言いましたけれども、収入があまりないところが、しばらく自分の貯金を持ち出してもやってくださる方がいます。そういう熱意のある方をちゃんと地域の顔として国の事業で支えていくことが、後々の継続、そういった熱意を引き上げるという意味からすると大きいのではないかと思っております。
そういうことを考えると、私どものアドバイザーは、四十数人で全国津々浦々にはなっていませんで、そういうふうに言うのは不適切かもしれませんけど、しかし、将来、地域のために自分が汗を流したいという方を発掘し、その方に実際に活躍していただけるような状況にもっていくことを考えると、やはりアドバイザーという形の四十数人、もうちょっと多いほうがいいと思うんですけれども、行政で既にわかっている人、どうかといって、すぐに手を挙げてやってくれる人にお金を渡すよりは、掘り起こしということが小さなお金でできるんじゃないか。
仮に1億3,000万を100校に分けて130万円で学校開放を委嘱してくださいという形にしてしまうと、運営委員会ですとか、事務の金ですとか、うまくいって電気代とか、水道代をやるにしても、あまり大したことはできないんではないかと思います。やはりアドバイザーという形でサイドから支えるだけ。基本的に、汗と自分の負担で頑張っていただく人を引き上げていくことが、お金の観点からするといいのではないか。
【藤原】
わかりました。もう一つだけ質問して、あとちょっと細かいことをもうちょっと別の機会に発言したいと思いますが、ヨーロッパの場合、ご存じのとおり、こういう総合型のスポーツクラブに子どもを入れた場合、例えばサッカーならサッカー、野球なら野球と決めないんですね。要するに全部いろいろやらせてみて、小学校の高学年ぐらいまで引っ張って、ほんとうに何が合っているのかというのを本人に見きわめさせる。アメリカなんかの場合には、大学行っても2つ、3つやっていますよね。それが日本の場合には、とにかく何とか連、何とか連というのがあって、あるいは指導するコーチもそうですけども、応援するお父さんたちも野球派とサッカー派と分かれちゃっていて、それに入ったら、とにかくおまえ、サッカー命がけでやるのか、やめんのかみたいな感じになっちゃうわけですね、巨人の星型と言ってもいいんですけども。
そういう中で、総合を目指すのは、ほんとうに理念としてはすばらしいと僕は思うんだけども、僕も孫ができたら、いろいろやらせてくれるところへ入れたいです。それ、日本の風土でしょうか、なかなかできないですよね。
総合型スポーツクラブといっても、私の知っているところで結局やっているのは、やっぱりサッカーなんですか、野球なんですかと分かれているんですよ。全部やらせてみてというところは、僕、1個も知らないです。これはどうなんですか。このカルチャーは崩せると思われますか。崩せないんであれば、最初の理念からしてなかなか無理なことをやっちゃっているなという感じになっちゃうんだけど、どうですか。
【説明者】
そこの部分は崩せると思います。
【藤原】
でも、今、全然崩れていないよ。
【説明者】
そこの部分を崩すためにこそ、このクラブが必要なんだと思います。確かにほうっておくとサッカー、あるいはリトルリーグのある野球、これがほとんどで、それにせいぜい商業的な部分ひっくるめても水泳と体操くらいしか出てこないのが現状だと思います。
でも、それでは選択肢がないのと、子どもには、親の思いとしてスポーツだけに頑張ってもらいたいわけではなくて、先ほども言いましたようにクラブであれば、世代間の交流みたいなものとか、スポーツではなくて文化活動みたいなもの、そういういろんな体験をやってもらえるようにする。総合型スポーツというふうに名乗っていますけど、スポーツを中心に地域交流をやるという、そこが可能になってくるものでございます。
【藤原】
すみません、でも、全部分野は分かれているんですよ。総合型でもスポーツクラブの中にサッカーと野球は分かれているんですよ。それは、親が両方、複数にやらせるためには物すごい時間が必要になって、要するに月水金をサッカーで、火木土は野球、そんなわけいかないんですね。子どもは塾に行かなきゃなんないとか、いろんな忙しい用もあるので、だから、実際そうなっていないんですよ。それは知っていらっしゃる。
【説明者】
そういう部分が多いのは、ご指摘のとおりです。
【藤原】
いや、多いじゃなくて、ほとんどそうですよ。
【説明者】
いえ、やはりクラブについては指導者を確保するにしても、サッカーと野球のほうが指導できて、なおかつ自分が指導したいという大人が多いわけですよ。
【藤原】
そうそう。
【説明者】
それに対して……。
【藤原】
縦の組織がもうできているような感じなんだよね。
【説明者】
だから、そこの部分を総合型クラブがある程度、人間とともに財務なりしっかりして、ほかの種目についての指導者とまじめに闘う指導者じゃなくて、文化的な活動、あるいは体験活動もできる指導者を確保して、教室、あるいはイベントをセットするというところまで行かなくちゃいけません。そういう意味でいえば、でき上がった瞬間のスポーツクラブというのは、やはり従来型の部分が多いと思いますが、そこの部分をより多くの方々、それから大人の方、高齢者にも入っていただくことによって広げていくというのがあると思います。
【藤原】
わかった、わかった。何となくロマンに聞こえちゃうんだけど、よくわかりました。
【伊藤コーディネーター】
理念と実態のところですね。市川さんに行って、その後、松田さん行きます。
【市川】
ちょっとすいません、1つだけ確認させてください。先ほどのお話の中で、アドバイザーの方については、熱意と情熱を持って、かつ中にはご自身で貯蓄を取り崩してやっておられる方もいて、いわゆる持ち出しの負担というものもなければできないんだというようにとれる、多分、発言としてはそうだったんですよ。そういうご指摘があったんですけど、文科省は、それも求めているということですか。
【説明者】
いえ、アドバイザーの方ではなくて、クラブを運営される方です。
【市川】
それは、運営される方のこと。でも、運営される方には持ち出しがあってしかるべしだと。
【説明者】
いえいえ、それはしかるべしではありません。持ち出さなくてできるようにするのが筋ですし、立ち上がった後、会員がなかなか集まらないときに、自分で広報、チラシをつくって集めるというようなことをやっておられるのはありますが……。
【市川】
わかりました。ただ、一言だけ言いますけど、国の施策として、1市町村に1カ所置いてほしいというようなものについて、個人の持ち出しに期待するようなものというのが果たして成り立ち得るのかどうかというのは、それは甚だ疑問であって、これは、また後ほど議論になるかもしれませんけれども、むしろ別のところを変えないと。要は、そのループからは抜けられないことになってしまうんじゃないかと私は思いますけど。
【説明者】
おっしゃるとおりだと思います。したがって、できた後の運営についても財務基盤をしっかりするということを私どもも、お金を出さない形で支えていかなくちゃいけないというのが今の課題になっていると思っています。
【伊藤コーディネーター】
松田先生。
【松田】
クラブという仕組みの話になっているんですが、例えばアドバイザーがどんな活動をしているかという具体的なことがあまり見えないので、例えば、もしこんな活動をされているという事例があるんであれば、少し紹介いただいたらいいと思うんです。後でもう一つあります。
【説明者】
例えば既存のいろいろなスポーツ団体があったところで、先ほどからの学校開放の話のところで、既存の団体がそこをずっと使う既得権があって、なかなか使えないというふうな地域のところへ入っていって、そこの団体さんのほうに足しげく通って、1年間に靴3足すり減らすぐらいまで通って説得して、このクラブの意義なり、理念なりを説得するというふうなことと同時に、先ほどから出ております学校を保有している教育委員会なりの双方に、行政と地域住民、あるいはスポーツクラブ双方にかけ合って、クラブの芽をつくって、つくり出したというふうな例とか、例えば総合型クラブができそうになったにもかかわらず、準備委員会がぽしゃって消えてしまった。そういうところに再度もう一つ火を入れて、つくっていくというふうな例とか、例えば東京の例ですけども、開発されたニュータウンのところへ、新住民と旧住民がなかなかうまく融和しないようなところに対して行って、そこのクラブの住民と行政という、まさにサンドイッチといったらなんですけども、地域住民への働きかけと施設を所有している行政、この場合には区の教育委員会になるんですけど、その双方への働きかけをしているというふうな例があって、それでうまくいっている場合と、なかなかうまくいっていない場合もあるんですけど、そういうふうなクラブ育成アドバイザーさんにとって、双方への働きかけというのは大きな力だと思います。
【伊藤コーディネーター】
もう一回。
【松田】
もう一つ。実はこの事業なんですが、どうしてもクラブということが言葉に出ちゃうので、実態あるクラブをつくるということに聞こえちゃうんですけども、先ほどの話を聞くと、実は今までは単一種目とか、既得権があるという、そういう形でスポーツを推進していた。それに関して住民と教育委員会さん、この両方に働きかけながら、みんなで地域を支えるようなクラブをつくろうという仕組みですよね。仕組みをつくっていこうというのが、この事業のこと、そういう理解でいいですか。
【説明者】
まさにそのとおりだと思います。もちろん、これをつくることによって、さまざまなスポーツを選択できる、お店を広げていくというふうなこともあり、いわゆるするスポーツの場をつくっていくというのもあるんですけども、それに加えて、やはり仕組みを変えていく。例えば運動部活動なり、あるいは企業スポーツなりというふうなことで支えられてきたスポーツのシステム自体を、地域の中で、地域に根づいた形で国民が、みんながスポーツに親しめるような仕組みをつくっていく、いわゆるシステムをつくっていくのが総合型クラブであって、いわゆるスポーツをする場だけを増やしていくという意味ではないということです。
【伊藤コーディネーター】
コメントシートのご記入をお願いいたします。評価の考え方ですが、これは、まさに松田さんからご質問があったとおり、クラブの設置の事業ではなくて、アドバイザーの派遣の事業ですので、総合型地域スポーツクラブの必要性ではなくて、アドバイザーの派遣の必要性という視点でご評価いただければと思います。市川先生。
【市川】
さらにわからなくなってくるんですけど、先ほどアドバイザーの方は地域と教育委員会とか、行政組織を回るというお話をされましたよね。それでいいですね、学校を回ると。
私は、何で国の施策に、行政間の調整に国の金をかけてアドバイザーの方が動かなければいけないのかが理解できないんですよ。例えば地域の住民の方の中に小学校を使うことについて、いや、これはちょっと勘弁してください、これは、我々の大事な小学校ですから反対ですという方がいて、そういう方のところに調整に行く。ないしは運営の仕方がよくわからないので、そのノウハウ、どう経営したらいいのかとか、どのぐらい人数がいるのかとか、どこに行けば先生がいるかということを供与しているならわかるんですよ、まだアドバイザーの役割として。でも、行政間の調整をするというのはどういうことですか。
【説明者】
行政を対象にした調整も1つの中にありますけれども、先ほど言いましたように、組織をつくって、お金を回す、人を回す、そういうところから全部調整して、その中に相手先として学校があったり、行政があったり、あるいは自治組織があったりするわけです。
【市川】
でも、これ、文部科学省の施策としてやっておられるわけですよね。もちろん学校というのは、必ずしも文部科学省と直接結びついているわけではないと思いますけれども、でも、実際、先ほど来話が挙がっている、一緒に行っていただきましたけども田園調布、これ、名前挙げてもいいんですかね。田園調布グリーンコミュニティにお邪魔をした際にも言っておられましたのは、教育委員会からつくってくれというふうにPTAの会長をご経験されたような方が言われましたと。ところが、教育委員会から言われたにもかかわらず、学校に行くと学校の校長先生は反応が悪い。それに対して教育委員会が何かサポートしてくれますかというと、してくれもしない。では、行政の長はどうですかというと、行政の長もやる気のある市町村さんもあるかもしれないけど、やる気が全くないところもある。ここを変えないと、そもそもこの仕組みは、ほんとうには機能していかないんじゃないんですか。
【説明者】
まさしく、そこのところが新しい公共というところで掲げられた問題でございまして、受益者たる地域住民が自分の負担という部分がありまして、お金の話になっちゃうとべたになりますけれども、自分の力で動いていく、運営していく。もちろん行政も、それに参画していく形になりますけれども、行政が枠をつくって、動けるようにして、その中で、はい、どうぞではなくて、みずからつくっていくんだというのが新しい公共の概念の確たる部分でございまして、行政が反対する人の部分をお金、あるいは規則で調整したり、押し切ったりする形でやっていくというのも、方法として進める上では……。
【市川】
いや、だとしたら、1基礎自治体に対して1つ設けるなんていう目標を設定すること自体が間違っているんじゃないんですか。それよりも、総合型クラブというのは、これができるとすばらしいものなんだということの啓蒙活動にお金を使っていく中で、住民の方の中からこれをやりたい、それならばぜひやってみたい、そこに対してアドバイザーを派遣していく。ただ、そのときには、自治体も学校も一緒になって来てくださいねというのが筋なんじゃないんですか。
【説明者】
ですから、自治事務の話の分野でございますので、各自治体の判断でやっていただくべき話であって、国の人間、あるいは国が委嘱した人間がこうしろ、ああしろというのは筋違いだと思います。
その一方で、自治体のサイドでも、地域住民の方々にもわかっていただくために何かやらなくちゃいけない。それは、うちがチラシをつくるんではなくて、実際に地域住民の方で動こうという方に動けるようにして支えていくという形が……。
【市川】
いや、でも、これは1つのケースですので、ほかはどうかわかりませんけども、少なくとも大田区のクラブにお邪魔をした際には、もともとは教育委員会から国の施策として1基礎自治体に1個なければいけないということで、教育委員会から言われましたという話ですよ。つまり、そこは完全にトップダウンになっているわけですよね。ほかはどうかわかりません。1つしか見ていません。でも、仮にほかもそうであるとするならば、今おっしゃったこととの間には極めて大きな矛盾があると思いますけど。
【説明者】
先ほども言いましたけれども、地域住民がみずからの発案で、みずからが動いていくという社会の仕組みをつくっていこうというものでございますから、自治体のほうが主役になっていかなくちゃいけませんし、うちの自治体は10個つくろうという話も、それぞれの自治体で考えていただく話だと思います。
そういう意味においては、国が1つつくるのはおかしいと思いますが、先ほどから言いましたように、クラブがあることのメリット、スポーツ振興及び地域活性化の面でのメリットというのは、私どもが行政的にチラシをつくってどうこうするよりは、実際に見ていただくのが一番いいだろう。それをつくる際に、どのような苦労があるというのは自治体によって全然違いますから、地域によって全然違いますから、実際に苦労した人が、これから苦労してでもやっていこうという人を支える形で、現に地域住民の力でつくっていただく。それを見て、それを増やして、隣の地域の住民の方々がうちにも欲しいというふうに思えるような形にしていくのが、今回、これでやっている事業でございます。
もちろん一つ一つトップダウン的に、あるいは行政的に、財政的な裏づけをつけてつくっていくのが早道だとは思いますけれども……。
【市川】
いやいや、そういうことを申し上げているんじゃなくて、おっしゃっていることと実際に行われることの間に大きな誤差があるのではないですかというふうに申し上げているんで、私も別に国の指令でつくることが望ましいとは思っていないです。むしろ、やりたいところがみずから努力されてやっていかれるべきことなのではないかと思います。それに対してサポートされる。それはいいことだと思っています。
ただ、そうではなくて、教育委員会から1個つくれと言われました。それは国の施策なのだということでもし仮にやっているケースが多いのであるとするならば、むしろ、それはボトムアップではなくて、完全にトップダウンになっているし、その間で行政間の調整をなぜアドバイザーの方がしなければいけないのかというところが理解できないと申し上げたんです。
【伊藤コーディネーター】
すいません、南さん。
【南】
まさに一番最初に私が質問したところはそのあたりでありまして、このスポーツ基本計画というのは閣議決定でも何でもなく文科省が定めているんですよね。文科省が定めたということは、当然のことながらスポーツ振興課が原案をつくっていますよね。だって、課が基本ですから。
【説明者】
そこの……。
【南】
まあいいや。要するにだれがつくったって犯人捜しをしているわけじゃなくて、総合型地域スポーツクラブというのを市区町村に少なくとも1つをつくるという方針を掲げたのは国なんですね。では、先ほど言ったように、区市町村に1つというのはどれだけ意味がないのかというのを私は申し上げました。
もう一つ、では、それをつくるときの基盤になる、絶対に必要な施設の確保についてどうなんだといったら、各学校の施設開放を使ってくださいということは言えても、それに対するガイドラインが初中局と全然調整できていないんです。実は私もいろいろな課題があるので初中局に行きました。事実上、校長先生が管理しているところだったら使わせたくないですよ。これは、藤原先生おっしゃるとおりですよ。だれが使うのか、事故を起こしたらだれが賠償責任を負うのか、壊したらだれが直すのか。
では、この管理責任を少し免除するような形で、少なくとも放課後だとか土日というのは校長先生から外したらどうでしょうかというようなことを初中局に聞いたら、いや、教育と施設は一体なので、それは法理としてあり得ないというんですよ。すごい回答ですよ。
一方で、ある担当者は、学校の設置基準があるんだけど、必ずしも体育館というのは地域の実情に応じて、学校施設としてではなくて体育館が使えるんならいいですよということで、そういった形では成岩中学のように社会体育施設として、非常に理解のある校長先生、副校長先生、そういうところでつくって、ここが拠点になっている。だけど、これは、ここに書いてあるように全国にほとんどないです。数カ所あるかどうか。
ということは、国として市区町村につくりなさい、目安にするといいながら、その支援策の最大の問題である学校開放について何も調整できていないし、初中局はだめだ、校長先生の管理下は外せないというんですよ。これでは何もならない。
それで、そこの壁を打ち破るためにあえて費用を払って、幾つか知りませんけど、アドバイザー派遣で、アドバイザーが一番苦労しているのはそこ、地元の方が一番苦労しているのはそこ。まさに、これの制度的なサポートこそ国がやるべきであって、新しい公共の担い手ですから、そういった制約が外れるところでは、当然、地元の方々は活発に活動できるんだろうというような論理立てじゃないでしょうか。
だから、アドバイザーを派遣して、そもそも国が設置しているような規制をアドバイザーの人に、それを打ち破ってくださいといっているようなものなんですね。全然矛盾しているんじゃないかと思うんです。
【説明者】
学校施設の管理の話につきましては、法理の話と現実の話とそれぞれあって、先ほども言いましたけれども、常に新しい学校については学校開放を前提にして、具体的に言うと校舎と体育館を別の入り口をつくったりしているのもある。
【南】
ごめんさない。ちょっと話が途中ですけど、別になんかつくってないですよ。レイアウト上、別にして、学校開放に便利なようにつくっているだけであって、管理責任はやはり校長先生にありますよ。
【説明者】
いや、だから、そこの部分は分けた上で、ちゃんと管理を別枠にできるようにしているのもあります。ただ、それは少ないし、やるにしてもお金がかかるのは当然で……。
【南】
お金はかからないですよ。ちゃんと管理区分さえしっかりして、社会体育施設的に使えば、同じ文科省の補助金の枠内でできる。
【伊藤コーディネーター】
すいません、ここ1回整理しますが、今のご説明でいくと、南さんは、この総合型地域スポーツクラブが広がらない一番の理由として、学校施設の開放がなかなかできないんじゃないかというところ。ただ、実際にその枠はあいているから、そこじゃないんですよというお答えということでよろしいんですか。
【説明者】
いやいや、施設の管理、施設の整備については1つの要因ではありますけれども、それでクラブができる、できないが決まるわけではない。
【伊藤コーディネーター】
それだけではないということ。
【説明者】
ということです。うちのほうがやっているのは、あくまで運営サイドについてのアドバイスという部分でございます。
【伊藤コーディネーター】
では、次、松田さん。
【松田】
確かに前のクラブさんはトップダウンだとおっしゃったんですが、逆に裏返しで言うと、そうではないところもあるのはあるんですか。それだけ聞きたいんです。
【和田】
この総合型スポーツクラブというのは、私は大変大切なものであって、75%は数字のマジックだと思います。もっともっと必要なんだと思います。
この総合型スポーツクラブ、実は運営がどういうふうにされているか。全国的なことは私も統計資料を持たないんですが、私の住んでいる区にスポーツクラブがあります。そこの数値を見ますと、やはり6割、7割が都とかからの補助金が入ってきています。あとは会員の会費とかなんか、このようなことで運営されている。公費が直接入っているというようには見えないんですが、本来、国民が自分たちの会費で運営できるということが一番理想ではあると思うんです。
そういう地域スポーツクラブだということを私なりに理解した上で、こういったクラブをつくっていくための育成アドバイザーを派遣してクラブをつくっていくという、この事業についてはどの程度アドバイザーの力があったのか。全くなかったとは申し上げませんけれども、この辺のところがどうも1つはっきりしないんですね。
しかも、契約自体を見ると、日本体育協会に委託してやっているようなところもありますので、これは、もっと新しいといいますか、別の方法で、皆さんからもご意見が出ているアドバイザーだけの問題ではないだろうと思いますので、そのようなことも踏まえた新しい事業展開をお考えになったほうがよろしいんではないかと思いますが、そういうお考えは全くないんですか。
【説明者】
この事業自体についても、以前は別の項目があって、もうちょっと大きなお金の事業だったところなんですけれども、いろいろ見直しする中で、国の役割とか、もちろん、その後できた新しい公共という考え方を踏まえて、どういうふうに関与すべきかという形で、アドバイザーという形に収れんしてきているのが現実だと思います。
それに対して、それよりももうちょっと効率的に、確実にやるために、あるいは一番の障害をストレートに破っていくための方法が別途あり得るというのはご指摘のとおりだと思いますけれども、そこの部分については金額がどのようになるかというのと、金額が合ったところで、公立学校の施設の管理の話になりますと、もう基本的に自治事務の話だと思いますから、自治体が嫌だというところに対してどうこうしろという話はできず、そこはやはり理解していただく、わかっていただく、同意していただく、自分もそれはいいなと思っていただくことが、国が直接できるものとしては一番の方法でございます。
そうすると、やはりアドバイザーというのが最低限不可欠になって、それよりもさらに財政的な状況ですとか、国と自治体との関係のところで、ある程度国がイニシアチブをとってやっていくことが可能な形をとり得るんであれば、それを用いたということもあり得ようとは思いますけれども、そこの部分はあまり考えつかないという現実と、お金もなかなか厳しい中でできる形になると、あまり新しい展開というのは、今のところすぐ思いつく状況ではないと思っております。
【伊藤コーディネーター】
今の和田さんのを少しだけ補足すると、国費の投入ということはアドバイザー派遣だと思いますが、ほかにクラブの創設であったりとか、クラブマネジャーに対しての助成というのが今のスポーツ振興くじの中で出されていて、多分、今の和田さんのご意見というのは、国の役割がアドバイザー派遣ということなのかどうか。ほかにtotoでやっている部分があって、役割として、これがほんとうに必要かどうかというところのご意見だったというふうに思います。
藤原先生。
【藤原】
具体的な話を最後のほうにしたいんですけど、この総合型地域スポーツクラブ、この理想は、おそらくみんな、だれも反対しないですよね。地域社会で多様にスポーツをもっと振興しましょう、それに反対する人なんか絶対にいないんですよね。総合型というのがほんとうにできれば、それはいいと思います。
ただ、現実に現場で起こっていることはこういうことなんです。同じ文科省の配下といってもいいと思いますが、例えば中体連、体育の先生とか顧問の先生が部活とかを非常に一生懸命やってくれていますよね。これは、ほんとうに頭の下がる思いで、要するに超過勤務手当もほとんどないのに一生懸命やってくれています。だから、僕は中体連を批判するわけじゃないんだけど、例えばそこが主催するサッカーとか野球の市区町村の大会については、例えばこの総合型スポーツクラブに入っているサッカーの子は出られません。知っていますよね。ということが起こるわけなんです。
もっと具体的に言えば、例えば和田中でサッカー部の部活が11人いない、足りないと。地域のサッカーでソシオというクラブがあるんだけど、そこに3人加わっている子がいるから、それを入れて、何とか11人にして大会に出させたいといっても出られないんですよ。知っていますよね。同じ文科省で、この矛盾があるんですね。
これどうするのという話や、あるいは練習に関して、特に総合型スポーツクラブや外のクラブの練習について、貸す貸さないについてはある意味、校長の胸八分で、校長が学校で使う以外のところについては、通常は利団協というところに全部開放して、利団協が協議で決めるわけですが、そこにはある種既得権益を持っている人がいる。それを校長はわざわざ崩したりもしないわけです。とにかく校長がその権限を持っちゃっているわけです。これも文科省の配下なんですね。
その校長が狭量だったりすると、例えばいいや、いない間に事故が起こったら、それも自分で責任をとろうじゃないのという力量、視野がない人だと、あるいはスポーツにあまり関心がない人だと、何か起こると嫌だから、もうその学校は閉じちゃうわけですよ。その閉じた学校を開く仕事をコーディネーターという人を立てたり、あるいはアドバイザーという人を立てたり、今回のこういう第三者を立てて開かせようと、非常に遠回りな仕事をしている気がするんです。
だったら、文科省の初中局配下の校長のマインドをもっと早く開放してよ、そっちのほうが先じゃないですか。そっちに200億でも予算投下してほしいというのが僕の思いなんですが、どうですか。つまり、文科省の中で非常に相矛盾したことをやっていて、現場でそのコンフリクトが出ているのを、わざわざ別の職制のアドバイザーを使って、校長の閉じたマインドを開かせようって、おかしくない。
【説明者】
アドバイザーは、先ほども言いましたように、学校開放、学校施設の利用についてという部分だけではなくて……。
【藤原】
もちろん、そうですよ。でも、そこが一番の障害になっているんです。
【説明者】
その部分はあります。そこの部分については、確かに行政サイドの部分と、校長一人というけれども、校長というよりも私は学校というふうに言いたい。
【藤原】
さらに言うと、もう一回言うけど、学校対抗の試合に出られないんですよ。そのことについても、出してくださいとコーディネーターに言わせます、アドバイザーに言わせます。
【説明者】
そこまでは……。
【藤原】
できないでしょう。
【説明者】
アドバイザーの仕事ではないと思います。
【藤原】
同じ文科省の中でダブルバインドが起こっちゃっているんですよ。全然違う、矛盾した指令が行っちゃっているんですよ。だから、これがうまくいかないんですよ。
【説明者】
ここのクラブについては、ジュニアのスポーツの部分についてと競技的な要素も当然あってしかるべきだと思いますけれども、クラブで野球だったら野球のチームができるかどうか。そのチームが例えば学校の野球部との重複関係がどうなっているかどうかという部分を裁いて、将来的にはできるようになるのがいいとは思いますけれども、今現在そこまでなっていないのを、全国の大会につながる予選会とか地域大会という部分の中に、特定のクラブのところだけ行けるという、確かに1つの部分のブレークスルーができれば広がり安いという部分はありますけれども……。
【藤原】
その前に初中局が校長のマインドをもっと開かせるほうが先じゃないですか。
【説明者】
ですから、そこの部分は、先ほども言いましたけど、校長というふうにおっしゃる、確かに校長でないと責任が分散して……。
【藤原】
校長が権限を持っているんですから。
【説明者】
大会の参加については、一つ一つの校長だって1票を持っているだけだと思います。
【藤原】
大会の参加については、校長は権限を持っていません。
【説明者】
ですよね。
【藤原】
中体連です。
【説明者】
ですから、そういう部分があって、そこの部分をブレークスルーを少しずつやっていくのが、このクラブをたくさんつくって、実績をやって、現実をつくっていこうという話がまずあって、いきなり1つのクラブのアドバイザーなり、汗かこうというマネジャーの候補になる人がすべてのブレークをするのは無理だと思います。
【藤原】
もちろんわかります。とにかく会わせていただいた田園調布の方はすばらしい方でしたし、理事長も会長もほんとうにきわめつけ、すばらしい方でした。それは評価しておきたいと思います。
以上です。
【伊藤コーディネーター】
山本先生、その後、市川先生。
【山本】
今、指摘のあります登録の問題は、競技団体、あるいはスポーツを束ねる組織の問題でもあると思います。もちろん、そういうところに非常に大きな、克服しなければならないし、解決しなければならない問題はあると思いますが、今日の議題は、育成アドバイザーの事業そのものを例えばここで遮断したときにどのぐらいの影響があるのか、あるいはほとんど影響がないのか、その辺はどういうふうに見ていますか。
【説明者】
先ほど来、例えば学校施設の利用についても、利用することによって、これだけメリットがあるということを説得することによって広げていこうというのが、学校施設の利用に関するアドバイザーの役割。それに対してもうちょっとストレートにという話で、制度をつくるというようなことがありましたけど、今現在、国のほうでできる部分は、自治体の自治事務に対して何ができるかというとアドバイス、技術的な助言です。お金とか、規制とかいう部分は、とてもじゃないけど、つくっていける状況にはございません。
それからもう一つ、うちのほうで事例集をつくるというのは、従来あったところをやめてきている事例でございまして、仮にそれをこの事業の中で復活させたとしても、こういう事例があります、ああいう事例がありますと知らせただけでは効果が十分でないからやめてきているようなものでございまして、そういう先祖返りしても意味がないと思います。
やはりアドバイザーが学校の開放だけではなくて、高齢者に対する部分も、地域の活性方も含めて、実際上、これだけの苦労はするけれども、できたら、こういういいことがあるよ、スポーツができれば活性化するよ、文化的な活動もできるようになるよ、仲間も増えるよということを現実の苦労話とともに、話すことによって、見せることによって、それを理解する、賛同して、なおかつ自分も汗を流そうという人を増やしていかないと、この総合型地域スポーツクラブ、あるいは新しい公共という部分での総合型地域スポーツクラブに期待される役割はなかなか達成できません。これがなかったら、総合型地域スポーツクラブは増えていかないと思います。
もちろん行政的に、トップダウン的に全小学校区につくれという形でつくってはあるかもしれませんが、それは本来の形の総合型地域スポーツクラブとして活動し、また、地域活性化の機能を十分果たすかどうかは全く別の話だと思います。
【説明者】
今の補足なんですけど、山本委員のご質問で、ここで仮に育成アドバイザーがぱたっとやめてしまうと、これまでのクラブはかろうじてそのまま存続するとしても、未育成の市町村に対する新設のクラブとか、創設準備中のクラブというのは、たちまち立ち行かなくなるというふうには予想されますので、これまでずっと右肩で上がってきているこのクラブ、まだまだ4分の1の市区町村にありませんし、まだまだ3,200ぐらいのところですので、これについては育成アドバイザーさんの力が極めて大きいというふうに思っておりますので、ご質問にもありましたように、ここで今とまると新設クラブ数もとまっていくというふうに感じております。
【伊藤コーディネーター】
市川先生。
【市川】
嫌みを言うわけじゃないんですけど、実際、今、設立準備中のクラブがある県でアドバイザーがいないところもあって、それは冒頭のほうでお答えになっていましたが、そこはもうある程度のところまで行ったんで、ご自身たちで頑張ってやっておられるんでしょうというお話でしたんで、今のご説明も必ずしも当たらない部分はあるということをまず1つ申し上げた上で、最後に1つお伺いしたいのは、例えば校長先生がかわられることがあるわけですよね。今は、ある校長のもとでやっていました。ところが、校長先生がかわって、学校施設をそのようなことに使うのは、だれも責任とれないし、まかりならんということになった場合にはどうなるんですか。
【説明者】
校長先生がだめだというふうに言った場合ということでございますよね。
【市川】
はい。
【説明者】
そういうことであれば、学校開放についてはとまる可能性は十分あると思います。
【市川】
その場合、これまで、その学校の活用を前提としてきたクラブというのはどうなると思われますか。
【説明者】
そこの部分であれば、そのまま何もしないで、ただ単に利用させてもらっていたというだけのクラブであれば、代替の施設を探せるかどうかに存続はかかってくるでしょう。
ただ問題は、学校長にどういう校長が来るか、あるいはそこに来た校長が自分の仕事をどう思うかという部分についても、そのクラブの人間が校長と常時話をし、教育委員会――今、学校の人事についても、校長はこの学校はこういう部分、教科だけではなくて部活みたいなもの、あるいは生徒指導の関係で、この部活は伝統があるからずっとやるんだという形で人事をやっています。そのようにクラブとの連携を十分考えてもらえるような人事をやるように、常時働きかけていくのが筋だと思います。また、来た校長に対して……。
【市川】
それは、だれが働きかけていくんですか。
【説明者】
クラブの人間が。
【市川】
クラブが働きかけるのが筋なんですか。
【説明者】
ええ。通常、ずっとそういうことを話して、クラブは学校を使わせてもらっているから、使わせてもらったら、行政と、あるいは学校とは縁を切っていいやじゃなくて、さっきから言っているように地域活性化につながるように、行政との連携をとってイベントするところも、学校のあり方について関与していくことも、ほんとうを言うとやっていくべきであって、この学校は、このクラブが学校の開放を使って、こういういいことをやっているんだ。だから、ここに来る人は、そういうことがわかる校長にしてねと。
校長だけではないんですよ。教頭も、それ以下の人間も、みんな、そういうことを理解して、協力する人間、あるいは少なくとも地域に開放された学校のあり方を学んで、将来管理職になるような人間をこっちに送ってくれというような話もしてしかるべき。もちろん市町村教育委員会では、最終的な決定権がないですから、弱いですけれども、その学校のあり方というものに対して、そのクラブが利用しているということも大きな特色なんで、あるいは連携しているからこそ、この学校はいい学校、こういう特色があるから共有できるんで、地域とうまくいっているんだよということをクラブの人が説明しなくてはいけませんし、それを理解する人間に来てもらいたいと思いますし、そうでない人間が来るんだったら、せめてそういう理解をして、それを曲がりなりにも、前任者のように完璧な形ではうまく……。
【市川】
それは、先ほど藤原先生のほうからも、であるならば、初中局を巻き込んで、初中局のほうからもきちっとそういう話をしていただくような仕組みにしないといけないのではないか。本事業というのは、アドバイザーに関する予算の事業ではありますけれども、どうアドバイザーを有効に機能していただくかということを考えたときには、やはり制度設計全体に踏み込まざるを得ないわけです。
その中で今の話を聞いておりますと、学校長の義侠心とかアドバイザーの方の熱意、それから実際にクラブを運営される運営者の方の頑張りとか、あまりにも過大なことを人に求め過ぎていると思うんですよ。そこまで過大なことを理事の方に求めるのであれば、ぜひ頑張っていただいて、過大な重荷を背負って初中局との間で、これは初中局だけではなくて、多分、総務省も入ってくるし、それから厚生労働省も入ってくる話かもしれませんけど、それぐらい重い課題を背負って、ぜひこの制度がもっとワークするように交渉を、アドバイザーに求めるんではなくて、皆さんにしていただきたいですね、と思います。
【伊藤コーディネーター】
まとまっておりますので、松田さん、これで確実に最後で。
【松田】
最後に確認したいんですけど、先ほど山本さんがおっしゃったように、市川さんもいろいろおっしゃっているんですが、大きな制度設計をするというのはよくわかります。今、このアドバイザーというのがほんとうにいなくなると、今現在、クラブをつくろうと一生懸命頑張っておられる方はたくさんいらっしゃいますよね。その方が困るのかどうか、その活動がとまっちゃうのかどうかということに関して、もう一言、イエスかノーかでいいので、答えていただけたらと思います。
【説明者】
もちろん、それは間違いなくとまってしまいます。これは、実際にクラブを立ち上げたクラブマネジャーの方々から、アドバイザーの役割はどうだったか、アドバイザーがいなかったらどうなっていたかと聞いて、皆、立ち上がらなかったというふうに言ってくださっています。
【伊藤コーディネーター】
それでは、結果がまとまっておりますので、私から報告いたします。
総合型地域スポーツクラブ育成推進事業につきまして、廃止という方が4名、抜本的改善という方が2名です。
それでは、審議官より取りまとめをお願いいたします。
【徳久政策評価審議官】
どうも熱心なご議論ありがとうございました。本事業については廃止4名との結果を踏まえて、廃止という結論といたします。
コメントでございますが、本日、熱心なご議論をいただいた中で、総合型地域スポーツクラブの意義なり、必要性についてはご確認いただいたと思いますけども、本日の議論で確認された総合型地域スポーツクラブの意義や必要性を踏まえ、各スポーツクラブが対象とすべき地域や人口の適正な規模にも留意しながら、より効率的、効果的な支援策を検討すべきというのが1点です。
それから、2点といたしましては、総合的地域スポーツクラブの活動の場となる学校施設の利用をしやすくするための方策について、しっかり検討を図るべきであるということ。
それから、3点目といたしまして、地域再生を目的とする他の事業との関係を検証していただきまして、より効率的、効果的な事業のあり方を検討すべきである。
4点目でございますが、さまざまな種類のスポーツを行うという総合型地域スポーツクラブの趣旨を実現する方策を検討すべきであるというまとめにしたいと思います。お疲れさまでございました。
【伊藤コーディネーター】
以上で終了いたします。ありがとうございました。
次の事業を16時20分から再開といたします。
( 休憩 )
【髙橋会計課長】
それでは、定刻になりましたので、説明者の方、着席のほうお願いいたします。
それでは、文科省の公開プロセス2日目の3こま目でございますけれども、現代日本文学翻訳・普及事業について行いたいと思います。
議事に入ります前に、これからの議事にご参加いただきます評価者の皆様のご紹介をさせていただきます。
着席順にさせていただきますが、まず東京学芸大学客員教授、藤原和博様でございます。
【藤原】
お願いします。
【髙橋会計課長】
公認会計士・税理士和田義博事務所の所長、和田義博様でございます。
【和田】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
クレディ・スイス証券株式会社チーフ・マーケット・ストラテジストの市川眞一様でございます。
【市川】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
立教大学大学院特任教授、鳥飼玖美子様でございます。
【鳥飼】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
神奈川大学人間科学部特任教授、南学様でございます。
【南】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
尚美学園大学芸術情報学部教授、小池保様でございます。
【小池】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
それでは、進行のほうをコーディネーターの伊藤様、お願いいたします。
【伊藤コーディネーター】
それでは、本日最後の事業になります。お手元の冊子、75ページからです。現代日本文学翻訳・普及事業です。
まず、徳久審議官より事業選定の考え方につきましてご説明をお願いいたします。
【徳久政策評価審議官】
それでは、私のほうから現代日本文学翻訳・普及事業を公開プロセスの対象事業として選定した考え方についてご説明いたします。
本事業につきましては、長期継続事業であり、制度等の見直しの余地が大きいと考えたため、公開プロセス対象事業として選定いたしました。国が直接実施する必要性などについて検証いただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
【伊藤コーディネーター】
それでは、ご担当よりご説明をお願いいたします。
【説明者】
文化庁の芸術文化課長の舟橋でございます。よろしくお願いいたします。
お手元の資料の75ページ以降でございますが、まず事業の概要をご説明させていただきたいと思いますので、資料の80ページをごらんいただきたいと思います。
現代日本文学翻訳・普及事業、平成24年度予算額1億4,800万円でございますが、この趣旨といたしましては、我が国のすぐれた文学作品等を英語等に翻訳して、諸外国において出版いたしますとともに、すぐれた翻訳者を育成するための翻訳者育成事業及び交流普及事業を一体的に実施するというものでございます。
根拠となる法律といたしまして文字・活字文化振興法、平成17年の法律でございますが、この中で日本の出版物の外国語への翻訳の支援、その他必要な施策を国が講ずるものとすると定められておりまして、これに該当する事業ということになってございます。
事業の中身は大きく3つに分かれておりまして、まず中心となりますものが翻訳事業でございます。我が国のすぐれた現代日本文学等を海外に発信するために、外部有識者による委員会を設置いたしまして、作品の選定、翻訳を行い、海外において出版を行うというものでございます。これまでに5回の選定を行い、123作品を選定いたしております。翻訳語は英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語を中心に行っております。
次に、2つ目の交流普及事業でございますが、この翻訳事業で出版されました図書のうち、一部を国において買い上げまして、海外の大学、図書館等に寄贈することにより、海外において我が国の文学に触れる機会をより広いものにするという趣旨で行っております。
それから、3つ目の事業、翻訳者育成事業でございますが、これは、すぐれた翻訳者を発掘、育成するという観点から、翻訳コンクールを行いまして、すぐれた翻訳者を発掘しまして、我が国の文学を海外に発信する土壌を醸成する、そういう趣旨で行っております。
3事業をもう少し詳しくご説明させていただきますが、81ページが翻訳事業でございます。これまで海外に翻訳されてまいりましたのは、『源氏物語』などの古典、あるいは川端康成などの知名度の高い作家の作品が中心でございました。また、現代日本文学作品では村上春樹さん、あるいは吉本ばななさんなど、欧米等で人気があるものを中心に翻訳されてきておりますけれども、一方で、海外に紹介されていないすぐれた日本現代文学作品も多いのが実情であるということでございます。
このようなことから、一部の作家に偏らず、多様なすぐれた文学作品を海外に紹介することによりまして、現代の日本文化、日本人の考え方を海外に紹介する上で有意義であるということから実施いたしております。
作品の選定につきましては、外部の有識者からなります企画委員会でテーマを設定して図書を決めておりますが、その際には海外委員を委嘱いたしまして、海外における図書の受け入れの可能性、そういったことも踏まえて選定いたしております。
作品の公開時期といたしましては、原則明治以降のものでございますが、戦後の作品に比重を置いております。
作品の内容といたしましては、我が国において一定の評価を受けている作品であること、あわせて外国人読者の中で一定の評価を受けると見込まれる作品であることを基準といたしております。これまで3回以降はテーマを掲げまして、それに沿って作品を選定いたしております。
進捗状況でございますけれども、5回の選定で123の作品を選定いたしております。1つの図書で複数の言語に訳すということがございますので、言語別に見ますと222の作品を選定いたしておりますが、これまで出版まで終わっておりますのが119、翻訳を終えて、現在出版交渉を行っているものが86、翻訳がまだ終わっていないものが17でございます。
なお、この17につきましては、今年度中にはすべて翻訳を終了する予定でございます。
出版までの流れでございますけれども、まず翻訳原稿の作成につきましては、作者等の許諾を得た上で翻訳を行いますが、翻訳された原稿につきまして、まず日本人が誤訳、あるいは文化的背景等の不適切な点がないかをチェックいたしまして、さらに外国人が文学作品としてふさわしい文章であるかどうかというのを確認して編集いたします。
翻訳として正確であるかということだけではなくて、文学作品として読むに耐える内容になっているかということで、大変手間をかけて翻訳しているのが特徴でございます。
次に、出版につきましては、外国の出版社と交渉することになりますが、海外の主要なブックフェア、フランクフルト、ロンドン、あるいはニューヨークといった大きなブックフェアにブースを出展いたしまして、海外の出版社との交渉を行っております。
出版契約につきましては、契約時に初版最低部数というのを契約して、これは必ず出版していただくという契約をいたしております。図書によりますけれども、1,500~2,500部が初版最低部数になってございます。このうち英語については1,000部、他の言語につきましては500部を文化庁において買い上げまして、これを後に述べます交流普及事業のほうに回しているという状況でございます。これまで買い上げた図書は合計で14万部ということになっております。
販売部数でございますが、下にございますように、上位10作品を掲げさせていただいております。一番多いもので2万9,000部、第2位のもので2万4,000部、第3位のもので1万8,000部ということでございます。
先ほど申しましたように、これまで119の出版が終わっているわけでございますが、出版部数についてはレポートが上がってくることになっておりまして、そのレポートが上がってきている75の図書の合計で見ますと、19万3,000部がこれまで販売されていることになってございます。通常、日本の現代文学の翻訳本は、初版が大体3,000~5,000部ぐらいの印刷で、増版というのはあまりないと聞いておりますので、2万、1万というのはかなり大きい売り上げであるというふうに考えております。
次に、82ページをお願いしたいと考えておりますが、普及事業でございます。先ほど申し上げました出版された本を文科省において買い上げたものを海外の大学、図書館、文化機関等に寄贈するものでございます。寄贈機関数は、そこにございますように延べで2,200の機関に寄贈いたしております。これは、それぞれの言語ごとに当該国だけではなくて、アジアとか中南米、アフリカにもそれぞれ対象機関が含まれております。23年度の実績で申しますと、約1万4,000冊の寄贈を行っております。
先ほど申しましたように、これまで14万部買い上げておりますから、ほぼそれに相当するものを寄贈してきているということになります。
次に、3つ目の育成事業でございます。すぐれた翻訳につきましては、これは、単なる直訳ではなくて、日本語の持つ独特のニュアンスとか行間を酌んで翻訳することができるということでございますので、すぐれた翻訳者を育成することが日本文化、あるいは日本人の考え方を海外に紹介する上で非常に有意義であると考えられます。
一方で、翻訳は多大な時間をかけても見合った収入が得がたく、優秀な人材が育ちにくいということから、国においてすぐれた翻訳者の発掘、育成を行う観点から、この事業を行っております。
コンクールを行うわけでございますが、第1回のコンクールを昨年、23年度に実施いたしました。初年度は英語とドイツ語の2カ国語で行いまして、ここにございますように101名の方から応募いただきました。審査いたしました結果、英語部門、ドイツ語部門それぞれで最優秀と優秀賞2名、計6名を選んでおります。特に最優秀賞の2人については、大変すぐれた翻訳であり、文学翻訳者として直ちに活躍できるレベルであるという審査員の評価をいただいております。現状においては、この事業は、コンクールを行って、優秀者の方に記念品をお贈りするというところにとどまっているのが現状でございます。
次に、83ページは、この事業の流れを図示したものでございますが、文化庁から企画競争によりまして委託者を決めて委託しております。平成21年度からは凸版印刷が受託いたしておりまして、受託者におきまして3つの事業を一体として行っておりますが、事業の方向性の検討ですとか、作品選定のテーマの決定、課題図書の選定等は外部の有識者からなる企画委員会でやっていただいております。
また、コンクールについての審査は、これも外部の委員からなる審査委員会にお願いいたしております。また、先ほど申しましたように海外の本の受け入れの感触などについて、いろいろ情報を収集していただく海外委員というのも委嘱しているところでございます。また、出版については、海外の出版社に契約で出版をしていただくという形になってございます。
以上が事業の概要でございまして、恐縮でございますが、次に75ページにお戻りいただきまして、事業レビューシートでご説明させていただきます。
事業の目的、事業概要は、今申し上げましたので、省略させていただきます。
なお、翻訳事業と交流事業は平成14年度から、翻訳者育成は平成21年度から予算化しております。予算は、24年度は1億4,800万でございます。23年度以前、執行率が100%になっておりませんが、これは、例えばまとめて寄贈することによって精算減が生ずるというようなことで、予算よりも少ない額になっております。
成果目標とアウトカムでございますが、アウトカムということで、なかなか定量化した指標が見出しにくいところがございまして、この資料におきましては、先ほど申し上げました寄贈部数を書いてございます。そのほか参考実績というところで、先ほど申し上げましたが、販売されている上位のものが1万部を超えているということ、また、コンクールで大変優秀なレベルにある者を発掘できたということを成果として掲げさせていただいております。
このほか、この資料には書いておりませんけれども、成果といたしまして、この事業によって初めて日本文学を出版するようになりました海外の出版社が18社存在するということがございます。また、先ほど主要4言語を中心に翻訳しているというふうに申し上げましたが、英語に翻訳されました作品から、さらに民間ベースで他言語に翻訳されて、例えばアラビア語、イタリア語、スペイン語、そういった国の言葉に翻訳されて、より多数の言語圏での普及にもつながっているというところが成果として掲げられようかと思います。
このほか、この翻訳作品が翻訳として大変高い評価を受けまして、国内外のいろいろな賞を受けているという実績がございます。
また、寄贈先におきましても大変高い評価を受けておりまして、例えば大学では大学の教育に活用されるというようなことがございますし、各国で日本文学が一般の図書で手に入らない中で、この寄贈は大変有意義であるという評価をいただいているところでございます。
活動指標、アウトプットのところは買い上げ作品の実績を掲げさせていただいておりますが、いずれも当初見込みより同数以上の買い上げを行っております。1翻訳作品当たりの単価コストでは、試算でございますが、90万円という試算をしてございます。
次に、76ページでございます。目的・予算の状況ということで、国民のニーズがあるか、また、国が実施すべき事業であるかという点でございますが、冒頭に申し上げましたように、文字・活字文化振興法の規定によりまして、すぐれた現代日本文学を外国語に翻訳して支援するという事業については、国の責務として実施する必要があると考えてございます。
また、一部の作家に偏らず、多様なすぐれた現代日本文学を選定して翻訳するということ。そのほか、海外への寄贈ですとか、翻訳者の育成といったものを一体として実施するのは国でしか実施できない事業と言えるというふうに考えております。
それから、資金の流れ・費用・使途の適切性ということでございますが、支出先の選定につきましては、先ほど申しましたように企画競争ということで、競争性を確保いたしてございます。また、コストの削減につきましては、例えば24年度は23年度に比べまして買い上げ部数の削減を図るというふうなことで、コストの削減にも努めているところでございます。また、受益者との負担関係という点では、例えば出版は海外の出版社の責任において行うというような形にしているところでございます。
また、活動実績・成果実績の欄でございますが、他の手段と比較して実効性の高い手段となっているかということでございますが、先ほど申し上げましたように、翻訳対象作品の選定については海外の研究者等を委嘱した海外委員の意見も踏まえながら選定しているということ。また、出版だけではなくて寄贈ということで、海外での普及を推進するというようなことを行っておりまして、実効性の高い事業スキームになっているというふうに考えておるところでございます。
そのようなことで点検結果の欄でございますが、事業実施部局における点検結果といたしましては、引き続き実施する必要があるというふうに考えているところでございます。
77ページは資金の流れでございますが、繰り返し申し上げておりますように、企画競争ということで、21年度以降、凸版印刷株式会社に委託しております。それ以前は、特定非営利活動法人日本文学出版交流センターというところに委託いたしておりました。
凸版印刷株式会社においては、事務局業務について契約により再委託を認めておりまして、有限会社の五柳書院というところに事務局機能を再委託いたしております。
なお、21年度から凸版印刷に移っているわけでございますけども、それ以前に既に選定、あるいは翻訳を行っていた図書につきましては、凸版印刷への担当業者の変更ということに原著作者等が許諾しなかった図書があるため、それにつきましては引き続き特定非営利法人のほうに委託しております。これは、公募を行った上で随意契約を行っているという形になってございます。
78ページ、費用・使途でございますが、ごらんいただきますように翻訳にかかる経費が大変大きな割合を占めてございます。そのほか書籍の運搬、海外寄贈にかかる経費、それから寄贈図書の買い上げにかかる経費が大きくなっているという状況でございます。
79ページの支出上位リストは、先ほど資金の流れでごらんいただいた3機関が入っているという形でございます。
ご説明、以上でございます。よろしくお願いいたします。
【伊藤コーディネーター】
ありがとうございました。
それでは、会計課長より論点の説明をお願いいたします。
【髙橋会計課長】
それでは、資料の最終ページ、84ページの論点シートをごらんいただきたいと思います。
何点か論点を掲げておりますが、まず事業の必要性といたしましては、民間等において同種の取り組みが行われている中、国が主体となって実施する必要が乏しいのではないか。また、今説明がありましたように、翻訳事業のほかに作品の買い上げ、寄贈による交流普及事業、コンクールによる翻訳者育成事業、この3事業をあわせて実施しておりますが、それらを並行して進める必要があるのか、こういった論点を提示させていただいております。
事業の有効性といたしましては、翻訳した作品が直ちに出版されていませんが、この点をどう考えるのか。事業自体は平成14年からの実施でございます。国費の投入に見合った成果が上がっているのか、具体的な成果の検証を行って、事業継続の妥当性をご判断いただければと思っております。
最後に、執行方法に関しまして、委託先の公募に際して資格要件が特定の団体に限定する要件になっていないか、あるいは競争性を事実上制限する公募内容になっていないか、こういった点の論点もあろうかと思います。
以上、よろしくお願い申し上げます。
【伊藤コーディネーター】
ありがとうございました。
それでは、ご質問、ご意見。市川さんから行きますか。
【市川】
すいません、よろしくお願いします。日本文学を世界に普及させるのは非常に重要なことだという前提に立たせていただいた上で、幾つかご質問させていただきたいんですけども、例えば翻訳事業、寄贈事業の中で、作家の宮部みゆきさんの作品というのを翻訳されたことはありますか。何人かちょっとお聞きしたいんですけど、言ってしまっていいですか。赤川次郎さんとか司馬遼太郎さん、東野圭吾さん、浅田次郎さんといったようなところはどうですか。
【説明者】
宮部みゆきさんはございます。
【市川】
ありますね。本は何ですか。
【説明者】
『火車』です。
【市川】
『火車』ですね。赤川次郎さん、それから司馬遼太郎さん、東野圭吾さん、浅田次郎さん。
【説明者】
司馬遼太郎さんはございます。『空海の風景』があります。
【市川】
はい。
【説明者】
東野圭吾さんはなかったと思います。
【市川】
ないですね。赤川次郎さんはどうですか。
【説明者】
赤川次郎さんもないです。
【市川】
ないですね。浅田次郎さんはどうですか。
【説明者】
ないですね。
【市川】
ありがとうございます。今挙げた5人の作家の方は、現代日本文学のある意味では代表的な作家だということでいいですね。一般論で結構ですよ。その定義をどうしようというつもりはないので。
【説明者】
はい、大変著名な作者だと思います。
【伊藤コーディネーター】
売れている。
【市川】
売れている作家ですよね。これ、実は本屋さんで手当たり次第にぱっと目についたやつの名前を書きとめて、そこをどう担保するかというのはありますけど、ランダムにやったんです。何でこんなことをお伺いしたかというと、いただいている資料の中にはついてないと思うんですけど、平成23年度寄贈に対する反応の例というのをいただいていますよね。幾つか寄贈されたところから、こんな反応がありましたというのがあって、その中にアメリカでウィラメットユニバーシティーというオレゴン州の大学ですよね。
皆さんお持ちになっていないので、申し上げますと、そこに寄贈されて、そこから大学附属の図書館に送り、生徒がアクセスできるようにする。ちなみに私たちはレッスンフロム福島というシンポジウムを開きますというご回答をいただいたというご紹介を、ここでいただいているんです。
そこで、実はウィラメットユニバーシティーのライブラリーにネットで入り検索してみたんですよ。そうしましたら、今挙げた5名の作家の本は全部あるんです。それも日本語ではなくて、英語が。赤川さんだと3種類、それから司馬さんは寄贈されたものも含めて4冊、宮部みゆきさんは寄贈されたものも含めて8種類、東野圭吾さんは3種類、浅田次郎さんは1種類。
まず1つお伺いしたいのは、実は各図書館において代表的な図書館であれば、少なくとも日本語の英語訳はあるのではないかという気がするんですけれども、その点いかがですか。
【説明者】
おそらく海外の大学の図書館で、ご指摘いただいたような実態があるんだろうと思うんですが、私どものこの事業は、先ほど申し上げましたように、そういった海外で一般的に人気のある作家だけではなくて、一般的に翻訳はされないけれども、日本文学としては非常にすぐれている、そういったものを国として選定して翻訳を行う。そういうことにこの事業の必要性というのを考えているところでございます。
【市川】
もう一つお伺いしたいのは、例えばこれ、平成14年から始められて平成23年まで10年間やってこられていますよね。この10年間の間に海外で、英語だけではなくて、いろいろな言語で出版された本の種類というのが何冊ぐらいあるかということを把握しておられますか。
【説明者】
これは、私どもの事業……。
【市川】
ではなくて、一般的に。
【説明者】
正直申し上げまして、私どものほうも国際交流基金にございます日本文学の翻訳検索等々も調べてはおるんでございますけども、数字としてまとまっているものはないというのが正直なところでございます。
【市川】
これ、実は出るんですよ。毎年出せば、数字出せるんです。そうすると、2002年から2011年まで、つまり、平成14年から23年までの10年間で、出版社が同じ、同じ言語で出たものを1つとしてカウントしているようですので、集約すればトータルはもう少し数が減るかもしれませんけれども、数字は3,924なんですよ。その一方では、当該翻訳事業において翻訳された、今翻訳中のものも含めて、もう一回確認なんですけど、数は何冊ですか。
【説明者】
過去に出版したものも含めて222です。
【市川】
ですよね。この中身も、実は2002年から2008年までは年間平均470冊なんです。その後、2009年が269、2010年が213、2011年が150ということで、それまでは大体400冊から500冊のペースで出ていたものが、2009年からの3年間について数が激減しているのは、多分、リーマンショック以降の世界的な経済の悪化の影響で、出版業界が日本だけではなくて、どこでも厳しくなっているので、その背景があって数が減ったんだろうなというふうに思うんですが、2009年、2010年、2011年、3年間で363の翻訳が出ているんですけど、言語を調べてみると、一番多いのはどこだと思われます。何語だと思われます。この期間はかなり偏っているのかもしれないです。
私はすごく意外だったんですけど、一番多かったのはタイ語の95なんですよ。その次が英語の81、イタリア語74、ドイツが24、ポルトガル語23、ベトナム語18、スペイン語8、ロシア語7、フランス語7なんですよ。つまり、国の事業も一部入っていると思いますけれども、極めて多様な言語で、極めて多くの日本文学が、もうこの期間に翻訳して民間で出ているというのが、国際交流基金と日本ペンクラブが共同で回しておられるデータベースから言えることなんですね。
この数字を申し上げた上で、果たしてこの事業の必要性について、もう一度確認していただけますでしょうか。
【説明者】
私どもとしては、繰り返しなんですけれども、一般に翻訳されなくても日本文学作品として翻訳する価値があるということを外部の有識者等も含めて判断された図書について国が翻訳して出版する、そういうことに意義があるということを考えております。
【市川】
いや、これ、私も名前を知らなかったような作家の方も結構入っているんですよね。どういう経緯でなったのかはわかりませんけれども、商業出版になったようなケースというのは結構あるんです。
それと同時に、一般には知られていないけれども、国が選定したものというのは一体どういう定義なんですか。
【説明者】
これは、先ほど申し上げました我が国において一定の評価を受けているということと……。
【市川】
いやいや、我が国において一定の評価を受けているんであれば、少なくとも一般的には知られているはずですよね。
【説明者】
もちろん全く無名ということはないと思うんですけど。もう一つは、先ほど申し上げたんですけれども、翻訳につきまして、単なる直訳ではなくて、日本人の目でチェックし、また外国人の目で文学作品として、それに耐え得るかというような観点で二重のチェックをいたしまして、翻訳そのものの質としても非常に高いものが提供できていると、そういうこともこの事業の1つの意義ではないかというふうに考えております。
【市川】
ちなみにもう一つだけ数字を申し上げます。例えば夏目漱石さんは、夏目漱石は、もうさんづけじゃなくて、夏目漱石でいいと思いますけど、167出ているんです。言語を調べると、英語、フランス語、トルコ語、ベンガル語、タイ語、ロシア語です。赤川次郎さんは118出ていて、英語のほかタイ語、ドイツ語、フランス語等が出ているんです。ですから、率直に言えば、かなりの部分がもう民間の事業において日本文学、それも代表的なものについては海外において翻訳されておるのではないかというふうに、こういったデータを見ると推定されるわけで、そういう意味からすると、正直、本事業をあえてなぜ文化庁の事業としてやらなければいけないのか。むしろ、同じお金を使ってほんとうはもっと別にやるべきことがあるのかもしれないというような気がしますと申し上げて、私はもうこれで終わらせていただきます。
【伊藤コーディネーター】
今ご紹介いただいた数字をもう一回に確認すると、3,924種類というのは1つのデータベースの中に入っていて、実際翻訳されているのは出版業界であったり、財団であったり、民間の団体が発行しているということですね。
【市川】
はい。ただ、この中には、もしかすると文化庁の事業の費用を使って翻訳されたものも入っている可能性はあると思います。このデータベースでは、ここに国の予算が入っていますとは書いていないので、それは確認できないです。
【説明者】
実は国際交流基金の今の先生のデータベースのお話だと思うんですが、その数については先生がおっしゃるとおりでございます。この中には私どもが出版した作品も含まれております。すべてではございませんけれども、含まれております。
【市川】
このデータベース自体、説明の中に本データベースは必ずしもすべてのデータを網羅しているわけではないというふうに書いてありますから、多分、実際は3,924という数字じゃなくて、もうちょっと数も多いのかもしれないですね。
【伊藤コーディネーター】
藤原先生。
【藤原】
僕は、この仕事の流れになった経緯をちょっと知りたいなと思うんです。とにかく日本文化を世界に向けて発信して、その波及を図る場合に日本語を他言語に翻訳する翻訳が物すごく大事だというのは、反対する人はいないと思うんですよ。とにかく日本語への翻訳でも、例えばシドニー・シェルダンの翻訳の例をもってしても、あるいは古典を現代語訳にした、先生が新しい翻訳をしただけで売れていくということはあるわけで、要は翻訳家というよりも作家性が物すごく大事になってきて、翻訳できる作家をどれぐらいネットワークできるかが大事だということは疑いの余地はないわけです。
そのことについては、民間の出版社が血眼でやっている中で、この国の事業が凸版印刷に公募委託というような感じで発注されているわけですけども、凸版というのはすばらしい会社ですが、基本的には出版業ではないから出版についてはアマチュアだったはずだし、もちろん印刷の面からやっておられたとしても、それから翻訳業でもないし、したがって、翻訳者のネットワークが最初からあったわけでもないし、さらに海外での流通実績があるわけでもないですよね。出版でも翻訳でも、海外における販売でも不得意なはずの凸版がなぜ受けられたのか。
要するに、ほかに出版社で幾らでも翻訳をやっている会社があるのに、結局、みんな、もう自分のところでやっているから、こんな感じだったら応募してもしようがないという感じで、いたし方なく凸版さんにお願いしたいのかどうなのか。その前、日本文学出版交流センターが全部受けていたといいますが、多分、それは、ざっくばらんに聞きますけど、そこに文科省から天下りしていたんですか。違います。
【説明者】
違います。
【藤原】
違うんですか。
【説明者】
はい。
【藤原】
違うんですか。それが批判されて、こういうふうになったのかと僕は勘ぐったもんで、それがそうじゃないとしたら、なぜ凸版なのかということが奇異なんですね。なので、そのことを言っていただいて、そうするとなぜ民間に任せておけないのかというようなことが出てくるのか、あるいは任せておいていいんじゃないのというふうになっちゃうのか。民間に任せておくと何が漏れるのかというのをぜひ聞きたいと思って、まず、何で全部不得意なはずの凸版さんが受託しているのかがわかりません。
【説明者】
ご説明申し上げます。まず、凸版を選んだ経緯でございますが、これは、今、公募型の企画競争を開いた形でお願いするというのが一般的になってございます。私どももそれに従って、これをやりました。事業の内訳としましては、先ほど先生からお話がございました出版事業、それと広報事業、翻訳者育成事業、その他という形の事業。必要な参加資格につきましては、未成年じゃないこととか、被保佐人じゃないとか、そういった会計上の縛りがあるところ。ですから、例えば今、指名停止になっていないとか、そういった状況だけを入れて……。
【藤原】
今の条件聞いただけでも、凸版さんがこのいずれもそんな得意じゃないはずなんだけど、何でもっと得意なところが出てこなかったということを聞いているの。出版社だったら、これ、もっとやるでしょう。応募がなかったんですか。
【説明者】
実際には凸版さんともう一件出てきました。
【藤原】
もう一件、要するに2社。
【説明者】
2社でございます。2社の中で、内容等々について……。
【藤原】
では、みんな、嫌がっているということですか。あまり喜んでやっていないということですか。というのは、選ばれている作家も、例えば『異人たちとの夏』というのはすばらしい作品で、僕、映画も見ましたし、芥川龍之介、夏目漱石、司馬遼太郎、宮部みゆきの『火車』まで、『火車』なんて名作じゃないですか。これって非常にポピュラーな作家なわけで、ほうっておいたって出版社はやるんじゃないですか。
隠れた玉にスポットを当ててという例がもしあるんであれば、それをちょっと教えてほしいんですけど。隠れた玉にスポットを当てて、それが海外でばっと翻訳されたとか、そういう例があるんなら教えてほしいんです。そうじゃないのに、10年間で17億円の投資が行われているのは、ちょっと解せない感じなんですね。民間に任せておくとどこが漏れるんでしょうかね。
【説明者】
隠れた例と言えるかどうかわからないんですが、資料の上位売り上げの中の2番目に入っております川上弘美さんの『真鶴』という本でございますが、これは、この事業でドイツ語に翻訳しまして、2万4,000部ということで大変大きな出版部数を得ておりますが、この事業を契機にドイツで川上さんの評価が高くなったというふうに伺っております。隠れたと言えるかどうかはわかりませんけれども、1つの例ではないかと思います。
【藤原】
もう一回最後に聞きたいんですが、民間に任せておくとどこが漏れるんですか。なぜ国じゃなきゃいけないんですか。
【説明者】
先ほど申し上げましたように、法律において国において、こういった事業を責務としてやるということを掲げられておるというのが1つございまして……。
【藤原】
それは、でも、民間の出版会社が血眼になってやっているんですが、そこで漏れるところ、つまり、ほうっておいたらできないところしかやっちゃいけないと思うんですけども、どうですか。
【説明者】
ですから、本を選定するときには、当然のことですが、民間で翻訳されているようなものはもちろん除外しております。そういう中で、これは公的にやる必要性が高いであろうということを企画委員会でご判断いただいた図書を対象にしておるということで、かつ、それを非常に質の高い……。
【藤原】
でも、ざっくり作品を見させていただいた限りでは、例えば宮部みゆきの『火車』なんて物すごい名作ですから、当然、民間でも翻訳されますよ。だから、実績からすると隠れた玉にスポットを当ててという感じがないんですよね。それは、僕が言うとおり、どうですか。だって、この作家たち、川上さん含めてだってポピュラーじゃない。
【説明者】
確かに個々の図書をごらんいただければ、そういうご指摘もあろうかと思うんですけども、やはり国としてこういう事業を持っていて、最低限必要なところを国としてある程度担保する、そういう意味もあるのではないかというふうに考えます。
【藤原】
わかりました。
【伊藤コーディネーター】
鳥飼先生。
【鳥飼】
幾つかありますけど、まず、今の委託先について、民間に全く任せるのではなくて、民間でなかなか引き受けられないようなものを選定して、日本として海外に向けて、これは翻訳して日本文化の理解に当てたいということだろうなと思うんですけれども、委託先の選び方その他もあるんですが、選ばれたここが翻訳したわけですよね。私が知りたいのは、どうしてここが委託先かというのは、今ご指摘がありましたので私からは申し上げませんけれども、翻訳未了というのが多いですよね。それは、鋭意今年度中に仕上げるというふうにおっしゃいましたが、少し数が多過ぎないか。つまり、本気でやろうとしているのかなと。
もちろん、ここの委託先が、翻訳者を探して、その翻訳者に頼んでということでしょうけれども、文化庁に対しては委託先が責任を持つわけで、そうすると翻訳を請け負ったらきちんと納期を守って、質の高いものを出す義務が委託先にはあるわけですよね。それをなぜ、このように翻訳未了がたまってしまったのかという点が1つと、それから、どうやって質の確保を行っているのか。少なくとも民間と違うというならば、民間ではなかなか手がけられないような、売れるか売れないかもちょっとわからないような、しかし、これは非常に重要だと思うものを訳してもらう。あるいは、ともかく質は確保できるんだとか、何かないといけないと思うんですよね。その辺を。
【説明者】
まず、翻訳作業がおくれている事情でございますけれども、確かに先生おっしゃるように、契約上はきちんと納期を定めているわけですが、翻訳者が病気になってしまったとか、契約後に仕事が入って翻訳作業が非常におくれてしまったというような個別の事情によっておくれているものでございまして、本来、契約上はきちんと納期を守っていただかなきゃいけないんですけれども、そういう個々の事情で翻訳作業がおくれているのが実態でございます。
【鳥飼】
今のはほんとうに言いわけという感じ。翻訳者が言いわけを言っているというふうに聞こえてしまうんですけども、そういうところは次から頼まないとか、普通はそうですよね。
【説明者】
はい。あと、もしその方が適切な翻訳者でなければ、どなたか別の方にということになった場合、先ほど先生からもお話がありましたけど、文学作品をかなり質の高い翻訳できる方というのは限られている。そういう中でやりくりをしていくということがあって、時間的に翻訳が進んでいないというような事情があるというふうに聞いております。
【鳥飼】
海外も含めて民間の出版社も今は非常に苦しいですから、そうするとやはりはっきり売れる見込みのないものはなかなか出さないということになりかねないので、そういう意味では、そこを担保するという、ほんとうにいい作品を海外に紹介するということに意味はあると私は思うんですけれども、であるからこそ、きちんと納期を守るように、そこは厳しくしたほうがいいのではないかというふうに思います。
【説明者】
はい、そこは十分注意する必要があると思います。
【説明者】
先生のおっしゃるとおりだと思うんですが、先生がご専門でございますので私が言うべきあれじゃないかもしれませんが、例えば1つの理由として、詩の翻訳をやった方がおられまして、どうしても詩の翻訳というのは普通の翻訳家より相当力がないとできないということもあって、その人に頼むのがベストだということで、その人が多忙ということもあって、言いわけにしかならないんですけども、そういったことがあって、どちらかというと翻訳者が少ないのかなという感じも片一方ではしてございます。
【伊藤コーディネーター】
小池先生、どうぞ。
【小池】
今の点に関してお願いというよりは、指摘というふうに申し上げたいので、特にお答えはいいんですけど、まず1点目です。10年もやっていますから、常にこういう事業というのは原点に返りながら、その都度ねじを締める。また原点に戻りねじを締める。今の翻訳者のご説明があった問題でも、やはりそういうことだろうと思うんですね。時間経過の中で、みんなが気をつけていても、だんだん緩んできちゃうところがあるので、こういう指摘が出ないように、その都度原点に戻りながらしっかりとボルトを締める、こういう作業をしないといろんな意味で疑われてしまうということがあるはずですので、これは気をつけたほうがいいなと。長く続けようという事業の場合は、特にそうだというふうにまず指摘しておきたいと思います。
それから、藤原さんや市川さんから出たお話を踏まえますと、私もそうだなというふうに思いつつ、ただ、民間でやるのと国でやる違いがあるんだろうと思うんですよ。国でやることの大きな意義というのは、戦略性にあるんじゃないかなというふうに私は考えます。売れているからとか、みんなが好むからというような選択の仕方、着眼点というのはもちろんありますけども、日本がこれから世界に向かって、私たちの特徴はこういうところにありますよ、私たちのマインドはこれですというようなことを表明していく、そのための1つの事業として、こういう翻訳事業というのは位置づけられると思うんですね。
そういう意味で、例えばお隣の韓国なんかは、映画とかドラマとか、国家の戦略としてどんどんいろんな形で、それから電気製品なんかと結びつけながら売り込んできますよね。そういう戦略性のある作品のセレクションというのは可能だろうと私は思うんです。そういう目で見ると、ちょっとどうかなと。藤原さんが指摘するようなところが逆に弱点みたいな形で見えてきてしまうというところは、戦略性の乏しさじゃないかなというふうに考えますので、ぜひ国家レベルの国策としてやるにふさわしい戦略というのは、作品選定についてもとっていただけないか。
ちょっとよろしいですか。それで言うと、これは単なるアイデアですけど、丸の内のある大きな書店の中に松岡正剛さんがセレクションしている文庫がありますよね。あれは何日か前の朝日新聞にも紹介されていましたけども、本棚をつくるのは、彼が選んだ文脈で選んでいっているわけですよ。松岡正剛が選ぶ文脈なんですけど、彼は自分の責任において日本のさまざまな作品、あるいは評論、エッセー、そういうものをセレクションしているわけです。やっぱり、この文脈というのが、今申し上げた戦略ということと響き合うんじゃないかと思うんですね。その文脈に沿った、何本かの文脈というのをきちっと選定委員の間で議論して立てて、何本かの文脈に沿った作品を選んで、そして翻訳をしっかりして、翻訳した以上はそれをいかにして売り込んでいくか。韓国なんか、本も含めて売り込みに来るそうですね。そのような強い戦略性というのをもっと出していくことが、一応、10年たった段階でボルトをしっかり締めるという意味で、そろそろ打ち出されていいんじゃないかなというふうに考えます。
【伊藤コーディネーター】
市川先生。
【市川】
まさに今、小池先生からお話があったのはクールジャパンとの関連だと思うんですけど、そもそもこの事業はクールジャパンと関連しているのかどうかというところも非常に重要なことだと思うんですが、一般的に我々が思うのは、韓国は確かにいわゆるコンテンツ系のものをハードウエアとうまく結びつけて売ろうとしていることは間違いないんですけども、コンテンツの世界でよく言われること、コンテンツだけじゃなくてハードウエアもそうなんですが、そういった戦略的なものとして結びつけていくのあれば、国内で売れないものは世界では売れません、間違いなく売れません。
例えば79年にソニーがウォークマンを売り出しましたし、80年代の自動車にしてもそうですし、最近のアメリカの例であればiPhone、iPodにしてもそうですけれども、何でもそうです。国内で売れないものは世界では売れないんですよ。だって、そうですよね、自国内で評価されて、初めて海外の人がそれを見て評価するんですよ。ですから、これは、経済産業省の行政事業レビューの中でも申し上げたことですけれども、もしクールジャパンとの関連で考えていくのであれば、もっと違うやり方をしないといけないと思います。全然違う、やり方を画期的に変えないと、この方法では間違いなくクールジャパンとの連動性というか、日本のものを世界に戦略的に売り出すということにはならないと思いますし、それは文化庁や文部科学省だけがやられることではなくて、むしろ、経済産業省とか外務省も含めて、いろんな省庁との兼ね合わせの中でやっていかないと、とてもじゃないけれども、できないことだと思います。
すいません、質問じゃなくて意見になっちゃいましたけど。
【伊藤コーディネーター】
和田先生。
【和田】
すいません、少し視点が変わるんですが、1つは、こういう文化的に価値の高い、日本として大切な事業としてやられてきたんだろうと思うんです。私も、それには賛成なんですが、これは、よその国、つまり、中国であるとか、韓国であるとか、欧米であるとか、そういったところも自国語でつくられている文学作品を翻訳して海外に広めていくというようなことを、国費をもって、あるいはそれにかわるような援助をしながらやっているというような事例があるのかどうかということが1つ。
もう一つ、これ、平成14年から始まって、6億数千万円くらいが外国の機関へ本を買い上げて、そして送るという事業をしている。これがどういう効果といいますか、成果が上がっているのか。先ほど来のお話の中とあわせて考えますと、何で海外の図書館とかに、この事業で翻訳したものだけを送るのか。日本の文化を伝えるんであれば、ここで翻訳したものじゃなくて、もっと一般に売れているものを買って、日本の文化を広めるということも1つ考えられると思うんですが、一般に市販されているものについては外国の図書館とかが買っているだろうから、そうじゃなくしているんだと。ちゃんと明確に仕分けができているんならいいんですが、そうじゃなくて、翻訳をして出版するということと、それだけを無償で海外の図書館にこの十数年間で6億何千万かのお金をかけてやっているということの効果、成果というのはどのようにお考えなんでしょうか。
【説明者】
まず1点目の外国における状況でございますけれども、例えば韓国でございますと韓国文学翻訳院という機関において、文学作品の翻訳費を助成しているというような取り組みがあると聞いております。あるいはフランスにおきましても、国立図書センターでフランス書籍の外国への翻訳助成というものを行っている。このほかドイツにおいてもゲーテ・インスティテュートで翻訳料の助成を行っている。海外でも同様の取り組みがあるというふうに承知しております。
それから、どうしてこの事業で手がけたものだけを寄贈しているかということにつきましては、もちろん日本文化の紹介ということについては、例えば外務省の国際交流基金のほうでもいろんな資料を海外の機関に送られたりというような事業をやっておられるんではないかと思うんですけれども、私どもとしては日本文学のすぐれたものを海外に展開して、日本人の考え方とか、現代の日本の文学の状況を海外に普及する、そういう観点で、この事業で翻訳したものを寄贈しているということでございますが、お答えになっているかどうか。
【伊藤コーディネーター】
コメントシートのご記入をお願いいたします。
政務官が来られたんで、少しの議論の振り返りをいたします。できるだけニュートラルにお話をいたしますが、大きく論点になっているのは、こういった翻訳については民間の団体で既に行われているんじゃないかというところでした。この10年間、国費を投入してやっているのは大体220種類というところ。他方で、民間のデータベースによると少なくても3,900、4,000ぐらいの種類のものが翻訳されているというところがあります。
ここは、実際に翻訳するものの対象について、この事業の中で国費としてやるものについては、必ずしも国内で売れているものに限らず、ある意味宝物のようなもの、なかなか国内では普及していないけれども、大事だというものについて翻訳を進めているというご説明をいただいております。
その中で、この翻訳について戦略的に海外に売り出す必要があるんじゃないか。これは、先ほど和田さんのご質問にもあった諸外国でいくと韓国がやっているようにというご意見もありました。ここについては、もし戦略的にやるのであれば、この事業の立て方自体をそもそも変えていく必要があるんじゃないか。海外で売れるということでいけば、国内で売れているものを含めて、どうやって文学という視点での日本文化を売り出すかということになりますので、そこをどう考えるかというご意見があったというふうに思います。
また、契約の中で、今、委託している団体、必ずしもそこは専門的知見を持っていないんではないかというご意見、また、翻訳未了になっている数が少し多過ぎるんではないか。ここは、個々の事情によってなかなか翻訳者がいないという背景も含めて、未了が多いというところですので、そこは厳しくて見ていったほうがいいんじゃないかというご意見があったというふうに思います。
鳥飼さん。
【鳥飼】
すいません、翻訳者養成事業について、まだどなたもおっしゃっていないので一言申し上げたいんですけれども、先ほども翻訳者が少ないということをおっしゃっていましたが、確かに少ないだろうと思います。私は、これ、質問ではなくて希望なんですけれども、やはりコンクールということだけで終わらせるのではなくて、それよりもむしろ、文化庁としてなすべきなのは、もう少し長期的視野に立って、腰を据えた翻訳者養成。これは、もっと言語の数も増やしていただきたい。大体、翻訳する言語が少ないですよね。先ほどのお話にあったように、普通はさまざまな言語に翻訳されていますので、今ある4カ国語だけでなく、もっと多言語にして、そして多言語での日本文学を翻訳できる人材を日本語教育と関連づけながら、長期的視野で充実したものにしていただきたいというふうに思っています。
【伊藤コーディネーター】
南先生。
【南】
別の観点から、これの成果をどういうふうに見るかというところなんですが、私はアメリカしかわからないんですけども、基本的にはサイテーションインデックス、科学技術その他いっぱいありますが、少なくともいろんな書評のインデックスがそこでかなり完備されていまして、どの本がどの雑誌のどのページに書評が載っているかというのは一覧表でずっとあるわけです。そういったサイテーションインデックスみたいなもので、この翻訳そのものがどの程度の価値を持ったか。つまり、書評の数によって相当レベル、要するに科学技術の分野ではサイテーションの数だけでレベルを判断しますから。というようなことですが、その辺の指標はどうでしょうか。
【説明者】
私どもとして把握できた範囲なんですけれども、この事業によって出版されました翻訳作品が例えばドイツのアメリカ・アジア・ラテンアメリカ文学推進協会というところが発表されているドイツ語翻訳ベスト7という発表がありまして、23年度においてベスト7の中の5位に、この事業で出版した本が入った。日本の小説がランクインされたのは初めてだということと、過去25年間の日独翻訳書の中で一番よい本だという評価がなされたという1つの事例がございます。
【南】
それは事例ですよね。
【説明者】 はい。
【南】
要するに統計的にどうなのかと聞いたわけです。
【説明者】
統計というのは、ちょっと把握できておりません。
【南】
少なくともアメリカにそうしたサイテーションインデックスみたいなのがあって、しかも、社会科学、人文科学、その他の学術論文についても、そうした雑誌のブックレビューを載せているのがあるのはご存じですよね。
【説明者】
はい。
【南】
だったら、
せめてそれのレビューはどのぐらいか。部分的でもいいんですが、それがどのくらいの率で載っているのか。それを民間の、冒頭に市川さんがおっしゃったような三千何ぼの中で一体どのくらいの割合を占めるのかというのは、エビデンスとして示さないと、どういうものを選んで、何の基準なのか、客観的なもので全くつかめないわけですね。その辺についてはどうなんでしょう。そういう努力というのか、行為はなさっています。
【説明者】
私どもも客観的なデータを集めようというふうに、私どもなりの努力はしたつもりだったんですが、今ご指摘があったようなデータというのは収集できておりませんので、申しわけありません。今ここでお答えるデータがございません。
【南】
もう一ついいですか。あともう一つは、海外委員なんですが、資料では一応提出していただいていますが、具体的な海外委員の人数だとか、選定方式だとか、その人が何年ぐらい続けるのかというようなことがよくわからないんです。というのは、ごくごく限られた研究者であると言いながらも、事前の勉強会でも申し上げましたが、横浜にあるInter-University Center for Japanese Language Studies日本研究センターというところには、少なくとも卒業生が1,300人ぐらいいまして、その中のおそらく2割、3割は日本文学の研究者で、アメリカ、あるいは世界、海外の大学教員、研究者、翻訳者になっている可能性がある。私も具体的な数字はわかりません。
だけど、これは英語圏だけですけど、これだけでも相当の人数がいる。私は、毎年いろいろ卒業発表会に行きますから、文学的にも普通に見られない作家の方を扱っている人もいます。
例えば、そのような選び方で、海外委員の方がどのくらいいるのか。かなり人数がいらっしゃって、しかも、国籍もいろいろでしょうから、どのくらいの割合の方が海外委員として客観性を持ち得るのかという意味で、何人ぐらいいらっしゃって、国籍がどういった分布なのか。あるいは任期が何年ぐらいなのかというようなことはどうでしょう。
【説明者】
例えばフランスで見ますと、今、委員は5名でございます。国籍としてはフランスが4名、あと日本人の方が1名でございますが、この方もパリ第7大学に勤務されておりますので、現在は海外にいらっしゃるわけでございます。任期については、基本的には委嘱したら、ずっとその方にお願いしている。特にご辞退とか、おやめにならない限りは継続してお願いしているという状況です。
【南】
10年かわらないケースもあるということですね。
【説明者】
そういう例もございます。
【南】
その辺の客観性の問題というのが、どうしても国費を使う以上あるだろうと。民間ベースだったら別に何もないんですよ。売れればいいとか、趣味でやるだとか、あるいは寄附でやるだとか、いろんなことがあります。
ただ、国費の場合には税金を使う以上、それを説明するある程度の客観的な根拠が必要だろう。そういった意味では、審査する人、10年間、本人がやめない限りはずっと委嘱し続ける。これは、最初の選択がもし間違っていた場合、間違っているとは言いませんけれども、ある程度の偏りがあった場合に、それを訂正する手段がなくなってしまうということがある。
それから、そうした客観性を担保するときに、その人がどのぐらいの研究実績、あるいは範囲が広くてというようなことをサイテーションじゃないですけど、ブックレビューのリストである程度の客観的な数字をつかむ。私が思いつく限りでも、最低限そのぐらいあるんですが、そうしたものがないと国費の投入というのは、今までの議論の中ではなかなか客観性が保てないんじゃないかと思うんですね。
【説明者】
海外委員については、委嘱した後、継続しているという実態がございますけども、もともと翻訳対象の図書を選ぶ企画委員会というのがございますが、これは各選定ごとに人選を入れかえているというところがございます。
【伊藤コーディネーター】
では、成果の分の関連の方いらっしゃいますか。
【南】
もう一つだけ。どれだけ寄贈の反応がというんですが、さっきからちょっと見ているんですが、必ずしもこの事業の寄贈を受けた反応というよりも、一般的な日本文学に関する寄贈を受けたお礼が多いですよね。特異的にこの事業でというのは、この事業はすばらしいというのは1つか、2つありましたけど、それ以外は日本語学科の学生とか、日本の本が少ないとか、非常に限られた冊数しかない、日本の国を理解するのに大変有用ということで、必ずしもこの事業の寄贈等にはなっていないと思うんですね。
ですから、また繰り返しになりますが、やっぱり客観的な評価指標というのは何かつくらないと、この継続は難しいんじゃないでしょうか。
【説明者】
先生がおっしゃるとおり、評価という点で欠けている点があるのは、正直申し上げまして、そのとおりだと思います。
ただ、今年度、平成24年度からは、一応、評価の観点も踏まえて、この事業を実施するということにしてございまして、先生のおっしゃった評価指標、そういったものが可能かということを、今、請負業者のほうと打ち合わせさせていただいている状況です。
【南】
それを請負業者とやるんですか。評価指標は、請負業者がやったらお手盛りになっちゃうんじゃないですか。
【説明者】
もちろん私どもとよく協議した上でやっております。
【南】
ということは、評価の視点をやると言いながら、まだ評価の軸ができていないということですね。
【説明者】 それを検討しているところです。
【伊藤コーディネーター】
小池先生、どうぞ。
【小池】
受信型から発信型へ変えるというのは、ある種の文化的な革命に近いようなことだろうと思うんですよね。だから、それをなし遂げるには、いろんな戦略的なことを組み立てていく必要があるんですけど、例えば国際交流基金のデータの話も出ましたが、海外における日本語学習者を支援するというのは国際交流基金もいろんな援助活動をやっていますよね。これは、まさしく発信する側の有力なメンバーをできるだけ多くしようという事業ですから、こういう事業と翻訳事業というのは意味において通じるわけですよね。
だから、そういう日本語学習者を支援する事業と翻訳を通して発信していく事業がどういうふうにして共同していくかという視点も私は大事だと思うんですけど、こういうあたりでの両方の接点をできるだけ持つ、あるいは広げていくというような視点、それから活動というのはあるんでしょうか。
【説明者】
海外における日本語教育、あるいは国内における日本語教育というのは、文化庁の中でも国語政策というものがございます。一方で、私どもがやっているのは文学の振興ということでやっているわけですけれども、同じ文化庁の中で担当している部分もございますので、先生がおっしゃるように、表裏というのか、車の両輪的なものがあろうかと思います。それは、これまで十分できてはいませんけれども、文化政策について議論するときに、両者の有機的な連携というのをもっと議論していくとか、そういうことは今後必要だろうと思います。そういうのは、例えば文化審議会とか、そういったものがございますので、そういったところでいろいろご意見をいただきながら検討していくということは、今後、非常に重要なことじゃないかと考えます。
【小池】
もちろん審議会などで議論してもらうのは大事なことでありますけど、もっと現場サイドで、実際にこの事業は10年間動いてきたわけですし、国際交流基金だけじゃなくて、国語課のほうでも取り組んで動いているわけですよね。現場サイドでこれをうまく共同化して発信性を高めていくというのは、ちゃんとその気になってくれば、横の連携で幾らでもできるんじゃないかなと思うんですよね。
【説明者】
おっしゃるとおりだと思います。
【伊藤コーディネーター】
市川先生。
【市川】
すいません、これも別途いただいた資料の中に、これまでの販売部数に対する売り上げという資料をいただきましたよね。セールスレポートで確認済みが75作品、これは何年間ですか。
【説明者】
これは、平成14年、事業開始当初からでございます。
【市川】
からですね。
【説明者】
平成15年から出版を行っておりますので、それ以降ということになります。
【市川】 1
5年からですね。それに対して販売部数が19万3,405でいいですよね。
【説明者】
はい。
【市川】
売り上げについては、定価を掛けた形で2億9,400万ということでいいですよね。
【説明者】
はい。
【市川】
そうすると、単価にすると円建てで、これ、逆に割り算をするんで、2億9,400万割ることの19万3,405という数字を入れてみると、1冊当たり1,520円という数字になりますよね。売るための本としてはそれぐらいかなという印象を持つんですけれども、何をお伺いしたいかというと、この翻訳事業ないしは翻訳交流普及事業に、この10年間でかけた費用というのは幾らになりますか。この場合、翻訳者育成事業は関係ない話なので、そこは除いて。
【説明者】
約17億円です。
【市川】
そうですね、17億5,800万円ですよね。まだ出版未了のものもあるので、単純に割っていいのかどうかというのはなかなか難しいところなんですけども、1つの例として単純に19万3,405で割ると1冊9,090円になるんですよ。つまり、1,520円のものを売るために9,090円かけましたというふうに見えるんですよね。もちろん、多分、これから出てくるものとかも入れれば、実際はもっと低いのかもしれない。
ただ、それにしても、あまりにもかけたコストに対して売れている額が少な過ぎませんか。
【説明者】
これは、売り上げの確認できている数字が19万ということでございますが、このほかに買い上げを行って寄贈している図書が14万ぐらいございます。そういうものも海外への普及ということでございますし、あとは……。
【市川】
いや、でも、買い上げというのは自分で買っているんですから、そのことを言っちゃいかんですよね。(笑)
【説明者】
もちろん売り上げというのも大事なメルクマールだと思いますけれども、売り上げだけではなくて、寄贈することによって海外で日本の文学を広げていただくということもございますし、これがほかの言語に訳されているというようなこともございますので、1つの重要なメルクマールだと思いますけれども、売り上げだけが成果のあれではないんだろうと。
【市川】
もちろんです。ただ、なぜ、このことを言うかというと、75ページ目の行政事業レビューシートの中で、この事業の目的については、「我が国の優れた文学作品を英語等に翻訳して諸外国において出版・普及を図り」、普及というところに非常に大きなウエートが置かれた制度設計になっているわけですよね。そうすると、普及ということに中心を置くのであれば、埋もれた作品を探してきて、それを物すごいコストをかけて外国言語にするというのとは、中身がちょっと違う話になってくるんじゃないかと思うんですよ。例えば、そういうものでも、日本の紹介としてやっていかれるということであれば、もしかしたら事業としては成り立つのかもしれないんですけれども、普及だということになるとすると、やっぱりそれを起爆剤にして、どれだけ面の広がりがあったというところを見ていかないといけないわけですよね。
そういう意味においては、かけたコストに対する、少なくともいただいている数字が仮に正しいとすれば、その成果というのはあまりにも貧弱ではないかなというふうに思いますが、いかがですか。
【説明者】
先ほど売り上げだけではなくて寄贈というものもあるということを申し上げておりますし、この事業の成果としては、先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、この事業によって初めて日本文学を取り扱うようになった海外の出版社も十数社いるということで……。
【市川】
寄贈というと、実は寄贈は幾らでもできるんですよ。だって、本をいただけるといって、要りませんという図書館はないですよね。自国言語にしてくれて、図書館に置いてくれと言われて、要りませんと言わないじゃないですか。ということは、寄贈が普及だということであれば、予算さえあれば幾らでも広げられるんですよ。だけど、そうではないですよね。
【説明者】
ええ、それはそうです。
【市川】
これをきっかけにして、どう面で展開していくかということを考えなければいけませんし、先ほどの小池先生のお話にもあったように、仮に韓国、あれがほんとうに成功しているのかどうかわかりませんけれども、いわゆるクールコリアでやっているようなことを日本がやっていくという戦略であるとすれば、戦略的には全く失敗しているし、この事業の中でどこにほんとうにされたいことがあるのかがよくわからないんですよね。お話をさせていただいて、皆さん、何となく隔靴掻痒というか、よくわからない、何か消化し切れないというのがあるんじゃないですか。
【説明者】
私どもとしては、繰り返しなんですが、必ずしも民間ベースでは紹介されないけれども、非常に質の高い日本文学を、良質な翻訳を行って海外に出版、また寄贈して日本文学、あるいは日本文化を海外に紹介していくということが、この事業の……。
【伊藤コーディネーター】
先ほど来同じお答えになってしまっているんですが、今の目的は、多分、民間団体でやっていることもいいことなわけですよね。普及を進めていくんだ、質の高い日本文学を進めていくんだということであれば、先ほど来出ている民間団体がやっていることも、その目的は達成している。
もし、そことは違う何かをということであれば、先ほど来出ている4,000ぐらいの民間団体がやっている翻訳の中に、国費でやっているものがどれぐらいの重複があるのかということを調べなければだめだと思うんです。国費でやるからこそ、この種類なんだという、まさに先ほど来出ている戦略の部分があるのあれば、ただ、多分、それはやられていないんだと思うんです。それをやっていない中で、この事業をやることが目的なんですよというお答えになってしまっているから、かみ合っていないんだと思うんです。
和田さん。
【和田】
事業の目的、これは、みんなだれもが賛成する話なんですが、1つは翻訳をすること、もう一つは交流普及事業を行うこと。販売されたのは19万3,000というお話でした。そのほかに買い上げた部数が119作品で12万冊ぐらいではないか。
【説明者】
14万。
【和田】
14万ですか。そうすると33万部ぐらい出たと。それで割り算をすると、11億2,700万の翻訳事業にかかったものは3,000~4,000円になるのかなというふうに思えるんですが、それは、こういう事業ですから相当の価格なんだろうと思います。
私は、もう一つ、交流普及事業で6億3,100万円、交流普及事業ならば、ここで翻訳したものだけをどうして配るんですかと先ほど申し上げました。そうすると、一般に売れているものはほかの補助金で出ていますというような。
さらにアメリカの大学の図書館から来たというご提出いただいた資料の一番後ろですが、一般書店では日本のごく限られた作家の本しか並んでいないので、日本語学習者にいろいろの日本文学を読んでもらうためには大学図書館への寄贈はありがたい。この大学は、そういうとらえ方になっちゃっているわけですね。どうしてうちで翻訳した、発掘した図書だけを送るのか。交流普及を進めるんであれば、一般に販売されている本を買い上げて、そしてそれを寄贈して、それもほかの事業で寄贈したりしているものがあるんであれば、そういうのとうまく連携しながら、日本の文学書をバランスよく世界じゅうの大学、研究所、そういう機関に配布していくことが最も適切なんではないかなと思いますが、いかがでしょうか。
【説明者】
この事業のたてつけといたしまして、まず翻訳の支援というのが最初にあって、翻訳の成果を普及しているということでございますので、この事業で翻訳したものが寄贈の対象になっている。そういうたてつけでございますが、交流普及をもっと拡充するという視点を持てば、確かにもっとほかのものも普及を図っていくということは考えられるかもしれませんが、予算との兼ね合い等もあるかなというふうに考えます。
【伊藤コーディネーター】
小池先生。
【小池】
発信という言葉ばかり使っていますけれども、発信と同時に大事なのは日本人の自己認識ということもあるんですよね。私たちはこういう人間なんだということを、こういう事業を通して認識するということもあるんで、この10年間の事業を見ていると、結局、ベクトルが海外、海外と向いていますけど、国内へ向いてないですよね。私たちの自己認識も実は大事なんですよ。
そういう意味では、例えば市川さんのご指摘にもあったとおり、事業を具体的に見てみるとよくわからないということが、この10年間に普通の国民にこの事業の趣旨、それから進め方が何回かインフォメーションされ、議論の対象となっていれば、現在、そのような疑問というのは起きてこなかったはずなんですよね。過去にそのような指摘がなされて、その中でクリアして、冒頭、私が申し上げたように、原点に戻りながらボルトを締め直すというようなことが、この10年間、営みとして国内に向けにさまざまな形で行われていれば、もっと違った形で今日、議論の対象になっていると思うんですけど、そういう意味で、例えばでき上がった翻訳本でも、日本人はその存在を多分知らないですよね。現物を見たことがない。でも、それは、発信だけじゃなくて自己認識を進めるというときに、非常に重要な、ある種の教材になるものであるとすれば、やはり日本人がそれを手にする機会があってもいいわけですし、日本の図書館に置かれてもいいし、場合によっては日本の書店で売られてもいいわけですよね。
だから、ベクトルが何か海外だけに向いちゃっていて、すごく大事なフィードバックを得る日本の普通の人たちからの受けとめが全然栄養として吸収されない機構になっているというあたりが盲点だったような気がしますけど、いかがでしょうか。
【説明者】
確かに、この作品について国内のほうにフィードバックするというようなことは盲点というか、今までやっていなかったところでございますが、この事業についてはホームページを作成しまして、それは日本語と英語と両方でホームページをつくって、この事業についてはPRをしてきたつもりでございますけれども、成果である作品について国内のほうでのフィードバックが不十分だったというのはご指摘のとおりだと思いますので、そこは今後十分留意する必要があるというふうに考えます。
【伊藤コーディネーター】
それでは、結果まとまっておりますので、私から評価結果につきましてご報告いたします。
現代日本文学翻訳・普及事業につきまして、廃止という方が3名、抜本的改革改善という方が3名です。同数ですので、最終的な結論及び取りまとめにつきまして、徳久審議官よりお願いいたします。
【徳久政策評価審議官】
ただいまご紹介ございましたように、本事業につきましては廃止が3名、抜本的改善が3名ということでございますので、私の判断として廃止という結論にいたしたいと思います。
コメントでございますが、まず1つ目に、海外に日本文学を発信するためには翻訳は極めて重要であるということでありますけれども、日本文化の発信を国がどのように取り組むべきかの戦略を踏まえて、民間の活動にゆだねるべきところはゆだねるということ。これが1点目でございます。
それから2点目は、今の話の関連でございますが、翻訳、出版については民間にゆだねるが、優秀な翻訳者を発掘、育成することは国の事業としては重要であり、効率的、効果的な支援の方策を検討すべき。
なお、既に国費を投じて翻訳済みの未出版作品があるわけでございますが、その作品については、期間を限った上で翻訳作業を納期内に完了させるなどの執行のあり方などに留意しつつ、一定の配慮について検討すべきであるというコメントでございます。
【伊藤コーディネーター】
以上で終了いたします。ありがとうございました。
それでは、すべて終わりましたので、最後に神本政務官よりごあいさつをちょうだいいたします。
【神本政務官】
昨日と本日と2日間にわたりまして、評価者の皆さん方にはほんとうにいろいろありがとうございました。私自身、国会の関係で昨日も今日も出たり入ったりで、大変失礼したことをまずおわびしたいと思います。
この2日間でいただきました貴重なご意見や厳しいご指摘も含めまして、これから事業を見直す大きな視点になると思いますので、生かせていただきたいと思います。
また、今回の検証の結果につきましては、平成25年度の概算要求に適切に反映させてまいりたいと思っております。今後もより一層、文部科学行政に関心を寄せていただきまして、厳しいご指摘も含めまして、ご示唆をいただきますように心からお願いしまして、簡単ですけれども、公開プロセスについてのお礼のごあいさつにしたいと思います。ほんとうに2日間ありがとうございました。
【伊藤コーディネーター】
以上で2日間にわたります行政事業レビュー公開プロセス、すべて終了となります。ありがとうございました。
── 了 ──
大臣官房会計課財務企画班
-- 登録:平成24年07月 --