平成24年6月19日(火曜日)13時30分~16時40分
文部科学省講堂(東館3階)(中央合同庁舎7号館)
【髙橋会計課長】
それでは、定刻になりましたので、ただいまより文部科学省公開プロセスを開会させていただきます。今日から2日間の日程でございますが、まず初日の開会に当たりまして、平野文部科学大臣よりごあいさつ申し上げます。
【平野大臣】
それでは、座ってでございますが、ごあいさつを申し上げます。文部科学大臣の平野博文でございます。公開プロセスの開催に当たりまして、一言ごあいさつをいたします。
評価者の皆様方におかれましては、当省の公開プロセスにご協力をいただきまして、大変ありがたく思っております。また、ご来場いただきました傍聴者の皆様、また、ネットを通じて傍聴いただいている皆様方に文科省にご関心をいただきまして、大変感謝を申し上げたいと思っております。
行政刷新は野田内閣の重要課題の一つでありまして、総理におかれましても今国会の施政方針の中に行政のむだ遣いの根絶は不断に続けなければならないと、こういう取り組みであるというふうに発言もされております。また、野田第二次内閣改造におきましても、基本方針にも行政のむだ遣いを根絶するための行政刷新の取り組みの強化、こういうことを盛り込んでいるところでございました。こういうことから、私は行政に含まれるむだや非効率を根絶し、真に必要な行政機能に強化をしていくための取り組みを積極的に進めてまいりたいと考えているところでございます。
公開プロセスは、政権交代以降、行政刷新会議を中心に取り組んできたところでございますし、いわゆる事業仕分けを各府省において実施するものでございます。いわば各府省版の事業仕分けとも言える取り組みであり、当省の施策が効率的に、効果的な手法でやられているかどうかをぜひこの皆様方によって検証していただくと、こういうふうに考えているところでございます。
今回の公開プロセスは今日とあすとこの2日間、5つの事業について検証いただきますが、皆様方からのご指摘や検証結果はこの5つの事業にかかわらず、そういう評価者の皆様方のお考えを、しっかりとその下に横ぐしを通して、平成25年度の概算要求にしっかりと反映をしていきたいと、かように思っております。皆様におかれましては、引き続き文部科学省に一層のご理解とご協力、ご助言を賜りますことを心よりお願いし、公開プロセスの実施に当たって、簡単ではございますが、一言のお礼とお願いのごあいさつにさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【髙橋会計課長】
それでは、議事に入ります前に本日の評価者の皆様をご紹介させていただきます。席順で失礼いたします。まず東京学芸大学客員教授、藤原和博様でございます。
【藤原】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
次に清水法律事務所所長、清水幹裕様でございます。
【清水】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
クレディ・スイス証券株式会社のチーフ・マーケット・ストラテジスト、市川眞一様でございます。
【市川】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
テーブル反対側になりますが、株式会社経営共創基盤、ディレクターの吉澤正樹様でございます。
【吉澤】
吉澤でございます。よろしくお願いいたします。
【髙橋会計課長】
神奈川大学人間科学部特任教授、南学様でございます。
【南】
よろしくお願いいたします。
【髙橋会計課長】
最後に伊藤忠商事株式会社理事、松見芳男様でございます。
【松見】
どうもよろしくお願いいたします。
【髙橋会計課長】
大変恐縮でございますが、大臣、この後、国会の公務が控えておりますので、ここで退席させていただきます。
【平野大臣】
よろしくお願いします。
(大臣退席)
【髙橋会計課長】
それでは、この後の進行はコーディネーターの伊藤様、よろしくお願いいたします。
【伊藤コーディネーター】
それでは、これより文科省の公開プロセス作業に入りたいと思います。本日進行役を務めます行政刷新会議事務局の伊藤と申します。よろしくお願いいたします。
まず、今日の全体的な流れを確認いたしますが、本日は2つの事業について議論いたします。1事業当たり1時間半ぐらいで結論を出すということになっております。評価者の方におかれましては、できる限り一問一答でご質問いただければというふうに思います。また、これは説明者の方、評価者の方、ともにですが、できるだけ簡潔にご質問、ご答弁いただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。
それでは、早速1つ目の事業に入りたいと思います。お手元の冊子1ページです。科学技術戦略推進費です。まずは徳久政策評価審議官より、事業選定の基本的な考え方につきましてご説明いただきます。
【徳久政策評価審議官】
それでは、私のほうから科学技術戦略推進費を公開プロセスの対象事業として選定しました基本的な考え方につきまして、ご説明をいたします。
当科学技術戦略推進費につきましては事業規模が大きく、また、科学技術イノベーション政策を推進する上で必要な経費であることなどから、政策の優先度が高い事業として選定いたしました。本経費の運用のあり方等について検証いただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
【伊藤コーディネーター】
それでは、ご担当よりご説明お願いいたします。
【説明者】
それでは、お手元の資料1ページをごらんください。科学技術戦略推進費についてでございますが、まず事業目的でございますが、この科学技術戦略推進費は内閣府に置かれております総合科学技術会議が各府省を連携させ、牽引いたしまして、科学技術イノベーション政策を戦略的に推進するために充てるものでございます。
大きく2つの性格のものに分けられまして、一つ目は総合科学技術会議が司令塔機能を発揮して状況変化、あるいは自然災害等を踏まえて、年度途中に機動的に対応する施策や政策立案のための調査に充てるもの、もう一つは、総合科学技術会議が定めました実施方針に従いまして、当省文科省で実施いたします個別のプロジェクト、個々の実施課題でございます。
事業の概要の欄の真ん中辺りをごらんいただきますと、制度の仕組みについて書いてございますが、本制度は総合科学技術会議の定めた方針に従いまして文科省が実際のプロジェクトの審査、あるいはプロジェクト管理・評価、予算執行管理等の事務運営を実施しているところでございます。したがいまして、予算は文科省予算ということで文科省に計上されております。
また、特徴的な点といたしまして、各府省に移替えが可能であるということがございます。これは年度の途中で機動的に対応する施策などに関しまして、他省庁に予算を使ってもらう必要が生じた際などに活用される機能でございまして、通常ですと、文科省予算でしたら文科省で執行して終わりというところですが、文科省から他省に移替えることができるという特徴を有している経費でございます。
具体的に23年度、どういった内容の予算だったかにつきまして、大変恐縮ですが、お手元の資料の、10ページをごらんいただけますでしょうか。こちらは、ポンチ絵になってございますが、本制度、23年度新規創設された制度でございます。新規のプロジェクトを実施するプログラムが大きく3本立っております。一つ目が社会システム改革と研究開発の一体的推進プログラムでございまして、こちらは研究開発の成果を社会の中で実用化しまして、社会システムの改革につなげていこうということをねらいとしたものでございまして、下に掲げてございますようなサブプログラムが幾つかございます。
二つ目の大きな柱は、科学技術国際戦略推進プログラムでございまして、国際協力の推進に充てるための経費でございまして、こちらも下に掲げてございます2つのサブプログラムがございます。
三つ目の柱が重要政策課題への機動的対応の推進でございまして、これは年度途中の突発的な自然災害等に対応するために充てられるものでございまして、23年度は福島第一原発の事故によって放出されました放射性物質による環境影響の問題に関しまして、文科省、農水省、経産省といった各省の連携によりまして、機動的、迅速に対応して研究開発を実施して有効に機能したところでございました。
それから一番下にプロジェクトを新規募集しないプログラムというのがございます。これは継続のプログラムでございますが、先ほど23年度新規創設の制度であると申し上げましたのに、どうして継続プログラムがあるかと申しますと、平成22年度まで科学技術振興調整費という制度がございましたが、この制度が平成22年度いっぱいで廃止されております。振興調整費で実施していたものの一部が戦略推進費に継続分として引き継がれているということでございまして、若干経緯を補足いたしますと、平成22年度までありました科学技術振興調整費につきましては、22年秋の事業仕分けの対象になっておりまして、ここで継続事業終了時点をもって廃止というご指摘をいただいております。
また、当時、方針を決めます総合科学技術会議を改組するということで、改組を踏まえまして、振興調整費も改革を行うということになっておりましたので、仕分けに後押しをされ、改革を先取りする形で振興調整費を廃止して、この戦略推進費が創設されたという経緯がございます。
それでは、たびたび恐縮です。お手元の資料、レビューシート1ページ目にお戻りいただけますでしょうか。レビューシートの真ん中辺りに成果目標、成果実績について記述がございます。本制度は、総合科学技術会議がプログラムごとの達成目標を示しておりますので、プロジェクト──プロジェクトと申しますのはプログラムの下で大学あるいは研究独法等で実施しております個々の課題をプロジェクトと呼んでおりますが、このプロジェクト実施の機関におきまして総合科学技術会議で掲げた目標を達成するように計画を立てて事業実施を進めているところでございます。
予算額等は記載のとおりでございまして、お手元のシート2ページ目をごらんいただけますでしょうか。所管部局による点検でございますが、記載ございますように、各項目ごとに文科省におきまして個別のプロジェクト執行につきましては効果的、効率的に実施していると考えているところでございます。一方で点検結果の欄にございますように、総合科学技術会議が改組するということで議論が進んでおりまして、総合科学技術会議に置かれました研究会の報告書なども出されているところでございます。これによりますと、今後、より司令塔機能を発揮していかれるという状況になってございますので、総合科学技術会議の改組に伴いまして、戦略推進費もそれにふさわしい仕組みに変えていく必要があるという段階に今なっていると考えております。
科学技術戦略推進費につきましては、その観点に立ちますと、状況変化、あるいは自然災害等を踏まえまして迅速に対応する必要があるような課題に機動的、柔軟に対応するということが重要でありこういったことに対応するために効果的、効率的な仕組みとするべきではないかということが考えられます。
他方で、もう既に方針が示されました個別の実施継続プロジェクトにつきましては、各府省においてその方針に従って実施する、各府省に任せるべきではないかということが考えられるかと存じます。
それから、資金の流れにつきましてはお手元のシートの3ページをごらんください。23年度実績ですが、文科省予算執行額は、約75億円ございますが、このうち一番大きいものが左のAの欄にございます補助事業でございまして、大学、研究独法等に約60億円支出されております。補助金という形で研究開発、あるいは国際協力といったプロジェクトの実施をする機関に交付されているところでございます。
真ん中にございますのは委託でございまして、これは自然災害等を踏まえて、年度途中に機動的に対応する施策、あるいは戦略推進費の業務支援のために委託を行っているものでございます。
一番右のE、移替予算というところでございますが、これは6億ちょっとでございますが、他省庁に移替えているものでございまして、一部の研究開発プロジェクトの実施や、あるいは年度途中の機動的な対応に充てられるものということでございます。
シート、以下経理面について詳細な情報がございますが、お手元の資料では続きまして参考の資料についてご紹介したいと存じます。資料の11ページをごらんください。科学技術戦略推進費に関する基本方針でございますが、これは昨年、制度の創設に当たりまして、総合科学技術会議で定められたものでございまして、戦略推進費の基本的考え方、また、内閣府、総合科学技術の役割、あるいは文科省の役割等について記述されてございます。
続きまして、資料の14ページをごらんください。こちらは年度ごとに策定されますものでございまして、23年度の戦略推進費の実施方針のうち新規のプロジェクト実施分について、総合科学技術会議で定められたものでございます。14ページ以下、それぞれのプログラムについての目的、予算配分額等が記述されておりまして、23ページまで続いてございます。
それから、お手元の資料24ページをごらんください。こちらは重要政策課題への機動的対応の推進のための23年度の実施方針でございまして、これは福島第一原発事故対応の放射性物質の影響の問題に対応するということで機動的な研究開発を行うための実施方針でございます。こちらが27ページまで記述が続いてございます。
28ページをごらんください。こちらは戦略推進費、継続プロジェクト実施分の実施方針でございまして、振興調整費でかつて実施していて、戦略推進費に引き継がれたものについての方針でございます。
それから、お手元の資料29ページでございますが、こちらは24年度の予算要求をする際の概算要求についての方針でございまして、こちらも総合科学技術会議の方で定められた内容でございます。29、30ページとこの概算要求方針になっておりまして、それからこの方針を受けて予算要求して、財政当局の査定も経た結果としての24年度予算の仕上がりの姿がお手元の資料31ページのポンチ絵でございます。これにつきましては、24年度総合科学技術会議の改組を控えた過渡的な状況にあるということで、新規プロジェクトにつきましては厳選、重点化ということで限定的なということになっております。
具体的には新規プロジェクトを実施するプログラムとして2本柱が立っておりますが、一つ目は、国際戦略推進プログラムの科学技術外交展開に資する国際政策対話の促進でございます。24年度につきましては新規で公募審査を経てプロジェクトを採択するのはこのプログラムのみということになってございます。単年度のプログラムでございます。
もう一つは重要政策課題への戦略的対応ということで、こちらは総合科学技術会議の方で指定して実施するものでございまして、自然災害等を踏まえた機動的対応や、政策立案のための調査に充てられるものでございます。
それから、下にプロジェクトを新規募集しないプログラムが並んでございまして、こちらは継続プログラムでございます。全体24年度予算69億7,000万円のうち、63億円はこの新規募集をしない継続プログラムになっておりまして、継続のプログラムの傘の下で、個別のプロジェクトが実施されているという状況でございます。
最後に、お手元の資料32ページをごらんください。方針をお決めになる総合科学技術会議について改組を控えているということで、総合科学技術会議に置かれました有識者の研究会の報告が昨年暮れに出されております。その中で、予算に関する記述についての抜粋でございます。司令塔と申しますのが総合科学技術会議のことでございますが、この司令塔というのは、科学技術イノベーション関係施策全体を俯瞰して、まさに司令塔として方針を徹底するということで、予算配分についても方針を示して優先順位づけをするというのが役割であるということで、他方で個別プロジェクトの実施にかかわる予算は持たず、実際の施策の実施は各府省に任せるべきということが書かれてございます。
ただしということで、司令塔の調査分析機能を向上させるための費用自体は確保することが望ましいということが記述されているところでございます。
以上でございます。
【伊藤コーディネーター】
ありがとうございました。続きまして、会計課長よりこの事業についての論点について説明をお願いいたします。
【髙橋会計課長】
それでは、引き続き資料33ページでございます。今、ご説明がありました32ページの有識者の研究会の報告書にありますように、ここでは3点、今と繰り返しになりますが、司令塔である総合科学技術会議は各省に対して予算配分の方針を示して厳格な優先順位づけを実施する。そして、個別プロジェクトの実施に係る予算を持たずに各施策の実施は各省に任せるべき。さらに、司令塔としての調査分析機能を向上させる費用自体はしっかり確保することが望ましいといった方向性が一定示されておりますので、科学技術戦略推進費についても、この方向性に沿って見直すべきではないかというのが1つ目の論点でございます。
次に、事業の有効性といたしましては、総合科学技術会議の科学技術イノベーション戦略本部への改組に向けた議論を踏まえますと、この戦略推進費が科学技術イノベーションをめぐる状況の変化や自然災害等を踏まえて、迅速に対応する必要がある重要政策課題に機動的かつ柔軟に対応するために、より効果的、効率的な活用が行われるべきではないか。こういった論点があろうかと思います。
最後に、執行方法といたしましては、現在、この科学技術戦略推進費は、この事業の特徴を最大限発揮するために各府省に移替え可能な目未定経費として予算計上しておりますけれども、今の説明にもありましたように、個別の継続プロジェクトについては既に会議から運営方針が示されていて、新規採択が行われずに配分先も決定している。こういったことを踏まえますと、この目未定経費である戦略推進費の枠組みで実施する必要性が低いのではないか。こういった論点もあろうかと思います。
以上、今回論点を3点提示いたしましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤コーディネーター】
ありがとうございました。
それでは、この事業につきましては、先ほどご説明にもありましたとおり、2年前の文科省の公開プロセスもそうですし、その後の事業仕分けでも同じように議論をしています。もう少し、その当時出ていた振興調整費との違いを簡潔にご説明いただいた上でご質問に入りたいと思います。
【説明者】
振興調整費との違いでございますが、まず一つ言えますことは、総合科学技術会議の主導性が一層高まったという点でございまして、基本方針の中にも記述があるのですが、ワーキンググループを置いてプログラムの進捗把握を内閣府、総合科学技術会議の方で行うようになった点が変更点の一つ目でございます。
もう一つは、振興調整費のときの仕分けの指摘をいただきまして、当時も文科省で執行できるものは文科省でやればいいのではないかといったご意見もちょうだいしておりましたので、平成22年度296億、300億円近く振興調整費があったわけでございますが、そのうちの若手研究者の養成、あるいは女性研究者の支援といった人材関係のプログラムが約100億円、また、産学連携物のプログラムが約75億円につきましては、振興調整費、あるいは戦略推進費という枠組みから外しまして、純粋な文科省の補助金という形で、100億円の人材養成の事業、それから、75億円の産学連携の事業として文科省の内局事業として実施しておりまして、それ以外の部分が一部戦略推進費の方に引き継がれて、戦略推進費としては23年度80億円ほど予算を計上しているという点でございます。
以上です。
【伊藤コーディネーター】
大きくは2点ということですかね。
【説明者】
大きく2点と考えております。
【伊藤コーディネーター】
それでは、この部分のところからご質問、ご意見いただければというふうに思います。市川さんから、どうぞ。
【市川】
すみません。よろしくお願いします。手を挙げていないのに当たってしまいました。
私、すみません、ご承知のように、前回の行政事業レビューもそうですし、再仕分けにもかかわらせていただいておりまして、振興調整費時代から非常になじみの深いもので、またお会いすることができまして、大変光栄に思っております。
では、幾つか細かいことをまずお伺いしたいんですけれども、いただいた資料の28ページ目に23年度の継続プロジェクト分の金額はここに出ていて、私が24年度の科学技術戦略推進費の実施方針、24年3月15日に出たものを見ていますと、全体として、プロジェクトに充てる費用として63億円という、先ほどちょっとおっしゃっておられましたけれども、数字が出ています。お聞きしたいのは、それとこの予算の69億7,000万円との差額の部分が要は機動的な対応という部分だと考えてよろしいんでしょうか。
【説明者】
69.7億円と63億円の差額のうち1億円は国際関係物の科学技術外交の展開に資する政策対話に1億充当されます。その差額が……。
【市川】
つまり、5億7,000万円。
【説明者】
そうですね。しかしながら、実際使うに当たっては当然内閣府の方でご判断があって、財政当局の方の了解もとらないといけませんので、そういったものを経た上で、具体の執行額は決まってくると考えております。
【市川】
例えば機動的に──昨年震災があって、これに対して特に除染等に対応するためというお話がありましたけれども、科学技術の世界で機動的に対応しなければいけないケースというのはそのほかにどういうケースが考えられますでしょうか。
【説明者】
例えば過去の例でも、口蹄疫が突発的に発生して、緊急に研究しないといけないであるとか、あるいは新燃岳が噴火しているときにすぐ観測をして、今後の対策に充てなければいけないというケースがございます。あるいは台風といった自然災害、あるいは感染症系のものについて、その時点で迅速な対応が求められるというケースがございます。
【市川】
ちなみに、平成24年度予算、これは文部科学省、内閣府だけではなくて、全体の予備費って幾らありますか。
【髙橋会計課長】
予備費については一般予備費が3,500億と復興対策関係の予備費が数千億あったと思います。
【市川】
そうですね。復興関連のところ、ちょっと除いて、一般の予備費だけで3,500億円あるわけですね。そうすると、果たしてそういった災害等何か対応しなければいけないことが起こったときには、既に国として予算3,500億円の機動的に支出できるプールがあるわけで、あえてそこに5億7,000万円を持っていなければならない理由というところについて、ちょっとご説明願えないでしょうか。
【説明者】
やはり科学技術の観点で迅速に使えるかどうかということがあるかと思っております。ですから、総合科学技術会議というまさに司令塔において科学技術、研究開発という観点で緊急にやる必要があるかという判断を加えた上で、非常に迅速に対応するための経費が、今回福島の環境、放射能の問題についても役に立ったという経緯がございます。
【市川】
では、総合科学技術会議の議長はどなたですか。
【説明者】
内閣総理大臣です。
【市川】
ですよね。内閣総理大臣なり、科学技術にかかわる担当大臣、これは文部科学大臣も含め、入っておられるわけですね。そこで何らかの災害に対応してとか、機動的に何かをしなければいけないときに、別段ここにプールがなくても、当然、それは大きな災害なわけですから、内閣として国が持っている予備費を活用する。ましてや5億7,000万円って、3,500億から比べれば、これも年によっていろいろなことに使われていますので一概には言えない部分がありますけれども、ましてや自然災害のようなときは、むしろ喫緊のものについては国の予備費で対応し、さらに何か必要な場合には、普通であれば、補正予算を組んで、その補正予算の中で対応するというのが通常の考え方ではないかと思うんですけれども、もう少しどうしてここにそれを持たなければいけないのかというところを論理的に説明していただけないでしょうか。
【説明者】
補正予算との関係で申しますと、補正予算というのは時間がかかるというふうに考えます。ですから、そういう意味ではこの機動的対応ですと、当然ながら財政当局との調整もありますが、現在早ければ2週間とか、それぐらいのスピード感ですぐに決定して実施できるという、その迅速性、機動性はあると思っております。
【市川】
ただ、それは戦略会議、総合科学技術会議の中で決めていく方針に従ってということですから、その意味であれば、内閣総理大臣も、文部科学大臣も、経済産業大臣も、厚生労働大臣も、その意思決定にかかわっているわけで、そうすると、別に予備費というのは、これは内閣に与えられた使途については、権限ですから、そこで十分に対応できるし、繰り返しになりますけれども、補正予算を組むのは時間がかかる。それはわかります。国会の事情もありますし。ただ、これはどう考えても補正予算までの間のつなぎということであれば、当然予備費で対応すべきことであって、予算上、使途が不明なお金を幾つか持っているという必要はないし、かつ、それが逆に言うと、幸いにして災害がなくて使わなければ不用が立つわけですから、そういう予算のやり方というのは非常に財政上おかしいのではないかというふうに思います。
【伊藤コーディネーター】
南先生。
【南】
市川さんと全く同じ意見なんですが、さらに言うと研究を行う研究費。研究開発費かもしれない。というと、意思決定をした後に具体的な成果を出すまでの時間というのはそれなりにかかりますよね。要するに、土木工事とか、それだって設計が要る。まして、こうした研究開発の場合にはそれがほんとうに機動的に行われ、あるいは緊急があっても、その成果がどういうふうに出るんだろうか。単なる測定とか、その辺だったら、当然のことながら予備費で対応すべきだろう。そうでなくて、研究開発である以上は、大規模な災害があって、測定を開始するというのは別個の予算でできて、なおかつ研究の目的とか、その段取りだとかというのを定めるときに一定の時間が必要ですよね。こういったタイムラグが生じる間に補正は当然組めるわけですし、研究の一つのデザインもできていくと。そういった意味では、あえて旧振興調整費型の費用を持っている必要性がどこにあるのかなんですね。これは要するに、緊急土木工事、災害対策とはちょっと違った意味で研究開発型ですから、絶対タイムラグが生じるんですね。その辺はどのようにご説明できるんでしょうか。
【説明者】
そうですね。例えば今日の資料の中でも23年度の重要政策課題への機動的対応の決定分も24ページに書いてあるわけですけれども、おっしゃるように専門的な内容でもありますので、一定の議論の時間は総合科学技術会議の中でかかったというのは事実でございます。しかしながら、関係省も集まりまして、時間がたつほどに状況も変わってまいりますので、その辺も判断した上で、可能な限り早くということで対応した結果、5月に各省とも相談して、非常に短期間で、2週間とかそれぐらいの期間でこれをまとめ上げて決定したというのがございますので、迅速にやっていると考えております。また、内閣総理大臣、あるいは閣僚もメンバーではあるのですが、科学技術の専門の知見をお持ちの先生方が総合科学技術会議は議員ということで加わっておられますので、そういった知見を生かし、それから、各省連携の旗を総合科学技術会議が振るというのもございますので、専門的な知見を持った先生方が旗を振り、各省がいい形で連携する形で、かつ迅速にやるという点がほかの予備費と違った特徴だと考えております。
【南】
二、三週間という期間に数億円レベルになるかもしれないですね。基本的には。そうした執行というのは、ほんとうの意味で研究開発の本来のゴールを定める、要するに、目的を定めることと、執行手続も含めて、二、三週間で意思決定はあるかもしれませんが、予算の執行とはまた別ですね。
【説明者】
そうです。
【南】
例えば機器の購入なんていったら、機器を選定したりとか、発注業務とかやっていれば、今の役所のシステムから言えば軽く1カ月以上かかってしまうということもあるわけで、既存の機器を使うんだったら当然のことながら人的なものですから、もっと機敏な対応の仕方があるだろう。要するに、これだけの研究プロジェクトを立ち上げるという形で、しかも一つの研究の名前をつけて、プロセスまで決めて、それは二、三週間だというのは2つの意味で、1つは拙速に過ぎるということはないのかどうかということと、それから機動性があるということであれば、もっと別個の使い方があるだろう。この2点で、どうもこれだけの資金をプールしておく必要がどこにあるんだろうかというのはやはりどうしても疑問なんです。
【説明者】
おっしゃるように、物を調達したりという執行段階は決まった後に動き出しますから、それには一定の時間がかかるという面はあるかと思っております。しかしながら、迅速にこういう意思決定をして、専門家を糾合できるというのは総合科学技術会議という司令塔があって、専門的な知見も持ち合わせてやっていただくという観点もありますので、各省ばらばらではなくて、連携の形でやっていくというところには意義はあると考えております。
【南】
最後に1つですが、もし予算枠を超えちゃったらどうなるんですか。
【説明者】
予算枠の中でしか動けないです。
【南】
だから、そういう意味では予定された枠があって、予定された執行の計画の中にたまたまいろいろな突発的なことが起こる。しかも、その予算枠の中に抑えて研究しなきゃならないですね。これは非常におかしな話じゃないですか。緊急というのは、緊急な事態に対して、予算の枠にとらわれずに必要な研究をしなきゃいけない。そのためにはある一定時間かけても──スタートはもちろんやっていいわけです。既存のいろいろな中で。だけど、そんな予算枠を決めて、二、三週間で決定してというので、私はどうもそれが実に小さなプロジェクトの機動的な割り振りでしか見えないという形なんです。だから、やっぱり予算枠の問題とか、時間の枠とか、予備費との関連からすると、まさにこれは要らないことだなというところなんですが。
【伊藤コーディネーター】
1点だけ事実関係で申し上げると、先ほど南さんから公共事業とは少し違うだろうという話があったんですが、公共事業についても国土形成調整費というのがもともとあって、これは事業仕分けで、同じように指摘をされて、実際に廃止になっている。結果的に、調整費という機能自体は、国会の議決を経ないという問題であったりとか、機動的、迅速的に使うのでは、まさに今出ているような予備費であって、ほかの対応ができるんじゃないかという議論があって、仕分けで指摘されて廃止になっているということを事実関係として申し上げます。
次、松見さん、どうぞ。
【松見】
私は少し見方が違うのですが、この議論は、当然、科学技術戦略推進費に関するものであるものの、常に日本の科学技術イノベーション政策全体を当然頭に入れながら考えるべきだと思うのですが、特にグローバルイノベーションの熾烈化というのは、皆さんご存じの通りで、日本が遅れつつある。したがって、今までの科学技術政策から、科学技術イノベーション政策にしようとして、その組織が改組される。司令塔が重要だ。これも皆さん仰るとおり。しかも、司令塔は、今度、イノベーションが加わりますから、強化してしっかりしていただかないと、日本の国際的地位が益々低下していく。その中で幾らかという数字をはっきりするのは難しいと思いますが、司令塔が重要だ、強化しなければならないと言いながら今度は予算措置不要でしょうというのは、ちょっと矛盾があるのじゃないかなと思います。司令塔というのは各省に振り分けられるものじゃなくて、横断的な役割を果たすことが当然求められるわけでありますので、プラス、先ほど仰った機動的対応。だから、幾らかと言われると困るのですが、ゼロというのは日本の今の置かれた立場からすれば問題だと思います。その点は如何お考えですか。
【説明者】
総合科学技術会議をまさに改組して、より一層司令塔機能を強化していこうという段階でございますので、そういう意味でまさに先導的に旗を振って、各省を引っ張っていこうという中では政策立案のための調査、あるいはこういった自然災害等、年度途中に起こった事態に対応するための額を、非常に多額である必要は必ずしもないと思うのですけれども、一定程度持っていて、何か起こったら、迅速、機動的に対応できる、総合科学技術会議の司令塔の判断でもって動けるということは、非常に有効ではないかというふうに考えている次第です。
【伊藤コーディネーター】
もう一回どうぞ。
【松見】
簡単にします。当然海外諸国のことも、文科省の方でケーススタディーをしておられるか、あるいはされるべきだと思うのですが、たしかアメリカの司令塔に当たるOSTPも当然各府省が、行政機関が予算を持って執行しているのですが、同時にOSTP独自に、たしか二、三百万ドルだったと思いますが、持った上で、今お話しさせて頂いたようなことで対応していると思うのです。海外の主要国の司令塔がどうなっているかスタディーしておられますか。
【説明者】
おっしゃいますように、アメリカのOSTPは、少額ながらお金を持っております。実際はNSFやNIHといった機関が大きな予算を執行しているということでございますが、政府、OSTPレベルでまさに司令塔としての方針を決め、若干の少額ながらの資金を活用して政策立案、実施をしているというふうに承知しております。
【伊藤コーディネーター】
市川さん、どうぞ。
【市川】
せっかく議論が深まってきましたので、そもそも論を少しお伺いさせていただきたいんですけど、私はまず1つだけ申し上げておきますと、別にこれを削って、それで国の総予算を減らせとか、そういう話をしているんじゃなくて、どういうふうにこの限られたお金を活用すれば効率的に、ないしは有効に科学技術の振興ができるのかというスタンスでお伺いしたいんですが、内閣府設置法の第26条が、総合科学技術会議にかかわる項目ですね。その2に内閣総理大臣、または関係大臣の諮問に応じて、科学技術に関する予算、人材その他の科学技術の振興に必要な資源配分の方針その他、科学技術の振興に関する重要事項について調査審議することという項目がありますね。つまり、予算の配分等については、総合科学技術会議が内閣総理大臣もしくは関係大臣の諮問に従って、これを調査審議せよということになっているわけですが、この戦略費を持たないと、今の形ですけど、新しいものはまだ法案も出てないそうなので、できるかどうかちょっとわかりませんので、今の総合科学技術会議が、この法に照らして、このお金を持たないと予算のアロケーションを決められない、何か障害があるんですか。例えば先ほど来、繰り返しになりますけど、災害等が起こったときに、予備費を活用するということになった場合に、このお金がなければ内閣総理大臣が議長である総合科学技術会議が、何か予算の全体のアロケーションを決められない理由があるんですか。
【説明者】
そうですね。振興調整費時代の例になってしまうのですけれども、こういった趣旨のやはり機動的な対応の経費が計上されていまして、その中で政策立案に向けての調査のようなことを総合科学技術会議の方で実施されておりました。そういった基礎データなどをとった上で、予算の配分や科学技術政策を決めていくというために活用されていったというものがございます。
【市川】
その点については、科学技術イノベーション推進のための有識者報告書というのが昨年12月19日に出ていますね。ここで、司令塔に必要な予算のところに先ほどちょっとご紹介がありましたけど、何て書いてあるかというと、スクラップ・アンド・ビルドにより、司令塔の調査分析機能を向上させるために要する費用自体は確保することが望ましいと。つまり、自分のところでお金を持って何かしろということではなくて、方針を正しく決めていくための予算というのを持ちなさいということなわけですね。ただ、今のお話からすると、予備費的な部分も持たなければいけないというお話になっていて、そういう意味ではあくまでこれは有識者会議の結論ですけれども、そことの整合性というのは一体どうなっているんでしょうか。
【説明者】
そうですね。確かにこの報告書は、司令塔の調査分析機能の向上というふうになっておりますので、そういう意味では政策調査的な経費というのがここでは指されているかと考えます。しかしながら、政策立案をする上でも、いろいろな緊急的な事態があったときにどう対応するかということも含めて、総合科学技術会議として政策を考えていくためにも何らかのツールは持っていないといけないのではないかと考えられると思っております。
【市川】
それともう一つ、平成24年度予算編成の基本方針~日本再生に向けて-危機をチャンスに~という、昨年12月16日の閣議決定の中に、科学技術について、経済成長と財政健全化の両立というところに、経済成長と健全財政の両立をさせることがこれまで以上に重要である。省庁の縦割りを超えて大胆な予算の組みかえを進め、財源を最も効率的に、効果的に活用して、新成長戦略を進めていくことが重要だというふうに書いてあるわけですね。これは閣議決定です。そういった観点からいくと、やはり科学技術──ごめんなさい。新しい組織と旧組織の名前を混同してしまいますね。現行の総合科学技術会議はあくまで司令塔として、全体の予算のアロケーションを決めるということでよいのかなというふうに思います。
と同時に、もう一つ、これは質問なんですけれども、先ほど内閣府設置法の第26条2項を読ませていただきましたけど、第3項に科学技術に関する大規模な研究開発その他の国家的に重要な研究開発について評価を行うことというのがあるわけですね。私は、ちょっと危惧するのは、ご自身で総合科学技術会議がみずから設定したプロジェクトを、方針ではなくてプロジェクトを持ったときに、自分で果たしてこれを法の精神に照らして正当に評価できるものなんですかね。
【説明者】
そこの大規模な評価につきましては、今現行の総合科学技術会議の中では300億円以上のプロジェクトですとか、あとは国民の関心が非常に高いものという基準で評価をしていますので、おそらくここで戦略推進費でされているような機動的対応のような、この評価は当たらないのかなというふうに思っています。
【市川】
いや、実は総合科学技術会議は、提言を仕分けの中でも議論させていただいたことなんですけど、実はプロジェクトの評価ってほんとうはしてないんですね。例えば各独立行政法人なら独立行政法人が評価したものをただ見ているだけのことであって、実は自身が評価する仕組みを持ってないという、ある意味では司令塔としては非常に重大な問題を抱えていると私は思いますが……。ただ、どちらにしても自分のところでプロジェクトを決めておいて、自分で評価するというのは、それはどう考えたって、お手盛りになりかねないという──お手盛りになると言っているんじゃなくて、なっているのではないかという疑念を生じかねないような仕組みではないかと思いますが、いかがですか。
【説明者】
評価につきましては、まず自分たちでちゃんと評価して、それで評価の場をしっかり設定して、第三者の人に入っていただいて評価するという形になると思いますので、総合科学技術会議の評価のあり方というのはいろいろ議論のあるところだと思いますけれども、評価のあり方として、自分が決めたプロジェクトを自分たちで評価しちゃいけないという、そういうわけではないかなと思っています。
【伊藤コーディネーター】
藤原先生、どうぞ。
【藤原】
マクロな話が続きましたので、ちょっとミクロな話を聞きたいなと思うんですけど、1ページ目のレビューシートの左下に24年度、25年度予算内訳というのが書いてありますね。これはざっと見ますと、いずれも、例えば気候変動とか、テロ対策とか、自然災害、感染症、ゲノムと、時代のキーワードが並んでいて、ここは非常に聞きにくいところがあるですけれども、1つだけちょっと意図がわからないものがあるので、これの内容をお聞かせいただきたいんです。上から7番目になりますが、地域再生人材創出拠点の形成という。12億9,000万円ですかね。これは28ページにも登場するんですが、地域再生人材創出拠点形成で、23年度は18億円だったんでしょうか。
【説明者】
そうです。
【藤原】
これ、すみません。この予算はまずいつから、振興調整費時代からずっと続いているんでしょうか。いつからやられているんでしょうかね。
【説明者】
平成18年スタートでございます。
【藤原】
そうしますと、もう6年ぐらいやっていると。5年やり終えて、6年目に入っているという感じですね。
【説明者】
そうですね。
【藤原】
これ、すみません。何をやっている事業でしょうか。大体10億円から20億円かけて。
【説明者】
この事業につきましては、大学が持っております特徴がございますが、これをうまく生かしまして、地域における産業の活性化、あるいは地域社会のニーズ、課題の解決に向けて、地元で活躍して、地域の活性化に貢献できるような人材育成を行おうということをねらいとしております。地域の大学等と地元の自治体、あるいは企業などが連携しまして、地域に貢献するような優秀な人材を輩出するための地域の知の拠点を形成していこう、人材創出のシステムをつくっていきましょうということをねらいとした事業でございます。
【藤原】
それを聞きますと、本来、独立行政法人としての大学、もしくは私大も含めてということになりますか。
【説明者】
はい、そうです。
【藤原】
本来の大学の仕事じゃないかと思うんですが、それに対して、要するに、補助金を出しているということですか。
【説明者】
本来の大学の仕事という見方もあるのかと思うのですが、特にこういったことを強化してやろうということで、自治体なりと大学とで共同して、地域ごとに特徴もございますので、それを生かしてやっていただくというための補助金でございます。
【藤原】
そこになぜ文部科学省がそういうお金を出す必要があるんでしょうか。ちょっとわからないんです。
【説明者】
それは、大学における科学技術の知見、成果なりを生かしていこうという観点、あと人材育成という観点もございますので、文科省として大学、あるいは高専なども含めて対象としているところでございます。
【藤原】
これも毎年チェックはされているんでしょうか。評価というか、どれぐらい効果があったかという。
【説明者】
はい。特にこれは、1プロジェクト当たり5年間実施いたしますので、3年目で中間評価を実施しております。また、終わりましてから事後評価を実施しております。さらに、これにつきましては実施途中も課題管理という形で、常にプログラムオフィサーがフォローしてアドバイスなどをしているというところでございます。
【藤原】
そこまで聞いたところで1つ、これはちょっと評価者としては甚だ異例かもしれないんですが、説明者を一度褒めておきたいんですが、実は、事前のレビューで、私が、こういうことをやっているのは文科省だけじゃないんじゃないですかと。ほかの省庁も、大学を拠点としてとか、いろいろな言い方をしているんですが、地域社会の再生を担う人材の創出というようなことで、いろいろなところで予算をとっていますよねというようなことで、各省庁、全部横に見て、どういう予算がありますか。それは表にしてほしいというような要望をいたしました。これをきっちりちゃんと表示していただいているんですね。実は、これは初めてのことで、今日、河野さんがいらしていますけども、自民党が最初に河野さんのリーダーシップでやった仕分けから民主党の第1発目からほんとうはこういう表が絶対出てくることが必要なのに、一度も出されたことがないんですよ。それを最初に出していただいたんです。これはほんとうにありがたいと思います。きちっとやっていただいたので、これを褒めておきたいとまず思うんです。
この表を見ますと、もうお気づきのように、例えば同じような目的で農林水産省が地域における産学連携支援事業というのをやっていたり、それから、文部科学省の中にもよくわからないイノベーションシステム整備事業で地域イノベーション戦略支援プログラムというのがあったりしますよね。それから、経済産業省は地域新成長産業創出促進事業費補助金という非常に長いのであったり、国土交通省にも新しい公共という名前がついていますが、その担い手づくりのための何とかという、こういう各省庁に地域社会云々かんぬん、人材育成云々かんぬんというのがいっぱいあるんですけれども、これって1つにまとめて、自治体に思い切り渡して、地域社会のほうにリーダーシップを握らせるというふうにはならないものなんでしょうか。各省が縦割りになって予算を割られた段階で、連絡があまりとれないようになっているから、それは無理なんでしょうか。それとも、内閣府が全部の予算を握って、そのような意図を持ってやれば、もっと有効に地域社会の再生というのが実際なる、あるいは地域社会の再生を担う人材がもっと強力に出てくるんでしょうか。私は、あまり効果が上がってないように思うんですよ。どうですか。
【説明者】
おっしゃるように、いろいろな事業が並んでいるということはあるかと思います。しかしながら、これにつきましては、内閣官房地域活性化総合事務局の方で全体をまとめて見ておられますので、そういう意味で、総合調整的なことはそちらでやっていただいた上で、かつ各省それぞれの行政目的もございますので、それぞれの必要に応じていろいろな事業が結果として立っていると考えております。しかしながら、矛盾、重複等ない形で効率的にやるという観点は内閣官房の取りまとめの方でごらんいただいており、その中でやっているというふうに認識しております。
【藤原】
文科省の1担当に聞くのはちょっと酷かもしれないんですが、これはまとめて地域社会、つまり、地方行政のほうにどんと渡すと、地域社会が再生するのがもっと加速するということはないですか。何で国が持たなきゃならないんですかね、この予算を。個人的な意見でいいので。どうですか。地域社会に渡しちゃうと、彼らは頼りないからできないということですか。
【説明者】
決してそういうことではないと思うのですが、それぞれの省庁のそれぞれの行政目的で旗を振ってやっていくという観点もあるのかと思います。
【藤原】
そうすると、官庁が縦割りな限りは、こういうことが続きますね。
【説明者】
そこは内閣官房なり、取りまとめのところで矛盾や重複がないように、しかるべき連携が必要であれば、アドバイスをいただきながらやっていくということかと考えております。
【藤原】
わかりました。
【伊藤コーディネーター】
今議論になっていた資料は、皆さんのお手元には来ていませんので、すみません。ご了承いただければと思います。
吉澤さん、どうぞ。
【吉澤】
今の藤原先生のご指摘に少し関連するんですけれども、この推進費の目的として、各府省の施策を補完し、立案する政策を実施するために必要な施策に活用するというのはうたわれていますが、この費用をこの推進費を文科省のほうで持たれること、それによってなぜ他省庁に持たせることに比べて全体を俯瞰するということができるのかどうか。先ほどの藤原先生のお話で、地方に持たせることと比較してどうなのかというご指摘があったと思うんですが、なぜ文科省なのかというところはいかがでしょうか。
【説明者】
この戦略推進費につきましては、内訳をごらんいただきますと、トータルのうちの他省庁に移替えている部分は実際8%ほどで、大半を文科省で執行もしております。また文科省はまさに大学等も所管している省庁でもあり、研究の多くが大学等で実施されているという観点もございます。それから、およそ科学技術関係の経費全体を見渡しましても、3兆6,000億のほどのうちの約3分の2は文科省の予算ということでございますので、そういう意味で、科学技術関係については知見なり、経験なりを文科省として有しているというふうに考えているところでございます。
【吉澤】
そうしますと、市川先生の議論に関連するところでございますが、大きな予備費ということで、3,500億ぐらい別に使えるプールはあると。そちらで本格的な研究をやればいいじゃないかというご指摘に関連して、司令塔としての機能を強化する上でどの研究分野にどれだけの予算を配賦するのか。それを判断する上で、例えば先ほど放射性物質の分布の問題であれば、どういった地域にどれだけの量の、どういった種類の放射性物質が分布しているのかと。それをまず調べることによって、どういった種類の除染技術がどの地域に重点的に必要でといった、さらに大きな研究費、開発費が必要な予算の分配のための調査結果というのが出てくると思われるんですが、そのあたりの本格的な研究の前段階としての予備的な研究費としての位置づけという部分はいかがお考えでしょうか。
【説明者】
まさにご指摘のように、戦略推進費というのは、先導的にまずここで試してみるという意味もございます。そこで、より本格的に実施する段階になるとそれぞれの実施担当の部署、あるいは実施担当の省庁で本格実施をしていただくという意味でも、まずここで総合科学技術会議が方針を決められて、先導的に、試行的にまずやってみるという意味も非常にあるかと思っております。
【吉澤】
最後に1点だけ。そうしますと、機動性を持たせる裏返しとして予算の執行と監督があいまいになるという、表裏の関係があると思うんですが、そこの部分は経営の世界でも執行と監督の分離というのが非常に問題になっていると思うんですけれども、こういった予算の執行と監督の分離というのをこの推進費に当てはめて考えますと、例えば総合科学技術会議が監督という機能を持ち得るのかどうか。一方で、文科省側として、それが執行に集中できるような仕組みになっているのかどうか。そこの監督と執行の分離というところについて、もう一度ご説明をお願いできますでしょうか。
【説明者】
まず、機動的に対応すべきもの、あるいは政策立案の調査につきましてはまさに方針を決めるのが内閣府と考えております。年度途中に何が起こるかわかりませんので、そちらで決めていただくと。執行の方は文科省の予算として文科省でしっかりやっていると考えております。また、かなり細かく実行協議という形で、財務省とも協議を行っていますので、きちんとした執行管理の中でやっているというふうに考えております。
それからもう一つ、方針を既にいただいているようなものに関しましては、総合科学技術会議の方で十分に方針を出されておりますので、前の振興調整費のときも文科省でやれるものは文科省でというご指摘もちょうだいしたわけですが、論点のペーパーにもございましたように、必ずしも戦略推進費の傘の下に置いておかなくても、文科省予算という形でいただいた方針に沿って、きちんと文科省の中で実施するというのが、執行の責任の所在ですとか、管理をきちんとするという観点からも、一つの方向ではないかと考えております。
【伊藤コーディネーター】
コメントシートのご記入をお願いいたします。
少し整理をいたしますが、今日は主に3つ論点が出ているかというふうに思います。1つは、調整費時代からの違いという点の中で、そもそも調整費というものを持つ必要があるのか、個別プロジェクトという予算を持つ必要があるのかという点。もう一つは、評価の仕組みが今のままで甘い状態になっているんじゃないか。もう一つは、個別のプロジェクトが結果的にほかでやっていることとの重複につながるんじゃないかという、主に3つの論点だったかというふうに思っています。
ここに関連して、私から1点確認なんですが、まさに藤原先生や吉澤さんがおっしゃっていたような、ここで俯瞰的に見るということと、実際に個別プロジェクトを、先導的、試行的にやるということの、その先、結果として重複になっているんじゃないかという指摘だと思うんです。考え方としては先導的、試行的と言いつつも、結果的に、今の地域再生の話であったり、吉澤さんの話があると思いますが、もう一つ、例えばですけれども、今やっている事業の中で、農地土壌の放射性物質除去技術というのがある。これは農水省でも森林や農地の放射性物質の除去、低減技術の開発という事業があって、こういうふうに、これは多分、一番最初の論点とつながると思うんですが、お金を持ってまずやろうといった結果、ほかのところでやっていることと重複する。だからこそほんとうに司令塔として必要なのは、お金を持つことということよりも、やってくださいと。こういうことが大事だと。そのときには多分各省でやっているものがあれば、じゃ、ここについて、どうやって肉づけをしていくかというような議論が次に出てくるんだと思うんですが、そこはどういうふうにお考えなんでしょうか。
【説明者】
そうですね。まさに司令塔として全体を俯瞰して、何が現状行われているかの把握を総合科学技術会議の方でしていると考えております。その上で、なおかつ足りていないところや、今突発的に何か新しいことが起こったというところは、まさに機動的、先導的にやっていかないといけないと考えております。その機動的、先導的にやったものも、定常化、本格化すれば、またそれぞれの担当省庁で司令塔が指令することによって実施していくということかと考えています。ですから、まさに、先ほどご指摘のあった、放射性物質の除染の話なども、機動的対応の枠組みで23年度まず数カ月やった上で、本格実施は農水省なりの方に移行していくというやり方をしておりますので、そういうすみ分けができるのではないかと考えております。
【伊藤コーディネーター】
私、最後の確認なんですが、先ほど市川さんからご指摘があった有識者報告書の中で、個別プロジェクト予算ではなくて、政策立案による、足腰予算のみ必要だという指摘の中で、先ほどのお答えが、そうは言っても、ツールとしてやはり必要じゃないかというお話をされていたと思うんですけど、そこはもちろん有識者報告書が絶対というわけではもちろんないという前提で、だから、個別プロジェクトにも必要だというお考えなのか。いや、そうは言っても政策立案の部分、調査研究の部分にできるだけこれから特化していきたいということなのか、そこだけお願いします。
【説明者】
まさに有識者報告書で、個別プロジェクトの実施にかかる予算は持たずと書かれていましたので、そこはそういう理解で読むのかなと考えておりまして、特に方針が決まったようなものについては、戦略推進費の枠組みの中で必ずしもある必要はなく、個々のプロジェクトの実施はそれぞれの府省でやればいいということかと考えております。他方で、まさに先導的なことをやるためにちょっと調べてみるための政策立案のためのお金ですとか、年度途中で何らか突発的な事態が発生して、研究開発という観点で、そこに迅速、機動的に対応していかないといけないということがあったような場合は何らかのツール、お金が、大規模なお金ではなかったとしても必要なのではないか考えているところです。
【伊藤コーディネーター】
市川先生。
【市川】
まあ、ある意味じゃ重なるような話なんですけれども、競争的資金全体について考えると、これは再仕分けのときとかにも、枝野さん、今の経産大臣もいらして、大変激論になったところで、競争的資金の項目が文部科学省だけで19もあると。これはおかしいんじゃないかと。課題解決型とボトムアップの提案型と2つに大きく整理する中でもっとちゃんとしてくださいねという話になって、それが今5つになっているんですね。その点は先ほどの藤原先生じゃないですけれども、よくまとめていただいたなというふうに思います。その上で、その5つの中をちょっと見ていると、例えば科学技術振興機構の中に戦略的創造研究推進事業というのがありますよね。これは今年度の予算額ってどれぐらいになりますでしょうか。
【説明者】
運営費交付金の中ですので、はっきり確定しているわけじゃないですが、480億ぐらいの予算が見込まれていると。
【市川】
545億4,400万円だと思います。これは私のところで持っている競争的資金一覧というもので確認すると、545億円、ここに入っているんですね。これ、名前も戦略的創造研究推進事業ということで、何かなかなか似ていますねという話なんですが、これ、中身ってどんなことをやっておられるか、簡単に説明していただけますか。
【説明者】
戦略創造推進事業につきましては、社会的、経済的ニーズを踏まえて、国が戦略目標というのを定めます。それをもとに科学技術振興機構が戦略領域を設定しまして組織の枠を超えた研究組織、研究体制、バーチャルインスティテュートを形成して、イノベーションにつながる研究開発を推進していくという経費でございます。
【市川】
ですよね。実際に、ライフイノベーションとか、グリーンイノベーションとか、この中にも幾つか項目があって、社会技術研究開発というところには、人文社会科学と自然科学との横断的取り組みにより、社会における具体的な問題の解決を目指すということで、例えば犯罪から子供を守るとか、それから科学技術イノベーションのための政策のための科学であるとか、かなり戦略的なことをここで実はやっておられる仕組みになっているのではないか。その上なぜにして、あえてまた、この当該の科学技術戦略推進費が必要なのかということがちょっと理解できないんですけれども。両者の関係について。これも先ほどおっしゃっておられるように、国の戦略に従ってですよね。
【説明者】
戦略推進費の方につきましては、直接的に総合科学技術会議が方針を決めて、先導的なところをやるというところが非常に特徴になっておりますので、そこが制度としてほかのものと違っているということでございます。
【市川】
もう一つ申し上げますけれども、同じ科学技術振興機構の中に、国際科学技術共同研究推進事業というのがありますよね。これは大ざっぱに幾らぐらい使っておられますか。今年度予算。それじゃお答えしますが、31億4,200万円なんですね。このいただいている資料の31ページ目に新規プロジェクトとして科学技術外交の展開に資する国際政策対話の促進という項目があります。もちろん、これ全部科学技術振興機構がやっておられることと全く重なっているかどうかというのは内容をよく見てみないとわかりませんが、例えばこの中には国際シンポジウムや会議の開催といったような内容も入っているんですね。
【説明者】
国際政策対話の方は、民間団体で実施される国際集会等を支援する経費でございます。
【市川】
こちらの科学技術振興機構、JSTがやっておられる国際科学技術共同研究推進事業についても、例えば国際シンポジウムや会議の開催というのが入っているんですね。そうすると、やっぱり何だかんだいっても仕組みの調整とか制度設計の変更というのは必要なのかもしれませんけれども、そもそも既存の仕組みはあると。ですから、やはりどうしても我々が期待をしたいのは総合科学技術会議には司令塔になっていただいて、全体の資金の配分とか、評価のところをしっかりしていただくと。ただし、具体的に実施されるのは、評価する人が自分で実施するとどうしてもおかしなことになるので、そこは横断的に、先ほどもおっしゃっておられましたように、JSTの中でも横断的な資金というのがあるわけですから、そういったものをうまく活用するような仕組みづくりをせっかく19を5にしていただいたので、もう一歩やっていただくと、お金を減らすとかいう話ではなくて、より戦略的なという名にふさわしいものになっていくのではないかと思います。
【伊藤コーディネーター】
コメントシートを書いた方から回収をお願いいたします。
松見さん、どうぞ。
【松見】
全く別の点ですが、平成24年度の新規プロジェクトを実施するプログラム、当然少なくなっているのですが、過去の継続案件を中止するような場合は国の財政の問題という極めて重要なことと共に、やはりこれほど厳しい競争がグローバルで進んでいますので、日本の若手人材育成ということを、特に若手研究者ですね、彼らを育てていくということも考えないといけない。すなわち財政の問題と人材育成のバランスをとることも非常に重要だと思うのですが、この点は担当省としてどういうふうにお考えですか。
【説明者】
継続プログラムにつきましては、3年、あるいは5年間の実施をするということで計画を立てていただいて実施をしているところでございますし、また、3年目でしっかりした中間評価もかけた上で、特に後半に入って成果が一層ぐんと上がってくると考えております。社会の中で実用化されたり、あるいは成果が出てきたりというのがございますので、継続分につきましては約束された期間、きちんと実施して、きちんと成果につなげていくということが必要だと考えております。
【市川】
ちょっと今の松見先生のご質問に関連してなんですけれども、ちなみに科学技術振興費というのは、例えばこの10年間で見ると減っていますか。
【説明者】
振興費自体は年によっていろいろ伸び幅はありますけれども、増えてきていますが、最近は伸びがとまっているという傾向があります。
【市川】
そうですよね。これ、何か非常に誤解があると思うんですけど、事業仕分けとか、行政事業レビューで、必要な科学技術振興、競争力確保のための予算をばんばん切って、科学技術振興費が日本の国際競争力に耐えられないような規模になっているんじゃないかという誤解がメディアの中にもあると思うんですけど、私はこれで十分かどうかという議論はいろいろあると思いますけれども、少なくともこの10年間、これだけ厳しい財政の中で科学技術振興費については減ってないし、むしろ状況としては増えているような傾向があるということですので、そのところのぜひ有効活用というのをしっかりやっていただきたいなというふうに思います。
【伊藤コーディネーター】
清水先生。
【清水】
お話を聞いてて、この予算が補助と委託と移しかえという3つに大きく分かれている。補助と委託について積極的な意味というのは説明を聞いててよくわかったんですが、移しかえということについても何か積極的な意味があるんですか。
【説明者】
そうですね。執行上、年度の途中で何をやるかが決まってくるような部分については、中身が決まって実施者が決まりますので、いわゆる目未定にしておいて移替えということに積極的な意味があると思っております。しかしながら、継続のプログラムにつきましては、実施者、内容についても配分先等も決まっておりますので、予算の透明性や公正性という観点からいきますと、必ずしも目未定である必要はなく、継続の部分については目定化してもよいのではないかと思っております。機動的に対応する部分、あるいは政策的な調査という年度途中で決まる部分だけは何らか目未定という部分が必要かと思いますが、それ以外については特に目未定で移替えという機能は必ずしも必要ないと考えております。
【伊藤コーディネーター】
よろしいですか。ほかいかがでしょうか。
コメントシートを書き終わっている方、回収をお願いいたします。
南さん。
【南】
全然別個の観点なんですが、ここに公募が入ってくるんですけれども、戦略的な研究というような形で十分戦略性というのが議論された場合に、この公募の範囲というのはどの程度になるのかなというところがちょっと気になるんですね。要するに、戦略である以上は目的とか、期限とか、そうしたものはかなりはっきり出ないとまずいだろうと。そこに対して公募ということになると、かなりアバウトなところが入ってくる可能性もある。もちろん大きな方針を決めたんだから、細部に当たっては当然公募でということになると思うんですが、ただ、戦略的な研究を、しかも機動的に実施する場合には、ある程度戦略を練る以上、基礎的な技術とか、機器とか、人材とかというのは当然情報があるべきですね。これはすべて公募にするというのはどうなんでしょうか。
【説明者】
一部公募でないものもございまして、南先生ご指摘の機動的に対応する部分、年度途中で自然災害等に対応する部分については公募ではなく、総合科学技術会議のほうで指定し、決め打ちで決定していただいています。それ以外のプログラムにつきましては公募要領の中でかなり要件を詳しく定めた形で公募しているという構成になっております。
【南】
そうすると、公募ということはさほど緊急性とか、機動性というよりも、補正を組むまでの時間とか、次の年度の戦略設定に基づく公募研究で十分なんじゃないでしょうか。あえてここに戦略的な経費として積んでおく必要がどこにあるんでしょう。
【説明者】
総合科学技術会議の方で科学技術政策を推進する上で必要ということでプログラムを立てており、それらについてはおっしゃるように非常に緊急だということでは必ずしもないんですが、科学技術政策上、必要だというプログラムがありますので、そういったものは公募の形で実施しているところでございます。他方で、ほんとうに緊急なものについては公募ではなく、指定し、決定する形で実施者を決めておりますので、そういう形ですみ分けと申しましょうか、使い分けていると考えております。
【伊藤コーディネーター】
松見先生。
【松見】
日本は研究に強いけれども、事業化に弱いというふうに国内外で言われているのはご承知の通りで、仰ったように、約3.6兆円もの予算を有効利用するためにも、そして、この第4期計画から強調されている科学技術をイノベーションに結びつけていくためにも、文部科学省は、基礎研究を含めて、アーリーステージの案件が多いとはいうものの、かつ出口に近くなれば当然経済産業省、総務省、あるいは厚生労働省等々の省庁が絡んでくる訳ですが、たとえアーリーステージの研究開発支援といえども、やはり最後にイノベーションで主要な役割を果たす産業界とのパイプ、コミュニケーションというのは非常に意識の面においても、実際のダイアログにおいても重要だと思うのですが、これはどういうふうにお考えですか。
【説明者】
この戦略推進費は、総合科学技術会議が司令塔を発揮し、いろいろな省庁を俯瞰して全体を見渡した上でプログラムを立てているというのがございます。そういう意味で、おっしゃったように省庁ごとの政策目的、分野がございますので、総合科学技術会議でそれらを見渡し、しかるべく連携をした上で、活用している経費と考えております。
【伊藤コーディネーター】
今集計中ですので、しばらくお待ちいただければと思います。
私から、この議論は仕分けの第1弾からほとんど毎回の仕分けごとに議論していまして、同じような論点で議論をしています。最初のご説明にあったように、文科省としてもこういうところを変えてきましたという部分はあると思うんですけど、厳しい言い方をすれば、単なる看板の書きかえともとられない、仕組みとしては変わってないわけですね。補助金があって、委託費があって、移しかえ予算があります。金額としては、もちろん文科省執行分を除いていますので、金額としては落ちてはいるけれども、事業スキーム自体が変わっていない。もともとの2年前の仕分けの指摘というのは、継続プロジェクトをやめればいいということではなくて、継続プロジェクトがなくなった段階で調整費というものをやめようということだったんですね。もちろん、それはその後の文科省の方針の中でこの推進費が出てきたというふうに思うんですが……。考えたときに、やはりここはどこかでもう一度立ち戻って考える必要があるんだと思うんです。だからこそ、今回は文科省がやる公開プロセスでもう一回取り上げられていると思いますので、ここは有識者報告書に取り上げられている部分もありますが、そこの部分の今後の何を改善すべきか、もう少し具体的に、もしお話しできれば、いただきたいと思います。2年前との違いは司令塔機能というものがより明確になってきているという部分は違いが出てきていると思いますので、そこをもしお話しできればお願いします。
【説明者】
はい。まさに改組を踏まえて何らかの改革をしていかないといけないタイミングであるというのはおっしゃるとおりだというふうに考えており、今回もこのレビューにかかっていると認識しております。一つの方向性としましては、有識者会議の報告が手がかりにもなると思いますし、今日いただいた指摘の中でも出ていたことかと思うのですけれども、今のままの姿ということではなくて、より司令塔としてふさわしい姿にということかと思います。ですから、個別の継続分の実施プロジェクトは、必ずしも戦略推進費の傘の下ではなく、2年前に人材の補助金や、産学連携の補助金を純粋な文科省の補助金に変えたような形で、よりシンプルにすっきりした形で実施できるのではないかと思います。残る部分としては数億程度なのかと思うのですけれども、政策調査のためのまさに先導的なことを司令塔がお考えになるために必要な経費、あるいはこの辺は今議論いただいたところではあるのですけれども、科学技術の専門の知見を持った方が年度途中で突発的に起こった自然災害等の事態に対応するための少額の経費、この部分についてのみ、戦略推進費という傘の下で今後も実施するというのも一つの在り方かと考えます。
【伊藤コーディネーター】
藤原先生。
【藤原】
もう一つ、ちょっとせっかくですから、ミクロな話でひとつ聞かせていただきたいんですが、例えば京大の山中先生がiPS細胞をやっていますね。これは国民のだれもがものすごく戦略的な分野だということを知っていますね。僕がもう一つ知っているのは、スタッフが非常に足りない。給料が払えないから、要するに、逃げてしまう。せっかく育てたスタッフが。僕は直接先生からそういうふうに聞いています。例えばこうした場合、国がそこに対して動くというとき、この予算が使われるんでしょうか。それとも予備費が使われるんでしょうか。それとも、そうじゃない経常的な大学交付金のようなものが使われるんでしょうか。この予算って、そういうときに使うものですか。それとも、そうじゃないんですか。
【説明者】
そういった重要な研究プロジェクトにつきましては、やはり国、それぞれの省庁が、それぞれの予算を要求してつけていくというのが原則だと思います。
【藤原】
その場合は、でも、文部科学省の予算ですよね。それぞれの省庁がとおっしゃいましたけど。
【説明者】
もちろんiPSの場合ですと、文部科学省が非常に大きな支援をしておりますけれども、一方で医療応用などにかかわる場合には厚生労働省なども支援すると。それは各省連携で支援していくということになると思います。
【藤原】
そういうふうになるんですね。どの省庁も責任を持たないという感じになっちゃいますね。
【説明者】
責任……。
【藤原】
ばらばらに出していく。要望に対して。だれも責任を持てないじゃないですか。この科学技術の戦略的な意味について。
【田中総括審議官】
よろしいですか。総括審議官をしております田中でございますが、極めて個別のプロジェクトでご質問がございましたから……。
【藤原】
わかりやすい例として言ったんですよ。
【田中総括審議官】
山中先生のように例えば研究者の方とか、技術者の方、短期のつなぎであって長期のものがうまくできないとか、それは研究のやり方でございます。
【藤原】
研究のやり方なんですか。予算のあり方じゃないんですか。
【田中総括審議官】
それで、どんなものがほんとうに山中先生の成果を社会に出していくときに一番いいのかということは文部科学省としてきちんと、大臣、先ほど個別のプロジェクトですから、おっしゃいませんでしたけれども、きちんと文部科学省としても受けとめて、多分、最後のところは厚労省と相談しながらやっていくということになると思いますけれども、研究段階ではきちんと文部科学省……。
【藤原】
そういうときに発動されるような予算ではないんですね。戦略的という意味。
【田中総括審議官】
これは多分違うと思います。それはそれぞれ文部科学省が責任を持ち、最後のところの医療へのつなぎのところは厚労省が責任を持ち、我々が連携して支える、そういうことになろうと思います。
【藤原】
今の説明でも僕がわからないのは、だれがそのことについて戦略的な責任を持つかが全くわからないですね。文部科学省が持つんですか。
【田中総括審議官】
先生がおっしゃっている戦略的な責任というのは……。
【藤原】
だれがどう考えてもあの分野は戦略的に、世界的に大事な分野ですよね。その技術が例えばスタッフが足りないとか、山中先生が一々モチベーションをあれしないとやめてしまうみたいな、そういう短期でつながざるを得ない。おかしいじゃないですか、だれが考えても。それに対してだれが責任を持って、そこに対して手当てを打っていくのかという話です。その予算が、文部科学省、厚労省、農水省、3分の1ずつ集めてもいいんですが、だれが責任を持つんですか。
【田中総括審議官】
今山中先生のプロジェクト、文部科学省が支えてございます。したがって、一義的には文部科学省が責任を持って、先生と相談をしながら進めていくということになろうかと思います。
【藤原】
わかりました。今回の仕分けにかかっているこの予算についてはそういうものとは関係ないということですね。そういう戦略的なことではないんですね。わかりました。
【伊藤コーディネーター】
もう間もなく取りまとめられると思います。もしもうお一人ぐらい、ご意見あれば。
【吉澤】
じゃ、すみません。時間のつなぎに。私が申し上げることでもないと思うんですが、研究開発って一つの単語で語られることが多いんですけれども、研究のあり方というものと開発のあり方というもので、当然マネジメントのスタイルが変わってくると思うんですね。例えば研究であれば、ほんとうに確率は低いかもしれないけれども、もし成功すれば、非常にインパクトがあるようなものを数多くやっていただく。そのために少額だけども、数は比較的多くの先生方に使っていただくと。一方で開発というのは、山中先生のお仕事というのもそちらにシフトしてきている段階だと思うんですが、産業としての出口が見え始めていて、それを使ってどういった方が具体的にベネフィットを得るのかというのが見えてきている段階においては、余計なものをできるだけ排除していって、一つの製品に対して絞り込んでいくというプロセスだと思いますので、研究フェーズと開発フェーズで支援の仕方というものが当然変わってくるべきだと思っておりますので、そのあたり今日お話しする内容ではないのかもしれないんですけれども、今後そういった考え方も入れて、執行というのをやっていただきたいなというふうに思います。
【説明者】
ありがとうございます。おっしゃるとおりでございまして、研究の方はいろいろな試行もあるかと思いますし、開発の方はある程度出口を見据えてという部分もあるかと思いますので、そういった観点も今後十分考えていきたいと思います。ありがとうございます。
【伊藤コーディネーター】
簡潔に一言で。
【南】
戦略的な研究費というのは、ちょっと考えものかな。つまり、研究をやるときには億円単位ってものすごく手間暇かかるんですね。何十人、何百人の人が行ってきて会議をやるとか、大型の機器を買って初めて億円単位で、そうじゃないと、調査研究とか、ほんとうの意味で司令塔をやる分には調査研究、分析のところだと思うんですが、そうすると、ごくごくわずかな費用でもできるんじゃないか。その結果として必要な経費を重点的にやると。そういった流れじゃないかと思うので、具体的な研究費というのはどうかなと思うんですが、その辺はどうでしょうか。幾ら先導的、あるいは機動的と言っても。
【説明者】
そうですね。まさに調査のようなものでしたらほんとうに数千万とか、小さな額でも十分できると思うのです。ただ、その上で本格化して、ここに芽があるとなれば、おっしゃるようにより大きな研究費を投入して、開発段階で更に大きな経費を、というような流れはあるかと思います。そういう意味で、総合科学技術会議がまず政策調査のために必要な経費という部分については必ずしも大きな額が要るということではないと思っております。
【伊藤コーディネーター】
市川さん。
【市川】
仮に総合科学技術会議が今回この通常国会で法案が出るかどうかわかりませんけれども、法案が出て改組された場合に、新しい組織そのものが予算請求権を持ち得るのかどうか、そういう方向になっているのかどうか、ちょっと教えていただけますか。
【説明者】
そこはまだ法案がどのようなものが出てくるかというのは内閣府で検討中と伺っていますので、今の内閣設置法の範囲では大きな予算を持つということはできないですが、ここに所掌事務を加えていくというような形でもし改組がされるのであれば、一定の予算要求ができるというのはあり得ると思います。
【伊藤コーディネーター】
すみません。ちょっと時間がかかりましたが、取りまとまりましたので、まず私から評価結果につきましてご報告をいたします。
科学技術戦略推進費につきまして、廃止という方が2名、抜本的改善が2名、一部改善が2名です。すべて同数の場合というのは取りまとめの方の判断でこの事業の判断をするということになっております。それでは、コメントも含めて、審議官、お願いいたします。
【徳久政策評価審議官】
それでは、本事業につきましては、今ご報告のありましたように、廃止が2名、抜本的改善が2名、一部改善が2名ということですので、当方としては抜本的改善ということで、結論といたしたいと思います。
コメントでございますが、今のご議論の中でございました点ですけれども、重要施策の機動的対応につきましては総合科学技術会議の改組の議論を踏まえつつでございますけれども、その上で総合科学技術会議と調整しつつでございますが、政府として緊急対応のための予備費や補正予算があることを踏まえ、戦略推進費の中にどのような用意をしておく必要があるかとの観点で、そのあり方や規模を見直すということで改善すべきであるということが1点。
それから2点目といたしましては、地域再生、人材創出の点につきまして、地域社会の産業振興や活性化を目的とする他の事業との関係を検証いたしまして、より効率的、効果的な事業のあり方を検討すべきであるというのが2点目でございます。
それから3点目でございますが、総合科学技術会議、CSTPでございますが、その司令塔機能として、府省横断的な判断と調査分析ということによりまして基本方針を定め、しっかりとした評価を行うべきであるということでございます。そのため、各省で行われている類似の事業との関係を整理する等いたしまして、効率的な運用が行われるよう、戦略推進費のあり方について抜本的に改善すべきという点でございます。
以上でございます。
【伊藤コーディネーター】
以上でこの事業につきまして、議論を終了いたします。ありがとうございました。
次の事業につきましては予定どおり15時10分から再開といたします。
( 休憩 )
【髙橋会計課長】
それでは、定刻でございますので、公開プロセス2コマ目を開始させていただきます。
議事に入ります前に、取りまとめ役の神本大臣政務官より、一言、ごあいさつを申し上げます。
【神本政務官】
どうも、文部科学大臣政務官の神本美恵子でございます。
今日は、公開プロセスに、有識者の皆さん方、そしてまた傍聴の皆さん、ネットをごらんの皆さんもご協力ありがとうございます。おくれましたけれども、国会で法案の審査を今までやっていまして、大変申しわけございませんでした。これから参加させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【髙橋会計課長】
議事に入ります前に、今回の評価者の皆様をご紹介させていただきます。順番で失礼いたします。
東京学芸大学客員教授、藤原和博様でございます。
【藤原】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
清水法律事務所の所長、清水幹裕様でございます。
【清水】
どうぞよろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
クレディ・スイス証券株式会社チーフ・マーケット・ストラテジスト、市川眞一様でございます。
【市川】 よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
早稲田大学理工学術院統合事務・技術センター技術部長、齋藤泰秀様でございます。
【齋藤】
齋藤です。よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
神奈川大学人間科学部特任教授、南学様でございます。
【南】
よろしくお願いいたします。
【髙橋会計課長】
那珂市立額田小学校校長、神代光史様でございます。
【神代】
よろしくお願いします。
【髙橋会計課長】
それでは、コーディネーターの伊藤様、お願いいたします。
【伊藤コーディネーター】
コーディネーターの伊藤です。よろしくお願いいたします。
2つ目の事業、お手元の冊子、35ページからになります。原子力教育支援事業委託費です。まず、神本政務官より、事業選定の考え方につきまして、ご説明をいただきます。
【神本政務官】
私から、原子力教育支援事業委託費を公開プロセスの対象事業として選定いたしました基本的考え方について、ご説明いたします。
本委託費につきましては、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえまして、事業のあり方についてどのような見直しが行われたのか、また、これについて外部の視点による検証を行うことが有効と判断いたしまして、選定いたしたところでございます。今後の原子力教育の支援のあり方について、検証いただきたいと考えております。よろしくお願いします。
【伊藤コーディネーター】
それでは、ご担当よりご説明をお願いいたします。
【説明者】
原子力課長の生川でございます。よろしくお願い申し上げます。今ございました35ページからご説明させていただきます。
事業名は、先ほどご紹介がありましたように原子力教育支援事業委託費というものでございまして、平成21年度から開始させていただいております。担当は、私ども原子力課の立地地域対策室で実施してきているものでございます。
予算につきましては、会計区分のところに書いてございますけれども、エネルギー対策特別会計の電源開発促進勘定からお金をいただいて事業を実施してきているものでございます。
事業の目的は、原子力に関する教育の取り組みの充実を図るために、学校教育の場などにおける原子力に関する知識の習得あるいは思考力・判断力の育成のための取り組みへの支援を実施するということで、特に平成23年3月に発生いたしました東電の原発事故を踏まえて、それまでは幅広く原子力についての取り組みを行ってきたわけでございますけれども、23年度からは一般に関心の高い放射線あるいは放射性物質等々に関する事業を中心に実施してきているところでございます。事業概要に書いてございますように、後で詳しくご説明しますが、教職員等に対するセミナーの開催あるいは簡易放射線測定器等の貸し出し、専門家による出前授業等々の事業を実施してきているところでございます。
予算は、平成23年度のところをごらんいただきますと、予算としては5億1,800万、執行額としては5億800万という形になっております。24年度は、これに対して4億2,600万という規模で実施する予定になっているところでございます。
成果目標、活動指標等につきましては、そこに記載のとおりでございます。詳細の説明は省略させていただきたいと思います。
ちょっとめくっていただきまして、37ページ、先ほど申し上げました平成23年度の執行額、5億800万がどういった形で使われているのかについてのフロー図でございます。AからFまでボックスが6つございますが、そこに書いてある金額をお支払いして、こういった団体にそれぞれの事業を実施してきていただいているところでございます。
めくっていただきまして、38ページには、その費目・使途の内訳をつけさせていただいております。39ページには、それぞれの入札の入札者数あるいは落札率を掲載させていただいております。ごらんいただければと思います。
そう申し上げた上で、40ページ目以降に補足資料をつけさせていただいておりますので、事業の中身等について、少し詳しくご説明させていただきたいと思います。
まず、40ページでございます。概要は先ほど申し上げたとおりでございますので、省略させていただきますが、その下の予算額のところをごらんいただきますと、平成22年度は5億2,500万で、全部で8つのプログラムを実施してきたところでございます。
それに対しまして、23年度につきましては、括弧の中と外と、2つ数字が書いてございまして、括弧の中が当初予算の配分でございます。4億7,300万で8つの事業を実施する予定でございましたけれども、東電の事故を踏まえて予算の組み替えをさせていただいております。特に4の放射線測定器の貸し出しの需要が非常に高いということで、どちらかというとそちらに集約していくという観点から、8のポスターコンクールの開催については実施を見送った形で実施してきている。結果として、全体の予算額としては5億1,700万という形で事業を展開しました。
平成24年度につきましては、4億2,600万という予算規模で、全体の予算額が縮減されたこともございますので、1から5までの5つのプログラムを実施する予定になっているところでございます。
以下、41ページ以降は、今、申し上げた1から8までのそれぞれのプログラムについて、概要をご説明させていただくものでございます。
41ページは、1の教育職員セミナーの開催のプログラムでございます。
概要にございますように、教職員等を対象に学校教育の場などでの放射線等に関する授業等に役に立つ内容のセミナーを開催するということで、小、中、高校等の教職員に加えて、教員に準じた者等を対象に開催してきているところでございます。実績をごらんいただきますとわかりますように、23年度は152回、5,000名弱の方に対するセミナーを開催しております。これは、21年度、22年度に比べますと、かなり回数及び対象人員も増えているとごらんいただけると思います。
コースは、小、中、高の校種別のコースと、教育委員会等の要望・要請に応じて開催するコースと、大きく2つに分けて実施してきてございます。カリキュラムにつきましては、講義、実習、ワークショップ等の中身で実施してきているところでございます。
一番下にアンケートを少しつけさせていただいております。「有益な情報は得られたか」あるいは「放射線に関する理解は深まったか」という質問に対して、「ややそう思う」も含めますと、95%近くの方から肯定的な回答をいただいているところでございます。また、「セミナーの内容を授業に活用したいか」という問いに対しては、90%近くの方から「活用したい」という回答をいただいているところでございます。
めくっていただきまして42ページ、2の出前授業等の開催でございます。
概要にありますように、児童生徒を対象に出前授業等を学校の授業を利用して開催するものでございまして、対象としては小、中、高校の児童生徒で、実績にございますように23年度は158回、1万人を超える生徒に出前授業を実施してきた。これにつきましても、21年度、22年度に比べると、かなり数が増えているのをごらんいただけると思います。
授業の展開例の米印で書いてございますが、テキストにつきましては、後で出てまいります副読本を活用いたしておりまして、講師については大学等の先生にお願いしてきているところでございます。
これにつきましても、一番下にアンケートをつけさせていただいておりますが、「放射線について、興味や関心を持ったか」という問いに対して、小、中、高を通じて90%を超える方に肯定的な回答を寄せていただいているところでございます。
次の43ページ、3の課題研究活動の支援でございます。
これは、高校あるいは高専の生徒を対象に課題研究活動への支援を実施するもので、23年度は35校を対象に実施してきております。
事業の流れをごらんいただきますと、1から7まで書いてございますが、まず各学校において課題研究のテーマあるいは実施体制を設定した上で申し込みをいただいて、それに対して有識者から成る選定審査会によって参加校を選定し、選ばれた学校において課題研究活動を実施していただきます。これと並行して、意見交換会あるいは講師講演、見学会なども実施し、セミナーや文化祭等で課題研究内容を発表していただくことも行っていただきます。その上で、6、課題研究ニュース(壁新聞)のような形で成果を取りまとめていただいて、最終的には、成果発表会への参加課題を選定した上で、7にありますように成果発表会においてその成果を発表いただくという流れになっているところでございます。
4は学習用機器(簡易放射線測定器)の貸し出しで、児童生徒あるいは教職員等を対象に放射線測定器を貸し出しするものでございます。23年度は延べの数で4万7,000台、貸し出しをしてきているものでございます。
活用事例にありますように、自然放射線(バック・グラウンド)の測定であるとか遮へいの実験、どのくらいの遮へいで、どのくらいの効果があるのかを実際にはかっていただくという取り組みを行ってきているところでございます。
さらにめくっていただきまして、44ページ、5、副読本の作成・提供は、小、中、高校の校種別に、児童生徒向けの副読本と、副読本に解説・説明や関連情報を加えた教師向けの解説編を作成して提供してきているものでございます。
作成体制に書いてございますように、副読本を作成するための委員会を設置してドラフティングをやっていただいた上で、その下に書いてございます日本放射線影響学会あるいは日本医学放射線学会等々の専門的な機関による監修を行った上で提供してきているところでございます。提供に当たっては、文部科学省のホームページに掲載したり、小、中、高校等に希望部数を配布する形で提供してきているものでございます。
6以下につきましては、先ほど申し上げましたように23年度までの事業で、24年度、実施の予定はございませんけれども、ご参考までにご報告させていただきます。
6の教育情報の提供につきましては、児童生徒及び教職員を対象に放射線等に関する情報をインターネットを用いて提供するということで、アクセス件数をその下につけさせていただいておりますが、23年度については43万2,000件というアクセス数をいただいているところでございます。
その下に例を幾つか書いてありますが、映像資料であるとか図表、イラスト・写真等々をポータルサイトによって提供する形で事業を実施してきているものでございます。
45ページ、7、展示物の巡回等でございます。
さまざまな展示物を全国の博物館あるいは科学館等に巡回展示するとともに、それらを利用した企画展を実施するという取り組みを実施してきてございます。23年度の実績は、延べ39カ所で今、申し上げたような事業を実施してきているものでございます。
その下に幾つか写真をつけさせていただいております。例えば、霧箱を提供させていただく形であったり、いろんな物質から出る放射線を実際にはかっていただくようなパネル展示も実施してきているものでございます。
最後になりますが、8、ポスターコンクールの開催は、22年度まで実施したものでございますけれども、ポスターを通じて原子力や放射線についての意識の喚起を図るという目的の事業でございます。
内容に書いてございますように、原子力や放射線をテーマとしたポスターの募集を行った上で、審査会において入選作品を選出して表彰していく事業でございます。また、4にございますように、受賞作品については、それを活用したポスターを作成して小、中、高校等に配布することも実施してきたものでございます。
以上が、1から8までのそれぞれの事業の概要と実施の実績でございます。
46ページ以降は、それ以外の参考資料でございますけれども、まず、先ほど話題に少し出ました平成23年の東電の原発事故を踏まえて事業をどういうふうに見直したかをご説明するための簡単な資料でございます。
平成21年度、22年度につきましては、上に書いてございますように、原子力を含むエネルギーと放射線等を含めた全体についてを対象にして事業を実施してきたところでございますが、平成23年3月の原発事故を踏まえて放射線等に対する関心が非常に高まってきている状況を踏まえて、23年度以降につきましては、放射線に絞った形で事業を展開してきているものでございます。
次の47ページは、エネルギー対策特別会計の仕組みということで、この事業を実施するに当たって、どの財源を使っているかの概要をご説明するためでございます。
一番上に書いてございますように、ご案内の向きも多いと思いますけれども、電源開発促進税、電気料金1キロワット時当たり幾らという形で徴収された税金を財源にした事業でございます。
下に電源開発促進勘定というのがございますが、大きく電源立地対策と電源利用対策の2つに分かれております。今回の事業につきましては、左の電源立地対策の枠組みの中で実施させていただいているものでございまして、その趣旨は、括弧の中に書いてございますように「発電用施設の設置及び運転の円滑化に資するための財政上の措置」ということを目的としたものでございます。したがって、推進サイドのお金を使っているんじゃないかという趣旨はこういったところにゆえんしていることであると理解してございます。
次の48ページは実施体制で、私ども原子力課あるいは立地地域対策室の位置づけを念のためご説明するための資料でございます。
研究開発局の一つの課に原子力課がございます。原子力分野の科学技術に関する企画・立案・調整を担当してございます。その中にある幾つかの室の中に立地地域対策室がございまして、原子力研究開発施設の設置・運転の円滑化のための事業、具体的には先ほど申し上げました電源立地対策のお金を使った事業を担当して実施してきているものでございます。
原子力課につきましては、例えば核燃料サイクル室で「もんじゅ」等の高速増殖炉の研究開発も実施しておりますので、そういう意味で私どもは推進サイドで、推進サイドがこういうプログラムをやることについてのいろいろなご批判もあるところでございます。
次の49ページは、この委託費の入札状況についてまとめた資料でございます。
22年度からつけさせていただいておりまして、下をごらんいただきますと、22年度は全部で9件の契約件数があったところでございますが、そのうち1者応札であったものが6件あったところでございます。23年度につきましては、全体7件の中で1者応札が3件であった。
こういった状況を踏まえて、上に1、2、3と書いてございますけれども、例えば入札公告期間の長期化、外部ホームページや文科省のツイッターでの入札実施の告知、あるいは教育関係委託事業の合同での入札説明会の実施等々という取り組みを実施させていただいて、24年度では、現在のところ、契約は4件でございますけれども、1者応札は0であるという状況でございます。
以上、事業の中身と補足資料についてのご説明でございます。
【伊藤コーディネーター】
ありがとうございました。
会計課長より、論点の説明をお願いいたします。
【髙橋会計課長】
続きまして、資料の50ページに論点シートを設けましたが、今、説明いただいたうち、特に最後の4枚とこの論点が大体対応しております。
大きく3つ掲げましたが、1つは、この委託費による事業が、そもそも国として行う必要のある事業なのか。仮に国として行う必要があるとした場合に、原発事故を踏まえた見直しが十分になされているのかといった論点があろうかと思います。
2点目は、この事業を、現在は原子力推進を目的とするエネルギー対策特別会計の予算で実施しております。「等」というのは、今、言ったような推進の部局がやっていることもありますが、こういった予算、部署等のあり方が適当なのかどうかといった論点もあろうかと思います。
3点目といたしましては、今、応札状況も見ていただきましたが、1者応札している事業がまだございます。応札者の拡大に向けて、今、契約に関する透明性・公平性・競争性を確保するためのいろんな取り組みをしておりますが、さらなる取り組みが検討できないだろうかといった論点について、ぜひご議論いただければと思います。
【伊藤コーディネーター】
ありがとうございました。
この事業は8つに分かれておりますが、先にコメントシートの書き方として、コメントシート自体は1個の評価でお願いいたします。個別の事業で要らないとかいった指摘がある場合は、コメントの中でご記入いただければと思います。
それでは、ご質問。
市川さん、どうぞ。
【市川】
よろしくお願いします。細かいところをちょっとお伺いしたいんですが、文部科学省のホームページの中に、平成23年11月付けで「放射線等に関する副読本」というページがありますよね。ここには、「保護者、学校関係者の皆様へ」ということで、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質が大量に発電所の外に放出されてしまいました」うんぬんとあって、「できるだけ多くの方々に本書をご活用いただくことにより、放射線等についての基礎的な性質について理解を深め」等と書いてある。
下のほうに、資料のところで「放射線等に関する副読本掲載データ」というのがあって、その下にさらに「放射線等に関する副読本(外部ポータルサイトへリンク)」、「放射線等に関する副読本図表集(外部ポータルサイトへリンク)」というのがあるんですが、「外部ポータルサイトへリンク」をクリックすると、どうなるか、ご存じですか。
【説明者】
すいません。最近、ちょっと触っていないもので。
【市川】
どこにも行かないんですよ。つまり、とまっちゃうんですね。ページがないという結果になるんですね。
私は、原子力推進の方であろうが、脱原発の方であろうが、この状況の中で放射性物質に対する正しい教育をしっかりやっていくというのはだれにとっても大事なことだと思いますし、特に政権のご判断として大飯原発の3、4号機の再稼働を決められたところでもあり、非常に関心の高いところだと思うんですが、それにもかかわらず、副読本でリンクを見ていくとリンクが開かないという事態が果たしてどういうことなのか、ちょっとご説明いただけないでしょうか。
【説明者】
まず、23年度に情報事業としてやっていた「あとみん」というポータルサイトがございまして、24年度、今はもうやっていないんですけれども、実は、リンクを直さなきゃいけないんですけれども、図表等はうちのホームページの中にはあるものの、リンクのはり方を直していないのが実情で、先ごろも、群馬の高校の方の「ちょっと図表を使いたいんですけど」という問い合わせについては、私も探してもらったんですけれども、「ここにあります」とご紹介させていただきました。そういう点では、運用はちょっとまずいかなというところです。
【市川】
その上で、さらにお伺いしていきますけれども、「あとみん」は3月31日で閉鎖になっていますよね。突如、閉鎖になっています。その上で、新たに今、「文部科学省主催放射線等に関する教育の取組への支援」という、ちょっと不思議なポータルサイトができ上がっていますよね。そこには、「教育職員セミナーの開催」、「出前授業等の開催」、「課題研究活動の支援」、「学習用機器の貸出し」と4つ項目があって、それぞれ募集というか、応募の用紙とかがあるんです。ご存じですよね。
【説明者】
はい。
【市川】
とても不思議な感じがしたのは、どこの団体がこれをやっているのかが書いていないんですよ。ちなみに、例えば放射線に対する課題研究を支援しますというところは、「放射線等に関する課題研究活動の支援事務局」と書いてあって、事務局が一体だれなのか、どこがやっているのかは一切書いていない。電話番号とファクス番号だけあって、応募用紙はここにファクスしてくれと書いてあるんですよ。これはまずくありませんか。一応、文部科学省が関与しているような感じはうかがわれるんですけれども、主体がどこかは一切わからないんですよ。これはまずくないですか。
【説明者】
すいません。委託事業ですので、文部科学省の事業として実施しているということで「文部科学省主催」とは書かせていただいて……。
【市川】
ちなみに、このサイトはどこがやっておられるんですか。
【説明者】
それは原文振、原子力文化振興財団がやっています。
【市川】
今のご指摘で、これもちょっとおかしいなと思ったのは、細かいことなんですけれども、「教育職員セミナーの開催」とあって、「サイトポリシー」というのがあるんですね。見ると、免責事項のところに「当協会では掲載内容について注意を払っておりますが、その内容の完全性を保証するものではありません」。この「当協会」がどこかが書いていないんですよ。もし仮にこれが日本原子力文化振興財団だとすれば、「当財団」と書くのが普通かなと。ところが、「当協会」になっているということは、別の組織が介在しているということなのか、それとも財団はご自身のことを協会と呼んでおられるのか、どちらですか。
【説明者】
介在はしていません。
【市川】
これはいろいろご議論があるところだと思うんですけれども、私は原子力はちゃんとやらなきゃいけないと思うんですけれども、ちゃんとやる上では、特に福島第一の事故以降、事ここに至っているわけですから、やはり国としてしっかり責任を持って安全性等について情報の開示をやっていただきたいという中で、例えばサイトを訪ねると先のリンクが飛ばないとか、本事業の募集の項目を見ると、どこがやっているのかさっぱりわからない。私は、これがむしろ原子力行政に対する不信感を高める非常に大きな要因になっているのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
【説明者】
おっしゃるとおりだと思います。至急確認の上、改善したいと思います。
【伊藤コーディネーター】
今の確認をすると、2つ目に出てきた文科省主催というポータルサイトは、この事業の中に入っているんですか、別ですか。
【説明者】
この事業です。
【伊藤コーディネーター】
この事業の……。
【説明者】
特別に事業として立っていませんので、このセミナーならセミナーの中に通っています。
【市川】
ちなみに、これもよくわからなかったんですけれども、要はこのホームページのサイトが「http://www.kyoikushien.jp」になっているんですよ。例えば、ここが文部科学省だったらわかるんですよ。それか、どこかの財団なり協会であったらわかるんですよ。でも、「kyoikushien.jp」なんですよ。これはむしろ、悪い見方をすれば主催者隠しをしているんじゃないかととられかねない内容ですよね。
【説明者】
そうですね。49ページの落札状況にもあるんですけれども、入札をやっていますと、確かに事業者が毎年、結構かわってしまいますので、そういうことも踏まえて、できれば統一したいなというところで、このような形をしているということです。
【市川】
でも、そういう国のやっていることで背景となる事業者がかわること、主体となって実務をやっていらっしゃるところがかわるのはよくあると思うんですけれども、それはそれでちゃんとポータルサイトの中にそういったことをきっちり説明されて、今はどこが責任を持って請け負っておられるのか、文部科学省がそこにどうかかわっておられるのかをきっちりわかりやすく、どなたが見てもわかるように書いていただく必要があるのではないかと思います。
【説明者】
はい、そのとおりです。
【説明者】
おっしゃるとおりだと思います。情報をどこから出しているのかを明らかにするのは非常に重要だと思います。これは基本的には文部科学省の事業でございますので、そういった意味では、文部科学省のサイトでそういう情報提供をさせていただくなり、あるいは申し込み用紙を申し込んでいただけるようなシステムにするのが一つの素直なやり方かもしれないので、それも踏まえて、確認の上、改善したいと思います。
【伊藤コーディネーター】
南先生。
【南】
今のやりとりがすごく違和感を持つのは、委託ですよね。辛くもおっしゃっていただきましたけれども、委託というのは文部科学省が実施する責任者であるわけですから、どんなことがあっても、それは責任主体としてのことを非常に考えなきゃいけないし、このセンシティブにいろんな意味で話題になったときにまだというのは市川さんのご指摘のとおりだと思うんです。だから、その辺はつゆとも誤解を生じないようにというのが、まず第一。
それから、特別会計の電源開発促進勘定で行っていることに対してはどうなんでしょう。もちろんご指摘ありますけれども、やっぱりここも非常に厳しい視点が向けられると思うんですが、それについては、今、何か対応策は考えていらっしゃるんでしょうか。
【説明者】
対応策というよりは、そこは我々にとっても若干悩みであるんです。我々としては、事故以降、特に放射線についてなるべく公平な情報、正しい情報を提供させていただきたいということでいろいろ努力をさせていただいているつもりではあるものの、やはり推進サイドのお金を使っている、あるいは我々自身が推進サイドであるということで、若干バイアスがかかっているんじゃないかという目で見られているのは事実であって、そこは悩みであると考えております。
どういう改善があるのかについては、電源特会が問題であれば、特会以外の財源を求めていくといったことも含めて考える必要があるのかもしれないかなと考えております。そういった意味も含めて、この会でご議論いただければありがたいなと考えているところでございます。
【南】
なおかつ、もう一つは、放射線等ということで内容を放射線に限定している。今、それが許される状況かなんです。原発の問題をどうするかは意見が分かれているということを明確に示す必要はあるだろうということだと思うんですね。それを放射線に限定してしまうことになると、それはやや逃げの姿勢に感じられるような気がするんですが、その辺はどうでしょう。
【説明者】
逃げの姿勢というご評価が正しいかどうかはお任せするしかないと思うんですが、我々としては、今、求められているのは何かと考えたときに、やはり福島の原発事故を踏まえて、放射線について、どういう性質のものであるのか、どういう影響があるのかについてのニーズが非常に高まっていることを踏まえて、放射線に特化した事業をやるのが適切であろうと我々は判断したということだと思います。それに対する評価はいろいろあろうかとは思います。
【南】
そうすると、アンケートの中では非常によくわかった、理解が深まったということなんですが、逆に不安だとか、例えば除染の問題や系統的な被ばくの問題といったことに対するアンケートはとられているんでしょうか。
【説明者】
特にとっていません。
【南】
理解が深まった、だから効果があるというよりも、不安に対してこたえるのが国の義務だと思いますし、どちらのということでは、非常に難しいことなので私自身もそのときどきで考えますが、やはり不安の解消というのは非常に大きなことだし、それを受講する人たちのモチベーション、受講する動機づけもそこが一番大きいんじゃないかということなので、この辺の成果指標的に、アンケートでこれだけのもので効果がありますよというのはちょっと一方的かなというところなんですが、この辺のアンケートは変わらないんでしょうか。
【説明者】
副読本を配布した際のアンケート、自由記述がありますので、そういうもの等々を今、まとめているところです。そういう中で、さまざまなご意見はいただいております。
【伊藤コーディネーター】
市川先生。
【市川】
お金がどこから出ているかという話があって、電促税から特会を通してという話がありましたので、ちょっとそれに関連するところなんですけれども、原子力関係、放射線関係、放射性物質等の関係についての教育費ということで、文部科学省が教育等に関して出されている費用はこれだけですか。
【説明者】
委託費だけですかということですか。
【市川】
そうです。委託費だけですか。
【説明者】
交付金もございます。
【市川】
そうですよね。原子力・エネルギー教育支援事業交付金というのがありますよね。これは、24年度、幾らですか。
【説明者】
3億です。
【市川】
この交付金が、例えば教職員の方の講習に使われているようなケースはありませんか。
【説明者】
使われています。
【市川】
それはどこがやっておられますか。
【説明者】
交付金のほうは、当然、都道府県にお渡ししますので、都道府県がエネルギー、原子力に関する教育で必要な教育の内容や方法を主体的に選んで実施していくということです。ですから、どこが使っているかは都道府県に確認しないとわからないんですけれども。
【市川】
あるところで、教員免許更新講習会にこの交付金を使われてやっておられる、教員向けのいわゆる放射線等の教育講習みたいなのをやっておられるようで、これはどこがやっておられるのかと見ると、放射線利用振興協会がやっておられますよね。そこを見ると、交付金を使ってくださいと書いてあるところがあって、「開催にあたっては『原子力・エネルギーに関する教育支援事業交付金』の活用をご検討されてはいかがでしょうか?」という書き方がされている。もちろん、交付金と補助金は性質が違うのはわかるんですけれども、事ここに至っても、まだお財布2つでやっているのか、むしろこれはしっかり統一して、国として教育現場においてどういう放射線、放射性物質に対する教育が行われるのかをやられるべきではないかとも思ったんですが、いかがですか。
【説明者】
そのとおりで、委託費ですから、国が主体となって事業をしております。ですから、副読本もつくり、セミナー等々も国が、文部科学省が行っていく。ツールをつくるという部分は委託費でやっております。一方、交付金は各都道府県にお任せする。いろいろな地域地域の特性等々もあると思いますので、その中で効率的なものを実施していくというところで分けてはいます。おっしゃる意味では、一緒になることはできるかどうかは、また今後の課題ではあると思います。
【市川】
これは申し上げるまでもないことですけれども、電気事業法にしろ、原子力基本法にしろ、原子力損害賠償法にしろ、基本的に原子力政策、政策としての原子力というのは国に一元的な責任があることになっていますよね。地方自治体がこれに絡んでくるのは、あくまで電力事業者と立地自治体の皆さんの間の協定であって、政策としては国に一元的に権限がゆだねられているという仕組みになっているわけです。そういう意味では、この非常に不幸な事故をきっかけに原子力ないしはエネルギー、ないしは放射性物質、放射線に対する教育もやはりきっちりと一元化していただいて、交付金で地方自治体にお任せするよりは、むしろ国としてどういう教育をしていかなきゃいけないのかをご検討いただければなと思います。
【伊藤コーディネーター】
いかがでしょうか。
藤原先生、どうぞ。
【藤原】
今のに関連するんですけれども、いずれにしても、原子力は絶対安全だよとPRしていた主体である原子力課が、看板をかけかえて、放射能とは何かというふうに教育をし直している。そうしないとやっていられなくなったという、実に窮余の一策ではないかというのはだれの目にも明らかなので、前提として、それはもうそれでいいじゃないですか。では、どうするのという話だと思うんです。放射能をきちっと教育することはものすごく大事だと思います。そうでないと、ほんとうに過剰反応で、抗菌グッズばやりの日本で、「放射能」とつく、「放」がついたら全部危険みたいになりかねないですし、正確に知ることがすごく大事だとは思うんです。それも、おそらく国民的にはみんな納得することだと思うんですよね。では、どうするかという話について、3つだけ質問したいんです。
まず、とにかく原子力の推進母体が放射能教育というのはないんじゃないのということは、課長も、みんな思っているわけですよね。説明していても、何かちょっと歯がゆいところがあったりなんかして、その態度は非常によくわかります。そうすると、仮に教育であれば文部科学省だとすると、原子力課長に聞いてもしようがないんですが、政務官なのか官房長なのか、これは、別の部署だとしたら、どこでやれるんですか。ちなみに、参考意見で、1問目の質問に答えていただけますか。
【神本政務官】
まさに、今日のここでの公開プロセスで皆さん方のご意見を聞いた上で考えていかなきゃいけないと思っています。
これは私の全く個人的な考え方ですけれども、さっき課長が言いましたアンケートの文章のところ、記述をずっと読ませてもらったんですが、学校現場がこれを実際に実施するときには、例えば中学、高校で使うときはどの教科でしていいのかがわからない。同じ理科の先生でも、自分は原子力、放射線の専門ではないというのが一つ。
それから、被災地、事故が起きた福島などと、そうではないところでは随分と子供の温度差もありますので、それに対してどんなふうに扱ったらいいのか。だから、まさにこの副読本自身も非常に不十分だと私は思っていますので、改訂するとすれば……。
それから、藤原委員がおっしゃったように、放射線に対する偏見や差別や過剰反応もありますので、そういうことについては、単なる理科等の教科の授業でいいのか、そうではなくて、人権や道徳も含めたところで、カリキュラムにどう位置づけるか。あるいは、教育内容をどうするかということは、まさに原子力課ではなくて、初中局も含めた全体のところで考えなければいけないなと。これはまだ私の個人的な考えですので、ぜひお知恵をいただきたいと思います。
【藤原】
わかりました。
もう一つは、委託先が、やはり原子力推進の財団や協会ですよね。これは本来、おかしいわけですが、おそらく通常の大学や出版社などには頼めない事情、つまりそういう専門家がいないということなんだと思うんですが、それは今でもそうですか。それとも、例えば2年、3年したときには、仮に大学あるいは出版社なども応札してきて、そういうところに任せていくことも考えられるんでしょうか。
【説明者】
まず、応札の状況なんですけれども、24年は株式会社が応札しました。残念ながら落札には至らなかったですけれども、24年は初めて株式会社が入ってきました。また、副読本やいろんなセミナー、出前授業について、中国地方のある大学から出前をやりたいんだ、副読本をくださいみたいな問い合わせとか、地域地域の高等教育機関もそういうことにトライしようという動きは実際、あります。
【藤原】
大学の先生で専門の方がいらっしゃらないというほうがおかしいですよね。それは寂しい話ですね。
もう一つだけ聞きたいんですが、初動で5億円ぐらいかけていて、うち2.5億円が機器の購入なんでしょうかね。機器の貸し出しに大体半分、2.5億円ぐらい使っていますよね。これは機器を購入しているんですか、それとも購入は財団や協会がやっているんですか。
【説明者】
Bのところですね。
【藤原】
はい。
【伊藤コーディネーター】
多分、35ページの単位当たりコストを見ていただいたほうがいいと思います。
【藤原】
いや、40ページでもいいですよ。40ページの学習用機器の貸し出しというので2億5,000万ですよね。
【説明者】
はい。
【藤原】
これは買っているんですか。
【説明者】
買っています。
【藤原】
買っている費用だから、こうなっているんですか。
【説明者】
そうです。
【藤原】
ということは、何台、買っているのか知らないけれども、これ以降は、例えば10年ぐらいはそんなにかからないということですか。
【説明者】
そうですね。23年と、24年も見ていただくと2億3,000万とちょっと大きいですけれども、23年度で2,300台、購入していまして、そのぐらい24年度も購入していけば、皆さんのところには届くのかなと。
【藤原】
例えば25年度、26年度は、要するに機器の購入ががっと減れば、全体は減るということですか。そういうふうに見ていいですか。
【説明者】
そういうことです。更新時期までは、また少しはおとなしくなる。
【藤原】
ということですよね。あの機器は、例えば10年とか、もつんですかね。
【説明者】
10年はもちますね。
【藤原】
そんなものですよね。わかりました。
以上です。
【伊藤コーディネーター】
今の関連ですが、購入されたのは2,300台ですか。
【説明者】
23年度は。
【伊藤コーディネーター】
それで、実際に貸し出しされているのが、35ページに出ているように4万7,000台ということですか。
【説明者】 はい。延べですね。回転しています。
【伊藤コーディネーター】
2,300台を……。
【説明者】
その前に買ったのもありますから。
【伊藤コーディネーター】
今、全部で何台ぐらいあるんですか。
【説明者】
8,000弱ですね。
【伊藤コーディネーター】
市川先生。
【市川】
出前授業について、細かいことをまたお伺いしたいんですけれども、平成22年度は出前授業は何回やっておられますかね。
【説明者】
54回。
【市川】
平成23年度が何回でしたっけ。
【説明者】
158回です。
【市川】
平成22年度は出前授業が5,540万円、23年度は4,319万6,000円ですよね。
ちょっと不思議に思ったのは、22年度が54回だとすると、単価で出していいものかどうかわからないんですけれども、1回の単価は100万円を超えるんですよね。23年度は158回で、単価で計算すると27万3,000円になるんですよ。そうすると、1回27万3,000円という価格が適正かどうかも正直よくわからなくて、私は非常に高いように思いますけれども、さらに22年度を見ると、1回100万円を超えるような出前授業というのは一体どういうものなのか。価格が下がった理由と、何でこんな価格差があるのか。固定費が高いということかもしれませんけれども、その辺、ご説明いただけないでしょうか。
【説明者】
出前授業ですよね。まず、以前は原子力を含むエネルギーを担当する講師の方と、放射線を担当する方がいらっしゃいます。要は、講師の数が多かったんです。23年度は、もう放射線に特化しましたので、放射線を扱う講師の方だけになる。あとは、事業開始時期が23年度はちょっとずれ込んで、おくれましたので、その分で経費が上がっていないということがあります。
【市川】
それでも、年によって単価にしたときの1回のコストがそんなに違うのはちょっと納得できないんです。だって、多分、講師の方が1人になるか2人になるかは、どんなに多くてもせいぜい数万円の違いだと思いますので。
【説明者】
2人が1人になったんじゃなくて、3人が1人になったりとか、それはあるんです。
【市川】
3人が1人だとしてもですよ。
【説明者】
あとは、開催場所を近くに集めて効率よく回るとか、そういう工夫もしております。
【市川】
それにしても、どうしてか、今のご説明ではちょっと納得いかないんですが、それに加えて、23年度が158回で単価が回当たり27万3,392円、これはどうなんですかね。私は、一般的に、学校という設備があって、そこに講師の方が行かれて、何らかの出前授業をされてというベースで考えると、何かものすごくコストが高い印象になるんですけれども、そこらあたりを少し細かく説明していただけませんか。
【説明者】
毎年、そうなんですけれども、出前授業を行うに当たって、今年は特にありますけれども、当然、副読本をベースとして、その年のテキストをつくっていく。今年はこういうテキストでやりましょうということで、テキスト作成の委員会もつくって、取りまとめて、23年度はこれでいきましょう、24年度はこれでいきましょうという部分等々もありますので、単に出ている部分ではない経費、先ほどちらっと言いましたけれども、あまり運用がよろしくないポータルサイトですけれども、そういう経費も若干入ってもいます。
【市川】
でも、おかしいですよね。だって、昨年度に関しては、この副読本を基本的には活用されていたのではないですか、少なくともどこかのタイミングで。数ががっと増えたのは……。震災は年度からいえば一昨年度ですし、その副読本を活用されていたんじゃないですか。
【説明者】
24年度からなんですね。ご存じのとおり、副読本は10月にアップさせていただいていますので、出前は昨年は9月に入ってから動き出したんですけれども、その時点では副読本はなかったんです。ただ、同じコンセプトでテキストはつくろうということでやっておりました。今年は、今ある副読本でというのがベースになるので。
【市川】
でも、細かいことにこだわってすいませんけれども、9月から始めましたと。でも、11月には副読本ができているわけですよね。
【説明者】
11月に。
【市川】
すると、少なくとも11月のどこかのタイミングから以降の分については副読本はあったことになる。
それと、もう一つ、今のお話でやや気になるのは、副読本ができる前に、少なくとも似たようなもので形の上では別につくっていて、それにもコストをかけたと聞こえるんですけれども。
【説明者】
副読本のようなものはあれですけれども、指導方法や教育をする内容、方法につきましては、複数の講師の方が行きますので、質を同じように同じようにしなければいけないので、そこはしっかりテキストなり何なりは同じようにして行く努力はさせていただいております。副読本は副読本としてありますけれども、それをどのように出前へ行って教えていくかというときについては、副読本をただ読んでいるわけにはいかないので、こういうふうに進んでいきましょう、ここのときはこうやっていったほうがいいですねというところで、具体的な出前の中身を複数の、多くの講師が共通してみんなできるようなことはしております。
【市川】
それでも、このコストの説明にはなかなかなりにくいかなと。具体的にP/Lなどの中身を見ているわけではないので、外形的にしか言えませんけれども、コストがかなり高いなという印象はぬぐえないところではあります。
【説明者】
その辺は、入札をやっておりますので、これから事業の中身も毎年、変わっていくのかなと思うんですけれども、見直しはしていくんだと思います。
【市川】
ちなみに、港区なんかが港区内の中学校に対して、大学の連合体がつくっておられるコンソーシアムの方の派遣を依頼する形で放射線、放射性物質に対する出前授業をやっておられるんですね。そこは港区のホームページに出ているんですけれども、コストまでは出ていなかったです。ただ、ほかも調べると、結構いろんなところがかなり廉価ではないかと思われる水準でやっておられるわけで、そういう意味ではもう少し工夫の余地はあるという印象を私は持っています。
【伊藤コーディネーター】
コメントシートを書きながらでお願いいたします。
ほかの方、いかがでしょうか。
清水先生。
【清水】
講師の選択というか、だれかが教えるわけですよね。そういうのは受託者に任せっ放しなんですか、それとも文部科学省が何かの形で関与されるんですか。
【説明者】
一応、リストアップは受託者がします。
【清水】
そうすると、全部任せるという形になっているわけですか。
【説明者】
一応、確認はします。
【伊藤コーディネーター】
南さん。
【南】
その辺の確認で、入札の方法が49ページに書かれているんですが、「一般競争入札(総合評価落札方式)」、この辺が非常にわかりにくいんです。総合評価のレベルというのは、例えばこちらのちょっといただいている副読本なんかを見ると、著作・編集の放射線等に関する副読本作成委員会というのは文科省で指定するのか、そこまでも含めて総合評価になっているのか。そうした本来、競争条件があるべきところにまで客観化されているのか、あるいは総合評価ということで、一般競争入札とはいいながら、中身の問題や編集委員会、講師の特定の名前というか体制まで含めて、どの辺までが総合評価になっているんでしょうか。この辺の透明性がかなり重要だなと思っているんですが。
【説明者】
入札時にはその委員会はございませんでしたので、入札する際に委員会のだれだれを、我が社はこの先生とこの先生でいきますみたいな提案はなかったんではないかなと。基本的に総合落札なので、業務の内容とその実施方法、受託者が業務をどういう体制でやっていきますかというあたりを書き込んでもらう。
【南】
そこが、一般競争入札といいながら、受託のところが全部、24年度で1つ、大阪科学技術センターになっているとか、23年度で日本生産性本部と幾つか例外はありますけれども、基本的には日本原子力文化振興財団がとっているというところと総合評価方式というところが、なかなか説明し切れないと思うんですよ。一般競争入札であるならば、当然のことながらコンテンツは決まっているし、あとはデザインの問題だとか、非常に客観的な部分で判定されるんだろうと思うんです。でも、ここまで落札者が決まっている。先ほど株式会社が応札したけれども残念ながらとおっしゃっていますが、どこまで裁量の余地を応札側に与えているのか、しかもそこをだれがどういうふうに判断するのかが、総合評価方式は非常に難しいところがある。これはもちろん仕様書その他を見なきゃわからないんですけれども、そこはどうでしょう。
【説明者】
1つ、端的な事例としては、総合評価は価格点が1に対して技術点は2、1対2の割合になるんですね。技術点を高く見る。その割合で総合の点数を決めて落札を決めるという制度なんですけれども……。
【南】
価格と技術だけですか。
【説明者】
価格点と技術点。技術点というのは、先ほど言った、どういう業務の体制でやります、どういう業務の方法をやっていきますというところについて、うちが提示した仕様書に沿って書き込んできたものを出していただいて、基礎点はクリアしているか、加点すべきところはあるかでつけさせていただきます。その技術点と、通常の価格をいただいて、その点数を一緒にしたところで判定するのが総合評価になっています。
【南】
じゃ、中身は一切というか、コンテンツのところだとか編集体制は問わないということになりますか。
【説明者】
編集体制?
【南】
教科書のように検定制度を設けろという意味では全然ないですけれども、要するにクオリティの問題だとかがありますよね。
【説明者】
そういう意味で、23年度の副読本に関しましては、実はもう既に契約しております。もうこれは事実なので、落札をした業者と、当初、考えていたものの中身が事故でがらりと変わりますので、実際に放射線に特化した副読本をつくろうということで委員会をつくり、どういう形でいこうかということはそこで進めていったので、ちょっとイレギュラーはイレギュラーであったと思います。
非常に興味深いのは、よく思われるのは、技術審査で技術点が一番高いところがそのままとっていくのかなというと、実は今回、調べてみたらそうではなくて、幾つかでは技術で1番をとっても、価格点がちょっと低いところ、2番目がとっていくという事例も見受けられます。ですから、単に技術をつけるときにどうこうするということではなくて、あくまでも総合評価というルールに基づいて実施はしております。
【説明者】
すいません。念のため。総合評価落札方式というのは別にこの事業だけでやっているわけではなくて、一般的にあるやり方で、やり方についてもルールが決まっているので、そのルールに従って我々は実施させていただいている。
さっき、だれが選ぶのかというお話もあったんですが、これも外部有識者の委員会をつくって、そこでさっき言ったような中身と金額を見て、最終的に選んでいただく。だから、役所で選んでいるということではなくて、そこの委員会で最終的には評価していただいて、それに従って落札者を決めているというシステムになっていると思います。
ご指摘のあった原文振がいっぱいとっているじゃないかというのは、我々も認識をしています。これは何とかしたほうがいいんじゃないかという問題意識は我々も持っているんですが、逆に言うと、我々はそれをマヌーバできないということでもあるんですね。だから、そこで審査していただいて、その結果に従って我々は契約を結んでいるのが実態にはなっているということでございます。
【伊藤コーディネーター】
藤原先生、どうぞ。
【藤原】
先ほど政務官がご指摘のように、全国各地でこの教育に対するニーズが相当違うと思うんですよね。あまり一律には対応できない。そういう中で、僕は3つぐらいのケースで言いたいんです。
1つ、例えば原発の是非やがれきの受け入れの是非みたいなものは、中学生、高校生にはぜひディベートしてもらいたいんですね。和田中のよのなか科では今、もう既にやっていますし、この間、NHKでも報道されていましたけれども、代田校長が、「あなたが市長だったら、がれきの受け入れをしますか」というディベートです。正解が一つではない問題なので、そういうディベートはこの機会に絶対やってほしいんです。それは総合や道徳でできるわけなんですね。これは学校長が判断すれば、あるいは先生が判断すれば、別に法律とか何かを改正しなくても、予算がつかなくても、今でもできるんですね。
2つ目の問題は放射線についての理解なんですが、校長がよっぽど詳しけりゃ別だけれども、基本はやっぱり理科の先生だと思うんですよ。そこで聞きたいんですが、日本の理科の先生はすごく優秀だから、ちょっと研修を受ければある程度のことはできると思うんですけれども、そのような予算、つまり研修を受けて、放射能について今、得られる知識を得ておく、それを授業に生かせるようにするという研修を受けるような予算は初中局のほうに組まれているんじゃないかと思うんだけれども、違うんですか。予備費とか初中局の通常の経常予算、あるいは復興の予算に一部、入っているのかもしれないけれども、それはどうですか。
【説明者】
すいません。局が違うので、ちょっとわからないんですけれども。
【藤原】
官房長、どうですか。それぐらいの研修の補助みたいなものは入っていますよね。どうですか。
【前川官房長】
いや、放射線に特化したようなものはございませんですね。
【徳久政策評価審議官】
ないです。放射線に特化したようなものはございません。ですから、これまで、この事業である意味ではやっていたということは1つございます。
【藤原】
それを抜くと……。だって、これができた学校も3万校じゃないでしょう。
【徳久政策評価審議官】
ただ、1つございますのは、ご案内のように、今年から実施されました中学校の新しい学習指導要領では、理科に放射線の内容が入っています。ですから、そういう内容について新しい内容を付加した場合には、国が国費を出すというよりも、それぞれの任命権者なり設置者、研修権者のほうで、そういう理科全体についての研修を行う中で、放射線の部分についての理解を深めるような内容も入っているということはございます。
【藤原】
今年からの新指導要領で、新しい教科書には、去年の秋に放射線を入れましたよね。
【徳久政策評価審議官】
入れました。
【藤原】
だから、全部、教科書に入っているから、それを先行して授業することは可能なんですよね。それも、そんなにお金をかけずにということですよね。もちろん、教材としてカウンターが必要であれば借りてくればいいという話ですよね。
【徳久政策評価審議官】
そうです。
【藤原】
おそらく、理科の先生の出身大学なんかでは、こんな大事なことはないから、普通、ちょっと気を利かせて、教員養成系の大学であれば、そういうセミナーをやりますよね。やらないほうがおかしいと思いませんか。補助金が出る、出ないじゃなくて。これだけ大事な局面で。
【徳久政策評価審議官】
おっしゃるとおりです。理科でいうと、理科教育について、都道府県や市町村単位で理科の先生方が集まった教員の研究組織がありますので、その勉強会で、こういうのは一番ナーバスな問題なので、おそらくやっている。
【藤原】
絶対やっていますよね。補助金がいく、いかないに関係なく。
【徳久政策評価審議官】
いくか、いかないかにかかわらずです。
【藤原】
そうですよね。それは、僕からすれば、理科の先生たちは、1人1,000円を自分で出しても絶対やっていなきゃおかしいですよ。
もう一個は、福島の事情はこれとは違って、ものすごく複雑で、一律に何かの教材を与えるとかいうことは全くなじまないと思うので、現地の子供たちや先生たちはほんとうに何を望むのかについては、二次、三次補正などの文科省の復興予算に入っているんですか。
【徳久政策評価審議官】
特にないですね。ただ、ないというか、実際問題として、復興予算の中で、いろいろ地域の実情を生かした事業を組んで手を挙げれば、そういうところに採択されている例はあると思います。一律に放射線教育の福島版の予算ということではありませんが、ちょっと手持ちのデータを持っておりませんけれども、多分そういう事業を採択されている例があると思います。
【藤原】
多分、福島の自治体にいっている予算で、そのようなことをしようと思えばできる予算は、補正予算でいっていますよね。
【徳久政策評価審議官】
そういうことです。
【藤原】
了解しました。
【伊藤コーディネーター】
コメントシート、書き終わっている方から回収をお願いいたします。
少し整理いたしますが、この事業、問題意識は多分、ご説明されている方も共通している部分があると思います。どこがやるかという主体の部分、また実際に受けている団体が過去の原子力を推進していた団体になっているのをどうやって変えていけるか。また、まさに情報発信、情報提供が重要というご説明と、一方で実態はホームページがつながっていないという意味での問題、実態が乖離しているというところ。そして、高コストになっているんじゃないかという部分が主な論点だったかと思います。
私から1点だけ。コストの部分で考えたときに、原子力文化振興財団は有料でも独自で講師派遣をやられているんじゃないかと思うんですけれども、そことの比較はされていないんでしょうか。
【説明者】
特にやっていません。
【伊藤コーディネーター】
とした場合に、2点あって、国として国の役割はどこかというところで、必ずしも講師を派遣することが役割なのか。もしかしたら、副読本であったり、今、子供たちに伝えなきゃだめな情報を提供して、あとは外に、学校であったりこういった団体にお願いするというやり方もあるんだと思うんです。その中で、原子力文化振興財団が独自にそういった講師派遣をやっている中で、ほんとうに講師派遣まで国がやる必要があるのかについては、いかがでしょうか。
【説明者】
そういう意味では、原文振だけでなく、ほかの団体もそういうセミナーなどはやられているところがございます。ある意味、各都道府県は交付金があればできるかもしれない部分もあると思います。
【伊藤コーディネーター】
この事業でやっていないものがほかにあるというのが今のお答えだと思うんですが、この事業として委託としてやる必要があるのかというところはいかがなんですか。
【説明者】
今までは、とにかく文部科学省として放射線に特化しようということで、うちのスタンダードと言ってはあれなんですけれども、まず初めの形を文部科学省でつくらせていただきました。そういう意味では、我々がやるべきことはあったんだと思います。
【伊藤コーディネーター】
ちょっとわからないんですけれども、今のは、23年度だったり今年度は必要だというお答えにはなると思うんですが、今後、必要だというお答えにはならないんだと思うんです。
【説明者】
そうですね。とにかく、今後のことに関しては、我々はやはり原子力の推進部局でありますから、これからの原子力の政策の方向性等を踏まえて事業を進めて、考えていかなきゃいけないので、今、単純に原子力教育は必要かどうかということは、なかなか難しいと思います。ただ、フェーズが変わるかもしれませんけれども、やっぱり放射線とか、原子力教育というものは必要だとは感じております。
【伊藤コーディネーター】
私が今、お聞きしているのは、そこの部分は国の役割として必要だという前提の中で、講師派遣というツールまで国が委託してやることが必要かどうかなんです。国の役割として、考え方によっては、副読本であったり情報を提供することにとどめて、その使い方は地方であったり各団体に任せるという考え方もあると思うんですが、そこについてお聞きしているんです。
【説明者】
まずは、今までは必要だったと思います。先のことはちょっとなかなか言えないのでわかりませんけれども、やはり今、先生方もあれですけれども、ほんとうに各大学や、港区のお話もありましたように、やろうとしている方々や団体は実際、あるんです。それがどういう内容かどうかは使う方が選んでいっていただければ、それは教育というかツールとしてはいいわけです。我々は、一応、原子力を推進する立場ですけれども、その上で放射線とか、そういうものの理解を進めていきたいということ、また一面、文部科学省という教育行政をあずかるところの一部署でもありますから、まずは、いい、悪いは別としても、一つのツールとしてそういうものはつくっていこうということで今までつくってきたのは事実でございます。
【伊藤コーディネーター】
多分、今は、推進部局かどうかは一たん横に置いて、まさに後者の教育行政を担う立場として、どこまでが国の役割かというふうに少し切り離して考えたほうがいいのかなと思うんです。
もしご意見等があれば、いかがでしょうか。
【南】
その切り離しは、この実績数字からいった場合に、結構厳しいですよね。だから、これはやはりもう国の議論ですので、事業というよりも政策議論になると思いますが、国として、先ほど市川さんがおっしゃったように、今のところ、一応、大飯も含め、原子力を当面はある程度、推進しなきゃいけないということがもし国策あるいは政策としてなり得るのであれば、それに対する教育をどう考えるのかは、文科省の特に教育のところで考えなきゃいけないところだと思うんですよね。だから、この事業は、今の時点でいうと、非常にあいまいになっちゃって要らぬ誤解を生むところがすごく大きいと思うんですね。かつてはよかった。原子力推進で、エネルギー政策も全部含めてと。でも、3.11以後だと、これだけ議論が沸騰している中で、国策としてどうするのかも問われているし、そこの中における教育の事業で見ると、これはあまりにも少ないんですよね。部分でしかない。でも、これだけのことが際立ってしまうと、文科省としてどういうスタンスで臨んでいるのかは、これだけ小さな割合でも問われるわけで、ここはやはりもう少し政策としての整合性をとるべきかなとは感じましたね。
【伊藤コーディネーター】
神代先生、もしご意見がございましたら。
【神代】
やはり原子力の放射線に関しては教育が必要で、その部局をきちんと、例えばでいうと、私自身も、初等中等という課がきちんと予算措置して、都府県によって重きを置いている部分の温度差がないように考えていかなきゃならないんじゃないかな、そういうことをお願いしたいなと思っています。
以上です。
【伊藤コーディネーター】
市川先生。
【市川】
もうシートも出してしまいましたし、これはまさに意見です。
南先生がおっしゃっておられたことにもかかわるのですが、この夏に政府として、内閣として、エネルギー・環境会議において革新的エネルギー・環境戦略を長期的なエネルギーの計画として出されますよね。その中で原子力がどう位置づけられるのかにも影響を受けるのではないかと思いますが、やはりその段階で原子力、放射性物質、放射線に対する教育をどうしていくのかを一体的に検討していただいて、その中でどの部局がやるべきなのかという議論を少し上のほうからしていかないと、中途半端だというご意見がありましたけれども、担当部局だけで、一応、教育しなきゃいけないからということでやると、どうしてもこういう話になると思うんですよ。でも、結局、それは、申しわけないんですけれども、やっていますというエクスキューズにしかならなくて、それがどういう形で教育として広がっているのかについては、実はあまりわかりませんという世界に入っちゃうので、それは文部科学省としても政府としてもきちっと考えていただいてやっていただくべきことではないかなと私は思います。
【伊藤コーディネーター】
藤原先生。
【藤原】
今の市川さんのに絡んでコメントするんですが、教材については、今、もう民間で相当いいものがいろいろ出てきていますよね。例えば新聞社、ちょっと例を言えば『AERA with Kids』というのにすごい特集が組まれていましたし、池上彰さんだって、さんざんテレビで解説しましたよね。そういうのを使えば、相当できるはずなんです。僕は、原子力課がこの2年、やったことは、おそらく正しかったと思うんですよ。緊急対応で、とにかくがっと中身を切りかえてやった。やっぱりカウンターがあるか、ないかは大違いで、僕は実際、自分で買って13万ぐらいしたかな。そういう意味で、それを貸してくれて、実際、はかってみるというのはすごく大きなことで、子供たちにとっても体験として大きいので、この2年は、僕は正しかったと思います。ですが、もう民間が立ち上がってきて、かなりいい教材が出ていっていますので、それを利用すべきだなと、僕はシンプルに思いますね。もう切りかえてよいという感じ。
それから、講師については、ほんとうに残念なことなんですが、あの事故が起こった直後に経産省関係のいろんな学者の方々がほぼうそをついていたということが、国民にばれてしまったわけですよね。実際、「メルトダウンしていない」と、みんな言っていましたから。そのとき、ネットで大前研一さんだけが「もうしているんじゃないか」と言っていた。そのように、ネットの信頼性のほうが完全に高くなっていますので、おそらく理科の先生でも、まともな先生はみんなもうネットやYouTubeから教材をとり始めていると思うんです。公式見解が信用できなかったから。そういう状況に今、もうなっていますので、ネットの中にもすごくいい素材があるし、おそらく理科の先生たちはそういうことでやっていくんじゃないかなと思うんですね。
最後にもう一回、言いますけれども、あれだけの事故があって、あれだけ大きな欠落があったら、それを何としてでも教育で取り返す、何としても教材として学び直すということが大事で、よのなか科のように、原発の是非も、感情論に陥らずにメリット、デメリットを論じ合う。放射線自体もいい面と悪い面がありますよね。実際、ラドン温泉もあるわけなんですから。そういうことを論じ合う。それから、放射線を浴びてしまったがれきについての受け入れみたいなことを、自分が市長だったらどうなのかということも論じ合って、せっかくこれだけものすごいディベートの素材があるわけなので、それを日本じゅうでやるべきだと思うんですよ。それをやっていない学校があるとすれば、ものすごく福島の方々が悲しむんじゃないかと思う。そういうものすごい教材なので、これはぜひ日本じゅうで学び直すべきだということを僕は強調したいですね。それを促進するためだったら、予算を使っていいと思います。
以上です。
【伊藤コーディネーター】
齋藤先生。
【齋藤】
今、藤原先生が言われたとおり、この2年間のやっていただいたことは間違いなかったとは思うんです。私は放射線の専門家で、といっても原子力にかかわっているわけではありませんけれども、例えば「はかるくん」という測定器はかなり正確なもので、こういった正確なものが出ない段階では、かなりいろんな混乱が起こったと思うんですけれども、あれのおかげでかなり正確な情報がいろいろ出たということで、大変貢献されたんじゃないかなと思う。
今後は、基本的には放射線の正しい知識を継続して伝えていくことが必要ですけれども、5,000人というのがほんとうにいい数字なのかどうか。確かに増えましたけれども、もう少し大きな視点で放射線の教育をできるようなシステムを考えればいいと思う。
もう一つは、原子力がどうなろうとも、しばらくの間は放射線と我々はつき合っていかなきゃいけませんし、実は原子力以外にも放射線は使われているもので、科学技術に必要なものでありますので、きちっとした正しい知識を、日本だからこそ若いときからちゃんと教育することが必要なので、どこの部局がやるかどうかは別として、継続して教育していただくことが必要だということで、よろしくお願いしたいと思います。
【伊藤コーディネーター】
それでは、結果がまとまっておりますので、まず私から、評価結果についてご報告いたします。
原子力教育支援事業委託費につきまして、廃止という方が2名、抜本的改善という方が1名、一部改善という方が3名です。
取りまとめにつきましては、神本政務官からお願いいたします。
【神本政務官】
本事業につきましては、今、報告がありましたように、一部改善3名との結果を踏まえまして、一部改善としたいと思います。
今、ご議論をいろいろいただきましたけれども、子供たちも含めて、国民が放射線に関する知識を正しく理解して安全、安心に日常生活を送れるようにすることについての教育の必要性については、皆さん、ほんとうに触れていただきました。その際、その内容も含めて国民の皆さんからも信頼を得るためには、これまでのように原子力推進を目的とするエネルギー特会、電源立地対策でよいのか、また、それを原子力課という担当部署がやっておりましたけれども、それでいいのかについても、実施主体、方法、内容、コストなど、一から見直すべきだとお伺いしました。
また、この放射線の教育に関する事業を実施する場合には、教職員の研修も含めて、理科教員をはじめとする学校の教職員との十分な連携をきちっと配慮すべきだということもご意見としていただきました。
また、この事業を委託する場合の評価方式も議論がありましたけれども、委託先が原子力関係団体に偏ることがないように、契約の競争性や透明性・公平性を高め、民間のお話もありましたが、大学や民間なども視野に入れて応札者の拡大を図るべきだということ。
最後に、ウェブでの情報提供について、より透明に、わかりやすく行うなどの形で、国民に開かれた形で行うようにというご指摘もございました。
これについて、個人的な感想でございますけれども、一部改善というふうにいただきましたが、私は、方法は一部改善であっても、内容的には、これまでやってきた原子力教育も、推進のための原子力教育ではなくて、もし事故が起きた場合のそれに対する対応の仕方とかいうことも含めた原子力エネルギー政策の教育とあわせて、もうこの日本に放出されてしまった放射線に対して、みずからの身を守る放射線防護、あるいはこの環境を守る、放射線が放出された環境の中で、どう健康への影響等を考えながら生きていくのかということも含めた総合的な放射線に関する教育が必要であるということを、今日、評価者の皆さんのご意見を伺いながら感じたところでございます。
というまとめにしたいと思います。ありがとうございました。
【伊藤コーディネーター】
以上で終了いたします。ありがとうございました。
本日の事業は、これで終了となります。あす、また3事業につきまして、引き続き議論していきたいと思います。
── 了 ──
大臣官房会計課財務企画班
-- 登録:平成24年07月 --