スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業の検証に関する有識者会議(第8回)議事要旨

第8回

1  日時

平成30年7月25日(水曜日) 14時~16時

2  場所

文部科学省11階 省議室

3  出席者

帯野久美子委員,萱島信子委員,田代桂子委員,永井裕久委員,二宮皓委員,松本茂委員 
宮川典子文部科学大臣政務官,小幡泰弘国際教育課長,佐藤由郎室長補佐,矢田裕美係長

4  議題

(1)討議
  ・スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業検証に関する中間まとめ(案)について

5  議事要旨

○スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業検証に関する中間まとめ(案)について,事務局より説明が行われ,それをもとに意見交換が行われた。


【委員等からの主な意見】
○コンソーシアムの場合に1校だけがSGHと名乗れるのか,全部がSGHになるのかということについては,何か基準はあるのか。

○SGHの名前をどう使っていくかということは一つ考えていかなくてはいけないことだ。SGHという名前自体が定着しつつあるということもあるが,現SGH指定校からはSGHが5年間終わった後も使わせてほしい,SGHで指定された学校の情報共有の仕組みも用意してもらいたいといった要望も頂いている。これから新しいSGHをどうしていくかというときに,できればSGHという言葉自体も使っていくことで,より皆さんに知っていただきたいという面もある。

○SGHの学校に行って,プログラムをやっている生徒はSGH生であり,その生徒自体は卒業してもずっとSGHが残るはずだと思う。普及という観点からすると,卒業後もSGHを名乗れるような何か言葉があると輪が広がる気がする。そこから大学に行ったときに,仲間が見つかるかもしれないということもあるので,何かそういう言葉があるといいと思う。

○確かにSGHのプログラムをしっかりやった子どもに対する,多少なりの認定みたいなものは現時点ではない。そういう卒業生の今後のネットワークなり,広がりのことを考えるとSGHとしての認定や認証のようなものがあるとよいかもしれない。

○SGHの次のプログラムは,全校指定あるいは学科やコースでの指定のどちらなのか。今は,全校で取り組んでいる学校もあれば,一つの高校の中の一つの学科等で部分的に取り組んでいるところがあるが,そこをどうするのか。
 また,「複数外国語を含む」という点については,画期的でよいと思うが,他の外国語(英語以外の言葉)を外国語としている場合のレベルについてはどう考えるか。これを選定基準に設けたときにどう選定するのか。あるいは英語をやっていて,他の言語もするのはさらによしと加点方式にするなら分かるが,もし他の外国語を認めた場合にわれわれがどう評価するのかというところも考えておかなければいけないと思う。
 三つ目に,「地域の特性に応じたグローバルな社会課題研究」のテーマについては,文化・伝統の項目は入れた方がよい。地域の観光などについても文化は非常に大切なものだと思っているので,一つ項目を立てた方がいいと思う。
 最後に,今後のアドバンスト型とリージョナル型の規模について,アドバンスト型が初年度10校,リージョナル型が20校というバランスはこれでいいのか。やはり高校であるのでもう少しリージョナル型の方が多い方がいいのではないか。

○対象範囲は確かにいろいろなご意見があっている。全校生徒対象にするのが理想ではないかというご意見もあり,2年生,3年生になるにつれて選抜された形にして,その子たちが海外にも行くことで課題研究を深めていけるのではないかというご意見もある。海外研修の在り方として国内の課題研究としっかり結び付いたものにしていただく必要はあるが,それが必ず全ての生徒が行かなくてはいけないというものでもないと思っている。
 英語以外の言語については,今の高校の現状を見ればどうしても英語が中心になっていくことは否めないが,レベルの問題,また指導者の問題などもある中で,どういう形で英語以外の言葉が高校レベルでもある程度やってもらえるようになっていくのか,そのあたりは今後の課題と思っている。

○英語を言語として学ぶ時代はとっくに終わっていて,英語やいろいろな言語を使ってどう発想していくかという時代に切り替わっていると思う。子どもたちが海外へ行くと,何を伝えていいか分からないという一番根本的な問題にぶち当たる子たちが大変多くいて,英語が話せる,話せないということではなく,何を題材にコミュニケーションしたらいいか分からないという子たちがいる。SGHの中でぜひ,さまざまな言葉に触れること,そしてリージョナル型の場合は,その地域に根差しているさまざまな外国人の方たちがいると思うので,地域を興していくのに,そういう方たちの力を借りる上でも,言語の多様化は大変重要ではないかと思っている。

○WWLコンソーシアムと絡めて考えていくというのは,SGHの取り組みが単独の独立した取り組みではなくて,文部科学省全体が進めていく高校教育や小中高一貫の教育の中での取り組みとして行われていくということであり,とても良いことだと思うが,今後具体的に対象校を選定していくときにこれと重ねるということは,選定する過程で何か全体の取り組みと平仄を合わせていく必要があるのではないか。

○いきなりWWLコンソーシアムをつくろうといってもなかなか難しいし,この懇談会の報告書は10年先を見越した報告書でもあるので,まずはアドバンスト型の中でそういうさまざまなテーマに則したネットワークをつくっていけないかと思っている。そのネットワークが幾つかアドバンスト型で拠点校となるところを中心に築き上げられた後に,最終的にこのコンソーシアムにつなげていけないかと思っている。
 まだWWLコンソーシアムの中身自体が,こうでなくてはいけないというものではないとは思うが,少なくともアドバンスト・ラーニング・ネットワーク,アドバンスト型でできるネットワークでは,例えばSDGsや経済などテーマに則して国内外が連携した形でのネットワークができて,そこで一つのテーマに則した課題研究が行える。そういう幾つかのネットワークができていく中で,それを何らかの形で一つのコンソーシアムとしてまとめていくということができないかと思っている。
○高校教育における多言語化は賛成である。それと,英語を教える時代ではないということについては部分的に賛成で,少なくとも大学教育においてはそうあるべきだと思っている。ただ,高校教育を見たときに,英語においてもB1レベル以上の子は数パーセントしかいない。また,どうして海外に行ったときに話す内容がないかというと,教科教育になってしまっているので,思考力・表現力を使って中身のあることを英語で表現するということを経験させていないからだ。そういう意味では,このSGHの取り組みは意味があるような気がする。SGH校の中には,成果がとても上がっており,大学受験の結果についても,SGH活動を3年間やってきた子の方がいい結果を残しているという学校がある。この事業がいろいろな意味で成果を上げているということだと感じている。英語で探究学習をするという体験を高校でやってもらうためにSGH事業があるという面は,強く出していいと思う。
 最初,「SELHiの後継事業ではないので日本語でやってもいいのだ」というニュアンスで伝わってしまったことが今から思うと少し残念だったと思う。だから,中身のあることを英語で言える子どもを育てる,自分で考えて発言できる子を育てるというメッセージを全国に発信してほしい。そのためには1校でやっていても駄目である。特に県立の場合は5年ぐらいで先生が替わってしまうし,校長は3年で替わってしまうので,教育に続きがないので,その続きを実現するためにもSGHはあるのだし,地域でコンソーシアム化するのだというメッセージを発信してほしい。
 それから,多言語化については大賛成なのだが,高校で第2外国語を教えられる人材がどれだけいるのかという問題がある。地域に住んでいる人たちのことを考えれば,英語だけではないだろうという方針はいいと思うのだが,第2外国語を絶対やりなさいとなると,何かおかしなことが起こらないかという気がしているので,注意した方がいいのではないかと思う。

○自分の考えをどうやって言語で表すかということが非常に大切なことだと思っている。ただ,どういう言語を選択していくかということもまた大切なことで,それを教える側の人間がどうであるかということも大変重要だと思っている。SGHのいろいろな研究発表を見に行くと,SDGsについて子どもたちが一つの型にはまっているかのように一生懸命やっているのだが,もう少し違う視点を持つには言語の多様性が必要だろうと個人的に考えている。
 もう一つ大きな問題は,教えられる人がいるかどうかということで,SGHの中で複数多言語化を進めていくに当たっては,実は学校の先生も非常に多様でなくてはならないのと同時に,言語はもちろん持っている知識においても多様な人材の参画を図っていけるのではないか。これから英語だけではない言語を使ってどうやって世界を見ていくかということに関しては,もう少し文部科学省も方針などを決めてやっていかなくてはいけないだろうと思うし,それは同時に教員養成に非常に深く関わることだと思っている。

○指定校が必要とするSGH活動の案件のグラフで,2番目に「成果評価の基準明確化」が挙げられている。これらを見てみると恐らく評価基準が,これまでの定量で何パーセントとか何人ということではなくて,特にトップ型を目指すのであれば,最初の採択のときにイノベーションを起こすようなプロジェクトかどうかというあたりが重要になってくると思う。それに基づいて,成果評価の基準を明確化していくことが重要だと思う。
 それから,中間評価においては,もちろん定量的な部分も重要だが,そのイノベーションがどういうふうに機能しているのか,プロダクトとして何がアウトプットとして出てきたのかを測る必要があると思う。そのときに必要なのはやはり定量だけではなくて,定性的なネットワークを通じて新しいカリキュラム,プログラムは何を開発したのか,それを通してどういう人材が育成されたのか,それから高大連携でいうと,どういう形で高大連携が進んだのかというところを詳しく見ていくことが必要かと思う。そういう基準を最初に明示しておくことが,恐らく申請するときの申請校にとって重要な情報になるということと,それから3年後あるいは延長して5年後の最終評価のところでアウトカムにつながるのではないかと思う。
 もう1点は,その評価者が誰になるのかということだ。審査委員だけではなく,管理機関やコンソーシアムに参加しているステークホルダーの人たちが現場をよく知っているので,総合比較をするということも一つあってもいいと思う。大学認証機関などでは,学校間で総合評価をする。それは客観性を保つということもあるので,そういう形で総合評価をすることも一つではないかと思う。

○今回,この会議を通じて特に多くの委員から言われたのが,申請のときに要件を具体的に明示して,それに基づいて申請を出してもらい,審査して指定するということだったと思う。そういう意味で,そのときにどういう具体的な要件を定めるかということは非常に大事だと思う。そのあたりを今回はしっかり明示した上でそれなりの覚悟を持って申請に手を挙げてもらおうということだと思っている。

○優れたグローバル人材を育成する,そういう力あるカリキュラムをしっかりつくっていただきたいということは,アドバンストだろうがリージョナルだろうが,両方とも大きな意味ではグローバル人材であるということを押さえておきたい。
 Society 5.0,超スマート社会に貢献するのは,グローバルという課題をとらまえて,その観点から日本が目指す新しい社会の問題解決をきちんとやっていって,技術革新が生活の質を支えてくれるような社会をつくっていこうということなので,やはりこの検討会議はグローバルという視座を離れないようにずっと考えていって,グローバルという視点で高校生の力をきちんと付けていって,できれば大学にきちんとつなげていきたいというスタンスだ。その場合に,リージョナルというのを国民の皆さんがご覧になったときに,ちょっと勘違いして,グローバルが抜けてしまい,シチズンシップ的な理解になることがないようにしたい。
 やはり国策として大きなお金を投入して頑張ってもらいたいという場合においては,リージョナルも目指すところは地域のグローバル化の問題を解決しながら牽引するリーダーであろう。アドバンスト型は日本を問わず,できれば国益のためなのだが,日本を踏まえながら世界できちんとリーダーになって引っ張ってもらいたいということで,リージョナルというのは必ずしも世界に直結しないけれども,地域ではグローバル化を牽引してもらいたい。だから,リージョナルの方でももう少しグローバル人材であるということを打ち消さないように打って出る必要があるのではないか。二つのタイプがあって前者はグローバルだけど後者はグローバルではないという印象を持たれないようにするべきだ。

○もう少し日本語を分かりやすく,例えば地域を世界に開くとか,地域に世界を取り入れるとか,あるいは地域から日本を変えるとか,何か考えた方がよい。コミュニティを支えるだけでは何となく裏方のイメージである。

○スーパーグローバルユニバーシティ(SGU)のやり方は,確か一括採択したら10年間で2~3年目は新規募集をしなかったと思う。SGHの場合は,初年度50校で123校を3年間で採択してきて,さらにアソシエイトがある。例えばアドバンスト型というのは一朝一夕にできるものではないかもしれないが,1年待ったらよりいいものができるというものでもないかもしれない。
 やはりポテンシャルの高いことに挑戦できる学校が,こんなにあちこちにたくさんあるとは思えないという意見も委員から頂いたと思うので,もう一度検討する価値があるとすれば,アドバンスト型は,一括採択して徹底して挑戦し続けてもらうという採択の仕方もあるのではないか。

○採択の期間と,最初のスタートアップのときにどれだけインフラが整備されているのかということも,評価上重要だと思う。今度の新SGHだと,5年が3年に短くなる。2年追加延長ということもありうるが,では3年間で何ができるかというところだ。「インフラとしてこれからこういうコンソーシアムをつくっていきます」だと,「3年たったらできました」で終わってしまう。これだけのリソースが既にあって,これをうまく組み合わせるとより効率的,効果的にスーパーグローバルプログラムを走らせることができるのだという観点から申請を出していただくことが重要ではないかと思う。
 最初のスタートアップの時点でどれだけコンソーシアムが形成できるのかということは,今回に関してはすごく重要ではないか。今までは一校一校がやっていたので,既存のものを使ってこうやりますということはすぐに出せると思うが,今度はコンソーシアムで国内だけではなくて海外も含めて多くのステークホルダーが参入してくるわけである。それを動かした成果を,われわれとしては求めるわけである。ということであれば,これから3年かけてコンソーシアムをつくっていきますということだと間に合わないと思う。現時点でこういう要素は既に持っていて,スーパーグローバルのサポートを受けることによってそれを確立できることで,何が導き出されるのかということが重要な成果項目になるのではないか。

○3年は案外短いので,その中でコンソーシアムづくりをやっているとやはり終わってしまう。今回と前回の違いはコンソーシアムという新しい考え方だ。そうすると,ある程度募集期間を少し長めにとってそのコンソーシアムが組めるような期間を考慮するのかとか,例えば採点の時点でコンソーシアムの存在,もしくはその可能性をどれぐらい高く評価するのか,それは単なる構想だけとして評価していくのか,それともある程度萌芽があるところを高く評価していくのかというあたりが変わってくると思う。そういうところをどうやっていくかというところが重要になってくる。

○大学で他の大学との共同のプロジェクト等を走らせて複数の大学間でという場合,ゼロからどこかを探しましょうということはほとんどなく,個人の教員が,個人的な研究テーマでもつながりがあるところが非常に大きなリソースになって,それに全学的に相乗りしていって,そこを耕して大きくしていくという形が多くて,その方が成功するように思う。ネットワークはトップダウンというよりも,もっと分散型の方がいいように思う。今の高校も既にそういうものをいろいろ持っているところも多いように思うので,分散を重要視するということと既存のリソースをうまく見つけていくことが重要ではないかと思う。

○これまで,申請時にやると言っていただいたことがなされていないとか,思うほど進展していないという懸念が少しあったようだ。だから3年という期限の中で,やるべきことはきちんとやってもらわないと,アカウンタビリティが保てないではないかということであった。申請時にすごく見事にデザインされたものを採択するとなると,先に述べたような懸念が起こり得る可能性が非常に高い。逆に,これならばすぐにカリキュラムの開発に着手できると,きちんと準備のできているものを採択するとなると,そういう高等学校はそんなにたくさんはないかもしれない。1年準備すればできるかもしれないということで,初年度は申請しないが2年目なら申請できるかもしれないということが,逆に今度は言えるかもしれない。そうすると,はるかに準備が利いたものが2,3年目には出てくるといえるかもしれない。

○そのときに実績を重視すればいいと思う。たいていの高校には海外提携校があるし,大学もネットワークがあるが,提携する,調印するまでが止まりで,形だけになっていることがあるので,裏を返せば実績を重視することにすれば本当にそこに力を入れてやってくると思う。大学の場合,個々の教員のネットワークは,その教員がいなくなったらほとんど有名無実になることもある。だからあくまでそこを実績重視ということにすれば,高校でもそれが実際に血の通ったものになるし,われわれもスタートラインでそれができているということを確認できると思う。

○ネーミングについては,まさにこれから考えていかなくてはいけないが,やはりこれまでのSGHではないことを求めていくところは明確にしたいと思っている。これまでのSGH事業のままというふうに学校や教育委員会の方に思われてしまうのは良くない。これまでのSGHももちろん継承した形で発展的に,より特色を打ち出していくところはしっかり伝えたい。

○先ほどリージョナル型は誤解されるのではないかという話があったが,いろいろなSGH校がグローカルという言葉を使っているので,グローカル型としてもいいのではないか。リージョナルな内容になるのではなくグローバルな要素を入れてほしいということを伝えるならば,リージョナルグローカル型でも良いと思う。グローカル(glocal)は「ロングマン」などの英英辞典にもちゃんと言葉として載っているので汎用性はある。

○幾つかの国立大学などは,グローカル人材という言葉も使っているし,リージョナルよりは分かりやすいかもしれない。そうすると,アドバンスト型はどう呼べばいいかという逆の課題が残ってくる。

○今後は,事業を分けて考えていかなくてはいけないと思っている。というのはSociety 5.0の中でも,いわゆるアドバンスト型のようにWWLコンソーシアムを目指すものと,コミュニティを支える人材というのが分けられている中に,それぞれのアドバンスト型,リージョナル型を結び付けているわけだが,特にコミュニティを支える人材の方は決してグローバルだけのカテゴリーではないので,地域コミュニティを支える人材の一つの枠組みとしてのグローバルな人材という整理をしていく必要が出てくる。

○今のSGHも本来は海外進学を目指すなど目指すべきところはかなり高いことが書いてある。国際機関で働くとか,海外を股にかけて働くビジネスマンだとか,それを目指してSGHを5年間やられてきたのだが,実際はどうかというところがあるので,もう少しカテゴリーを分けてそれぞれ目指すべきところを明確にしたというものが,今回の検証だったと思っている。これを形にするには予算が必要なところはあるので,省を挙げて獲得していくべき事業にしていかなくてはいけないところだと思っている。

○行政機関の中で今,短期間に成果を明確に出すことが求められるので,どうしても事業サイクルが短くなって,その中で選択されていく状況があると思うし,それは一部でやむを得ないところだと思うが,やはり学校現場が変わるとか,社会が変わるというのは時間がかかることなので,こういう形で改善しながら,その時々に検証しながら,日本として必ずやらなければいけない若い段階からのグローバル化に取り組んでいくことが非常に望ましいことだと思う。
 二つ目は,さまざまなその他の取り組みとぜひ連携させていただきたいと思う。具体的には,日本人学校の設置や運営,教員の配置,青年海外協力隊の現職派遣等,文部科学省の方で,もしくは文部科学省以外でもそういう高校の教育現場に関わるような,つながるような取り組みが行われている。それらが別々に行われて,必ずしも十分に連携が取られていないのは本当にもったいないと思うので,ぜひ連携して相乗効果が上がるような取り組みをしていただければと思う。

○全く学校関係者ではないからこそ言えることだと思うのだが,今までの英語教育は,小中高大とあるけれども全く英語を話せていない状況なので,根本的に間違っていたと思う。英語がなくなってもいいという話もあったが,今やっていることが全然うまくいっていないので,本当にやめてしまってもいいのかもしれないと思う。あまり現実的ではないが。そういう意味でスーパーグローバルハイスクールは,そういう英語教育の枠を超えないとコミュニケーションができないというのが一つのきっかけになるといいのかなと思う。
 海外に出て話せないというのは英語で話せないだけではなくて,日本語でも内容がないというのは,恐らく日頃の授業から質問したり,先生に反論したりすることができていないということが現状としてあると思う。英語ではなくても,質問することや自分の意見を持つことがそもそもグローバルになるには大変重要だと思うので,そこも必要なのではないか。
 個人的な自分の経験から,日本企業の駐在員の数が以前と比べるとすごく減っていると思う。ただ,減っている一方で,日本人学校ではなくて現地の学校に行かせている保護者がすごく増えていると思う。そういうある意味グローバルを持ち帰るような子どもたちを,どのように受け入れ,使っていくかということも考えていくことで,いい波及効果ができるのではないかと思う。

○まず1点目は,この5年間の実績を再投資することが大事ではないかと思う。最初は何でもそうだが,最初の5年ぐらいはトライアンドエラーだと思う。でも,その時期は過ぎて,その間に成果として上がってきたものを選択して,使えるものを再投資していくというビジネスモデルが必要ではないかと思う。
 その意味でコンソーシアム形式にしていくということは,連携でいろいろなところにあるリソースを統合していく一つの大きなモデルになるのではないかと思う。国内だけにかかわらず,海外にまでネットワークを広げるということはグローバル人材を育成するときに重要だと思う。
 一番重要なことは持続性である。3年,5年で終わるのではなくて,永続的というか,ルーティンとして恒常的に日本が次世代グローバルリーダーを育成していくシステムをつくっていくフェーズではないかと思う。そのとき大事なのは,スピード感だ。企業だったらこういうことはがんがんやってくるのだと思うが,そのあたりが少し甘いと思う。きちんとしたモデルを最初に立てて,それを恒常的に進めていく。そのときのサポートがこのSGHではないかと思う。

○持続性の重要性は同感である。実際に視察をしてみると,成果が上がっている学校は結構あると思っている。だから,今回のSGHはある程度成果が上がっているので,それを続けていただくことが重要だと思う。特に成果だと思うのは,カリキュラム開発や指導方に関して真面目に取り組んだところ,全教科の先生が新しい指導法の在り方を研究されていたということと,トップの学校,いわゆる受験校といわれるところでも,東南アジア等に生徒を派遣して,いかに自分たちのやっていることがまだ足りないかということを実体験できたということでは,日本のリーダーを育てていく上で非常に重要な事業だったと思う。でも,続けないと駄目だと思う。
 あともう1点は,県教育委員会にもう少ししっかりしてもらいたい。この事業の意図を理解した上で,どういう校長を配置するのか,どういう人を加配するのかなどをちゃんとやっているところと,そうでないところがある。そのあたりの責任を管理機関,私立の場合は学校法人に,県立の場合は県に,もう少し責任感を持ってほしい。

○SGHの議論に参加させていただいて一番良かったと思うのは,アドバンスト型,リージョナル型,名称はグローカルでもリージョナルでも,このカテゴリーができたということは大きな成果であるし,そこに参加できてよかったと思っている。原点に返ると,日本の教育の優れた点は日本中どこにいても均一の教育が受けられるところであり,これは世界に誇れることだと思っている。頑張ればどこからでも機会が与えられるという,改めてそういう意味で良かったと思っている。
 言語のことは別として,どの言語であっても結局話せないのは自分の意見がないからだ。なぜ自分の意見がないかというと,自分がないからだ。結局は自己を確立するアイデンティティの問題だと思う。そういう意味で,グローバル教育SGHが目指すものは,基本はアイデンティティだと思っている。日本のアイデンティティは現実,地方にあると思っているので,地方の資源,価値観をもう一度見直す機会にこのリージョナル型がなってくれればと期待している。

○大学でもなかなかグローバル化対応が進まない,思うようには全学的な取り組みにならないという中で,感心したのは大学生よりも高校生の方がよほどいいということだ。素直で,やるべきことは真正面から誠実に取り組んでくれた。やるべきことをきちんとやった子どもたちは,受験勉強でもそうだと思うが,成果が出ているし,力が付いている。非常にポテンシャルが高いという点では素晴らしいSGHの取り組みだったと思う。
 彼ら彼女らを伸ばしてくれる大学を選んでくれれば,大学に入っても2年ぐらい短縮でき,世界とのコミュニケーションの仕方が変わってくるので,やはり高等学校からきちんとやるのは正解だったと思う。その高校生たちを一層育てて,大切に育てる,信頼して育てるような新しい事業であってほしいと思う。教育委員会の先生方も,高校生をもっと見てもらいたいと思う。スーパーグローバルユニバーシティの方も,そういう人たちが持っている新しい価値に目覚め,いろいろな大学が特色入試などを含めて,できるだけそういう子どもたちに入ってもらって,大学の人材育成機能を高めていきたいという形で取り組んでくれている。残るはグローバル企業といわれる日本企業がそういうところに目覚めて,本当に自分たちの企業文化を持ちながら世界で活躍してくれる人材を探して育てていただければ,長い目で見て世界の中の日本という点では非常に安心感がある。
 やはり新しいもの,ないものねだりをしてはいけないのではないか。今のSGHの取り組みを踏まえて,新しいワールドワイド,アドバンスト型の高等学校づくりを目指してもらいたい。SGH指定校やアソシエイト校以外のどこかから隠れた逸材が出てきて,何か新しいことをやってくれるということはもうないのではないか。附属の高等学校の取り組み,私立学校・学園の取り組み,そして県立でも伝統がある学校,あるいは新しい学校の取り組みなどSGHの中に姿を見せているので,そういう現実の高等学校を他方でしっかりととらまえていただき,新しいものをデザインしていくことがとても大切ではないかと思っている。
 実際に高校生を見ていると,わずかな割合かもしれないが,学校によってはかなりの割合の子どもたちが英語を何不自由なくネイティブ以上に使っている生徒もたくさんいることも分かったし,英語を使う時代にはとっくに入っている。彼らに話す内容がないとはとても思えない。十分にそういう内容もちゃんと獲得して,海外の高校生と会話をしている,渡り合っていることも見られるので,やはり英語を活用することを含めたきちんとしたカリキュラムをやってほしい。
 新しいカリキュラムは,探究だけをやればいいのではなく,グローバル人材を育てるにはどのカリキュラムが一番いいのかということを考える必要がある。単独の学校特設科目で交流だけをするのではなく,カリキュラム自身がジョイントで出来上がってくるようなモデルにならないと,国際会議が単なるイベントになってしまう。国際会議はカリキュラムでないといけないということをよく理解して申請してもらいたい。
 また,大学の責任が非常に大きいと思う。大学が高大接続を本格的に考えていただき,SSHと同様に生徒たちを責任持って伸ばすという考えを持ってほしい。少なくともSGUは各地域に三十数校あるので,少なくともその三十数校が協力しながら新型SGHのプログラムを高めていただき,トータルとして我が国のグローバル人材育成を加速してもらいたいと思う。
 グローバル人材というのは,世界に自分勝手に出ていってしまって日本のことを全然やってくれないというイメージもあるようだ。それは教育なので,個人的な将来のための投資が当然あってしかるべきだが,やはり国費を投入する意味,国策で育てるグローバル人材とは一体何なのかということを改めて問われているようだ。そういう批判にも大学を含めて答えていかなくてはいけない時代がいよいよ来たのだなと思っている。

○最後に、事務局より今後の開催スケジュールについて説明があり、閉会した。

以上

お問合せ先

初等中等教育局参事官(高等学校担当)付

(初等中等教育局参事官(高等学校担当)付)