1.世界大競争時代における我が国の国際競争力の強化

 天然資源に乏しい我が国が、今後とも世界から「品格ある国家」として認識され、信頼を得つつ発展し、知的存在感を保持しながら成長を遂げていくためには、国際社会で活躍できる優秀な人材を育成するとともに、海外から積極的に優秀な人材を受け入れることが重要である。平成17年4月に日本学術会議から発表された「日本の科学技術政策の要諦」に明示されているように、人材の育成こそが国家の根幹であることの認識がまず必須である。そのためには、国際社会で活躍できる国家の根幹たる人材をいかに育てるか、明確な戦略を確立することが重要である。また、グローバル化時代を迎えて世界が21世紀の新しいパラダイムを求めている、かつ、世界的な知の大競争時代の中で、少子高齢化が進んでいる我が国にとって、一人一人の能力を伸ばし、優秀な人材を育て、輩出すること及び、人材を受け入れるべき「知」の拠点たる大学や研究機関の機能をいかに強化するのかということを包括的に考え、検討することが重要である。

1.国家の根幹たる人材戦略

 世界で活躍する優秀な人材を輩出すると共に、世界の優秀な人材を受け入れることにより、より良い世界創りに貢献することが、「品格のある国家」を目指すわが国のあり方であり、真の意味での世界における存在感を増し、わが国が世界で生き抜いていく競争力を保つ方法であると信ずる。

1.国際社会で活躍する人材を義務教育レベルから育成

 国際社会で活躍する人材を育成するためには、義務教育段階から、世界で活躍している科学者や、スポーツ選手、芸術家など、社会の発展に大きく貢献した先人の業績を学習する機会を設け、子ども達が将来、世界で活躍し、国際社会に貢献したいという夢や目標を持って学習に取り組む意欲を引き出すことが重要である。
 このためには、様々な経験を積んだ人材の発想力を伸ばす環境、即ち「出る杭を伸ばす」環境の創出が必要であり、そのためには、若い頃から世界各国の様々な文化や生活、思想や価値観に直接触れる機会を創出することが重要である。例えば、各大学において英国のギャップ・イヤー制度のように、大学に入学する前に学生に一定期間の猶予を与え、国内外での様々な経験を積む機会を与えるような柔軟な教育システムについて検討すべきである。

2.世界トップレベルの外国人研究者の受け入れの促進

 優秀な外国人研究者が我が国において、その能力を最大限発揮して活躍できるようにするため、我が国で研究を行うことに魅力を感じる研究環境を整備するとともに、研究環境をとりまく生活環境や社会制度の整備を行うことが重要である。我が国の研究者全体に占める外国人研究者の割合は年々増加傾向にあるものの、2002年現在で約1.4パーセントと依然低い状況にある。今後、外国人研究者が我が国において益々活躍していくために、大学や公的研究機関は、外国人研究者の能力や業績を公正かつ適切に評価し、外国人研究者の処遇の改善に反映させることや、生活環境面における配慮を行うことが求められる。また各大学においては教員を広く世界に求めることが肝要であり、各大学の自主的な対応も期待される。さらに、我が国の大学が世界各国から優秀な研究者をひきつけるためにも、教育・研究の質が世界的にみて高い位置を占めることが必要であるが、今後は、高等教育による国際的な貢献という視点を念頭におくことが重要である。

3.世界で活躍している日本人の受け入れの促進

 経済、社会のグローバル化に伴い、これまで我が国も、科学技術、学術研究、芸術、文化、スポーツなど幅広い分野において数多くの優秀な人材を国際社会に送り出している。そのような人たちは、いずれは我が国に帰って我が国において更なる活躍をすることを期待されている人材でもある。今後我が国が「品格ある国家」として発展していくためにも、このように日本人が国境を越えて活躍するとともに、我が国への受け入れを促進していくことが求められる。

4.女性研究者の活躍の機会の拡大

 今後、急速に少子高齢化を迎える我が国においては、優秀な人材を育成して、一人当たりの能力及び生産性を向上するとともに、多様な人材がそれぞれの能力に応じて活躍できる環境の整備に努めることが重要である。
 我が国の研究者総数に占める女性研究者の割合は年々増加し、2004年現在で11.6パーセントであるが、一方で米国は30パーセント以上であり、また、イギリス、フランス、イタリアも25パーセント以上と、欧米諸国と比較するとかなり低い状況にある。今後、我が国が「品格ある国家」として世界から認識され、信頼される国として国際競争力を強化していくためには、多様な人材を確保していくという観点から、女性研究者の活躍の機会を拡大することが重要である。そのため、研究助成金やフェローシップでの出産・育児に配慮した措置の充実など、関係施策の積極的な推進が望まれる。

5.優秀な留学生の受け入れの促進

 優秀な留学生を我が国に受け入れるため、各大学において、優秀な留学生が我が国を選択してくれるための魅力つくりや、優秀な学生を選抜できる仕組み、例えば、渡日前入学許可の積極的な実施や、大学教授が自ら現地に赴き、迅速に学生を獲得するといった取組みについて検討を行うことが必要である。
 また、我が国での就職を希望している留学生が近年増加してきており、留学生への就職支援体制の充実を図ることが、重要である。
企業側にも外国人採用のニーズはあるが、企業が必要とする優秀な外国人の情報を得ることができないケースがある。大学と企業とが外国人留学生の情報交換を行うことにより、我が国の企業での外国人の活躍の場が広がることにつながる。

6.留学生交流を通じた人的・知的ネットワークの構築

 我が国から帰国した留学生は、将来にわたって相手国、そして世界と我が国の架け橋として、対日理解や友好関係の促進に貢献することが期待される貴重な人材であり、我が国が安定した信頼の上に成立する国際関係を築く上での基礎となるものである。
 特に各国の政府要職にある人物が親日派・知日派であることは我が国にとって大きなメリットになるため、将来において政府要職に就くべき優秀な人材の我が国への留学を積極的に支援し、我が国に対する理解を深めることを通じて、各国の指導者層の間に人的・知的ネットワークを構築することが重要である。各大学においては、母国に帰国した留学生が、留学の成果をさらに高め、母国において活躍できるよう交流や支援を維持することが望まれる。

2.「知」の拠点たる大学及び研究機関の国際競争力の強化

 我が国の国際競争力の強化のためには、「知」の拠点である大学や研究機関が国際競争力を強化し、国際的な大学間の競争と協調・協力を進展させ、様々な面で魅力ある、開放的であり、世界の若者を惹きつける絶え間ない努力をすることが不可欠である。科学技術の分野においては、我が国は既に世界において先導的な地位を獲得しているため、今後ともこの地位を維持していくため、我が国が優れている分野、劣っている分野を的確に把握し、重点的な投資を行う必要がある。

1.大学の国際展開

 我が国の大学の海外校に係る制度改正により、我が国の大学が外国において教育研究活動を行う際の海外校の位置づけが明確化されたことを受け、大学の国際化、国際的に活躍できる人材の養成、諸外国の人材養成に資する知的国際貢献、海外での学生確保や留学希望者の開拓等の観点から、各大学がそれぞれの特性に応じて、国際展開を推進することは意義のあることである。

2.学部・大学院教育の振興

 国際競争力の確保などの国家戦略上極めて重要な機能を担っている高等教育に対して、公的支出を欧米諸国並みに近づけていくよう最大限の努力を払うとともに、多元的できめ細やかなファンディング・システムを構築することが必要である。
 教養と専門的素養を兼ね備え社会の発展に貢献できる人材を養成するための学部段階の教育機能の強化とともに、大学院における教育研究を魅力ある国際的な水準のものとするための大学院教育の組織的展開、世界的な教育研究拠点の形成等が必要である。

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