外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議(第6回)議事録

1. 日時

令和3年10月25日(月曜日) 10時30分~12時00分

2. 場所

Web 会議システム(Zoom)

3. 議題

(1)有識者 ヒアリング
(2)その他

4. 議事録

【佐藤座長】
 おはようございます。お忙しい中お集まりいただきまして,ありがとうございます。定刻となりましたので,ただいまより第6回,専ら外国人の子供の教育を目的としている施設,いわゆる外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議を開催いたします。
 なお,本日は北垣委員,安田委員のお二人が御都合により欠席となっております。
 まずは事務局から,議事次第,配付資料の確認をお願いいたします。

【事務局】
 事務局から御説明させていただきます。
 本日の議題は議事次第にございますとおり,1,有識者ヒアリング,2,その他となっております。
 前回の議題においてお伝えしておりました追加調査につきましては,現在,引き続き実施中ですので,次回の会議において,結果を御報告させていただきます。
 議題1の有識者ヒアリングでは,本日,オチャンテ委員,田中委員,そして外国人学校に多言語での医療相談等の活動を行っているAMDA国際医療情報センターの小林理事長からお話をお伺いすることといたしております。
 また,配付資料につきましては,資料1としまして,有識者提供の資料,資料2としまして,今後のスケジュール案,参考資料1から6を配付させていただいております。参考資料2としまして,「学校における子供の心のケア――サインを見逃さないために」を御用意しております。こちらは前回の会議において北垣委員からも御紹介を頂きました心のケアに関する文科省作成の資料となっております。不足等ございましたら事務局までお申しつけください。
 以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございます。今日は有識者ヒアリングを3名の方々にお願いをしております。
 まず,御自身も中学生のときにペルーから日本にいらっしゃった経験をお持ちで,現在,桃山学院教育大学にて教鞭(きょうべん)をとられておられるオチャンテ委員。次にNPO法人の青少年自立援助センターの活動等を通じて,外国人の子供の教育に御尽力されている田中委員です。まずお二人のお話をお伺いしたいと思います。その後,AMDAの小林理事長からもお話をしていただきたいと思います。
 まず,オチャンテ委員と田中委員のお二方からプレゼンテーションが終わった後に,まとめて質疑を行った上で,その後,小林理事長のヒアリングに移りたいと思います。それでは,オチャンテ委員からお願いいたします。よろしくお願いします。

【オチャンテ委員】
 皆さん,こんにちは。オチャンテ・ロサです。今日は外国人学校における保健衛生環境の把握や情報発信の在り方,又は方針についてのお話をしていきたいと思います。
まず,文科省から,情報発信の在り方や学校における保健衛生環境の把握,外国人の子供や保護者と教師に対する保健衛生に関する普及啓発の在り方などの連携といった問題提起を頂いて,実際,情報を受け取る現場の実態や彼らの声を聞いてみようと思い,二つの学校のインタビュー調査をしました。
 私が勤めている大阪から近い滋賀県の二つの学校に調査しました。一つ目はNPO法人サンタナ学園で,保育園の方は認可外の保育園ですが,小中高の場合だと私塾扱いとなっています。そして,もう一つは各種学校認可を受けている日本ラチーノ学院の二つです。両方ともブラジル人学校になります。
参考のため,同じ滋賀県にある朝鮮学校の校長先生にもインタビューをさせていただきました。また,私が関わっている三重県内コミュニティーの保護者の声やキーパーソンの話も聞いております。
 まず,外国人学校という枠組みの中では,本当に学校によって様々なやり方や教育方針があり,また,外国人の保護者の中でも人的な資本や経済的な資本も異なりますし,学校経営や運営も異なります。同じ外国人学校においても税制上での優遇の対象になれる学校となれない学校等,様々な違いが存在しています。
私の関わっているブラジル人学校の保護者の場合だと,単純労働者としての製造業の非正規雇用で,特にこのコロナになってから解雇になったり,勤務時間が減ったりといった現状があります。
 ブラジル人学校に通う理由としては,まず帰国したときに困らないためといった出稼ぎ意識を持って,行ったり来たりするような保護者も中にいます。また母語のスキルを獲得するために,中学校まで日本の学校に通って,高等部はブラジル人学校に行くといったケースも最近は見られます。あとは仕事で遅くなっても対応してくれる,必要なときに代わりに病院に連れていってくれるので安心といったことや,日本の公立学校に適応できず,又はいじめを体験して,ブラジル人学校に行くといったケースです。そういった子供たちにとっての寄り添える場所や居場所としての役割も果たしています。
 実際,今回,調査した二つの学校には日本語対応できる職員が少なくとも1人が存在しており,彼らの業務として,自治体から届くメールや手紙の対応,存続のためのプロジェクト――寄附金,助成金,クラウドファンディングといったものを計画したり,時には学校の日本語の先生と英語の先生や,送迎,病院の付添い,その地域の通訳等を行ったりしています。特に給付金のときには,申請書の書き方や,保護者と地域のワクチン等の予診票の記入や接種予約等,日本語ができるということで様々な方から頼られるということがあります。このように保護者や地域の支援も行っているという話を聞きました。
 感染症拡大防止において,特に強く強調されていたのが,クラスターは絶対出さないということです。この二つの学校ではクラスターはありませんでした。特に周りの差別を懸念して,外国人学校だからといった偏見がどうしても出てきたら困る,地域に迷惑をかけたくないといったこともあります。
子供の異変が見られたらすぐに病院に連れていくといった対応をしたり,各種学校の認可を受けている学校だと,保健衛生管理の担当者を新たに雇ったり,常に消毒作業を行ったりしていると聞きました。
 また,手洗い場等の設備や,加湿器などの購入等といった対策もあります。こちらの認可外の学校は,子供たちの健康を守るために様々な手段やプロジェクトを企画しています。その際,自治体とか民間企業,市民からの寄附に頼っています。
 こちらの私塾扱いの学校の中では室内に手洗い場がなかったので,まずそういうことから始まりました。もう一つの各種学校認可の学校だと,元公立学校の校舎を利用しているので,そういった問題はありませんでしたが,その他にも抱えている課題はたくさんあります。
 今回の調査で,特に情報発信での配慮や現場からのお願いとして,日本語の対応ができる事務の方の負担が大きいことがあります。メールのやり取りや手紙等の対応に追われることも日々ありますし,日本人にとっても非常に分かりにくい内容であるとか,特にこういった保健衛生関係の日本語は堅苦しかったり,言い回しが多かったり,振り仮名が載ってないので読みにくいといったことを強調されていました。外国人学校への配慮として,特に,認可外の学校は常に日本語対応できる職員がいないため,優先順位をつけて,重要である書類にポルトガル語で,重要――Importanteということを書くことや,振り仮名をつけてほしいという要望を受けました。
 これを受けて,やはりこれからの情報発信,特にこういった保健衛生に関する普及啓発に当たって,易しい日本語も視野に入れて,必ず振り仮名をつけるなど,そういった配慮も常に考えないといけないのではないかと思います。
 ほかにも,国や自治体に学校の状況を知ってほしいので,担当者とコンタクトを取って,連携を取っていくことも重要となっていきます。
 今回,二つのブラジル人学校を調査して,同じブラジル人学校でも,やはり各種学校の認可を受けている学校と認可外の学校でもすごく差が見られました。特に認可を受けている学校の方の情報の受け取り方や,自治体との関わり方がうまくできていて,学校が忙しくて書類が出せていないときなどは,自治体から電話を受けて,書類が出てないといった連絡もあり,関係性ができているということもとても印象的でした。
 しかし,認可外の学校では,保育の部は認可外保育園であるため,そこに届く情報を小学校,中学校,高校の参考にしているということになっています。そのため,認可外の学校への情報のアクセスに,非常に課題があるのではないかと感じました。
 最後に,私が関わっているコミュニティーの保護者の不安の一つとして,新型コロナウイルスの感染者の情報や感染防止の対応,マニュアルといった連絡系統について,具体的な明確な方針が求められています。私がお話を聞いた保護者の声の中で,外国人学校の中で濃厚接触者にあったときに,濃厚接触に当たる恐れがあるので検査をしてほしいといった要望を保健所に言っても対応はしなかったことや,学校によってはどこに相談したらいいのか分からないといった,保護者の不安という実態がありました。
 恐らく日本の学校の経路として,自治体によって違うかもしれないですが,既に本人が病院で検査をして,保健所に行って,それが市役所に行って,市の教育委員会,公立の学校というような体系があると考えられます。外国人学校の場合はやはり本人が病院で検査を受けて,保健所,感染した保護者に連絡が来て,保護者が外国人学校に報告するということになっていると思います。公立学校の場合は濃厚接触の疑いがある場合は集団での検査が行われることもあったり,もちろん保健所ですぐ検査ができないという実態もあるかとは思うのですが,やはり校長先生や教育委員会も動いて,集団での検査をしたり,学校の消毒作業をしたり,いろいろ動いてできた場面もたくさんあったと思います。
 このように,やっぱり外国人学校と公立学校での受ける対応に差が非常にあるのではないかと感じます。しかし,こういった緊急の事態では,全ての子供たちの健康,命を守るために差をなくすための明確な方針を,国として,こういう連絡系統をやっていきましょうということを示していれば,恐らく自治体も動きやすくなるのではないかと思います。
そのためにやはり外国人学校の在学生を把握する必要があるのではないかと思います。 一つの例として,例えば,ハローワークだと外国人の雇用状況等の届けをすぐに出すように,外国人学校もそういった生徒が何人在籍しているのか市教委に届けるといったことも参考にできないかなと思います。
 同じような感染防止対応の情報等も,きちんとどういう系統をしていくのか,マニュアルや情報提供の際には,感染拡大を食い止めるという観点から,市教員とか,又は市の保健衛生部門等が広報することもできるのではないかと思われます。
 その他の課題として,まず保健室は確認した三つの学校のどこもありませんでした。なぜないのかということはもちろん経済的な余裕がなく,本当に職員の給料でさえも払えるか払えないかという状態で,保健室まで考える余裕はありませんということでした。何かがあると近所のクリニックに連れて行くとか,そういうことをやっているぐらいですということです。
 健康診断とかも認可外の場合だとしていません。認可を受けているブラジル人学校の場合は,コロナ前までは病院からのボランティアを受けて,健康診断の実施はしていました。
 また,これは滋賀の朝鮮学校のことですけど,大津市からそういった補助金を受けています。これは朝鮮学校の中でも珍しいということで,1979年から途切れることなくずっと毎年,こういった健康診断の実施のための助成金を市から受けています。
 その他の不安としては,子供の進路や将来の不安,日本語の習得の課題といった不安があります。
 最後に,移民の子供たちも,特に私が見てきたブラジル人学校の子供たちはブラジルに帰国する若者は割と少なく,日本にとどまる子供も結構多いです。これからこういった多様な子供たちも日本の将来を支えていく一員となっていきます。コロナ禍においてますます,一人も取り残すことのない,子供たちの命を第一に考えるような方針や対策が重要になります。
 以上です。

【佐藤座長】
 オチャンテ委員,どうもありがとうございました。続けて,田中委員,よろしくお願いします。

【田中委員】
 NPO法人青少年自立援助センターの田中です。よろしくお願いします。
 私からはNPO立の認可外の外国人学校と言える支援現場が,平時も含めて,どのような保健衛生の対応状況になっているのかを,私が運営していますYSCグローバルスクールの現場及び関係者から少しお話を伺った中で御紹介していきます。加えて,何があれば認可外の学校にとっても,持続可能な保健衛生対策が可能となるかということを,私のアイデアとして,皆さんと共有させていただければと思っています。
 当法人は東京の福生市と足立区に海外ルーツの子供のための教育の場――YSCグローバルスクールの教室を設置していまして,2016年からオンラインで授業をしていることもあり,スクールの現場に通所している生徒さんは5割,残り半数ぐらいがオンラインで全国各地から受講をしているといった状況です。
 現在,利用している子供たちは170名程度いますが,うち,昼間の通所をしているお子さんたちが50名程度になっています。この50名の昼間,学校代わりに私たちのスクールを利用している生徒さんのうち,小中学校に学籍がある生徒さんが27名,残りは不就学の児童生徒や,15歳以上で中学校を進路未決定で卒業したという方や既卒の若者たちが高校進学を目指して通ってくるような状況になっています。
 運営費は保護者の方からの月謝を中心に頂いており,利用形態によって月数千円から,フルタイムで昼間毎日通ってくるような場合は3万円程度を毎月頂いています。一方で,おおよそ3割が困窮世帯の御家庭のお子さんということで,こうした家庭に対しては一般の方々からの寄附金を原資として,いわゆる奨学金制度を設けて対応をしています。
 かなり資金的には綱渡りの状況で運営をしているというところです。コロナ禍以前からリモートでの授業の経験があったので,感染拡大状況に応じて,分散登校をしたり,先生も生徒も全員オンラインでというようなフルリモートで授業を運営したりしながら,子供たちの学びとつながりを何とか維持しようと対応を続けてきました。
 ほかの外国人学校さんも今,同様かと思いますが,コロナ禍での感染対策としては,基本的なところを徹底するということを常に模索してきました。今,学習塾向けの新型コロナウイルス感染症対応ガイドラインを主に参照しながら,換気ですとか,パーティションの設置ですとか,机の消毒ですとか,そういった基本的なところを徹底しています。御家庭や子供たちにも説明をして,不織布マスクをつけていただくようにお願いしたり,手指消毒したりというようなことをしつつ,静岡県立大学さんが今,作成して公開してくださっている他言語健康チェック表みたいなものを活用しながら,子供たちの健康状態の確認を行っています。
 一般の学習塾やフリースクールと異なるのは,コロナ禍以降の期間であっても,子供たち自身やその御家族や同居する親族の方々が,海外から来日されるケースがあるということです。そういった状況が発生するので,御家庭にお願いをして,御家族や同居の方が来日をされた場合に,自宅待機期間中はオンラインでの受講としていただくなど,情報共有しながら対応をしています。
 このような感じで本当に手探り感が強く,自分たちで一生懸命,情報を取りに行って,それをかみ砕いて,現場に応用するということを続けて対応しています。
 コロナ禍ではこのような感じでやってきているのですけれども,平時の子供たちの健康管理としては,公立学校に学籍がある児童生徒については,私たちYSCが学校と連携した上で,なるべく学校の中で健康診断等を受けられるようにサポートをしています。必要に応じて,「かすたねっと」や,厚労省発出の多言語情報,あるいは関係諸機関による保健衛生に関わるような多言語文書を探し出して,日本語が分からない保護者の方へ情報提供し,学校や医療機関がスムーズに対応できるようにサポートを行っています。
 一方で,現時点で在籍校がない不就学や学齢超過の生徒さんについては,残念ながら定期的な健康診断などは実施ができていません。保健衛生を担う職員の配置もしておらず,多文化コーディネーターと呼ばれる職員が子供たちの状況や家庭の状況を観察しながら,必要に応じて医療機関の紹介や同行,あるいは保健所,子供家庭支援センター,児童相談所とも連携を行いながら,都度,対応をしているという現状になっています。
 なお,当スクールで活動をしている現場のスタッフは1日当たり六,七十名の子供に対して,多文化コーディネーターが2名,日本語教師が1.5名,教科学習担当者が2.5名程度で運営しており,これで,資金的,人的には精いっぱいの状況です。
 ただ,この規模の活動でも,私が知る限りは恐らくNPOや宗教法人立の学習の場としては,かなり体制を充実させている方かなと認識をしています。コロナ禍によって,より切り詰めた状況の中での運営となっているのではないかというところで,ここに保健衛生担当をする職員を追加するとなると,単純に人件費だけでも年間400万円程度の追加費用がかかりますし,更に設備的な制約とかも含めて,そういった人材や保健室を設置できるような状況にはなかなかないのかなと考えています。
 続いて,子供たちの健康と安全という観点から,私たちがふだん,加入をしている保険について少し情報提供をさせていただければと思います。当法人ではNPOのためにつくられたNPO活動総合保険というものに加入をしています。活動中の職員や利用者の方のけがや事故の発生に備えることができまして,活動中であれば,そこに参加する職員や子供たちの治療費等は保険の対象になります。一方で,保険料は当然,法人が負担をしていまして,団体規模や補償内容にもよって差が生じますが,当法人の場合は約50名分の契約で年間40万円程度の保険料を支払っている状況です。
 もちろんこの保険で全てがカバーできるわけではなく,当スクールへの登下校は活動中とはみなされないため,この間にけがをしたりすると,御家庭での対応が必要になってきます。一方で在留資格ですとか,状況によっては,国民健康保険にも加入できておらず,まして民間の保険にも入っていないというような御家庭もありますので,こういった点でも子供たちの安定と安心にリスクがある状況だと考えています。私たちのスクールの中で取り組めていることとしては,このようなところになります。
 続いて,こうしたNPO立ですとか,その他の認可外の昼間の子供たちの学びの状況を踏まえて,どのような支援があればいいのかというところで,アイデアを共有させてください。
 今,御紹介したとおり,認可外の外国人学校の場合,コロナ禍の影響もあって,平時以上に予算面で厳しい状況が続いているところです。養護教諭ですとか,保健衛生担当職員を追加し,手いっぱいな状況の中で兼任させるということは非常に難しいところになっています。
また,自治体をまたいで広域から生徒が集まってくるような状況もこの会議の中で言及されていましたし,学習の場となる施設は非常に狭かったり,設備的な余裕がなかったりといったことを考えると,特定の自治体よりは広域で対応可能な行政範囲の中で,一定の研修を受けた養護教諭の方ですとか,あるいは保健師の方々に定期的に巡回をしていただくような形が最も無理がないかなと思うところです。
 例えば,当スクールが所在している東京都福生市は東京都23区とは異なって,福生市を含む四つの市と三つの町,一つの村の,合わせて8自治体を西多摩保健所というところが広域で担当をしています。この管内には当スクールを含めて,キリスト教会系のチャーチスクールなどが幾つかありまして,隔週に1回でも各スクールを巡回していただいて,それぞれの在籍児童生徒の健康を把握し,管理していただけるような形で配置されるのが,理想を言えば,現場にとって追加の負荷がほとんど発生しない状況で取り組みやすいというところです。
 ただ,認可外の学校に限ったところではないですけれども,やはり言語障壁が存在する場合に,地域によってはかなりの数の言語数に対応しなくてはならないというような状況も発生します。巡回時にオンラインで通訳が可能な仕組みを導入したり,保健衛生関連用語に対応した多言語アプリの製作や導入をしたりなどの検討が必要になってくるかなと思っています。今,医療関係はかなり多言語化が進んでいると認識していまして,こうしたところからの多言語情報の援用や連携等も検討していくとよいのかなと考えています。
 二つ目は,私はかなりなじみがあるのですけども,「かすたねっと」という文科省が運営している多言語文章のプラットフォームを活用した保健衛生関連の多言語情報の充実が挙げられると思っています。今,「かすたねっと」の中には各自治体が作成した保健衛生関連や学校関連の多言語資料が結構集約されており,外国人学校等でどの程度,活用されているかは分からないですが,私たちのスクールはかなりの頻度で利用させていただいています。
 こちらのさらなる活用の促進ですとか,新型コロナ関連の情報等の学校発出でないものについては,「かすたねっと」には掲載されていないものも多くありますので,情報が不足していたり,アップデートのスピード感に課題が出たりする部分を改善していけば,「かすたねっと」にアクセスをすれば,厚労省関係や国際交流関係等の保健衛生医療関連の翻訳文書など,全てにアクセスできるというような状況が実現され,私たちも必要なときに取りに行きやすいと思えます。
 次年度,設置予定のプラットフォームの事業でも幾つか多言語で文書が作成されるような記載がありましたが,こうしたものも1か所に集約をして,プッシュ型で配信するとともに,ほかの関連資料と合わせて,本当にここだけで大丈夫というプラットフォームをつくっていただけると非常に有り難いです。
 三つ目は,既に一定の規模を有していて,端的に言えば予算さえあれば,保健衛生の体制整備に取り組めるよというような規模の外国人学校等の体制整備を支援していくということが考えられるかなと思います。
 外国人学校等については,保護者からの月謝ですとか,助成金,あるいは寄附金等を原資に運営をしています。恒常的に保健衛生対策を講じるためには,どうしても恒常的に予算が確保されているという状況が必要になり,見切り発車で保健衛生担当者を雇用することができないこともあって,資金面での確実性を外国人学校等がどう高めることができるのかというところがポイントになってくると思います。
 そうなると月謝を値上げするか,寄附金をより多く確実に活用できるようにするかというどちらかかと思うのですが,常にぎりぎりの金額を外国人保護者から負担していただいている状況で,これ以上,保護者に求めるのはかなり厳しいというところです。助成金も単年度,1回きりの申請のものがほとんどで,かなり不確実なものになりますので,寄附金の獲得も含めて,どうやって運営基盤を整備していくかがサポートのポイントになってくると認識をしています。
 寄附金については,各学校も既にかなり努力をして集められているところかと思いますが,より効率的,効果的に多くの寄附金を運営資金として獲得することができるように,ファンドレイザーによる研修ですとか,伴走支援の実施も一つの方策かなと思います。税制優遇措置の対象外となっている外国人学校も多くありますので,寄附金に対して,税制優遇措置の対象を拡大していくようなところも一つ,運営基盤の整備支援という点では有効と考えています。
 認可外であれ,NPO立であれ,やはり子供たちの保健衛生に関する安心と健康を守りたいという気持ちは共通していると思いますので,皆さん,知恵を出し合いながら,具体的なステップをいろいろなレベルで進めていくことができればと思っています。
 私からの発表は以上です。ありがとうございます。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。今,お二人から御発表をしていただきましたけれども,お二人に対する御質問,あるいは御意見等がございましたらお願いしたいと思います。
事務局から,お願いします。

【事務局】
事務局から最初に申し訳ございません。
オチャンテ先生の御発表について,二つ,お聞きしたいことと事実関係の確認がございます。
まず,コロナ以降の対応として,先ほどラチーノ学院で人を新たに雇ったというお話の御紹介があったと思いますが,どういう方を雇ったのか,参考までに教えていただきたいというのが1点です。
それから,コロナについての連絡系統ですけれども,私はこの仕事の前に佐賀県で保健衛生を担当しておりましたが,そこでは,個人情報なので,本人が病院で検査した後,新型コロナ感染者だとその情報が保健所にまず行き,その後,一旦本人や親にその個人情報が戻ります。その後,親が学校に連絡をして,その学校から市の教育委員会といった形ではないかと思います。クラスターのときはまた別かもしれませんけれども,それが基本の形かなと思います。
保護者が学校に連絡するところを,逆に外国人の子供の場合にどうしたらいいのかという問題があるのかなとお話を聞きながら思いました。
以上です。

【佐藤座長】
 それでは,オチャンテ委員。今,二つ質問がございましたけれども,お願いできますか。

【オチャンテ委員】
 まず,日本ラチーノ学院の場合は保護者を雇いました。保護者を,常に子供たちが利用した教室を消毒してもらうような消毒作業のために,新たに1名が加わったというような形になりました。専門があるというわけではなく,ただ消毒作業をしてもらうような方を雇ったという形になります。
 もう一つの質問ですが,これは私が三重県の自治体の知り合いの方たちに話をして,保健所から保護者にまず行くという系統はそのとおりです。ただ,同じように在籍している子供たちのことで,市役所とか,教育委員会とかにも情報が行くという経緯もあるかと思います。統一してないというのもまた大きな課題になっているかと思いますが,これはあくまで一つの自治体がこういうやり方を行っているということです。
 ただ恐らく,ほかのところが,それぞれ具体的にどうなっているのかは,いろいろ探していても,見つからず,公開されてないものもあるのかなと思います。やはり具体的な指示がないので,子供・保護者自身が濃厚接触になり,検査してもらいたいけれど,それをどこに訴えたらいいのか分からないというような実態があります。あらゆるところに確認して,でも結局はできないという保護者の不安があったので,こういったその後の対応,集団検診といったクラスターを出さないための速やかな対応というのは,やはり具体的な方針が必要で,具体的な指示があることで,自治体も動きやすくなるのかなと思います。今,ばらばらになっているのが統一していった方がいいのではないかなということで,こちらの例を挙げました。
 以上です。

【佐藤座長】
 倉橋委員。お願いします。

【倉橋委員】
 私の方から,意見ということでお聞きいただければと思います。
 前回の会議の後,文科省の事務局宛てに一度,現場を見に来たらどうですかというお話をさせていただきました。多分,皆さんの頭の中にあるブラジルの学校と現実のブラジル学校の間の非常に大きな懸隔について,まず少しでも埋める必要があると認識しています。田中委員がおっしゃったお金がないという状況。このお金がないという状況ってどういうことか分かりますかということも含めて,見ていただければなと思います。
 ブラジル学校の役割が,昔は出稼ぎの人たちを対象にしていた学校からここ10年ぐらいで,随分,大きくさま変わりしていると思います。日本に住み続ける人も増えてきているので,その子たちにどう対応していくかというのはブラジル学校全体として大きな課題です。定住が進んでいく外国の子供たちの支援ということは非常に大きな課題でもあるのですけれども,その中で本当にお金も時間も人もいない中でやっているというところを是非御理解いただきたいです。そして,それを言葉でなくて,体験として御理解いただきたいと希望しております。

【佐藤座長
 ありがとうございました。事務局で,実際の現場に行くという調査の予定がございましたけれども,次回以降に調査結果については御報告いただけると思います。何か今の件について,事務局の方から御回答いただければと思いますが,いかがでしょうか。

【事務局】
 事務局でございます。
 現在,追加調査を進めているところでございます。やはりコロナ禍であるというところあるので,基本的にはオンラインでヒアリングをしておりますが,今般,群馬県の認可外のブラジル学校に実際に行って,見学をさせていただきました。実際に行って確認をさせていただきましたので,それもあわせて,次回に結果を御報告させていただきたいと思っております。
 以上でございます。

【佐藤座長】
 はい,ありがとうございます。倉橋委員,お願いします。

【倉橋委員】
 群馬の無認可の学校は二つあると思いますが,大泉町に二つあるのでしたでしょうか。

【事務局】
 大泉町に行ってまいりました。

【倉橋委員】
 それはどこでしょうか。

【事務局】
 ジェンテ・ミウーダと日伯学園になります。

【倉橋委員】
 無認可の二つともに行ったということですね。

【事務局】
 はい。

【倉橋委員】
 分かりました。ありがとうございます。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。まず実態をしっかりと把握した上で,という倉橋委員の御意見だったと思いますが,ほかにいかがでしょうか。オチャンテ委員も田中委員からも有益な提案もございましたけれども,どうぞ御質問等,御意見等がありましたらお願いします。
 浅野委員からお願いします。

【浅野委員】
 お二人の委員の方,大変貴重な現場からの意見や状況についてお話しいただき,ありがとうございました。
 意見と質問ですけど,まず意見としては,やはり何をするにしてもお金がかかるという話題はもう何回も出ていると思いますし,今回もよく分かりました。それで,手始めにできることとして,オチャンテ委員からありました外国人学校への配慮ということで,いろんな情報を分かりやすく丁寧に,振り仮名を振るとか,医学用語も分かりやすく誰もが分かるような表現とか,すぐ使えるようなものにするということが大事だと思いました。
 田中委員の方から出ました養護教諭をすぐにといっても人件費もかかるというところから,巡回ということがどこまで可能か分かりませんが,少しでもそういった専門職が行って,指導チェックや様々な悩みを聴くなどができるといいのかなと感じました。
 それから,「かすたねっと」といった,情報を取りにいくと言ってもどこに行っていいか分からないというときに,ここだったら全て分かるという1本ラインがあれば情報が取りやすくなります。そして,それを更に広めて活用できればいいと思いました。
 質問としては,オチャンテ委員に対して,滋賀県の朝鮮人学校について,どのような経緯でそういう予算措置ができたのかということと,他にもそういったところがあるのかということを知りたいのですが,いかがでしょうか。

【佐藤座長】
 オチャンテ委員,お願いします。

【オチャンテ委員】
 滋賀の朝鮮学校の校長先生と話をして,これは1979年から大津市から受けている補助金で,市内に在留している子供たちが対象になっています。これは恐らく長年の運動によって,朝鮮学校として,やっぱり子供たちの健康を守ってほしいというような運動をしたきっかけで制度が設けられました。
 ただこれは恐らく例外です。ほかに同じような市から補助金を受けているような学校というのはあまり聞かないです。私も調べに至ってない部分もあるかもしれませんが,いろいろ調べた限りでは割とまれなケースだと思います。ただ,これが朝鮮学校の運動によってできたもので,幸い途切れることなく,今でも受けている補助金にはなります。

【浅野委員】
 はい,ありがとうございました。
 日本に住んでいる子供たち,そして,大津市なら大津市にいる子供たちだから,同じように扱いましょうという思いで続けているのかなと推察しました。このような事例が広まって,こういうことも可能になるということが分かれば,少しは金銭面等の助成が進むのかなと思いました。ありがとうございました。

【オチャンテ委員】
 おっしゃるとおりだと思います。これはあくまでも一つの事例ではありますけれど,これを参考にして,普及していければと思います。特に子供たちの健康を守る,学校側としてはやりたい気持ちがいっぱいです。一方で,経済的な面ではもう限界で,仕方なくというような形でしてないという声が多かったです。

【浅野委員】
 ありがとうございました。

【佐藤座長】
 はい,ありがとうございました。田中委員,お願いします。

【田中委員】
 恐らく事務局の方への質問になるかと思いますが,先ほど発表の中で御共有させていただいた広域巡回の実現可能性というのはあるのかどうかと,現実に施策化していくとなれば,どのようなところが障壁となるかを御見解があれば伺いたいのですけが,いかがでしょうか。

【佐藤座長】
 多分,厚労省も関わってくると思います。あるいは都も関わってくるかもしれない。自治体も関わってくるかもしれませんので,今の段階で何か御回答いただけることがあれば,事務局の方からお願いします。

【事務局】
 事務局でございます。
 予算要求中なのでどうなるかというところはございますが,まず始めたいと思っておりますのが,前回御紹介させていただいた外国人学校に対する保健衛生の予算の中で,自治体の取組を支援していくというところです。
 どこの自治体がやるかというところはありますが,まずはその自治体でよい取組をしていただき,その中で一つの形として,外国人学校に対して,看護師等の専門性を持っている方に巡回していただくという形もあり得るのかと思います。
 広域といっても,大きな市であるとか,あるいは都道府県といったところがあると思いますが,まずはそういうところが取組や事業の中で,巡回等をやっていただいて,そういう取組がうまくいけば全国の自治体で広げていくといったことを調査研究して取り組んでいきたいと考えております。
 直ちにということはならないのですけど,少しずつやれるところからやっていきたいと思っております。
 以上でございます。

【田中委員】
 ありがとうございます。もし可能でしたら,フリースクール等で同じように巡回型の保健衛生の体制整備に取り組んでいるような事例があるかというのをお調べいただくことはできますでしょうか。

【事務局】
 分かりました。それについては調べてみようと思います。ただ,あるかどうか分からないので,分かる範囲でということになると思います。

【田中委員】
 承知しました。ありがとうございます。


【佐藤座長】
 私も気になって,保健所の知り合いに連絡をしてみたら,コロナであまりにも多忙過ぎて,「ちょっと今それどころではない」と断られてしまいました。保健所の方もかなり人手が逼迫(ひっぱく)していて,新規事業にはとても手が回らないという回答を頂いていました。
 それで分かったことは,統廃合が繰り返されて,保健所の人員がかなり減らされており,非常に厳しい状況だというのを改めて認識した次第です。
フリースクールの件については是非お調べいただいて,そういう事例があれば報告いただければと思います。
 ほかに何かございますか。オチャンテ委員,お願いします。

【オチャンテ委員】
 感想になりますが,初めてこちらの3校の調査,校長先生と話をすることになったのですが,最初はどうコンタクトを取ろうと思って,あらゆる知り合いの研究者や,NPO等の関係者に連絡を取ったら,すぐに決まっていきました。
 これから,もしそういう認可外の学校と連携や調査をしていくに当たって,そういう地域に関わっているNPOや研究者に当たってみると,スムーズにいろいろな情報が届くのではないかなと思いました。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。
 それでは,AMDA国際医療情報センターの小林理事長からヒアリングをさせていただければと思います。AMDA国際医療情報センターは外国人等に対する多言語での医療情報の提供や,医療相談の対応などを通して,外国人への医療面での支援を行っている特定非営利活動法人です。
 今回のヒアリングでAMDAの国際医療情報センターでの取組,外国人への医療支援の御経験を踏まえて,外国人学校における保健衛生の支援の重要性等について御発表いただければと思います。
 小林理事長,よろしくお願いいたします。

【小林理事長】
 皆さん,こんにちは。小林国際クリニックの小林でございます。AMDA国際医療情報センターの理事長と言った方がいいのかもしれません。今,皆様のお顔を拝見しながら,ずっと患者さんを拝見しておりまして,ようやく一段落したところですので,もし何か途中であったらお許しください。
 まず,我々のAMDA国際医療情報センターについてですが,あまりお聞きになったことはないだろうと思います。これは昔,私どもが医学生の頃にアジア医学生連絡協議会という団体をつくりまして,日本だけでなくて,アジア十数か国の医学部の学生が学生時代から話し合って,卒業して医者になったら,お互いにこうやって社会をよくしていこうねと話し合っておりました。医者になった後にこのAMDA(アジア医師連絡協議会)という団体をつくりました。英語で訳してAMDAだったわけです。AMDAのメンバーがお互い,私を含めて5人が100万円ずつ出し合って,1991年につくりましたので,AMDA国際医療情報センターとなっております。
 どうして私がこれをつくりましたかと言いますと,私は開業医です。もう40年近く前に開業しておりますが,我々のAMDAというのはもともと国際緊急救援で,アフリカなどに難民の方が出ると,そこに行って緊急医療支援をしていました。
 ところが,開業医は患者さんを置いて,明日からアフリカに行きますというわけにいきません。開業医で日本にいなくてはならないお医者さんにとっても,何か国際貢献できることがあるのではないかと思って,考えたのがこのAMDA国際医療情報センターです。
 当初の目的は宗教,政治に関わりなく,外国人の医療相談を電話相談として受け,外国人を支援するだけでなく,外国人の方にいろいろな情報を提供し,結果的には我が国における外国人をめぐる医療のトラブルも未然に防ごうという狙いがありました。
 次第に外国人の患者さんを迎えた医療機関からも相談が増えました。結構,地域の保健所とか,いろいろなところから相談も増えまして,結果的に外国人だけではなくて,日本側の組織からも医療相談を受けるという形になっております。
 私が理事長でございますけども,副理事長の中西泉先生――私の大学の外科の医局の2年先輩で,すぐ近くで病院を経営していらっしゃいますが,このように私どもの組織はほとんどの理事が医師でございまして,そのために日本医師会とか,各郡市医師会,都道府県医師会といったところと非常に緊密な情報交換ができるというメリットがございます。
 そのほかに私どもの考え方に賛同して,もし困っている外国人がいれば診てあげますよって言ってくださる協力の先生方が今,100人以上いらっしゃいます。AMDAグループという一つの緩やかな結合体があり,一つずつ経理も別になっております。先の特定非営利活動法人AMDAというのは岡山にございまして,主な業務は国際緊急医療支援です。我々は特定非営利活動法人AMDA国際医療情報センターと申しまして,主な業務は国内外の外国人の方の医療支援です。3番目に特定非営利活動法人AMDA社会開発機構というのが岡山にありまして,主な業務は発展途上国の開発支援を行っております。そのほかにAMDAインターナショナルというのが,アジアを中心に世界の相当数の国にあります。私どもが難民支援等,あるいは紛争の支援で海外に行きますと,そこで海外のNPOをパートナーとして探し,そのパートナーの方々と対等の関係で関係を築き,一緒にやっていきましょうということで,海外――南米で言うとペルーといったところも含めて30か国にそういうAMDAの支部があるということでございます。
 我々の業務として多言語無料電話相談があります。それから,無料の電話の通訳も今やっております。ただこれは患者さんの要請によるものではなくて,医療機関の要請によるということに今のところは限定をしております。
 2番目に自治体等からの予防接種の予診票や説明書の日本語を各国語に翻訳してほしいという依頼が結構ありまして,これを受けています。
 3番目に外国人の新型コロナに関する電話相談事業を令和2年度日本医師会助成事業として,昨年の2月,3月頃,爆発的に患者さんが増えたときに行いました。
 受託事業としては今も行っておりますが,ひまわり外国語対応――これは東京都福祉健康財団からでございます。平成4年より継続して受託しておりまして,英語,スペイン語,中国語,韓国語,タイ語の5言語で毎日,電話相談を行っています。
 そのほかに神奈川県からのエイズの外国人対応事業があります。実は私が住んでおります神奈川県県央地域で,当時,タイ人のエイズ患者が非常に多くて,私も自分のクリニックで1年間に40人ほど診断しました。その際の病院に行ったときの説明等が非常に困りますので,そういう外国語の対応をしてほしいということで,神奈川県から委託事業を令和元年まで,20年以上受けていたという記憶があります。
 そして,こちらの方が私どもAMDA国際医療情報センターの2020年度の電話相談や電話通訳の集計でございます。一番左でいきますと年間1,333件。電話通訳はさほど多くありませんが,46件ございます。下に言語を書いてございますが,日本語が多くて,その次が英語,中国語,ポルトガル語,スペイン語と書いてございます。右の上の方に電話の相談件数を書いてあり,どういう時期に多かったというのが書いてございまして,やはりコロナの波が増えた時期がちょっと増えております。
 その次に,電話通訳の言語も英語は毎日やっていますので,英語が非常に多いですが,ポルトガル語や中国語も時々あります。
どういう方から相談電話が来るかと言いますと,我々の場合に海外にいる方から来ることも実はございます。これから日本に旅行に行きますけど,酸素ボンベはどこで借りたらいいでしょうとか,車椅子はどこで借りられますかというのは,アメリカやオーストラリアから来ることもあります。今のところ,海外からは中々来られない状況になっていますので,こちらの相談はほとんどありません。昨年度は,83.9%の相談が居住者,要するに日本に中長期に滞在なさっている方から来ております。
 相談電話の内容ですけども,国民健康保険や社会保険に入っている方が多いので,日本で住民基本台帳に載ってらっしゃる方が多いということだろうと思います。
集計としまして,これは国籍別に書いてございますが,日本人の方が仲介する,あるいは自分が面倒をみてらっしゃる方がよく分からないのでという方,NPOといった組織からの電話が非常に多いです。その次にネパール,中国,フィリピン,アメリカ,ブラジルになります。
 そういう電話がどういうところから多いかと言いますと,東京都が圧倒的に多いですが,神奈川県や千葉も多く,いわゆる首都圏が多いですけども,そのほかに大阪,愛知,京都,兵庫といった関西圏が続きます。そのほかにも数は少ないですけども,ほぼ日本全国から電話がかかってきているということが分かります。医療に関する特化した電話相談や通訳を行っているところがNPOとしては私どものところしかないですから,こういうデータになっているのではないかと思っております。
 以上です。

【佐藤座長】
 小林理事長,ありがとうございました。

【小林理事長】
 言い忘れましたが,私は医師になってこの10年,今年の5月まで神奈川県大和市の大和市医師会の会長を5期10年務めておりました。学校医の件も学校医を派遣すること等も我々の仕事でしたので,ほかの医師の方々よりは知識があると思います。私自身,6年間,神奈川県立の大和高校の校医をやっておりました。最近,校医のなり手に若い先生の興味がなくて,叱咤(しった)激励しているのですが,今,顧問になりましたのに,来年から再度,大和南高校の校医をお願いしますとまた言われているところです。
 私のところにも外国人の患者さんがいろいろいらっしゃいますが,病気の説明をするときに日本人はあまり困りません。どうしてかと言うと,日本語で話すからだけではなくて,考え方がやはり似ているからです。それから,医療や病気に関する基本的な知識が割と似ている。
 どうしてかと考えますと,学校の教育の中の保健教育で,小さい頃からずっと学校で病気のことや自分の体のことを学んでいるという共通な視点があります。これがとても大きいです。今,私のクリニックにはアメリカ軍の基地の方や,それから,フィリピン人の患者さんが最も多く,次がペルー人,その次がタイ人,その次がベトナム人です。大体100か国から来ています。患者さんの大体,30何%が外国人,60何%が日本人で,地域の方ですから一緒に診ましょうということで,私自身も英語のほかに,簡単ではありますが,タイ語とスペイン語を話します。
 いろいろ話していくと一番困るのが,自分の考えに固執して,絶対に僕の言うことを聞いてくれない方々です。はっきり言いますと,それは外国人の方に多いです。
 長年,拝見してくると,例えば,皆さんが発展途上国に行ったときに,そこのお医者さんから「あなた,入院しなさい」と言われたら,「本当かよ」ときっと思うと思います。それと同じように,自分の国よりも日本の文化がちょっと低いと思っている国から来た方は,やっぱり日本人のお医者さんの言うことをなかなか聞いてくれません。信用を得るのが本当に大変です。
 それと,国によっては医療に対するアクセスが非常に難しい国があると思います。例えば,貧富の問題や,あるいは学校教育の問題もあると思いますけども,そういう方は自分の考えがものすごく強くて,私たちから見ていると,そんなことはあり得ませんという考えを持っていて,固執して,なかなか聞いてくれないということがあります。本来ですと日本と同じような健康教育をいわゆるインターナショナルスクールの中にそういう教育を入れていただくともっといいのかなとも思います。
 決して日本人の我々にとっていいというわけではなくて,生徒さんのためにもいいのかなと思います。実際,私のところのインド人の方でもお子さんが神奈川県内にあるインド人学校に行っているという方が結構いらっしゃるのですが,先日お聞きしたら,各種学校にもなってない,寺子屋が大きくなりましたぐらいのところらしいのですけども,そういう状態のところが日本にあるということでした。今回,コロナのことで心配だったのは,やはりコロナになったらこうしてくださいと,学校にも連絡があって,厚労省や文科省もいろいろお知らせをしていると思うのですけども,そういうことが素早く早く伝わらず,外国人の社会に一歩,遅れてつながるという現状があります。
 阪神大震災や東日本大震災のときに,外国人に対する情報提供がうまくいかなかった経験がございます。今回のコロナに関しては,出足が少し遅かったのですが,いろいろなところで多言語の通訳や翻訳,窓口ができて,むしろ外国人の方がどこにアクセスしたら適切な情報がもらえるのかが混乱してしまうというような状況です。
こういうことをもう少し整理をして,学校に下ろしていっていただければ,もっといいのかなと思う次第でございます。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。もう短い時間ですけれども,どうぞ皆さん,御質問,御意見等がありましたら,お願いします。
 田中委員,お願いします。

【田中委員】
 はい,ありがとうございます。貴重なお話をありがとうございました。NPO法人青少年自立援助センターの田中です。
 電話相談の事例を受けて1点質問ですが,日頃,課題に感じているのが,相談があったケースを医療機関につなぐとき,相談の先の医療機関の対応がなかなか難しいというような現状があるのですが,そういったときはどのように対応していらっしゃるのでしょうか。

【小林理事長
 大きく言ってしまいますと,例えば,私が相談を聞くとします。そして,こういうことは医療機関に行って,こう言ってくださいとお話をしても,医療機関によっては,「いや,そんなことはこっちが考えることだ」と言われる場合や,言葉はできるけども,我々のところではそういう科目はやっていないといったこともあると思います。
 今回,コロナのことで困ったのは,日本にたくさんの医療機関がありますが,そのうち外国語で対できる医療機関がすごく少ないことです。更にその中でも,今回は,皆さんもいろいろ経験なさったと思いますが,発熱している患者さんは診ないという医療機関が結構あり,発熱していると診るところが更に少なくなります。私のところはそこが集中してしまいまして,去年の4月から    今年の10月まで,私のところは実際に私が診て見つけたコロナの人は400人で,そのうちの140人ぐらいは外国人です。特に8月は,非常に多かったです。
 やはり日頃から相談がある地域で外国人の患者さんを診てくれるところはどこなのかという情報を収集するとともに,内容によっては,私どものセンターにお電話いただいて相談していただいた方が,もしかしたら解決策をお示しできる可能性があるのかなと思います。我々の組織の方が比較的,医療機関とのコミュニケーションがよくて,医療機関の方の情報もよく分かります。
 なぜ医療機関は,私どものセンターに対して比較的理解を示してくださるかというと,一番は同業者として医師がやっているので,医療機関の苦労とか大変さを分かってくれるだろうという頭があるからです。私どももそれはよく分かりますので,そういう相談があったときにはいろいろと内容を吟味して,適切なお答えをするようにしています。

【田中委員】
 ありがとうございます。

【佐藤座長】
 オチャンテ委員,お願いします。

【オチャンテ委員】
 質問ですけど,健康診断のボランティアとかということも,実際,行われているのでしょうか。それとも,そういった現場へ行って診察をされるという形になるのでしょうか。

【小林理事長】
 今,お話になったのは,私個人のことですか。それとも,私の組織のことでしょうか。

【オチャンテ委員】
 組織として,そういった活動も行われているかどうかです。

【小林理事長】
 私の組織では,一応,人を派遣するという事業は今のところはやっておりません。というのは,東京は地理的に広いということだけでなく,人を派遣するというのもデメリットが実はあります。医療機関からすれば,来てくれて,目の前にいるからうれしいというのはあるのですが,逆に言うと,お約束していても,お医者さんがこの日は休診でしたとか,患者さんが「いや,急にこの日に都合悪い。来週にしてください」と言われると対応ができません。
 今,派遣するというNPOが別にありますので,もう派遣の方はそちらの方にお任せをして,我々は電話の相談に徹しているというところです。

【オチャンテ委員】
 ありがとうございます。

【佐藤座長】
 ほかはいかがでしょうか。田中委員,お願いします。

【田中委員】
 度々ありがとうございます。
 先ほど先生の御発言の中で,外国人学校等で医療に関する教育をしてもらえるといいというお話があったかと思いますが,具体的にどのような内容が外国人学校の中で,子供たちに教育されるとよいとお考えでしょうか。

【小林理事長】
 これは子供さんたちによいのか,あるいはその御両親に対してもいいのかということがよく分かりませんが,例として,日本に日本脳炎という病気があります。日本では定期予防接種を行っていますが,当時,インターナショナルスクールのお子さんが日本脳炎で亡くなった方がいると,昔聞いたことがあります。そのときに学校の御父兄の方が,「日本という文化国家なのに,脳炎なんていう病気があるのか」と驚かれたという話を聞いたことがあります。
 要するに,そういう不幸な結果が出るまでは,多分,予防接種にもあまり興味ないと,日本ってそんな脳炎なんか出るところではないというお考えがあったと思います。
 ですから,私はそういう教育をしていただくことは,お子さんだけではなくて,インターナショナルスクールのお子さんも日本で暮らしていくわけですから,日本側の情報をきちんと把握していただくということがやはり特に大事だと思います。今回のコロナにしても,東日本大震災にしても,そういうふうに思っている次第です。

【田中委員】
 ありがとうございます。例えば,私たちのようなところでそういった教育に取り組む際に,活用可能なテキストですとか,あるいは講師の派遣等を行っているような団体などはあるのでしょうか。

【小林理事長】
 まず団体はないと思います。その次に,では団体がないからどうしたらいいかというと,各地に郡市医師会というのがあります。日本医師会の下に都道府県医師会があって,都道府県の医師会の下に郡市医師会というのがあります。例えば,神奈川県で言いますと,県の下に18の医師会があります。
 そういう医師会の中に必ず学校医担当という先生がいまして,学校医担当が学校医に含めた全てのことを考えます。ですから,本来ですとそういう先生か誰かが医師会の中で,同じ地域の中にあるインターナショナルスクールにも分かっていただくための何か事業を考えてくださればいいのですが,今の医師会の先生方の学校医に対する全くの若い先生方の理解のなさ,忙しさがございます。なぜ若い先生方の理解がないかと言いますと,保険点数が低く抑えられているために,必死にやらないと医療機関の経営がやっていけません。そのために若い先生方が借金までして,自分のクリニックをオープンして,やりましょうとはなりません。むしろ可能性があるとしたら,その地域にある大きな病院の小児科で人が余っていれば,そういう可能性があると思います。
 ですから,本来ですと医師会の中でそういう役割を担うところがあれば一番いいのですけども,ただ今の状況では難しいとは思います。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。小林理事長,本当にありがとうございます。大変参考になりました。また機会がありましたら,是非よろしくお願いしたいと思います。
それでは最後に,議題のその他について,事務局から今後のスケジュールについて説明をお願いします。

【事務局】
 事務局からお知らせさせていただきます。
 来月以降も月1回程度の頻度で有識者会議を開催する予定とさせていただいております。お手元の資料の今後のスケジュール案にございますとおり,次回,第7回は11月24日水曜日,その次の第8回は12月22日水曜日に予定させていただいております。
 次回の第7回会議では,外国人学校や自治体への追加調査の結果を報告させていただきますとともに,最終取りまとめの素案について御議論いただく予定としております。
12月の会議では最終取りまとめについて議論を行っていただきたいと考えております。
 以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。いよいよ11月24日と12月22日ということで,この会議も大詰めでございます。ヒアリングをずっとさせていただいて,大変貴重な話を伺う機会を得て,大変参考になっておるところですけども,これを是非取りまとめの方に生かしていければと思います。
 よろしいでしょうか。それでは,皆さんの御意見も出尽くしたようですので,今日の会議はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。また次回よろしくお願いいたします。


―― 了 ――

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