外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議(第5回)議事録

1. 日時

令和3年9月29日(水曜日) 11時00分~12時30分

2. 場所

Web 会議システム(Webex)

3. 議題

(1)外国人学校の保健衛生環境に関する令和4年度概算要求について
(2)外国人学校の保健衛生に関する追加調査の実施について
(3)有識者 ヒアリング
(4)その他

4. 議事録

【佐藤座長】
 第5回になります,専ら外国人の子供の教育を目的としている施設いわゆる外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議を開催いたします。
まずは事務局から,議事と配付資料の確認をお願いします。

【事務局】
 事務局でございます。
 本日の議事は議事次第に記載のとおり,1,外国人学校の保健衛生環境に関する令和4年度概算要求について,2,外国人学校の保健衛生に関する追加調査の実施について,3,有識者ヒアリング,4,その他でございます。
 なお,議題3の有識者ヒアリングでは,浅野委員及び北垣委員からお話をお伺いする予定としております。どうぞよろしくお願いいたします。
配付資料は,議事次第のとおり,資料1から3までございます。そのうち資料2につきましては,浅野委員,北垣委員の資料の2つがございます。参考資料につきましても議事次第のとおりでございます。不足等がございましたら事務局までお申しつけいただければと思います。以上です。

【佐藤座長】
  ありがとうございます。それでは,議題1,外国人学校の保健衛生環境に関する令和4年度の概算要求について,事務局から御説明をお願いします。

【事務局】
 事務局でございます。
 予算の説明に先立ちまして,まず,中間取りまとめをこれまでの4回の会議でまとめていただき,ありがとうございました。中間取りまとめの最終版につきましては,参考資料1と参考資料2にもございますけれども,予算にも関係しますので簡単に説明させていただきます。
 参考資料2が中間取りまとめですけれども,ここで課題として大きく三つあるということを明らかにしていただきました。一つ目が,外国人学校や外国人学校に通う子供の把握に関する課題,二つ目が,外国人学校において保健衛生環境対策を講じる際に生じる課題,三つ目が,外国人学校が保健衛生環境対策を講じる際の支援体制に関する課題でございます。
 それを踏まえまして,中間取りまとめの17ページになりますけども,今後の方向性という形で整理いただきました。このうち,直ちに対応するべき項目といたしまして,さらなる実態の把握に向けた調査として,その詳細な情報を把握する必要があること,回答のなかった外国人学校の状況も把握をする必要があることを頂いてございます。これにつきましては議題3で,今後のスケジュールについて説明させていただこうと思っております。
 直ちに対応するべき項目の二つ目としては,適切な情報発信が必要であるということで,外国人に対する全国的な情報発信の窓口の設置ですとか,あるいは資料の多言語翻訳が必要であること。さらに,NPOや民間企業,外国人コミュニティ等の多様なステークホルダーを通じた情報発信が可能な体制を整備する必要があるということを頂いております。
 更に三つ目として,きめ細やかで効果的な支援といたしまして,地方自治体と外国人学校との間で関係を構築し,必要な支援を行うための体制構築を行う必要があること。また,外国人学校と一定の協働体制が取られている都道府県や市町村が存在することから,これらの取組を支援し全国展開することが必要であることとされております。これらを踏まえまして,今から説明する事業を予算要求させていただくことといたしました。
 資料1を御覧いただければと思います。背景については,先ほど御説明をさせていただいたとおりです。事業の概要ですが,この外国人学校における保健衛生環境整備事業におきまして,二つの事業を考えてございます。一つ目が,外国人学校プラットフォーム事業,それから二つ目が,地域における外国人学校の保健衛生の確保に係る調査研究事業でございます。
一つ目の外国人学校プラットフォーム事業につきましては,中間取りまとめでもございましたけれども,地方自治体を超えた広域的なところから子供たちが外国人学校に通っているというところがあり,やはり広域的な支援が必要であるということがございます。また,今現在でも情報発信はしているところでございますけれども,ただ一方的に情報発信をするだけではなくて,更に相談機能と情報発信機能を併せ持つような全国的な窓口を設置したいと考えております。
 ここで事業内容として挙げさせていただいているものとして,一つには双方向となるような相談窓口の設置ですとか,メールマガジンやホームページ,SNS等の多様な形での情報発信,あるいは多言語での対応というのは非常に重要でございますので,多言語で対応できるような職員を配置して,かつ,速やかに資料を多言語で翻訳していくというような機能を設けたいと思っております。そして,このような相談や情報発信を通じて,認可外の施設を含む外国人学校を把握していきたいというのが一つ目のプラットフォーム事業でございます。これにつきましては,民間団体等で実施していただくことを想定してございます。
 二つ目の,地域における外国人学校の保健衛生の確保に係る調査研究事業につきましては,これまでの御議論や中間取りまとめでも御指摘を頂いているところでございますが,やはり外国人学校の保健衛生について支援していくためには,地方自治体の役割というのは非常に大きなものがございます。ただ,その支援をする体制というのもそれぞれの地方自治体で様々なものがございますし,その支援の内容も様々なものがございます。やはり外国人学校に近い位置にある地方自治体が主体となって,認可外の施設も含む外国人学校の保健衛生環境の実態をきちんと把握していただいて,更にどのような支援を行うのが効率的かといったことについて調査研究を行っていただくということを考えております。
 事業内容としては,外国人学校やその子供たちの実態を把握するということもありますが,それに加えて,どのような対応,対策,取組を行えば,外国人学校の保健衛生環境の向上に貢献するのかといったことについて取組をしていただきます。ここで例に挙げたもの,あるいは例に挙げてないものも含めて,様々な取組の仕方があると思いますが,そういった取組を行っていただいて,良好事例として全国の自治体にも発信をしていきたいと考えております。
 実施主体としては,都道府県と,それから市町村,それぞれ支援の仕方も違ってくると思いますので,そういうところで取組をしていただきたいと思っております。左下に事業スキームがございますけれども,それぞれ,プラットフォーム事業と自治体での取組が行われますが,その間でも,きめ細やかに情報共有をして,好事例があれば全国に展開をしていきたいということを考えております。
 このような事業を通じまして,これから外国人学校の実態をもっときちんと把握をしていきます。また,このような取組を続けてノウハウは確実に蓄積をされていくと思いますので,きちんとそれを分かりやすい形で全国に展開をしていきます。あるいは,その自治体のモデルケースをきちんとつくっていくことによって,全国の外国人学校の保健衛生環境向上につなげていきたいと考えております。
 以上でございます。

【佐藤座長】
 ありがとうございます。
 中間取りまとめを基にして,次年度,令和4年度の概算要求として,今お話しいただいたような項目を今概算要求しているということでしたけれども,ここまで御質問等があればお願いいたします。
 田中委員,お願いします。

【田中委員】
 ありがとうございます。まず1点目,外国人学校のプラットフォーム事業についてですが,民間団体を公募で実施主体として選定という想定ですけれども,例えばどのような団体がこうした事業を運営可能なのか,何か想定のようなところがあれば教えていただけますでしょうか。

【事務局】
 御質問ありがとうございます。この外国人学校プラットフォーム事業においては二つ機能が必要だと思っており,一つは,多言語で対応できるというところは必要だと思っております。ただ,多言語で対応できるだけですと,必ずしも保健衛生について分かっているというわけではないので,きちんと外国人学校の保健衛生の状況あるいは学校の保健衛生の仕組みがどういうものかということが分かっていること,その二つの知見を持つような団体がないかということで今検討しているところでございます。

【田中委員】
 結構難しそうだなと,適切なところが見つかればいいなと思います。
 あともう一点ですけれども,さらなる実態の把握に向けた調査というのが中間報告の中に組み込まれているかと思いますが,こちらは保健衛生環境整備事業の方には組み込まれていないという理解でよいでしょうか。

【事務局】
 それにつきましても当然この中でも行おうと思っております。つまり,例えばプラットフォーム事業の中でも,初めて相談に来たような認可外の学校があるかもしれないですし,事業を通じてどういう学校があるのかというのは分かります。更にその相談の中身を聞いていれば,どんな状況にあるのかということも分かると思いますので,そういう形で把握をします。できれば,ただ把握をしておくだけではなくて何らかうまくまとめて,成果として全国に発信できるような形にできればと考えております。

【田中委員】
 ありがとうございます。プラットフォーム事業の中の事業内容の例にあるものが該当するということでしょうか。

【事務局】
 その例にあるものが代表すると思っていますし,これをやっていただこうと思っていますが,実際進めていく中で様々な質問や相談があると思いますので,それに合わせて工夫をしていくということはあると考えております。

【田中委員】
 通学のお子さんに関する実態把握が別で進んでいるかと思いますけれども,そちらとは別の流れで,個別に来たケース等を中心に把握していくということでしょうか。

【事務局】
 まずは個別に相談があったものについてはきちんと,特に保健衛生を中心に答えていくということを想定しています。

【田中委員】
 分かりました。ありがとうございます。

【佐藤座長】
 ほかに,いかがでしょうか。
 では,倉橋委員お願いします。

【倉橋委員】
 外国人学校プラットフォーム事業について,特にブラジル学校に対してどのような影響が及ぼされますか。この事業の目的というか,やったからどうなるというのがよく分かりません。

【事務局】
 御質問ありがとうございます。まずはブラジル学校に対して,認可されたものもあれば,認可外の学校もあると思います。そういう把握できた学校に対しては情報を多言語で,例えばブラジル学校であればポルトガル語ということになると思いますけども,ポルトガル語で情報発信ができるようになると,やはり日本語でもらうのと,ポルトガルでもらうものは随分違うと,これまでの議論でも頂きました。また,保健衛生の知識とポルトガル語,両方話せる人はなかなかいないと思うのですが,例えば窓口のところでポルトガル語で話しやすくなったり,問合せもしやすくなったりするということが想定されます。
 ただ,この資料ですけれども,新規の事業で,この予算額,あるいはその事業内容も含めて,財政当局と交渉中でございますので,今後変わってくる可能性もありますが,今のところ,この資料にあるような形を想定しています。

【倉橋委員】
 ありがとうございます。情報発信すればそれで仕事しましたとなってしまうという心配があります。受け取った側がどうするのかという,受け取った側の視点というのがないので,情報発信されても,というところが気になりましたので,一つ検討していただければ有り難いです。この情報発信によって,ブラジル学校に何をしてほしいのかというところがあると,ブラジル学校同士でも,こういうことがあるから協力してねとか,一緒にやっていこうというのは言いやすくなるのかなと思います。ブラジル学校全体としては,保健衛生環境の向上は何とかしたいと思っているところです。一緒にやっていただける方から,ただ送って終わりというのも,と思いました。受け取る側の視点というのがあるといいかなと思います。
 調査研究事業についても同じで,「調査研究するから協力してください」「はい,分かりました」というので終わってしまいます。この調査研究したから,ブラジル学校がどうなるのというところがあると,ブラジル学校としてもすごく動きやすいかなと思います。周りの方々にお話をして,一緒によくなっていこうと言いやすいかなとも感じました。
 これをやるというのは分かるのですが,これをやったから,受け取る側,影響を受ける側としてはどうなるのかというのがもう少し知りたいというところです。

【事務局】
 ありがとうございます。今の御視点というのは有識者会議の中でも,あるいは中間取りまとめの中でも,双方向であることとか,供給者目線で一方的にならないということはとても大切であると御指摘いただいているところです。今まだ構想段階ではありますが,改めてそういう視点を織り込みながら,どうしたら使いやすいものになるのだろうかということはよく考えていきたいと思います。ありがとうございました。

【佐藤座長】
 資料1の期待される成果に,もう少し明確に具体的な何か視点が出れば,今の御質問に対する答えになるだろうと思います。これは概算要求ですので,更に財務省との折衝の中でもそうしたことが聞かれると思います。是非その辺のところは今の倉橋委員の御指摘も踏まえて明確にしていければいいかなと思いました。ありがとうございました。
それでは,議題2の外国人学校の保健衛生に関するヒアリング調査の実施についてに入っていきます。
まず,事務局から説明をお願いします。

【事務局】
 事務局でございます。
 ある意味,先ほど中間取りまとめを御紹介させていただいたものの続きになりますけれども,今,外国人の保健衛生環境に関して追加調査をしようと検討しているところでございますので,検討状況について,御報告をさせていただきます。
有識者会議におきまして以前報告をさせていただいた,本年4月から5月に実施した外国人学校の保健衛生環境の実態調査の回答率が実のところは5割ということでございますし,あるいは委員の先生方からも保健衛生対策の検討に向けて,個々の外国人学校の状況を踏まえたより具体的な課題とかニーズとかを把握する必要があるのではないかといった御意見を頂いているところでございます。
 また,8月にまとめていただいた中間取りまとめにおきましても,外国人学校やその子供たちの把握ですとか,あるいは外国人学校の状況を踏まえた保健衛生環境基準等の考え方や適切な情報の入手,地方自治体の関係部局間,あるいは外国人学校との連携といったところが課題であるという御指摘も頂いてございます。このため,これらの課題について把握することも含めて,外国人学校や地方自治体等への追加の調査を行うことを考えております。
 ただ,コロナウイルスの感染症対策が必要というところで,具体的にどのような形で実施するのかはまだ検討中でございます。追加調査の対象としては,やはり回答率が5割にとどまったというところもございますので,回答率があまり高いと言えなかった認可外の施設への調査ですとか,必ずしも保健衛生対策が十分ではないと思われるようなところに対して調査を行っていくことを検討しているところでございます。
 あわせまして,外国人学校や地方自治体を含む地域のステークホルダー間の連携の在り方ですとか,あるいは外国人学校への保健衛生に係る効果的な支援の在り方の検討に資するために,外国人学校が立地している地方自治体や支援団体等についても可能であれば調査をしていきたいと考えております。追加調査においては,外国人学校に対して,例えば保健衛生対策としてどんなことを実施したいのか,地方自治体等とどのように連携をしているのか,子供たちがどのくらいの範囲から通っているのかといったことを聞く予定です。また,その立地地方自治体等に対しても,どのくらいその外国人学校とか子供たちの状況を把握しているのか,実際に外国人学校とどのように連携をしているのか,外国人コミュニティとどのように連携,あるいは情報発信ができているのかといったことを聞く予定です。また,支援団体等があれば,どのような役割を担っていて,どのような取組を行っているのかなどについてお尋ねをしていきたいと考えております。
 これから更にその詳細を詰めていった上で,外国人学校を中心にして追加調査を実施していくことを予定しております。追加調査の結果については,次回か次々回になると思いますが,有識者会議において御報告をさせていただくことを予定しております。
 以上でございます。

【佐藤座長】
 今後,事務局の方で幾つかヒアリング調査を実施していくという今の御報告でした。これは中間取りまとめでも,いろいろな方の御意見等を聞きたいという御要望もありましたので,是非実現していただければと思います。議題3の有識者ヒアリングで,今日はお二方に御発表をお願いしてございますので,この有識者ヒアリングに入っていきたいと思います。
 最初に,養護教諭の指導力の向上等に長年御尽力され,現在,全国養護教諭連絡協議会の顧問を務めておられる浅野委員,それから,東京薬科大学教授として学校の公衆衛生等に精通されている北垣委員からそれぞれお話をお伺いしたいと思います。お二方からプレゼンテーションが終わった後,まとめて質疑を行いたいと思います。
 まず,浅野委員からお願いします。

【浅野委員】
 では,私からお話しさせていただきます。
 この会議において,我が国に存在する全ての子供たちの健康を確保するためには,やはり養護教諭の専門性や必要性を情報提供することが大事なのではないかということをお話ししたかと思います。私からは,一条校において養護教諭がどのような職務,役割を果たしているのかということについてお話ししたいと思います。
 まず,平成20年1月の中央教育審議会答申において,養護教諭の役割,職務について,次のように述べられております。学校保健活動の推進に当たって中核的な役割を果たしており,現代的な健康課題の解決に向けて重要な責任を担っている。養護教諭の職務は,学校教育法で「児童生徒の養護をつかさどる」と定められており,現在,救急処置,健康診断,疾病予防などの保健管理,保健教育,健康相談,保健室経営,保健組織活動などを行っております。
 中央教育審議会答申及び学校保健安全法において,学校保健に求められている養護教諭の役割は次の7項目になっております。1,学校内及び地域の医療機関等との連携を推進する上でのコーディネーターの役割。2,養護教諭を中心として関係教職員と連携した組織的な健康相談,健康観察,保健指導の充実。3,学校保健センター的役割を果たしている保健室経営の充実。4,いじめや児童虐待など児童生徒等の心身の健康課題の早期発見,早期対応。5,学級活動における保健の指導を始め,T・Tや兼職発令による保健教育への積極的な授業参画と実施。6,健康・安全に関わる危機管理への対応,救急処置,心のケア,アレルギー疾患,感染症等になります。7,専門スタッフ等との連携協働。それから,養護教諭の専門領域における主な職務内容を今からお示しいたしますが,時間の関係上,詳細については資料を御確認いただければと思います。
 まず,学校保健計画及び学校安全計画,保健管理,保健教育,健康相談,保健指導,保健室経営,保健組織活動,その他となります。次に,現代的な健康課題への対応における養護教諭の役割ですが,多様化・複雑化する児童生徒等が抱える現代的な健康課題については,専門的な視点での対応が必要であり,養護教諭が専門性を生かし中心的な役割を果たすことが期待されております。
 そういった課題解決に向けた児童生徒等の支援における四つのステップと養護教諭の役割は次の図になります。養護教諭は,児童制度等のサインに気づきやすいという特性を生かし,学校内外のコーディネーター的な役割を果たしながら,情報収集や分析を行い,支援方針に助言を行い,必要に応じて健康相談や保健指導を行っております。また,健康課題を的確に早期発見し,課題に応じた支援を行うだけではなく,健康な生活を送るために必要な力である心身の健康に関する知識・技術,自己有用感・自己肯定感(自尊感情),自ら意思決定・行動選択する力,他者と関わる力などを全ての児童生徒等に育成するために,教職員や学校医等の専門スタッフ等と連携しながら,学校において様々な取組を行うとともに,家庭や地域における取組を促すことが求められ,実践しております。
 次に,新型コロナウイルス感染症への対応における養護教諭の役割ですが,これまで以上に養護教諭の専門性が求められております。全国の学校で養護教諭は,従来の職務に加え,感染症対策や児童生徒等の心のケア等を,保護者,地域,関係機関と連携を図りながら献身的に取り組んでおります。ここでは,全国養護教諭連絡協議会が昨年度集約しました各学校の状況と,養護教諭が中心になって取り組んでいる対策・対応について,具体的にお話しします。
 1,保健情報の管理(情報の収集・分析)と提供。最新の知見の習得(通知文や「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~」等の読み込み)と情報提供。健康観察の集計と情報提供。サーベイランスシステムの入力。保健所への連絡。経過観察が必要な児童生徒等の経過記録。警戒が必要な場合(風邪り患者増加や地域内での発症確認等)。県研究の受講と教職員への還流報告資料作成。
 2,衛生管理と指導への取組。登校時の健康チェックの強化(役割分担,健康チェック表の作成,指導用資料作成,保護者向け協力依頼通知・資料づくり)。校内施設消毒計画づくり(実施方法,役割分担,消毒用薬剤等の購入)及び実施。担任・教科指導者・部活動顧問に対して衛生管理への助言。発症者・濃厚接触者(疑いを含む)が出た場合の対応(保健室のゾーニング,発熱や風邪症状の児童生徒等への対応を別室で行う等の対策,関係機関への報告)。学校医,学校歯科医,学校薬剤師,保健衛生部局との連携の窓口。
 3,「学校の新しい生活様式」の具現化に向けての取組。授業・活動時の配慮事項や計画づくりでの感染症予防対策や資料作成,実践時の確認と実施後の振り返り・評価。校外学習等の実施計画作成の対応マニュアルづくり。「学校の新しい生活様式」理解推進への資料づくり。ソーシャルディスタンス確保のための啓発掲示や表示作成。
 4,児童生徒等の体の変化への取組。体調不良を訴える児童生徒等の増加,昨年度は夏休み休業が短縮しましたので,そのことからも来る疲労の蓄積などとその対応。肥満の増加と個別指導,自粛による遊びや運動機会の減少,生活習慣の乱れの影響から来るものです。スマホやゲームの長時間化による,生活習慣の乱れや視力低下への個別指導。
 5,児童生徒等の心のケアへの取組。注意が必要な児童生徒等についての学級担任との情報交換。児童生徒等と保護者対象の調査の実施及び,気になる児童生徒等の対応。発症者や濃厚接触者(疑いを含む)への心のケア及び誹謗(ひぼう)中傷への予防対策と対応。登校しぶりや,教室にいられない児童生徒等の増加への対応。虐待事例の増加への対応。スクールカウンセラーによる面談実施への各種調整などです。
 新型コロナウイルス感染症については,変異株の出現もあり,長期的な対応が求められる状況にあります。また,ほかのウイルスや新しいウイルスの出現による感染症の大規模な流行も懸念されます。今後も養護教諭の専門性を生かし,引き続き実践していく必要があると考えております。
 最後に,一条校における保健衛生対策を外国人学校に適用させる上での課題についてお話しさせていただきます。
 まず,学校保健の中核的な役割を果たしている養護教諭を配置させることが最も効果的であると考えております。外国人学校の保健衛生環境の実態調査において,各種学校認可校や認可外施設でも,3割と少ない割合ではありましたが養護教諭の配置が見られました。それは養護教諭が必要だということを判断されて配置されているのだと思います。一条校における養護教諭の専門性と必要性を国や自治体から広く知らせることによって,養護教諭の配置を拡大させることが大切ではないかと思います。
課題は,前にもお話が出た言語の問題や人件費と思われますが,学校において教科指導に求められている専門性と同様に,学校保健における専門職を置くことは必要ではないかと思っております。
 また,養護教諭の配置がない場合,又は配置が難しい場合は,今述べたような一条校において実施している養護教諭の保健衛生対策を具体的に伝えて,現場での担当者を明確にして実施してはどうかと思います。その際,国や自治体による情報提供と支援が必要であり,確実に,そして継続的に実践されているかを確認するための実施状況の調査や評価が必要ではないかと思っております。課題は,実施基準の設定と,そういったことが義務化できるかどうかという点だと思っておりますが,今までお話ししました養護教諭が行っているようなことを全て現場でやっていただくことが可能なのかどうか。そして,限られた人材に全てこういったことをやってくださいということができるのかどうか。そういうことで国とか自治体からの具体的な支援というものをやっていただけたらいいかなと思っております。
 私からは以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。養護教諭の役割,それから養護教諭が配置された際の課題というところまで幅広くお話ししていただきました。ありがとうございます。
続いて,北垣委員,お願いできますでしょうか。

【北垣委員】
 東京薬科大学薬学部の北垣と申します。よろしくお願いいたします。私からも,一条校における対策ということで,学校保健についてお話をさせていただきたいと思っております。私が今回お話をさせていただく内容については,1回目の会議で,学校保健,特に環境衛生の在り方とかいうことをお話しさせていただいたところと重複する部分もあると思います。また,先ほど浅野委員から,一条校の養護教諭の取組について詳しくお話をしていただいておりますので,かなり重複する部分があるかと思いますけれど,学校若しくは子供たちの保健衛生環境の対処を考える上で委員の方々に,今後考えていく上での一助になればと考えています。
 学校保健と書いておりますけれども,一条校で何をやってきて,国が,子供たちを預かっている学校が何をしたらいいのかということを,どのように考えて政策として続けてきているのかというところを御理解いただければと思っております。
 まず,学校保健の構造というものをお示ししたいと思います。 俯瞰(ふかん)的に見ていきますと学校保健というのは大きく二つに大別されます。一つは保健の管理という考え方と,浅野委員からもお話が一部ありましたけれど,保健の教育です。子供たちが生涯にわたって健康に過ごしていくための教育というのは,公衆衛生学上大きなウエートを占めますが,今回の外国人学校の保健衛生という考え方は恐らくこの保健管理を中心として考えているだろうと今回考えましたので,こちらの保健管理の部分について中心にお話を進めさせていただきたいと思っております。
 保健管理に関しては,対人管理と対物管理の二つに大きく分けることができると御理解をいただければと思います。こちらについては日本の場合は学校保健安全法という法律に基づいてこの管理を行うことになっており,学校保健安全法を理解していただくことも必要になるかと思いますので,少し御説明をさせていただきます。今,学校保健安全法とお伝えしたのですが,もともとは学校保健法という法律がありました。こちらは昭和33年につくられたもので,かなり古い法律になっております。平成20年に初めて大幅改定がされました。この学校保健法から学校保健安全法に改正する背景がありました。これは一条校に限らず,現代の子供たちが抱えている課題ということになります。現在の子供たちが抱えている健康若しくは安全に関する課題が増え,多様化・複雑化してきていることが背景にありました。
 具体的には,先ほどお話にありました中央教育審議会では,メンタルヘルスに関する課題が増えてきているということ,アレルギー疾患を中心とした疾病を抱えている子供たちが増えてきているという認識をもち,それに対応するためにどうしたらいいかを国として整理する必要があると考えたようです。それ以外にも,児童生徒等が被害者となるような事件・事故・災害,学校保健安全法が施行された後ですけれど東日本大震災等の大規模災害が大きな課題となるので,それに対応するために法律を改正しようということになりました。その上で,保健法を保健安全法に改正する際のポイントがございます。まず,目的を明確化していくことです。簡単に言えば学校における保健管理,若しくは安全管理に必要なものというのは何かということを法律上整理しましょうということです。
 その上で,保健安全に関する必要な項目は今までもあったのですが,それを明確化した上で,責任の所在の明確化をしていくことになりました。学校若しくは国が何をすべきかについて,責任の明確化と言うときつく聞こえるかもしれないですが,それぞれが果たすべき役割を明確化していきましょうということになります。具体的には,国,地方公共団体,学校の設置者,学校の管理責任者である校長の責務や役割を明確化しましょうというのが法律の改正のポイントになります。
 例えば,学校保健安全法の第3条には,国の責務及び地方公共団体の責務が記載されています。ここで先ほどのお話にもありましたけれど,学校の保健衛生を推進していこうとすると,やはり財政的な措置が必要になってきます。国が学校保健を推進していくためには,財政上の措置を取らないといけない,同様に地方公共団体も取らないといけないということが規定されています。
 ただ,国がやるべきこと,地方公共団体がやるべきことは,財政措置をして,お金だけ出せばよいという話ではなくて,その他必要な施策を講じなければいけません。この必要な施策とは何かということはこの後説明させていただきます。それが国だけではなくて地方公共団体も,国が講ずることを地方でしっかりと考えて行動を起こしていくということが法律上明記されているということになります。一条校に関しては,財政的には,ある程度のやるべきことをやるだけの資金が調達できるような状態になっていると御理解いただければいいかと思います。
 次に,国や地方公共団体だけではなくて学校の設置者,公立の学校であれば教育委員会ということになりますし,私立の学校であれば学校法人ということになると思います。実際の学校の施設設備及び管理体制を整備するためにいろいろな助言をする,若しくは地方公共団体,国から設置者からなされる財政支援について,教育に必要な資金の中で学校保健活動を適正に運営するような財政的な措置を行うことを設置者に義務化,又は努力目標を規定していると御理解いただければいいかと思います。例えば,第6条にあるのですが,学校若しくは学校の管理責任者としての校長等の責務,役割が個別の条文の中に入ってきていると御理解をいただければ分かりやすいかと思います。
 少し刺激的な言葉を書かせていただいていますが,子供のための保健衛生を推進するには,現場任せでは困難ではないかと考えられます。最終的に子供たちの保健衛生を管理して推進していくためには現場が中心となりますけども,先ほど申しましたように,国,地方公共団体の責務として財政的な支援とになると,方針を決定する中核的な機関というのがどうしても不可欠になります。そこで,財政的な支援以外に必要な施策,政策として保健衛生の管理を行うための基準となるようなガイドラインを策定するとか,そのための法律を整備することを決定する必要があります。ガイドラインを策定して,先ほど倉橋委員の方からもお話がありましたけれど,情報を与えたらそれで終わりということでは,なかなか現場に伝わらないので,国若しくは地方公共団体がつくっているガイドラインを現場で使えるような研修や広報,啓発の機会をつくっていかないといけません。そこにもやはり中心となるような機関というのが必要になります。それを一条校では,国,設置者である教育委員会等が役割を担っているということになります。
 今回のいわゆる外国人学校において個人的な課題として考えていることですけれど,今までの委員からの御発言を聞くと,学校と設置者が一体化をしているところは少なからずあるのであろうと思います。設置者と学校が一体化しているので,一条校であれば,教育委員会若しくは国からの支援があるものが,外国人学校では各学校の現場の上層部が方針を決定し,独立した決定機関というのが不明確化してしまっているのではないかと感じています。何を実際最低限やらないといけないかを現場が全て決めていくということになるのですが,必要なことを判断する専門的な者が少なく現場の負担感が増しているのではないかと思われますので,支援体制の明確化がどうしても不可欠になるであろうと考えています。
 その支援体制を明確化するためには,多様な外国人学校では,どのような形態があって,また,どのような部署なら各学校に国がつくっているような方針等を情報伝達できるのかについて文部科学省でも調査をしていただいておりますが,それをより詳細に進めていくということがまずは第一歩として必要なのであろうと個人的には考えました。
 次に,学校における保健衛生の推進には学校内の体制整備がどうしても必要になります。こちらも,外国人学校における人的負担をどのようにしていくのかも課題だと考えます。これは小学校のモデルケースになります。校長を中心とした学校の組織体系がありますが,教職員への情報伝達の共有というのは職員会議の中で行われています。これは外国人学校でも同じだと思います。一方,学校外の専門家若しくは保護者との連絡をするような保健だけに特化したようなシステム,学校保健委員会というのがつくられていて,学校内だけではなくて学校外との連携が取れています。
 保健を推進していくために学校内にはいろいろな部署があり,教職員を中心とした組織体系がつくられています。会社でいえば,部とか課とかといったものがつくられているというイメージを持っていただければ分かりやすいかと思います。学校保健の推進,学校安全の推進であれば学校の保健安全部などがつくられていて,中心となって運営するのが保健主事と言われるような,一般の会社でいえば部長や課長といった位置づけの人たちがいて,それを養護教諭の方々を中心に動かしているという状況になるかと思います。
 以上のように学校保健に関連するような職員の役割というものが明確化をされています。外国人学校の中で,校長先生は学校経営に関してのリーダーシップを取って全てを把握されていると思うのですが,より専門的に把握をして,学校内のいろいろな活動を調整するような役割をする中間管理職というのが必要になり,学校には保健主事が置かれています。それをサポートするのが養護教諭であり,小学校の場合は8割方が恐らく養護教諭が保健主事を兼ねられているので,学校保健が推進しやすいような組織体系ができています。
 先ほどの話に戻りますけれど,学校保健を推進するための組織体系を構築するには,人的な保障が必要になるので,この財政的な部分をどのような形で負担をしていくのか。若しくは,財政負担ができないのであれば,学校で働かれている先生方の負担を軽減しながら同じような組織体系をどのようにして構築していくのか具体的な議論が必要になっていくのであろうと考えています。
 その上で,一条校であれば,専門的な知識に関しては学校医・学校歯科医・学校薬剤師と言われる学校三師という方々がサポートをしています。この方々から専門的な知識が入ることになります。また,心のケア問題であればスクールカウンセラーが,子供たちの生活に関するようなことに関わることであれば,スクールソーシャルワーカーが相談に乗ってくれる体制がつくられています。こういう体制を構築していくというのは不可欠ですが,人的資源の不十分であることからも,専門性を持った人たちをいかに学校に取り込んでいくのかは大きな課題になるだろうと考えております。
 今,個人的に一条校であっても,学校保健全体に関して大きな課題があると考えています。それは,学校,設置者内だけで問題を解決しようとしすぎていることです。子供たちの健康課題をどのように解決していくかは,学校内だけで解決しようとしても難しいということが多くあります。さらに,養護教諭中心として一人の先生が抱え込み過ぎているという状況があると思われます。文部科学省でも,地域との連携やつながりを取ってくださいとしています。例えば,一条校であれば,地域の保健所であるとか保健部局と言われる所とは,教育委員会が設置者として,行政的な横のつながりをうまく使うことができるという状況にあります。また,健康問題であれば,学校三師を使って,地域医師会や薬剤師会を活用して連携を取るということが可能になります。
 ただ,外国人学校の場合には,この地域の保健所であるとか保健部局と連携を取るためには誰がつなぎ役になるのかが不明瞭です。設置者と学校が一体化をしているので,学校が直接話に行かないといけないとになると敷居が高くなってしまいます。地域の医師会,薬剤師会のような専門の知識を持った集団とつなぐのであれば,三師が存在しない外国人学校ではスムーズな連携が難しくなるので,つなぎ役をどのようにするのかが課題です。浅野先生の方からも御提案があったように,ここに養護教諭が入るということは一助になるかもしれないですが,それが可能なのかは検討に値するだろうと個人的には考えております。
 学校保健において,保健衛生で最も重要なことは極めて単純なことです。やるべきことをしっかりと計画を立てて確実に実行することです。やるべきことは単純に言えば二つしかありません。法律に書かれているのは,健康診断と環境衛生検査について計画を立ててくださいということです。浅野委員からの報告にありましたが,これが学校保健計画というもので,年間計画の中で何をしないといけないのかという計画を策定し,そして実際に実施をしてくださいということです。これは法律上に書かれているので,一条校の場合は罰則規定があるわけではないのですが,実施しないと法律違反ということになります。実際の保健管理に関しましては,対人管理で,健康診断が中心的にあって,健康観察であるとか,健康相談,保健指導というものがあるというイメージを持っていただければいいかと思います。保健衛生環境の対象を考える上で,恐らく保健衛生というと,この委員会の中でも議題になるのが対人管理を中心的に捉えがちですが,学校保健安全法に書かれているように,対物管理も極めて重要です。その上で,対物管理について,一条校の場合のであっても多くの人が清掃美化のことを衛生管理として捉えがちですが,環境の管理とは現状の把握から始まり,すなわち検査をしないとなかなか分からないということになります。
 イメージがつかないと思いますので,少しデータの方からお示しをしたいと思います。学校の衛生管理に関しましては,学校環境衛生基準という基準がございまして,多岐にわたる項目があります。それらを全て実施している学校は,一条校であっても全国で36.6%しかないという状況です。都道府県内で一番進んでいるのが東京ですが,それでも半分の学校しかやっていないという状況です。環境衛生の定期検査法律に位置づけられていますが,全てをやりなさいと言っても,一条校の状況を踏まえても,外国人学校にそれを完全に実施することは恐らく難しいであろうと考えております。
 なぜ環境衛生検査を一条校であっても完全実施ができないのか。外国人学校であればもう少し難しいような状況になると思うのですが,日本の場合,環境衛生に関する知識,認識が低いことが課題だと思っております。日本では水と空気は安全で当たり前です。世界的に見れば水道水の蛇口をひねれば安全な水が常に自由に使える国というのは珍しいというかすごく有り難いという状況が当たり前になっています。法令遵守観点からは,検査をしないといけないということになるのですが,常に安全なものになぜ検査が必要なのかが理解されていないと考えられます。したがって,それに対しての予算の課題や,若しくは,その検査を誰がしていくのかということが相互に関連してきます。このように環境管理をしていく上で大きな課題を抱えております。これは一条校であっても課題を抱えているので,外国人学校であれば,さらなる課題を抱えることになるだろうと個人的には考えております。
 先ほど認識の課題があると言いましたが,これは中学生の学習内容です。水であったとしても,本当に安全な水かどうかというのは科学的な検査をしないと分からない,空気であったとしても,常に汚れていって衛生的に管理をしないと,やはりその空気が安全かどうか分からない。特に一酸化炭素のような不完全燃焼が起きるような燃焼物があるようなところでは致死性のガスが発生する可能性があるということは,中学生の内容でも書かれているようなことですが,その認識が国民全体に定着していないように思われます。繰り返しになりますが,それは国内では余りにも学校の環境が安全に保たれているので安全で当たり前になっていますが,それは管理をした上での安全ということを常に考えていただきたいと思っています。
新型コロナウイルスで何を学校が知りたかったかというと,こまめに換気しましょうということになっていますが,これは学校環境衛生基準に基づいた定期検査をしていれば換気条件というのは分かっているはずです。常にこの段階で換気をしましょうということや,対人管理ではなくて消毒のやり方であるとか,どういう消毒剤を使うのかということを学校側は知りたかったと思われます。したがって,文部科学省では具体的な情報を発信し直しましょうという状況になっています。
 文部科学省のホームページでは,学校の新型コロナウイルス感染症の対策のところにこのページがありまして,こちらを見ていただければ衛生管理マニュアルが示されています。こちらが最新バージョンになりますけれども,これを押せば,マニュアルが出てくる状態になっています。外国人学校の方も,日本語で書かれているので分かりにくい部分もあるかと思いますが,こういう情報にアクセスをしていけば,必要な情報は取れる状況ではあります。これが日本語で書かれているという課題と,こういう情報がここにあるということをしっかりと把握するということに課題があるのだろうと考えています。
 課題解決をしていくためには,安全や保健衛生に関する知識の不足,認識の甘さへの改善をしていかないといけません。外国人学校でも同じだと思うのですが,日本の子供たちにとって学校はどういう場所か,教育の場だけではなくて,子供たちにとってみれば生活の一部の場所です。多くの時間を費やす場所であるということで事件や事故というのが学校現場で起きやすい,最終的に子供を守れるのは現場の人間,現場の教職員の方であるというのは,外国人学校でも同じだと思います。私が学外等で講演する場合には,常に当事者意識を持ってください,それは誰ですかと問いかけを行っています。やはり皆さん一人一人が当事者意識を持って何かを改善しようとするような意識を持たないと,なかなか改善にはつながらないだろうと思っています。
 今回,新型コロナウイルス感染の話があったので,換気に関する考え方はかなり浸透したと思うのですが,緊急時に場当たり的に対応するだけでいいのかということを考えていただきたいです。今回は新型コロナウイルス感染の拡大があったので,それに基づいて,換気の大切さ,環境の大切さということが再認識された機会でもあったと理解をしておりますけれど,実際は平時からの対応というのをしっかりと構築していくこと,そのためには,その準備と実施ということが極めて大切になっていくだろうと考えています。なぜこういうことを言うかというと,今回新型コロナウイルス対策としてしっかりと対応できたからいいのではないかと考える方がいらっしゃるかもしれないのですが,これまでも,また,これからも新しい課題というのが生まれてきます。文部科学省を中心として日本の学校は,それに対して迅速かつ適切な対応を求められていて,それを実施してきた,これからも実施していくことになると思います。
 今回はたまたま新型コロナウイルス感染の話から,学校の環境衛生を考えましょうということになったと思うのですが,これまでも,例えば揮発性有機化合物を要因とするシックハウス症候群に関する課題も10年20年前からずっと続いております。それに関連して農薬散布の課題,十数年前であれば,PM2.5も大きな課題になりました。食物アレルギーの話もそうですし,東日本大震災の後には放射線被ばくの課題も学校には大きな課題として取り上げられてきて,それらに対してどう対応していくのかということを考えてきました。場当たり的なものではなくて,平時から対応していくことを考えていく必要があるだろうと考えています。
 このような緊急時において何が課題になるかというと,被害を受けるのは子供たちであることです。言い換えれば,子供の教育活動に大きな影響を及ぼすことです。令和2年度の話ですが,一条校であってもほとんどの学校が水泳の授業を断念せざるを得ないような状況に追い込まれました。ただ,文部科学省は昨年の5月,プールが始まる前に,プール活動において活動内容だけであれば感染リスクは低いとして,やる方向性に誘導しようとしていました。ただ,着替えたりするようなところで密になるので,そこに配慮して実施を考えてほしいと情報を出しているのですが,実際はやはり危ない,怖いということで,感染対策をどこまでやれば十分なのかがなかなか理解できないので結局断念したという状況がありました。今年度は改善されたと聞いてはおりますが。
 そこで,学校保健に重要なことというのは,正しく恐れるために,何をしなければいけないかを考えていくことです。そのためには,国若しくは地方公共団体からの,中核になるような意思統一した正確な情報発信が必要になってきます。なぜ情報が必要かというと,今,健康情報が氾濫しています。コロナウイルスの話であったとしても,いろいろなテレビ,ニュースで,いろいろな角度からの意見があります。その情報の氾濫によって,人の行動,判断というのが大きく変わっていきます。学校は一つの法人みたいなものとして考えればやはり情報の取捨選択というのをしっかりしていかないといけません。どこから情報を取っていくのが正しいかというとやはり国から出されている情報というのが一応正しい情報の一つだと思いますし,地域の医師会,薬剤師会等の専門機関も当然活用すべきだと思います。
 ただ,注意すべきポイントとしては,個人の健康に対する価値観というのは人それぞれです。その価値観に対して,国の情報,国が言っているからこうやりなさいというように押し付けるのではなくて,相互理解の下にいろんな活動を進めていく調整役も学校には必要になってきます。これは外国人学校だけではなくて,全ての学校に言えることだと思います。
参考までに,学校の心のケアということもすごく大切だということになりましたので,文部科学省にもこういう情報があります。こういう情報は文部科学省のホームページにたくさんありますので,心のケアであれば,フローチャートまでできていて,どのように対応すべきなのかということもあります。情報はないわけではなくて,あるのですが,その情報をいかに適切に伝えて,なおかつ,その情報を誰が実践して使えるようにするのか。そうするとやはり,外国人学校の先生方も,教育委員会が主催をしているような研修会に参加しやすいような状況をつくるということが今後大切になっていくと考えております。
 すみません,少し長くなってしまいましたけれども,私の方から大枠を説明させていただきました。どうもありがとうございました。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。浅野委員,北垣委員からそれぞれお話をしていただきました。大変よく理解できました。そしてまた,私どものこの会議で何が課題になるかということも併せて明確にしていただきました。本当にありがとうございます。
 皆様から御質問等がありましたら是非お願いします。浅野委員,北垣委員からプレゼンがありましたけれども,何か御質問がございますか。
 田中委員,お願いします。

【田中委員】
 ありがとうございました。大変学びの多いプレゼンテーションで,お話を伺っていて,例えば私たちのようなNPO立の認可外の外国人学校というところには余りにも負担が大きいというのが正直な感想です。もちろん財政的な措置があれば,またやりようもあるかもしれないのですが,外国人学校等の規模感というのは非常に多岐にわたっているということと,今コロナ禍の影響で外国人保護者の方の経済状況の悪化も含めて,外国人学校等の財政もかなり厳しい状況に置かれています。安全管理が必要な局面ではあるものの,そうした部分も含めて,今すぐ何ができるのかというのは,かなり現場としては負担の大きな話だなと思いました。
 質問というか,もし御存じであればということですけれども,そうした外国人学校等の規模感の違いに基づいて,例えば私たちのような非常に小規模なフリースクールに近いような形態で運営されている場合,常勤の養護教諭の方を配置するということ自体が,財政面以外でも負担があります。そうした場合に,例えば僻地(へきち)教育を行っている場や,一般のフリースクール等で,巡回指導のような形,支援のような形で養護教諭や相応の役割を担う方が広域で配置されるというような事例はあるでしょうかというのが1点目です。
 また,北垣委員の話の中にもありましたが,ガイドラインを策定して,例えばこれだけはやってほしいというような,まず最低限の非専門家がやるべきことというのは,今の段階でもある程度,これはやってくださいということが言えるものなのでしょうか。
以上2点です。もしお二方の中でお分かりになることがあれば教えてください。

【佐藤座長】
 まず,広域的な配置について,これが実際にあるのかどうかということですけれども,浅野委員にお伺いするのがよろしいでしょうか。もしお分かりであればお願いします。

【浅野委員】
 実際にそういった調査ということは行っておりませんし,そういう話はなかなか耳に入ってこないところであるのですが,私の知る限りでは,やはり配置はしていないところの方が多いのではないかと思います。
 この場でお話ししていいのかどうかというのも少しはばかられますが,本当に一条校において養護教員を配置しているのが,全国どこの学校においても行っているのかというと,一条校においても未配置校はまだあります。それは本当に小規模校であったり,学校教育法には養護教諭を置くということになっていますが,附則には当面の間置かなくてもよいというような文言もあったりすることから,私たち全国養護教諭連絡協議会も推進してはいるのですが,一条校においても全校配置ではないところがございます。昨年度の調査では公私全部合わせて100校近くあるような状況なので,フリースクールといったところにまで配置されているということはないのではないかと思っております。
 一条校においても全校配置ということが望ましいと私は思っておりますし,国養護教諭連絡協議会としてもそれを推進しているというところです。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。それでは,北垣委員,ガイドラインについて,非専門家が守るべき,最低限これだけは守る必要があるというような基準があるのかどうかという御質問ですが,いかがでしょうか。

【北垣委員】
 かなり難しい問題で,学校環境衛生基準に限って少しお話をさせていただければ,一条校であっても完全実施率というのは極めて低い状況であると言っているのは,必須となっている項目だけでも多岐にわたっていることにあります。法律に関連付けてつくるガイドラインであり文部科学大臣がつくることになって,それに基づいて実施することになっていることが施行規則にも規定されているので,法律に基づいているものと理解していただきたいです。その上で,それらの項目の中には,例えば黒板の見やすさであるとか,黒板が劣化していないのかということも入っているので,項目によっては外国人学校でそれが本当に必要かということをやはり別途協議をされることが本来は必要になってくるのかなと思います。
 要らないものを測定する必要はないということになっているのですが,黒板がない学校は一条校の場合にはないので,黒板の検査は絶対してくださいということに当然なってしまいます。外国人学校の規模感によって,必要,必須となる最低限のものは何か,これを言うと語弊があるのかもしれないですが,本当に子供の健康に影響するものというのは水と空気なので,水と空気の管理体制を中心的に外国人学校の最低限必要な必須項目というふうに決定をしてしまえば,水であれば恐らく10項目で,空気であれば多分これも10項目ぐらいまで絞れるのではないかと思います。そうすれば,実施の可能性というのは上がっていくのかなと思います。
 ただ,これを,文部科学省が,外国人学校はこれでいいよ,一条校は今までどおり多岐にわたり全てやってくださいということはできないと思います。そこで,事務局へのお願いにはなりますが,外国人学校に何が必要なのかということについて別途ガイドラインを策定することも考えられるのではと思っております。これは健康診断でも同じですが,健康診断でも測定項目というのが一条校の場合は全て決まっており,第何学年ではこれは除いてもいいけど,ほかは全てやってくださいということになるので,外国人学校で必要なものの検査項目は何かというのを別途立ち上げて議論されることが望ましいのかなと個人的には考えます。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。オチャンテ委員,お願いします。

【オチャンテ委員】
 ありがとうございます。お二方,発表ありがとうございました。一つは田中委員の質問と似ているのですが,養護教諭の配置は今,調査で分かっているのは3割程度にとどまっているということですが,そこは実際毎日いるのか,それとも何日かしかいないとか,巡回するのかということも,もう少し知りたいと思います。
 実際そういった巡回の養護教諭は可能なのか,例えば毎日は居られないけれど,少人数の学校に行って,幾つかの学校を回るような方がいれば,巡回として週に1回2回とか月何回か,といったことは可能なのかということも教えていただきたいです。
以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございます。これは,前回の調査で3割程度,養護教諭が配置されているということでしたが,その中で勤務体制がどうなのか,あるいは,巡回が行われるのかどうかということです。これは調査から出てきたもので,外国人学校のことですので分かりにくいかもしれませんけれども,今のオチャンテ委員の御質問は,これから重要な調査項目として,3割程度やっているようなところが一体どういう形なのか,実際に勤務が毎日なのか,それとも巡回が可能なのか,あるいはしているのかどうか,そういう形で今後の調査に項目として加えていただきたいという要望としてお受けしたいと思いますが,それでよろしいでしょうか。
 事務局から何かございますか。今,オチャンテ委員からのお話がありましたし,それから田中委員からもなかなか財政的に非常に難しいのではないかと,実際の現場からこういう声が出ています。それを補う意味で,勤務体制だとか巡回ということの可能性が実際に現実に行われているのかどうか,こうしたことを調査として今後やっていくということでよろしいでしょうか。

【事務局】
 ありがとうございます。今日頂いた御意見を踏まえて,これから追加調査をやっていっていきますので,その中で,外国人学校においてどのような体制になっているのか,養護教諭が設置されているとしても,どういう勤務形態になっているのかなども含めて聞いてみたいと思います。

【佐藤座長】
 それでは,もし今後のヒアリング調査あるいは調査の進め方などについて皆様から御意見があれば,メール等で事務局にお寄せいただければと思います。今のオチャンテ委員のような御意見でも結構ですので,是非お願いできればと思います。後ほど事務局から期限を切らせていただいて,御意見をお寄せいただければと思います。
 今日は,浅野委員,北垣委員,本当にありがとうございました。非常に勉強になりました。これから私たちが考えていくに当たって,重要な情報を提供していただきましたし,課題がどこにあるのかということも把握できました。感謝申し上げます。
 それでは,最後,その他について,事務局から,今後のスケジュールについて御説明をお願いします。

【事務局】
 改めまして,浅野委員,北垣委員ありがとうございました。そして,佐藤座長からお話しいただきました件,改めて事務局から御連絡させていただきます。
 それでは,資料3のスケジュール(案)について説明させていただきます。来月以降も月1回程度の頻度で有識者会議を開催させていただく予定でございます。なお,次回は10月25日月曜日の10時半から12時までを予定しております。
 今後,外国人学校の保健衛生に関する追加調査や有識者ヒアリング等を行いまして,12月中をめどに最終取りまとめを行っていただきたいと考えております。
 以上でございます。

【佐藤座長】
 それでは,皆様,今日はありがとうございました。特に,浅野委員,北垣委員,改めてお礼を申し上げます,ありがとうございました。
それでは,本日の会議はこれで閉会といたします。また次回よろしくお願いいたします。

―― 了 ――

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