外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議(第3回)議事録

1. 日時

令和3年7月12日(月曜日) 10時00分~11時30分

2. 場所

Web 会議システム(Webex)

3. 議題

(1)外国人学校を対象とした新型コロナウイルス感染症対策施策について(報告)
(2)有識者ヒアリング
(3)中間とりまとめ骨子案について
(4)その他

4. 議事録

【佐藤座長】
 第3回専ら外国人の子供の教育を目的としている施設(いわゆる「外国人学校」)の保健衛生環境に係る有識者会議を開始いたします。
 まずは事務局の体制に変更がございますので,事務局の方から報告をお願いいたします。

【事務局】
 本日付けで大臣官房国際課長として小林万里子課長が着任いたしました。一言御挨拶をお願いいたします。

【小林課長】
 本日から国際課長を拝命しました小林と申します。どうぞよろしくお願いいたします。先週金曜日まで,佐賀県の副知事として出向しておりまして,そちらで,コロナ対策を健康福祉担当としてさせていただいておりましたので,今回の議題について,是非皆様と,特に自治体の方や様々な外国人の学校の方の御意見を伺いながら,いい形でまとめられたらと思っております。
よろしくお願いいたします。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。では続けて事務局から議事と配布資料の確認をお願いします。

【事務局】
 はい,本日の議事は次第にありますように4点ございます。
 1点目,外国人学校を対象とした新型コロナウイルス感染症対策施策について,こちら御報告になります。
 2点目,有識者ヒアリング,3点目,中間取りまとめ骨子案について,そして3点目,その他でございます。なお議題2の有識者ヒアリングでは安田委員及び倉橋委員からお話をお伺いする予定としております。
 配布資料は,資料1,専ら外国人の子供の教育を目的としている施設(外国人学校)における新型コロナウイルス感染症対策の進捗状況,資料2,有識者提供資料,資料3,中間取りまとめ骨子案,資料4,今後のスケジュール(案)でございます。
 なお資料2,有識者提供資料につきましては,安田委員,倉橋委員それぞれからございまして合計5つでございます。参考資料につきましても議事次第の通りでございます。
不足等ございましたら事務局までお申し付けいただければと存じます。

【佐藤座長】
 ありがとうございます。
 それでは早速,議題1,外国人学校を対象とした新型コロナウイルス感染症対策施策について事務局の方から説明をお願いいたします。

【事務局】
 資料1を御覧ください。基本的には,前回御説明させていただいた内容とほとんど変わりはございません。6月以降の取組といたしまして,無認可施設を含む外国人学校に対して新型コロナに対して抗原簡易キットの配布に係る調査の実施をしたところでございます。

【佐藤座長】
 ありがとうございます。まず,この資料1について御質問等があれば,お願いいたします。よろしいでしょうか。
 続いて議題2,有識者ヒアリングとなります。本日,岐阜県環境生活部私学振興青少年課長として外国人学校の保健衛生対策について御担当されている安田委員と,在日ブラジル学校協議会副理事長で,御自身でもブラジル学校を経営されている倉橋委員からそれぞれお話をお伺いしたいと思います。
 まず安田委員からお願いします。

【安田委員】
 岐阜県の安田でございます。私の方から,岐阜県の外国人学校における新型コロナウイルスの感染防止対策を中心にお話をさせていただきます。よろしくお願いします。
 第1回の会議で概略の方はお話しさせていただきまして,今日は若干踏み込んでお話をさせていただきたいと思います。岐阜県の在外外国人国籍別の状況ですけども簡単に御説明申し上げます。平成20年9月のリーマン・ショック,ここが大きなピークになってございますが,その後減少しまして,今はフィリピン人,それからベトナム人の方が急増しています。一方で,ブラジル人,それから中国人の方につきましては,減少傾向にあるという状況でございます。
 こちらは今現在,岐阜県の在住外国人6万人前後という状況です。主な増加の要因として,中ほど矢印がございますように,技能実習生の増加が大きく寄与しているという状況でございます。
 こちらは外国人労働者の推移になります。外国人を雇用する事業所も右肩上がりで,現在増加傾向にありまして,例えばベトナム人で申し上げますと,25%ほどが技能実習生ということで,ベトナム人,中国人が技能実習生を中心に増加しているという状況でございます。
 こちらは市町村別の在住外国人です。一番下の凡例を御覧いただきますと,やはりブラジル人がかなり集住している都市がございます。岐阜市はフィリピン人の方が多く,サービス業を中心にフィリピン人の方が従事されています。後ほど自治体名として出てまいりますが,可児市,大垣市,美濃加茂市辺りはブラジル人の方が大変多い状況となっております。
 ここからが,外国人学校の状況ですが,岐阜県の各種学校として認可している外国人学校としては,いわゆるブラジル学校として2校,それから朝鮮学校として1校がございます。
 外国人学校で,新型コロナウイルスのクラスターが発生した事案がございます。事案の概要ですけれども,令和2年11月にスクールバスの運転手が感染されました。その後,児童生徒139人,教職員13人がPCR検査を受検いたしまして,児童生徒9人,教職員4人の陽性が判明しております。全体でクラスター規模,家族等含めて,23名のクラスターとなりました。完成防止対策上の課題ですけれども,やはり児童生徒,それから教職員の登校前の体調チェック,これは県からも要請をしておりましたが,これらが実施されていなかったという事実が確認されました。
 それから,スクールバスの運転手さんですけれども,代替職員がいないという状況の中で,体調不良,自覚症状があったにも関わらず,運転を継続してしまったというところが,感染を広めた要因でありました。
 それから,感染事案が発生して,保健所が調査に入るわけですけれども,なかなか在籍児童生徒の名簿自体が,しっかりしたものが整備されていなくて,当然かもしれませんが,日本語の仮名表記もこの時点でなかったということで,少し調査に時間を要したということがございました。
 そういったことで,岐阜県が対策として講じた項目が,大きく5つあります。一つは外国語対応可能な医療機関リストの提供,プライマリーケアドクター(かかりつけ医)の設置,健康チェックカードの配布,これはポルトガル語に訳したものを提供しました。それから日本語仮名表記の児童生徒,教職員名簿を載せました。これは保健所との連携がしやすいような環境整備ということです。それから外国語表記の啓発ポスターを掲示したということでございます。
 具体的には,医療機関リストの提供ということでこのようなものを配布しました。一番右の欄は,PCR検査を受けられるというところが,白丸で表記されております。それから,かかりつけ医の方は,趣旨としましては,どこの医療機関に相談すればよいか,児童生徒,それから保護者が分からないという状況がございましたので,こういったものを配付していただいて,児童生徒に情報提供をしていただくようにお願いをしました。
 健康チェックカードですけれども,日本語版が左下にございますけれども,検温をしたときの体温と,それから感染が疑われるような症状,それから一番右には確認欄があります。これは児童生徒が登校したとき,あるいはスクールバス乗車時に教職員に提示する,学校側が確認する欄ということで確認欄を設けたものをポルトガル語訳して提供をしたということです。
仮名表記の名簿も,現地期間の職員が学校に行って一緒に作成したということでした。
 それから,国際交流センターが作成した外国語対応の啓発ポスターをこの春に提供したということでございます。
 3つの学校の感染防止対策状況を確認しましたところ,御覧のような状況でした。多少ばらつきがあるのは,授業内容によって感染リスクが高い場面で講じるべき対策のところが,少しばらつきがあります。それから,課外活動,スクールバスの関係で若干未実施のところがあるという状況です。
 岐阜県の外国人向けの感染防止対策ということで,大きく6項目を今,進めております。ワクチン接種の促進,それから予防的検査の継続,県と市町村で感染対策チームを設置しまして,注意喚起をしております。
 本県の特徴的なところは,在住外国人の方,派遣労働者として就労しておられる方が多い状況です。そういう関係の会社が多いということで,派遣労働者は送迎バスで出勤することが多いものですから,一つは感染リスクの高い空間ということで,県と集住都市が協調して感染防止対策に対する補助制度を設けております。
 5番目が外国人コミュニティ,あるいは交流の場での啓発活動強化を,集住都市やその周辺も含めて広域的な連携の下に対策を進めているという状況です。
ワクチン接種では,岐阜県の場合,外国人県民というふうに呼んでおりますが,市町村接種で優先接種の対象に位置づけております。
 それから,ワクチン接種の方ですが,最近の動きとしまして,集住都市の一つ,美濃加茂市では,特に感染率が高かった年代,42歳から46歳に絞って,外国人市民への優先接種を行っております。
 予防的検査の方は,大学等で行っておりますPCR検査の予防的検査を,外国人学校,あるいは外国人の方がよく利用される教会ですとか日本語教室,そういったところにも拡大をして実施をしたということでございます。
 先ほど申し上げた,3番は割愛させていただきます。
 4番ですが,こちらは10分の10の補助率で,いろんな送迎バスでの感染防止対策に対して,支援を行っているというものでございます。
 それから,集住都市が連携して,啓発ののぼり旗を作成して,感染リスクの高い拠点,交流の場にそういったものを設置しました。
 最後のページは,広域的な連携の下で,特に集住都市が連携して感染防止対策を進める体制を構築して,構成市町村を御覧いただくと町村まで含めて広域的に,こういった広域体制の下で感染防止対策を講じているという状況でございます。
 私からは以上でございます。

【事務局】
 安田委員,ありがとうございました。続いて倉橋委員,よろしくお願いします。

【倉橋委員】
 よろしくお願いいたします。
 学校法人倉橋学園伯人学校EASとしてのコロナウイルスの感染症対策と,保健衛生状況について報告をいたします。
 EASは全国日本全国に6校,東から順番に群馬県の太田市,静岡県浜松市,愛知県豊橋市,愛知県豊田市,愛知県碧南市,三重県鈴鹿市にあります。6校がそれぞれ多少地域差はありながら,基本的には統一されたことをやっています。
 まず,目次です。新型コロナ感染症対策として,児童生徒向け,職員向け,設備と課題,そして保健衛生状況について話をしていきます。
 まず,児童生徒向けですけれども,登校時の検温体調確認です。送迎車両を使う方も多いので,そのときに乗る前にピッとやって,何度かなというのを確認しています。そしてマスクの着用,手洗い手指消毒,密を避けるための机の配置,定期的な換気,送迎車両内の消毒作業があります。
 保護者,来客者向けについては,来校時の検温体調確認,連絡先の記帳,マスク着用,手洗い手指消毒,EASモバイルや連絡アプリで,情報発信ということをしています。
 こちらが訪問者記録用紙ということで,Lista de visitants EAS Toyota コビド・デ・ゼ・ノビということで,EASの豊田校の来客状況をまとめたものになります。
 日本語で一番多いのは,自販機,これは自動販売機の補充です。飲物の補充をしてくれる人が多いかなと思います。あとは,アウラと書いてありますけれども,特別な授業をしに来る学校外の協力者の方もございます。
 こちらがアプリでの情報提供ということで,EASアプリをつくってそちらで情報提供を行っています。
 7番がフェイスブックでの情報発信になります。ブラジル学校ですので,基本的には,ポルトガル語での情報発信になっています。一番左側が学校のお休みについて書いてあり,お休み中の児童生徒や保護者の過ごし方についての注意を書いてあります。
 左から2番目については,体調不良だったとしても恥ずかしがることなくしっかりと言ってくださいねということが書いてあります。このように,県,市から来た情報については,ある程度要約した状況で保護者の方に直接流すという工夫をしております。
 そしてまた,フェイスブックでの情報発信その2ですけれども,やはりポルトガル語ばっかりなので少し見にくいかなと思いますが,左から2番目のコミュニカード・ウルジェンチ・コビト・デ・ゼ・ノビというのは,EAS浜松校で,コロナの陽性者が職員に出たものですから,その状況について保護者様に御報告しているという内容になっております。全てこちらコミュニカードと書いてありますので,保護者へのお手紙ということになります。
 次に職員向けです。今までは子供向け,保護者向けでしたが,職員向けには何をやっているのかというと,基本的には子供と同じですけれども,体温や体調管理,マスク着用,手洗い手指消毒,3密防止,休日の過ごし方についての啓発ということになっています。
 これは職員向けの検温表で,灰色のところに先生の名前が書いてあります。これはJunho 2021ですので,2021年6月の検温表になっています。
 次に,校舎の対策として,接客用のアクリル板の配置,定期的な消毒,共有できるものは減らす,換気,距離は取る,そしてICT遠隔授業の実施等,一般的な対策を行っています。
 その2として,備品共有はやめましょう,タオルはやめてペーパータオルを使います,ハンドドライヤーは使いません,ごみ廃棄のときには廃棄後は手洗い手指消毒をしますといったことや,会議,研修等については,Zoom等を使った原則オンライン開催をしています。部活動については,基本的には中止,延期となっています。面接,面談,保護者面談等についても遠隔で行える体制を整えています。職場外での感染予防として注意喚起を行っています。
 13番が事業所向けの状況報告ですが,これは校長先生,いわゆる校舎の責任者が書くものになっています。大体1週間単位で書くものになっていますが,左上から職員,生徒,施設,その他と感染状況についてのチェック表になっています。虚偽報告がないかどうか,実際に責任者の目で見て,正しく運用がなされているかどうかをチェックする紙になっています。
 そして,14番は課題です。校舎によっては教室が小さいため,十分な対人距離が取れません。各種学校の規定では生徒当たりたしか1.96平米ぐらいだったと思うので,1.96平米では対人距離は取れません。
 県や国からの情報が日本語のみのため,児童生徒,保護者及び職員が把握困難であり,私のような日本語が分かる者がしっかり読み込んで現場に落とさないと,なかなか理解ができないという問題があります。
 児童生徒,保護者及び職員の学校外での行動を把握しにくい。もちろん注意喚起はしますけれども,実際に勤務時間外,学校外に何をやっているのかというのが把握しづらい部分があります。
 また,ハグやバーベキューなど,やめた方がいいのではないかと言われる文化的な行動についてどう対応したらいいのかということ。そして,SNSで不確かな情報が拡散すること,いいも悪いもありますけれども,感染者を出した会社等への誹謗中傷で保護者の失職につながっているということ,報道等でも外国人の感染がクローズアップされてしまうこと,そもそも誰がブラジル学校に通っているのかを把握していないことが課題と考えています。そして仕事を休みたくない,有給を使用したくないという理由で体調不良を隠して出勤する方への対応です。自己申告,更に責任者からの確認をやっていますが,100%できているわけではありません。
 そして,健康に関する学校として施策を考えたいが,原資が足りません。権利があるということは義務を負うということですが,児童生徒のために必要なことをしてあげたいと考えています。
新型コロナの感染症対策状況報告ということで,課題(要望)として,今回のコロナに関して,保健所が濃厚接触者として事実上勤務停止を指定した職員には,保健所で診断書を出して,傷病手当の申請対象となるようにしてほしいと考えます。これがあると無理して隠して職場に出てくる人が減ると思います。特に派遣会社で働く方は,有給を2日3日取るだけで首になるという状況はいまだにありますので,どうしても休めない状況に保護者様もいるということです。実際に傷病手当等が出ると言えば,休んでもいいかなと思いますので,これはやってもらいたいと思います。そして,外国人学校に対する保健衛生に関する義務を課し,健康診断の補助金対象校としてほしい。日本スポーツ振興センターによる災害共済給付の加入を認めてほしい。国からコロナ対策の補助金額を増加してくれると助かったと思います。去年の補助対象が書いてありますけれども,保育所に対して少なかったということです。
 そして,反省ということですけれども,仕事中のマスクや距離を取ることに関しては注意喚起を何度も行ったが,昼食休憩などに関して職員等で時間をずらすなどして,一緒に取らないこと,しゃべらないことなどの注意を十分にしなかった。そのため,これは浜松校ですけれども,職員室にいたほぼ全員の先生方が同時に濃厚接触者になってしまいました。当たり前に感じたことでも,一つ一つ声かけが必要だと感じました。現場からの意見です。
 以上がコロナの状況です。その次の話題として,一般的な保健衛生の話です。
 全事業所では認可外保育所を含めた全職員の利用者が健康診断を原則実施,これは会社としての義務ですので,やらなければなりません。児童生徒の身長・体重は,計測をしています。身長・体重のみの簡易健診を実施する校舎が多く,結核予防検診は一部の校舎で実施しています。
 本年度から全職員を対象に詳細な研修の実施を考慮中です。これも今まで簡便なものしかやっていなかったので,義務ということでやっていかなければということです。
全児童生徒を対象とした健診を受けてくれるクリニック等を探している最中です。なかなか,かかりつけ医というのができるのかどうか分からない状況ではあります。
要望としては,保護者たちは多少費用負担しても学校健診を希望しています。定期的な健康診断,内科,歯科を行うことは,学校としても必要なことだと思っています。内科が年1回若しくは年2回,歯科が年1回,特に歯の健康については,おろそかになる家庭も多いですので,こちらについてはやっていけたらなと思います。
 外国人学校と連携して,自治体は学齢簿を作成してほしいと思います。一部の市にはリストを提出していますが,私たち学校としては,社会資源の一つとして,共に子供たちの教育を担うという意識を持っていただけるとうれしく思います。
 先ほどありましたけれども,リストについて,氏名や住所のポルトガル語表記は多分簡便にできるのですが,日本語に直すのは結構つらいかなと思います。
 そして,有事においてリモート教育実施のためのタブレット配布,公立学校においてはGIGAスクール構想の中でのタブレットの配布があると聞いていますので,外国人学校についても同様の施策が望まれます。
 こちらでEASの現状について報告を終わります。ありがとうございました。

【佐藤座長】
 倉橋委員,ありがとうございました。
 今,安田委員と倉橋委員の方から御報告いただきましたけれども,二つの報告について,御質問,御意見等ございましたら是非お願いします。いかがでしょうか。
 倉橋委員,お願いします。

【倉橋委員】
 一つ目が,学齢簿を作るに当たって,基本的には在留カードの名前を入れるのか,運転免許証や保険証の名前を入れるのか,それとも片仮名で書くのかというのが,自治体やその自治体の担当者によって異なるケースが非常に多いです。ここをどうしたものかなというのは毎回思っていて,出して違うと言われて,出して違うと言われてということがあるので,現場としては課題になっています。
 もう一つが,ブラジル学校の特徴として広域から通われている方が多いので,かかりつけ医についても学校の所在地だけでいいのかという点がございます。それ以外に対応できないとも思いますが、課題を2点提起させていただきます。以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。学齢簿の表記の仕方ですね。2025年までに,全国の自治体に対して学齢簿を作成するように,文部科学省の方が今,通達しているようです。その表記について,今,問題提起がありましたので,もしこの場で分かるのであれば,何か回答があればと思いますけれども,今は問題提起ですので,どうなっているか,どうしていくのかということについては,後で更に調査をして回答する必要があると思います。
 二つ目が広域行政でかかりつけ医を,学校所在地にするのか,あるいは居住地にするのかというような問題提起がありました。これは問題提起ということで受け止めて,少し議論ができればと思います。
 田中委員,お願いします。

【田中委員】
 ありがとうございます。倉橋委員の御報告が,私たちも現場を運営する者としてそのとおり,非常に共感するところが多くありました。
安田委員からの御報告について,3点質問をさせてください。
 クラスターが外国人学校で発生したということですけれども,それに当たって,何か差別や偏見のようなことは発生したでしょうか。また,そうした発生を抑止するようなことを自治体として何か取組をされたでしょうか。私たちは日頃,感染対策を行う上で,万が一感染者が出た場合に,近隣の方々から外国人が通っているというところで差別,偏見があるのではないかということを強く恐れていまして,行政の方々と何か取り組めることがあるのかということがもしあれば教えてください。
 今の質問が1点目と2点目で,3点目が,プライマリーケアドクターの選定を行って診療,情報提供をしたということですけれども,学校や児童生徒さんとプライマリーケアドクターとなる診療所との間を,情報提供以上に何かつなぎ合わせるというようなことまで踏み込んで対応されたのでしょうか。以上3点教えていただければと思います。

【佐藤座長】
 それでは,安田委員,お願いいたします。

【安田委員】
 一つ目がまず,クラスター発生時の在住外国人に対する何か差別偏見があったかどうかということですが,外国人県民かどうかを問わず,コロナ感染者に対する差別や偏見も見受けられたということで,本県の場合は,人権施策を所管する部署の方で,コロナハラスメントというキーワードを用いながら,啓発,注意喚起,そういった差別の防止に取り組んできたという実態がございます。
 プライマリーケアドクターにつきましては,本県でクラスターが発生した外国人学校につきましては,クラスター発生時に協力関係,御縁があった医療機関を,一旦指定をしていただいたんですけれども,前回,小島祥美先生の方からの事例報告で御紹介があったように,今現在は,愛知県内の医療機関が外国人学校の定期健康診断ですとかもろもろ衛生面を支援されているという状況でございます。
 すみません,三つ目はどういった御質問ですか。

【田中委員】
 プライマリードクターのところが3点目にありましたが,何か指定をしたときに,具体的に学校とかかりつけ医となる診療所等を結びつけるような情報提供以上の何か対応をされたのでしょうか。

【安田委員】
 学校と医療機関の橋渡しというところも,通知ベースでお願いをしたということと,児童生徒,家庭と身近な医療機関の橋渡しとして,学校を通じて児童生徒宛ての通知を配付いただいて,もう一方で多言語対応の医療機関リストもお示しをしていました。学校やそれぞれの御家庭でそういった気軽に相談できる医療機関を選定いただいたということでございます。

【田中委員】
 ありがとうございます。

【佐藤座長】
 オチャンテ委員,お願いします。

【オチャンテ委員】
 ありがとうございます。お二方,発表ありがとうございました。
まず,安田委員の方に聞きたいのですが,名前,片仮名の表記名簿は作成するのに時間がかかったというような話がありましたが,クラスターになってから,学校との連携が始まったのか,それとも,以前から岐阜県と学校との連携が行われてきたのでしょうか。それまでにそういった表記,子供たちの表記は分かってなかったというのは,連携を取ってなかったのかなというような思いが致しました。
 岐阜県には3校の学校があるというお話がありましたが,それ以外の学校があるのか,それともその3つだけなのでしょうか。例えば認可外の学校で,まだ連携が取れてないような学校があるのでしょうか。
 倉橋委員の方ですが,課題の中では誰が通っているのか把握がされていないというような話がありましたが,その中では,いろいろな自治体に学校があるというお話があるので,うまく連携が取れている自治体のよいモデルがあれば,そういった自治体ではどのような対策が行われているのかということを教えていただきたいです。以上です。

【佐藤座長】
 それでは,安田委員からお願いできますか。

【安田委員】
 ありがとうございます。
 1点目ですけれども,このクラスターが発生した外国人学校との関係につきましては,やはりそういった保健衛生面の連携といいますのが,このクラスター発生を契機として初めて踏み込んだ連携,協力を行ったというのが実態でございます。
 2点目ですけれども,やはりこういう認可校以外にも,自治体の方で私塾的な外国人の子供たちが学ぶ教育施設が,ある程度あると伺っております。

【佐藤座長】
 次に,倉橋委員の方からお願いできますか。

【倉橋委員】
 どんなよい取組が自治体としてなされているかについてですけれども,学齢簿の作成に準じているということでいえば,浜松市から補助金を頂いておりますので,その補助金が誰に対してどんな用途で渡ったかということを証明するために,こちらとしては,保護者様の印鑑を頂いた住所名前があるものを出しています。学齢簿の名前を出すということについては,それだけかと思います。以上です。

【オチャンテ委員】
 ありがとうございます。

【佐藤座長】
  先ほど倉橋委員の方から課題ということで提起していただいたプライマリーケアドクターについて,学校の所在地なのか,居住地なのかということで,安田委員,もしお答えできるようなことがあればお願いしたいのですが,いかがでしょうか。

【安田委員】
 外国語で対応できる医療機関リストですね,かなり広域的なものを幅広に情報提供いたしまして,児童生徒,保護者レベルでも活用できるような,そういった情報提供の仕方をしておりました。

【佐藤座長】
 ありがとうございます。
 もう一つ倉橋委員の方から課題提起があった学齢簿について,鈴木委員,浜松市としてどういうふうに対応されているのかというような事例があれば,お教えいただければ有り難いのですが,いかがでしょうか。

【鈴木委員】
 先ほど倉橋委員からお伝えいただいたのは,私どもの方で学校の補助金をEASに行っております。ほかの学校にも行っておりますが,あとは教科書の補助金等がありまして,恐らくその関係で学校内で作られているのかなと思います。
 ただ我々の方は,不就学モデル事業で,学校に行ってない子たちを洗い出すために,教育委員会の方で独自の学齢簿を作っておりまして,転入時あるいは入学,退学に関する情報等をそれぞれ突き合わせできるようになっておりまして,それが今,全国でモデル化されようとしているというのは感じております。
 まだ学齢簿そのものをどのように作るかというのはやっぱりテクニカルな話になりますので,それについては今後,文部科学省をはじめとして全国展開されていく中で,浜松市としてこれまでつくり上げてきたものが,それに合わせた方がいいということであれば変更してまいりますが,私どもの方は全件を把握するために,住民票の基本台帳であるとか,あるいは学校の公立の小中校に行っている子たち,そして外国人学校など関係機関との連携を取りながら,その情報を共有し合うことでやっております。ですから,学齢簿を作るだけではなくて日々更新される情報は,当然転入時,転出時にも変わりますし,あとはどうしても学校になじめないということで,小中学校の公立の学校をやめてしまって就学教室に行く子たちもますし,いろいろな状況が発生するものですから,学齢簿を作ると同時にその運用をどのようにしていくのか,地域の中でその情報を,一部個人情報も含みますから,どう共有を図っていくのかということが重要であると感じております。

【佐藤座長】
 的確なお答え,ありがとうございました。
 それでは,次に議題3の,中間取りまとめ骨子案というものが皆さんのお手元に届いていると思いますけれども,こちらについて議論をしていきたいと思います。
 事務局から,この資料3の説明をお願いします。

【事務局】
 資料3の中間取りまとめ骨子案について簡単に御説明させていただきます。大部にわたりますので,時間が長くなってしまいますが御容赦ください。
 まず,1ページの目次ですけれども,これまでに会議で議論頂いたことを踏まえて,1ポツ初めに,2ポツ現状,3ポツ課題ということで分類をさせていただいております。
 2ページ目を御覧ください。初めにということで,有識者会議が開催された趣旨について記載をさせていただいております。本件につきましては,外国人との共生社会を実現するため,人道的観点 及び国民の安全を守るため,外国人学校においても保健衛生の確保を求められている。そのため,外国人学校における保健衛生の確保の在り方について検討を行う有識者会議を開催する。これまでの新型コロナウイルスの感染症対策を含めて,外国人学校の保健衛生に係る諸課題への対応を検討いただいているということを記載させていただいております。
 3ページ目を御覧ください。3ページ目からは現状ということで,これまでの会議で御説明,あるいは御議論を頂きました詳細について記載をさせていただいております。まず,3ページ目の(1)の方から,専ら外国人の子供の教育を目的とした施設,いわゆる外国人学校ということで,外国人学校には学校教育法の1条に定める学校,各種学校,無認可の施設が存在しています。各種学校,認可を受けた外国人学校については,128校が存在しています。一方で,無認可施設についての全体像は不明ですが,都道府県から報告があった31施設,あるいは国際的な評価から認定を受けている施設として26施設のほか,幾つかの施設が存在を把握されているということを記載させていただいております。
 4ページ以降は,外国人学校の支援の主な取組ということで,一つ目が各種学校認可を受けた外国人学校については法人税,所得税は原則非課税としている。二つ目は指定寄附金と特定公益増進法人について,三つ目としては各種学校認可の弾力的な取扱いについて通知をしていることについて記載をさせていただいております。
(3)の外国人学校における新型コロナウイルス感染症対策に向けた取組については,本日の資料1とほぼ同じになっておりますので,割愛させていただきます。
 5ページについてですけれども,外国人学校の保健衛生環境の実態調査ということで,第2回会議で報告させていただいたことをベースに記載しております。外国人学校における保健衛生の確保については,一般の事業所と同様の取扱いになっており,外国人学校の児童生徒や教職員においても感染者やクラスターの発生が見られる状況でございます。このため,外国人学校の保健衛生環境に係る調査を実施したところです。
 6ページに,概要を記載させていただいておりますけども,4月から5月末にかけて,日本語,英語,ポルトガル語で調査をさせていただいております。対象となったものは161校で,回答率は約50%ということでございました。
 7ページを御覧ください。7ページ以降に,主な調査結果ということで記載をさせていただいております。まず,新型コロナウイルス感染症に係る対策については,各学校で実施している新型コロナウイルス感染症対策として,健康状態の適切な把握や,教室等の管理,飲食の場面における飛沫(ひまつ)拡散防止の取組等は,9割以上の学校でその対策を講じています。一方で,体育やグループワークなどの学校活動については,対策を講じている学校は約8割と,相対的に割合が高かったというところでございます。
 8ページ,9ページで,新型コロナウイルスの感染症対策に係る国の支援の利用状況と,自治体の支援の利用状況についてお伝えをさせていただいております。これを見ますと,外国人学校は相対的には国よりも地方自治体の支援を利用している場合が多いということが言えると思います。
 10ページについて,一般的な保健衛生等に係る対策について記載をしております。教職員の健康診断,傷害保険加入,衛生管理基準の策定については,約9割の学校で実現されています。一方で,例えば養護教諭を配置している学校は約3割にとどまっているというところでございます。
 11ページですけれども,ここからは有識者会議で,委員の先生方から調査について御指摘があったことについて記載させていただいております。調査については,もう少し詳細な把握が必要であるということや,これらの情報を生かしてどのようにアクションをしているかについても調査すること。あるいは無回答であった5割の学校の方が,何か問題があるのではないか,どのような体制で,誰が中心に具現化しているかについても調査をした方がよいこと,調査に無回答の学校への情報提供については,長期的視点に立った体制構築が大切であるということなどの御意見,御指摘を頂いたところでございます。
 12ページからが課題ということで記載させていただいております。これまで御議論いただいた中で,三つ課題が明らかになったと考えており,まず,一つ目が外国人学校や外国人学校に通う子供たちの把握に関する課題,二つ目として外国人学校が保健衛生環境対策を講じる際に生じる課題,三つ目といたしまして外国人学校が保健衛生環境対策を講じる際の支援体制に関する課題ということで,三つ課題を記載させていただいております。
この三つの課題に沿って,有識者会議での委員の先生方の御指摘を整理させていただいたところでございます。
 一つ目の課題,外国人学校及び外国人学校に通う子供たちの把握に関する課題ということで,御指摘といたしましては,学校単位,教育委員会,市長部局,保健衛生担当部局といった複数の手法での把握が考えられる,各外国人学校の体制や運営であれば,どこの学校に通っているかといった把握が重要である,子供の就学実態や出入国管理記録等からの把握も考えられるのではないか,国際部署,外国人コミュニティルートを活用しながら把握を行うことも考えられるのではないか,といった御指摘を頂いております。
 二つ目の課題について,外国人学校が保健衛生環境対策を講じる際に生じる課題ということで,更にそれを三つに分けて提案させていただいております。一つ目が,各外国人学校の状況を踏まえた保健衛生環境基準の考え方ということで,外国人学校にすべからく学校保健安全法を適用するのは厳しいのではないか,学校における保健管理マニュアルを活用する際に,法的な衛生管理基準と衛生管理マニュアルの基準に差異が見られること。地方自治体が,処置を講じる上での在り方を考えておくことも大切であること,外国人学校の事務能力や財政の現状をきちんと認識した方がよいのではないか,二つ目が適切な情報の入手ということで,文化の違いを念頭に置くことが大切であること,口コミやコミュニティが大きな役割を果たすのではないか,学校における衛生管理マニュアルについては,日頃使える具体的な情報も訳して適用することが重要である,といった御指摘を頂いております。
また,個別の観点といたしまして,心のケアと新型コロナウイルス感染症についても考えるべきであるとの御指摘を頂いておるところでございます。
 三つ目の課題といたしましては,外国人学校が保健衛生環境対策を講じる際の支援体制に関する課題ということで,これは三つに分けて提案させていただいております。一つ目が,地方自治体と外国人学校との関係といたしまして,地方自治体の窓口として,教育委員会だけではなく,保健所や地域の保健衛生担当の方が適切なケースもあるのではないか,人事異動があるために,行政担当者との継続的な関係の構築が難しい場合もあること,プッシュ型の支援やフェース・ツー・フェースの対応が必要であること,基礎自治体からは何の連絡もできていない外国人学校も存在すること,子供たちワクチン接種については,接種への同調圧力を生まないように配慮する必要がある,という御指摘がございます。
 二つ目として,外国人学校に対する広域的支援の観点として,都道府県,市町村をまたいで通学する生徒も多数存在するということで,広域的な観点が必要であること,あるいは広域的であるためワクチン接種へのアプローチが難しい部分もある,というところがございます。
 三つ目その他といたしましては,やはり一緒につくっていくという考えを持って施策を講じてほしいといった御指摘があったところです。以上でございます。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。それでは,今,報告いただいた中間の取りまとめに関する議論を進めていきたいと思います。どなたか御質問等ございますしょうか。
 11ページについても,前回の調査結果を踏まえて委員の皆様から出していただいた意見が記載されています。そして,課題のところでもこの有識者会議での議論を踏まえて,皆様の意見を主に載せています。この後,これを踏まえた上で,課題や対策や提言が出てくると思いますので,ここがまだ足りないとか,そういうところを是非出していただきたいと思います。いかがでしょうか。
 浅野委員,お願いします。

【浅野委員】
 ありがとうございます。
 11ページで,保健室,養護教諭,学校医の配置率が低いというところで,今後設置を促進する際には,どのような体制で誰が中心に具現化しているかについて調査してほしいという意見で,二つの要望を一つにまとめてありますが,この表現を別々にしていただきたい。保健室養護教諭,学校医の配置というのを是非促進していただきたいということが一つ。そして,それが難しい,又は設置できないような集団においては,その中で誰が責任を持って推進していくのかを明確にしていただきたいということの二つに分けていただきたいと思います。
今までの皆様の御報告や調査などから,保健室の存在とか養護教諭の存在というのが,重要視されていないのではないかということを感じておりました。今,保健室,養護教諭という存在は,その役割が大変重要視されておりますし,子供たちの健康問題,様々な問題に対して関わっているということで,養護教諭はクローズアップされていると思います。そのことは,平成20年に施行された学校保健安全法にも明確にされておりますし,平成29年3月に文部科学省から出された「現代的健康課題を抱える子供たちへの支援~養護教諭の役割を中心として~」,さらに,令和2年度改定された日本学校保健会から出されました「学校保健の課題とその対応」の中に,養護教諭,保健室についての調査を基に,養護教諭の役割が重要視されて明確にされております。そういった専門性や必要性を伝えていただき,できる限り配置していただきたく思います。
 養護教諭の役割の中には,救急処置だけにとどまらず,健康安全に関わる危機管理への対応として心のケアや感染症対策,いじめや児童虐待など児童生徒等の心身の健康,課題の早期発見・早期対応など,学校保健を推進していく上ではなくてはならない存在ということで認めていただいております。そのことを伝えていただき,設置していただけるように要望したいと思っておりますので,そのことも含めてここに記載していただけると有り難いと思っております。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。オチャンテ委員,お願いします。

【オチャンテ委員】
 私も,やはり子供たちの心と体の健康のことがとても重要になってきていますし,普通の学校を見ると本当にいろんな悩みを抱えながら子供たちが通っていると思います。そういった面では,養護の先生や保健室は一つの居場所ともなっていると思うので,そういった取組も必要かなと思っています。
 最後のところに,一方的に支援するのではなくお互い協力し合うということが書いてあるのですが,正にそのとおりだと思います。私,立場として外国人ですけど,何でも支援ばかりとかではなく,自分たちも何かはしたいけれど,そのためにはやはりまず連携が必要です。先ほどもフェース・ツー・フェースというような表現がありましたが,誰と話をして,誰と組んでいったらいいのかということが必要となってくるので,今回は初めての調査だったということで,本当に希望に満ちた調査だったと私も思っていますが,次のステップとして,認可外とか今まで調査を行ってきて回答がなかったような学校に対して,自治体と学校との連携交流,その後どういうふうにしてお互い協力し合っていくのかということは,とても重要になってくるのではないかと思います。
 まず,学齢簿や,子供たちが何人在籍しているのか,そういった情報から,次はどんな取組をお互いにできるのかということを考えていったらいいのではないかなと思いました。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。次に,田中委員お願いします。

【田中委員】
 最初にこれは要望となりますが,いわゆる外国人学校という表記,かぎ括弧つきで記載をされていますが,今回恐らく議論の対象は,一般的には外国人学校と呼ばれているような一般の方々が認知している,特定の国の子供たちに教育を行うような形の教育機関だと思います。加えて特定の国の子供に限らない教育を行っているような機関として,一般的な認識としてはインターナショナルスクールと呼ばれるような英語教育を中心とした学校,私たちのようなNPO立等の学校があるかと思います。こちらは,かぎ括弧の中で外国人学校としてしまうと,どうしても,特定の国のお子さんたちが集まる,ブラジル人学校等のイメージが強くなってしまうのではないかという懸念があります。かぎ括弧をつけるかどうかの議論,加えて「等」というようなことで,少し幅を持たせていただけないかということを要望します。
 例えばそうした幅を持たせた表現にすることで,自治体の方ですとかあるいは関係者自身も,私たちも対象になるのかもしれない,私たちの地域にもそういった場所があるのかもしれないというような,少し認識を広げることができるのではないかなと感じていますので,検討をしていただきたいと思います。
 加えてもう1点の要望としては,無認可施設という表現です。こちらについては,もちろん認可校とそうではない学校がある。私たちのところも恐らくこの無認可というところに入ってくるのかもしれないのですが,認可を受けることが正しい,認可を受けていないことが正しくないというような印象を与えかねない表現だと感じますので,認可外とか何か工夫していただけないかというところです。
 浅野委員がおっしゃってくださった養護教諭の方々の必要性も,私たちも現場にそういった方がいたらすごく有り難いなと思うところではありますが,例えばそういう方々を私たちの方で雇用しようとしたときに,様々な国の子供たちあるいは特定の母語を扱う子供たちに対応できる養護教諭の方をどこでどうやって探したらいいのか,実際にそのような人材が見つかるのかという懸念があります。もし可能であれば人材育成というような観点からも一つ視点を盛り込むと良いのではないかなと思いました。
 加えてオチャンテ委員がおっしゃってくださった,調査の回答がなかった50%の学校等に対してアクションをしていくような御提案だったかと思いますけれども,加えて今回その調査の対象に入らなかった,いわゆるアクセスができていない無認可校等へも,どうやって調査の中に組み込んでいけるのかということも検討していく必要があるかなと感じました。以上です。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。いろいろ提案をしていただきまして,1点だけ質問させてください。外国人学校等というのは,これは対案としてよく分かりました。無認可施設に対する何か対案みたいな。
 田中委員のお考えはございますか。

【田中委員】
 保育のことを考えると認可外というような表現というのは比較的認知があるのかなと思います。無認可よりかは認可外の方が一段階柔らかい,正しいかどうかという価値観からは外れたところにあるのかなというふうに感じます。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。今回,これを基にして中間の取りまとめがなされるようですので,積極的に発言していただきたいと思います。
 それでは,倉橋委員,お願いします。

【倉橋委員】
 私の方からは,オチャンテ委員,田中委員,浅野委員からの御意見については,全面的に賛成をいたします。
 その上で,一つ目としては,外国人学校の管轄が基本的には各種学校の場合は県になっていて,だけれども,どちらかというとつながりがあるのは市の方というのが,どの自治体にも共通して言えることかと思います。もちろん市によって温度差はあるので,県も市もほとんど放置のところもあれば,市は頑張っているけど,県はそれほどでもないというところもあるかと思います。
 ただ,やはりどこも,一緒に学校と何かをつくっていこうとか,学校の問題点について共に解決していこう,学校が子供達の教育について一生懸命やっているという価値を認める,教育内容を認める,というところまで踏み込んでいただける自治体の方は少ないのかなと思います。本当に,一緒につくっていくという姿勢,問題を共有していってこちらのことを理解していただいて,私たちも先方のことを理解し,何で事業が単発で終わるのか,なぜ関係がうまくいかないのかについて理解をしたいと思っています。
 あと2点ありまして,障害の問題と心のケアの問題は無視できないかなと思います。日本の学校でうまくいかない場合の受皿として外国人学校を兼用される方もいらっしゃいますけれども,日本の学校でうまくいかなかったということの一つに,いわゆる障害の傾向があるというケースもあるのではないかと思われます。私たちは障害を認定できる人たちではないので,あるのではないかという問題提起にとどまります。
 また,中学生,高校生になったときの心のケアの問題,自分たちのアイデンティティをどのように確立していくかについて,私たちの子供たちは非常な困難を感じているという事実もございます。これは表に出てこないことだと思うのですけれども,いわゆる臨床心理士さんとの面談,面接のニーズは非常に高いというのが現状です。
 3点目ですけれども,どうしても外国人学校を運営するに当たっての一番,しかもなかなか解決できない課題というのは日本語の課題です。職員が,学校としてできる範囲で最大限に日本語の支援をしていますけれども,もう少し日本語でのコミュニケーションが取れるようになると,いろいろな施策がうまく回りやすいかと思います。日本語が分かる一部の人たちに責任が集中する現状がございます。理解して把握してかみ砕いて伝えるという作業がもし各学校単位でできるようになると,こちらとしては楽かなと思います。迂言(うげん)かもしれませんが日本語教育というのも,一つ必要なのかもしれません。以上3点です。よろしくお願いします。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。続きまして,安田委員お願いします。

【安田委員】
 私の方から,2ページの初めにというところについて,根源的なところですけれども,なぜ今この有識者会議でこのような議論をするかというところの一つは,新型コロナウイルス感染症への対応というのが喫緊の課題としてあると思うのですが,もう一方の平時の外国人学校等における保健衛生の確保というところについて,何か国際社会としての要請なのか,国内の政策的な動向の中で出てきたものなのか,その辺りをもう少し踏み込んで,我々の委員の間で共有しておくといいのではないかと思いました。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。
 初めにのところで喫緊の課題と同時に,今後の外国人学校における保健衛生の課題というものを,少し国際的な観点からという話だったかと思います。SDGsの目標3に,「全ての人に健康と福祉を」というのが掲げられていますので,グローバルな視点から言えば,日本に住む全ての国籍に関わる全ての人たち,子供たちに対する健康と福祉は極めて重要な課題である。したがって,今後,外国人学校における保健衛生に対する体制整備が必要不可欠だというような文言が入れば多分よろしいのかなと思います。これは御検討いただければと思います。
 北垣委員,お願いします。

【北垣委員】
 私の方からも,根本的なところに移るのですが,今回の取りまとめに関しましては,専ら外国人の教育を目的とする施設に通う子供たちを中心としていますが,そもそも長期的に日本に来ていただいている子供たち全般をどう見ていくかということにつながっていくかと思います。そのような子供たちの中で,日本の一条校に通っている子供たちがどれぐらいの割合いて,一条校に通っていないそれ以外の子供たちがどれくらいいるのか,どういう方々が多いのかを確認することが最初にあるべきなのかなという気がしました。
 今回,岐阜県の安田委員から御報告がありましたように,近年の外国人の受入れ状況では,技能実習生の方々が増えてきているということになると,短期に滞在する外国人の方々,そのような御家庭にいらっしゃるお子様が,特に外国人学校を選択せざるを得ないような状況がある可能性があると思います。日本に長期 滞在するわけではないので,日本語の習得等をすごく希望される分けではなく,日本での進学,就職を希望されてない方々が中心であれば,ターゲットとしては,短期に日本に滞在される保護者の方のアプローチを考えていった方がより効率的なのかなと思いました。
 事務局の方にお願いしたいこととしては,就学名簿を今後作っていくという国の全体としての方針があるということですけれど,現状として,外国人の子供たちで日本の一条校に通われているお子さんがどれぐらいの割合いらっしゃって,実際に認可校等の外国人学校,把握できれば認可外の外国人学校に通われているお子さんがどれぐらいいらっしゃって,それ以外に,把握がし切れていない子供たちが推定どれぐらいいらっしゃるかを確認していただきたい。その上で,今回は外国人学校の方々の困っているところに対して,どのようにサポートをしていくのかが課題になっていると思いますが,それ以外にもっと困っている子供もいると思われるので,そのような子供たちをどうサポートしていくのかについても議論すべきなのではないかなと感じました。
 もう1点が差別,風評被害についてですが,これは日本人の学校であったとしても児童生徒がコロナにかかってしまうと,様々な差別等を受けるということがあると思われます。そこで,外国人学校に通われている若しくは運営されている人たちがコロナにかかって,地域から孤立してしまうというのが非常に懸念されます。東京都等では,飲食店でコロナ対策を頑張っていますよというステッカーとかを作ったりしているので,そういうものを地方自治体なのか若しくは文科省なのか,若しくは厚生労働省なのか分かりませんが,これまでの報告で外国人学校の皆さんは,すごくしっかり対策を取られているところがあるので,やっているところに対してはそれがわかるようなものを作ってはいかがかと思います。また,不十分なところが把握できるようであれば,そこに対して,より指導していく方向性もあるのではないかなと感じました。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。
 1番目については,かなりデータとしては出ていますけれども,学校教育調査において全体で11万人ぐらい,その中で,認可されている各種学校等に通う子供たちの数は分かるけれども,問題は先ほどの田中委員の言葉を借りれば認可外の施設に通う子供たちが実は分からない。2万2000人ぐらいの不就学の子供たちがいるのではないかという文部科学省の初めての調査,2018年ではありますけれども結果が出ています。そうした全体的な状況を記述したらどうかという御指摘だと思います。その点については是非御検討いただいて,記述できるような方向でやっていただければと思います。2点目についても大変重要な御指摘だと思います。 鈴木委員,お願いします。

【鈴木委員】
 私,ブラジルの3校にヒアリングさせていただいたときに,ブラジルの3校とも政府認可になりますので,コロナに関連して本国からいろいろな情報が来ているかと思ったのですが,ほとんどそれはありませんでした。実際向こうの方がひどいということもあって,そういう意味で,各種学校に認定されていれば県からの情報が入るのですが,認定されていないと情報が隔離されてしまって,本当に情報弱者になってしまうのが外国人学校だと特に感じております。
 その中でも県の調査が出たのですが,静岡県の西部,つまり浜松市の外国人のいわゆる感染者の中に,特徴として生活習慣病を患っている方の率が多い。肥満であるとか高血圧であるとか,基礎的な疾患のある方が多い。そういった意味でも私,3校を訪問しましたが,やはり一般的な保健衛生の予防の部分でいう感染症の対策は,学校が頑張ればできるかと思います。それ以上の予防医学の観点から,外国人学校においても職員も含めた健康診断であるとか,校医による巡回診察であるとか,そういうものが制度化されていくべき時期に来ているのかなと感じております。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。
 この会議,今日は11時半までということでございますので,今日皆様からその他について御要望,御意見をお出しいただきましたので,またこれを少し事務局と整理をしていただいた上で,次の会議の方に提案していただければと思います。
 それでは,最後に議題4その他について,事務局から今後のスケジュールについて説明お願いします。

【事務局】
 本日は活発な御議論ありがとうございました。
 資料4,今後のスケジュール(案)を御覧いただければと思います。次回,第4回は8月5日木曜日,午前中2時間程度を予定してございます。どうぞよろしくお願いいたします。また,9月以降も月1回程度の頻度で会議を開催する予定としてございます。後日事務局から9月以降の委員の皆様の御予定について確認させていただき,それを基に開催日を調整させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【佐藤座長】
 最後に確認ですが,8月5日に中間取りまとめをした上で,9月以降も開催するということは,9月以降の会議を踏まえた上で,最終の取りまとめを行うという理解でよろしいですか。

【事務局】
 さようでございます。令和3年12月中をめどに最終取りまとめを予定しております。

【佐藤座長】
 ありがとうございます。
 それでは,本日の会議を閉会といたします。また次回よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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