外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議(第2回)議事録

1. 日時

令和3年6月23日(水曜日) 11時00分~12時45分

2. 場所

Web 会議システム(ZOOM)

3. 議題

  1. 外国人学校の保健衛生環境の現状について
  2. 有識者ヒアリング
  3. その他

4. 議事録

【佐藤座長】
 それでは,定刻になりましたので,ただいまより第2回専ら外国人の子供の教育を目的としている施設(いわゆる「外国人学校」)の保健衛生環境に係る有識者会議(以下「有識者会議」)を開催したいと思います。
まずは事務局から,議事と配付資料の確認をお願いします。

【事務局】
 事務局でございます。本日の議事は,議事次第にございますとおり,1.外国人学校の保健衛生環境の現状について,2.有識者ヒアリング,3.その他でございます。
議題1においては,外国人学校を対象とした新型コロナウイルス感染症対策や外国人学校の保健衛生環境の環境調査の速報値について御議論いただく予定です。
 配付資料につきましては議事次第にあるとおりですが,資料1.外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議(第1回)委員の意見,資料2.外国人学校の保健衛生環境に関する論点,資料3.外国人学校における新型コロナウイルス感染症対策の進捗状況,資料4.外国人学校の保健衛生環境調査(速報値),資料5.有識者提供資料,資料6.今後のスケジュール(案)となっています。
 また,参考資料につきましても,議事次第のとおりでございますが,何か過不足等がございましたら,事務局までお申しつけいただければと存じます。
以上でございます。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。では,早速,議題1.外国人学校の保健衛生環境の現状についてに入ります。
 最初に事務局から資料1,資料2,資料3の御説明をお願いします。

【事務局】
 それでは,資料1,2,3について説明をさせていただければと思います。
 資料1は,前回第1回の皆様方の御意見を幾つか箇条書にさせていただいたものでございます。項目ごとに分けさせていただいております。まず,感染症の対策ということについて頂いた意見としまして,6つほど挙げさせていただいております。
 一つはスクールバスの対策やこれから来る梅雨,猛暑の時期といったものや,家庭内のクラスターとの関係や,文化の違い,保護者との関係,ネットワークの活用といったようなこと,健康診断の重要性,今回の大きなテーマでございます国や自治体が具体的対応をどこまでできるのかというようなことが今後の議題になっていくということについての御指摘がございました。
 外国人学校及びそこに通う子供たちの把握ということについては,その把握が非常に重要であるということで,認可されてないところに通う子供も多数いらっしゃる可能性があるという御指摘や,そういったところに対してのアプローチとして,様々なルートがあるのではないかといったこと,子供の就学実態や出入国管理記録というようなところからのアプローチというのも考えていく必要があるといった御指摘がございました。
 適切な情報提供の方法ということについては,無認可の学校に届いてないといったところについて,更にどうしていくのか,さらに,衛生管理マニュアルについて,具体的な情報について訳していないところがあったという御指摘も頂きまして,これにつきましては,完成次第,すぐに送りたいと思っておるところでございます。
これに限らず,こちらで頂いた意見ですぐに実行できるものについては,速やかに行っていきたいと思っておるところでございます。
情報提供の関係では,やさしい日本語や多言語化というようなことと同時に,口コミやコミュニティといったところもしっかりと活用すべきでないかといった御指摘がございました。
 衛生基準の担保につきましては,一条校であれば,学校保健安全法の適用がございますけれども,外国人学校においては,広域行政の観点が必要ではないかという非常に重要な御示唆がございました。
行政,これは文科省も同じですけども,人事異動が比較的,日本の役所は頻繁にあるということで,学校としては関係性の構築が難しいのではないかということですとか,窓口が教育委員会に限らず,保健所ですとか,保健の衛生担当というような窓口の在り方というのはいろいろあるのではないかという御示唆も頂いております。
心のケアということについても,今までの対応で抜けておったのかなというところがございますけども,この辺もしっかりやっていく必要があるとの御示唆も頂いております。
 その他ということで,幾つか今までのカテゴリに入らなかったものについても,まとめさせていただいておるところでございます。こういった点も踏まえながら,今後,御議論をしていただければどうかと考えております。これはあくまでも参考ということでございまして,これをリバイスする必要があるといったものではなく,本日以降の御議論に,参考でお使いいただければと思っております。
 それを踏まえつつ,資料2の論点につきましても,前回御覧いただいたものに加えまして,先ほどの心のケアというようなことについて入れさせていただいております。ほかの点につきましては,大体これまでで頂いた論点の中で吸収できるのかなと思っておるところでございます。ただ,これ自体も,皆様方に御議論いただいて,適宜リバイスしていただきながらと思っておりますが,これ自体を変えていくのが必ずしもこの会議の目的でもないところがございます。皆様方が御議論する際の参考にしていただければというところでございます。
 資料3につきましては,新型コロナウイルス感染症対策の進捗状況ということで,前回,御説明させていただいた情報の発信に加えて,6月に入りまして,無認可の施設を含む外国人学校に対して職域接種の申込みというものができるということについて,私どもの方から案内の方をさせていただき,幾つかの学校が,これは各学校が独自で登録していただくわけですけれども,登録に向けて動かれているというようなお話も聞いております。
 また,抗原簡易キットについて,高校以上の学校に配るといった動きがございまして,高校生相当以上の年齢のお子さんがいらっしゃる学校については,そういった抗原簡易キットの配布に関する調査を今,同時並行でさせていただいているというところがございます。以上が資料3までの説明になります。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。後でまた質問を頂きますが,前回お話が伺えなかった東京インターナショナルスクールのダニエル委員から情報提供を頂きたいと思います。参考資料も皆さんのお手元にあると思いますので,ダニエル委員,よろしくお願いします。

【ダニエル委員】
 日本インターナショナルスクール協議会(JICS)で行っている取組についてお話しさせていただきます。
 東京インターナショナルスクールでやっていることを紹介しますが,JCISの学校では同じような対応をしていると思います。東京インターナショナルスクールにおいては,キャンパスに入ることができるのは教職員と生徒のみとなっています。両親も含めてそれ以外の方が事前の予約等なしに施設に入ることはできません。そして基本的には,登校したら建物に入る前に手洗いをすることになっています。これは文科省の推進するガイドラインに従って行っているものです。そして健康観察表を提出することになっており,それは港区の保健所から求められているものに従っています。その健康観察表がない場合は両親に連絡して確認することになります。そして検温を行います。また,建物内では常に必ずマスクをつけることとしています。これも港区のガイドラインに従ったものです。そして窓は換気のために常に開放しています。文科省のガイドラインでは1時間に10分間の開放が推奨されているところです。ガイドラインでは机を1日1回は清掃することになっていますが,我々の学校では昼食時と下校時の2回行っています。また10時半の休み時間と昼食前には必ず手洗いをすることとしています。
 もしコロナの感染症が疑われるケースが発生した場合,症状がある場合は校長とスクールナースに報告し,港区の保健所に本人が報告し,指示を受けます。家族への連絡等は保健所の指示に従って行われます。また,1つのクラスで2人以上の感染者が出た場合は,港区のガイドラインに従い,その学年全体に知らせることとしています。そして感染者は2週間の隔離期間を過ごす必要があります。これまでに当校では2人の感染者がでましたが,オンライン授業に移行し,最小限の感染者で済んでいいます。これまでガイドライン等を英語にしていただき大変助かっています。

【佐藤座長】
 
ありがとうございました。それでは,資料の1,2,3,それから,今のダニエル委員の説明について,御質問あればお願いします。
それでは,続いて,事務局から資料4の説明をお願いします。

【事務局】
 資料4について,説明をさせていただきます。
 外国人学校の保健衛生環境の実態に関する調査をさせていただいたものでございます。
 この調査につきましては,調査期間として一月ほどで調査させていただきました。使用言語は,日本語,英語,ポルトガル語でございます。対象校が,ここが一番重要でございますけども,161校に対して調査をさせていただきました。これは各種学校認可を受けた外国人学校や,都道府県の認可を受けてないけれども何らかの形で都道府県に把握していただいている外国人学校,また,日本インターナショナルスクール協議会の加盟校,在京ブラジル大使館から認可を受けているブラジル学校です。その中で重複もありますが,161校に対して調査をさせていただきました。
 都道府県が把握されている学校につきましては都道府県から調査をしていただき,都道府県が把握されてないところについては文科省から直接,調査票を配布,回収させていただいたというところでございます。これにつきまして,当然,調査に対する協力については法的な義務は全くございませんので,完全な任意の御協力というところでございます。
 回答率が50%,80校ということでございまして,そのうち認可を受けた学校が72校,無認可が8校でした。主な調査項目としましては,こちらに挙げておりますように,新型コロナウイルス感染症における対策をどういったことをされていたのかということ,また,一般的な保健衛生に係る状況について,こちらの項目に挙げさせていただいたことについて調べたものでございます。
 実際の結果を見ていただければと思います。まず,2ページ目でございます。
新型コロナ感染症への対応ということで,臨時休業の状況としては,昨年3月の段階では全くしなかった施設が12校あり,68施設が臨時休業をしたという結果でした。また,4月,5月,6月の動きを見てまいりますと,4月,5月はほかの公立学校等と同じような形で臨時休業されていました。6月については,公立学校はほとんど開いていたのですが,逆にその段階では外国人学校はまだ2割程度が閉めていたというところに若干違いがあるかなというところでございます。
 また,3ページ目でございます。感染症への対応というところで,現在の状況についてお伺いしております。
お答えいただいたほとんどの学校が通常登校ということでございますが,今もオンラインの授業を継続していらっしゃるところも,まだ分散登校をされてらっしゃるところもあるというところでございます。
 また,コロナ感染症への対応ということで,4ページ目でございます。各学校で実施しているコロナ対策というところでは,子供の健康状態の把握については,お答えいただいた学校全てがほとんどやっており,教職員に対する健康管理や,教室の常時換気等も,大体やっていただいています。若干,数字が低いのは理科ですとか音楽といった共同の授業の際の留意という項目については,若干低いというところがございます。それ以外の飲食への注意ですとか,課外活動,そういったところについては,かなり課題認識をされてらっしゃる学校が今回の調査にお答えいただいたのかなというところもございまして,私どもが思っていた以上によくやっていただいているというのが,事務局としての率直な感想でございます。
 ただ,逆に,今回お答えいただいてないところはやっていらっしゃらない可能性があるのではないのかというところがございます。ある程度こういった都道府県,又は国との関係や関心があるところについては,しっかりやっていただいています。ただ,そうでないところがひょっとするとやってないのではないか,その関係性をどうつくっていくのかが一つ大きな課題になってきていると受け止めさせていただいておるところでございます。
 5ページ目には具体の各学校の対応ということで,マスクですとか,手洗い,また,様々な消毒ですとか,スクールバスに対する対応ですとか,健康カードの提出というような形で,私どもが翻訳させていただいているマニュアルに沿った形でいろいろな取組をされていらっしゃるというところでございます。
 先ほど申し上げた感染症対策について,6ページをご覧いただければと思いますが,国の支援利用状況について,通知に関しては,今回,調査に御回答いただいたところは受けているというところです。
 補助金については,外国人学校については,全体の半分ぐらいのところからは補助金を受けたという回答が頂いております。メルマガについては,回答率が低いというところがございまして,こちらから送っているのですが,知らないという回答もあり,認知度を上げるにはもっと努力しないといけないなと改めて思っているところでございます。また,利用していないというような御回答も幾つかございました。
 これに対しまして,都道府県,市町村の支援については,頂いた80校の多くがそういった情報提供を自治体から受けております。また,指導助言ですとか,物品や財政支援ということについても,半数近くが利用をされていらっしゃるというところでございます。全く利用してないというところは数校でございまして,やはり身近な自治体との関係性をしっかりつくっていくということが一つ現実的な対応ではないかと改めて思ったところでございます。
 8ページは,今度は一般的な保健衛生に関する各学校の取組についてですが,保健室の設置や,養護教諭や学校医などのどちらかが少なくともあるというところが,御回答いただいた学校においては6割を超えているというようなことでございます。健康診断についても7割を超える学校がやっていただいているということです。また,教職員の健康診断については,事業所なので法的に言うと必ずやらないといけないのですが,ほとんどのところはやっていただいているというところですし,傷害保険についても,90%以上入っているというところでございます。
 また,一般的な保健衛生に関する対策ということについても,9ページにございますように,先ほどのコロナ対策とも重複しますけれども,消毒ですとか,講習会の実施,教職員等への検温ですとか,あとは先ほどダニエル委員のお話もありましたけれども,立入り制限,保健衛生に係る会議を実施する等の取組をやっていただいているというところでございます。
 今回,初めて調査させていただき,また,任意の調査であって,限界もあるというところではございますが,私どもが今回,調べた結果としては以上でございます。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。前回,第2回会議でこの調査結果の報告をしていただくということでした。報告をしていただきましたが,この結果について御質問,御意見等があればお願いいたします。
 田中委員,お願いします。

【田中委員】
 ありがとうございます。青少年自立援助センターの田中です。調査の対象になった161校について,都道府県が把握している外国人学校が何件あってどのような形態で運営されているものか,教えていただければと思います。また,国の支援の利用状況について,「通知」というものがありますが,具体的にそのような支援をどれだけ外国人学校が利用されたかなど,より詳細の部分がわかれば教えてください。

【事務局】
 細かい数字は今まとめていないので,取りあえずの説明で恐縮でございますけれども,どちらかというと個人立や比較的小さいところ,無認可のところについて都道府県の方が把握をしていただいているというところがございます。
 逆に,協議会等を通じて,私どもが直接把握しているところというのは,協議会に参加していただいているというようなところもあって,大きなところが基本的には多いというような傾向は全体としてございます。
 また,2点目の御質問の通知についての具体的な利用というところまで質問項目では置いておりませんので,私どもが送らせていただいた通知やマニュアル等を見ていただいているのだろうなと,私どもとしてはそういう理解でございます。様々なマニュアルでございますとか,コロナ対策等々の留意点について,その通知を各言語に翻訳したものを送らせていただいて,それを御覧いただいているということだと思っております。

【田中委員】
 ありがとうございました。なぜこの2点を確認させていただいたかというと,恐らく今回の外国人学校等の範囲の中に私たちのようなNPO立も関わるようなところだったかと思うのですが,少なくとも,東京都で運営をしていますが,東京都からそうした対応になっているというようなことは一度も言われたことがないというところです。また,私たち自身が,どことつながればそうした対象として見てもらえるのかというところが知りたかった,疑問だったというところ,通知について,私たちも公開されているものについてはチェックをしているんですけども,それをどれだけ自分ごととして,どの部分を適用すればよいのか,ほかの学校の方々がどういったところで判断をされているのかというところが気になったので,質問させていただきました。ありがとうございます。
 調査結果の中身について,もう少し詳しく見ていただくと,より効果的な情報等もそれを受け取る側がどうやってアクションをしていくことができるのかという部分が見えてくるかなと思います。ありがとうございます。

【事務局】
 ありがとうございます。特に都道府県のどこのセクションというところについては,この調査方法にも書かせていただいております各種学校担当部局を通じて,調査をさせていただいております。逆にそこで教育委員会やほかの部局と連携されていらっしゃって,いろいろやっていただいているところも実際あれば,そこの担当部局が把握している学校にそのまま流しているという場合もあるのだろうというところもございます。
 今,御指摘いただいたようなNPOの皆様方に対する情報提供も含めて,こういったところは,私どもも含めて,都道府県や市町村が,どうやって把握していくかというところについては,是非この場で御検討も頂き,私どもも考えてまいりたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

【佐藤座長】
 北垣委員,お願いします。

【北垣委員】
 調査の結果をまとめていただき,ありがとうございます。
 調査結果の8ページになりますが,一般的な保健衛生等に係る対策の①というところで,環境衛生基準の策定割合が85%ぐらいあり,かなりしっかりされていると思います。その中で,衛生管理基準の策定がしっかりされているようですけれど,学校保健安全法に規定されている衛生管理基準は学校環境衛生基準となっていて,対物管理を中心に考えているのですが,この質問をされたときの衛生管理基準は,どういう基準を想定されて質問をされていて,受け手側がどのような基準を策定しているということで判断されているのか分かれば教えていただければと思っています。
 この質問をさせていただいている背景には,今回,新型コロナウイルス感染症対策が中心となっているので,最も重要な管理基準の一つとして換気基準があります。そういうものを想定されて,そういう基準を持っていて,その管理をしっかりやっているのかどうなのかということが,このデータから見ると,かなりの学校がやっているということになるのですが,実態が本当に反映されているのかが少し疑問に思いましたので,質問させていただきました。

【事務局】
  学校衛生管理基準の具体のところについて,どこまで今回,調査をしたかということと,それがどの程度,現実に反映しているかというところについては,コロナの関係でございますと,具体の個別の事例を資料4ページにあります項目をそのまま聞いており,その中に,換気をしていますかとか,検温をしていますか,飛沫防止などはされていますか,というような形で聞いているというところがございます。
 一般的な保健衛生についても資料の8ページにございますように,衛生管理基準の有無,策定の有無というような形で大まかに聞いております。それがどの程度,詳細なものなのかということについては,今回は調査の方は,初めてのことでもございますし,関係性もこれまで全くなかったところに聞くというところもありまして,ある程度大まかに聞かせていただいておるというところでございます。
 こういった細かい点について,どこまでこういったアンケートで調査していくのが良いのか,もっとこれは具体に今後のヒアリング等を通じて,きちんと聞いていった方がいいのかということについては,また皆様方とも御相談しながら考えていきたいと思っております。

【北垣委員】
 ありがとうございます。
 今回のこの検討会の中で新型コロナウイルス対策が大きな目標になっているのはよく分かっているつもりですが,一般的な外国人学校に対しての子供若しくは職員の健康管理という観点とどこまでを合致させるのか。もし,今回の緊急的なコロナウイルスの対策を中心に考えるのであれば,その衛生管理基準の中で換気基準をしっかりつくっていって,なおかつ,そのモニタリングをしているのかが最優先課題になります。そこのバランスが1回目,2回目の流れの中から私が少し把握できてない部分があったので,今後の検討の中でどこに重点を置くのか御指示等があれば有り難いなと思っております。

【事務局】
 特にコロナ対策で緊急を要する部分につきましては,この前のマニュアルのこともございますけれども,会議の中で出てきた都度で必要があれば,そこに速やかに対応していきたいというのが私どもの基本的な今の思いでございます。そういう意味では,この会議において論点がその段階では絞れないということかもしれませんけども,特にコロナについて,緊急でやった方がいいということについては,できる限り早い段階で御指摘を頂いて,取り組めるものについては即時,取り組んでいきたいと考えています。
 どちらかというと一般的な保健衛生環境に係る部分については,そういったものに比べてもう少し時間的余裕があるかなというところもございますので,先ほどの御指摘も踏まえ,詳細な情報というところも踏まえながら,少し時間を置いて考えてもいいのかなと思っておるところでございます。ただ,その流れ自体も,御議論いただければというところもございます。

【佐藤座長】
 ありがとうございます。
 オチャンテ委員お願いします。

【オチャンテ委員】
 先ほどの田中委員の質問に少し関連しているのですが,調査対象者の外国人学校161校中に,回答数は80校で5割となっています。今,調査の結果を見てみますと,いろんな対策が行われているというのがよく分かるのですが,逆にその答えてない5割に対して,文科省から何かアクションが行われていますか。なぜお答えになってないのか,情報が行き渡ってないのか,原因は何なのかということは少し疑問に思いました。むしろそちらの方が問題になっているのではないかという懸念はあります。分かる範囲で,もし回答があれば教えていただきたいです。

【事務局】
 正に非常に重要な点をおっしゃっていただいております。やはりなぜお答えいただけなかったのかを我々もしっかり分析していかなければいけないと思っております。例えば,やってないということについて,初めて来た調査について,国にそのまま,やっていないと伝えるということについて,かなり躊躇もあったのかなとも思います。
これまで全くと言っていいほど関係性がなかったところに対して,例えば,場合によっては自らの経営に障害となるかもしれないような情報を伝えていくということについては,ここは完全に任意の調査でございますけれども,戸惑いや,そういったことに対しての忌避は当然あったのかなというところもございます。
 全く我々としても,権限があるわけでもございませんの で,徐々にかもしれませんけど,何らかの関係性をつくっていただきながらと考えております。逆に,その情報を文科省が持たなければいけないかというと,必ずしもそうでもないのかもしれないというところもございます。少なくとも,身近な自治体は知って,保健衛生に役立てていただくことや,場合によっては,国でないところにそういった相談窓口というのを設けて,この情報については国には渡さないけれども,相談には乗っていきますよというようなところを設けた方がいいのか等,どういった形で,それらの学校の保健衛生の環境につながるようなことができるのか,今,皆様方の御意見も頂きながら,私どもとしては考えてまいりたいと思います。
 今回,出さなかったことに対して何らペナルティーがあるものでもございませんので,出していただけなかったということについては,それはそれとして受け止めさせていただいています。それについて,それらの学校に対し,これから我々がまた何かすぐにアクションを直接するということは逆に考えておりません。そういったところとコミュニケーションができるような方策というのを,こういった場でお考えも御指導も頂きながら考えてまいりたいという状況でございます。

【佐藤座長】
 浅野委員,お願いします。

【浅野委員】
  私の方からは二つございますが,一つは情報提供ということで,今,オチャンテ委員からありましたように,やはり答えてないところに対しての,情報提供ということですけれども,長い目で見れば,様々な体制を整えてからと思うのですが,取りあえず答えていなかったところに対して,早急に,今,持っている情報をお伝えいただければと思います。その中で,もし悩みとか,こういうことで困っているということが吸い上げられたら,今後の対応につながるのではないかと思っております。
 もう一つは,情報の具現化ということです。8ページの調査の中に養護教諭の配置と保健室の設置というのがございますが,保健室が設置されていない場合は,新型コロナウイルス感染症の感染が疑われる子供たちや先生方をどの部屋に,どのようにゾーニングしているのかという問題があり,それから,養護教諭が日本の国の学校として見れば非常に少ないと思います。また,(参考)に養護教諭と学校医少なくとも片方は存在という項目は,学校医は常駐しているという意味で捉えるのでしょうか。
学校医が配置されていたとしても,相談はできますが,日々,対応ということは難しいと思います。それに対して,その参考の「存在」というところが,常駐されているのであれば,養護教諭に代わるものとして配置しているということに捉えていいのかどうかということもあろうかと思います。
 それから,やはり情報をもらった後の具現化をどのような体制で,誰が中心に行っているかということについての調査も具体的に行っていただきたいと思います。

【事務局】
 ありがとうございます。ただいまの御質問,御指摘の点に関しまして,まず,1点目の情報の提供という部分については,実は今回頂いた学校のうちの半分ぐらいはメルマガに登録されていて,それでも全くお答えはいただけなかったという学校もございます。少なくとも情報の提供ということでは,皆さん,見ていらっしゃるかどうかは別として,メルマガには登録していただいておりますので,そこを通じての情報のプッシュというのは,引き続き行ってまいりたいと思っております。
 ただ,メルマガは見ていただいているけど,こちらに対してのアンケートの回答がなかったというのは,非常に我々としては残念ではりますが,それはそれとして受け止めていきたいと思っております。そういった意味での関係性の構築ですとか,その後,そういった情報をどう活用していただいているか調べていくというようなことについて,具体的にどうやっていけばいいのかということも踏まえて,今後,先生方のお知恵も頂きながら考えてまいりたいと思っております。
 人的配置ということについてですけども,今回は第1回の調査ということもございまして,ある種,専門性を持った方が人的スタッフとして配置をされるという学校の方針があるのかを聞きたかったというところがありまして,保健医,学校医,保健の方々ということで聞かせていただいており,具体的にその方々が常勤かどうかというのは問うておりません。ですので,そういった方々も含め,どういった形でこの情報を生かして,日々の健康管理に役立てていただくかということについては,御指摘のとおり,これから実態についてさらなる調査が必要であろうと私どもも思っております。

【佐藤座長】
  私からも二つだけコメントさせてください。
 一つは,今までやったことのない実態調査が初めて行われたということは大変よろしいと思いますし,この結果は面白いと思いました。
ただ,議論になっている調査の対象になっていない学校に関してです。この有識者会議の趣旨は,全ての外国人の子供たちを対象にして,命,健康に関わることを何らかの形でサポートできないかということですから,就学実態の把握などを通して,できるだけ多くの子供たちが支援の対象になれるようにしていくことが必要です。
もう一つは,コロナの対策は緊急です。命に関わりますので。ただ,コロナの対策を考えていくときに,外国人を別枠でやるという発想自体が問題なわけですから,日本の子供への対策と,一体化して進めることが必要だと思います。
 そうすると,北垣委員から問題提起もありましたように,これを中長期的な視点で,外国人学校をはじめとして学校の保健衛生環境をどうしていくのか,どういうふうに支援していくことが可能なのかの議論がこの有識者会議で必要だと思いますので,引き続き,議論をしていければと思っています。どうもありがとうございました。
この後,有識者のヒアリングを予定しております。浜松市の国際課の鈴木課長と東京外国語大学の小島祥美准教授からお話をお伺いする予定でございます。お二方からお話を頂いた後にまとめて質疑をさせていただきます。時間が許す限りで質疑をしていきたいと思います。
 それでは,まず,浜松市の国際課の鈴木課長からお願いできますでしょうか。よろしくお願いします。

【鈴木委員】
 それでは,画面を共有させていただきます。
 外国人市民の感染症対策ということでプレゼンさせていただきます。
 まず,浜松市の外国人市民の状況でございますが,トータルとしては2万5,593人の方がいて,浜松市人口の中で3%程度の割合でございます。ブラジルの方が9,486人,全国の都市で最多ということで,非常に多いというところが特徴でございます。
それもありまして,2009年に日本で3番目のブラジル総領事館が開設されておるということと,こちらの右を見ていただくと分かりますが,永住者,定住者,日本人の配偶者,永住者の配偶者など,長期滞在が可能な在留資格が7割を超えていて,定住化が進んでいます。一方,フィリピン,ベトナム,インドネシアなど,当然,技能実習生の流れもありますので,多国籍化も進んでいるというところでございます。
1990年の改正入管法施行以降,非常に急激に増えまして,リーマンショック時には3万3,000人いましたが,その後,2万人まで落ちてしまいました。今は回復しておりまして,今,2万5,000人というところでございます。
 感染症対策の取組の状況でございます。これは体系的に取り組んでいたというよりも,今回,振り返ってみますと,昨年の4月,5月,コロナ感染の大混乱の時期,主に三つの取組をしてきております。相談体制の強化,情報発信の強化,支援体制の強化。そのうち,この星印のついたものについては,市の予備費など,国のそうした交付金を活用させていただいて取り組んできたものでございます。
 相談体制の強化につきましては,相談日の増加や多言語通訳機器の増加,SNSの活用型相談の開始がございます。
 情報発信については,ホームページ等の多様なチャンネルで多言語の情報発信に取り組んできております。
 支援体制については,この三つに取り組んでおりますので,これから説明させていただきます。
まず,相談体制の急増です。昨年4月,5月の時期,これは令和2年度でございますが,通常,私どものワンストップセンターには大体月平均300件というところが統計の平均値ですけども,4月で554件,5月は717件,6月は1,000件ということで,昨年のコロナの感染拡大の中で相談が急増しております。
4月,5月はやはり感染症に対する相談が多かったですが,その後は生活に対する不安でございますとか,特定定額給付金のことでございますとか,あるいは雇い止めの問題であるとか,コロナ感染症の拡大に伴う様々な不安に関して御相談を頂いているというところでございます。
 そのため,昨年の取組としまして,この一番上のワンストップセンターの多言語相談の窓口を強化いたしまして,多言語の相談を週1回から週3回に,ポルトガル語を毎日やるようにして,英語については基本的には変更なしということで,ワンストップ総合センターでの相談を強化しています。
 それから,情報通信機器,タブレットによる多言語通訳の機会を増強いたしまして,社会福祉課や産業振興課といった必要とする課に配備を新たに追加し,強化しております。
 それから,本市はカナル・ハママツという多言語生活情報サイトにもう何年も前から取り組んでおりますが,こちらが7か国語の対応です。教育,防災,税金,福祉,子育て,健康医療,ごみ・リサイクル等の情報発信サイトがあるのですが,こちらに感染症の対策のサイトを設けまして,昨年の4月,5月あたりはかなり集中的にこのサイトを通じて,感染症の予防に関する情報を提供しておりました。通常,このサイトは年間30万件ぐらいのアクセスがございますので,多くの外国人市民の方がこれを御覧になっていただいていると思います。
 それから,浜松市国際交流協会がございます。こちらも私どもの事業を請け負って,いろいろな展開してくださっているわけですが,昨年4月から情報の発信強化をしていただきました。やはり,急増していく過程の中では,こうした外国人市民の皆様にメッセージをそれぞれ出していただくであるとか,こちらの左下が地域でも有名なユーチューバーのインフルエンサーになりますが,こうした方々にも御登壇いただきまして,特に若年層の方々への情報発信を強化する,あるいは,保健所が常にそういう立場におかれて陽性者の調査とかしているのですが,そうしたところの翻訳支援を強化してきました。そういったところが去年から今年にかけての国際交流協会での取組でございます。
 支援体制ということで言いますと,昨年,特別定額給付金の申請があったと思いますが,こちらについても,国際交流協会の窓口で,こうしたボランティア等を通じて書き方支援を行うとともに,給付金の周知については,フェイスブックで8言語,動画配信については,こちらの書かれている言語でそれぞれの回数で配信してきているところでございます。
 そのほか,副次的な作用といたしまして,我々が予測したのが,当然,不就学の子供たちを支援する教室の増強が必要であろうということで,今まで2教室ございましたが,コロナ禍において就学の状況が悪化しているということもございましたので,9月より就学教室を追加しております。こちらの左下が新たに追加した支援教室でございます。こうした手当もしております。
 それから,実は先月のゴールデンウイーク明け,感染者数が浜松は急増いたしまして,市長の方で新型コロナウイルスの感染拡大宣言を発令いたしました。5月26日のことでございます。特に若年層による感染者の急増。それから,外国人市民も4分の1ぐらい増えてきてしまいまして,非常に急激な状況の変化でございまして,我々としてはマスコミ発表をさせていただき,対策を打ったところでございます。このときの病床使用率は61%まで達してしまいました。
 また,外国人市民の中で日系ブラジル人社会でも非常に有名な通訳で活躍されてきた方が急死されて,大々的にニュースになりまして,ブラジルの総領事館でも衝撃が走ったと言われるぐらい影響力のある方で,女性の方ですが,お体の具合が悪くなって入院して,次の日の朝に亡くなってしまったということがございました。
このため,外国人コミュニティとのコロナウイルス感染症対策連絡者会議ということで,会議を設置させていただきました。
 実はここにも書いてありますように,外国人市民の感染症対策強化のためには外国人市民の生活全般を支える企業,事業所,コミュニティ,外国人学校等のそれぞれの生活のシーンでキーになるところのお世話をされている担当者を集めた連絡者会議を設置することが有効であろうと考えたからでございます。
 これまで,また今も継続しております広報誌,ホームページ,SNS,チラシ,動画,様々なマルチチャンネルで,外国人コミュニティであるとか外国人市民の方に届ける情報発信は現在も継続しておりますが,この連絡者会議は外国人市民の間に立つ,それぞれの企業,事業所,NPO,物販・飲食,地域コミュニティ,外国人学校,教会等の関係者,責任者の方にお集まりいただいて,感染対策の協議,情報共有,ノウハウの共有,あるいは連携の強化をいたしまして,てこの原理のようにこうした方々の介在を挟ませていただき,我々,協議させていただき,更にその情報をそれぞれの抱えている外国人の方々にお伝えいただくという手法を取ったということでございます。
 1回目は,非常に危機感を持っていた人材派遣会社の方々にお集まりいただきました。こちらの方は人材派遣会社の方です。これは地元のニュースでも取り上げられましたが,従業員の方のための注意喚起の啓発チラシを作成して,そこに署名もしていただくなどの工夫もするという徹底ぶりでございました。人材派遣会社は,外国人市民の方の健康管理は非常に会社の経営にも結びつく非常に重要なことになりますので,こうした取組をしていただいたところでございます。
加えて,この内容について,浜松市国際交流協会の方が動画を自ら作成いたしまして,更に配信したのが5月25日でございます。5月26日に緊急事態宣言を出させていただきましたが,このときには今年の5月連休から3週間程度で,昨年1年間での外国人の陽性者,感染者が出てしまったということで,非常に危機感を持っていたところで,まず,会社,事業所の方が動き始めたというところでございます。
 次が人材派遣会社のバイリンガルスタッフ,主には日本語,ポルトガル語に堪能な,会社の中でもお世話をしている日系の方々になりますが,チームリーダーの方にお集まりいただきまして,ポルトガル語で感染の状況・対応策を共有していったというところでございます。今後は6月30日に外国人学校の方々がお集まりいただくということと,あと,教会等はなかなか集めるのが難しいので,ブラジル総領事館から通達を出していただくなどの取組を進めているところでございます。
 今回の本題でございます外国人学校の取組については,浜松市は3校ございます。ムンド・デ・アレグリアとエスコーラ・アレグリア・デ・サベールの2校が県の認可を受けた各種学校で,最後のアウカンセという学校が県の認可がまだ受けられない状況ですが,本国政府の認可は受けているということで,それぞれ253、162,63という生徒数でございます。
 1月の時点で実は我々は連絡体制の強化を図りまして,仮に外国人学校の生徒・先生等がPCRを受ける検査を受けることになった場合は連絡表を提出いただくようになっております。そして,国際課が国際交流協会と連携をとりまして,外国人学校と国際交流協会はタイアップしていろんな事業を継続しておりますので,その事業実施の可否について検討するというスキームをつくりました。
 それから最後ですが,外国人学校の3校にヒアリングさせていただきまして,どういった対策をとっておりますかというところですが,1から9番までの基本的な児童生徒の検温,手洗い・アルコールの徹底,喚起の徹底,昼食時の対策,共用部分のドアのノブであるとか,廊下あるいは階段の手すりの消毒,あるいはマスク着用の徹底,保護者へのきちんとした連絡,それから,在宅学習やオンライン学習の導入,陽性者が出たときのルール。これについては3校とも実施をしていただいております。やり方は少しずつ違いますが,ほぼこうした対策は完璧に行っていただいております。ただ,保健室の完備でございますと,少しばらつきがございまして,ベッドだけがあるというところ,完全にそういう部屋があるというところ,全くないという学校があります。
 それから,校医についても,契約医師がいるというところと,その都度その都度というところと,特に設けていないというところとがございます。
 それから,学校衛生管理基準の設定,明文化されたものになりますが,ここは真ん中の1校だけがあるということ,職員の健康管理につきましても,この2校につきましてはございますが,あとの1校についてはないというところです。
 言うなれば,その学校につきまして,各種学校の認可を受けていない学校になりますので,日本人スタッフも少ない中で,感染対策はやっているものの,やはりなかなか9番以降の取組というのが少し難しい状況になっているのかなというところでございます。
結論ですが,基本的な感染対策は全ての学校が実施しております。それから,生徒及び教員の陽性者でも,今のところ,我々がヒアリングしたところ,学校内というよりも学校外で感染した可能性が大きいというところです。
 それから,オンライン学習,これも効果的に取り組んではおりますが,現在はほとんどが対面になりますけれども,去年の4月,5月であるとか,オンライン学習に早々と取り組みましたが,やはり低学年児童は御自宅にいても,御両親がいないということとか,精神的に非常に不安になるということで,学校に通わせている状況にございます。
 やはり各種学校の認可を受けていない学校は情報入手や支援体制が不利であるというところが分かってきているというところで,我々としましては,先ほどの連絡者会議でございますが,そうしたことを通じて,先ほど言った緊急事態宣言は,一応,一旦,落ちついてきましたので,6月20日で解除しておりますが,また第5波等とか,あるいはデルタ株とかの拡大も含めますと,今後とも先ほどの連絡者会議で関係を密にしていくという方策をとっていきたいと考えております。
 浜松市の現状報告は以上でございます。

【佐藤座長】
鈴木委員,ありがとうございました。続きまして,小島先生,よろしくお願いします。

【小島准教授】
 皆さん,こんにちは。小島祥美でございます。私からは感染症対策として早急に求めることについて,これまでの研究活動に基づいて述べさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まずは,文部科学省が2019年度に初めて外国籍の子供の就学実態を把握した調査の結果を御覧ください。この調査によって,日本に暮らす約12万人の学齢期の外国籍の子供のうち2万7,460人が外国学校に通う,若しくは不就学などであることが分かりました。つまり,全体の約4人に1人に相当するこの子供たちの命の所在が今,分からないわけです。なぜならば,外国籍に通う子とカウントされていても,その学校の存在自体を知らない自治体担当者もいるからです。これについては先ほどのアンケート結果の回収率がその点を示しているかもしれません。
 そのような中でクラスターが起きても瞬時に対応はできません。そうした現状を危惧されてか,前回の会議では,就学実態の把握の必要性に関わる御意見,御発言が複数委員からあったところです。
 外国人が多く暮らす地域では,浜松市さんからもお話がありましたとおり,これまでに外国人コミュニティを中心とした大規模クラスターが発生しています。しかしながら,一条校に通う子しか多くの自治体は把握していません。当然ながら,一条校に通う子と外国学校に通う子との交流は日常的に地域の中でございます。ましてやオリンピックを開催しようとしている日本において,感染者が特定できない,感染源を防げないという実態を放っておいてよいはずはありません。
 そこで,早急に取り組むべきことの一つとして,学齢簿の編製を提案します。
 文部科学省から昨年7月1日に外国人の子供の就学状況を一体的に管理把握することなどをまとめた指針が発表されました。また,先週15日の外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議で決定された総合的対応策の中でも同事項が繰り返し明示されました。この中で2025年末までに一体的管理・把握を図るという新たな一文も加わりました。しかし,4年後まで子供の命の所在が不明というままです。公衆の衛生を考えたら,4年なんて待てません。この有事において,大切な子供の命の場所を把握することは急務であり,全ての自治体が対応できるためには国から具体的な方法の明示が必要です。
 よって,総合的対応策の中でも明示されている外国学校,NPO等の多様な主体が外国人の子供の学びの受皿になっていることを踏まえ,具体的な学齢簿の編製について,私から提案します。
 方法は各種学校の認可校と無認可校を区分します。
 認可校は都道府県に子供の名簿を提出します。居住地の明記は必須です。そして,受理した都道府県は速やかに市区町村に報告し,それに基づいて学齢簿を編製します。来年度からは毎年の学校基本調査時に在籍者の数字だけでなく,在籍者の名簿を提出することを義務づけることで,学校にも無理のない制度として根づくでしょう。
 そして,無認可校です。まずは都道府県に届出をします。これは幼保無償化,認可外保育施設の届出を準用すると都道府県も無理がないでしょう。そして,無認可校は子供に在籍証明書を発行し,それを受け取った子供は市区町村に報告することで学齢簿を編製します。ここでは,市区町村が近隣の公立小中学校の在籍として学齢簿を編製することを私は推奨したいです。これはアメリカ合衆国の国籍を持つ子供たちにいち早く母語と日本語のダブルの教育を実現した沖縄のアメラジアンスクールの実例が最も参考になるでしょう。詳しくは別紙の沖縄県の通知を参照ください。
 これによって,多くの子供の命の所在が自治体で確認できるようになると考えます。でも,それだけでよいでしょうか。ポストコロナを見据えた感染症予防策も必須です。地域の健康を守るためにも最低限の対応は不可欠です。
 そこで,二つ目として,学校検診の実施を提案します。
 ここで世界に誇る日本の学校検診と養護ティーチャーの出番です。実施方法は各種学校の認可校と無認可校を区分します。認可校は都道府県や市区町村,養護教諭などと協働して,日本の学校検診モデルを実施します。認可校の先生たちが主体的に実施できるように,養護教諭にサポートいただくことがポイントです。
 そして,無認可校は選択制とします。例えば,A方式として認可校と同様,B方式として近隣の公立小中学校での実施に参加など,地域の実情に応じた選択というのもよいでしょう。
 さて,皆さん,日本の学校保健システムは途上国の学校で応用されていることを御存じですか。何と2006年度からJICAを通じて,国際協力として日本は各国に適した学校保健システムの構築を目指したプロジェクトを途上国で行っています。
 また,Yogo Teachersという表記を御存じですか。これは日本語の「養護」を端的に示す英語が存在しないことから,あえて日本固有の養護教諭が持つ優れた独自性を世界に発信することため,日本養護教諭学会で2001年に決議された用語です。つまり日本の学校検診や保健の先生はクールジャパンです。
 私はこのことを今から10年前の2010年に初めて知りました。以前に暮らしていた岐阜県で私は,ブラジル学校に通う保護者から日本に来て一度も子供は検診を受けたことがないなど,子供の健康を心配する声を多く聞き,その改善方法を考えていたときでした。ある自治体に相談すると,外国学校に通う子供は制度上の対象外だからと切り捨てるようなことを言われ,公費で健診さえもできないことを知りました。
 放っておかれた子供たちの健康をどうしたら守れるのか。途方に暮れていたときにクールジャパンを知ったのです。専門家が外国学校に行って健診をしただけでは日本の学校検診は根づきません。健康教育を学校教育で行い,地域組織活動とつなげることがクールジャパンなんです。そのため,日本の学校保健システムの意義をブラジル学校の先生たちと一緒に考え,日本の学校保健の手法を応用することでその解決策の糸口が見出せるのではないか,そんな着想から研究活動を始めました。2011年のことです。
 そこで,私はまず近くの公立学校の保健室から身長体重計や,そして,目や耳の検査に必要な機材をお借りすることから交渉しました。そして,元養護教諭,途上国でも活躍されている小児科医,自治体などの御協力を得ながら,ブラジル学校の先生たちと一緒に子供たちの健診を始めました。それから10年です。本会議のメンバーのお一人である倉橋委員のEAS豊橋校を始め,これまで複数校で実施してきましたが,全く問題ありません。現在は,ある病院の社会貢献事業として発展し,そして学校数も拡大して,毎年,愛知県,岐阜県内の学校で健診を行っています。
 では,ここでブラジル学校でのボランティアによる学校検診の取組を放送大学の番組で恩師の中村安秀先生と取材したので,是非御覧いただきたいと思います。4分ほどです。

(動画視聴)

【小島准教授】
 このように,学校検診の意義を考えることを先生たちと一緒にできれば,学校主体の健診――学校検診は全国で可能であるのです。2011年から続けるこの学校では,当初,コーディネート役を務めていた私なんてもう不要です。ブラジル学校の先生たちと経験のある上級生たちで今では十分に実施できます。
これらを踏まえて,次に,今後,検討すべきことを述べます。
 子供の健康と安全を守るためには,やはり学校保健安全法,日本スポーツ振興センター法,学校給食法の3法の適用・準用は検討していくべきだと私は考えます。なぜならば,広範な養護が必要な義務教育課程の段階の児童生徒が通っている学校だからです。そのことは,全都道府県のうち19の自治体が各種学校認可校の中学校修了者に公立高校の受験資格を認めているという事実が実証しています。各種学校認可校の修了者であれば,特別な入試等が実施されることなく,学校教育法施行規則第95条の5に値すると19の自治体では判断されていることが私たちの有志の会の調査によって明らかになりました。
 つまり,各種学校認可校は所在する地域の中では全日制の学校と認識されているわけです。よって,この3法の適用・準用は妥当であり,検討していくべき必須事項です。
 現行では,インフルエンザのように,発熱した子供に欠席を求める根拠はありません。子供が集団で生活する以上,集団感染が起きるリスクは同じであり,子供の健康を守るためには,やはり日本の制度の下に組み込めることが必須と考えます。
 コロナ禍ですぐにできることも考えてみました。私からは遠隔授業への支援を提案します。外国学校に通う子供の学びを止めないためにも,先ほどのアンケートの中にもございました,そして浜松市の報告にもございました,遠隔授業を受けている子供たちが外国学校の中にもいます。ですので,タブレット配布など,すぐに可能ではないでしょうか。これによって日本語教育の推進に関する法律に基づいた日本語の教育の実現にもつながるかもしれません。
 これは,今,私が暮らす愛知県が行った調査です。県内にある24校のうち17校の外国学校に通う子供たちの数をまとめたものです。全体の12%を日本国籍者が占めていることが分かりました。つまり,外国学校とは,決して外国籍者に限定した学校ではないのです。多くの方に知っていただきたい現実です。
 先ほど御覧いただいた映像のブラジル学校が隣接する岐阜県八百津町は,人道教育が根づいた町です。なぜならば,第二次世界大戦中に多くのユダヤ難民の命を救った外交官杉原千畝氏の出身地であるからです。この町にある全ての学校では命を大切にすること,人の痛みが分かり,他人に対する思いやりの心を育てていくことが学習されています。これは国際社会で共通の目標SDGsと正に合致する点です。
 委員の皆さん,文部科学省の担当課の皆さん,本会議は子供の命に関わるとっても重要な事項を扱った場であることを忘れないでいただきたいです。誰一人取り残さないために私たちにできることは何か。子供の尊い命を守ることを外国学校への情報提供だけで片付けるようなことは絶対しないでください。歴史を学び,人道的な見地に立って,方針を出していただきたい。強くお願いし,私からの報告を終了させていただきます。
 引用文献は以下のとおりです。御清聴いただきまして,ありがとうございました。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。浜松市の事例と小島先生からのプレゼンテーションをしていただきました。
 時間を取りまして,この後,質問,御意見がございましたら,お受けしたいと思います。倉橋委員,お願いします。

【倉橋委員】
 ブラジル学校の立場から小島先生の発表には非常に共感というか,有り難いなと思うところですけれども,実際に,今まで話を聞いていて,違和感というか,もしかしたら私は不適切なことを言うかもしれないんですけれども,指摘をさせていただきたいことがあります。
 ブラジルの学校にもいろいろな種類があります。今回,回答をしていない80校の中にも,きっとブラジルの学校,若しくは無認可校,若しくは認可校が含まれているかもしれません。自治体の方とか国際課の方とか,いろいろやってくださって非常に有り難いです。本当に感謝をしております。
 ただ,それを受け取る私たちの力量を超えたものが来ております。実際にメールマガジンも,私たちの6校のうち3名は何とかグーグル翻訳を使って読んでいるけれども,読むのが非常に大変だと。浜松市に出す学齢簿も,対象者だけ名前と住所を出すのですけれども,これも大変だと。実際にポルトガル語,母語で出せたら,すごく楽だけどねとか,ちょっと間違えるとすぐ電話がかかってきて,あれが違う,これが違う,ここにスペースが入っているから消して再提出してくださいとか,この名前大文字と小文字が混じっているので直してくださいとか。本当に何十回,何百回と,自治体とは結構そういうやり取りも大変です。そういうところも非常に手間です。ですので,外国人学校の現状をまず知っていただきたいと思います。
 実際に小島先生の発表は外国人学校に来て,そこで活動をして,そして,生徒や子供たち,保護者,関係者の協力の下,進めて,その当事者の視点というのは非常に強く反映されていると思います。そして,やはり継続的にやっていきたいというところもありますので,是非とも,与えるだけではなく,一緒につくっていくというお考えを持っていただけたらうれしいなということをブラジル学校として伝えたいなと思います。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。ほかにいかがですか。オチャンテ委員,お願いします。

【オチャンテ委員】
 はい,ありがとうございます。お二人の発表,ありがとうございました。とても勉強になりました。
 先ほど子供たちの健康という話が出たのですが,前回,第1回の委員の意見の中でも心のケアというお話がありました。その心のケアに健康,体ということも含まれるのではないかなと思ったのですけど,そういった子供の健康について考えていく,先ほど健康診断の話も少し出たのですが,そういうことを含むことも可能かなと思います。結局,心のケアは体の健康とつながっている部分もあると思うので,そういうのは取り入れることは可能なのではないかな,むしろ必要なのではないかなと思いました。

【佐藤座長】
 ありがとうございます。田中委員,お願いします。どうぞ。

【田中委員】
 御発表ありがとうございました。お二方の発表を伺いながら,やはり日頃からの関係構築ですとか,自治体の体制の整備というのがいかに重要かというのを改めて実感しました。情報発信についても,日頃から,平時から情報発信をされてきた,あるいは相談支援の体制があったというところがベースになって,今回のような,コロナ禍のような有事により効果的な情報発信対応ができているということを感じましたし,ブラジル人学校の小島先生や外部の方々の日頃の積み重ねによって,有事の際もしっかりした対応がとれるものだということが改めて分かりました。
 お二方の御発言を伺って,やはり外国人のお子さんについては,自治体間,あるいはどこで学んでいるかという教育機関間の格差が非常に大きいというのは,教育に関わらず,共通の問題であるということを感じます。このまま情報を発信するだけ,あるいは求めるだけとなれば,倉橋委員もおっしゃったように,やはりできるところとできないところの格差がどんどん開いていってしまう。あるいは,力量を超えたものを受け取ることができずにそのままになってしまうという懸念を感じました。
 その是正につながることとしては,特に自治体間の格差についてはやはり何らか法的な根拠を基に,体制の強化,あるいは施策の実効性の担保というものを確保していかないと,担当者が替わった,あるいは担当者に理解がない,それだけのレベルで,実行すべきことができないという事態が容易に引き起こされていってしまうと思います。
 小島先生も言及されていましたが,やはり学校保健安全法等の何らか自治体が動ける根拠というものをまず整備していくこと,そこから子供たちの健康の保障というものが進んでいくのかなというふうに思いました。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。北垣委員,お願いします。

【北垣委員】
 ありがとうございます。第1回の会議のときに,発言させていただいたのですが,外国人学校向けのマニュアルの中では,相談窓口は教育委員会にしてあります。これは一条校を対象とした日本人の子供たちのための学校を中心として考えているから当然だと思いますが,それを外国人学校に当てはめた場合に,本当に適切でしょうかという発言の趣旨でした。
 今回,浜松市と,東京インターナショナルスクールの実情を聞かせていただいても,窓口はやはり国際課や,市役所になっています。ステークホルダーが外国人学校であっても,そこに就学している子供たち全てを見守っていくためには,教育委員会が窓口になるよりは,教育委員会はサポート役に徹した方がいいのかもしれません。学校の情報を提供するような立場が必要になってくる場合には,それは国際課であるのかもしれません。
 それぞれの地区で,窓口がコミュニティにアクセスしやすいところは変わってくると思うので,そこの整理をする必要があると思います。文部科学省若しくは教育委員会の力だけだと,小島先生の方からも御発言がありましたが,子供たちがどこにいるか分からないという状況です。そのような中,教育委員会若しくは文科省に子供たちを探せと言っても,実際,コミュニティで,恐らく国際課の人たちや地域の国際交流センターの人たちが,どこにどのような子供たちがいるのか,保護者を含めた外国の人はどこに偏在化をしているのか把握をされていると思われます。学校として,学校保健として,そこをどのようにサポートできるのかという方向性も御検討いただいた方がいいのかなと感じました。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。安田委員,どうぞお願いします。

【安田委員】
 岐阜県の安田でございます。お二方の発表は大変示唆深く,御提言も含めて大変参考になります。ありがとうございます。
 今,新型コロナの関係でワクチン接種が加速化しておりますけれども,このワクチン接種,岐阜県も,外国人県民ということで市町村の判断になるわけですけれども,外国人県民への接種は優先接種という枠組みに位置づけられております。
 ただ,今朝ほど,各種学校認可を受けているブラジル人学校2校に確認しましたところ,まだ地元の自治体からは何もアプローチがないということでした。もし,今日,御教示いただければ,浜松市の鈴木委員さん,東京インターナショナルスクールのダニエル先生に,ワクチン接種において外国人学校が何か一定の役割を果たせるとしたら,どういう部分なのかについて,外国人学校は広域通学という状況の中で,外国人県民に対するワクチン接種の情報提供について,アプローチがなかなか難しいだろうと思いますが,直接的な外国人県民に対するアプローチ,コミュニティを通じたアプローチ,あるいは外国人雇用企業を通じたアプローチ,いろいろあると思うのですけども,その辺について御教示いただければと思います。よろしくお願いします。

【佐藤座長】
 鈴木委員,ダニエル先生,何か御発言がありますでしょうか。

【ダニエル委員】
 JCISと同様に,私たちは文部科学省と密接に協力しています。職域接種については,JCISと東京インターナショナルスクールを通じて政府に申請しました。これには1000人の参加者が必要ですが,私たちは職域接種を申し出ました。いつ頃になるのか,今はそれを待っているところですが,我々としてもワクチン接種に関して何か協力できることがあればうれしいです。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。鈴木委員,お願いします。

【鈴木委員】
 昨日ワクチン接種のプロジェクトチームの庁内会議があり,外国人学校も該当するということで職域接種の対象に入ったのですが,昨日,ちょうど通達がございまして,やっぱり学校での集団接種が同調圧力を生むとか,そういう問題があって,小中と外国人学校のワクチン接種の方法をどういうふうにしていくのかということは,今,議論をしている最中でございます。
 それから,企業で言いますと,先ほど我々が言った人材派遣会社の方々は数社集まって,1,000人以上になるものですから,それでやっていきたいというオファーが今,挙がっております。そうした動きが出てきておりますので,外国人の市民を雇っている企業の中で,そうした集団で各事業所が連携をして,1,000人以上を確保して,職域接種等をするという方法は今後,出てくるのかなと思います。
 あと,外国人学校そのものについては,今度6月30日にも会議がございますが,今後,少し詰めていきたいと考えております。

【佐藤座長】
 ありがとうございました。ちょうど予定されている時間が12時45分でございますので,このお二方の報告を巡る質疑を終えたいと思います。
 浜松の方から大変先駆的な事例についてお話しいただきましたので,大変,参考になると思います。それから,小島先生の方からは具体的な提案をしていただいておりますので,この会議の中でどういう形でこれを具現化できるか。是非引き続き検討していきたいと思っております。
 鈴木委員と小島先生,どうもありがとうございました。
 それでは,議題その他について,事務局から今後のスケジュールについて,資料6の説明をお願いします。

【事務局】
 事務局から今後のスケジュールについて説明させていただきます。今後のスケジュールでございますけれども,今回は第2回でございますが,次回,第3回の有識者会議は7月12日の午前中を予定しております。有識者ヒアリングを行うとともに,中間取りまとめの骨子案について御議論いただく予定です。第4回は8月5日木曜日の午前中を予定しております。ここで中間取りまとめ案について御議論いただく予定です。よろしくお願いいたします。

【佐藤座長】
  よろしいでしょうか。それでは,いろいろと参考になる意見を出していただき,本当にありがとうございました。
 本日の会議は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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