Vol.3 在大韓民国日本国大使館の山本剛一等書記官「「両手を携え、より良い未来へ」日韓国交正常化60周年、その先へ。」

掲載日:2025年10月28日

2025年、日韓国交正常化60周年。在大韓民国日本国大使館の山本剛一等書記官が、文部科学行政から見る韓国の今を紹介します。
The year 2025 marks the 60th anniversary of the normalization of the Japan-ROK relations. Mr. YAMAMOTO Tsuyoshi, the first secretary at the Embassy of Japan in the Republic of Korea, will introduce the current situation in ROK from the perspective of the MEXT administration.

안녕하세요(アンニョンハセヨ、こんにちは)!
私は今、東京から飛行機で2時間半のソウルで2021年から教育・スポーツ担当の外交官を務めています。06年に入省し、これまで地方の教育委員会での勤務を含む教育行政から宇宙開発行政まで文部科学省職員として様々な経験をしてきました。

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(筆者/2021年12月13日 景福宮光化門前にて 於:ソウル)

K-POPやドラマ、食べ物や美容まで、今や韓国文化が日常の一部となった方も少なくないのではないでしょうか。韓国は、半導体や自動車など競争力の高い産業を持ち、一気に経済発展を遂げました。私が学生だった2000年代初めに旅行で訪れた頃に比べ、ソウルがとても綺麗で便利な街へと変わったことに驚かされます。

日本と韓国は25年、1965年の国交正常化から60年の節目を迎えました。歴史や政治外交を巡る認識のずれから摩擦が生じ「近くて遠い国」と言われたりもしますが、国民同士は地道に努力を重ね、2024年には年間の日韓往来者数が過去最高の1200万人を超えるほど活発な交流が続いています。

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(2025年6月16日 日韓国交正常化60周年記念レセプション 於:ソウル)

政府要人の往来も活発です。私の任期中で見ても総理大臣5回、外務大臣4回、文部科学大臣3回の訪韓に対応しました。24年秋には岸田文雄総理大臣(当時)が現職総理として初めてソウル大学を訪問する場をアレンジさせていただき、学生と日韓関係の未来について語り合う機会を実現しました。

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(2024年9月7日 岸田総理(当時)ソウル大学訪問 於:ソウル)
出典:首相官邸HP 総理の一日(令和6年9月6日:韓国訪問)別ウィンドウで開きます

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(2023年9月8日 永岡文部科学大臣(当時)日中韓文化大臣会合出席 於:全州)

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(2025年8月27日 あべ文部科学大臣(当時)APEC 文化ハイレベル対話 於:慶州)

皆さんは韓国の子どもの生活にどんなイメージを持ちますか。高い大学進学率や厳しい受験戦争が着目される一方、アニメ人気から日本文化への憧れや日本語を自ら学ぼうとの熱も相当高いです。
日本との交流を切望する学校も多く、ソウル市教育庁と協働し日韓の学校をオンラインでつなぐ事業を22年から始めました。100組を超える学校同士がマッチングされ、他国と比しても群を抜いて増加の一途です。学生たちは画面にかじりついて互いの暮らしや学校生活を語り合っています。また、私自身もよく現地校を訪問し、日本文化紹介を通して学生たちと交流しています。

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(2024年11月1日現地校訪問 於:仁川)

教員同士が授業の実践方法を伝え合う研修も01年から続いており、これまでに日韓で3000人以上の先生方が参加し、その成果を子どもたちに還元してきました。

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(2025年7月18日 日韓教師対話 於:済州)

スポーツ交流も盛んです。
25年には久しぶりにサッカー国家代表の日韓戦が行われ、また日韓で初めてサーフィンの国際大会が開催されるなどしました。選手同士の試合ももちろんですが、子どもたちを招いた体験イベントも同時に行うことにより次世代の交流も大事にしています。
障害者が参加するパラスポーツの交流もあります。例えば、韓国パラアイスホッケーは、元々日本から1台のスレッジ(パラアイスホッケーをプレイする際に乗るソリ)を譲り受けたことから始まったという縁があります。こうした縁から続いてきた交流に子どもたちも参加させてもらいながら相互理解を深め、一歩一歩未来に気持ちをつないでいます。

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(2023年11月12日 日韓パラアイスホッケー交流 於:江陵)

海外に住む邦人としても貴重な経験をしています。幼稚園から中学まで約300人が通うソウル日本人学校の学校運営に積極的に関わっています。縁あってPTA会長も仰せつかり、学校行事に積極的に保護者や韓国の方を招いたり、児童生徒を韓国の教育・スポーツの現場に連れて行ったりと、開かれた学校作りをみんなで目指しています。

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(2025年8月28日 あべ文部科学大臣(当時)ソウル日本人学校訪問 於:ソウル)

私生活ではマラソンを始めました。ソウルは大都市でもありながら緑が多く、登山やランニングを楽しむ人がたくさんいます。私もそういった仲間の輪に加わり、人生で経験することなどないと思っていたフルマラソンの大会に何度も出場しました。成人の生涯スポーツも盛んで、私も韓国人メンバーの野球チームに加わり、週末は草野球を楽しんだりもしています。

国交正常化60周年のキャッチフレーズ「両手を携え、より良い未来へ」のもと、25年は交流行事が盛りだくさんです。文部科学省から派遣された外交官として関わる教育・文化・スポーツ・科学技術分野の草の根交流は、両国の相互理解と友好増進に大きく寄与すると感じています。 正面切った政治外交とは少し違った角度から日韓関係を太くすることが、私が韓国にいる意味だと考え、人と人とが交わる場面を一つでも多く作ることを大切にしてきました。「近くて遠い国」から「近くて近い国」に少しでも近づくよう、微力ながら力を尽くしたいと思います。

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(2025年5月12日 APEC教育大臣会合 於:済州)

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文部科学省大臣官房総務課広報室

(文部科学省大臣官房総務課広報室)