文部科学省における環境保全施策等の点検結果 1環境保全にかかる施策 施策目標(1)

施策目標(1)環境分野の研究開発の重点的推進

1.政策名 1.環境保全に係る施策の推進
2.施策名 施策目標 (1)環境分野の研究開発の重点的推進
3.主管課及び関係課(課長名)
(主管課) 研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室長 (室長:坂本修一)
(関係課) 研究開発局海洋地球課長 (課長:近藤秀樹)
研究開発局宇宙開発利用課 (課長:奈良人司)
研究振興局基礎基盤研究課 (課長:大竹暁)
4.基本目標
及び達成目標
基本目標(1)(基準年度:13年度)(達成年度:17年度)
地球温暖化、水循環、資源循環、有害化学物質等の地球環境問題は、我々人類の社会生活と密接な関連を有し、重大な影響を及ぼす恐れがあることから、総合科学技術会議の環境分野推進戦略を受け、その現象を科学的に解明し、適切な対応を図るための研究開発を推進する。

達成目標(1)‐1(基準年度:7年度)(達成年度:24年度)
ARGO計画に基いたフロートの展開を実現し、海洋観測データを全地球規模で収集する。陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)(平成17年度打上げ)、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)(平成20年度打上げ)、全球降水観測/二周波降水レーダ(GPM/DPR)(平成25年度打上げ)等により、地球変動予測に不可欠な観測データを取得する。これらの観測により、国際的な地球観測の枠組であるIGOS(統合地球観測戦略)の活動を通じた地球環境観測体制の強化を図る。

達成目標(1)‐2(基準年度:13年度)(達成年度:17年度)
地球温暖化、オゾンホール等の地球規模での環境変動の解明に資するため、南極地域観測第6期5カ年計画に基づき、南極域での環境変化の研究・観測を行う南極地域観測事業を推進する(南極地域観測は、昭和51年に統合推進本部が定めた「南極地域観測事業の将来計画基本方針」に基づき、5か年を1単位とする観測計画を策定)。

達成目標(1)‐3(基準年度:14年度)(達成年度:18年度)
大学・研究機関の英知を結集し、各種観測データを集約することにより、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)における第4次評価報告書に寄与できる精度の高い温暖化予測を目指して、地球シミュレータの活用により、「日本モデル」(大気海洋結合モデルの高度化、地球温暖化予測統合モデルの開発、高精度・高分解能気候モデルの開発)を開発する。また、日本を中心としたアジア・モンスーン地域における陸水循環過程の解明に向け、各研究機関が共同で高解像度の水循環モデルを開発する。

達成目標(1)‐4(基準年度:11年度)(達成年度:20年度)
環境分子科学研究として、生分解性ポリエステルを効率よく生物生産するバイオプロセスの開発研究、生分解性プラスチックの成型加工技術および物性制御技術の開発研究、大気汚染ガスなどを無害化・有効利用する物質変換プロセスの開発研究、高効率なエネルギー直接変換を可能とする太陽光エネルギー変換システムの開発研究、内分泌撹乱物質などをオンサイトリアルタイムで高感度かつ迅速に検知・計測・評価する環境情報分析システムの開発研究、微生物による内分泌撹乱物質の効率的な分解除去技術の開発研究をそれぞれ行う。

達成目標(1)‐5(基準年度:15年度)(達成年度:19年度)
「持続型経済社会」の実現に向けて、都市・地域から排出される廃棄物・バイオマスを無害化処理と再資源化に関するプロセス技術開発を行うとともに、その実用化と普及を目指して、影響・安全性評価及び社会システム設計に関する研究開発を産学官の連携・協力により行う。
5.現状の分析と今後の課題 各達成目標の達成度合い 達成目標(1)‐1
国際協力により全世界の海洋に観測機器(中層フロート)を展開するARGO計画において、我が国の投入フロート数は米国に次いで世界2位の寄与度である。特に、海洋地球研究船「みらい」等によるフロートの投入を通じて、南半球における観測空白域の解消に向けて大きく貢献した。また、平成17年度には、ARGO計画評価・助言会議において計画全体の評価を受け、引き続き推進することが承認された。陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)については、平成18年1月に打上げを実施し、同年秋からの本格運用に向け、取得データの校正検証作業等を行っている。温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)については、平成20年度の打上げを目指し順調に開発中である。日米協同の国際プロジェクトである全球降水観測/二周波降水レーダ(GPM/DPR)については、当初平成19年度の打上げを予定していたが、米国側の衛星開発に遅れが見られたため、打上げ年度を平成21年度に変更し、順調に開発中である。また、米国の地球観測衛星「Aqua」に搭載された改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR‐E)を順調に運用した。平成17年2月にブリュッセルで開催された第3回地球観測サミットにおいて全球地球観測システム(GEOSS)構築の10年実施計画が承認され、10年実施計画のために「地球観測システム構築推進プラン」を開始した。

達成目標(1)‐2
平成17年度の南極地域観測事業においては、南極域での環境変化の把握を目的とした多項目の観測を引き続き行い、観測データの収集が進んだ。
特に、「ドームふじ氷床深層掘削計画」においては、深さ3,028.52mまでの氷床コアを採取し、当初の目標をほぼ達成した。
以上のことから、南極地域観測事業の平成17年度の達成度合いについては、概ね順調に進捗と判断される。

達成目標(1)‐3
RR2002「人・自然・地球共生プロジェクト」として、予測モデルを用いた地球温暖化シミュレーションを行い、その結果がIPCCのデータセンターに登録され、各国の比較検討に利用されているほか、アジアモンスーン域における水利用、気候変動等に伴う水循環変動を評価できるモデルの開発をすすめた。
平成18年3月に科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球環境科学技術委員会の委員等による講評を実施し、2007年に予定されているIPCC第4次評価報告書への貢献という観点からも、科学的・政策的見地から貴重な成果をあげ、本プロジェクトが地球温暖化防止シナリオの作成・評価に大きく貢献するという高い評価を得ている。
以上の状況を踏まえ、同プロジェクトは順調に進捗している。

達成目標(1)‐4
第1期(平成11年度~15年度)は、進化工学の手法を用いて、ポリエステル合成酵素の改質に成功し、また、遺伝子組換え大腸菌を分子育種し、糖から超高分子量ポリエステルを高効率・高速度で生産するシステムを開発した。さらに、共重合ポリエステルを生産する植物を育種した。一方、高強力バイオポリエステル繊維の作製技術を開発し、繊維の結晶構造と強度との相関を検証した。また、ダイオキシン類分解細菌について、ジベンゾフランの完全分解に必要な代謝系遺伝子群の全容を解明した。さらに、太陽電池に応用可能な光電変換素子を開発した。
第2期(平成16年度~20年度)は、環境にやさしい高分子材料の構造変化を、ナノメートルオーダーからミクロンオーダーまで同時に解析することを可能とするX線広角・小角同時測定装置を開発した。また、独自の触媒を用い、天然ゴムに優るポリイソプレンの開発に成功した。本成果は高性能タイヤ等の開発につながると期待される。さらに、新しい遺伝子解析法として、チップ基板とするシリコンラバー(PDMS)が持つガス吸収特性を利用して、分離用ポリマー溶液を自動的にマイクロ流路内部に引き込ませることができるポンプレスの自律型マイクロチップの開発に成功し、免疫検査法に応用可能であることを示した。これは、現場での環境計測に有望である。また、高温で生育できるダイオキシン骨格分解菌の単離に成功した。この菌は、コンポスト等の高温環境下におけるバイオレメディエーション(微生物を利用した汚染環境の修復)への応用が期待できる。
以上のように、研究開発は順調に進捗している。

達成目標(1)‐5
リーディングプロジェクト「一般・産業廃棄物・バイオマスの複合処理・再資源化プロジェクト」として、産学官の連携により研究開発を進めてきた。平成18年3月に行われた成果報告会においては、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球環境科学技術委員会の委員等による講評を実施し、全体的に研究開発は概ね順調に進捗しているとの評価を得ている。なお、同成果報告会では数値目標としている、高効率ガス化・エネルギー変換に関するプロセス技術開発によるエネルギー変換効率対従来方式比1.3倍達成も報告された。
以上の状況を踏まえ、同プロジェクトは順調に進捗している。
基本目標達成に向けての進捗状況 平成17年度においては達成目標への到達に向け、概ね順調に各事業が進められていることから基本目標の達成に向け、着実に進展していると判断される。
今後の課題 達成目標(1)‐1については、ARGO計画(目標投入フロート3,000基)に貢献するため、中層フロート観測網を用いた観測研究を引き続き進めることが必要。地球観測衛星については、「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」を受け、地球環境問題等に対応した衛星による地球観測を、国が取り組むべき重要な施策として推進する。
その他については、開発、運用が順調に進捗しており、今後も、信頼性を第一に据えた開発と、着実な運用を行う。

達成目標(1)‐2については、平成18年度より南極地域観測第7期計画が開始されるところ。自然条件に左右されて取得できなかったデータについて、その原因を検討し、適切な観測に努めることが引き続き必要。
また、南極地域観測事業は何よりも観測の継続性が重要であり、そのためには最も安全かつ確実な輸送手段である「しらせ」後継船及びヘリコプター後継機2機の平成21年度までの就役が必要である。
さらに、現在の南極観測船「しらせ」が平成19年度で退役し、21年度に現在建造中の後継船が就航するまでの1年間の輸送の空白期間について、今後の観測計画と輸送計画の検討が必要である。

達成目標(1)‐3については、引き続き研究開発を推進し、IPCC第4次評価報告書への更なる寄与を目指して、温暖化予測の精度向上を図るとともに、日本を中心としたアジア・モンスーン地域における陸水循環過程の解明に向けた、高解像度の水循環モデル開発促進を図る。また、研究成果報告会の開催等により、引き続き成果の普及に努める。さらに、平成19年度からは「人・自然・地球共生プロジェクト」の成果を発展的に継承し、より確度の高い気候変動予測研究の実施を目指す。

達成目標(1)‐4については、有機酸やアミノ酸などのバイオマスから優れた物性と機能をあわせ持つ高分子を合成する技術を開発するとともに、得られた高分子を生分解する酵素の探索・改良等を行うなど、環境の保全から修復・改善に至る幅広い技術開発をさらに押し進める必要がある。また、化学、生物学、物理学、工学の異なる研究分野の融合により、地球環境との共生に資する新しい学術領域を開拓していくことが重要である。

達成目標(1)‐5については、引き続き研究開発を推進し、廃棄物・バイオマスの流通・処理システムの設計・評価において自治体等の中長期計画策定に利用可能な、技術情報基盤を構築する。また、研究成果報告会の開催等により、成果の普及に努める。
6.指標 参考指標
指標名 13 14 15 16 17
ARGO計画:投入フロート数及び割合
(達成目標(1)‐2) ※数値は類型値
65 160 257 374 468
ARGO計画による塩分水温データ取得数
(達成目標(1)‐2関係)
916 3,281 5,174 7,346 10,248
備考 「ARGO計画」;全世界に国際協力の下、約3,000個のフロート(観測機器)を展開し、全世界の海洋の状況をリアルタイムで監視、把握するシステムを構築する計画。気候変動や地球温暖化等地球変動現象の解明に寄与する。

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大臣官房政策課

-- 登録:平成21年以前 --