○ | 研究課題 | 2003年7月九州豪雨災害に関する調査研究 |
○ | 研究代表者 | 橋本晴行(九州大学大学院工学研究院) |
○ | 研究経費 | 460万円〔科学研究費補助金(特別研究促進費)〕 |
○ | 研究目的 |
7月18日深夜から20日未明にかけて九州各地で,局地的な集中豪雨により,河川の氾濫や崩壊,土石流が発生し,九州全体で床上・床下浸水6,902戸,死者23名に達する激甚な災害となった。災害の形態としては,九州北部の福岡市など都市部で洪水・内水氾濫による住居,地下空間等の浸水被害が,九州中南部の水俣市などの山地部で崩壊・土石流による人的被害が特徴的である。しかしながら,いずれも,降雨量は同じ規模であり,河川上流の山地部で崩壊・土石流が発生し,下流に流木と細粒土砂が洪水に伴って流下し被害を拡大させた点で共通の特徴を持っている。
前者の災害は4年前の99年福岡水害の再来と言われ,後者は97年の出水市土石流被災地に近く,それとの関連が注目されている。本調査は,災害頻発の原因について,その実態解明を通じて究明するとともに,豪雨頻発地帯の九州における洪水・内水氾濫災害,地下空間水害,土砂災害対策を緊急提言としてとりまとめることを目的とする。
○ | 調査内容 |
(1)都市水害対策に関する工学・人文社会学的観点からの検討
福岡市では,博多駅周辺において2級河川御笠川およびこれに合流する山王放水路(雨水排水路)が氾濫し,駅周辺ビルの地下階,地下鉄駅構内などが浸水した。 99年水害規模を想定した洪水対策として河川改修中であったが,想定以上の洪水により氾濫が生じたものと言われている。
再度の氾濫について,洪水流出と降雨量,流域の都市構造,山王放水路との関連性,および氾濫の経緯を調べることで氾濫の原因と過程を明確にする。また,今回の水害においても,地下鉄入口から泥水が進入し,地下鉄博多駅構内が浸水した。浸水の経過など実態把握を行うことで従来の地下空間の浸水対策を検証する。また,都市施設と治水の関係など,水工学的観点,都市計画,都市住民の心理・意識といった人文社会学的観点から都市水害対策について提言を行う。
(2)土砂災害の回避方策としての斜面危険度評価・早期予測・警報システムの検討
水俣市宝川内集(ほうがわちあつまり)地区では崩壊が土石流化し,渓流の集川(あつまりがわ)を流下して下流の集落を襲った。死者15名の大災害となった。
集川は土石流危険渓流に指定されている。しかしながら,最大時間雨量が91にも達する集中豪雨にもかかわらず,行政も住民も土石流の発生を予見できなかった。水俣市の避難勧告は発生から1時間20分後のことであった。関係機関の連携・情報伝達の不備,土石流危険渓流に対する認識不足が指摘されている。従って,防災関係機関の危機管理や情報伝達システムについて実態を調査し問題点を抽出することとする。それを基に改善策を提案する。
土砂災害には早期避難が重要である。土砂災害の前兆現象の有無の調査,従来の警戒避難基準雨量の検証などを実施し,地域性を考慮した土砂災害の危険予測法や避難基準を明らかにする。また,詳細な地理情報システム(GIS),リモートセンシングを用いた再現シミュレーション計算により,崩壊規模の検証,流動・氾濫堆積過程の解明を行い,土石流到達危険範囲の予測方法の確立を図る。九州各地には土砂災害資料の蓄積があり,それらと合わせて考察し,崩壊機構の普遍性,地域性を明らかにすることで,九州地区土砂災害警報(避難勧告/避難指示)発令基準(案)を提案する。
○ | 研究組織 |
・研究代表者 | |||||
橋本 晴行 | 九州大学工学研究院・助教授 | 河川工学 | 総括, 洪水および土石流の氾濫特性の解明 |
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・研究分担者 |
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河川・砂防班 |
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秋山 壽一郎 | 九州工業大学工学部・教授 | 水工学 | 内水氾濫の調査・分析 | ||
渡辺 訓甫 | 佐賀大学理工学部・教授 | 河川工学 | 都市域における洪水防御策の調査・検討 | ||
戸田 圭一 | 京都大学防災研究所・助教授 | 耐水システム工学 | 地下空間の浸水被害の調査・分析 | ||
小川 滋 | 九州大学農学研究院・教授 | 砂防工学 | 土砂災害警戒避難基準雨量の検討 | ||
下川 悦郎 | 鹿児島大学農学部・教授 | 砂防工学 | 崩壊型土石流の発生機構の解明 | ||
谷口 義信 | 宮崎大学農学部・教授 | 治山工学 | 土石流災害における森林要因の把握 | ||
水文・気象班 |
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守田 治 | 九州大学理学研究院・助教授 | 気象学 | 集中豪雨機構の気象学的な解明 | ||
森山 聡之 | 崇城大学工学部・助教授 | 水文学 | 降雨特性の解明 | ||
牛山 素行 | 東北大学工学研究科・講師 | 水文学 | 既往記録からみた豪雨特性の把握 | ||
地形・地質班 |
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江崎 哲郎 | 九州大学工学研究院・教授 | 地盤環境工学 | GISによる土砂災害発生機構の解明 | ||
井村 隆介 | 鹿児島大学理学部・助教授 | 地形学 | 土砂災害の地形学的検討 | ||
千木良 雅弘 | 京都大学防災研究所・教授 | 斜面災害学 | 斜面崩壊の発生機構の解明 | ||
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善 功企 | 九州大学工学研究院・教授 | 防災地盤学 | 土砂災害の発生機構の解明 | ||
後藤 恵之輔 | 長崎大学生産科学研究科・教授 | 防災工学 | 衛星データによる土砂災害発生の検討 | ||
鈴木 敦巳 | 熊本大学工学部・教授 | 地盤工学 | 土砂災害の発生機構の解明 | ||
北園 芳人 | 熊本大学工学部・教授 | 地盤環境工学 | 斜面崩壊の危険度評価法の検討 | ||
村田 重之 | 崇城大学工学部・教授 | 防災工学 | 崩壊型土石流の発生機構の解明 | ||
北村 良介 | 鹿児島大学工学部・教授 | 防災地盤学 | 斜面崩壊の予知システムの検討 | ||
人文社会班 |
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松永 勝也 | 九州大学システム情報科学 研究院・教授 | 心理学 | 住民の避難行動分析 | ||
高橋 和雄 | 長崎大学工学部・教授 | 防災工学 | 行政・住民の情報伝達に関する調査 | ||
林 理 | 武蔵野大学現代社会学部 ・助教授 | 災害心理学 | 自主防災組織と行政の危機管理 | ||
横田 尚俊 | 山口大学人文学部・助教授 | 災害社会学 | コミュニテイの災害対応に関する調査 |
-- 登録:平成21年以前 --