第4回オープンイノベーション共創会議 議事要旨

1.日時

平成29年7月10日(月曜日)10時00分~11時30分

2.場所

文部科学省3階2特別会議室

3.議題

・オープンイノベーション共創会議における検討のまとめ

4.出席者

委員
上山委員、江戸川委員、岡島委員、江村委員、木村委員、斉藤委員、鮫島委員(代理:栁下氏)、菅委員、高田委員、橋本委員、松本委員、武藤委員、村山委員(代理:佐藤氏)、吉村委員
文部科学省
水落副大臣、戸谷事務次官、伊藤科学技術・学術政策局長、真先大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、板倉大臣官房審議官(研究振興局担当)、大山大臣官房審議官(研究開発局担当)、勝野科学技術・学術総括官、小山国立大学法人支援課長、塩崎人材政策課長、坂本産業連携・地域支援課長、工藤科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)

5.議事概要

1.開会
冒頭、水落副大臣から開会挨拶があった。発言の概要は以下のとおり。
(水落副大臣)
○産学官連携拡大の阻害要因と具体的な改革方策についてご議論いただいてきたが、これまでの検討の結果の一部については、未来投資戦略2017をはじめとする政府戦略に盛り込まれているところ。
○本日は、これまでの検討結果の取りまとめを行うための議論をして頂きたい。オープンイノベーションを加速することで、産業界は新たな知見や優れた人材を獲得し、大学・国立研究開発法人には経営陣に自由度の高い財源を生み出すという、産学官のウィン・ウィン(Win-Win)関係を構築するための具体策について、率直なご意見を賜りたいと思っている。


2.オープンイノベーション共創会議における検討のまとめについて
資料3に基づき、事務局から説明があった。その後、資料3の章立てに基づき、議論を実施した。

2.我が国の産学官連携の現状認識
○人材の流動性の観点から申し上げると、いろいろな組織を流動していない現状がある。日本的な文化かもしれないが、一つの組織にロイヤリティを示すことが重要というマインドセットになっている。こうした現状の解決方策や今後の取組の在り方についても、報告書のどこかに書いてあるとよい。
○マネジメントという言葉で片づけられている部分があるが、現場では、特に海外企業との連携に関して、実際はスムーズにいかない部分がある。日米比較などを通じて、我が国におけるマネジメントの課題の内容がもう少しクリアに指摘されていると、大学現場からはわかりやすい。

3.産学官連携の阻害要因と改革方策
1.民間投資導入拡大と柔軟な資産運用
○1、2の現状認識は非常にしっかりなされている。阻害要因や改革方策もそのとおりであると考えている。研究開発力強化法改正の検討やその他の法令改正は是非進めていただきたい。しかしながら、制度改革の効果が出るのはまだまだ先の話であり、「間に合わない」というのが現場の実感である。
今、早急にやっていかなければいけないのは、経営トップのリーダーシップをもって、優れた研究者を、部局を超えて組織化するということ。これを、国立研究開発法人でも難しいのに、大学でどうやるかということが課題。その課題を克服するための工夫としては、経営のリーダーシップでインセンティブ・ディスインセンティブを設定することである。米国では人事権、予算権を副学長(ディーン)が持っているが、結局は追加的な資金が必要であり、予算の配分権をしっかりもつことが重要。
オープンイノベーション機構では、こうした予算権をどのように運営側に持たせるかという方策が重要である。オープンイノベーション機構をアドオンで整備することは重要だが、それ以上に、大学を科学技術政策にコミットさせることが重要。そのためには、科学技術政策と大学政策を一体的に推進していかなければならない。そのためには、大学政策と科学技術政策予算の一体的に動かすことが重要である。
これにあたって、オープンイノベーション機構の整備のためにアドオンした予算を、5年かけて大学に吸収させるように、あらかじめ絵を書いておくことが重要。
○経営のリーダーをどう選ぶのかについてもガバナンスを効かせる必要がある。オープンイノベーション機構を整備することは重要だが、機構にふさわしい人材が入ってくるかが重要である。大学の人事制度の中で民間の人材が活躍するには、厳しいところがあるので、こうした人材が活躍できるように施策を設計にする必要がある。
研究ファンディング改革については、必要な資金は研究テーマによって違うので、研究に応じた資金規模や研究の期間といった考え方を入れるべきかと思う。
○報告書は制度的課題をクリアしていこうという前向きな姿勢が示されており評価する。国立研究開発法人の出資については、法人ごとに適切な形態が違ってくると考えられるので、一律国立大学同様に、というところには議論があるのではないか。
株式・新株予約権の取得の在り方についてはベンチャーエコシステムの中で違和感のない形で対応する必要がある。特に、新株予約権の経済価値の算定に当たって、価値算定、保有する新株予約権の比率、現物株を持つ場合は持ち株比率など、プロの目を入れた対応をお願いしたい。また、IPOが期待できない会社の新株予約権を持ってしまうことのリスクに加えて、株式はインサイダー取引等のリスクもあるので、リスクマネジメントをしっかりできる体制にしてほしい。
○阻害要因を排除していこうという姿勢は適切な方向性。産業界からの投資を拡大するにあたって、ビジョン共有によって、研究内容や成果が見えるようになる。その際、さらに投資を大型化するにあたっての阻害要因を考えた時に、人材をはじめとする、必要なリソースを充てられていないということが挙げられる。
こうした阻害要因を解決するにあたり、オープンイノベーション機構は解決の鍵となる施策である。各大学は全学的な本部組織を拡充してきているが、これらがまだ脆弱であり、次のステップに行けていないという問題がある。オープンイノベーション機構の整備によってこうした課題を解決しようとしたときに、大学における人事評価などにも踏み込んでいく必要がある。
○オープンイノベーション機構を大学に設置する訳だが、その中で大学院生をどのように扱っていくのかが課題。日本の大学における博士課程学生の扱いは、米国における扱いと大きく事情が違っている。ただ、イノベーションが起こる環境を我が国において形成していく上で、博士課程学生をこうした産学連携の場に引き込まないとならないと考えている。また、プロフェッショナル人材は大学外から来てもらうことになるが、そういったときの社会保障問題をどうするのかを整理する必要がある。例えば、こうした課題を解決するにあたってのガイドラインができれば、現場でもやりやすくなるのではないか。
国立研究開発法人をとりまく制度を国立大学と同様とするということは、国立研究開発法人の現場としては非常に有難い。国立研究開発法人による出資が可能な資金の範囲について、どのように整理するかが課題。また、自己収入で得た資金は年度越えできるかどうかということも課題。出資して1年でリターンがでるわけではないため、長期戦略を持つことが必要となっている中で、投資に回そうと思っている資金が年度ごとに切れると戦略な活用ができない。
○橋本委員の指摘のとおり、オープンイノベーション機構においては、予算権を持つということが重要であり、部局としての役割を担える存在となることが必要である。
また、株式の長期保有が可能となると、インサイダー取引には気を付ける必要がある。ベンチャー側からすると、少しずつ株を売られると面倒が多い。例えば、一回一回東証に報告しなければならないなど、面倒なことも発生するため、こうしたテクニカルな部分も含めて、システムとして検討する必要がある。
出資は現金ではなく、場所等により新株予約権を取得できるようにするほうが美しい姿。大学の持てるリソースをうまく使って、新株予約権に変えていくことが重要かと思う。
○今回の制度改正の検討は、内閣府とも連動し、研究開発力強化法の改正を基にして進んでいるところである。自民党における検討会の中でも、今回の制度改革は大学にとっては良いことばかりであるが、大学改革とセットでやらないと絵に描いた餅となってしまうとの指摘があった。政治家からこうした指摘があるということは大きな意味があるものと理解している。こうした状況も踏まえて、教員評価や組織評価を行わないと社会には受け入れてもらえないであろうと考えている。
また、各大学を厳密な数値的なエビデンスに基づいて評価することも必要であろう。特に、各大学の役割に応じた、運営費交付金と競争的資金の関係の再評価を実施することが重要ではないか。
さらに、大学のマネジメントに関わる指標がまだまだ弱い。国立大学法人に法人化される前はSAPという共通の会計システムを運用していたが、これがそれぞればらばらになり始めているので、統一的に評価する方法を検討する必要がある。
オープンイノベーション機構はプログラムディレクターやプロジェクトマネージャーのような、中間的なプロフェッショナル人材が重要である。こうした人材に関して、どのような素質を持っている必要があるかの議論がまだまだ深まっていない。どのような素質を持つ人材が、例えば基礎研究に関わるプロジェクトマネージャーには必要かということの分析をやっていく必要があるのではないか。米国では政府のプロジェクトごとに、プロジェクトマネージャーを絡ませることを法律において義務化している。これは、政府の事業といえども、中間的なプロフェッショナル人材を絡ませなければプロジェクトがうまくいかないという意識が強くなっていることに由来するのではないかと考えている。
○事業化の観点をプログラムの中で評価することが重要。例えば、ALEの衛星は宇宙航空研究開発機構の革新的技術実証プログラムにおいて、イプシロンロケットへの搭載候補ということで採択いただいているが、ALEのやろうとしていることが、前例がないゆえに、ロケットに搭載するにあたっての安全審査が少し厳しくなっている。ベンチャーが技術実証や概念実証化の芽を摘まないためにも、プログラムの中に事業化に問題がないかどうかという評価の視点を入れることは重要。
○進むべき方向性は報告書のとおりと評価している。共用特許に関し、企業と大学との共有の場合は、不実施補償を取っているにも関わらず、大学の収入につながっていない現状があることを認識する必要がある。
英国ランバート・ツールキットを参考とした契約モデルの構築については、共同研究の成果をまずは大学が単独で所有し、企業にライセンスしていくという考え方だと思うが、この方向性には賛同。他方、コンソーシアム型の連携の際には、参加企業間の意向調整を図ることが重要であるため、参加企業にとって利用しやすい制度としないと、なかなか普及していかないのではないかと考えている。
○研究力強化に向けて、ギャップファンド関連プログラムの充実は大変重要。ギャップファンドに応募されてくるものとして、まだ概念実証もされていない、若手が提案してくるものが特に重要だが、学際領域や部局間連携を促進するような内容になるようにすべき。
また、概念実証を進めるということは、研究開発とコマーシャライゼーションのプロセスを同時に進めるということになるが、人材育成と併せて推進することで初めて、車の両輪として効果が最大化される。そのため、人材育成とギャップファンドがうまく噛みあうようにすべき。
○クロスアポイントメント制度については、極めて重要な制度であるが、現状はまだ活用は不十分。その理由のひとつとして、例えば兼業との違いが理解されていないといったことがある。また、具体的に、制度の活用が進んでいる事例があるので、それを入れるとわかりやすい。特に、産業界との間でクロスアポイントメントを活用する際には、産業界もまだ理解には及んでいないところがあるため、具体的な事例と、兼業との違いを明確にすることは効果的であろう。
○報告書案に賛成する。意欲のある大学や国立研究開発法人には、経営に高い自由度を持てるようにすることが重要と考えている。併せて、結果どのように経営を行ったのかを明らかにする適切なディスクロージャーは必要。そうした意味で、大学の中にもしっかりとしたマネジメント体制を整備する必要があるし、頑張った大学にはプラスで資金配分があるような仕組みが必要ではないか。そうした意味で、オープンイノベーション機構は大学改革と連動させないとただの出島になってしまう。
クロスアポイントメント制度の例については、経団連としてもヒアリングを始めている。ポジティブに考えている企業もあるので、今後の展開に応じて、適宜、情報を共有するなど協力させていただきたい。
○報告書の内容に賛同する。企業の目線からすれば、儲かるか、儲からないかということが重要であり、サラリーマンの集団である企業がリスクをとって産学連携に舵を切るというのは難しいという面があるということも理解しておく必要がある。そのため、税制的な配慮が必要なのではないかと考える。
大学側からすれば、制度改革によって経営の自由度が上がることは極めて重要であるが、企業においては、プロジェクトが進んで来ればくるほど、自由度は下がってくる。これに対してどのように大学側がミスマッチングを解消するべきかということも一つの論点ではないか。

3.締めくくり
○オープンイノベーション共創会議の報告書については、本日の議論を踏まえ、必要に応じて一部修正したうえで、取りまとめを行うことで了承された。
○水落副大臣より、本報告書や本日のご意見を踏まえ、今後、速やかに必要な法令改正や予算措置を進めるとともに、改革の意欲が高い大学や国立研究開発法人に対して、しっかりと支援を行ってまいりたいとの旨発言があった。



以上

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